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東京地方裁判所 平成10年(ワ)10051号 判決

原告 有限会社フルヤ

右代表者取締役 古屋佐枝子

右訴訟代理人弁護士 新井宏明

同 大森恒太

被告 株式会社トルド

右代表者代表取締役 渡邉和男

右訴訟代理人弁護士 伊東眞

右訴訟復代理人弁護士 根木純子

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、五〇〇〇万円及び平成九年一一月一三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告がフランチャイズシステムによるイタリアンレストラン「ジャカッセ」のフランチャイズ権を有する被告とフランチャイズ契約を締結した上、横浜元町店(以下「元町店」という。)を開店したが、被告は、同店は経営に有利ではなかったのに経営に有利であると説明する等の背信的勧誘を行った上、右契約上の義務を履行しなかったため、原告は同店の営業を継続することが不可能となり損害を被ったとして、被告に対し、契約締結上の過失又は債務不履行に基づき損害賠償を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  原告は、フランチャイズ経営のためのみに設立された、飲食店の経営などを目的とする有限会社であり、被告は、昭和六三年二月二二日に設立されたフランチャイズシステムによるイタリアンレストラン「ジャカッセ」のフランチャイズ権を有する株式会社である。

「ジャカッセ」においては、パスタ、ピザ、サラダが二・五人前の大皿料理が中心で、各単価は一五〇〇円ないし一六〇〇円である。

2  原告代表者である古屋佐枝子(以下「原告代表者」という。)の夫古屋英明(以下「英明」という。)は、取引先の不動産業を営む訴外株式会社朋和(以下「朋和」という。)の佐藤英訓社長から同社の元社員である被告代表者であった中川一郎(以下「中川」という。)を紹介され、平成七年六月末ころ、同人から、「トルドは、フランチャイズシステムによるイタリアンレストラン『ジャカッセ』のフランチャイズ権を有する株式会社であり、これからフランチャイズ展開を積極的に始めようとしている。イタリアンレストラン『ジャカッセ』は、すでに広島店を開店して、経営は順調に推移している。トルドは横浜桜木町ランドマーク内で弁当屋を出店しているが、それにくらべてレストランは原価率も安いし、経営さえ軌道に乗れば二、三店は経営可能な商売である。平成七年七月に広島店を見学してみてはどうか。自分が案内する。」等と勧誘を受けた。

3  原告代表者は、同年七月ころ、中川の案内で、広島市中区基町にて営業していた「ジャカッセ」広島店(以下「広島店」という。)を見学し、同月一七日に、訴外株式会社青山フーズ(以下「青山フーズ」という。)の名で、「ジャカッセ フランチャイズシステム加盟申込書」を提出し、申込金一〇〇万円を振り込んだ。

原告は、被告に対し、東京都青山、渋谷近辺の店舗は無いかと要望をし、被告において探したが、適当な物件は見当たらなかった。田町の店舗については、そこを管理する会社に結果的に断られた。

4  中川は、平成七年八月ころ、原告に対し、横浜元町への開店を勧め、その際に、「横浜元町店の近くにある同じようなイタリアンレストランが月商八〇〇万円以上を売り上げている。厨房のこともホールのことも一から研修する。一か月は広島に行って一通り教育する。オープンまでにはすべてマスターできるカリキュラムになっている。経営は、ノウハウが確立しているから簡単であり、マネージメントだけやってくれ。店が自宅から離れていても全く問題はない。横浜元町という名前はブランドである。横浜元町からは、ジャーマンベーカリー、ポンパドール、ミハマ、スタージュエリーなどが発祥しており、社員にも励みになる。」などと説明し、原告代表者夫婦は、元町店を営む予定の物件(以下「本件店舗」という。)と元町商店街を訪れて、近隣の様子を見聞した。

元町は、横浜市中区の海岸側に所在し、官庁オフィス街、中華街、山下公園などに接しており、横浜市の観光名所の一つとなっている著名な商店街であり、同商店街には物品販売業が多数存在し、撤退店舗も存在した。同商店街の閉店時間は午後七時、休日が主に月曜日であり、土曜日と日曜日の客足が平日より多いものである。

本件店舗はこの元町商店街の元町通りから少し脇道に入ったところに所在し(甲50、乙10)、石川町駅から徒歩一〇分前後の場所に位置し、周辺の駐車料金は、平成一〇年一一月現在で、平日で普通車一時間五〇〇円、大型車同六〇〇円、日曜祭日は一時間各一〇〇円増が相場であった。

5  平成七年九月二九日に賃借物件である本件店舗の重要事項説明書が作成され、原告は、右店舗に出店することを決め、同年一〇月一一日に訴外株式会社ウエタケ(以下「ウエタケ」という。)との間で右店舗の賃貸借契約を締結した。

中川は、同月初め、原告に対し、店舗設計は訴外ワイズ・プランニング(代表今井勝)に依頼するように勧めた上で、設計プランを原・被告間で打ち合わせをしながら進めると伝え、また内装工事業者としては訴外有限会社天野創建(以下「天野創建」という。)を勧めた。それにより、原告は、ワイズ・プランニングと店舗設計の契約をした。

同年一一月中旬に、ワイズ・プランニングから絵図面、平面図、仕様書等が完成され、天野創建より、電気工事を含めて三五〇〇万円以上になるとの見積を示された。原告はワイズ・プランニングに対し実施設計書の完成を督促した。

原告は、同年一二月一二日、本件店舗の内装工事を天野創建に依頼したが、原告との設計プランの打ち合わせの段階では、一階二一坪はすべて客席、二階三三坪は厨房と客席とすることで協議をしていたが、結果的には一階には厨房と一部客席(一二席)、二階には客席七二席(中央に固定仕切り)を設けることとなった。また、階段室一・五坪を利用して従業員更衣室を設けた。

6  原告と被告は、平成七年一〇月二六日、被告が所有する商標、サービスマーク及び経営ノウハウを用いて営業を行う権利を原告に与え、他方、原告はこれに対して一定の対価を支払うこと等を内容とする「ジャカッセ フランチャイズ契約」(以下「本件契約」という。)を締結するとともに(甲4)、開業に関する、開業準備業務、宣伝広告・販売促進(計画・ツール作成・実施)、雇用(教育・募集)の各業務及び平成八年六月末までの運営業務を被告に委託する契約(以下「本件業務委託契約」という。)を締結した(甲6の1、31)。本件契約書には、次の条項が記載されていた。

(一) 被告は、原告の開店に先立ち、店舗候補地の立地条件、売上予測、店舗設計等につき調査研究の上、原告を指導する(六条一項)。

(二) 被告は、加盟店に対し、定期的にスーパーバイザーを派遣し、営業方法、品質管理等につき原告を指導援助する(六条二項)。

(三) 被告は、原告に対する経営指導の一環として、毎月原告の店舗の経営分析を行い、その結果を翌々月末までに原告に報告する(八条一項)。

原告は、被告の経営分析に協力する義務を負うとともに、被告の指定する様式に基づき、毎月の経営資料を翌月一五日までに被告へ提出しなければならない(八条二項)。

(四) 被告は、原告が営業を開始するにあたり、店長及び従業員一名以上に対し教育指導を実施し、店長及び従業員はこれを受ける義務を負う(九条一項)。

(五) 広告宣伝は、各加盟店につき統一した方法で行う。このため原告は、独自の方法で広告はしないものとし、原告が特別な事情により独自の方法で広告宣伝をするときは、被告と原告が協議して決定した方法に基づき行うものとする(一一条一項)。

右に基づき実施するセールスキャンペーン等の広告宣伝費用は原告が負担する(一一条二項)。

(六) 原告は、第二条記載の場所において店舗を設けるについては、同一イメージ維持のため、店舗の内外装につき被告の指示に従う(一二条一項)。

(七) 原告は、被告に対し、加盟契約料、保証金、指導員派遣料、商標使用料をそれぞれ支払う(二〇ないし二三条)。

7  被告が原告に交付した収支計画によれば、損益分岐点は、月間売上額が六八〇万円であり、この場合粗利益額は四四八万円、販売管理費四六〇万円、営業利益マイナス一二万四〇〇〇円となるが、減価償却費四五万九〇〇〇円と開業費償却二六万二〇〇〇円が内部に留保されるので、差し引き現金収支は、月額五万六〇〇〇円となることが記載され、このほか、月間売上額が八〇〇万円、九〇〇万円及び一〇〇〇万円の三つのモデルケースを設定し、それぞれの場合の粗利益、販売管理費、営業利益、経常利益、償却費内部留保、差し引き現金収支についてのシュミレーションを作成していた。

