東京地方裁判所 平成元年(ワ)3746号 判決 1994年7月29日
東京都千代田区外神田四丁目七番二号
原告
株式会社佐竹製作所
右代表者代表取締役
佐竹覚
右訴訟代理人弁護士
池田昭
右輔佐人弁理士
竹本松司
和歌山市黒田一二番地
被告
株式会社東洋精米機製作所
右代表者代表取締役
雑賀慶二
右訴訟代理人弁護士
安原正之
同
佐藤治隆
同
小林郁夫
主文
1 被告は、別紙物件目録記載の東洋セラミック精米機CS-一〇〇B、CS-一〇〇BE型を製造し、譲渡し、譲渡若しくは貸渡のために展示してはならない。
2 被告は、別紙物件目録記載の東洋セラミック精米機CS-一〇〇B、CS-一〇〇BE型及びその半製品(別紙物件目録記載の構造を具備しているが精米機として完成するに至らないもの)を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金一七〇万円及びこれに対する平成元年四月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用はこれを五分し、その一を原告の、その余を被告の負担とする。
この判決は、第3項に限り仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
1 主文第1項、第2項に同じ。
2 被告は、原告に対し、金三八〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、被告の負担とする。
4 右第2項について仮執行宣言。
二 被告
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 請求原因
一 原告は、精米機を含む穀類調製加工機を製造販売する会社であり、被告は、食糧加工機及び精米関係機械を製造販売する会社である。
二 原告は、左記特許権(以下、「本件特許権」といい、その発明を「本発明」という。)を訴外社団法人日本精米工業会と持分二分の一ずつで共有している。
1 登録番号 第一二八七五九七号
2 発明の名称 湿式精米装置
3 出願日 昭和五一年二月二四日
4 出願公告日 昭和六〇年三月二〇日
5 登録日 昭和六〇年一〇月三一日
三 本発明の「特許請求の範囲」欄の記載は、本判決添付の特許公告公報(以下「本件公報」という。)写しの該当欄記載のとおりである。
四 本発明の構成要件
本発明の構成要件を分説すれば、次のとおりである。
a 多孔壁除糠精白筒を設けた複数個の精白室を直列に配設した流れ搗精行程を設ける。
b その流れ搗精行程の終末行程又は終末行程寄りの行程に配設した精白室に加湿装置を設ける。
c 以上を特徴とする湿式精米装置。
五 本発明の作用効果
本発明の作用効果は、流れ作業の量産用搗精行程の末期行程に加湿精白除糠除水琢磨作用を用いて強い光沢のある美麗な精白米を得ることを可能にしたものである。
六 被告製品の構造
被告の製造販売にかかる東洋セラミック精米機CS-一〇〇B、CS-一〇〇BE型(以下これらを総称して「被告製品」という。)の構造は別紙物件目録記載のとおりである。
七 本発明と被告製品の対比
1(一)(1) 被告製品は、上段から、初期行程として第一精米部A、中期行程として第二精米部B及び終期行程として第三精米部Cを順に直列に配設してなる搗精行程を設け、第二精米部Bには多孔壁除糠筒12の内部に摩擦攪拌室15を形成し、第三精米部Cには二個併置した多孔壁除糠筒23、23’の内部にそれぞれ摩擦攪拌室26、26’を形成している構成を有する。
(2) 右は、本発明の構成要件aを充足する。
即ち、「多孔壁除糠精白筒を設けた複数個の精白室」の意味は、多孔壁除糠筒をそれぞれ設けた二個以上の精白室と解すべきであるところ、被告製品は、第二精米部Bと第三精米部Cとに多孔壁除糠筒をそれぞれ設けた二個以上の精白室を備えているから、構成要件aにおける右要件を具備している。
(二) 本発明の構成要件aは、すべての搗精行程において多孔壁除糠精白筒を備えなければならないとは限定していない。また複数個の精白室を直列に配設した精米装置にあっては、前行程において精白すると必然的に糠が発生し、この発生した多量の糠と仕上直前までに精白された米粒とを最終行程の精白室に送ってしまうと、糠と米粒とが精白室に混在することから、水分を添加しても水分が少なければ糠の方にこの水分が取られ、米粒に十分添加されないことがあり、また水分を多くしても湿った糠が米粒表面に付着して汚い米粒面になることから、前行程の精白室には少なくともこの糠を排除する多孔壁が備えられていることが必要である。この多孔壁が必要とされる理由に照らせば、構成要件aの「複数個の精白室」とは、最小限二つ以上の多孔壁を備えた精白室があることが必要という趣旨に止まるものである。
(三) 本発明は、「複数個の精白室」を設けたことを構成要件としているが、右は精白といった作用効果に着眼して、これを行う箇所を複数個設けることを意味し、精米機といった機械を単位としたものではない。本件特許出願当時、複数個の精白室を単一の精米機の中に設けるといった技術は周知であり、本発明はこのような単一の精米機の中に複数個の精白室を設ける構成を意図的に排除してはいない。単一の精米機の中に複数個の精白室を設けている被告製品も本発明の構成要件aを充足する。
(四) 構成要件aの「直列」とは、各搗精行程が順次一線で連絡されることを意味する。そこで被告製品を見ると、第二精米部Bと第三精米部Cとは一線で連絡され、前後行程としては直列流路をなすものであり、第三精米部Cの精白室が二個並列に配置されているといっても、この並列配置は同一の加湿式精白作用を担う部分で搗精行程としては一つの行程であるから、「直列」と認める妨げとなるものではない。そもそも本発明の特許請求の範囲にいう流れ搗精行程とは、循環搗精行程の対比概念であり、循環搗精行程とは、同一穀粒について同一精白室を複数回通過させて精白することを意味するのに対し、流れ搗精行程とは搗精行程を数段階に分割して、それぞれの段階で異なった作用を分担し、前行程から後行程へ流れ作業的に穀粒が精白されるもので、同一穀粒は順次後行程の精白室へ送られ一貫した流れ作業を経る。この流れ搗精行程を形成するための方式として「直列に配設し」との記載がされているものであるから、この「直列」とは、前行程と後行程を全体として見て直列の関係にあることを意味する。それゆえ、その各行程の中で単一の精白室があることは要件ではなく、ある行程において同一の作用を担う複数の精白室が並列に配設されていても、前行程と後行程の関係では直列に配設したといえる。
2(一)(1) 被告製品は、終期行程である第三精米部Cに送水系統に接続した加水ノズル部51、51’を攪拌室93、93’と送穀室92、92’とに跨がるように臨ませて設ける構成を有する。
(2) 右は、本発明の構成要件bを充足する。
(二)(1) 本件特許出願当時、食料加工業界において精白室とは、一般に送穀室を含む広義の精白室を指すものと考えられており(甲第三号証ないし甲第六号証)、必要により両者を区別する場合もあるが、それは特にこれらを分けて使用する技術的理由が存在する場合である。本件の場合そのような事情はない。また攪拌室においては、米粒は送穀室におけるよりも強く精白作用を受ける。したがって本発明においては送穀室及び攪拌室を含むものを精白室と表現していると解すべきである。
(2) 本発明の特許請求の範囲の「多孔壁除糠精白筒を設けた複数個の精白室」との記載だけでは、多孔壁除糠精白筒が設けられていない送穀室ないし攪拌室が精白室に含まれるかどうかは一義的に明白ではないが、本発明は、精白が仕上白米の精白度に近づくと、それ以上の精白が困難であった従来技術の欠点を克服するために、搗精行程の終末行程又は終末に近い行程にある精白室に加湿装置を設け、白米に水分を添加して、硬質化した粒面皮層を軟質化し、精白により発生する糠粉をして米粒面を払拭させて、平坦な美麗面とするという作用効果を達成しようとするものである。この加湿をどの段階でしたらいいかについては、発明の詳細な説明の記載をも斟酌すれば、歩留率九二ないし九一パーセントの中間白米を九一ないし九〇パーセントの精白度に仕上げる過程において加湿するのが最も有効とされており、結局は、精白の対象となる粒の精白度を基準として加湿時期が決められている。その一方、明細書の全記載を見ても送穀室を除外するかどうかなど場所的範囲については一切言及されていない。多孔壁除糠精白筒を設けたのは、精白作用により米粒面から糠として取り除かれたものが、一旦取り除かれた後に再度米粒面に付着したり、水分が必要以上に粒面内部に浸透することを防ぐために糠と一緒に水分を取り除くためである。
