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東京地方裁判所 平成10年(ワ)20791号 判決

原告 日本レストランシステム株式会社

右代表者代表取締役 大林豁史

右訴訟代理人弁護士 麦田浩一郎

被告 株式会社三越

右代表者代表取締役 井上和雄

右訴訟代理人弁護士 田多井啓州

同 浅井隆

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、一六二五万四〇〇〇円及びこれに対する平成一一年一〇月六日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2  原告が、別紙物件目録三記載の店舗について、原、被告間の平成四年三月二一日付けの賃貸借契約に基づく平成一〇年三月一日以降の固定賃料が一か月一九五万一二〇〇円であり、同店舗の売上高が一六二六万円を超過した場合における売上歩合賃料が右超過額の一二パーセントであることを確認する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  1につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

(一) 原告は、飲食業を主たる事業とし、日本全国で二〇〇店舗以上のレストランチェーンを展開している株式会社である。

(二) 被告は、日本全国で最も有力な百貨店業を営む株式会社であり、別紙物件目録一記載の建物(以下「アルタ館」という。)について、物販又は飲食を業とするテナントとの間で、その各階のフロアにおける店舗営業に関する契約を締結している。なお、被告は、アルタ館をもと所有していたが、現在は訴外ダイビル株式会社がこれを所有している。

(三) 原告は、昭和六三年三月三一日、アルタ館五階において、別紙物件目録二記載の店舗(以下「五右衛門店」という。)を運営し、平成四年三月二一日、アルタ館地下一階において同目録三記載の店舗(以下「キリコ店」という。)を運営して現在に至っている。

なお、原告は、昭和六二年三月二一日、被告との間で、アルタ館六階にカレーハウス「ボルツアルタ店」を出店していたが、被告がアルタ館六階全体を飲食店フロアから物販店フロアに変更したため、同店を閉店したうえ、キリコ店を出店したものである。

2  五右衛門店及びキリコ店についての店舗営業に関する契約の締結

(一) 原告は、昭和六三年三月三一日、被告との間で、五右衛門店に関し、次の内容の店舗営業に関する契約(以下「本件第一契約」という。)を締結した。

(1)  一か月の原告が被告に対して支払うべき金額

<1> 一三五万四五〇〇円

<2> ただし、一か月の売上高が九〇三万円を超えたときは、その超過額の一五パーセント相当額を加算する。

(2)  一か月の清掃費 八万五〇〇〇円

(3)  保証金 三八七〇万円

ただし、被告は、原告に対し、平成一〇年四月を第一回とし、以降一〇年間にわたり、利息を附さないで毎年四月に均等に返還する。

(二) 原告は、平成四年三月二一日、被告との間で、キリコ店に関し、次の内容の店舗営業に関する契約(以下「本件第二契約」という。)を締結した。

(1)  一か月の原告が被告に対して支払うべき金額

<1> 二四三万九〇〇〇円

<2> ただし、一か月の売上高が一六二六万円を超えたときは、その超過額の一五パーセント相当額を加算する。

(2)  一か月の清掃費 一〇万円

(3)  保証金 一億〇八四〇万円

ただし、被告は、原告に対し、平成一五年三月三一日を第一回とし、以降一〇年間にわたり、利息を附さないで毎年三月三一日に均等に返還する。

3  本件第一、第二契約の法的性質

(一) 被告とテナントとの間の前記店舗営業に関する契約は、形式上は営業委託契約とされており、本件第一、第二契約の契約書には、その表題が「営業委託契約書」とされ、第一条には「甲は本店舗で営業する飲食営業及びこれに付帯する業務を乙に委託し、乙は甲の営業方針に従い、その指揮監督の下に誠実にその業務を遂行するものとする。」とあり、形式上は営業委託契約の体裁となっている。

(二) しかしながら、建物ないし店舗の使用関係が賃貸借か営業委託かはその実体に即して判断されるべきであり、両者を区別する決定的かつ重要な要素は、建物ないし店舗の使用者が自己の計算において営業を行っているか否か、建物の所有者ないし委託者が右営業の収益の如何にかかわらず、一定額以上の金員を取得しているか否かであって、契約書の形式的文言のみによって決せられるものではないというべきである。

(三) 本件において、以下のとおり、本件第一、第二契約の実質が賃貸借契約であることは明らかである。

(1)  費用負担

原告は、本件各店舗の企画、開発、内装・設備の施工及び什器備品の選定、搬入等の費用をすべて負担した。また、原告は、右費用の外に、水道光熱費等も負担している。

ちなみに、原告は、五右衛門店に投下した設備投資額は、昭和六三年三月三一日の開店時においては、投資額合計三四〇七万六六〇〇円であり、その内訳は、(ア)店舗デザイン料一一〇万円、(イ)施工監理料二〇万円、(ウ)被告施工の乙工事(原告の費用負担の設備工事)四一〇万円、(エ)丙工事(原告が施工費用を負担する内装・設備工事)二三三〇万円、(オ)厨房器具、椅子、レジスター等四三七万六六〇〇円、(カ)調理器具等約一〇〇万円である。また、飲食店フロアから物販フロアへの変更に伴い、同店の平成八年九月三〇日における改装オープン時の投資額は合計九三七万一〇〇〇円であり、(キ)乙工事五三〇万四五〇〇円、(ク)家具九八万八八〇〇円、(ケ)厨房器具二一九万六一六六円、(コ)洗浄機七二万三〇六〇円、(サ)調理器具一四万五六四三円、(シ)文具一万二八三一円である。

(2)  営業損益の帰属等

原告は、五右衛門店又はキリコ店(以下「本件各店舗」という。)を独自の判断で営業しており、本件各店舗に関して、従業員の選任監督、教育訓練及び管理をすべて行うほか、内装、什器及び備品の設計、決定、原材料の選択、仕入れ、顧客へ提供する飲食物の品目、調理方法、調理、顧客へのサービスその他の店舗運営、販売促進等の業務をすべて決定し、営業成績の如何にかかわらず、これらの費用も全部負担しており、自らの計算で営業しているものであって、両店の損益は原告に最終的に帰属している。

(3)  固定賃料の取得

被告は、飲食店経営のために原告に両店舗を使用収益させ、その対価として、本件各店舗の営業成績の如何にかかわらず、原告から一定額、すなわち、固定部分又はこれに超過売上高の一五パーセントを加算した額の金員を受領し得るものであり、最低保証額として、五右衛門店については一か月一三五万四五〇〇円、キリコ店については一か月二四三万九〇〇〇円の金員を取得している。また、原告は、両店の売上を売上高として計上して税務申告をしており、被告に対する支払金額はこれを賃料として損金処理している。

なお、現在の商業ビルの賃貸借の大半は、売上歩合による賃料制度が採用されており、その多くは、固定賃料のほか、超過売上高に一定の割合を乗じた金額(売上歩合賃料)によって賃料額が決定されているものであり、本件第一、第二契約が特別な内容を定めているわけではない。

(4)  本件各店舗の建物としての独立性

店舗の賃貸借において場所的固定性は重要な要素であるところ、本件各店舗は、アルタ館の固定の区画として、壁、間仕切り、シャッター等で他の店舗やフロアと明確に区分されており、利用上、構造上の独立性を有する建物である。なお、原告と被告は、本件第一、第二契約契約締結前から、五右衛門店の場所としては従前「ティキティキ」店が開店していた場所を、キリコ店の場所としては従前「つな八」が営業していた場所をそれぞれ賃貸借の目的とすることを前提としていたから、店舗の面積、位置は当事者間においては特定されていた。

(5)  敷金ないし保証金の預託

原告は、被告に対し、本件各店舗の使用に関し、五右衛門店については三八七〇万円、キリコ店については一億〇八四〇万円という多額の保証金を預託している。

(6)  被告における実質的な指揮監督の不存在

<1> 被告は、右両店の運営について実質的、具体的な指揮監督をまったく行っていない。

<2> もっとも、被告は、売上代金を管理し、原告から売上高の報告を受けているが、テナントビルの賃貸借の多くは、後記の売上歩合賃料制を採用しており、また、賃料債権を確保するため、日々の売上高をテナントからオーナーが預っており、この点が賃貸借か否かを判断する要素とはならない。なお、本件各店舗の売上を被告の売上として計上しているか否かは知らない。

<3> また、被告は本件各店舗の保健所に対する営業許可を行っているほか、衛生に関する点検を行っているが、右許可の名義のみによって右各店舗の営業実体が変更されるものではないし、本件両店舗の衛生管理についても、原告が主にこれを担当し、被告は単に検査をしているに過ぎない。なお、テナントビルにおいて、賃貸人であるオーナーがこのような衛生に関する点検をする例は多い。

<4> 被告は、アルタ館全館について、広告、宣伝をしているが、被告が本件各店舗のみの広告宣伝を独自に実施したことはなく、これらの広告宣伝は専ら原告が担当している。

<5> また、原告は、アルタ館六階で営業していたボルツアルタ店を地下一階のキリコ店へ変更したが、右は、平成四年三月二一日、ボルツアルタ店の代替店舗として、被告からアルタ館地下一階の店舗の提供を受けたものであって、被告の指揮によったものではなく、かつ、キリコ店は、原告が独自に企画、立案した店舗である。

4  本件第一契約の債務不履行について

(一) 被告は、賃貸人として、民法六〇一条、六〇六条に基づき、原告に対し、店舗を使用収益に適した状態で引き渡し、これを使用収益させる義務を負担しているのみならず、本件店舗を引渡した後においても、原告の使用収益を妨害しないだけでなく、その十分な使用及び収益をさせることに努むべき積極的な義務、すなわち、賃借物件以外の共用部分、店舗の周囲又はフロア全体も含めて、原告が店舗営業により収益が挙げられるような営業環境を維持、保全、整備すべき義務(以下「営業環境維持義務」という。)を負担しているというべきである。

(二) このことは、次の諸点からも明らかである。

(1)  本件第一契約の一五条は、「被告の許可なしに被告から委託された業務を変更」できない旨を規定するところ、右は業種、業態の変更に関し、原告のみに止まらず、被告も同様に原告の許可なく業種、業態の変更ができないことを規定したものと解し得る。

(2)  被告は、平成四年三月ころ、アルタ館六階全体を飲食店フロアから物販店フロアに変更した際、同階で飲食店を経営していた原告に対し、同館の地下一階に代替店舗を提供し、原告に対し、補償を行っているという前例がある。

(3)  原告は、被告がアルタ館五階を飲食店フロアとして企画、開発し、その営業方針下に同階を運営するという方針を表明したことを信頼して五右衛門店を開設した。すなわち、

<1> 一流の商業ビルのオーナーがテナントをビル内に募集する場合、各階ごとに営業方針を事前に企画、立案し、テナントの業種、営業内容を指定したうえで募集し、各階を統一した企画、営業方針の下に運営するのが通常である。

<2> 飲食店は、入店できる顧客数に限界があるため、売上高が物販店より低く、賃料は安くなる傾向があるため、より多くの顧客を吸引する手段、施策として、飲食店街を設置する必要がある。

<3> 大型の商業ビル内の上層階テナント、特に飲食店は、道路に面した路面店と異なり、フリーの通行客が入店することは期待できないから、路面店と同様の顧客吸引力を獲得するには、飲食店街を構成し、その集合による相互、相乗作用によることが必要であり、フロア全体が飲食店街として構成されることが不可欠である。

<4> 被告も、アルタ館の五、六階を飲食店街として運営する方針の下に、企画、立案し、飲食業を業とするテナントを募集していたものであり、昭和六三年当時、アルタ館五階は、とんかつの「和幸」、京風ラーメンの「あかさたな」、お好み焼きの「じゅうじゅう」、カレー&トロピカルドリンクの「ティキティキ」、タコ焼の「TACO」といった飲食店によって構成された飲食店街であった。

<5> 原告は、アルタ館五階フロアが飲食店街を構成し、これが維持されるであろうとの信頼の下に多額の設備投資をして、昭和六三年三月、「ティキティキ」の後に五右衛門店をオープンした。

(4)  しかるに、被告は、原告の右信頼に反して、アルタ館五階フロアを物販フロアに変更した。すなわち、

<1> アルタ館五階は、飲食店の退店が続き、「和幸」「あかさたな」が平成七年八月に同フロアから各退店してから、被告は、新規に飲食店舗を入店させず、原告が右未入店舗に飲食店を出店申出をしてもこれを拒否して右未入店舗部分で物販の催事を行っていた。

<2> 被告は、アルタ館五階を飲食店フロアとして維持、運営するという方針を放棄し、平成八年三月二五日、原告に対し、アルタ館五階に飲食店を入店させることを断念した旨、同フロアにはアメリカンカジュアルをベースとしたスポーツ系、ヒップホップ系、エスニック系のファッションを中心としたカップルで買い物ができるユニセックスの物販テナントを入店させることとする旨、同年八月からリニューアルのための工事を実施する旨を通知した。

<3> 原告は、アルタ館五階が物販フロアになると、飲食店舖は五右衛門店のみとなり、営業時間の食違いや客層の相違、飲食店の併存による相乗効果がないことなどから売上の向上が期待できず、右リニューアル計画に反対であるとの意向を表明したが、被告と協議した結果、平成八年四月二四日、リニューアル後に五右衛門店の売上が低下した場合、その売上動向を見極めた上で、原告が被告へ支払うべき金額について原告と被告が誠実に話し合いを進めることを確認した。

<4> 右確認は、原告と被告との間で話し合いが成立しないときは、被告は、原告の許諾又は原告に対する補償なしにアルタ館五階を飲食店フロアから物販フロアへ変更することが許されないことを前提としており、原告は、右前提のもとに、アルタ館五階を物販フロアに変更することを承諾した。

<5> しかるに、被告は、本件第一契約又はこれに付随する右確認の趣旨に反し、原告に対し、代替店舗の提供や相応の補償金の提供による退店を求めるなどの提案もしないまま、原告の許諾なしに被告は本件五階を飲食店フロアから物販フロアに変更した。