右計画においては、人件費は、売上月額が六八〇万円の場合二〇二万二〇〇〇円、八〇〇万円の場合二〇五万二〇〇〇円、九〇〇万円の場合二三二万二〇〇〇円、一〇〇〇万円の場合二四五万七〇〇〇円とされ、水道光熱費は売上の四パーセント、消耗品は売上の二パーセントとされていた(甲3、37、乙11)。

8  原告は、平成八年一月九日、横浜中保健所長から営業許可を受け、同月一二日から、本件店舗において「ジャカッセ」としては関東地区における第一号店となる元町店の営業を開始した。同店の家賃は一〇五万円であった。同店オープン時に使用されたユニホームは「ジャカッセ」静岡店(以下「静岡店」という。)で使用されているものと同一のデザインであった。

また、それに際して、原告代表者は、自宅を多摩市から目黒区に転居し、訴外森田健二(以下「森田」という。)を原告の正社員に転勤させ、元町店に勤務させた。

なお、原告は、平成八年五月までは被告に同店の業務を委託し、売上高の二九パーセントを支払った。

9  原告は、被告の指示どおり販促物を購入し、また、被告に対し、売上日報を、毎日閉店後ファクシミリにて、また月毎の営業資料を送付した。

被告から平成八年二月ころチラシ広告計画の話があったため、原告が五〇万円でチラシ一万枚を発注した。中川は、同年三月、ユニフォームのデザイナーを連れてきて、新ユニフォームを試着させ、今後ユニフォームが変わると述べ、同年四月に「ジャカッセ」鴨居店(以下「鴨居店」という。)がオープンした際には、新ユニフォームが使用されたものの、元町店では旧ユニフォームが使用された。

また、被告は、同年四月にロゴマークを変更する旨の通知をし、当初新旧ロゴマークが交錯した。

原告代表者が、被告の従業員に対し、「人の店に土足で上がるようなことはしないでくれ」と言ったことがあった。

10  元町店における売上(いずれも消費税を含む。上段に記載)及び人件費(下段に記載)等は次のとおりである(甲29、30、38)。

(一) 被告への業務委託期間

平成八年一月 七六八万二三〇七円

二月 九九九万二〇〇〇円

三月 九二三万一〇〇〇円

四月 八二九万二五五八円

五月 一〇三一万二〇〇〇円

(二) 原告への業務移行後

平成八年六月 八九六万二〇〇〇円 三三一万〇〇〇〇円

七月 七〇四万四〇〇〇円 三五三万一〇〇〇円

八月 八六九万四〇〇〇円 三三九万四〇〇〇円

九月 九三八万〇〇〇〇円 三四一万四〇〇〇円

一〇月 八三八万六〇〇〇円 三四五万三〇〇〇円

一一月 七八六万八〇〇〇円 二七七万三〇〇〇円

一二月 九九一万六〇〇〇円 三二四万九〇〇〇円

平成九年一月 七一五万五〇〇〇円 二六七万六〇〇〇円

二月 七八一万一〇〇〇円 二四〇万〇〇〇〇円

三月 八七五万四〇〇〇円 二五二万八〇〇〇円

四月 七六一万二〇〇〇円 二四九万八〇〇〇円

五月 八四六万六〇〇〇円 二八一万九〇〇〇円

六月 六九七万五〇〇〇円

七月 七一〇万三〇〇〇円

八月 一四四万六〇〇〇円

右によれば、平成八年一月から一二月における平均売上は月額八八一万円であり、一か月あたりの人件費は三三六万八〇〇〇円、水道光熱費は売上の五・六パーセント、消耗品費は売上の七・九パーセントであり、開業した月の同年一月と廃業した月の平成九年八月を除く平均月間売上高は、約八四三万円であった。平成九年の一月から五月までにおいては、水道光熱費は売上の五・九パーセント、消耗品費は売上の二・五パーセントであった。

なお、「ジャカッセ」お台場店(以下「お台場店」という。)は平成八年七月に営業を開始したが(甲36)、同月の元町店の売上目標に対する達成率は六七・一四パーセントに対し、お台場店は達成率が一四五・八一パーセントであった。

原告は、開業年度の平成八年一二月期には、販売・管理費中の減価償却額を経費に計上せず、この結果、九五四万二〇〇〇円の法人税を納付した。

11  原告は、被告に支払うべき商標料月額二〇万円の支払を平成八年一一月分から、食材費及び消耗品などの支払を平成九年五月分から、それぞれ停止した。

12  原告は、平成九年八月一一日に本件店舗の権利(内装及び造作の費用)を、被告の紹介で訴外株式会社和孝(以下「和孝」という。)に一七八五万円(消費税を含む)で売却し、同月一二日に元町店を閉店し、同年九月四日に廃業届を提出した。

原告は、同月二九日にウエタケから保証金一六〇〇万円の返還を受けた。

13  原告は、元町店を開業し、経営を継続するため、次のとおりの支出をした。

(一) 加盟金、保証金

原告は、被告に対し、本件契約に基づき、平成七年一〇月二六日、加盟金三〇九万円、保証金六〇万円を支払った。

(二) 委託料

原告は、被告に対し、右同日、本件業務委託契約に基づき、委託料三二九万六〇〇〇円を支払った。

(三) 建物賃貸借保証金

原告は、本件店舗の賃貸借契約の保証金として平成七年一〇月一一日に四〇〇万円、同月二六日に一六〇〇万円の計二〇〇〇万円を支払った。

(四) 建物賃貸借仲介手数料

原告は、右に伴い、右同日、訴外株式会社富士開に仲介手数料一〇三万円を支払った。

(五) 内装設計

原告は、本件店舗の設計を依頼したワイズ・プランニングに対し、平成七年一〇月一八日二〇万円、同月二六日一〇〇万円、平成八年一月一八日三〇万円を支払った。

(六) 内装工事

原告は、本件店舗の内装工事を依頼した天野創建に対し、平成七年一二月七日に二万円、同月一二日と平成八年一月九日にそれぞれ一〇七一万二〇〇〇円、同月三一日に八二万四〇〇〇円の計二二二六万八〇〇〇円を支払った。

(七) 厨房設備

原告は、被告の指導に従い、平成七年一二月五日、本件店舗の厨房設備を訴外株式会社フジマックに依頼し、同月一九日に八〇万円、追加工事として平成八年一月一八日に八一七万五一〇〇円の計八九七万五一〇〇円を支払った。

(八) 電気設備

原告は、本件店舗の電気設備を訴外株式会社加藤電設に依頼し、平成七年一二月二八日、電気設備料四四二万九〇〇〇円を支払い、平成八年二月末日、追加電気設備料三二万八五七〇円の計四七五万七五七〇円を支払った。

(九) 什器備品など

(1)  原告は、被告に対し、平成八年一月一〇日、什器、消耗品、印刷物を発注し、計三七七万六六八七円を支払った。

(2)  原告は、被告に対し、同年九月三〇日、メニュー変更に伴う費用四三万二九一二円を支払った。

(3)  原告は、被告に対し、同年六月三〇日、サマーフェア販促物代金六万一八〇〇 円を支払った。

(4)  原告は、被告紹介の講師に、同年一一月某日、ワインセミナー講師料五万円を支払った。

(5)  原告は、被告に対し、同年二月二九日、ユニフォーム代六七万八四六一円を支払った。

(6)  原告は、同年一月三一日、訴外日本電気オフィスシステム株式会社からレジスターを一〇九万七二三八円で購入した(甲18の1)。

(7)  原告は、同年六月二〇日、訴外株式会社アマノから自動タイムカード機を一二三万六〇〇〇円で購入(六〇か月のリースの形をとっている)した。

(8)  原告は、訴外株式会社グラナダから備品を、同年一月八日に五万四一六二円、同月二二日に八万六〇九八円、同月三〇日に二万四六六三円の計一六万四九二三円で購入した。