そうしてみると、水分添加と除糠除水の前後に関する時間的関係は、まず水分が添加されて、これにより米粒面が軟質化され、次に多孔壁除糠精白筒による除糠除水といった時間的関係が必要ではあるが、このような時間的関係を踏まえれば、送穀室において加湿することも十分可能であって、必ずしも多孔壁を備えた精白室部分だけで加湿するものとは限定されない。したがって精白室概念から送穀室を除外していない以上、これも含めて精白室と考えるのが相当である。
(3) 被告指摘の先行技術は、いずれも送穀室と精白室とを概念的に区別する必要が存するために別個のものとして狭い意味で精白室の概念を使用しているものである。これに対し、甲第三号証ないし甲第六号証に開示された技術は、いずれも送穀室と精白室とを概念的に区別する技術的理由が何ら存しないために、これらの上位概念として広義の精白室概念を使用している。本発明については、精白室と送穀室との概念をあえて分けて使用する技術的理由は何ら存しない。本件公報においても送穀室なる概念を一切使用しておらず、これを含めたものを精白室としているものである。
(4) 本件公報の実施例の図の精白室を示す引出し線をみても、送穀室と区別された部分を指しているとはいえない。
実施例は、あくまでも発明の代表的な一実施態様にすぎない。これに即してのみ本発明の技術的範囲を論じようとすることは、本発明の技術的範囲を不当に限定するものである。
(三) 被告は、被告製品は粘土糠を介して間接的に水分を添加して米粒の表面に湿気を与える間接加水方式で本件発明とは構成が異なる旨主張しているが、仮に被告製品が被告の主張する間接加水方式であったとしても、精白室において加水しているのであるから、本件発明の構成要件bを充足している。本発明は、精白室に加湿装置を設けることを要件の一部とするものであって、その加湿装置の加水方式について直接であるか、間接であるかを問うものではない。
(四) 歩留率に関する被告の主張は、本発明の構成要件においては歩留率は何ら要件となっていないから失当である。
3 被告製品は、右1及び2の構成を採用した加湿式精米装置であることから、構成要件cを充足する。
4 被告製品は本発明の構成要件aないしcを充足しており、本発明の作用効果と同一の作用効果を奏する。
5 よって、被告製品は、本発明の技術的範囲に属する。
八1 被告は、昭和六一年一〇月頃から被告製品の製造販売を開始し、現在に至るまでの間少なくとも一九台を別紙納入先一覧表記載のとおりの納入先の集中精米工場に設置、納入してきた。
2 被告製品の販売価格は一台当たり平均二〇〇〇万円である。
3 原告は被告に対し、特許法一〇二条二項に基づいて、本発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を損害賠償として請求することができる。そして、本発明の実施価値が従来不可能とされていた高精白度かつ超光沢の精白米を得ることを可能としたものとして実施価値が高いこと、国有特許権を第三者に実施許諾する場合、実施価値上のものは四パーセントを基準として実施料が定められること、被告製品は上段から順に第一精米部A、第二精米部B及び本発明を実施した第三精米部Cからなり第三精米部Cのウエイトが大きいことからすると五〇パーセントの利用率とも思われるが、加湿精米に関する別件東京地方裁判所平成元年(ワ)第三七四三号特許権侵害差止等請求事件の方法の特許発明(特許登録第一〇三六七五五号)があり、利用率は二分の一に減額すべきと考えられることなどからすると、本発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額は被告製品の販売価格の一パーセントが相当である。
そこで原告の損害は、
二〇〇〇万円×〇・〇一×一九台=三八〇万円
となる。
4 なお、本件特許権は、訴外社団法人日本精米工業会と原告との各持分二分の一の共有であるが、右精米工業会は、設立目的及び事業内容から見て、精米機のメーカーたる地位に立つものではなく、精米機を製造したり、販売したりすることは決してない。しかも第三者をして本件特許発明の実施をさせることは過去になく、また将来も予定されていない。そして特許権などが共有されて、それぞれが実施している場合、損害額については、各自の売上額の比率にしたがって算定すべきものであるところ、共有者の一人のみが実施して、他の共有者が一切これを実施することなく、また他の第三者に実施させることも予定されていない現況下においては、実施している共有者の売上額が一〇〇パーセントで、実施していない他の共有者の売上額は〇パーセントとして損害を算定すべきである。
九 よって、原告は被告に対し、被告製品の製造販売等の差止め、被告製品及びその半製品の廃棄並びに損害賠償として金三八〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
第三 請求原因に対する認否及び被告の主張
一 請求原因一ないし四は認める。
二 請求原因五は争う。
三 請求原因六は、三、構造の説明、3、(第三精米部C)の末尾から六行目及び五行目に「送穀室92、92’とに跨がるように臨ませて」とある部分を否認し、その余は認める。
右部分は「送穀室92、92’との境界部の位置に」とすべきである。
四1(一) 請求原因七1のうち、(一)(2)は否認する。
(二)(1) 本発明は、「複数の多孔壁除糠精白筒を設けた複数個の精白室」を配設したこと、即ち全行程において多孔壁除糠筒を有する精白室を複数個設置した構成である。本発明は、多孔壁除糠精白筒を複数個設けたうえその終末行程又は終末行程寄りの行程に配設した精白室に加湿装置を設けたことにより、仕上精米に接近した搗精行程の精白能率を増大させ、かつ白米粒面に強度の光沢を帯びさせ美化させるために開発された。この開発目的に沿った精白米を得るには、全行程の精白室において多孔壁除糠精白筒を設けるのでなければ、本発明が予定した精米能率及び精白米が得られるか疑問があるから、本発明の構成要件としては、全行程に多孔壁除糠精白筒を備えた構成であると理解すべきである。本発明の公報を検討しても多孔壁除糠精白筒を全行程の精白室の一部に設ける旨の記載はなく、実施例の図面上の記載も同様である。これに対し被告製品の第一精米部Aは、多孔壁除糠筒を備えた精白室ではない。
(2) 本発明について、加湿装置を終末行程寄りの精白室に設けることを選択した場合を想定すると、「終末行程寄りの精白室」という表現の解釈からして、少なくとも終末行程寄りの精白室の前行程としての多孔壁除糠精白筒を備えた精白室が存在していることが必要であり、精白室は最低三個以上設置されていることが必要である。これに対し被告製品は、多孔壁除糠精白筒を備えているのは第二精米部Bと第三精米部Cの二個である。
(三) 本発明は、「複数個の精白室」を設けたことを必須要件とするところ、各精白室という意味は各精白室を有する独立の精米機を複数個配設したというものである。即ち精米機を個々に配設することを要件とし、その配設個数については、米粒の種類等の必要に応じ複数個を任意に設置できることを前提としている。
本発明の実施例の図面によっても各単独の精米機を連設したものが開示されており、本発明の発明者である佐竹利彦の発明にかかる乙第一二号証ないし乙第一六号証は、いずれも本発明と同様に加湿精白室の配設順序に関するものであるが、すべて精白室は別個の精米機に一個ずつ設けられていて一個の精米機中に複数の精白室を有するものではない。また本発明の後願であり、昭和五二年一月二二日に出願された乙第二〇号証記載の発明において、原告が単一精米機の中に複数の精白室を設けた構造を新規な技術として出願していることから、本発明者自身、本発明の各精白室は、別個精米機に精白室が設けられている構造のものを前提としていたもので、一個の精米機中に複数の精白室を含む構造のものを排除している。このことからしても本発明の要件である「直列に配設した精白室」とは、精白室が別個単独の精米機に一個ずつ設けられている構造に限られているというべきである。
これに対し被告製品は、一個の精米機中に複数の精白室を設けた構造であり、各精白室を任意に設置できるものではない。
(四) 構成要件aの「直列」という意味は、複数個の精白室を配設し、前段階の一個の精米機で搗精された米粒の全部を次段に配設した一個の精米機が搗精するように配設された構成、即ちすべての精白室が一列の直線になるような配列である。このことは乙第一三号証、乙第一四号証の事例を見ても明らかである。本発明は、元来単独で使用していた精米機を、複数個直列に配設し量産用流れ作業に利用していたのを改良し、終末行程又は終末行程寄りの行程に配設した精白室に加湿装置を設けたものである。そうしてみると、本発明の「直列」というのは単独の精米機により搗精していた米粒の全部を次段の精米機で搗精する構造に限定される。