(5) <1> その結果、現在は物販店フロアの中に五右衛門店一店しか飲食店が存せず、フリーの顧客を集客することが困難となり、最初から五右衛門店の存在を知っている顧客しか獲得できない傾向となり、顧客吸引力に著しく欠けた状態になった。

<2> また、飲食店は営業時間帯が午前一一時から午後一一時であり、物販店のそれは午前一一時から午後八時までであることから、物販店閉店後はアルタ館の一階以上の階で午後八時から午後一一時まで営業しているのは五右衛門一店のみになり、エスカレーターは止まり、エレベーターしか運転していないし、トイレへの道筋以外は照明が落とされ、物販店の商品に網をかけて防護し、守衛まで配置されている状況であって、営業上不利な状況であり、それまで売上高の比率が高かった午後八時以降の時間帯にも客足は途絶える状況となっている。

<3> 更に、五右衛門店は、主に若い女性客を対象としているが、被告は、アルタ館五階を物販店フロアに変更しただけではなく、メンズファッションフロアに変更したため、一方的にその客層まで変更させたものである。

(6)  このような五右衛門店の使用状況又は原告と被告との交渉経緯等に照らすと、被告は、営業環境維持義務に基づき、アルタ館五階フロアの店舗を物販店並みの賃料ではなく、飲食店としての経営が可能な賃料でテナントを募集するなどして、飲食店街として維持、整備し、これを発展させるべきであったことは明らかであり、かつ、これが容易であった。

(三) したがって、被告は、営業環境維持義務に基づき、アルタ館五階フロアを飲食店街として維持、整備すべきであり、現在のような経済状況の変化が著しい場合、商業ビルのフロアの構成を変更する必要があることは一般論としては認めざるを得ないものの、飲食店フロアとして維持することが困難である場合には、本件第一契約上又は信義則上、少なくとも、その物販店フロアへの変更に際して、原告に対し、その承諾を得るか、その損害を賠償し、あるいは相応の補償をして退店を求める等の措置を講ずべき義務を負うものというべきであるところ、原告の許諾又は原告に対する損害買収又は補償なしに、同階を飲食店フロアから物販フロアに変更したものであり、その結果、原告は、五右衛門店を十分に使用収益し得ず、その営業に支障を来したものである。

(四) 原告は、被告の右債務不履行により、以下の損害を被った。

(1)  五右衛門店の売上は、アルタ館五階が物販店フロアへ改装される前の一か月の売上高が平均一一八八万円であったところ、右改装時である平成八年一〇月一日後の平成九年一月ないし同年一二月までの一か月の平均売上高が九五二万五〇〇〇円であって、前者と後者との差額は二三五万五〇〇〇円であり、改装前と後で売上が低下したことは明らかである。なお、五右衛門店の平成八年一〇月から平成一一年九月までの売上高は別紙売上高一覧表に記載のとおりである。

(2)  五右衛門の右売上減少率は二〇パーセント前後となるところ、原告が新宿地区で経営するスパゲッティ専門店「五右衛門新宿ミロード店」「五右衛門新宿鈴屋店」「セイチェント新宿高島屋店」においては二〇パーセントというような売上高の大幅減少はないから、五右衛門店の売上高減少は、物販フロアへの変更が最大の原因である。

(3)  五右衛門店の場合、原材料費は売上高の約二八パーセント、水道、光熱費は、約一〇パーセントを占めるから、粗利益率は約六二パーセントとなるが、売上高の約二五パーセントを占める人件費は、その大部分が固定費であるものの、売上高に応じて変動する要素もあるので、原告の粗利益率を五〇パーセントとして計算すると、原告には一か月一一七万七五〇〇円の損害が発生したこととなる。

(五) 原告は、右損害のうち、四五万一五〇〇万円を一か月の損害とし、平成八年一〇月から平成一一年九月までの三六か月分合計一六二五万四〇〇〇円及びこれに対する右請求を追加した平成一一年一〇月五日の翌日である同月六日から支払済みに至るまで商法所定の年六分の割合による損害金を被告の債務不履行に基づく損害賠償として請求をする。

5  キリコ店に関する賃料減額請求

(一) 本件第二契約が賃貸借契約であることは前記のとおりであるところ、キリコ店の賃料及び共益費(以下「賃料等」という。)並びに保証金は、近隣のほぼ同等のビルのそれと比較すると著しく高額である。すなわち、

(1)  被告は、キリコ店の売上高の如何によらず、毎月二四三万九〇〇〇円もの最低保証額を取得し、右店舗においては、一か月の売上高が一六二六万円を超えたときは、その超過額の一五パーセント相当額を歩合賃料とする制度が採用されているが、右店舗の売上高は開店以来現在に至るまで、一か月一六二六万円を超えたことがなく、被告は賃料一か月二四三万九〇〇〇円の固定賃料を得ているものであり、右賃料は最近では同店の売上高の約三〇パーセントにも達している。

(2)  原告は、次の店舗を新宿において賃借しているが、賃料は次のとおりである。なお、この賃料は、坪当たりの一か月の売上高を三〇万円として計算した。

ビル名 一か月の坪当たりの賃料 一坪当たりの保証金

<1> 新宿ミロード 四万四六八九円 一六二万円

<2> 住友三角ビル 三万五九三八円  八九万二〇〇〇円

<3> エルプラザ  四万三七〇〇円 一五〇万円

<4> 新宿高島屋  四万一五七二円 二〇〇万円

<5> キリコ店   九万三六九〇円 四〇〇万円

(二) アルタ館に賦課される地価税の賦課は消滅し、土地の価格も数年来低下傾向であって、キリコ店の価格は平成四年三月二一日時点で一五億九八三〇万円であったものの、平成一〇年三月一日には四億五四九〇万円と下落し、アルタ館の土地に対する公租公課も平成四年度は六二三六万七七〇〇円であったが、平成一〇年には五二一一万四五〇〇円に低下している。また、平成四年における新宿の大規模ビルの賃料は一坪三万六五五七円であったが、平成一〇年には一坪一万八一七六円と大幅に下落している。

しかも、現在は平成不況といったデフレ経済下の不景気な経済動向であり、キリコ店の賃料は、近隣の類似店舗の賃料と比較して不相当に高いうえ、アルタ館地下一階のテナントの構成がキリコ出店当時と変わって、飲食店用フロアに適さなくなっているからキリコ店の賃料は不相当なものとなっている。

(三) 原告は、被告に対し、平成一〇年二月二五日、キリコ店の一か月の賃料について、同年三月一日から、固定賃料を一九五万一二〇〇円に、歩合賃料を同店の売上高が一六二六万円を超したときにその超過額の一二パーセントに相当する額にそれぞれ減額するように請求した。

なお、原告は本訴提起に先立って賃料減額請求の調停の申立をなしたが(東京簡易裁判所平成一〇年(ユ)第二四三号事件)、平成一〇年九月一日右調停は不成立となった。

6  結論

よって、原告は被告に対し、請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。

二  請求原因に対する認否

1(一)  請求原因1(一)の事実は不知。

(二)  同1(二)の事実は、被告が全国で最も有力であるとの点を除き、認める。

(三)  同1(三)の事実は認める。

2(一)  同2(一)の事実は認める。

(二)  同2(二)の事実は認める。

3(一)  同3(一)の事実は認める。なお、本件第一、第二契約の二条には右各店舗の売上はすべて被告の売上として計上することとされ、一四条では、原告に賃借権その他独立した占有権のないことを確認する規定が存する。

(二)  同3(二)は一般論としては争わない。

しかし、原告は、資本力を有し、その営業も全国展開している大手企業であって、将来上場を目指していると言われるほどの優良企業であるところ、被告との力関係は商人として対等であり、契約自由の原則に則って対等な立場でビルの利用形態を定めたものであるから、本件第一、第二契約のように、商人間双方の利害が一致して締結された契約においては、契約時の当事者の効果意思は最大限に尊重されなければならないところ、本件第一、第二契約が賃貸借ではなく、準委任若しくは請負契約関係であることは文言上から明らかであり、原告は、前記のような規定が存することを知悉しながら、本件第一、第二契約を締結したのであるから、その内容も右契約条項の文言にしたがって定められるべきである。

また、本件紛争が発生するまで、原告側から本件第一契約が営業委託契約でなく、賃貸借契約である旨の主張がなされたことは一切ないのであって、原告の収益悪化後に、突然このような主張をすることは信義則に反する。

(三)  同3(三)の柱書きは争う。

(1)  同3(三)(1) の事実のうち、原告がその主張にかかる費用を負担していることは認め、その余は否認する。

(2)  同3(三)(2) の事実のうち、原告が被告から独立して本件各店舗を経営しているとの点は否認する。

店舗の賃貸借契約において、売上金は業者に帰属し、顧客に対する責任も業者が直接負担するのが常態であるが、本件各店舗の売上は被告に帰属しており、被告は、本件第一、第二契約上も、顧客に対する責任を単独で若しくは原告と共同で負担している。

(3)  同3(三)(3) は争う。

原告の被告に対する支払は賃料ではない。すなわち、賃貸借の契約要素である賃料は、物の使用の対価であって、その使用する物が変わらない限り、賃料も一定であるといわなければならないところ、本件第一、第二契約においては、毎月の売上げを被告の売上げとして計上することを前提として、その八五パーセントを被告が原告に仕入代金(営業委託費を含む。)として支払うものとされているのであって、被告が原告に支払う対価は、毎月の売上げに比例して変動するものであるから、被告の原告に対する右各契約に基づく右支払が営業の場所を使用する対価ではなく、売上げの対価であることは明らかである。

また、本件第一、第二契約において、いずれも売上げが一定額(五石衛門店では月九〇三万円、キリコ店では月一六二六万円)に達しない場合、販売奨励金として一定額の支払を求めているが、右は、被告が本件建物維持のため多額の固定費を負担している関係上、営業受託者が受託業務を行わず、十分な売上げがない場合でも、被告において報酬を確保し、受託者の右債務不履行等による損害の発生を防止するとともに、受託者が委託者の利益のために最大限営業努力を行うことを目的とするものである。

更に、本件第一、第二契約の契約書上、賃料である旨の合意は一切なく、営業委託費を含む仕入代金を毎月被告から原告に対し支払っている。被告が原告から右各店舗に関して取得する委託料の金額は変動額であって、それに最低保証がついているにすぎないから、このようなものは本来賃料といえないことは明らかである。

なお、百貨店、駅ビル等において、外部業者が賃貸借形態で営業を行う場合は、その要素として、賃料は定額であるが、特殊な場合には業者の売上額に対する歩合性を採用しているものもあるが、その場合にも、賃料であることは明確に合意されているのみならず、最低賃料額の設定がなされるのが常態である。

(4)  同3(三)(4) の事実は否認する。店舗の賃貸借は、一定の固定的場所の賃貸借であり、その対象たる場所が図面等によって明確に合意されることが常態であるが、本件第一、第二契約には、賃貸借契約の重要な要素である固定的場所の表示又は場所を特定する記載は一切ない。アルタ館での営業を委託に際しては、当事者間において、場所の特定は契約の要素と考えられておらず、原告も、出店交渉の際、被告に対し、営業場所を口頭で伝え、被告が場所を確認した上で了解することにより決められたにすぎない。なお、五右衛門店の場所はもともと「ティキティキ」店が開店していたが、右は被告との営業委託契約に基づくものであり、当時の契約にも場所の特定は一切ないのである。

(5)  同3(三)(5) の事実は否認する。賃貸借においては敷金、保証金の預託がなされるのが常態であるが、本件第一、第二契約においては、賃貸借を前提とした敷金の授受又は預託がなされたことは一切ない。

(6) <1> 同3(三)(6) の<1>の事実の事実のうち、被告が原告に対して本件各店舖の営業について指揮監督していないとの点は否認する。本件第一、第二契約上、原告は、被告の営業方針に従い、その指揮監督の下に誠実にその業務を遂行することとされているのである。また、被告は、原告の毎月の売上の報告を受けている。

なお、営業委託契約の性質上、当該営業についてノウハウを有する原告にある程度の独立性があり、裁量の余地があることは契約上当然に予定されており、被告がその営業に関して具体的な指揮監督までをするものではない。

また、賃貸借契約においては、ビルの経営主体は、不動産の貸主としての権利を行使するほかは、賃借業者の営業の方針等について干渉することは原則として許されず、賃貸借場所の変更、増減も業者の同意がない限り行うことができないことが常態であるが、被告が原告の営業に関与し、店舗の変更を指示していることは後記のとおりである。

<2> 同3(二)(6) の<2>の事実のうち、被告が本件各店舗の売上を管理していることは認め、その余は否認する。被告は、現実の業務においても、右店舗の売上を被告の売上として計上している。

<3> 同3(三)(6) の<3>の事実のうち、被告が本件各店舗の営業許可を被告の名前で受けていること、被告が、五右衛門、キリコ店を含め、アルタ館内の飲食店全てについて衛生管理を実施していることは認め、その余は否認する。被告は、対保健所関係について、責任者として報告を行っている。

<4> 同3(三)(6) の<4>の事実のうち、被告が広告、宣伝を被告の名において行っていることは認め、その余は否認する。被告は、アルタ館の経営主体として広告、宣伝を行っているものであり、原告に広告、宣伝費を負担させたことはない。

<5> 同3(三)(6) の<5>の事実は否認する。原告がボルツアルタ店(カレー店)をキリコ店(スパゲッティ店)に変更したのは被告の指示によるものである。

4(一)  同4(一)は争う。

本件第一契約は業務委託契約であって、民法六〇一条、六〇六条等の適用はない。被告がアルタ館のテナントとの契約を業務委託契約としたのは、事業運営の決定権や損益の帰属を自己のものとすること等を目的としたからであって、本件第一契約を締結する際、被告が、原告に対し、アルタ館五階を飲食店フロアとすることなど一切約束したことはないし、その変更に際して営業受託者の許諾又は補償をすることを条件にして契約することなどしたこともなく、アルタ館五階を将来にわたり飲食テナントで統一する旨の合意をしたこともなく、そのような合意をするはずもない。