(9)  原告は、訴外株式会社丸井から備品を、同年一月七日に一万八八四〇円、同月八日に三万〇八四〇円、計四万九六八〇円で購入した(甲21)。

(一〇) その他工事

原告は、同年二月二三日、訴外キャンシステム株式会社に対し、音響(有線放送)工事料として一五万一七一九円を支払った(甲22)。

(一一) 商標使用料

原告は、被告に対し、本件契約に基づき同年一月一二日から平成八年一〇月三一日まで、商標使用料として月額二〇万円、計二〇〇万七〇〇〇円を支払った。

(一二)絵画

原告は、同年一月二二日、訴外白石孝子から絵画を一二〇万円で購入した。

(一三) 求人広告

(1)  原告は、同年二月一六日、訴外協栄広告株式会社に対し、求人広告料として一八万五四〇〇円を支払った(甲27の1、2)。

(2)  原告は、同年六月二七日、訴外株式会社太陽企画に対し、求人広告料として二三万一〇二九円を支払った(甲27の3)。

(一四)保険料

原告は、同年一月一七日、本件店舗の火災保険料九万〇一一〇円を負担した(甲28)。

14  原告は、被告に対し、平成九年一一月四日付け書面で、損害賠償金の内金として五〇〇〇万円の支払を催告したが、被告は、同月一三日付け書面で、これを拒否した。

15  被告は、平成一〇年三月二二日、本店を東京都渋谷区恵比寿南一丁目から現在の住所地に移転した(弁論の全趣旨)。

二  争点

1  被告の契約締結上の過失責任の有無

(一) 背信的な勧誘の有無

(1)  原告の主張

被告は、元町店を原告の店舗とするよう勧めるに際し、好採算の見込みのあるお台場への出店計画があったにもかかわらずこれを秘匿し、「東京に良い出店場所がなく、横浜元町店がよい。」と言って、採算の見込みのたたない元町店を原告に執拗に勧めたが、かかる背信的な勧誘は信義則に反する。

(2) 被告の主張

被告は、以前よりお台場店へ出店することの勧誘を受けた事実はあったが、当時青島東京都知事による都市博中止措置が発表されるなどの事態があり、被告は、お台場地区への出店は断っていた。しかしその後も勧誘を受けていたこと、平成八年三月になり東京都内にフランチャイズ本部としての研修センターを開設する必要が生じたことから、急遽ここに直営店を開設することとし、同年四月八日店舗の賃貸借予約契約を締結、同年六月二四日予約を完結、同年七月一二日営業を再開したことからわかるように、お台場店の出店計画は本件契約締結日より数か月後の同年三月に立案されており、本件契約締結当時は、被告にお台場店の出店計画はなかった。

また、レストラン店舗の賃貸物件は当然のことながらいつでも多数存在していたのであって、原告が元町店を気にいらないのであれば、被告としてはさらに原告の気に入るまで他の物件を紹介することはできたが、何よりも原告は、自ら積極的に元町店を選択し、被告に対し、これを採用するよう執拗に働きかけてきたのである。

(二) 立地条件の調査義務違反

(1)  原告の主張

<1>元町商店街は、主に物品販売業を中心としているものの、昔の勢いはなく、繁盛している店はわずかで、ここ数年は撤退する店舗が多くなっている上、閉店時間が午後七時と早いため、商店街閉店後の客足は大幅に減少すること、<2>周辺には外人墓地、山下公園、港の見える丘公園等、有名な観光名所があり、土曜日及び日曜日の客足はあるものの、平日や雨の日は客足が落ちること等からすると、パスタ、ピザ、サラダが二・五人前の大皿料理が中心で、大量販売を前提とした「ジャカッセ」には不向きのものであったし、<3>根岸線石川町駅から遠く、徒歩一二、三分もかかる上、周辺には駐車場も少なく駐車料金は高いのであって、家族連れを対象とした廉価なファミリーレストランを営業するには決して適切な場所ではなかったが、被告は元町店のこのような立地条件及び市場を調査しなかったか、あるいは十分な調査をせず、前記第二の一6(一)から導かれる店舗候補地の立地条件を調査する義務に違反した。

もし、右調査を行っていたのであれば、当時すでに一般的であった立地条件調査の方法である店舗通行量調査、商圏内人口・世帯数調査及び競合店調査等の調査結果資料を原告に示し、その説明があったはずであるのに、原告は、被告から、立地調査に関する情報を知らされたことはなく、またその資料も受け取っていない。

元町店の立地条件が最悪であったことは、平成九年八月に原告から元町店の営業権を譲り受けた株式会社和孝の経営が芳しくなく、平成一一年六月末で営業権を保有したまま、同店を撤退して被告の千葉の営業店に移り、その後、被告への委託営業にもかかわらず、結局撤退せざるをえなくなったことから明白である。

(2)  被告の主張

もともと、元町は、東京の近くにある著名商店街であるので、被告自身、現地調査を行う以前より、この商店街の状況は十分熟知していた上、開店準備室を設け、元町店を原告に示すにあたり、この商店街の付近の顧客層、近隣学校・企業、官庁等の存在、競合が予想される他店の集客力等を調査し、ことに同種イタリアンレストランを訪れて、午後八時三〇分という時間にもかかわらずウェイティング客が約二五名もおり繁盛している状況を現認するとともに、曜日と時刻を変えて通行量の調査を行い、その結果を口頭で原告に伝えた。

レストランの客足数は、物販店、スーパーマーケット等と異なり、付近の人口、その前面道路の人通り数等の数量の大小といった単純な要素で定まるものではなく、あくまでもその需要度に応ずるものであるから、数値に現れない経営経験から判断されるものであり、夜間の客足が減少することをもってレストラン不適地と考えるのは誤りである。

また、石川町駅から離れているということがレストラン営業に不適切であるという必然性はなく、現に中華レストラン街で全国に名高い横浜中華街は、根岸線が開通する前の戦前から反映しており、現在も石川町駅から右中華街の中心までは平均徒歩一〇分以上を要する位置にある。

元町店の場合、訪れた観光客のほか、前記付近の官庁やオフィスに勤務する者又は商店街の従業員等が昼間の業務が終了した後食事を行うためにも、元町商店街に所在する廉価のイタリアンレストランは適当な場所であり、「ジャカッセ」フランチャイズが対象とする顧客層の需要に適合していた。原告としてもそのような事情を当然考慮の上、元町店にてフランチャイズ店を開業することに決断したものである。

実際に、原告の平成八年一月から平成九年八月までの実際の売上額で、損益分岐点である六八〇万円を下回った月は、開業した月の平成八年一月と廃業した月の平成九年八月の二回のみで(この両月は、開始月と廃業月という特殊な事情がある以上当然の事象である。)、この両月を除く平均月間売上高は約八四三万円であり、被告の提示した収支計画のとおり損益分岐点は、売上額に関する限り、いずれもこれをクリアしているのであって、開業初年度の売上額であることを考慮に入れるならば、この元町店が売上の上がらない不適切な場所であったという原告の非難は誤りである。

(三) 収支計画の杜撰

(1)  原告の主張

被告が、元町店出店に際して、原告に示した収支計画では、<1>人件費は売上月額が九〇〇万円の場合で月額二三二万二〇〇〇円(二五・八パーセント)、<2>水道光熱費は売上月額の四パーセント、<3>消耗品費は売上月額の二パーセントとされていたが、実際には平成八年一月から一二月の平均で、<1>人件費は平均売上月額が八八一万円に対し月額三三六万八〇〇〇円、<2>水道光熱費は売上月額の五・六パーセント、<3>消耗品費は売上月額の七・九パーセントであり、被告の収支計画は費用を低く抑えて見積もられた杜撰なものであり、前記第二の一6(一)から導かれる店舗候補地における適切な売上予測を行う義務に違反した。