これに対し被告製品は、単一の精米機の中に第一精米部A、第二精米部B及び第三精米部Cを設けているところ、搗精されるべき米粒は第一精米部Aから第二精米部B及び第三精米部Cへ流れるにあたり、逆Y字形状の二方向分配器により米粒を分流して搗精していて、第二精米部B及び第三精米部Cは並列的に設置されており、直列ではない。
2(一) 請求原因七2(一)のうち、(1)は、「送穀室92、92’とに跨がるように臨ませ」とある部分を否認し、その余は認め、同(2)は、否認する。
(二) 本発明は、「精白室」に加湿装置を設けた構造である。
(1) 本発明の精白室は、精白室内に加湿装置を設け、白米粒面に適度の湿度を添加して糊粉層を軟質化して精白し白米粒面を美麗面にするため、多孔壁除糠精白筒を設けて精白するものであるから、本発明の精白室は、右の多孔壁除糠精白筒を備え、それによる除糠除水琢磨作用を行うことを要件とするものである。即ち本発明は、特許請求の範囲において「多孔壁除糠精白筒を設けた複数個の精白室」を要件としているが、これは精白室は多孔壁除糠精白筒を設けているものであることを要件としているものに他ならない。
(2) 本件公報に記載されている実施例の図面、特許願に添付した図面を見ても、実施例の精白室は、多孔壁除糠精白筒が存在する部位に限られていて明らかに送穀室を含んでおらず、また加湿装置が設けられている部分についてみても、送穀室内の主軸には加湿装置を設けておらず、精白室内を貫通している主軸に設けられている。
(3) 本発明と同じ発明者等にかかる出願についてみると、乙第一号証ないし乙第四号証に示すように、精白室に送穀室を含むものとは理解していない。むしろ精白室には送穀室を含まないと理解するのが、両者の作用の違いあるいは精白室という用語の意味からして通常の解釈と思われる。
本発明の出願とほぼ同時期である昭和五一年二月から同年四月にかけて、発明者を同一にする特許願に添付された実施例図五通を見ても、乙第一二号証ないし乙第一六号証に示すとおり、いずれも精白室は、送穀室の部分を含んでいない。また乙第一三号証には、「多孔壁除糠精白筒10を設けた湿式摩擦精白室11」との記載、乙第一五号証には、「多孔壁除糠精白筒8内に摩擦式精白転子9を軸装してなる摩擦式精白室」との記載があり、これらからしても、多孔壁除糠精白室は、多孔壁除糠精白筒内に存し、しかも精白転子を備えている部分を指し、精白室内に穀粒を送る作用を担う送穀部分を含まないことは明らかである。
(4) 本発明の精白室は、「適量の加湿により硬質化した米粒面を軟質化し精白作用と同時に発生する活発な除糠除湿琢磨作用によって米粒面を払拭状に斑なく精白」(本件公報2欄二一行から二四行)する作用を行う部位である。そうしてみると、本発明の精白室は加湿装置が設けられている部分で、もっぱら搗精を行い除糠除湿琢磨作用をする部位を指し、これらの作用を有しない送穀室は精白室に含まれないものである。
また本発明の特許請求の範囲は、「終末行程または終末行程寄りの行程」に精白室を設けた構成であるが、その「行程」とは搗精行程のことを指している。したがって本発明の精白室は、搗精作業を担っている場所であり、その搗精作業というのはもちろん「多孔壁除糠精白筒」及び「加湿装置」を備えた精白室での搗精を指しており、したがって本発明の場合搗精を行わない部分、例えば送穀室は搗精行程に含まれないので精白室というべきではない。また本件公報の発明の詳細な説明の項には、「搗精行程の改良にかかるもので」、「搗精行程の精白能率を増大し」などの記載があって、これらによっても「搗精」とは精白室での精白作用を指していることは明らかであり、本発明の精白室は精白作用を行うために必要な構成のすべてを備えている場所として送穀室を含まない概念である。
これに対し被告製品は、第三精米部Cに米粒を送る送穀室92、92’に加湿装置を設けた構造であり、精白室内に何ら加湿装置を設けていない。
(三) 本発明は、精白室内に加湿装置を設け精白室内の白米粒面に直接加水するような構造である。即ち本発明は、白米粒面に直接加水することにより硬質化した粒面皮膚特に糊粉層を軟質化して精白する精米方法を採用しているものである。
しかし被告製品の第三精米部Cに設けた加水ノズルは、送穀室の内壁に向くよう設置されているので、加水ノズルから出た粘液を送穀室の内壁面に付着させるとともに、この水に送穀室内に送られてきた糠粉を吸着させて吸水糠の層を形成させ、かつこの糠は螺旋転子により攪拌される米粒により十分こねられて粘性の高い粘土糠となる。米粒はこの粘土糠に覆われた状態で摩擦攪拌室に送られ、水分はこの粘土糠を介して間接的に米粒表面に付与されるので、米粒への水分の浸透は緩慢であるうえ、水分添加と精白作用の間に時間的間隔があり、摩擦攪拌室での除糠除水も緩やかに進行する。このように被告製品の精米方法においては、水分の添加は間接的で、加水による米粒のひび割等を防ぐことができるし、除糠除水を急速に行う必要もない。これに対し本発明の加湿は直接的で、米粒への水分の浸透は急速に行われる。この点被告製品と本発明とは精米理論が異なる。
(四) 本件公報における、「このような加湿装置を用いる搗精行程は玄米に対する歩留すなわち歩留率が九四パーセント以後に進行した場合に限り本発明の目的に対して有効で」との記載、「例に歩留率九四パーセント以前の搗精が容易な行程において加湿しても澱粉層には到達しないから無効である」との記載などからすれば、本発明の加湿装置を設けた精白室は歩留率が九四パーセント以後に進行した玄米に限り妥当するものである。
これに対し被告製品の場合、送穀室における加湿は、右(三)記載のように構成が異なるため、加湿する前提としての搗精度は四分ないし九分搗きの玄米(歩留率九六・八ないし九二・八パーセント)が妥当し本発明と異なる。
(五) 本発明の加湿には、水液、温風、蒸気を用いるが、粘性を有する水溶液を使用する構成となっていない。即ち本発明は直接米粒面に加湿することにより、水分が容易に澱粉層まで到達することを前提としているのに対し、水溶液が粘性の場合容易に澱粉層まで到達しないため、粘性の水溶液の添加は本発明の加湿の内容に含まれない。容易に澱粉層に到達しない場合澱粉が粘り、かえって米粒面を汚損するので適当でないとの記載からも、粘性ある水溶液が本発明の作用を達しないこと明らかである。これに対し被告製品は、粘性を有する水溶液を添加している。
3 なお複数個の精白室を直列に配設し、その終末行程又は終末行程寄りの行程の精白室に加湿装置を設けるという構成に関し、乙第二一号証には終末行程に混水式精穀機を配設した構成が、乙第二二号証には円筒内を三区画に区切りその終末行程寄りである第二区画部に水分を添加する構成が、乙第二三号証には精白室を二つに区切り多孔粗面体でなる研磨胴の次に溶液混入装置を設けた構成が、乙第二四号証には研磨円筒の前に設けた攪拌混合筒に液剤注加口を設けた構成がそれぞれ公知例として示されている。このような公知例の存在からすると本発明は無効原因を包含するため、本発明の構成を合理的に解釈するならば、本発明の構成要件は、精白室は各々単独の精米機に設けられ、その精米機を直列に配設し、加えて精白室内の白米に直接水分を添加するような構成であり、しかも搗精する米粒は歩留率が九四パーセント以後に進行したものに限られるというべきである。
4 請求原因七3、4は否認し、同5は争う。
五1 請求原因八1は否認する。原告が主張する設置、納入先のうち、被告製品と同一の構造を有する精米機の設置、納入先は、埼玉南部米穀株式会社と山梨県米穀株式会社のみであり、その余の設置、納入先については、被告製品と第三精米部Cの構造が異なる。
被告は、昭和六一年頃から「BS型」精米機を製造販売していたが、昭和六二年頃から「CS型」精米機を製造販売するようになった。「BS型」及び初期のころの「CS型」精米機の送穀室内の螺旋転子の螺旋は、一定の間隔をもって構成されていたが螺旋のピッチが狭い形状のものであった。「CS型」精米機は、昭和六三年四月頃から螺旋転子の構成を、右初期の頃の螺旋転子の螺旋の一部のピッチを広くした本件訴訟の対象である被告製品のような構成の螺旋転子とした。
更に「CS型」精米機については、平成二年一一月頃から、螺旋転子の螺旋をピッチは一定であるが、昭和六二年頃の初期の形状に比較するとピッチが長い螺旋転子に変更した。