仮に、本件第一契約に賃貸借に関する規定が適用されるとしても、被告はその時々の状況下で原告の営業のために最大限の配慮をしており、前記条項並びに信義則上も何ら非難されるいわれはない。

(二)(1)  同4(二)(1) の事実のうち、本件第一契約の契約書に原告主張の規定が存することは認め、その解釈は争う。右規定には、原告主張のような趣旨は定められていない。

(2) 同4(二)(2) の事実のうち、原告がアルタ館六階のボルツアルタ店(カレー店)を地下一階のキリコ店(スパゲッティ店)に変更したことは認め、その余は否認する。

(3) 同4(二)(3) の柱書きの事実のうち、被告が昭和六三年ころアルタ館五階を飲食店フロアとして運営していたことは認め、その余は否認する。

<1> 同4(二)(3) の<1>ないし<3>は否認又は争う。被告は、昭和六三年ころ、確かにアルタ館の五、六階を飲食店フロアとして営業展開していたが、それは当時のアルタ館周辺の人の流れや当時の客観的な経済情勢において、右五、六階を飲食店フロアとするのが営業上最も適切な選択であり、充分競争力を有すると考えたからである。しかし、商業ビルは、時代によって移り変わる顧客のニーズに的確に対応しなければ生き残れないものであって、客観的な経済情勢等の変化の中でその運営方針を変えることは不可避である。

<2> 同4(二)(3) の<4>、<5>の事実のうち、昭和六三年当時、アルタ館五階が飲食店フロアであり、原告主張の飲食店が出店していたことは認め、その余は否認する。

(4)<1> 同4(二)(4) の<1>の事実のうち、アルタ館五階フロアからテナントが撤退したこと、その後、被告が未入店舗部分で物販の催事を行ったことは認め、その余は否認する。被告は、右未入店舗部分に関して飲食店を対象に新規募集を行ったが、条件面でまとまらなかったため、入店するに至らなかったにすぎず、被告が飲食店のテナントを拒否したことはない。

右は時代の趨勢により同フロアが飲食店街としての競争力を失い、それに伴って撤退したものである。すなわち、昭和六三年から平成三年ころまでは、アルタ館五階の売上は前年比増で推移したが、平成四年以降は同フロアが飲食店フロアとして運営されていたが、売上が前年比減で推移するようになり、いわゆるバブル経済の崩壊という要因のほかに、同フロア自体の競争力が急激に低下した。このことは、同フロアの売上の減少率がアルタ館全体のそれを大きく上回っていることからも明らかである。このような状況下で、その売上回復の見込みがないことから、平成六年から平成七年にかけて、「花キャベツ」が平成六年七月に、「TACO」が平成七年二月に、「蔵々亭」が同年三月に、「和幸」と「あかさたな」が同年八月に、それぞれ同フロアにおける営業に多くの飲食店が見切りをつけて撤退した。

<2> 同4(二)(4) の<2>の事実のうち、被告が原告主張の通知をしたことは認め、その余は否認する。被告は、アルタ館五階について、ショップのオーナーに出店交渉し、企画会社、施工会社、取引先に情報を流してレストランショップの開発に努めたが、アルタ館五階の出店条件に合う飲食店舗は現れなかった。そのため、平成七年一〇月から暫定的に物販のイベントに使用していたが、そのままにしておくことができないため、物販フロアとする決定をしたものである。

<3> 同4(二)(4) の<3>の事実のうち、原告が当初リニューアルに反対の意向を表明したこと、原告が、平成八年四月二四日、被告との間で、右営業委託契約書の各条項に基づき、改装後の売上動向を見極めた上で、誠実に話し合いを進めるものとする旨を確認したうえ、アルタ館五階を物販フロアとすることに同意したことは認め、その余は否認する。

被告は、平成八年一月、原告担当者にアルタ館五階の飲食店フロアとしての競争力が低下しており、入るレストランショップがないこと、物販に業態変更せざるを得ないこと等を充分説明し、その了解を得て、平成八年九月リニューアルしてアルタ館五階を物販フロアとした。

<4> 同4(二)(4) の<4>の事実は、原告が五階フロアを物販フロアとすることを承諾したことは認め、その余は否認する。

<5> 同4(二)(4) の<5>の事実のうち、被告がアルタ館五階を物販フロアに変更したことは認め、その余は否認する。

(5)<1> 同4(二)(5) の<1>の事実のうち、現在、アルタ館五階フロアでは五右衛門店だけが飲食店であることは認め、その余は否認する。

<2> 同4(二)(5) の<2>の事実のうち、原告主張のアルタ館の営業時間帯、エレベーターの運転状況、物販店の閉店状況、警備状況は認め、その余は否認する。

<3> 同4(二)(5) の<3>の事実は否認する。

(6) 同4(二)(6) は争う。原告は、業務委託の条件を下げてでも入店させるべき義務があったと主張するが、商業ビルを経営する場合、その条件は当該ビル全体の採算を考えて他のフロアとのバランスで設定する必要があり、それを無視して条件を下げることは他のフロアの条件も下げることとなり、商業ビル全体の収益性を著しく損なうこととなるのであるから、余りにも乱暴な主張であって、被告がそのような義務を負担すべき信義則上の義務がないことは明らかである。

(三)  同4(三)は争う。前記のとおり、商業ビルは、時代によって移り変わる顧客のニーズに応じ、客観的な経済情勢の変化の中で、そのビル全体について生き残りのためにその運営方針を的確に変更せざるを得ず、一〇年の経過とともに顧客のアルタ館に対するニーズも変わったため、被告は、それに対応する形で委託先を選択し直して行ったものにすぎないのであって、何ら契約違反又は信義則違反はない。

(四)(1)  同4(四)(1) は争う。五右衛門店の売上が低下したのは、既に述べたとおり、アルタ館五階の飲食店街としての競争力が低下したことが主たる要因であって、物販店への変更が要因ではない。

なお、五右衛門店の平成八年一〇月から平成一一年九月までの売上高については争わない。

(2) 同4(四)(2) は争う。なお、原告は、その経営にかかる他のスパゲティ専門店の売上高を比較しているが、これらは立地条件がそれぞれ異なるうえ、アルタ館は、後記のとおり、全国的にも著名な商業施設であって、単純に他の商業施設と比較し得ないものであるから、原告主張の根拠とはなり得ない。

(3) 同4(四)(3) は争う。

5(一)  同5(一)の柱書きは争う。本件第二契約は賃貸借契約ではなく、営業委託契約であるから、原告に賃料減額請求権がないことは明らかである。また、原告が被告に支払うべき金額は格別高額ではない。右金額は、前記のとおり、被告がアルタ館の建物維持のために多額の固定費を負担している関係上、営業受託者が受託業務の遂行に不履行等があった場合でも、被告において報酬を確保することを目的とするものである。

もともと、商業ビルにおいては、個々の立地等の良し悪しにより、収容力その他の条件が異なるのは当然のことであり、アルタ館は、新宿駅脇に位置するという好立地条件のうえ、全国放送のテレビ番組のスタジオがある日本一有名なスタジオの存するビルであり、アルタ館ビジョンは新宿駅東口でもっとも目につきやすいところであること等、アルタ館が全国でも極めて有名な商業ビルであり、その顧客収容力はきわめて高いものであって、高い効率性、生産性を有しており、被告は、それを維持するために諸々の費用を支出するとともに、これを前提として、各階の営業受託者に対する仕入代金率及び販売奨励金を決めており、同じ新宿地区の他ビルの委託料より高く設定しているが、テナントはアルタ館が一般消費者を対象とする企業にとって、そこに出店すること自体が飲食、衣料品の販売等に宣伝効果があるため、アルタ館に出店することの企業的価値を計算に入れて、他の新宿の商業ビルより高い条件を了解して出店するのであり、他ビルとの単純比較で右金額が決められるわけではない。アルタ館内の他店とを比較をすれば、キリコ店の営業委託料は格別高くはない。

原告も、少なくとも契約締結時においては、被告と取り決めた条件が適正であることを認めていたからこそ契約を締結したものであり、他ビルの委託料より高いとしても、それでも充分利益が出たり、あるいはアルタ館に出店することにより、その知名度が上昇し、信用の拡大に結びつくものと判断して出店したのであって、それを、目論見が外れて採算が合わなくなったからといって、新宿他店と比較して高いと主張するのは不当である。アルタ館においては、現在の水準の営業委託料であっても、出店を希望するものは多く、空いた場所は一つもないのである。

(1)  同5(一)(1) の事実のうち、キリコ店の営業委託料が不相当であることは否認する。前記のとおり、キリコ店の契約条件は、平成四年三月において、もともと、近隣に比べて高い水準のものであり、原告はそれを承知で契約している。なお、その後、被告は、現在まで右条件を増額しておらず、原告の契約条件は、その後にアルタ館に入店した他のテナントのそれよりも低いのである。

(2)  同5(一)(2) の事実は否認する。新宿周辺のアルタ館類似の飲食ビルの賃金水準は低下していない。原告は、新宿周辺に多くのスパゲティ関連の飲食店舗を出店しているが、新宿駅に近い立地のよい飲食ビルの賃料でも安定しており、低下傾向は示しておらず、基本的に、原告が契約した賃料は減額になっていない。

すなわち、<1>小田急新宿ミロード店は、平成四年二月から同一一年九月まで、月額四〇万二五二二円のままであり、<2>エルプラザ店も、平成四年三月から平成一一年九月まで、月額九五万八五〇〇円のままであり、<3>新宿鈴屋店は、平成四年四月、月額一五〇万円だったが、平成六年二月に一割減額して月額一三五万円になり、平成一一年九月まで右金額のままであり、<4>セイチェント新宿高島屋店は、平成八年一〇月から平成一一年九月まで、月額一〇八万六九六〇円のままであり、<5>にんにく屋五右衛門店新宿高島屋店も、平成八年一〇月から平成一一年九月まで、月額六四万八七二〇円のままである。

アルタ館の入店条件も、平成四年と平成一〇年とを比較しても、別段低下しておらず、むしろ強含みで推移している。すなわち、アルタ館地下一階の業務委託料は、平成四年三月を一〇〇とすると、平成一〇年三月は一一三であり、アルタ館として、六年間に業務委託料が低下したということはなく、むしろ上昇している。しかも、アルタ館は空室が発生せず、アルタ館の業務委託料の市場価値は平成四年と平成一〇年とで低下していない。

(二)  同5(二)の事実は否認する。もともと、新宿の飲食、衣料品等の販売を目的とする駅近の商業ビルの相場はほとんど落ちておらず、一般的なオフィスビルの賃料や、東京都主要五区の事務所の賃料の推移値の平均値は立地の悪い多くの賃貸物性の数値も含んで平均値を構成しているから、直ちに参考とはならない。

なお、商業ビルは、顧客に商品・役務がどれだけ販売できるかによって、価値が大きく異なるのであって、バブル崩壊後、商業ビルの選別は一層きびしくなり、市場原理に基づき、立地の悪いビルは需要が激減するが、逆に立地のよい商業ビルは出店競争が激しくなっており、アルタ館では、現在の原告との条件であれば出店を希望する企業は多いのである。

(三)  同5(三)の事実は認める。

なお、仮に、月々の販売奨励金の部分が賃料であったとしても、原告が主張する一度に一二パーセントの減額は不当である。

三  被告の主張

仮に、本件第二契約が賃貸借であるとしても、旧借家法は片面的強行法規定を置いているものの、右事情変更による借賃増減請求権(同法七条)をその対象としておらず、明文上も右片面的強行規定の適用がないところ、原告と被告は、仕入代金額の計算方法及び販売奨励金は双方が協議して変更することができる旨を合意し(四条四項)、賃料の一方的減額請求に関する規定の適用を排除したものである。

なお、被告は、一貫して誠実に解決を図り、原告と、当初は裁判外で、その後は原告の調停申立を受けて、充分協議をして現実的解決を目指したものであり、本件訴訟に至っても、五右衛門店、キリコ店の一括した解決を図り、原告訴訟代理人の提出した和解案を検討し、社長決裁までとったうえで、これを了解した案を原告に提案したところ、原告代表者から、従前の交渉経過を無視して一蹴されたものであり、本件解決が図られなかったのは、原告自身の不誠実さに原因がある。右状況のもとでは、原告の賃料減額請求は、被告との合意にも反し、信義誠実の原則にも反するから許されないものというべきである。

四  被告の主張に対する認否

被告の主張はすべて否認又は争う。

賃料減額請求権は、賃料減額に関する協議が成立しないときにこそ行使されるのであり、これを排除するような規定は存在していない。

また、賃料減額請求権の行使が信義則に反するという主張は否認する。被告は、原告が賃料減額請求権を行使した後の事情を述べるが、後発の事情で減額請求権が何故信義則に反するのか、その論理も理解できないし、紛争発生後に当事者が解決に努力しようとした行動について、非難することは妥当ではないし、公正な攻撃方法とも思えない。

第三証拠

証拠は、本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1(一)の事実は、証拠(甲16、証人天間)並びに弁論の全趣旨により認められ、同1(二)、(三)の各事実は、被告が日本全国で最も有力であることを除き、当事者間に争いがなく、被告が全国的に著名であることは弁論の全趣旨により明らかである。

また、原告が、被告との間で、本件第一、第二契約をそれぞれ締結し、本件各店舗で営業していることは当事者間に争いがない。

二  前示一の事実に加えて、証拠(甲1~15、甲16、甲17~19、甲20の1、2、乙1~13、乙14の1~5、乙15~32、証人天間、同山本)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