(2)  被告の主張

被告は、損益分岐点の月間売上額が六八〇万円のほか、月間売上額が八〇〇万円、九〇〇万円及び一〇〇〇万円の三つのモデルケースを設定し、それぞれの場合の粗利益、販売管理費、営業利益、経常利益、償却費内部留保、差し引き現金収支についてのシュミレーションを作成した。

2  被告の債務不履行責任の有無

(一) 店舗設計の指導義務違反

(1)  原告の主張

原告との設計プランの打ち合わせ段階では、一階はすべて客席、二階は厨房と客席ということで合意していたにもかかわらず、原告の了解のないまま、一階は厨房と一部客席、二階は客席として設計、工事が進められた結果、

<1>二階客席中央に固定間仕切りが設けられたため作業上効率が悪く、原告のサービス低下にもつながり、また五〇名以上のパーティーを受けることができず営業上大きな損失を受けた。

<2>一階の客席が狭く、二階へのウェイティングルーム程度にしか使えなかったうえ、従業員も非効率的な配置を強いられた。

<3>階段室を利用して従業員更衣室が設けられたが、その後明け渡しを要求され、暫定的にトイレを更衣室として使用したところ、客から苦情を言われ、営業上のマイナスを生じた。

<4>電気容量(アンペア数)が少なく設計されていたため、満席時に数回ブレーカーが落ちて客の不興をかい、信用を落とし、営業ができなかったため、電気工事を新たにしなければならなかった。

これは、前記第二の一6(一)の原告の開店に先立ち店舗設計につき原告を指導する義務に違反する。

(2)  被告の主張

元町店のデザイン・設計を行った天野創建は、飲食店業界で永年にわたり、飲食店のデザイン・設計を行ってきたもので、元町店を施工する二年前に取り扱った店舗はおよそ一八店舗あるが、原告の主張するような苦情を受けたものは一つとして存在しないし、元町店のデザイン・設計を手がけた前後に、従前ステーキハウスであった鴨居店と従前イタリアンレストランであった大森店につき、「ジャカッセ」フランチャイズ加入により、それぞれ店舗設計とデザインを施工しているところ、両店ともチェーンに加入後に大幅な売り上げ増を記録しており、もし、同社が、無定見で、いい加減なデザイン・設計を行うような業者であったならば、このような大幅売上はあり得ないことである。

(二) スーパーバイザーの派遣義務違反

(1)  原告の主張

被告には元町店開店当初専従のスーパーバイザーが存在しておらず、原告は、被告に対して何度もスーパーバイザーの派遣を要請したのに派遣されなかったのであって、スーパーバイザーから経営内容の改善点の指摘や忠告を受けたこともない。なお、中川が、「研修のため、元町店を貸してくれ。」と依頼してきたことがあり、また被告の従業員の井上が、営業日報に基づいた一か月遅れの収支表を持参し、その説明をしに来たことはあるが、その際、原告に対する指導は一切無かった。

この点は、前記第二の一6(二)の原告に対し、定期的にスーパーバイザーを派遣し、営業方法、品質管理等につき原告を指導援助する義務に違反する。

なお、原告代表者が、「土足で上がるようなことはしないでくれ。」と言ったのは、被告が、原告に断りもなく、営業時間内に元町店内で、当店に関係のない業務の会議をしたり、アルバイトの女性に制服を変えるための試着をさせたりしたためである。

(2)  被告の主張

被告は、「ジャカッセ」フランチャイズシステムを活性化するため、スーパーバイザーを置き、各チェーン店の業務を援助し、あるいは改善すべき店の修正を求めるなどの業務を行わせていた。

平成八年から九年にかけて、被告は、営業本部に三つのフランチャイズ事業部を設け、それぞれ関東、東海、広島の三地区を担当させていたが、この事業部内にそれぞれスーパーバイザー担当者を置き、その担当地区のフランチャイズ店舗を巡回させ、スーパーバイザー業務を行わせ、また、これとは別に、調理部門にもスーパーバイザーを置き、全国のフランチャイズ店舗を巡回させていた。当時の関東地区事業部には六名のスーパーバイザーがおり、これを井川が統括していた。

被告は、原告から派遣の要請を受けたことはなく、原告に対し、業務委託期間経過後は、何回もスーパーバイザーを派遣し、指導援助を行い、改善点を指摘をしたが、原告は、ほとんどこれを聞き入れず、ことに原告代表者は、「人の店に土足で上がるようなことはしないでくれ。」と言って、経営内容改善の忠告を拒否した。

(三) 経営分析義務違反

(1)  原告の主張

原告は、被告に対し、赤松典子税理士を通じて、毎月の営業資料を欠かさず送付していたし、また、各日の閉店後、午後一一時遅くとも午前〇時ころまでに、毎日、売上日報をファックスで送信していたにもかかわらず、被告は二か月遅れで売上分析を行ったが、経営分析といえるようなものではなかった上、原告に対して売上増加あるいは利益増加のための方策を全く指示せず、前記第二の一6(三)の経営分析及び報告義務に違反した。

(2)  被告の主張

原告は、前記第二の一6(三)のとおり、被告の経営分析に協力する義務を負い、被告の指定する様式に基づき、毎月の経営資料を翌月一五日までに被告へ提出することが義務づけられていたが、原告は、被告に対し、月毎の営業資料を送付してきたものの、その送付は毎月定期的になされるのではなく、しはしば遅れ、催促すると数か月分まとめて送ってくるという状況であった。また、原告は、売上日報を、毎日閉店後ファクシミリにて送付してきたが、売上額のみで経営判断することは不可能である。

(四) 教育指導義務違反

(1)  原告の主張

被告は、原告に対し、「厨房のこともホールのことも一から研修をする。一か月は広島に行って一通り教育をする。オープンまでにはすべてマスターできるカリキュラムになっている。」と説明し、原告代表者も再三、「広島に行かせて研修して下さい。」と申し出ていたが、被告は、「横浜元町店をオープンしたらキッチンには被告の鈴木常務と営業、ホール、マネージメントには井川部長を専従させるから心配なく。」と話をしただけで、一度の研修も実施しなかったばかりか、逆に元町店を自社の新入社員約一〇名の研修の場として利用し、平成八年四月、鴨居店がオープンした際には、まだ元町店がオープン後三か月半で、原告の人材教育さえできていないときに、鴨居店の店長及びアルバイト五ないし七名の研修を実施するよう強要して、前記第二の一6(四)の原告が営業を開始するにあたり、店長及び従業員一名以上に対し教育指導を実施する義務に違反した。

(2)  被告の主張

フランチャイズ店は、その店の経営者が、自らの経営責任において営業を行う性質のものである以上、その店の店長など基幹業務を担当する従業員は、経営者にとって気心の知れた信頼のおける人物である必要があり、本件の場合も、被告は、原告からフランチャイズ契約の申し込みを受けた時から、幹部職員は原告が募集採用し、フランチャイズ契約締結時までに間に合わせて欲しい旨伝え、原告もこれを承諾していた。一方被告は、これ以外の人材、ことにパートタイマーやアルバイトを中心に募集を行うことを担当し、開店までに間に合わせた。

つまりこの人材募集にかかる契約は、被告も募集業務は行うが、原告が全く人材の募集を行ってはならないという専属的業務委託の趣旨ではない。

被告は、本件契約締結後、直ちに従業員の研修を開始しようとしたが、原告が営業開始時までに店長などの人材を雇い入れなかったため、研修を実施することができなかったのであり、やむなく当初の期間に限り、被告が原告から委託を受けて経営を行っていたものである。

被告の一〇名の社員は原告から業務委託を受けていた期間に右業務を委託するために派遣されていたものであり、そのうち二名以外は委託業務を十分履行できる熟練者であった。

(五) 広告宣伝義務違反

(1)  原告の主張

被告は、前記第二の一6(五)のとおり、原告の独自の方法による広告の機会を制限したのであるから、元町店のために効果的な宣伝をすべき義務があったにもかかわらず、次のとおり右義務に違反した。

<1>「ジャカッセ」の店は関東地区では元町店が初めてであり、店の名前が集客につながるようなものではなかったにもかかわらず、自ら特別な広告を行うことも、原告に対し効果的な広告方法を指示することもしなかった。