したがって、原告主張の一覧表に記載されている「CS型」精米機のうち、納入時期が昭和六三年四月以前のものは、元は「BS型」精米機であった精米機の部品を交換して「CS型」精米機に変更したものも含めていずれも別紙物件目録記載の被告製品のような螺旋転子を備えていなかった。その後部品の交換により被告製品のような螺旋転子を備えることになったものが、前記の二社へ設置、納入したものである。
2 同2は否認する。
3 同3は争う。精白室において加水する構造はすでにほかに多く特許権があり、被告製品の第三精米部Cの場合、本発明と異なる精米方式を採用していること、各精米部に比べて第三精米部Cの搗精率が低いこと、本発明にかかる部品の占める割合などが低いこと、加水精米機が公知の物で開拓に多額に費用を要する発明でもないことからすると、本件特許の実施料率はせいぜい〇・〇五パーセントである。
4 同4は争う。損害賠償請求権は、各共有者が自己の持分についてのみ行使すべきものである。
六 請求原因九は争う。
第四 証拠関係
証拠関係は本件記録中の証拠に関する目録記載のとおりである。
理由
一 請求原因一ないし四は、当事者間に争いがない。
二 成立に争いのない甲第一号証(本件公報)及び弁論の全趣旨によれば、請求原因五を認めることができる。
三 請求原因六中、別紙物件目録三、構造の説明、3、(第三精米部C)の末尾から六行目及び五行目に「送穀室92、92’とに跨がるように臨ませて」とある部分は、当事者間に争いのない別紙物件目録第6図ないし第8図によってこれを認めることができ、その余の部分については当事者間に争いがない。
四 請求原因七(本発明と被告製品の対比)について判断する。
1 構成要件aについて
(一) 別紙物件目録によれば、被告製品は、上段から、初期行程として第一精米部A、中期行程として第二精米部B及び終期行程として第三精米部Cを順に配設してなる搗精行程を構成するもので、第二精米部Bには多孔壁除糠筒12の内部に摩擦攪拌室15が形成され、第三精米部Cには二個併置した多孔壁除糠筒23、23’の内部にそれぞれ摩擦攪拌室26、26’が形成されている構成を有するものということができる。
右のような構成の被告製品は、それぞれ多孔壁除糠筒を設けた第二精米部Bと第三精米部Cとの複数の精白室をその順に配設しているものであるから、第二精米部Bと第三精米部Cは直列に配設したものということができ、かつ、第一精米部A、第二精米部B、第三精米部Cの順に精白の対象となる米を通過させることにより搗精行程を構成するものであるから、流れ搗精行程を設けたものということができる。
したがって、被告製品の構成は、本発明の構成要件aを充足すると認められる。
(二) 被告は、本発明は、全行程において多孔壁除糠精白筒を有する精白室を複数個設置した構成である旨第三、四1(二)のように主張する。しかし、本発明の特許請求の範囲の文言からすれば、本発明は、多孔壁除糠精白筒を設けた精白室が複数個、即ち二個以上存在することを要件とすることは明らかであるが、全行程の精白室において多孔壁除糠精白筒を設けることが要件であるとは認められないし、本件公報中の発明の詳細な説明の記載によっても、全行程の精白室において多孔壁除糠精白筒を設けることが本発明の必須の要件であるとも、また、そうするのでなければ、本発明が予定した精米能率及び精白米が得られないものとも認められない。また発明の詳細な説明に記載された実施例において、多孔壁除糠精白筒が全行程の精白室に設けられているからといって、本発明の技術的範囲がそのようなものに限定されるものではない。したがって、被告の右主張は採用できない。
(三) 被告は、本発明の複数個の精白室とは、精白室を有する独立の精米機を複数個配設したことである旨第三、四1(三)のように主張する。しかし、本発明の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明中には、そのように限定して解釈すべき根拠を認めることはできないのみか、成立に争いのない甲第三号証によれば、昭和三二年二月五日に特許出願され、後に実用新案登録出願に変更され、昭和三四年二月一一日に実用新案出願公告(実用新案出願公告昭三四-一六四三号)された考案について、精米機と研米機が一個の機体の中に設けられた構成が開示されていることが、成立に争いのない甲第八号証によれば、昭和四八年六月二日に実用新案登録出願され、昭和五〇年二月四日に公開(実開昭五〇-一〇七六四号)された考案について、第一精米室と第二精米室が中間タンクで接続された二段式精米機が開示されていることが、成立に争いのない甲第九号証によれば、昭和三八年三月二七日に特許出願され、昭和四〇年五月七日に特許出願公告(特許出願公告昭四〇-八七七四号)された発明について、一個の精米機中の直列精米行程の初期に除糠筒噴風摩擦精白室を設け、その後に除糠筒研削精白室が設けられた蒸米の精米装置という構成が開示されていることがそれぞれ認められ、右認定によれば、本件特許出願当時、複数個の精白室を単一の精米機の中に設けるといった技術は公知のものであったと認められるから、右の構成を本発明がことさら排除しているものとは認められない。
そして、本件公報に記載された実施例、あるいは被告主張の本発明の発明者である佐竹利彦の別件発明の明細書に記載された実施例が、すべて精白室を別個の精米機に一個ずつ設けるもので、一個の精米機中に複数の精白室を有するものではないとしても、それをもって本発明の技術的範囲が、すべての精白室が別個の精米機に一個ずつ設けられているものに限定され、単一精米機の中に複数の精白室を設けた構造のものは含まれないと解されるものではない。また当事者間に成立に争いのない乙第二〇号証によれば、昭和五二年一月二二日に原告が実用新案登録出願をし、その後特許出願に変更され、昭和六〇年一一月二七日に特許出願公告(特公昭六〇-五三六五一号)された発明は、多孔壁除糠精白筒等からなる精白室を上下に連設して直列行程とし、その下部精白室排出口に連絡した揚穀機によって、加湿装置を備えた多孔壁除糠精白筒等からなる精白室に連絡したものであり(特許請求の範囲第1項の記載、同公報1欄二行から九行)、その目的は、「九〇%前後の搗精率に精米するには必然的に二個の精白室を直列に通過させねばならないし、加湿精米においては必ず加湿精白室を直列に二回通過させないと目標の超光沢白米を搗精することができない」(同公報2欄六行から一〇行)ところ、「これらの精白室を無加湿と加湿の両精米を任意に行えるようにするには2個ずつの無加湿・加湿の異種精白室を並行状に隣接して単一機枠に収蔵することにより簡潔な小型化が期待できる」(同公報2欄一〇行から一四行)というものであるから、右発明は一個の精米機中に複数の精白室を含む構造のものを前提として、その組合わせの点に進歩性があるとして出願がなされたものであって、単一精米機の中に複数の精白室を設けた構造自体を新規な技術として出願しているものではないと認められるから、右に関する被告の主張も採用できない。
(四) 被告は、本発明における「直列」とは、前段階の一個の精米機で搗精された米粒の全部を次段に配設した一個の精米機が搗精するように配設された構成をいうものである旨第三、四1(四)のように主張する。
被告製品においては、搗精されるべき米粒が、第二精米部Bから第三精米部Cへ流れるにあたり、第二精米部Bの排米口19の下方位置に配設された二方向分配器21により米粒を分流して、第三精米部Cでは二個併置された精白室で搗精しているけれども、それは単に第三精米部Cにおいてその搗精作業を二つの精白室に分けて行っているというに過ぎず、第三精米部Cの二つの精白室のどちらの一個について見ても、前段階の第二精米部Bの精白室との関係は直列に連結されているものであり、この精白室のどちらを通過する行程も直列の流れ搗精行程であると認められるから、被告の右主張は採用できない
2 構成要件bについて
(一) 別紙物件目録及び前記三に認定した事実によれば、被告製品は、第一精米部A、第二精米部B、第三精米部Cと順に配列された流れ搗精行程の中の終末行程である第三精米部Cに、加湿装置である送水系統に接続した加水ノズル部51、51’を、攪拌室93、93’と送穀室92、92’とに跨がるように臨ませて設けた構成を有するから、被告製品は、本発明の構成要件bのうち、その流れ搗精行程の終末行程又は終末行程寄りの行程に加湿装置を設けることを具備していることは明らかである。
そこで、被告製品においてノズル部が設けられたのが精白室であるか否かについて検討する。
「室」の語は、一般に、「へや。むろ。」、「建物の内で定まった人の用にあてる区画」等の意味を有するが、機械等の一部を指す場合には、機械の中で一定の機能を果たすものとして区画された空間を指す語として用いられることがあることは当裁判所に顕著であり、「精白室」の語も、精白するための区画された空間の意味と解することができる。