1(一)  原告は、飲食店の経営を主たる業務として、昭和四八年六月二一日に設立された株式会社であり、平成一〇年九月現在、その資本の額は三億円である。

(弁論の全趣旨)

(二)  原告は、全国に二二〇弱の店舗を有し、これをレストランチェーンとして営業を展開しており、その業態は、スパゲッティー店、カレー店、居酒屋、ニンニク料理専門店、牛タン専門店、卵料理専門店、洋食店等々の多岐にわたっており、その種類も三〇前後に達している。(特に、甲16、証人天間)

(三)  また、原告は、ショッピングセンター、駅ビル、デパート等の大形商業施設にテナントとして出店している例が多く、右出店に際しては、当該商業施設の規模、立地条件、商業施設の集客力、飲食店フロアの店舗数、店舗構成、顧客層等を調査検討し、これに応じて出店の是非や店舗の業態を決定しており、出店している店舗は、その六、七割が他人所有の建物内での出店であり、その多くは賃貸借契約であるが、営業委託契約の場合も存する。

なお、原告は、アルタ館のほか、新宿高島屋、新宿鈴屋、小田急新宿ミロード等に出店しているほか、東京都内において渋谷東急その他の著名なデパート等の商業施設にも出店している。(特に、甲16、甲20の1、2、証人天間、弁論の全趣旨)

2(一)  被告は、明治三七年一二月六日に設立された百貨店業を営む株式会社であり、平成一〇年九月現在、その資本額は三七四億〇四〇六万六二〇七円であり、全国的にもデパートの老舗として著名である。(弁論の全趣旨)

(二)  アルタ館の所在地にはもともとデパートの「二幸」店が存したが、被告は、昭和五五年三月二八日、同地にアルタ館を新築して所有し、現在の地上八階、地下三階のビルとして同年四月からリニューアルオープンし、大形商業施設としてこれにテナントを入店させる等して運営していた。その際、被告は、アルタ館に出店するテナントとの間では、店舗営業に関して、営業委託契約と称する契約を締結して出店させていた。

なお、被告は、平成一二年二月二九日、訴外ダイビル株式会社にアルタ館を売却し、同社からアルタ館を借り受ける形で、従前と同様にこれを運営している。(特に、乙12、32、弁論の全趣旨)

3  アルタ館は、JR線等の新宿駅至近の東口駅前商業地域に位置し、物品販売用店舗、銀行等の高層ビルが立ち並ぶ高度商業地域内に存しており、新宿駅前の新宿通り及び駅前広場沿いに位置し、地下通路で直結して地下鉄線、京王線、小田急線との連絡も良く、交通、利便性は良好であるほか、幹線道路である靖国通り、甲州街道、明治通り等にも近く、交通アクセスも良好である。その周囲には、三越、伊勢丹、丸井等の有名百貨店を初めとする商業施設が存するほか、紀伊国屋、大形電気店等が立地し、都内でも有数かつ中心的な商圏を形成している。

また、アルタ館は、その後もリニューアルを重ねて、平成一二年二月現在、その壁面には通りに面してアルタビジョンと称する巨大な映像ディスプレイ装置が設置され、コマーシャルやイベント情報、ニュース等を放映し、一般通行客をも含めて極めて人目を引きやすいうえ、地下二階から地上六階までは物品販売店又は飲食店が存し、その七、八階には全国放送のテレビ番組が生中継で放映されるようなスタジオが存するなど、集客力に優れた大形の高度商業施設であり、その中に出店される店舗はその顧客層の構成をヤング層を中心として運営され、全国的にも極めて著名である。(特に、甲16、乙13、証人山本、弁論の全趣旨)

4  アルタ館は、昭和六二年当時、五、六階並びに地下一、二階が飲食店フロアであり、六階には、チャイナカフェ「杏里」、スパゲッティ専門店「黄金の麦」、コーヒーとワインと食事の「プルニエ」、カフェテラス「ブドウの木」、甘味喫茶「五人ばやし」が、五階には、とんかつの「和幸」、京風ラーメンの「あかさたな」、お好み焼きの「じゅうじゅう」、カレー&トロピカルドリンクの「ティキティキ」、タコ焼の「TACO」が、一階には喫茶「トリコロール」が、地下一階には、天ぷら「つな八」、コーヒー&サンドイッチ「蘭館ジュニア」、そば処「永坂更科」、寄り道コーナー(甘味)「榮太楼」、イタリアンジェラート「ランポーネ」が、地下二階にはハンバーガー「マクドナルド」、スープ、サラダ、サンドイッチ「ジャック&ベティ」、ヨーグルト&フレッシュジュースの店「ベルサンテ」「ポテトバー二五」、上方鮨「京樽」、フランス菓子「銀座コージーコーナー」が出店していた。(特に、甲16、弁論の全趣旨)

5(一)  原告は、昭和六二年ころ、アルタ館に出店することを検討、調査していたが、アルタ館六階のプルニエが退店したことから、同年三月二一日、被告との間で、営業委託契約と称する契約を締結し、その同店が退店した後の場所で営業することとした。その際、原告は、アルタ館六階の店舗構成等の関係から、その業態をカレー専門店とすることとし、同年四月ころからカレーハウス「ボルツアルタ館」店をオープンした。(特に、甲16、証人天間)

(二)  原告の出店担当者であった訴外丸山滋(以下「丸山」という。)は、ボルツアルタ館の出店を通じて、被告の訴外青木英雄支配人や同塩田課長等のアルタ館担当者とも面識ができたことから、月に一度程度はアルタ館の事務所を訪れ、出店可能な物件の情報を収集していたところ、昭和六二年一二月又は昭和六三年一月ころ、アルタ館担当者から、アルタ館五階のティキティキが撤退するとの情報を得たため、これを原告において検討したうえ、昭和六三年三月三一日、被告担当者に対し、原告に対し、右ティキティキの後に出店の意向があることを伝え、被告との間で出店の交渉をした。

原告は、アルタ館五階の店舗構成、顧客層等を調査検討した結果、その業態をスパゲッティー専門店とすることが最良であると判断し、被告にその旨を伝えて交渉した。(特に、甲16、証人天間)

(三)  その際、被告は、保証金の金額を坪当たり二〇〇万円とすることを要求したが、原告は、被告と交渉し、その結果、右保証金の金額を坪当たり一五〇万円とすることで合意した。

そこで、原告は、被告に対し、五右衛門店の店舗営業に関し、三八七〇万円の保証金を預託し、被告は、原告に対し、右保証金に関し、平成一〇年四月を第一回とし、以降一〇年間にわたり、利息を附さないで毎年四月に均等に返還する旨を約したうえで、本件第一契約を締結し、以後、五右衛門店を運営している。(特に、甲16、証人天間、弁論の全趣旨)

6  本件第一契約にかかる契約書には、その表題として「営業委託契約書」と記載され、その下には、「株式会社三越(以下「甲」という。)と日本レストランシステム株式会社(以下「乙」という。)とは、スタジオアルタ館(東京都新宿区新宿三丁目二四番三号所在。以下「本店舗」という。)における甲の営業に関し、下記の通り契約を締結する。」旨が記載され、その契約条項として、次のような記載があるほか、その末尾には、「甲」として被告と支配人青木英雄の各記名捺印がなされ、「乙」として原告の記名捺印がなされている。

なお、右契約書には五右衛門店の場所又は区画を表示する図面は添付されていないが、原告と被告は、本件第一契約締結の際、従前ティキティキが店舗として使用していた区画をそのまま五右衛門店の区画として使用することを予定しており、右五右衛門店の店舗部分は、ティキティキのころから、営業区画が壁、間仕切り、シャッター等により、他の店舗や同フロアの通路とは明確に区分されていた。(特に、甲13、乙11、弁論の全趣旨)

(一)  被告は、本店舗で営業する飲食営業及びこれに付帯する業務を原告に委託し、原告は被告の営業方針に従い、その指揮監督の下に誠実にその業務を遂行するものとする旨(右契約書一条)

(二)  被告は、顧客に対する飲食物、商品の売上代金及びその売上に伴う飲食税、サービス料等をすべて取得する旨

また、顧客に対する飲食物の献立売価等についてはあらかじめ原告と被告とで協議のうえ定めるものとする旨(同二条)

(三)  飲食物、商品の売上代金の確認及び保管については、別途締結する売上代金の確認及び保管に関する付帯契約による旨(同三条)

(四)(1)<1> 被告は、仕入代金(営業委託費を含む。)を契約書の末尾添付の仕入代金計算書のとおり、被告の支払規定により原告に支払う旨

<2> 右仕入代金計算書においては、被告の売上代金額は、席料、土産品代を含み、料理飲食税サービス料を除くものとしたうえ、月額九〇三万円までの部分の八五パーセントの額とする旨

(2) サービス料金はその金額を右(1) の支払金に加算して被告から原告に支払う旨

(3) 原告は、(三)による毎月一日から末日までの被告の売上代金額が九〇三万円に達しないときは一三五万四五〇〇円から右期間の売上代金額の一五パーセントを控除した額を販売奨励金として被告に支払う旨

(4) 右仕入代金の計算方法及び販売奨励金は、原告と被告とが協議して変更することができる旨(同四条)

(五)  原告は、被告に対し、月額八万五〇〇〇円の清掃費を支払う旨(同五条)

(六)(1)  原告は、右受託業務を円滑に遂行するため、飲食物の調理加工、顧客に対する客席サービス及び販売に必要な原告の従業員を確保し、本店舗に派遣してその業務に従事させる旨、ただし、右従業員については経歴書その他の必要書類をもあらかじめ被告に提出し、その承認を得なければならない旨

(2) 被告は、本店舗に出務する原告の従業員について、被告が不適当と認めるときは、その出務を停止することができる旨

(3) 原告から派遣された原告の従業員は、本店舗において被告の指定した本店舗部分(以下「ショップ」という。)の施設を使用し、被告の指示に従って右受託業務を行う旨(同六条)

(七)  原告は、前項の派遣する従業員について、給与並びに労働関係法令その他の労働者の権利に関する一切の負担を負う旨(同七条)

(八)  本店舗の広告宣伝は原告が費用を負担する場合でも、必ず被告の主宰により行わなければならない旨(同八条)

(九)  原告は被告の許可なく本店舗の名で本店舗以外の場所で販売活動を行ってはならない旨(同九条)

(一〇)  原告は被告所有の電話機その他の施設を利用した場合には、その使用料を支払わなければならない旨(同一〇条)

(一一)  原告が顧客に提供する商品の品質、量目の瑕疵、原告又はその従業員の行為等により、被告が顧客に対して責任を負担し、もしくは被告が損害を蒙ったときは、原告はその賠償の責に任ずる旨(同一二条)

(一二)  原告は、受託業務を遂行するため、<1>ガス料金、水道料金、<2>電気料金(空調費を除く。)、<3>原告が使用するショップ内の諸設備、什器、内装、器具備品の整備、移動、修繕及び取り替えの費用をすべて負担する旨(同一三条)

(一三)  原告は、本店舗について、賃借権その他の独立した占有権又は営業権等のないことを確認し、客席厨房等を他の目的に利用し、又は受託業務を他に移譲しもしくは担当させてはならない旨(同一四条)

(一四)(1)  本契約の有効期間は、締結の日から昭和六五年三月末日までの二か年とする旨、ただし、期間満了の三か月前までに原告又は被告から別段の意思表示がない場合には更に一か年延長するものとし、以後も同様とする旨(同一五条)

(2) 本契約の有効期間中といえども、原告又は被告の都合により、三か月前に予告をしたうえで、本契約を解約することができる旨(同一五条)

7  被告は、昭和六三年三月三一日、原告との間で、本件第一契約に関して、右6(四)の売上代金の確認及び保管に関する付帯契約を締結し、「売上金の収納・管理並びに売上高の確認・報告に関する契約書」と題する書面を取り交わした。

右契約書には、次の記載がある。(特に、乙27、弁論の全趣旨)

(一)  原告は、当日の売上金を売上日報の現金納金表を添えて被告が指定した銀行の被告の預金口座へ預入れる旨

(二)  被告の右預金口座に預入前の現金(商品券、小切手等を含む。)は、原告が管理する旨

(三)(1)  レジスター管理は原告がその責任で行う旨

(2) 原告は、販売の際、売上金を必ずレジスターに登録させ、取引の都度、顧客にレシートを発行すべき旨

(3) クレジット、商品券、月賦、掛売、社内販売、外商、代金引換等の販売については、現金の収受の如何にかかわらず、売上総額を当日の売上高として必ずレジスターに登録させる旨

(四)(1)  原告が当日の午後四時現在、精算レシートを切り取り、精算レシートに記録された金額をもって当日の売上高とする旨

(2) 原告は、毎日閉店までに売上高についてレジスターの精算レシートを貼付した売上日報とその補助伝票を被告に提出する旨

(五)  被告は、レジスターの管理又は売上報告が正しく行われているかどうかを確認するため、レジスターの取扱状況を点検することができ、原告は必ずこれに応ずるものとする旨

(六)  被告は、原告が本(付帯)契約に違反したときは、何ら通知、催告を要せず、直ちに別に締結している営業委託契約を解除することができる旨

8(一)  アルタ館の六階は、前記のとおり、飲食店フロアであったが、同フロアの各店舗は、平成四年ころから売上が低迷し、テナントの撤退が相次いだ。被告は、同フロアを飲食店フロアとして維持するため、出店を希望する業者を探すなどして、未入店舗への入店状況を好転させるべく努めたが、計画通りに進展しなかったため、同フロアを飲食店フロアとして維持することを諦め、物販イベント用フロアとして使用することとした。被告は、平成四年一月、アルタ館の地下一階に入店していた天ぷら「つな八」が撤退することになったこともあって、そのころ、原告に対し、アルタ館の六階フロアから退店してほしい旨を申し入れた。(特に、甲16、乙26、弁論の全趣旨)