<2>平成八年二月ころ、被告の「チラシの広告を計画してはどうか。」との申し出により、原告はチラシを発注したが、完成したチラシは他店のオープンの企画を流用した、効果的とは思われない、割高なものであった。

<3>従業員のユニフォームは広告の役目も果たすところ、被告は、「元町店では生地を厚くしたものを使用します。」と約束したが、鴨居店のオープンにおいて新ユニフォームが使用されたのにもかかわらず、平成七年一一月ころの静岡店のオープン時に使用された生地の薄い古いユニホームを原告に使用させた。

<4>被告は、平成九年四月、突如として店名のロゴマークを変更したが、それを客に周知させる準備が間に合わず、開店後二年も経たないうちに原告の元町店において新旧二つのロゴマークが交錯し、客に不信感を与えて、営業を混乱させた上、原告に対し高い右費用を負担させた。

(2)  被告の主張

原告に旧ユニホームを送ったのは、原告の選択によるものである。また、新ロゴマークの使用は強制されておらず、原告は、変更後も旧ロゴマークを使用することができた。

新旧ロゴマークを同時使用することは、両マークを同時使用して新マークの効用を見るなど、他の企業においてもしばしは見られることであり、それが営業に重大な悪影響を与えるとは考えられない。現にマークを変更した平成九年四月当時、被告のフランチャイズ店は一一店舗存在していたが、そのようなクレームを受けた事実はない。

(六) 内外装指示義務違反

(1)  原告の主張

被告は、前記第二の一6(六)のとおり、原告の内外装による広告の機会を制限したのであるから、内外装につき集客をするのに十分な指示をすべき義務があったにもかかわらず、右義務に違反して、内外装は通常のものであり、人目を引き、際だった好感を与えるものではなく、機能的なものでもなかった。

(2)  被告の主張

争う。

3  因果関係

(一) 原告の主張

被告が元町店に関する立地条件調査・市場調査を行っていたのであれば、被告自身、原告に対し、本件のように強引な勧誘は行わなかったであろうし、それゆえ原告も元町店を開業しなかったのであるから、原告が元町店の開業のために支出した費用は、被告の情報提供義務違反と相当因果関係にある損害である。

また、被告は、原告に対し、原告の元町店開業の直接の原因となった開業後の十分な援助指導を行わなかったのであるから、開業後原告の営業努力にかかわらず生じた営業期間中の損失は、被告の債務不履行と相当因果関係にある損害である。

さらに、少なくとも、立地条件が悪くなく、開業後の通常の被告の指導援助があれば、売上月額一〇〇〇万円程度の売上を上げ、一か月六七万六〇〇〇円の経常利益を得ることができるであろうと被告は予測したのであるから、右経常利益を基準とした得べかりし利益は、被告の債務不履行と相当因果関係にある損害である。

(1)  森田の平成八年一一月時の給与を時給に換算すると、八二四円程度であり、これはアルバイト・パートの時給八五〇円より低額となるし、原告における同人の仕事は、金銭の管理、一日の仕事の最終点検、備品管理、アルバイト管理等の店長補佐等の内容であり、原告にとって決して不要な人材ではなかった。

また、原告が平成九年二月から経常利益が黒字に転化したのは、営業外収入(家賃)を計上したこと、減価償却・営業外費用・諸会費等の経費を計上しなかったことによるものであって、人件費を圧縮したことのみによるものではない。

(2)  原告は、レシピ、接客方法、従業員の教育、店内の雰囲気作りなどの被告の指示を遵守したし、レシピや調理方法も変えていない。

ただ、原告は、原材料の素材(野菜等)の仕入先については、被告の指定した訴外有限会社エヌアンドケイフーズ「あずま」から、より安くより新鮮な材料を提供する訴外株式会社マルマに変更した。

また、原告は、明治乳業の製品は粗悪品であり、タカナシ乳業の製品は値が高いが美味しいことから、当初は双方を使用していたが、顧客が明治乳業の製品を食べ残すので、顧客のためを思い、仕入価格が一〇〇円ほど(月間では一〇〇〇円ほど)高いタカナシ乳業の製品に変え、その結果、顧客の乳製品の食べ残しは無くなったのであって、このことが、顧客離れにつながったわけではなく、何ら「ジャカッセ」のブランドに影響するものでもない。

(3)  原告が内装設備を変更したのは、固定椅子を移動椅子に変えた点であり、当初の固定椅子の内装は、被告の監査役でもある天野志郎が社長をしている天野創建が行なったものであるが、原告は、顧客の便宜も考え、店内の使い勝手を考慮して移動椅子にしたのであって、その改装についても、右天野に相談した上で天野創建が工事を行なったのであり、被告の同意に基づいたのと同様である。

(二) 被告の主張

原告代表者夫婦とその家族及び被告は、本件店舗と元町商店街を訪れて、近隣の様子を見聞し、店舗の賃借条件を被告の提示した他の候補地と比較検討し、自らこれを積極的に選定したもので、被告の勧誘を信頼してこれを選定したものではないから、被告の立地条件調査に不十分な部分があったとしても、原告の損害との間に因果関係はない。

また、原告は、<1>不要な人件費を支出した上、<2>営業開始後、レシピ、接客方法、従業員の教育、店内の雰囲気作りなどの被告の指示を守らず、ことに料理について勝手に原材料や調理方法を変えて料理を提供したため、顧客が離れてしまったほかに、<3>被告の派遣したスーパーバイザーの指導に耳を傾けなかったために、売り上げ不振となったものである。

(1)  原告は、英明の経営する株式会社古屋の社員である森田を原告の正社員として元町店に勤務させたが、同人は外食店営業には全く素人であり、営業に役立たず、やむなく洗い場の仕事をさせるに至ったが、このような仕事は低額人件費のパートタイマーかアルバイトを充てれば十分であるのに、原告はあえて高給の森田を充てたため、不要の人件費が発生した。

原告自身も、被告よりこの指摘を受け、平成九年二月より人件費を圧縮したことにより、経常利益も黒字に転化した。

(2)  明治乳業の製品がタカナシのそれに劣るという事実はなく、むしろ明治乳業の製品の方が「ジャカッセ」の献立に合致するのでこれを使用することを義務付けていたものである。現に被告の従業員が同年一月一九日、元町店に赴き、同店の提供するピザを食したところ、極めて味が悪く、その原因はピザに使用した乳製品に原因があり、またその調理もマニュアル通りになされていないことが判明したので、直ちにこれを改善するよう指導した。

また、同年二月二五日より同月二八日までの間、被告の従業員が元町店の抜き打ち調査を行い、店舗外部、店内、レジ、厨房、トイレ、料理、従業員の教育など一一八項目にわたるチェックを行ったが、その評価は、五段階評価の三点が大半であり、ことに、「料理がレシピ通りに作られているか」の項目では三点を超えるものは一つもなく、量目、味付け、仕上がりの状態の各項目も同様であった。また、従業員の接客態度も、明るさ、勢いがなく、顧客がこの店に抱く雰囲気の問題のあることが指摘された。

「ジャカッセ」のようなレストランのフランチャイズシステムにおいては、加盟店舖の味が統一されていることが生命であり、その料理の善し悪しが売上高に多大な影響を与えるところ、原告がこの店舗で提供した料理は、被告のフランチャイズチェーンで統一的に調理されるはずの料理とかけ離れた味であり、「ジャカッセ」の売り物の味が失われてしまったのであり、他店と異なった味の料理が提供されることは、フランチャイズシステムを崩壊させることにつながりかねないことであり、その債務不履行は極めて重大である。

元町店の売上額は、開業年度から損益分岐点を上回る額となっており、営業利益において黒字となる月間八〇〇万円を超過し、経常利益も黒字となる月間九〇〇万円にあとわずかで迫る額に達していたのであるから、原告が被告の指示を守っていたならば、さらに顧客の誘致が見込まれたはずの重大な時期に、味の悪い料理を提供したことは、取り返しのつかない誤りを犯したもので、来店した顧客を二度と呼び戻せず、これ以後顧客の増加がなく、売上額の伸びもなくなってしまった。

