東京地方裁判所 平成元年(特わ)388号 判決 1989年6月26日
本店所在地
東京都三鷹市野崎四丁目三番五四号
比留間建設株式会社
(右代表者代表取締役 比留間秀雄)
本籍
同都同市井の頭四丁目九一〇番地
住居
同都同市井の頭四丁目七番四号
会社役員
比留間秀雄
昭和一五年一月二七日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人比留間建設株式会社を罰金五五〇〇万円に、
被告人比留間秀雄を懲役一年六月にそれぞれ処する。
被告人比留間秀雄に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人会社は東京都三鷹市野崎四丁目三番五四号に本店を置き、建築及び不動産売買等を目的とする資本金三〇〇〇万円の株式会社であり、被告人比留間は被告人会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人比留間は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するとともに架空の売上原価を計上する等の方法により所得を秘匿した上、昭和六一年六月一日から同六二年五月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が四億五一九六万四三〇〇円で、課税土地譲渡利益金額が五億七五二二万八〇〇〇円あった(別紙1修正損益計算書参照)のにかかわらず、同六二年七月二九日、東京都武蔵野市吉祥寺本町三丁目二七番一号所轄武蔵野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億二六三二万七〇七一円で、課税土地譲渡利益金額が二億七〇八三万九〇〇〇円であり、これに対する法人税額が一億六三万五五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成元年押第五一九号の1)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二億九八二六万九九〇〇円と右申告税額との差額一億九七六三万四四〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人会社代表者兼被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏作成の次の各調査書
1 土地売上調査書
2 土地仕入調査書
3 公租公課調査書
4 旅費交通費調査書
5 交際接待費調査書
6 諸手数料調査書
7 担保提供料調査書
8 交際接待費の損金不算入額調査書
9 受取利息調査書
10 事業税認定損調査書
11 欠損金の当期控除額調査書
12 土地の譲渡等に係る譲渡利益金額調査書
一 武蔵野税務署長作成の「証明書」、「証拠品提出書」と題する各書面
一 登記官作成の商業登記簿謄本
一 押収してある法人税確定申告書一冊(平成元年押第五一九号の1)
(法令の適用)
被告人比留間の判示所為は法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で処断し、また、同被告人の判示所為は被告人会社の業務に関してなされたものであるから、被告人会社に対しては同法一六四条一項により判示の罪につき同法一五九条一項の罰金刑を科すこととし、情状により同条二項所定の金額の範囲内で処断すべきところ、本件は、折からの地価高騰の波に乗り、俗に「土地ころがし」と称せられる不動産売買により多大な利益を得た被告人会社がわずか一事業年度にして実に二億円に近い巨額の法人税を免れたという事案であって、右脱税のほ脱率も約六六パーセントと相当に高率であり、その動機も単に不況時等に備えて利益を留保するなどしようとしたに過ぎないもので酌量すべき点などはなく、犯行態様をみても、不動産取引においていわゆるダミー会社を介在させ、架空の契約書や領収書等を作成したりして所得の秘匿を図るなど極めて悪質であって、被告人会社及びその業務を統括していた被告人比留間の刑責は重いと言わざるを得ないが、他方、被告人会社は本件発覚後修正申告の上、本税、重加算税等を完納していること、被告人比留間においては、これまで罰金刑以外の前科はなく、捜査、公判段階を通じて卒直に本件犯行を認める供述をする等その非を深く反省していることなどの有利な諸事情も認められるので、被告人会社を罰金五五〇〇万円に、被告人比留間を懲役一年六月にそれぞれ処し、同被告人に対しては刑法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 反町宏 裁判官 高麗邦彦 裁判官 山田明)
別紙1
修正損益計算書
比留間建設株式会社
自 昭和61年6月1日
至 昭和62年5月31日
<省略>
別紙2 脱税額計算書
会社名 比留間建設株式会社
自 昭和61年6月1日
至 昭和62年5月31日
<省略>