(二)  原告は、平成二年五月、ボルツアルタ店の店名を「モーツァルト」と変更し、その業態も喫茶・洋菓子店に変更して同店の営業を行っていたが、被告の右申入れに難色を示した。

被告は、原告に対し、右つな八の後に出店してもらってもよい旨、被告は、原告が右モーツァルト店(旧ボルツアルタ店)の撤退に関して撤退費用を要することから、原告の被告に対して支払うべき金額を、出店後四年間に限り、仕入代金額を本件第二契約所定の二四三万九〇〇〇円から二割引き下げた一九五万一二〇〇円とする旨を申し入れた。原告は、右条件を検討したうえ、旧ボルツアルタ店から撤退するとともに、地下一階に出店することとした。(特に、甲16、乙26、弁論の全趣旨)

(三)  原告は、平成四年三月二一日、被告との間で、アルタ館地下一階でキリコ店の店舗営業に関して本件第二契約を締結した。その際、原告は、同フロアの店舗構成等を考慮し、スパゲッティー専門店のキリコ店を出店することとし、その旨を被告に告げて、その了承を得た。

その際、原告は、被告に対し、キリコ店の店舗における営業に関し、一億〇八四〇万円の保証金を預託し、被告は、原告に対し、右保証金に関し、平成一五年三月三一日を第一回とし、以降一〇年間にわたり、利息を附さないで毎年三月三一日に均等に返還する旨を約した。また、原告は、キリコ店を営業していたが、その売上げに関しても、前記7の売上代金の確認及び保管に関する付帯契約に基づいて処理されている。

また、原告と被告は、「覚書」と題する書面を取り交わし、本件第二契約四条所定の仕入代金の計算に関し、平成四年三月二一日から平成八年三月末日までの間、売上代金額一六二六万円までの部分の八八パーセントとし、その金額を一九五万一二〇〇円と改める旨を合意した。(特に、甲9、10、16、乙26、弁論の全趣旨)

9(一)  本件第二契約にかかる契約書は、本件第一契約のそれと書式がまったく同一であり、その表題として「営業委託契約書」と記載され、その下には、「株式会社三越(以下「甲」という。)と日本レストランシステム株式会社(以下「乙」という。)とは、スタジオアルタ館(東京都新宿区新宿三丁目二四番三号所在。以下「本店舗」という。)における甲の営業に関し、下記の通り契約を締結する。」旨が記載され、その契約条項は、以下の諸点以外は、条項の内容及び条項番号はまったく同一である。(特に、甲9、16、乙26、弁論の全趣旨)

(1)  前記6(四)(1) <2>の仕入代金計算書における被告の売上代金額が月額一六二六万円までの部分の八五パーセントの額とされている点

(2)  前記6(四)(3) の、原告は、被告の売上代金額が一六二六万円に達しないときは二四三万九〇〇〇円から右期間の売上代金額の一五パーセントを控除した額を販売奨励金として被告に支払うこととされている点

(3)  前記6(五)の清掃費が月額一〇万円とされている点

(4)  前記6(一四)の本契約の当初の有効期間が、締結の日から平成六年二月末日までの二か年とされている点

(二)  なお、本件第二契約の契約書には、キリコ店の場所又は区画を明確に特定する記載又は図面は存しなかったが、原告と被告は、本件第二契約締結の際、従前つな八が店舗として使用していた区画をそのままキリコ店の区画として使用することを予定しており、右キリコ店の店舗部分は、営業区画が壁、間仕切り、シャッター等により、他の店舗や同フロアの通路とは明確に区分されていた。(特に、甲16、乙26、弁論の全趣旨)

10(一)  原告は、本件第一、第二契約に基づき、本件各店舗を運営し、その開店に際しては、右各店舗の内装や設備のデザイン、その施工、監理等を業者に依頼してその費用も負担し、右各店舗における什器備品の選定、搬入等も行い、その費用もすべて負担し、右営業に関し、右各店舗における従業員の選任監督等を行って、従業員に対する給与等を支給し、右各店舗における飲食物に関し、原材料の選択、仕入れ、顧客へ提供する飲食物の品目、調理方法、調理、顧客へのサービスその他の店舗運営に関して決定し、光熱費も負担している。(特に、甲9、16、乙11、弁論の全趣旨)

(二)  ちなみに、原告は、昭和六三年三月三一日の開店時において、五右衛門店に関して、訴外「T&O+STUDIO1897」こと往蔵稲史仁に内装及び設備のデサインをデザイン料一一〇万円で依頼し、施工管理を原告の子会社である訴外株式会社マトリックス東京に工事監理料二〇万円で依頼した。また、原告は、被告施工の乙工事(原告が費用を負担する設備工事)に関して、被告指定の訴外合同産業株式会社が施工した工事代金四一〇万円を負担したほか、訴外株式会社弘芸に対し、丙工事(原告が施工費用を負担する内装、設備工事)を発注し、その工事代金二三三〇万円を負担した。更に、原告は、厨房器具、椅子、レジスター等の代金額四三七万六六〇〇円のほか、調理器具等約一〇〇万円も負担し、その合計額は三四〇七万六六〇〇円である。(特に、甲16~19、乙11、弁論の全趣旨)

(三)  また、原告は、五右衛門店と同様に、キリコ店の内装や設備等の設置その他の施工及び什器備品の選定、搬入等の費用を負担した。(特に、甲9、17~19、弁論の全趣旨)

11(一)  原告は、本件各店舗の売上げに関しては、本件第一、第二契約並びに前記7の売上代金の確認及び保管に関する付帯契約に基づき、当日の売上金額を売上日報の現金納金表により、毎日報告するとともに、その売上金を被告の預金口座へ預け入れている。

他方、被告は、アルタ館の店舗営業に関しては、一店舗を除き、在庫負担のない売上計算契約又は消化仕入という形式を取り、顧客に販売した物をその販売した時点で仕入れたこととしており、本件各店舗の営業についても、同様に、右売上計算契約又は消化仕入として仕入伝票を起こし、その売上はすべて被告の売上げとして計上している。

また、被告は、原告に対し、右売上金から、本件第一、第二契約所定の仕入代金(業務委託費を含む。)の金額を支払っている。(特に、甲9、乙11、27、証人山本、弁論の全趣旨)

(二)  被告は、平成八年四月九日付けで、東京都新宿区新宿保健所長から、営業者を被告とし、営業所の所在地をアルタ館五階とし、営業の種類を飲食店営業とし、営業所の名称、屋号又は商号を五右衛門としたほか、許可期間を平成八年四月一日から平成一五年三月三一日として、食品衛生法二一条の許可を受け、衛生管理を実施し、責任者として保健所に対する報告も行っている。

また、被告は、アルタ館の飲食店舗を含め、食品部の担当者又は販売員に関して飲食販売員マニュアルを作成し、その中で、厨房施設マニュアル、サービスマニュアル、食中毒マニュアル等により、衛生管理の徹底を図るとともに、毎月一回、アルタ館の飲食店の衛生検査を実施し、調理施設、食材、調理器具、その管理状況等について、ふき取り細菌検査を実施するなどしているほか、これとは別に毎月一回、飲食店長会議を開き、衛生管理等について討議し、更に、各月中旬ころ、品質管理部により年間スケジュールに基づく検査及び点検等を実施し、毎週一回、各飲食店舗の店内店外の衛生チェックをし、各月三回、防除作業、ネズミ、ゴキブリ、蠅、ダニ等の駆除を行っている。

これに加えて、被告は、右以外にも、アルタ館の飲食店舗に対し、鶏肉のダイオキシン汚染による取扱いに関してなど、緊急の事態に対応するため、随時、食材の安全性等について確認できるまで販売を自粛するよう通知するなどしている。(特に、乙1、9、10、18~25、弁論の全趣旨)

(三)  被告は、アルタ館について、広告企画業者に宣伝広告を発注し、その費用を負担しているところ、その宣伝中には、アルタ館自体の宣伝のみならず、そのテナントについての写真等が付された宣伝広告部分も存し、平成八年の五階フロアのリニューアルオープンの際に作成されたパンフレットにも、五右衛門店について、リフレッシュオープンとして写真付きで掲載されている。また、被告は、アルタ館に関してホームページを開設し、これを運営しているが、その中でも、五右衛門店について紹介して宣伝している。

なお、被告は、アルタ館の平成九年度における宣伝広告費として、四一八〇万円、平成一〇年度のそれが三四〇〇万円を負担している。(特に、乙2~8、13、乙14の1~5、乙15~17、26、30、弁論の全趣旨)

12(一)  他方、アルタ館の五階フロアに出店していた飲食店は、昭和六三年三月以降は、五右衛門店のほか、TACO、和幸、あかさたな、花キャベツ、蔵々亭であり、平成四年ころまでは概ね順調な売上げを上げていたが、同年以降、バブル崩壊に伴う消費低迷傾向の影響を受け、五階フロアの売上げが低下し、花キャベツが平成六年七月に、TACOが平成七年二月に、蔵々亭が平成七年三月に、和幸とあかさたなが同年八月にそれぞれ退店するに至った。(特に、乙29、弁論の全趣旨)

(二)  なお、アルタ館全体の売上げが平成三年度が七六億〇五四三万七〇〇〇円であり、平成四年度が七八億三〇八五万一〇〇〇円であり、平成五年度が七四億八四〇七万三〇〇〇円であり、平成六年度が七一億〇五六八万九〇〇〇円であり、平成七年度が六七億五九二五万九〇〇〇円であるのに対し、五階フロアの売上げは、平成三年度が六億〇五七二万一〇〇〇円であったが、平成四年度が五億六八七六万六〇〇〇円に、平成五年度が四億八八二七万円に、平成六年度が四億二四八三万二〇〇〇円に、平成七年度が二億九三九四万七〇〇〇円になり、アルタ館全体の売上げの推移に比して、その売上げが著しく低下した。(特に、乙26、29)

(三)  被告は、右各店舗の撤退に際して、各出店業者にその理由を確認したが、いずれも売上げが急速に落ちて回復の見込がないことを主たる理由としていた。また、右各出店業者は、撤退の際、被告との契約に基づき、解体費用を含め、撤退に伴う費用を負担しており、被告が、売上げの補償をしたりした例もなく、また、店舗営業に関する契約が賃貸借契約であるとの主張をされたこともない。(特に、乙26、29、証人山本、弁論の全趣旨)

13(一)  被告は、アルタ館の五階フロアに関して、新規に出店する業者を探し、数社にその出店を働きかけるなどし、企画会社や施工会社等を通じての働きかけもしたが、条件面で折り合わないなどして、出店する業者が現われず、退店後の店舗が未入店のままの状態で推移する結果となった。

そのため、被告は、同フロアを右状態のままにしておくとアルタ館全体の陳腐化をもたらしかねないこともあって、未入店部分をとりあえず物品販売のイベント用スペースとして使用することとしたが、右のような中途半端な状態に置いておくことはできないことから、平成七年一〇月ころ、被告の担当者である天間靖之(以下「天間」という。)に対し、同フロアを物販フロアに変更することについて原告の意向を打診した。(特に、乙26)

(二)  天間は、原告代表者大林豁史(以下「大林社長」という。)にその旨を伝えたが、大林社長は、物販フロアへの変更について強い難色を示したうえ、天間をして、右物販フロアへの変更については、被告が営業補償をしたうえ、残存の造作を簿価で買いとり、地下二階の店舗へ五階と同一の契約条件で移転することを承諾するよう申し入れさせたが、被告は、原告の右営業補償や造作買取等の申入れを拒否した。その間、原告が、被告との間で、その経営する卵料理専門店「卵と私」の出店に関して交渉したこともあったが、被告の設定した契約条件と、原告が申し入れた条件とが折り合わず、結局、出店に至らなかった。

なお、被告は、その後も、引き続き、同フロアへの飲食店の新規導入に努力していたが、結局、新たな飲食店の開拓に成功しなかった。

(特に、甲14~16、乙26、証人山本、弁論の全趣旨)

(三)  もっとも、被告が、五階フロアの新規出店に関し、その契約条件を下げることにより、レストラン飲食ショップの新規開拓もまったく不可能ではなかったが、アルタ館の他のフロアにおけるテナントとの契約条件上のバランスもあり、五階フロアのテナントに関して契約条件を下げれば、他のフロアの条件も下げることにもなりかねないこと等もあって、これを下げることができなかった。また、当時、アルタ館に関しては、物販ショップとしての出店希望者が多い状況であったが、飲食ショップとしては、被告の設定する条件では採算が合わないことから、出店希望者は現れなかった。(特に、乙26、証人山本)

14(一)  被告は、平成八年一月、原告代表者に対し、アルタ館五階フロアを物販フロアに変更する旨を通知したうえ、同年三月二五日、原告に対し、正式にその旨を書面で通知した。

右通知書には、原告を宛先とし、被告のアルタ館支配人黒澤英明名義で「スタジオアルタ5階フロアリニューアル計画についてのお願い」との表題のもとに、顧客層の急激な変化、バブル崩壊後の消費動向の変化、不動産市況の変質というような激甚な客観情勢の変化により、アルタ館全体の売上げ、利益ともに平成四年をピークに下降線をたどっている旨、そこで、被告は、五階の再展開を含め、集客能力の維持向上、全体の売上高、利益の維持向上に向け、中長期の計画の策定とその実施を進めている旨、平成七年度は、物販一〇ショップ、飲食一ショップの開拓、改装による再構築五ショップのリニューアルを実施した旨、五階については、五右衛門店以外のスペースでの物販イベント対応の継続による利益面での大きなマイナスがビル全体の収益を大きく圧迫しており、その改善のための施策が急務である旨、レストラン新ショップの開拓が被告のフロアコストから設定される条件に見合う候補ショップが開拓できていない旨、以上のような状況を踏まえ、被告は、レストラン新ショップの開拓を諦め、現今の客層の変化、ニーズの変化に対応したアメリカンカジュアルをベースとした、スポーツ系、ヒップホップ系、エスニック系のファッション中心の、カップルで買い物できるユニセックスの物販テナントを開拓することとし、八月にリニューアルのための工事を実施することとした旨、被告は、このような再構築により集客数の増加等、ビル全体の活性化に結びつくと考えており、五右衛門店の集客にも寄与するものと確信している旨等が記載されているとともに、原告の理解と協力を求めている。(特に、甲2、乙26、29、証人山本、弁論の全趣旨)

