東京地方裁判所 平成10年(ワ)19768号 判決
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第二 事案の概要
本件は、家庭裁判所において成立した調停の調停条項の有効性が争われた事案である。
一 争いのない事実等(証拠を掲記した事実は当該証拠により認められる。)
1 原告と被告とは、昭和四四年四月二日に婚姻の届出をした夫婦であったが、東京家庭裁判所平成五年(家イ)第五九二号夫婦関係調整事件(以下「本件家事事件」という。)において、平成五年一〇月一三日、原告と被告が離婚する旨の調停(以下「本件調停」という。)が成立した。
2 本件調停の調停条項(以下「本件調停条項」という。)は左記のとおりである。(甲一。なお、以下の調停条項中の「申立人」は、本訴における「原告」であり、「相手方」は「被告」である。)
記
第一項 申立人(夫)と相手方(妻)は、本日調停離婚する。
第二項 当事者間の二女夏子(昭和四九年二月一一日生)及び三女秋子(昭和五一年二月四日生)の各親権者を父親である申立人と定める。
第三項 相手方は、当事者間の長男一郎、長女晴子、二女夏子及び三女秋子の将来の出費に備え、同人たちの各名義で一人当り金六〇万円あて預金し、当該預金証書は相手方において同人らのために保管するものとする。
第四項 当事者双方は、相互の立場を尊重し、今後相手の信用を失墜させるような行動をしないことを確約する。
第五項 当事者双方は、本件離婚に関する紛争は一切解決したものとし、今後は相互に名義の如何を問わず何ら金銭その他の請求をしない。
二 原告の主張
1 被告は平成五年三月一〇日、同月三一日、同年五月一二日、同年六月二三日、同年七月二六日、同年九月二〇日及び同年一〇月一三日の本件家事事件の調停期日において、被告が原告との婚姻後取得した全ての財産及び子供名義の預金を明らかにするようにとの原告の求めに対し、書面により、調停委員を介して、又は、直接口頭で、被告が原告との婚姻後取得した財産は新宿区富久町所在の土地建物及び大厚木カントリー倶楽部のゴルフ会員権が全てであり、子供名義の預金は存在しない旨を述べた。
原告は、被告の右回答を信じて本件調停を成立させることに同意した。
しかるに、被告は、本件調停成立時において、右財産以外に、ハワイの別荘、今市カントリー倶楽部のゴルフ会員権、銀行預金等の財産を有していた。
したがって、本件調停を成立させる旨の原告の意思表示は被告の詐欺によるものである。
原告は、被告に対し、平成九年一〇月二〇日頃到達の家事調停申立書により、本件調停を成立させる旨の原告の意思表示を取り消す旨の意思表示をした。
2 原告は、平成九年一〇月二〇日、被告を相手方として、財産分与を求める調停を申し立てた(東京家庭裁判所平成九年(家イ)第五九六一号事件)。右調停を行うために、本件調停条項の第五項が無効であることを確認する必要がある。(確認の利益)
三 被告の主張
1 調停の無効確認を求める訴は現在の法律関係の存否の確認を求めるものではないから、本件訴は不適法である。
2 財産分与の請求は離婚後二年を経過したときはすることができないところ、原告と被告が離婚したのは平成五年一〇月一三日であるから、財産分与のために本件調停条項の五項の無効確認を求める訴の利益はない。
3 調停条項の一部の無効の確認を求めることは、信義則上許されない。
4 被告は、本件家事事件の調停期日において、原告に対し、書面により、調停委員を介して、又は、直接口頭で、被告が原告との婚姻後取得した財産は新宿富久町所在の土地建物及び大厚木カントリー倶楽部のゴルフ会員権が全てであり、子供名義の預金は存在しない旨を述べたことはなく、本件調停は係る事実を前提として成立したものではない。
四 本件の主たる争点は、(1)本件訴が適法か否か、(2)被告が、本件家事事件の調停期日において、原告に対し、書面により、調停委員を介して、又は、直接口頭で、被原告との婚姻後取得した財産は新宿区富久町所在の土地建物及び大厚木カントリー倶楽部のゴルフ会員権が全てであり、子供名義の預金は存在しない旨を述べたか否か、及び(3)本件調停が、被告が右財産しか有していないことを前提として成立したものか否かである。
<以下省略>