前記甲第三号証、成立に争いのない甲第四号証ないし甲第六号証によれば、昭和三四年二月一一日、実用新案出願公告昭三四-一六四三号をもって公告となった精米機と研米機とを一体的に組み込んだ装置についての考案、昭和四九年一二月一三日、実用新案出願公告昭四九-四五五七八号をもって公告となった第一精白室と第二精白室を連結して組み込み一体化した装置についての考案、昭和五一年九月九日、実用新案出願公告昭五一-三六九三四号をもって公告となった精穀機と計量器を一体化した精穀機における精白米の計量取出装置についての考案、昭和五四年八月一五日、実用新案出願公告昭五四-二四〇五六号をもって公告となった精穀機における精白ロールの逆転による砕穀粒の防止装置についての考案のそれぞれについて、考案の詳細な説明及び実施例についての図面において、精白室あるいはそれと同義の搗精室ないし精白筒とされる部分に、精米ロール、精白転子、搗精ロール、精白ロールの精白突条を有する部分に対応する部分のみではなく、精米対象の米粒の供給口から精白ロール等のある部分への送穀作用を営む送米ロール、移送螺旋、送穀螺旋に対応する部分をも含むように指示説明がなされていることが認められ、右によれば、精米機の技術分野において、精白転子等に対応する部分のみでなく送米ロール等に対応する部分も含めて精白室と表現することがあることが認められる。右の場合、供給口の直後から排出口の直前までの空間全体を精白作用を行う空間として把握表現しているものと認められる。
他方、成立に争いのない乙第一号証ないし乙第四号証によれば、精米機の供給口から排出口までの連続した空間の、螺旋形の送穀転子に対応する部分と、螺旋転子に対応する部分を区別して、前者を送穀筒、外筒等と表現し、後者を精穀室、精白室、精白筒等と表現する用語例もあることが認められる。
本件公報によれば、「精白室」の語は、発明の詳細な説明中で、本発明の一般的説明として「本発明は複数個の精白室を直列に連設してなる流れ作業方式を用いた量産用搗精行程の改良に係るもので」(本件公報1欄七行から九行)、「従来の量産用流れ作業の搗精行程は単に乾式精白作用のみの精白室を直列に配設したに過ぎないので」(本件公報1欄一二行から一四行)と、実施例についての説明として、「精白室1、2、3を揚米機4、5により直列行程に配設して一貫流れ作業の搗精行程を形成し」(本件公報2欄一一行から一三行)、「精白室1、2を経てほぼ歩留率九二%程度に搗精された白米が精白室3に移され」(本件公報2欄二〇行から二二行)等のように用いられていることは認められるが、送穀作用を行う部分を別の語で表現して区別していることは認められず、全搗精行程を構成する個々の搗精行程を更に細かく区分して送穀作用を行う部分と区別された意味で精白室の語が使用されているというよりも、むしろ、全搗精行程を構成する個々の搗精行程で精白作用が行われる一個の空間全体を指すものとして精白室の語が使用されているものと解するのが相当である。
技術的観点から検討しても、本件公報によれば、「本発明は全搗精行程の終末行程または終末に近い行程にある精白室に加湿装置を設け、白米粒面に適度の湿度を添加して硬質化した粒面皮膚特に糊粉層を軟質化し精白により発生する糠粉を粒状化して流面を払拭し、点在する硬質皮膚部を除去して平坦な美麗面となし、併発する琢磨作用により強度の光沢面となすものであ」り(本件公報1欄一九行から二五行)、本発明のうち「加湿装置を用いる搗精行程は玄米に対する歩留すなわち歩留率が九四%以後に進行した場合に限り本発明の目的に対して有効で、実験によると歩留率九二~九一%の中間白米を九一~九〇%の歩留率までの精白度に仕上げるために玄米に対し約一%に相当する糠粉を発生する過程において加湿するのが最も有利である」(本件公報1欄二六行から2欄五行)とされていることからすると、本発明は、精白の対象となる米粒の精白度を基準に、歩留率が九四%以後に進行した段階で加湿すればその目的を達成できるものであるところ、それを装置の構成として表現するに当たり、終末行程または終末行程寄りの行程に配設した精白室に加湿するものとしていると認められ、加湿場所は、多孔壁除糠精白筒に覆われた部分に限られ送穀作用を行う部分を除外しなければ目的を達成できないものとは認められない。
以上の事実によれば、本発明による精白室とは、個々の搗精行程で、精白作用が行われる一個の空間全体、即ち、多孔壁除糠精白筒に覆われた部分を含むことは当然であるが、同一空間内でのその前段階の例えば送穀作用を行う部分を含むものと認められる。
(二) 別紙物件目録、特にその第四図、第六図ないし第八図の記載及び弁論の全趣旨によれば、被告製品の第三精米部Cは、原告の主張によれば、攪拌室93、93’、送穀室92、92’及び摩擦攪拌室26、26’と、被告の主張によれば、送穀室92、92’及び摩擦攪拌室26、26’と表現されているが、その実質を見れば、筒体16、16’及びそれに連接して設けられた多孔壁除糠筒23、23’と、共通の主軸35、35’に固定された攪拌転子94、94’、螺旋転子25、25’(被告は、攪拌転子は螺旋転子の一部であるとする。)及び摩擦攪拌転子24、24’と、の間に形成された、給米口27、27’から排米口28、28’に設けられた圧迫板29、29’に至る各一個の空間であること、並びに、被告製品の第三精米部Cでは原告の主張する攪拌室においても、送穀室においても(従って、被告の主張する送穀室においても)、送穀作用と攪拌作用が行われているところ、右の送穀作用は、その先に位置する摩擦攪拌室へ米粒を送って、圧迫板の圧迫力とあいまって米粒に圧力を加え、摩擦攪拌室において米粒間の摩擦力を高めつつ、攪拌転子により攪拌し、米粒相互間で摩擦することにより搗精作用を行うという、搗精作用にとって不可欠な一作用を担っているもので、前記給米口から圧迫板に至る一個の空間全体が精白作用を行っていることが認められる。
右のような精白作用を行う一個の空間全体は、前記(一)に認定した、本発明の精白室、即ち、個々の搗精行程で精白作用が行われる一個の空間全体に相当するものである。
したがって、被告製品の、攪拌室93、93’と送穀室92、92’とに跨がるように臨ませて設けられた構成は、本発明の構成要件bのうち「精白室に加湿装置を設ける。」に該当するものと認められる。
(三) 本件公報によれば本発明の実施例においては、加湿装置が設けられている部分が多孔壁除糠精白筒が存在する部位に限られていて、送穀作用を行う部分は明らかに含まれていないことが認められるが、そのことをもって本発明の技術的範囲が当然に右実施例に開示された範囲に限定されるということはできない。また、本発明と同じ発明者等にかかる出願において、精白室として送穀作用を行う部分が含まれていないとしても、そのことから本発明の技術的範囲を被告主張のように限定しなければならないものではない。
被告は、被告製品と本発明は精米理論が異なる旨第三、四2(三)のように主張する。
しかしながら、本発明は精白室に加湿装置を設けることを要件とするものではあるが、加湿装置の加水方式について直接米粒に添加するものに限定されるとする根拠はないから、仮に被告製品が被告の主張するように第三精米部Cにおいて、米粒に対し粘土糠を介して間接的に水分を添加しているとしても、本発明の構成要件bを充足するものと認める妨げとはならない。
被告は、被告製品と本発明では、加湿をする搗精度が異なる旨第三、四2(四)のように主張する。
しかしながら、被告の主張によっても、被告製品の第三精米部Cにおいて加湿する段階での搗精度が歩留率九四ないし九二・八パーセントの範囲で本発明と一致しているのであって、少なくともこの限度では本発明と同等の目的を達成することができるものと認められ、被告の右主張は採用できない。
被告は、粘性を有する水溶液を添加する被告製品は、本発明の加湿とは異なる旨第三、四2(五)のように主張する。
しかしながら、本件公報によれば、発明の詳細な説明として、「本発明に用いる加湿には水液、湿風、蒸(蒸気の誤記と認める。)等を用い、これを加熱して使用する場合もある。」との記載があることが認められ、本発明の加湿に用いられる水分は、水液と言えるものであれば足りるものと認められるところ、別紙物件目録によれば、被告製品は、水道管63から水タンク62aに取り入れた水をポンプ58a、58’aで送水し、パイプを介して、加水ノズル部51、51’の加水ノズル54a、54b、54’a、54’bから添加するものであるから、粘性を有するとしても、水液と言うことのできるものと認められ、被告の右主張も採用できない。