(二)  原告は、平成八年三月二五日、被告に対し、五階フロアが物販フロアになると営業時間等の関係もあって五右衛門店の売り上げが落ちる可能性がある等として、その場合には被告が条件面で誠意をもって対応してほしい旨、このことを確認し、別途両者で協議する旨を記載した一札を入れてほしい旨を申し入れた。

被告は、被告訴訟代理人と相談したうえ、同代理人から、条件面を変更する場合は、改装後の売上動向を見極めたうえで話し合いによって行うことを明確にするようアドバイスを受け、平成八年四月二四日、原告との間で、「確認書」(以下「本件確認書」という。)と題する書面を取り交わした。

右書面には、アルタ館五階の改装につき、被告と原告は、本件第一契約の契約書第四条第四項及び第一八条に基づき、改装後の売上動向を見極めたうえ、被告と原告が誠実に話し合いを進めるものとする旨を確認する旨の記載があるほか、その末尾に、被告及び原告の各記名捺印がある。(特に、甲3、16、乙26、弁論の全趣旨)

(三)  その後、原告は、被告がアルタ館五階を飲食店フロアから物販フロアへ変更することを承諾したうえ、これに伴い、平成八年九月三〇日、五右衛門店を改装してオープンしたが、その際、被告施工の乙工事(原告が費用を負担する設備工事)に関して、訴外山新建装が施工した工事代金五三〇万四五〇〇円を負担したほか、株式会社アイデックから家具九八万八八〇〇円を、株式会社マルゼンから厨房器具二一九万六一六六円を、カワサキ産商株式会社から洗浄機七二万三〇六〇円を、岩田産業から調理器具一四万五六四三円をそれぞれ購入し、更に、文具一万二八三一円を購入し、その合計額は九三七万一〇〇〇円となった。(特に、甲16~19、乙26、弁論の全趣旨)

15(一)  原告は、平成九年一〇月二七日、被告に対し、書面で、五右衛門店はオープン以来、五右衛門のフラッグショップとして顧客の支持を獲得したうえ、アルタ館の飲食店舗の顔としても多大な貢献をしてきたが、ここ二年間の売上は減少気味であり、平成八年のリニューアル後は一段と売上が落ち込んでいる旨、原告の担当者が、平成九年四月二三日、被告の担当者と売上に関して協議したが、被告がエレベーター内に五右衛門店を表示していること、リニューアル後半年程度では売上動向を確定できないこと等から、もうしばらく様子を見ることとしたこと、しかし、その後は五右衛門店の売上は悪化する一方であり、原告は耐えられないこと、原告の他の商業ビルにおける店舗の売上は堅調であり、五右衛門店の売上悪化はアルタ館五階フロアの構成に問題があること等を指摘したうえ、本件確認書の趣旨に従い、販売奨励金の変更について協議することを申し入れた。(特に、甲4)

(二)  更に、大林社長は、平成九年一二月八日、原告の監査役であり、顧問弁護士でもある原告訴訟代理人と連名の書面で、被告に対し、アルタ館五階フロアの運営について不満がある旨、五右衛門店の平成七年九月以降の売上減少は同フロアの物販フロアへの変更にある旨、被告の担当者山本耕司(以下「山本」という。)が、平成九年一一月一八日、原告の担当者に対してした提案は原告としては到底容認できないものであったこと、売上減少に関して誠意ある回答をしない場合には、過去二年間の原告が被った逸失利益及び今後予想される売上減少について損害賠償請求も辞さないこと、今後の売上減少予想に応じて、原告の被告に対して支払うべき金額を減額すべきである旨を申し入れた。(特に、甲5)

(三)  被告は、平成九年一二月二六日、被告訴訟代理人を通じ、原告に対し、右申入れに対し、被告としては、五右衛門店の売上減少は、五階フロアが物販フロアに変更されたことが主たる原因ではないと考えていること、しかし、被告としても、仕入代金額及び販売奨励金について、改装後の売上動向を見極めたうえで話し合いをすることはやぶさかではない旨、山本が提案した内容が原告には到底容認できないとのことであるので再度検討した結果、五右衛門店の平成八年八、九月から後の同年一〇月以降平成九年九月までの売上額一億一六六八万円と、改装前の平成七年八月から平成八年七月までの売上額一億二六九一万九〇〇〇円とを比較し、その低下した割合九一・九三パーセントに応じて、本件第一契約にかかる契約書四条三項を見直し、同項に九〇三万円とあるのを八一二万七〇〇〇円と、一三五万円とあるのを一二一万九〇五〇円とそれぞれ改訂することを提案した。(特に、甲6)

(四)  大林社長は、平成一〇年一月二〇日、被告に対し、被告の右(三)の提案は平成九年一月から同年一二月までの売上実績に当てはめても、八万七〇〇〇円程度の低減にしかならず、今後売上額が大きく減少した場合の現行条件と比較すれば若干のリスク低減にはなるものの、過去二年間の原告が被った逸失利益及び今後予想される売上減少についてはまったく回答になっていない旨、原告としては、平成八年一〇月から平成九年一二月までの売上減少額は三四三五万三〇〇〇円であり、その約五〇パーセントが利益相当分であるので、原告の逸失利益は一七〇〇万円であり、本件第一契約に従って原告が被告に支払うべき金額を約二〇パーセント減少した売上に見合った額にすべきであると考える旨、そこで、原告は、被告に対し、本件第一契約に従って原告が被告に支払うべき仕入代金額算定の割合八五パーセントを、右逸失分を補填する趣旨で三パーセント、今後予想される売上減少に対して二パーセントの合計五パーセントを低減して九〇パーセントとし、一三五万四五〇〇円を九〇万三〇〇〇円とすることを提案した。(特に、甲7)

(五)  被告は、平成一〇年三月三日、原告に対し、右(四)の要求には被告としては到底応じられない旨、しかし、被告としては、再度、仕入代金額を九〇三万円から八一二万七〇〇〇円に変更し、最低保証額を一三五万四五〇〇円から一二一万九〇五〇円に改訂することのほか、話し合いができた日から六か月間、原告の主張する仕入代金の算定割合を九〇パーセントとし、半年経過後にはもとの八五パーセントに戻すことを提案した。しかし、大林社長は、右提案もまったく受け入れなかった。なお、被告は、右交渉の間、原告が、本件第一契約が賃貸借契約であることを前提にして、家賃等の語を用いたことに対し、本件第一契約は賃貸借ではない旨を逐一反論している。(特に、甲8、弁論の全趣旨)

16(一)  他方、原告は、平成一〇年二月二五日、被告に対し、キリコ店に関し、平成四年三月に本件第二契約を締結してから、当初の四年間は営業委託費の計算割合を八八パーセントの割合として暫定的に軽減していたが、右営業委託契約が締結された当時はバブルが崩壊する前であり、バブル崩壊後は顧客の外食頻度を減らす傾向もあり、不動産の価格低下に伴うビルの賃貸料の大幅な低下傾向からしても、アルタ館の営業委託費はずば抜けて高額であるのみならず、地下一階のフロアにはキリコ店以外はファーストフート系の飲食店舗と物販店となり、飲食フロアとしての機能も果たしていないこと等を指摘したうえ、平成一〇年三月から、当初の四年間と同様に、営業委託費の計算割合を八八パーセントの割合としてほしい旨を申し入れた。(特に、甲11)

(二)  被告は、平成一〇年三月一一日、原告に対し、本件第二契約に関し、当初の四年間に軽減措置が取られていたのは、被告が六階フロアから地下一階フロアに移転したことについて、被告として原告の負担について支援するために暫定的、臨時的に取ったものであること、本件第二契約の八五パーセントという割合は、アルタ館における他のテナントのそれと対比しても被告の相場といえるものであり、被告は、各階のテナントに対し、特段の事情がない限り、例外的条件を設定することはできない旨を回答して右申入れを拒否した。なお、被告は、右交渉の間、原告が、本件第二契約が賃貸借契約であることを前提にして家賃等の語を用いたことに対し、本件第二契約は賃貸借ではない旨を逐一反論している。(特に、甲12)

(三)  なお、キリコ店の売上額は、平成四年四月から平成八年一二月ころまでは、多少の増減はあるものの、月一〇〇〇万円から一二〇〇万円前後であったが、平成九年一月ころから平成一〇年四月ころにかけては月九〇〇万円から一〇〇〇万円前後となり、平成一〇年五月から平成一一年九月にかけては月八〇〇万円から九〇〇万円前後となっており、仕入代金の基準額である一六二六万円を超えたことはない。(弁論の全趣旨)

17(一)  原告は、現在もアルタ五階フロアにおいて五右衛門店を営業しているが、アルタ館の一階より上階のフロアにおいては、飲食店は五右衛門店だけであり、物販店の営業時間が午前一一時から午後八時までであるのに対し、五右衛門の営業時間が午前一一時から午後一一時であることから、物販店の閉店後に営業しているのは五右衛門一店のみになり、被告は、エスカレーターを停止させているものの、エレベーターは運転している。また、被告は、五階フロアにおいては、物販店閉店後は、トイレへの道筋以外は照明を落とし、物販店の商品には網が掛けられ、守衛が配置されている。

なお、アルタ館における飲食店の営業時間は、地下一階と五階が午前一一時から午後一一時であり、地下二階が午前八時から午後一一時である。(特に、証人天間、同山本、弁論の全趣旨)

(二)  なお、原告の平成八年一〇月から平成一一年九月までの五右衛門店における売上高は別紙売上高一覧表記載のとおりである。(争いがない。)

18  なお、原告は、本訴に先立ち、賃料減額請求の調停の申立てをしたが(東京簡易裁判所平成一〇年(ユ)第二四三号事件)、平成一〇年九月一日、右調停は不成立となった。(争いがない。)

以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

そこで、以上の事実を前提として、原告及び被告の各主張について検討を加えることとする。

三1  原告は、本件第一、第二契約に関して、原告は本件各店舗を賃借し、自己の営業として飲食店営業を行っているものである旨主張し、被告は、本件各店舗における営業を原告に委託しているものにすぎず、右営業の主体は被告であり、本件各店舗については賃貸借契約は締結されていない旨主張し、その法的性質を争うので、まず、この点について検討する。

ところで、店舗の利用関係を定める契約の法的性質は、当該契約の契約書に用いられている契約の名称や用語のみで直ちに決定されるものではなく、契約書の他の条項、特に、損益の帰属、支払金額、営業上の指揮監督等に関する規定や、営業の実状、実態等をも考慮して、その実質に即して決定されるというべきであるところ、右判断の際には、当該契約にかかる契約書の体裁、名称、用語、契約条項の規定及びその内容に加えて、当事者の取引経験、当事者の事業規模、当該店舗の存する事業施設の規模、性格、当該店舗の用途、当該事業施設又は当該店舗の立地条件、当該店舗の構造、当事者が当該契約を締結するに至る経緯、契約締結時における当事者の意思、当該店舗における仕入、販売等の営業の実態、営業主体としての店舗の管理状況等、内装、設備、什器備品その他の費用負担、当該店舗における従業員の雇用状況、営業の指揮監督状況、売上げの計算管理方法、当該店舗の利用に関して支払われるべき金員の支払方法、計算方法、営業損益の帰属、等々の諸事情が勘案されるべきである。

これを本件について見るのに、右二に認定の事実並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一)  アルタ館は、我が国において有数の高度商業地域である新宿駅前商業地域に所在する大形の高度商業施設であり、全国的にも極めて著名であって、アルタ館自体が営業専用の商業施設であり、その館内の店舗も純然たる商業施設であること、

(二)  被告は、デパートの老舗として著名であるが、原告も、全国的に多数の業態を有するレストランチェーンとして飲食店営業を展開する企業であり、その資本額、売上高等において相当の規模を有していること、

(三)  原告は、駅ビル、デパート等の大形商業施設にテナントとして多数出店しているが、その際、商業施設としての規模、立地条件、商業施設の集客力、店舗数、店舗構成、顧客層、店舗営業の採算性等を十分に調査検討して出店の是非を決定しており、その経験も豊富であって、店舗の利用に関して賃貸借契約が締結され、あるいは営業委託契約が締結されることがあることを熟知していること、

(四)  被告は、アルタ館の高い知名度、集客力等を維持するために諸々の費用を支出するとともに、その出店条件を周囲の商業施設に比して高めに設定しており、原告はこれを十分に知悉していたものの、昭和六二年ないし昭和六三年ころ、その営業活動の一環として、アルタ館内の店舗を運営することによる収益のほか、アルタ館への出店それ自体に伴う宣伝効果等をも考慮し、昭和六二年三月、アルタ館六階にアルタボルツ店を出店したうえ、昭和六三年三月、五右衛門店を出店し、平成四年三月には、アルタボルツ店を退店してキリコ店を出店したこと、

(五)  本件第一、第二契約締結の際、原告は、被告との間で、被告の提示する出店条件を十分検討したうえ、その値下げ等についても交渉を重ねた結果、本件第一、第二契約を締結し、これに付随する売上の確認、管理等に関する付帯契約、保証金預託契約等も併せて締結していること、

(六)  本件第一、第二契約にかかる契約書には、表題のみならず、その条項中にも、右各契約が営業委託契約であり、被告がアルタ館で営業する飲食営業を原告に委託する旨が明示されているのみならず、右各契約において、本件各店舗に関して、原告が賃借権その他の独立した占有権又は営業権等がないことを確認する旨が合意されていること、なお、原告は、右各契約締結の際、賃貸借契約でないことに異議を述べた様子もないこと、

