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東京地方裁判所 平成10年(ワ)25915号 判決 2000年3月28日

原告

田村賢一

ほか一名

被告

松浦敏彦

主文

一  被告は、原告らに対し、それぞれ二八二一万七二三一円及びこれらに対する平成九年五月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は四分し、その三を被告の、その一を原告らの負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告らに対し、それぞれ三七三四万五八八六円及び内三三九四万五八八六円に対する平成九年五月二九日から、三四〇万円については本訴訟の判決確定の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、自動車同士の交差点における衝突事故において、一方の自動車の同乗者が死亡したが、その死亡した被害者の相続人である両親が、他方の自動車の運転者に対して、民法七〇九条に基いて、その損害賠償を請求したものである。

なお、立証は、記録中の証拠関係目録記載のとおりであるからこれを引用する。

二  争いのない事実等

1  本件事故の発生

(一) 日時 平成九年五月二九日午前二時一五分ころ

(二) 場所 山梨県富士吉田市上吉田三五八一―五先交差点(以下「本件交差点」という。)

(三) 事故車両

(1) 被告車 普通乗用自動車(山梨三三て六二)

運転者 被告

(2) 訴外高村車 普通乗用自動車(山梨五七ひ七五三三)

運転者 訴外高村竜司(以下「訴外高村」という。))

同乗者 亡田村素子(以下「亡素子」という。)

(四) 事故現場の状況

本件交差点は、信号機により交通整理が行われていたが、本件事故当時は、河口湖方面から忍野村方面に抜ける道路は黄色点滅しており、県立吉田商業高校方面から下吉田方面に抜ける道路は赤色点滅をしていた。

(五) 事故態様

訴外高村車は、河口湖方面から忍野村方面に向かって直進しており、被告車は、県立吉田商業高校方面から下吉田方面に向かって直進していたところ、本件交差点において、被告車の前部と訴外高村車の右側面が衝突した。

(六) 本件事故により、訴外高村車に同乗していた亡素子(昭和五〇年三月一四日生)は内臓破裂の傷害を負い、約二時間三〇分後の平成九年五月二九日午前四時四〇分に死亡した。

2  原告らは亡素子の両親であり、法定相続分である二分の一の割合により、亡素子の財産を相続した。

三  原告らの損害についての主張

1  亡素子の逸失利益 四六八九万一七七三円

(一) 基礎収入(年収) 四〇三万七〇〇〇円

(1) ダイビング店「マリンペッカー」(年収) 二三九万円

亡素子は、ダイビングインストラクターとしてダイビング店「マリンペッカー」に正社員として就職が内定しており、その際の年収は右のとおりであった。

(2) スナック「プアゾン」(年収) 一六四万七〇〇〇円

亡素子は、以前からスナック「プアゾン」でアルバイトをしており、右「マリンペッカー」は、アルバイトを禁止しておらず、「マリンペッカー」に就職後も、「プアゾン」でのアルバイトが可能であり、これも基礎収入の算定に加えるべきである。

(二) 生活費控除 五〇パーセント

(三) 中間利息控除(新ホフマン係数) 二三・二三一

亡素子の労働能力喪失期間四五年に対応する新ホフマン係数

(計算式)

403万7000円×50%×23.231=4689万1773円

2  慰謝料 二〇〇〇万円

3  葬儀費用 一〇〇万円

四  争点

被告は、亡素子の逸失利益は無職者として算定すべきであり、また、訴外高村は、本件事故前、亡素子も同席のうえ飲酒をして運転に及んでおり、好意同乗減額として三〇パーセントの減額をすべきであると主張している。

第三裁判所の判断

一  亡素子の逸失利益 三四二三万四四六二円

1  被告は、亡素子の逸失利益について、無職者を前提として算定すべきであると主張する。確かに、亡素子は本件事故当時、アルバイト収入以外の収入がなかったことが窺われる。しかしながら、亡素子は甲第八号証ないし一一号証によれば、ダイビングのライセンスを取得するなど、ダイビングインストラクターとして就職する準備を具体的に進めており、亡素子の逸失利益を無職として算定することは相当とはいえない。

2  原告らは、スナック「プアゾン」におけるアルバイト収入を基礎収入の算定に加えるべきであると主張しているが、ダイビングインストラクターとして正社員として稼働し始めた場合には、職務についての責任等も異なってくるのであって、アルバイトを続けられる蓋然性が高いということはできない。

3  甲第三九号証によれば、亡素子はダイビングインストラクターとして少なくとも同年代の平均年収程度の収入を得る蓋然性があったこと、亡素子が死亡時二二歳と若年であったことを合わせて考慮すると、亡素子は生涯にわたって、女子の全年齢平均賃金(年収三四〇万二一〇〇円)を得る蓋然性かあったというべきである。なお、生活費控除は五〇パーセント、中間利息の控除はライプニッツ方式によるのが相当である(亡素子の労働能力喪失期間四五年に対応するライプニッツ係数一七・七七四〇)。

(計算式)

340万2100円×50%×17.7740=3023万4462円

二  慰謝料(原告ら請求どおり) 二〇〇〇万円

慰謝料としては右金額は相当なものといえる。

三  葬儀費用(原告ら請求どおり) 一〇〇万円

四  合計 五一二三万四四六二円

五  弁護士費用 五二〇万円

弁護士費用としては右額が相当である。

六  好意同乗減額の可否

被告は、本件事故について、亡素子に好意同乗減額されるべき事由があると主張している。確かに、本件においては、訴外高村が、亡素子も同席して飲酒していた事実が認められる。しかし、訴外高村の飲酒量が多量であったことは窺われず、また、本件事故は、被告が赤点滅の信号にもかかわらず、交差点に進入し、被告車の前部を訴外高村車の右側面に衝突させたものであり、本件事故の発生に訴外高村の飲酒行為が関与しているとは認められない。したがって、本件においては好意同乗減額は認められない。

七  総計 五六四三万四四六二円

第四結語

よって、原告らの請求は、被告に対して、それぞれ二八二一万七二三一円及びこれらに対する本件事故日である平成九年五月二九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるのでこれを認容し、その余の請求は理由がないのでこれらを棄却し、訴訟費用について民訴法六四条本文、六一条を、仮執行宣言について同法二五九条一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 馬場純夫)

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