(四) 被告は、本発明に先行する公知技術を考慮すると、本発明は無効原因があるから、構成要件bは限定して解釈すべきである旨第三、四3のように主張する。しかしながら、
(1) 成立に争いのない乙第二一号証によれば、麦粒についての精穀方法に関し昭和三五年二月四日に特許出願公告された発明についての公告公報(昭三五-七一六号)には、傾斜角度と廻転数とを調節できる傾斜式精穀機を複数設け、その傾斜式精穀機の間に除糠機を介在させるとともに、傾斜式精穀機の最終機とその次の混水式精穀機との間に除糠機を連設したことを特徴とする精穀方法が記載されているものと認められるが、その混水式精穀機が多孔壁除糠精白筒を設けた精白室に加湿装置を設けたものと認めるに足りる証拠はない。右によれば、右公報記載の発明は、そもそも麦粒についての精穀方法に関するものであるうえ、その混水式精穀機が本発明におけるような多孔壁除糠精白筒を設けた精白室に加湿装置を設けたものとは認められない。
(2) 成立に争いのない乙第二二号証によれば、精白研磨法及びその装置に関し昭和三六年六月一九日に特許出願公告された発明についての特許公告公報(昭三六-八〇二〇号)には、円筒内を三区画に区切りその中間行程である第二区画部に油剤、水、薬液等所要の噴霧を行う構成が記載されているものと認められるが、右公報に記載されたものは、急速回転する研磨転子によって、その急速回転を利用してそれ自体に噴気力を起こし噴気と噴霧を区画的に作用させ排糠、油剤や薬液等の付着とその乾燥を同一精穀筒内において行い簡便に栄養豊富な無洗米を作ろうとするものであり、右の油剤や薬液等の付着は栄養を加味するため、ないし噴気による過度の乾燥を調整するためのものと推認され、これを精白作用のために利用するものとは認められず、したがって複数個の精白室を直列に配設した流れ搗精行程における終末行程寄りの行程に配設した精白室に加湿装置を設けた構成であるとは認められない。
(3) 成立に争いのない乙第二三号証によれば、研米方法及び研米装置に関し昭和三九年二月二七日に特許出願公告となった発明についての公告公報(昭三九-一九九〇号)には、普通に搗精した精米を更に研米することにかかる発明、具体的には、搗精された精米に研磨胴による除糠作業を経させたうえで、栄養剤調味料等白米に不足する栄養分を表面に付着させた後、再び研磨を行い、きれいな味のよい栄養豊富の白米とする研磨方法及びその装置についての発明が記載されていることが認められる。右認定によれば、右の栄養剤調味料等の添加は精白作用のためのものではなく、また右装置は多孔壁除糠精白筒を設けた精白室も有するものとも認められない。
(4) 成立に争いのない乙第二四号証によれば、精米装置に関し昭和三六年九月二日に特許出願公告された発明についての公告公報(昭三六-一五〇七六号)には、穀粒が搗精機において精白を行い所定の精白度に至ったとき除糠円筒内に送り込み、そこで攪拌転子によって、順次攪拌移送しながら金網目から除糠した後、研磨円筒の前に設けた攪拌混合筒を通過するが、その入口において、水、油脂、栄養剤等を添加する液剤注加口を設けた発明が記載されており、その液剤添加の目的は、水分の場合は噴風搗精により穀粒の乾燥の過ぎた場合に湿度を調整することにあり、その他の液剤については、米の種類に応じて脂肪の補給や栄養素を加えていずれの産地種類のものにおいても優良の精米状態に保持させるようにしようとするものであることが認められる。右認定によれば、この発明は、液剤添加の目的において水分を添加して精白作用に利用することを目的とする本発明と異なり、構成において、精白室に加湿装置を設けたものとは認められない。
(5) 右(1)ないし(4)認定の事実によれば、乙第二一号証ないし乙第二四号証記載の発明は、いずれも本発明と異なり、多孔壁除糠精白室を設けた複数個の精白室を配設した流れ搗精行程において、終末行程寄りの行程に配設した精白室に加湿装置を設けたことを特徴とするという構成のいずれか一部を備えているものとは認められず、右各乙号証の公知事例の存在によって本発明に無効事由があるものとは認められず、被告の前記主張は採用することができない。
3 構成要件cについて
被告製品は、加湿装置を設けた精米装置であるから、湿式精米装置であり、かつ右1、2のとおり構成要件a、bを具備するものであるから、構成要件cを具備する。
4 以上によれば、被告製品は、本発明の構成要件aないしcを充足しており、本発明の作用効果と同一の作用効果を奏するものと認められるから、被告製品は、本発明の技術的範囲に属するものと認められる。
五1(一) 原本の存在及び成立に争いのない甲第一七号証及び弁論の全趣旨によれば、被告は、昭和六一年一一月頃から昭和六三年三月頃までの間に、被告製品を別紙納入先一覧表の番号<1>ないし<14>のとおり一七台、製造、販売したことが認められる。
これを越える製造、販売を認めるに足りる証拠はない。
特許法一〇三条により、被告は右の製造、販売によって本件特許権を侵害したことについて、過失があったものと推認される。
(二) 被告は、別紙納入先一覧表記載の納入先の内被告製品を納入したのは二社二台のみである旨第三、五1のとおり主張する。しかしながら、前記甲第一七号証によれば、被告により昭和六三年三月付けで作成された「東洋セラミック精米機納入先一覧表」と題する書面に、右(一)に認定した一七台の納入先が被告製品であるCS-一〇〇の納入先として記載されているところ、本訴において被告が製造販売している被告製品「東洋セラミック精米機CS-一〇〇B、CS-一〇〇BE」型について、原告が平成二年一二月三日の第一一回口頭弁論期日において、同日付け準備書面を陳述して別紙物件目録記載のものであると主張したのに対し、被告は、平成三年一月二三日の第一二回口頭弁論期日において、同日付け準備書面を陳述して、右物件目録中の三、構造の説明、3、(第三精米部C)の末尾から六行目及び五行目の部分を除き右物件目録の記載を認めていたことは記録上明らかであり、このような本件の弁論の経過に照らせば、前記甲第一七号証に記載されたCS-一〇〇の型式番号の製品は、別紙物件目録記載のとおりの構造(争いのある部分については前記三に認定のとおり)を有していたものと推認される。また、仮に別紙納入先一覧表に記載された納入先へ納入された製品が被告の主張のとおりであったとしても、被告製品の東洋セラミック精米機CS-一〇〇型との違いは、螺旋転子のピッチの幅に過ぎないのであるから、それら製品の構成は、いずれも本発明の技術的範囲に属すると認められ、いずれにせよ被告は前記(一)認定の一七台の東洋セラミック精米機CS-一〇〇型の製造販売について、本件特許権の侵害による損害賠償の責任を免れない。
2 弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一九号証及び甲第二〇号証によれば、被告製品の販売価格は一台につき少なくとも二〇〇〇万円であったものと認めることができる。
3 国有特許権を第三者に実施許諾する場合に使用される国有特許権実施契約書(官有特許運営協議会決定、昭和二五年二月二七日特総第五八号、改正昭和四二年五月二六日特総第五三三号、改正昭和四七年二月九日特総第八八号、特許庁長官通牒)の記載中、実施料算定方法の項の記載によれば、国有特許の実施許諾契約において実施料算定の基準となる基準率は、販売価格を基礎とする場合、実施価値上のものは四パーセント、実施価値中のものは三パーセント、実施価値下のものは二パーセントと定められていることは当裁判所に顕著である。前記甲第一号証によれば、本発明は「従来の量産用流れ作業の搗精行程は単に乾式精白作用のみの精白室を直列に配設したに過ぎないので仕上げ白米の精白度が近づくと米粒面の硬質化により急激に精白能率が低下し、精白度が進行せず、糊粉層の除去が非常に困難で粒面に糠粉の遊離糠が点着し、容易に払拭状の美麗面と強度の光沢面を期待することができなか」った(本件公報1欄一二行から一八行)のに、「本発明は全搗精行程の終末行程または終末に近い行程にある精白室に加湿装置を設け、白米粒面に適度の湿度を添加して硬質化した粒面皮層特に糊粉層を軟質化し精白により発生する糠粉を粒状化して流面を払拭し、点在する硬質皮層部を除去して平坦な美麗面となし、併発する琢磨作用により強度の光沢面となすものである」(本件公報1欄一九行から二五行)ことが認められる。また、これまでに認定したように、被告製品は本発明の技術的範囲に属するものであるが、弁論の全趣旨によって真正に成立したものと認められる乙第一一号証によれば、被告は被告製品のパンフレットにおいて、被告製品に採用されている第三精米部Cの精白方法が優れていることを強調していることが認められる。