(七)  なお、右契約書においては、賃料、敷金等の賃貸借契約を窺わせる語句は用いられていないほか、本件各店舗の場所又は区画を表示する図面が添付されておらず、権利金、敷金もしくは保証金に関する規定も存せず、右各契約終了時における店舗の原状回復に関する規定もないこと、

(八)  本件第一、第二契約においては、原告は、被告の営業方針に従い、その指揮監督の下に業務を遂行することとされているほか、原告は飲食物の献立売価等については予め被告と協議して定めることとされていること、

(九)  原告は、従業員を本件各店舗に派遣して業務に従事させていたが、本件第一、第二契約によれば、原告は右従業員について予め被告の承認を得なければならないこととされ、被告は、右従業員を不適当と認めるときは、その出務を停止することができることとされていること、

(一〇)  被告は、本件各店舗における飲食物の販売、提供に関しては、在庫負担のない売上計算契約又は消化仕入という形を取り、顧客に販売等した飲食物をその販売等した時点で仕入れたこととして仕入伝票を起こし、その売上はすべて被告の売上げとして計上しており、本件第一、第二契約上も、被告は本件各店舗の売上代金等をすべて取得するものとされていること、

(一一)  本件各店舗の売上代金の確認又は管理等に関して締結された付帯契約によれば、原告は当日の売上金を現金納金表を添えて被告の銀行口座に預け入れることとされているほか、売上総額をレジスターに登録し、その精算レシートを添えた売上日報と輔助伝票を添えて被告に報告することとされ、右付帯契約に違反したときは、被告は本件第一、第二契約を無催告で解除し得るものとされていること、

(一二)  被告は、本件各店舗の毎月の売上高からその八五パーセントの額を仕入代金(業務委託費を含む。)として原告に支払うが、その売上代金額が本件第一、第二契約所定の一定額に達しないときは、原告は、右一定額の一五パーセントに相当する額から当該売上代金額の一五パーセントとの差額を販売奨励金として被告に支払うものとされていること、

(一三)  被告は、本件各店舗について、新宿保健所長から、営業者を被告とし、営業の種類を飲食店営業として、食品衛生法二一条の許可を受け、責任者として保健所に対する報告も行っていること、

(一四)  被告は、本件各店舗を含め、アルタ館における飲食店舗における飲食販売員マニュアルを作成しているほか、飲食店長会議等を定期的に開催し、品質管理部による年間スケジュールに基づく検査及び点検等を実施するなどして、飲食店舗における衛生管理の徹底、励行を図らせ、害虫等の駆除等を行うとともに、食材の安全性等についても、随時、販売の自粛通知を出すなどして指導を行っていること、

(一五)  被告は、アルタ館自体の宣伝のほか、そのテナントについても写真付きで宣伝広告を行うなどし、その運営するホームページにおいても、本件各店舗も含め、各テナントを紹介して宣伝しており、その費用を負担していること、なお、本件第一、第二契約によれば、アルタ館の広告宣伝は必ず被告の主宰によるものとされていること、

(一六)  本件第一、第二契約においては、顧客から本件各店舗において販売、提供された飲食物や従業員の行為等についてクレームがあった場合には、被告が第一次的に責任を負うことが予定されており、被告が顧客に対して責任を負但し、もしくは被告が損害を蒙ったときは、原告はその賠償の責に任ずるものとされていること、

(一七)  本件第一、第二契約においては、原告は、本件各店舗の客席厨房等を他の目的に利用し、又は受託業務を他に移譲したり、担当させてはならないこととされているほか、原告の派遣した従業員は、アルタ館において被告の指定した店舗部分の施設を使用し、被告の指示に従って委託業務を行うこととされていること、

以上の事実が認められ、右認定の事実、ことに、本件第一、第二契約の名称、及びその内容、原告の事業規模、出店経験、アルタ館及び本件各店舗の商業施設としての性格、用途、右各契約締結に至る経緯、本件各店舗における原告の営業の状況、被告の右営業への関与の程度、売上金の管理及び帰属等々によれば、本件各店舗に関する原告と被告との契約関係は、被告に在庫負担のない売上計算契約又は消化仕入の方式を採用した取引契約であって、その売上が被告に帰属するものであるほか、被告が本件各店舗を含めたアルタ館全体の経営方針の観点からも、本件各店舗における営業許可、衛生検査、従業員の執務承認等の点からも、一定の限度ではあるものの、本件各店舗の経営に関与し得るものとされているものであり、これに加えて、本件第一、第二契約が文言上明確に営業委託契約として締結され、原告と被告が、純然たる商業施設である本件各店舗に関して、それぞれ一企業として対等に交渉し、契約条件、契約条項を検討したうえでその法形式を営業委託契約とすることを選択して本件第一、第二契約を締結したものであることをも併せて考慮すると、本件第一、第二契約の契約関係は営業委託契約であって、本件各店舗における飲食店営業の主体は被告であり、原告は、本件第一、第二契約に基づき、その飲食店業務を遂行するため、原告の従業員を派遣し、右従業員をして被告の飲食店営業を代行させていたものというべきである。

2(一)  右の点に関し、原告は、本件各店舗において、自己の計算において営業を行っているのであって、右各店舗の内装、設備費用、光熱費を含め、運営に要する費用を負担し、従業員の人件費、教育管理費等もすべて負担している営業成績の如何にかかわらず、これらの費用も全部負担しているから、本件各店舗の損益の最終帰属者は原告であり、本件第一、第二契約は賃貸借契約である旨を主張する。

確かに、前記二に認定の事実によれば、原告が本件各店舗に関し、その内装、設備、什器備品等に関して多額の負担をし、原告自らその従業員を派遣し、その費用を負担していること、光熱費を含めて、本件各店舗の運営に要する費用を事実上負担していることが認められる。

しかしながら、前記二に認定の事実によれば、原告と被告との間では、本件各店舗の売上に関しては、被告に在庫負担のない売上計算契約又は消化仕入の方式により、顧客に販売、提供した飲食物をその販売等した時点で被告が仕入れたこととし、その売上はすべて被告の売上げとして計上しており、本件第一、第二契約上も、被告は本件各店舗の売上代金等をすべて取得するものとされていることが認められる。

また、本件第一、第二契約上、ガス料金、水道料金、電気料金(空調費を除く。)、本件各店舗の諸設備、什器、内装、器具備品の整備、移動、修繕及び取り替えの費用、被告所有の電話機その他の施設を利用した費用はすべて原告が負担し、原告が清掃費として一定額を負担することも、原告が派遣する従業員の給与その他の人件費等についても原告が負担することも合意されているのであって、右各費用にかかる原告の負担は、第一次的には本件第一、第二契約に基づくものであることが明らかである。

これに加えて、飲食店舗の経営主体は、本来、営業方針についての最終決定権を有するから、顧客に提供する飲食物等の種類、価格その他営業に関する事項を自ら決定することが通常であるものの、経済的需要や事業施設の効率的活用等から、その業務を他の業者(以下「業者」という。)に委託することがあり、特に、飲食店や飲食物等に関する嗜好が拡大、多様化し、その情報が大量かつリアルタイムで流される昨今の状況に対応して、当該飲食店舗の業務委託の態様、範囲又は内容が多種多様のものとなり得ることは想像に難くないところであって、その内容は、原則として、経営主体と業者間の契約により定められるべきものであるところ、右業者側の利害等も加わって、原材料の仕入、調理加工、飲食物の種類の決定、営業見通し等を含む営業一切について、その専門知識、経験、営業上のノウハウを生かして、委託先の業者に全面的に決定を委ね、更には店舗の内装、設備等についてもこれを右業者に委ねることもまったくあり得ないではなく、その合理性、必要性がないわけでもないのであって、その場合には、右店舗設備の費用負担も含め、顧客に対する飲食物販売に関する営業のリスクを右業者において負担することとなり、事実上、当該店舗が業者の店舗であるかのような外形を生じさせることはあるものの、そのことの一事をもって直ちに営業主体の変更がもたらされるものではないといわざるを得ない。

以上の諸点に照らして考えると、原告が、本件各店舗をその計算において運営し、その損益がすべて原告に帰属しているとの前記主張は直ちに採用することができず、他に原告の右主張を認めるに足りる証拠はない。

(二)  次に、原告は、被告は、本件各店舗について、その営業の収益の如何にかかわらず、一定額以上の金員を取得しているのであって、固定賃料のほか、超過売上高に一定の割合を乗じた金額(売上歩合賃料)によって賃料額が決定されているものであり、実質的には、本件各店舗の使用対価として固定賃料を収受しているものというべきであり、本件第一、第二契約が賃貸借契約であることが明らかである旨を主張する。

確かに、前記二に認定の事実によれば、原告は、被告に対し、本件各店舗に関し、毎月、一定額の一五パーセントに相当する額を支払、右一定額を超える売上があったときは、その超過額の一五パーセントを支払う結果となり、最低保証額を伴った売上歩合制となることが明らかである。

しかしながら、本件第一、第二契約において、賃料、敷金その他賃貸借契約を窺わせる用語はまったくなく、右各契約が賃貸借契約であることを明確に示す条項もないのみならず、かえって、右各契約が営業委託契約である旨が明確にされているとともに、原告が賃借権を有しない旨が明示されていることは既に説示のとおりである。

また、原告と被告との間では、本件各店舗の売上に関して、被告に在庫負担のない売上計算契約又は消化仕入の方式によることとし、販売の時点で被告が仕入れたこととし、その売上はすべて被告の売上げとして計上し、被告が右売上代金をすべて取得するものとされていることは前示のとおりである。

更に、本件第一、第二契約によれば、被告は本件各店舗の毎月の売上高からその八五パーセントの額を仕入代金(業務委託費を含む。)として原告に支払うが、その売上代金額が本件第一、第二契約所定の一定額に達しないときは、原告は、右一定額の一五パーセントに相当する額から当該売上代金額の一五パーセントとの差額を販売奨励金として被告に支払うものとされていることも既に説示したとおりである。

以上の諸点に照らして考えると、被告が本件各店舗についてその営業の収益の如何にかかわらず一定額以上の金員を取得していることをもってこれを賃料であるとし、本件第一、第二契約が賃貸借契約であるとの原告の前記主張は直ちに採用することができず、他に原告の右主張を認めるに足りる証拠はない。

なお、原告は、店舗の賃貸借契約においては、賃借業者の売上に対する歩合制とされることもあり、その場合には最低賃料額が定められることが多く、現在の商業ビルにおける店舗の賃貸借契約においても、右のような売上歩合による賃料制度が採用される例もあり、また、賃料債権保全のためもあって、当該商業ビルの所有者が売上を全額預かり、賃料を控除した額を賃借人に支払う例もあるから、賃料の額が定額でないこと、あるいは売上が賃貸人に預けられることは賃貸借であることを否定する理由とはならない旨を主張し、なるほど商業ビルの賃貸借において右主張のような例も存するものの、他方、業務委託契約においても、歩合制を採用するとともに、これに最低保証の定めが存するものもあり、この場合には、原告主張の前記歩合賃料による賃貸借の場合と外形上はほとんど区別がつかないこととなり、業者が経営主体に対し店舗営業に関して一定額の金員を納入していることのみでは、賃貸借であるとも直ちに断定しがたいものといわざるを得ない。

(三)  また、原告は、本件各店舗に関して、顧客に提供する飲食物の品目、調理方法、調理、顧客へのサービスその他の店舗運営、販売促進等の業務をすべて決定しており、その独自の判断に基づいてこれを運営しており、被告がこれについて実質的に指揮監督をしたことはないから、本件各店舗の営業主体は原告であり、したがって、本件各店舗の契約関係は賃貸借契約であるというべきである旨を主張する。

確かに、前記二に認定の事実によれば、原告が、事実上、本件各店舗において、顧客に提供する飲食物の品目、調理方法、調理、顧客へのサービスその他の店舗運営を自ら決定して本件各店舗を運営していることが認められる。

しかしながら、前記二に認定の事実によっても、原告と被告が、本件第一、第二契約締結の際、原告の出店する店舗営業に関し、その業態や飲食物の価格帯等も含め、どのような店舗とするかの方針等についておおよその合意があったことが窺われるほか、被告は、アルタ館全体の営業方針を策定し、これに従い、本件各店舗も含めて、そのテナントに関する広告宣伝を行っていること、原告が本件各店舗の営業許可を受けておらず、被告が営業主体として右許可を受け、保健所に対する責任者として報告もし、本件各店舗の衛生管理、指導及び検査等を実施していることが認められ、本件第一、第二契約によれば、原告は飲食物の献立売価等については予め被告と協議して定めることとされ、被告は、原告の派遣する従業員を承認し、不適当と認めるときはその出務を停止し得るものとされていることも前示のとおりである。

これに加えて、飲食店営業に関する業務委託契約において、経営主体が、委託を受ける業者に対し、その専門知識、経験を活用し、全面的にその決定を委ねることもあり、その場合には、業者が、当該店舗において、相当に広範な裁量のもとにその営業を行い、経営主体が営業の具体的な内容に関してまで指揮監督をしないこともあり得ないではないというべきである。

以上の諸点に照らして考えると、原告が、本件各店舗に関して、その独自の判断に基づいてこれを運営しており、被告がこれについて実質的に指揮監督をしたことはないとの前記主張は直ちに採用することができず、他に原告の右主張を認めるに足りる証拠はない。

(四)  更に、原告は、本件各店舗は、アルタ館の固定の区画として、壁、間仕切り、シャッター等で他の店舗やフロアと明確に区分されており、その利用上、構造上の独立性を有する建物であって、本件第一、第二契約が賃貸借契約であることは明らかである旨を主張する。

確かに、前記二に認定の事実によれば、本件各店舗の所在する区画は、従前から店舗部分として壁、間仕切り、シャッター等で他の店舗やフロアと明確に区分されており、その利用上、構造上の独立性を有し、本件第一、第二契約締結の際も、原告と被告との間においては、その場所的位置、面積は特定していたことが認められる。