(3)  被告が、店内の椅子を移動式とせず、固定されたベンチ形式としたのは、幼児を連れた家族などの食事の便宜を考えているのであって、移動式椅子の店舗では、幼児連れの家族の食事に向かず敬遠されることは、被告の経験しているところである。

また、原告は、窓のカーテンも被告の指定したものを外してしまったが、店内のカーテンの模様、材質、様式は、いずれもフランチャイズ店のイメージに大きく影響するものであるため、被告は、加盟店にその内容を細かく指示しているのであって、これを無視し勝手に変更することは重大な契約違反である。

4  損害の有無及びその額

(一) 原告の主張

(1)  原告は、元町店に関して、次のとおり合計八四五一万八一〇〇円を支出した。

<1>加盟金 三〇九万〇〇〇〇円

保証金 六〇万〇〇〇〇円

<2>委託料 三二九万六〇〇〇円

<3>建物賃貸借保証金 二〇〇〇万〇〇〇〇円

<4>建物賃貸借仲介料 一〇三万〇〇〇〇円

<5>内装設計費 一五〇万〇〇〇〇円

<6>内装工事費 二二二六万八〇〇〇円

<7>厨房設備費 八九七万五一〇〇円

<8>電気設備費 四七五万七五七〇円

<9>什器備品など 七六一万三五〇一円

<10>その他工事費 四八万五六一九円

<11>消耗品、事務用品 八七一万六〇九〇円

<12>商標使用料 二〇〇万七〇〇〇円

ただし、原告は、元町店について、<1>内装及び造作売却代金として一七八五万円、<2>建物保証金の返還として一六〇〇万円の交付を受けた。

(2)  営業期間中の損失 八七九万三九二四円

原告は、平成八年一月一二日から同九年八月一一日までの間、元町店で営業を行い、標記損失が生じた。

(3)  得べかりし利益の喪失 一三五二万〇〇〇〇円

被告の説明によれば、売上月額一〇〇〇万円程度の売上を上げ、一か月六七万六〇〇〇円の経常利益を得ることができたはずであり、右(2) の期間には、標記金額の利益を失った。

(4)  したがって、右(1) の八四五一万八一〇〇円、右(2) の八七九万三九二四円、右(3) の一三五二万〇〇〇〇円の合計から、右(1) の交付を受けた三三八五万円、また、原告が被告に支払うべき食材料代金三三四万八三六〇円、消耗品代金四〇万六一三九円を控除した、六九二二万七五二五円が実損害額となる。

(二)被告の主張

争う

第三当裁判所の判断

一  前記第二の一の事実に加えて、後掲各証拠によれば、以下の事実が認められる。

1  被告は、昭和六三年に設立され、レストランを営んできたが、平成六年四月に開店したイタリアンレストランが好調であったため、平成七年一一月に一号店である静岡店を開店した。「ジャカッセ」は、そのメニューからして、若い女性や家族連れ、OLが対象であり、右フランチャイズチェーン全体の来客数の七割が女性であった。

原告代表者は、同年三月末ころから、東京都渋谷区渋谷二丁目において、訴外株式会社あじときのフランチャイズ店として弁当店「ユーマート青山店」を経営し、順調な経営状態であったところ、かねてよりフランチャイズ形式のコーヒー店を経営したいと思っていたため、同年四月ころ、弁当店の店舗の紹介をしてもらった朋和の従業員土井に、渋谷か青山でコーヒー店の経営ができる店舗を紹介してくれるよう依頼した。

(甲52、乙1、証人中川、原告代表者本人)

2  原告代表者は、同年六月二三日、被告の経営する恵比寿の「ピカソ」で、英明、娘夫婦、次女とともに中川及び被告の従業員である吉尾に会ったが、その際、中川は、最初、原告代表者に対し、「ピカソ」の一階にもあるプコタン鍋料理店の「うしべ亭」のフランチャイズ経営をもちかけたが、原告は夜が遅く、酒も出す店であることからこれを断った。

ついで原告代表者がコーヒー店を経営したいと話すと、中川は、ピザやパスタなどの大皿料理のイタリアンレストランである「ジャカッセ」を紹介し、コーヒーも出すし、ジェラートなどがおいしいと評判だと話したので、原告代表者は興味を持ち、同年七月一五日に広島店に見学に赴いた。

(前記第二の一3、甲57、原告代表者本人)

3  原告が、フランチャイズシステムの加盟を申し込んだ時に、有効期間が一年間とされていたことについて、中川に対し、「一年間で適当な場所が見つからなければ終わりなのですか。」と尋ねると、中川は、「そのようなことはないですよ。いい場所が見つかるまで二年でも三年でも探してあげます。」と返答した。

原告代表者は、渋谷で弁当店を経営しており、同店には他に従業員もいないことから、「ジャカッセ」のフランチャイズ店としては、東京、できれば渋谷か青山で物件を探してくれるよう、中川に要望していた。

原告代表者は、自らが目を付けていた青山学院大学西門前の物件について、中川に打診したところ、同人は、学校周辺は経営効率が悪いので勧めることができない旨回答し、この話は進まなかった。

その後、中川は、南青山三丁目交差点前の物件、神宮前五丁目の物件、あるいは地下鉄西新宿駅前アイランドの一角の物件を原告代表者に紹介し、一緒に見に行ったが、中川はいずれも「ジャカッセ」には適当ではないといって、やはり話は進展しなかった。

被告は、同年八月中旬ころ、原告代表者に対し、店内内装の図面を作成した上で田町の物件を紹介したが、同物件の管理会社側の都合を理由に断られた。

(前記第二の一3、甲52、57、乙1、原告代表者)

4  原告代表者は、同年九月一九日、吉尾から本件店舗を紹介されたため、同月二〇日及び二三日に英明と一緒に横浜関内の物件や右店舗を見に行った。当日の元町商店街は年二回のチャーミングセール中であり、普段よりも賑わっていた。その際に、原告代表者らは元町通りに面する建物の二階に位置する競合店であるイタリアンレストランのカプリチョーザを視察し、収益を上げていることを確認したため、やっていけるとの印象を持ち、中川からカプリチョーザは昼間のアイドルタイムを休むが、「ジャカッセ」はその時間も休まずに営業するので、もっと収益が上がるとの話を聞いたため、原告代表者は、同年一〇月三日、本件店舗に出店することにした。

ただ、当時の元町商店街は、平日午後七時に商店街が閉店した後は、人通りが極めて減少する状態であった。

原告代表者は、被告から示された収支計画については、特段の異議を述べなかった。

本件店舗の開業準備資金は、英明の経営する不動産会社の倉庫に使用していた土地を売却して用意した。

(前記第二の一4、甲50、57、証人中川、原告代表者本人)

5  本件店舗の二階客席中央に間仕切りを設けたのは、二階の中央に天井を支える柱が存在したためであった。

元町店の開業に伴い、原告代表者は多摩市桜ケ丘から東京都目黒区八雲に転居した。

(前記第二の一8、甲2、証人中川、原告代表者本人)

6  元町店開店時に採用できていなかった従業員を本件業務委託期間中に採用し、被告において実地に訓練指導することになっていたが、被告から派遣された従業員が店内で食材を使って飲食していたことに原告側が反発し、右業務委託は、英明の要請で、平成八年六月までの予定であったところを同年五月で打ち切られた。

また、原告代表者等の広島店における研修は実施されなかった。

被告の組織は、営業部、調理部、管理部に分かれており、それぞれ関東、東海、広島地区ごとにフランチャイズ部門を設け、各部門にスーパーバイザー担当者を置いていたところ、関東地区においては、営業を井川が、調理を鈴木が、管理を井上が統括していた。原告の元町店については、営業(サービス強化)を井川が、調理を鈴木の部下である三塚が、管理(経営分析)を井上がそれぞれ担当していた。

営業(サービス強化)については、井川もしくはその部下である鎌崎が元町店を訪れ、元町店の店舗評価を行うとともに、これに基づき指導を行った。

管理(経営分析)については、井上が、二か月前の経営分析表等を持参して、一か月に一回程度の頻度で定期的に元町店を訪れ、一回あたり二〇ないし三〇分間、原告代表者に対し、人件費が高すぎるとか、役に立たない人はすぐに辞めさせる等の経営の問題点について指示をした。