半面、別紙物件目録から明らかなように、被告製品の精米装置は、第一精米部Aから第三精米部Cの三つにわかれており、本発明は第二精米部B及び第三精米部Cの構成についての発明である。また、原告自身も本発明の相当実施料率を主張するに当たって、当庁平成元年(ワ)第三七四三号事件の請求の基礎となっている特許権の存在から、被告製品における本発明の利用率を四分の一と算定していることは原告の主張から明らかである。これらの諸事実を総合考慮すると、原告が被告製品における本発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額は、原告主張のとおり被告製品の販売価格の一パーセントを下回らないものと認められ、これに反する被告の主張は、右に判断したところに照らし採用できない。
そうしてみると被告による本発明の侵害により、本件特許権の権利者が被告に対し請求することができる損害額は、
二〇〇〇万円×〇〇・一×一七台=三四〇万円
であると認められる。
4 ところで、本件特許権は原告と訴外社団法人日本精米工業会との各持分二分の一の共有である。
特許権が侵害されたことによる損害賠償請求権は金銭債権として可分のものであるから、侵害された特許権が共有のものであるとき、各共有者は共有持分に応じた損害賠償請求権を取得するものである。したがって原告は、前記損害賠償請求権の内持分に応じた二分の一の損害賠償請求権のみを取得したのであるから、原告は前記三四〇万円の二分の一に当たる一七〇万円の損害賠償請求権を取得したものである。これに反する原告の主張は採用できない。
六 よって、原告の本訴請求は、被告製品の製造、譲渡、譲渡又は貸渡のための展示の差止め、被告製品及びその半製品の廃棄並びに損害賠償金一七〇万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成元年四月一四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行宣言について同法一九六条一項を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 櫻林正己 裁判官宍戸充は差支えのため署名押印できない。 裁判長裁判官 西田美昭)
<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告
<12>特許公報(B2) 昭60-10778
<51>Int.Cl.4B 02 B 3/06 識別記号 105 庁内整理番号 6685-4D <24><44>公告 昭和60年(1985)3月20日
発明の数 1
<54>発明の名称 湿式精米装置
<21>特願 昭51-19132 <65>公開 昭52-102159
<22>出願 昭51(1976)2月24日 <43>昭52(1977)8月26日
<72>発明者 柴野正彰 船橋市芝山1-2-2
<72>発明者 佐竹利彦 東広島市西条西本町2番38号
<71>出願人 株式会社佐竹製作所 東京都台東区上野1丁目19番10号
<71>出願人 社団法人日本精米工業会 東京都千代田区麹町3丁目3-6
審査官 長沢健次
<57>特許請求の範囲
1 多孔壁除糠精白筒を設けた複数個の精白室を直列に配設した流れ搗精行程において、終末行程または終末行程寄りの行程に配設した精白室に加湿装置を設けたことを特徴とする湿式精米装置。
発明の詳細な説明
本発明は複数個の精白室を直列に連設してなる流れ作業方式を用いた量産用搗精行程の改良に係るもので、仕上げ白米に接近した搗精行程の精白能率を増大し、かつ白米粒面に強度の光沢を帯びさせ美化させるために開発させたものである。
従来の量産用流れ作業の搗精行程は単に乾式精作用のみの精白室を直列に配設したに過ぎないので仕上げ白米の精白度が近づくと米粒面の硬質化により急激に精白能率が低下し、精白度が進行せず、糊粉層の除去が非常に困難で粒面に糠粉の遊離糠が点着し、容易に払拭状の美麗面と強度の光沢面を期待することができない。
本発明は全搗精行程の終末行程または終末に近い行程にある精白室に加湿装置を設け、白米粒面に適度の湿度を添加して硬質化した粒面皮層特に糊粉層を軟質化し精白により発生する糠粉を粒状化して流面を払拭し、点在する硬質皮層部を除去して平坦な美麗面となし、併発する琢磨作用により強度の光沢面となすものであるが、このような加湿装置を用いる搗精行程は玄米に対する歩留すなわち歩留率が94%以後に進行した場合に限り本発明の目的に対して有効で、実験によると歩留率92~91%の中間白米を91~90%の歩留率までの精白度に仕上げるために玄米に対し約1%に相当する糠粉を発生する過程において加湿するのが最も有利である。
例に歩留率94%以前の搗精が容易な行程において加湿しても澱粉層には到達しないから無効であるだけでなく蛋白質の多い糠粉は粘り米粒面に膠着し、かえつて米粒面を汚損する欠陥となるものである。
実施例図について説明すると精白室1、2、3を揚米機4、5により直列行程に配設して一貫流れ作業の搗精行程を形成し、その終末行程にある精白室3に多孔壁除糠精白筒6と加湿装置7を備え、精白室3の主軸8を管軸となし管軸には噴風口すなわち加湿装置7と給風孔9を開口し、給風孔9は送風機10を経てボイラー11に連結され、その過程にヒーターー12と湿度調節用の吸風口13を設けたものである。
精白室1、2を経てほぼ歩留率92%程度に搗精された白米が精白室3に移され適量の加湿によつて硬質化した粒面を軟質化し精白作用と同時に発生する活ばつな除糠除湿琢磨作用によつて粒面を払拭状に斑なく精白し強度の光沢のある美麗な精白米を作るものである。
本発明は流れ作業の量産用搗精行程の末期行程に加湿精白除糠除水琢磨作用を用いて強い光沢のある美麗な稀白米を得る効果を有するものである。
本発明に用いる加湿には水液、湿風、蒸等を用い、これを加熱して使用する場合もある。
本発明に用いる加湿には水液、湿風、蒸等を用い、これを加熱して使用する場合もある。
図面の簡単な説明
図面は本発明の実施例側面図である。
1、2、3……精白室、4、5……揚米機、6……除糠精白筒、7……加湿装置、8……主軸、9……給風孔、10……送風機、11……ボイラー、12……ヒーター、13……吸風口。
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物件目録
別紙図面及びその説明書記載の製品は、被告の製造・販売にかかる「東洋セラミック精米機CS-一〇〇B、CS-一〇〇BE」型(以下これらを総称して被告製品という)である。
(図面の説明書)
一、図面の説明
第一図は正面図、第二図は右側面図、第三図は背面図、第四図は右側断面図、第五図は送穀螺旋及び精白筒の一部の位置を示す正面概略図、第六図は第三精米部Cの断面図、第七図は第六図のX-X断面図、第八図は第六図の前半部斜視図、第九図は加水ノズル部51の拡大斜視図、第十図は送水系統の説明図、第十一図は操作パネルの概略図である。
二、符号の説明
A…第一精米部 B…第二精米部 C…第三精米部
1…玄米誘導筒 2…シャッター 3…給米口
4…筒体 5…セラミックローター 6…螺旋転子
7…搗精室 8…排米口 9…圧迫板
10…送穀筒 11…軸 12…多孔壁除糠筒
13…摩擦攪拌転子 14…螺旋転子 15…摩擦攪拌室
16…筒体 17…圧迫板 18…給米口
19…排米口 20…発条 21…二方向分配器
22…送穀螺旋 23…多孔壁除糠筒 24…摩擦攪拌転子
25…螺旋転子 26…摩擦攪拌室 27…給米口
28…排米口 29…圧迫板 30…発条
31…調節ボルト 32…機枠 33…集糠ダクト
34…集糠ホッパー 35…主軸 36…通風孔
37…調車 38…電動機 39…調車
40…ベルト 41…軸 42…調車
43…電動機 44…調車 45…ベルト
46…調車 47…電動機 48…調車
49…ベルト 50…調車 51…加水ノズル部
52…通孔 53…取付体 54…加水ノズル
55…漏水防止リング 56…パイプ 57…パイプ
58…ポンプ 59…電磁弁 60…水フィルター
62a…水タンク 62b…水溶液タンク
63…水道菅 64…レベル計 65…突脈
66…射風孔 67…排米口 68…突脈
69…射風孔 70…調車 71…ベルト
72…重錘 73…操作パネル 74…運転ボタン
75…警報停止ボタン 76…非常停止ボタン 77…シャッター切替スイッチ
78…ポンプ切換スイッチ 79…リセットボタン 80…流量調整器
81…白度調節器 82…上段圧力調節器 83…上段回転数調整ボリウム
84…流液量調節ボリウム 85…電動機 86…圧送ファン
87…フレキシブルホース 88…フレキシブルホース 89…電流計
