東京地方裁判所 平成元年(特わ)254号 判決 1989年6月30日
本籍
東京都江戸川区北小岩七丁目一七〇番地
住居
同所七丁目三番一七号
会社役員
山口吉久
大正一四年一月一五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金四五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、株式会社山口シネマ等の代表取締役としてその経営に従事する傍ら、営利の目的で継続的に有価証券売買を行っていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、右有価証券売買を他人名義で行うなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和六〇年分の被告人の実際総所得金額が九〇三三万四五五四円あった(別紙一の(1)修正損益計算書参照)のにかかわらず、同六一年三月一五日、東京都江戸川区平井一丁目一六番一一号所在の所轄江戸川税務署において、同税務署長に対し、同六〇年分の総所得金額が四六〇四万三二二八円で、これに対する所得税額はすでに源泉徴収された税額を控除すると五五万六三二〇円の還付を受けることになる旨の虚偽の所得税確定申告書(平成元年押第四一四号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額二七八六万七五〇〇円と右申告税額との差額二八四二万三八〇〇円(別紙一の(2)脱税額計算書参照)を免れ、
第二 同六一年分の被告人の実際総所得金額が二億六六五〇万三四一一円あった(別紙二の(1)修正損益計算書参照)のにかかわらず、同六二年三月一二日、前記江戸川税務署において、同税務署長に対し、同六一年分の総所得金額が五一三九万三三六三円で、これに対する所得税額が一八二万一九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億五〇九三万三〇〇〇円と右申告税額との差額一億四九一一万一一〇〇円(別紙二の(2)脱税額計算書及び資産所得あん分税額計算書参照)を免れ、
たものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通
一 収税官吏作成の領置てん末書
一 収税官吏作成の各調査書
1 事業所得(競走馬損益)調査書
2 配当収入調査書
3 有価証券売却益調査書
4 雑費調査書
5 繁殖牝馬損益調査書
6 源泉所得税調査書
7 生命保険料控除(所得控除)調査書
判示第一の事実につき
一 収税官吏作成の競走馬損益及び損害保険料控除(所得控除)各調査書
一 押収してある六〇年分の所得税確定申告書等一袋(平成元年押第四一四号の1)及び収支内訳書等二袋(同押号の4、6)
判示第二の事実につき
一 押収してある六一年分の所得税確定申告書等二袋(平成元年押第四一四号の2、3)及び収支内訳書二袋(同押号の5、7)
(法令の適用)
一 罰条
判示各所為につき、いずれも所得税法二三八条一、二項
二 刑種の選択
いずれも懲役刑と罰金刑の併科
三 併合罪の処理
刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項
四 労役場留置
刑法一八条
五 懲役刑の執行猶予
刑法二五条一項
(求刑 懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円)
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 中村俊夫)
別紙一の(1)
修正損益計算書
山口吉久
自 昭和60年1月1日
至 昭和60年12月31日
<省略>
別紙一の(2)
脱税額計算書
昭和60年分
山口吉久
<省略>
別紙二の(1)
修正損益計算書
山口吉久
自 昭和61年1月1日
至 昭和61年12月31日
<省略>
別紙二の(2)
脱税額計算書
昭和61年分
山口吉久
<省略>
資産所得あん分税額計算書
<省略>