また、調理についても三塚が原告を指導するため、元町店を訪れたことがあった。

(甲52、乙13、16、18、20ないし23、証人中川、原告代表者本人)

7  原告が元町店を廃業した後、和孝がそれを引き継いだものの、その後撤退し、被告が同店を直営にて経営したが、結局閉店した。なお、競合店は現在も営業を継続している。

(証人中川)

二  争点1(被告の契約締結上の過失責任の有無)について

1  背信的な勧誘の有無について

(一) 確かに、中川の供述によっても、本件契約締結当時、被告にお台場への出店の話が不確実ではあるがあったことは確かに認められるものの、同人は、お台場への出店は採算の見込みがないと考え、お台場への出店要請を断っていたが、平成八年三月に、フランチャイズ店数の増加に伴い、研修センターを開設する必要に迫られたことから、お台場店を開設したと供述しており、その他に被告が主張するように好採算の見込みのあるお台場店への自らの出店を秘匿して、原告には採算の見込みのたたない元町店を勧めたと認めるに足りる証拠はない。

なお、原告代表者は、本件契約時に中川からお台場への出店計画がある旨の話を聞き、お台場へ出店したい旨要望したが断られた旨供述する(甲52)が、その時点では、原告は本件契約、本件業務委託契約及び本件店舗の賃貸借契約を締結していたとはいうものの、未だ現実の店舗の改装工事等には着手していない段階であり(前記第二の一5、6)、元町店への出店を撤回することも可能であったのに、結果的に同店への出店をしていることに照らせば、右供述が仮に事実であったとしても、それをもって、被告の勧誘が背信的であったということもできないというべきである。

(二) なお、原告代表者は、元町店は自宅から遠いのと、ユニマー卜青山店は自分以外はパートとアルバイトだけで手が足りず、広島店を見て運営していくのは無理だと思い、元町店への出店を断っているのに、被告が同店を執拗に勧めたと供述し(甲52、57、原告代表者本人)、確かに、原告代表者は、当初東京の青山か渋谷付近でコーヒー店を経営したいと考えて、物件を探していたこと(右一3)、当時の原告代表者の自宅は多摩市桜ケ丘にあり(右一5)、元町への通勤にかなりの時間を要することが認められるものの、他方、原告においては、広島店を見学した二日後、どこに出店するのかも未定の段階で「ジャカッセ」フランチャイズシステムへの加盟を申し込み、加盟金一〇〇万円を被告に対し支払っており(前記第二の一3、右一2)、その際、中川の方は、いい場所が見つかるまで二年でも三年でも探してあげる旨述べていたこと(右一3)、本件店舗の紹介を受けてから原告代表者は英明とともに横浜の関内や元町の本件店舗を二度も見に行っており、その結果原告代表者は元町店でやっていけるとの印象を持ったこと(前記第二の一4、右一4)、原告が本件店舗への出店を正式に決定する前の時点で、本件店舗の賃貸借に関する重要事項説明書が作成されたこと(前記第二の一5、右一4)、原告は本件店舗へ出店していることの各事実が認められることに加えて、中川は原告が元町店への出店を断ったことはなく、むしろ強く要求していたと供述していること(乙1、証人中川)をも併せて考慮すると、原告代表者の右供述は未だ採用することができず、被告が元町店への出店を拒絶している原告に対し執拗に勧誘したとまで認めるに足りない。

2  立地条件の調査義務違反の有無について

(一) 確かに、被告も認めるとおり、フランチャイズシステムにおける出店の成否は、立地条件に左右されることが多く、また、フランチャイズ契約に加盟しようとする者にとって最大の関心事は、加盟後にどの程度の収益を得ることができるかどうかの点にあるから、右契約を締結する段階において、フランチャイザーが加盟店となろうとする者に提供する当該立地条件における出店の可能性や売上予測等に関する情報は、加盟店となろうとする者が右契約を締結するかどうかを判断するための重要な資料となるものであるから、フランチャイザーは、右契約を締結する段階において、加盟店となろうとする者に対して、できる限り客観的かつ正確な情報を提供する信義則上の義務を負っているというべきである。

この点、立地条件の調査に関して、被告は、元町店の開店に際して、石川町駅前の人の流れ、競合店の客の入り具合、行政官庁や民間企業の出している就業者数、乗降者数、大学の学生数、観光客数等のデータを調査した旨中川は供述しているものの(証人中川)、調査結果を示す客観的な書証を何ら提出していない上、その理由として、原告から損害賠償を求める内容証明郵便を受領している(前記第二の一14)のに、平成一〇年三月の被告本社移転(前記第二の一15)の際に調査結果を廃棄したとしている点や、調査結果が文書の形で存在することを前提にしながら、それを口頭で原告に伝えたという供述内容は不自然というべきであるし、原告代表者においても、被告から右調査結果については何らの資料も受け取っておらず、また報告も受けていない旨の供述をしていること、また被告は「ジャカッセ」の店舗の需要予測については最終的には経験値によっている旨中川が供述していること(証人中川)をも併せて考慮すれば、文書の作成を伴うような詳細な立地条件調査がなされたとする点に関する同人の供述は採用することはできない。

(二) しかし、フランチャイザーは、右契約を締結する段階において、加盟店となろうとする者に対して、できる限り客観的かつ正確な情報を提供する信義則上の義務を負っているといっても、フランチャイジーも独立の事業者であり、最終的に当該場所に出店するか否かは、自ら立地条件や売上予測を考慮した上で自己の責任において決定すべき立場にあるのであるから、フランチャイザーは、加盟店となろうとする者に対し、当該立地条件における出店の可能性や売上予測等に関して、常に詳細な調査を実施すべき義務を負っているとまでいうことはできないのであって、フランチャイズ契約の内容、その業種の特殊性、加盟店となろうとする者の当該候補地に対する出店意欲や今までの営業経験及び資力、また出店しようとしている候補地の状況等の諸般の事情に照らし、いかなる程度の調査義務を負っているかが判断されるべきである。

この点、本件においては、前記第二の一6(一)のとおり、本件契約において、被告は、原告の開店に先立ち、店舗候補地の立地条件、売上予測、店舗設計等につき調査研究の上、原告を指導するとされていたところ、この点について、原告代表者自身も、中川から、カプリチョーザは昼間のアイドルタイムを休むが、「ジャカッセ」はその時間も休まずに営業するので、もっと収益が上がるとの話を聞いたことを認めていることに照らせば、被告においても、少なくとも一定の競合店に関する調査等を行ったことは推認することができる。

そして、その結果を踏まえて、被告においては、原告に対し、損益分岐点を月間売上額六八〇万円とし、そのほかに月間売上額が八〇〇万円、九〇〇万円及び一〇〇〇万円の三つのモデルケースを設定し、それぞれの場合の粗利益、販売管理費、営業利益、経常利益、償却費内部留保、差し引き現金収支についてのシミュレーションを作成して説明しており(前記第二の一7)、右収支計画は後記3で述べるように不合理であるとも評価できず、原告からも右計画について特段の異議もなされなかったこと(右一4)、原告は、イタリアンレストランとは業態が異なるとはいうものの、飲食物を提供する弁当店のフランチャイジーを営んでおり、本件開業準備資金の八〇〇〇万円近い金員も夫の援助により借入れなしに調達していること(前記第二の一13、右一1、4)、「ジャカッセ」は主として若い女性を顧客層とするイタリアンレストランである(右一1)点で、通常のレストランとは異なる特色を有するとはいうものの、本件店舗が周辺に有名な観光地を擁する著名な元町商店街に位置している(前記第二の一4)ため、土曜日、日曜日には右のような顧客の来店が期待されると考えることは不合理とはいえないこと、実績においても、開業月と廃業月とを除く元町店の平均月間売上高は右損益分岐点を上回っていること(前記第二の一7、10)、原告代表者においても事前に視察をして、競合店の状況を確認していること(右一4)等の諸般の事情に照らせば、未だ被告が本件店舗に関して合理的な売上予測を行うに足るだけの立地条件調査を行っていないとまで断定することはできないというべきである。