しかしながら、本件第一、第二契約においては、右各契約が営業委託契約であって、賃貸借契約でないことが明確に表示され、その契約書中に本件各店舗の場所又は区画が明示されていないことは前示のとおりである。

また、本件第一、第二契約締結当時、アルタ館の五階もしくは地下一階において、他に入店可能であった店舗部分は存しなかったことが窺われる。

これに加えて、店舗の賃貸借契約の場合、その場所的固定性、建物の構造等は、これを欠く場合には賃貸借契約でないことを窺わせる重要な要素となり得るが、これを備える場合には、当該店舗における営業に関しては、営業委託契約の場合と賃貸借契約の場合とで外形上は選ぶところはなく、昨今の賃貸借契約又は業務委託契約の多種多様性にも鑑みると、独立性を有する建物の利用であることの一事をもって、直ちに賃貸借契約であると断定し難いものといわざるを得ない。

以上の諸点に照らして考えると、原告の前記主張は直ちに採用することができず、他に原告の右主張を認めるに足りる証拠はない。

(五)  また、原告は、本件各店舗に関しては、多額の保証金を差し入れており、右は、本件第一、第二契約が賃貸借契約であることを示すものである旨を主張し、なるほど、前記二に認定の事実によれば、原告が、本件各店舗に関し、被告に対し、五右衛門店については三八七〇万円、キリコ店については一億〇八四〇万円の保証金を預託していることが認められる。

しかしながら、本件第一、第二契約において、右各契約が営業委託契約であることとが明示されているほか、その条項中に敷金、保証金に関する定めがないことは既に説示のとおりである。

これに加えて、証人山本耕司並びに弁論の全趣旨によれば、被告は、原告の営業成績が経済情勢の変化等により悪化した場合等のほか、本件各店舗において食中毒その他の事故が発生した場合に、その被害に対する補償が多額になりかねないことをも考慮して、右保証金額を定めたことが認められる。

これらの事実に照らして考えると、被告が、原告から、本件各店舗の営業に関し、前記保証金の預託を受けていることの一事のみでは、本件第一、第二契約が賃貸借契約であると断定することはできないものといわざるを得ず、他に、原告の右主張を認めるに足りる証拠はない。

3  なお、本件第一、第二契約については、それが飲食店舗の利用に関する契約であり、右店舗の利用に伴って一定の金員が支払われる結果となる点において、店舗の賃貸借契約に類似してくる面もあるから、その法的性質とは別に、右各契約に基づく個々の法律関係について、民法における賃貸借の規定、旧借家法(大正一〇年法律第五〇号)又は借地借家法の規定が個別に類推適用され得る余地がないではないものの、右は別論であるというべきである。

四1  進んで、原告は、本件第一契約が賃貸借契約であり、仮にそうでなくとも、本件第一契約上、店舗を引き渡した後においても、被告は、原告の使用収益を妨害しないだけでなく、その十分な使用及び収益をさせることに努むべき積極的な義務、すなわち、五右衛門店以外の共用部分、店舗の周囲又はフロア全体も含めて、原告が店舗営業により収益が挙げられるような環境等を維持、保全、整備すべき営業環境維持義務をも負担しているというべきである旨を主張する。

2(一)  しかしながら、本件第一契約が営業委託契約であって、賃貸借契約ではないことは既に説示したところから明らかであるのみならず、仮に本件第一契約に民法における賃貸借の規定が類推適用され得るとしても、一般に、賃貸借契約上、原告主張のような営業環境等を維持、保全、整備すべき義務は認められない。

(二)  また、本件第一契約にかかる契約書には、原告の右主張にかかる営業環境維持義務を定めた規定もしくはこれを窺わせる規定はまったくなく、本件全記録を精査しても、本件第一契約の締結に至る過程において、原告と被告間で営業環境維持義務に関する話題が取り上げられ、あるいは右営業環境維持義務を前提とした交渉があったとの事実を認めるに足りる証拠はなく、かえって、本件第一契約においては、急激な経済情勢の変化等にともなう経営方針の変更等の要請に対応することをも考慮し、契約期間満了前三か月までに原告又は被告から別段の意思表示があった場合には終了し、その有効期間中といえども、原告又は被告の都合により、三か月前に予告をしたうえで、右契約を解約することができるものとされていることが明らかであり、これらの事実に照らすと、原告が、本件第一契約締結の際、被告との間において、営業環境維持義務について合意したとの事実を認められず、他に原告の右主張を認めるに足りる証拠はない。

なお、原告は、本件第一契約の第一五条が「甲の許可なしに甲から委託された業務を変更」できない旨を規定するところ、右「甲」は、業種、業態の変更に関し、原告のみに止まらず、被告も含むものと解すべきである旨を主張するところ、本件第一契約において、「甲」が被告であることは明らかであるのみならず、右条項は、原告に一定の事由が生じたときには、被告が何らの通知、催告を要せずに右契約を直ちに解除することができる旨を定めたものであって(乙11)、右条項が被告から原告に対する一方的解約権を定めたものであることは明らかであるから、原告の右主張は、到底採用することができない。

(三)  更に、被告の前記五階フロアの物販店フロアへの改装は、同フロアに出店していたテナントが売上が急速に落ち、回復の見込がないために相次いで撤退したことによるものであるのみならず、原告は、いったんは物販フロアへの変更に反対したものの、被告との間で、五右衛門店の売上が低下した場合には、改装後の売上動向を見極めたうえ、本件第一契約の契約書第四条第四項及び第一八条に基づき、被告と原告が誠実に話し合いを進めるものとする旨を確認するとの確認書を取り交わして、被告がアルタ館五階を飲食店フロアから物販フロアへ変更することを承諾し、これに伴い、原告自身も、右改装に合わせて、五右衛門店を改装してオープンしたことは前記二に認定の事実から明らかである。

また、原告は、平成八年のアルタ館五階フロアの改装後も五右衛門店の営業を継続しており、その営業が赤字経営に至っているわけではないのみならず、被告は物販店閉店後も顧客が五右衛門店を利用できるような措置を取っていることは前記認定の事実並びに弁論の全趣旨からも明らかであって、右フロアの改装が五右衛門店の利用を不能とさせたり、その利用目的に重大な支障を生じさせているものでもないことが明らかである。

これに加えて、被告がアルタ館全体の経営方針に関する最終的な決定権を有し、右決定権はアルタ館の各フロアについても及ぶこともまた明らかであるほか、昨今のように経済情勢の変化が著しい状況下においては、商業ビルのフロアの構成を右変化に応じて変更する必要があることもまた明らかなところというほかはない。なお、原告は、被告がアルタ館五階の出店条件を下げれば出店希望者を募集することは容易であった旨主張するが、右はアルタ館の経営方針に関する被告の決定権に容喙するものといわざるを得ない。

これらの諸事実に照らすと、被告がアルタ館五階を飲食店フロアから物販フロアへ変更することについて、信義則上、原告主張にかかる営業環境維持すべき義務があるということも到底できず、他に原告の右主張を認めるに足りる証拠はない。

3  そうすると、原告の営業環境維持義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由のないことが明らかである。

五1  次に、原告は、本件第二契約が賃貸借契約であることを前提として、キリコ店の賃料が近隣の同種商業施設における店舗の賃料に比較して不相当になったから、借地借家法三二条に基づき、賃料を減額することを請求する。

2  しかしながら、本件第二契約が賃貸借契約ではなく、営業委託契約であると解すべきことは既に説示のとおりである。

3(一)  もっとも、本件第二契約は、前記のとおり、その法的性質は別として、それが飲食店舗の利用に関する契約であり、右店舗の利用に伴い、一定の金員が支払われる結果になる点において、賃貸借契約に類似する面もないわけではなく、賃料減額に関する借地借家法三二条の類推適用の余地もまったく考えられないわけではないところ、仮に、本件第二契約について同条の類推適用があるとしても、前記二に認定の事実並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

すなわち、(1) 原告は、もともと、本件第二契約締結の際、被告が原告から収受すべき金額その他の条件が、その当時においても、新宿駅周辺の他のデパートその他の有名商業施設におけるそれに比較して高額であることを十分に把握しながら、右契約を締結したものであること、(2) アルタ館自体、全国放映の番組が撮影されるスタジオを有し、アルタビジョンで各種情報を放映するなど、単なる販売店もしくは飲食店の集合した商業施設ではなく、希少価値を有し、単純にデパート等の商業施設の賃料と単純に対比することは必ずしも相当でないこと、(3) アルタ館の飲食店舗は、全体的にバブル崩壊の影響を受け、その売上が迷する傾向にあるのみならず、アルタ館内の飲食店舗に関しては、その条件が特に低下したとの形跡は窺われず、キリコ店の売り上げが落ち、相対的に原告の負担率が上昇したものにすぎないこと、(4) キリコ店の出店条件がアルタ館内の飲食店舗と比較して特に高額となったわけではないこと、(5) キリコ店を含め、新宿駅周辺の地価は相当急激に低下したものの、新宿駅周辺の立地条件のよい飲食ビルにおいては、その賃料水準は比較的安定しており、少なくとも地価と連動するような形での低下はしていないこと、(6) アルタ館内の店舗の出店条件もさほど低下しておらず、むしろ上昇しているものもあること、(7) バブル経済の崩壊のような経済事情の変動等は、原告の予期しなかったことであるにしても、経済情勢の変動は事業経営者として当然に考慮すべき事柄の一つであって、これを著しい事情の変更とまでいうことができないことを認めることができる。

(二)(1)  これに加えて、鑑定の結果によれば、<1>平成一〇年三月一日現在のキリコ店の月額実質賃料は、踏襲利回り法による差額配分法で算出すると二〇九万八〇〇〇円(一〇〇〇円以下切り捨て。以下同じ。)となり、スライド法で算出すると二五八万一〇〇〇円となり、正常賃料相当額との差額配分法で算出すると二六一万円となり、売上高に対する家賃負担割合から求めた賃料によると二五〇万八〇〇〇円となること、<2>右各計算結果をそれぞれ平等に考慮して算出すると、キリコ店の月額実質賃料は二四四万九〇〇〇円となること、<3>同店の保証金が一億〇八四〇万円であるところ、その運用利回りを年四パーセントとして運用益を計算すると、一月当たり三六万一〇〇〇円(四三三万六〇〇〇円の一二分の一)となること、<4>右月額実質賃料二四四万九〇〇〇円から右運用益三六万一〇〇〇円を控除すると、その適正賃料額がほぼ二〇九万円となることを結論づけていることが認められる。

(2) しかしながら、前記認定の事実に加えて、証拠(乙29、30)並びに弁論の全趣旨によれば、<1>蔵々亭は平成六年八月にアルタ館に出店したが、平成七年三月に退店しており、テナントが数年程度で撤退する例もあること、<2>ハーゲンダッツ店、レッドドラゴン店等に関しては、アルタ館に出店後五年程度で撤退したのみならず、被告は、その撤退後一〇年間を据え置かずに保証金を返還したこと、<3>右<1>、<2>のように、被告は、アルタ館の飲食テナントが短期間で撤退することもあり、テナントが出店契約を解約した後数か月で保証金の支払をしなければならないこともあることから、右保証金を担保としてその当座預金口座に預け入れて管理しており、キリコ店の保証金も同様であること、<4>したがって、被告は、アルタ館の飲食店舗出店に伴う保証金に関して、国債、定期預金、財テク資金等による運用その他の長期間にわたる資金運用を行っていないことが認められ、これに加えて、現在の公定歩合その他の金利水準が平成七年以降極めて低い状態にあることをも併せて考慮すると、平成一〇年三月一日現在におけるキリコ店の保証金の運用利回りは年一パーセントを超えることはないというべきである。

(3) そこで、右年一パーセントの利回りで右保証金の運用益を計算すると一〇八万四〇〇〇円となり、キリコ店の適正実質賃料は、前記月額実質賃料二四四万九〇〇〇円から右運用益の平均月額九万円(一〇八万四〇〇〇円の一二分の一)を控除した約二三六万円となるところ、これと現在の毎月の支払額二四三万九〇〇〇円との差は月八万円前後にすぎないこととなるから、キリコ店における現在の毎月の支払額と右の適正実質賃料との間にはさほどの差はないものといわざるを得ない。

(三)  以上に認定の事実に照らして考えると、キリコ店における現在の毎月の支払額が不相当となったものということはできず、他に原告の前記主張を認めるに足りる証拠はない。

4  以上の事実によれば、原告のキリコ店の賃料に関する減額請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないことが明らかである。

七  以上によれば、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 足立謙三)

物件目録

一 通称 新宿アルタ館又はスタジオアルタ館

所在 東京都新宿区新宿三丁目八〇七番地二二、八〇七番地四、八〇七番地五、八〇七番地六、八〇七番地七、八〇七番地八、八〇七番地二一

家屋番号 八〇七番二二の一

構造 鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下三階付八階建店舗

床面積 一階 一〇八五・〇七平方メートル

二階 一〇九一・四八平方メートル

三階 一〇四〇・九八平方メートル

四階 一〇七八・九五平方メートル

五階 一〇二八・五四平方メートル

六階 一〇二八・五四平方メートル

七階 一〇二二・一一平方メートル

八階 八〇六・六六平方メートル

地下一階  一〇五九・五三平方メートル

地下二階 一〇三三・七三平方メートル

地下三階 九七〇・二三平方メートル

二 屋号又は店舗名 洋麺屋五右衛門新宿アルタ店

所在等 右一のアルタ館五階フロア中、別紙配置図1記載の赤斜線部分

(二五・八坪)

三 屋号又は店舗名 キリコディナポリ新宿アルタ店

所在等 右一のアルタ館地下一階フロア中、別紙配置図2記載の青斜線

(二七・一坪)

配置図<省略>

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