90…電流計 91…送穀室 92…送穀室
93…攪拌室 94…攪拌転子 95…送穀室
96…送穀筒
三、構造の説明
被告製品は、上段より第一精米部A、第二精米部B、第三精米部Cと順に配列し、これに送水系統及びその他を加えて成る。
1、 (第一精米部A)
玄米誘導筒1の下方にシャッター2を介して給米口3を設け、給米口3を送穀筒96と螺旋転子6との間に形成した送穀室95に臨ませる。送穀筒96に連接した筒体4の内部に、円筒体の周面部に一六本のセラミック製突脈を形成したセラミックローター5を位置させ、筒体4とセラミックローター5との間に搗精室7を形成して、搗精室7を送穀室95に連通する。螺旋転子6とセラミックローター5とを軸11に固定して回転自在に支持する。給米口3の反対側に排米口8を設け、排米口8には重錘72によって圧力調節自在の圧迫板9を設ける。軸11の一端に取付けた調車37と電動機38の端部に設けた調車39とをベルト40を介して連動連結する。
2、 (第二精米部B)
第一精米部Aの排米口8の下方に給米口18を設け、給米口18を円筒状の送穀筒10と螺旋転子14との間に形成した送穀室91に臨ませる。送穀筒10に連設して六角筒状の多孔壁除糠筒12を設け、多孔壁除糠筒12と摩擦攪拌転子13との間に摩擦攪拌室15を形成して、摩擦攪拌室15を送穀室91に連通する。摩擦攪拌転子13には二条の突脈65とその回転方向反対側に位置する射風孔66とを形成する。螺旋転子14と摩擦攪拌転子13とを中空状の軸41に固定して回転自在に支持する。軸41の開口端部に間隙を介してフレキシブルホース87の一端を連絡し、その他端を電動機85で駆動される圧送ファン86に接続する。
給米口18を送穀室91に臨ませ、これに連接した摩擦攪拌室15の反対側に排米口19を設ける。排米口19には圧迫板17を支架し、圧迫板17を発条20によって閉鎖方向に付勢する。排米口19の下方位置に二方向分配器21を配設し、二方向分配器21の排米口67、67'をそれぞれ送穀螺旋22、22'の一端上方に臨ませる。
軸41の一端に取付けた調車42と電動機43の端部に設けた調車44とをベルト45を介して連動連結する。
また、軸41には別の調車50を設け、ベルト71を介して送穀螺旋22、22'の他端に設けた調車70、70'に連動連結する。
3、 (第三精米部C)
送穀螺旋22、22'の端部の下方位置に給米口27、27'を設け、給米口27、27'を筒体16、16'と攪拌転子94、94'(但し、被告はこれらを後述の螺旋転子25、25'の一部と主張。以下被告A主張という)との間に形成した攪拌室93、93'(但し、被告はこれらを後述の送穀室92、92'の一部と主張。以下被告B主張という)に臨ませる。筒体16、16'の内部には攪拌転子94、94'(被告A主張)に連接して螺旋転子25、25'を設け、螺旋転子25、25'と筒体16、16'との間に攪拌室93、93'(被告B主張)に連通した送穀室92、92'を形成する。筒体16、16'に連接して多孔壁除糠筒23、23'を設け、多孔壁除糠筒23、23'と摩擦攪拌転子24、24'との間に摩擦攪拌室26、26'を形成して、摩擦攪拌室26、26'を送穀室92、92'に連通する。
摩擦攪拌転子24、24'には、二条の突脈68とその回転方向反対側に位置する射風孔69とを形成する。攪拌転子94、94'(被告A主張)と螺旋転子25、25'と摩擦攪拌転子24、24'とを中空状の主軸35、35'に固定して回転自在に支持する。摩擦攪拌室26、26'に排米口28、28'を設ける。排米口28、28'には圧迫板29、29'を設け、圧迫板29、29'は発条30、30'を介して調節ボルト31、31'でその圧迫力を調整可能とする。主軸35、35'は、排米口28、28'側の一端を閉鎖し、またその他端を開口した中空状とし、主軸35、35'の摩擦攪拌転子24、24'に対向する部分の周壁に複数の通風孔36を軸方向に連設する。
主軸35、35'の開口端部に間隙を介してフレキシブルホース88、88'の一端を連絡し、その他端を圧送ファン86に接続する。
主軸35、35'の一端に取付けた調車46、46'と電動機47、47'の端部に設けた調車48、48'とをベルト49を介して連動連結する。
第三精米部Cの撹拌室93、93'(被告B主張)と送穀室92、92'とに跨るように臨ませて(第六図乃至第八図に示す)加水ノズル部51、51'を設ける。すなわち加水ノズル部51、51'において、先端に細孔を有する加水ノズル54a、54b及び54'a、54'bを外部より通孔52a、52b及び52'a、52'bを介して撹拌室93、93'(被告B主張)及び送穀室92、92'の周縁の接線方向に差し込み、取付体53、53'にて固定する。55a、55b及び55'a、55'b(図示せず)は漏水防止リングである。
4、送水系統
水道管63を水フィルター60及び電磁弁59を介してレベル計64を備えた水タンク62aに連絡する。水タンク62aをポンプ58a、58'aの給水側に接続し、ポンプ58aの吐出側はパイプ57で配管し、途中でパイプ56a、56bに分岐し、加水ノズル部51の加水ノズル54a、54bに接続する。ポンプ58'aの吐出側はパイプ57'で配管し、途中でパイプ56'a、56'bに分岐し、加水ノズル部51'の加水ノズル54'a、54'bに接続する。
又、水タンク62aとは別に、水溶液タンク62bを設け、水溶液タンク62bをポンプ58b、58'bの給水側に接続し、ポンプ58bの吐出側はパイプ57に合流し、ポンプ58'bの吐出側はパイプ57'に合流する。
5、(その他)
略密閉状にカバーした機枠32の内部下方には集糠ダクト33に連通した集糠ホッパー34を設け、集糠ダクト33は機外へ延設して吸引ファンとバッグフィルターを有する集糠器(図示せず)に連絡する。
73は操作パネルであり、操作パネル73上には運転ボタン74、警報停止ボタン75、非常停止ボタン76、シャッター切替スイッチ77、ポンプ切替スイッチ78、リセットボタン79、流量調整器80、白度調節器81、上段圧力調節器82、上段回転数調整ボリウム83、流液量調節ボリウム84が設けてある。
また、本体の正面のパネルには、電流計89、90が設けられている。
以上
第1図
<省略>
第2図
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第3図
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第4図
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第5図
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第6図
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X-X
第7図
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第8図
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第9図
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第10図
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第11図
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納入先一覧表
(納入先) (機種) (台数)
<1>山形県庄内経済連 砂越精米センター CS-100BE 一台
<2>埼玉南部米穀(株) CS-100B 一台
<3>下田米穀(株) CS-100BE 一台
<4>山梨県米穀(株) 本社工場 CS-100B 一台
<5>中濃米穀卸(株) CS-100B 一台
<6>静岡県経済連 静岡工場 CS-100B 二台
<7>(株)ベイハン CS-100B 一台
<8>中山物産(株) CS-100B 一台
<9>大黒屋食糧(株) CS-100B 一台
<10>(株)マルエー食糧 CS-100B 一台
<11>東友精米(株) CS-100B 一台
<12>鹿児島くみあい米穀(株) CS-100B 二台
<13>第一食糧(株) CS-100B 二台
<14>全琉球商事(株) CS-100B 一台
<15>栃木県中央食飯 CS-100B 一台
<16>江口米穀(株) CS-100B 一台
右合計一九台
特許公報
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