3  収支計画の杜撰について

前記第二の一6(一)のとおり、本件契約において、被告は、原告の開店に先立ち、売上予測につき調査研究の上、原告を指導するとされていたところ、元町店の平成八年一月から一二月における平均売上は月額八八一万円、一か月あたりの人件費は三三六万八〇〇〇円、水道光熱費は売上の五・六パーセント、消耗品費は売上の七・九パーセントであったが、被告の作成した収支計画においては、人件費は売上月額八〇〇万円の場合に二〇五万二〇〇〇円、九〇〇万円の場合に二三二万二〇〇〇円とされ、水道光熱費は売上の四パーセント、消耗品は売上の二パーセントとされていたことが認められる(前記第二の一7、10)。

しかし、右収支計画と実績とが合致していないからといって、直ちに収支計画が杜撰であったといえないことは明らかであり、他方、人件費についていえば、平成九年一月は、売上七一五万五〇〇〇円に対し二六七万五〇〇〇円、同年二月は売上七八一万一〇〇〇円に対し二四〇万円、同年三月は売上八七五万四〇〇〇円に対し二五二万八〇〇〇円、同年四月は売上七六一万二〇〇〇円に対し二四九万八〇〇〇円、同年五月は売上八四六万六〇〇〇円に対し二八一万九〇〇〇円と平成八年度と比較して人件費が削減され、収支計画により近づいたこと、平成八年一〇月から消耗品費の支出が抑制され(甲30の1)、平成九年一月から五月までの消耗品費の売上に占める割合は二・五パーセントであり、平成八年度の七・九パーセントに比較して大きく改善されていること(前記第二の一10)がそれぞれ認められることからすれば、被告の収支計画が杜撰であり、売上予測を行う義務に違反したとまで認めることはできない。

なお、原告が廃業後、元町店を引き継いだ業者も同店から撤退し、その後被告は同店を直営にしたが、結局同店から撤退したことが認められる(右一7)ものの、中川が、その原因について、元町店のサービスや味に対する近隣の評判が落ちていたため、いったん離れた顧客を呼び戻すことが困難であった、また、みなとみらいや金沢八景などに百貨店を含めた商業施設ができ、週末の人出が分散し、商圏の移動が起こり、元町が衰退したためである旨供述していることに照せば、未だ右事実から、右収支計画が杜撰であったとまで推認することもできないというべきである。

三  争点2(被告の債務不履行責任の有無)について

1  店舗設計の指導義務違反の有無について

前記第二の一6(一)のとおり、本件契約において、被告は、原告の開店に先立ち、店舗設計等につき調査研究の上、原告を指導するとされていたところ、原告において主張する点のうち、本件店舗の二階客席中央に間仕切りを設けたのは、二階の中央に天井を支える柱が存在したためであったと認められる(右一5)のであるし、二階すべてを客席と設計した等の点も一概に不合理と決めつけることはできないから、それをもって被告の右義務違反を肯定することはできないし、電気容量の設計について、原告が主張するように被告が紹介した設計業者との間でトラブルがあり、これが仮に業者側の義務違反に基づくものであったと仮定しても、これのみでは被告に店舗設計指導義務に違反する行為があったとまで推認することはできない。

2  スーパーバイザーの派遣義務違反の有無について

前記第二の一6(二)のとおり、本件契約において、被告は、原告に対し、定期的にスーパーバイザーを派遣し、営業方法、品質管理等につき原告を指導援助するとされていたところ、右一7で認定したとおり、営業(サービス強化)については、井川もしくはその部下である鎌崎が元町店を訪れ、元町店の店舗評価を行うとともに、これに基づき指導を行い、管理(経営分析)については、井上が、二か月前の売上を分析した書類を持参して、一か月に一回程度の頻度で定期的に元町店を訪れ、一回あたり二〇ないし三〇分間、原告代表者に対し、人件費が高すぎるとか、役に立たない人はすぐに辞めさせる等の経営の問題点について指示をし、また、調理についても三塚が原告を指導するため、元町店を訪れたことがあったことが認められ、それに加えて、右指導により、前記二3で述べたとおり、人件費が一部削減されたことからすれば、被告において右指導援助義務に違反したとまでは認められない。

3  経営分析義務違反の有無について

前記第二の一6(三)のとおり、本件契約において、被告は、原告に対する経営指導の一環として、毎月原告の店舗の経営分析を行い、その結果を翌々月末までに原告に報告するとされていたところ、この点は、右2で述べたとおり、井上が、二か月前の売上を分析した書類を持参して、一か月に一回程度の頻度で定期的に元町店を訪れ、一回あたり二〇ないし三〇分間、原告代表者に対し、人件費が高すぎるとか、役に立たない人はすぐに辞めさせる等の経営の問題点について指示をしていたのであるから、被告において、右経営分析を実施する義務を怠ったとまで断定することはできない。

なお、原告代表者はそれが二か月遅れであった旨供述するが、右条項によれば、経営分析の結果は翌々月末までに原告に対して報告することとされていたのであるから、右事実は何ら右条項に違反しない。

4  教育指導義務違反の有無について

前記第二の一6(四)のとおり、本件契約において、被告は、原告が営業を開始するにあたり、店長及び従業員一名以上に対し教育指導を実施するとされていたところ、元町店開店時に採用できていなかった従業員を本件業務委託期間中に採用し、被告において実地に訓練指導することになっていたことが認められ(右一6)、実際被告は本件業務委託を行っているのであるから、それに加えて、原告代表者等の研修を広島店で実施しなかったからといって、被告が右義務に違反したとまではいえない。

5  広告宣伝義務違反の有無について

(一) 原告は、原告は独自の方法による広告の機会を制限されていたのであるから、被告において元町店のために効果的な宣伝をすべき義務があったと主張し、確かに、前記第二の一6(五)のとおり、本件契約において、広告宣伝は、各加盟店につき統一した方法で行うとされ、このため原告は、独自の方法で広告はしないものとし、原告が特別な事情により独自の方法で広告宣伝をするときは、被告と原告が協議して決定した方法に基づき行い、原則として原告が独自の方法での広告をすることは制限されていたことが認められる。

しかし、フランチャイジーも独立した事業者であって、基本的に広告宣伝は各事業者の責任で行うべきものと解され、前記第二の一6(五)のとおり、広告宣伝費が加盟店の負担とされていたことからすると、右条項はフランチャイズチェーンの統一的イメージを保持するために、あくまでも独自の方法による広告宣伝を加盟店が行うことを原則として禁止したものであって、広告宣伝一切について加盟店が行うことを禁止して、被告の責任においてそれを実施する旨定めた規定でないことは明らかである。

したがって、右規定によれば、原告が各加盟店につき統一した方法による広告宣伝を行うことは何ら制限されていないのであり、また被告と協議することにより原告が独自の方法で広告宣伝することも可能であるのだから、被告が右条項により加盟店のために効果的な宣伝を行うべき義務を負っていたとまでいうことはできないというべきである。

(二) また、原告の主張する、ユニフォームやロゴマークの点に関する事実も本件契約における具体的な条項に違反したとは言い難い。

6  内外装指示義務違反の有無について

原告は、内外装による広告の機会を制限されていたのであるから、被告において内外装につき集客をするのに十分な指示をすべき義務があったと主張し、確かに、前記第二の一6(六)のとおり、本件契約においては、原告は、本件契約書二条記載の場所において店舗を設けるについては、同一イメージ維持のため、店舗の内外装につき被告の指示に従うものとされていたことが認められる。

しかし、右条項はフランチャイズチェーンの統一的イメージを保持するためにはやむをえない制限といわざるをえず、原告もフランチャイズチェーンに加盟した以上、被告の指示の内容が著しく不合理でない限り、その指示に従うのは当然のことである。

原告が主張する、内外装は通常のものであり、人目を引き、際だった好感を与えるものではなく、機能的なものではなかったという事由は、抽象的で、原告の主観的な印象にすぎず、被告の内外装に関する指示が著しく不合理であったことを基礎づけるものではないことは明らかであり、被告に原告が主張するような義務違反を認めることはできない。

四  したがって、被告において、原告が主張する義務違反を認めることはできないから、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。

(裁判官 中垣内健治)

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