東京地方裁判所 平成10年(ワ)26073号 判決 2000年6月14日
原告
牛山伸夫
被告
東京自動車交通共済協同組合
ほか二名
主文
一 被告東京自動車交通共済協同組合は、原告に対し、金三五五万〇七五九円及びこれに対する平成九年四月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告富沢運送株式会社及び被告石井章郎は、原告に対し、連帯して金三五五万〇七五九円及びこれに対する平成九年四月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、これを五分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。
五 この判決は、原告勝訴の部分について、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告東京自動車交通共済協同組合は、原告に対し、金二〇一四万一〇四二円及びこれに対する平成九年四月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告富沢運送株式会社及び被告石井章郎は、原告に対し、連帯して金二〇一四万円及びこれに対する平成九年四月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、乗用自動車が貨物自動車に追突され、さらに前車に玉突き追突を余儀なくされた交通事故について、乗用自動車の運転者が、貨物自動車の運転者に対しては民法七〇九条に基づき、その保有者に対しては自動車損害賠償保障法三条に基づき、保有者と共済契約を締結していた協同組合に対しては共済契約に基づき、いずれも損害賠償の支払を求めた事案である。
一 前提となる事実(証拠を掲げた事実以外は争いがない事実である。)
1 事故の発生
次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した(車両の種別及び被害車両の登録番号について甲一)。
(一) 発生日時 平成九年四月一七日午後零時一〇分
(二) 事故現場 東京都文京区音羽一―一八首都高速五号線下り
(三) 加害車両 被告富沢運送株式会社(以下「被告富沢運送」という。)が保有し、被告石井章郎(以下「被告石井」という。)が運転していた普通貨物自動車(足立12う924)
(四) 被害車両 原告が運転していた普通乗用自動車(所沢33ち4525)
(五) 事故態様 被害車両が渋滞のため停車中、加害車両が被害車両に追突し、その前方に停止していた車両に、さらに被害車両を玉突き追突させた。
2 責任原因
(一) 被告石井の責任原因
被告石井は、加害車両を運転するに際し、前方を注視して運転する注意義務があるのに、これを怠り、脇見運転をして加害車両を被害車両に追突させ、さらに被害車両をその前方に停止していた車両に玉突き追突させた過失がある。
したがって、被告石井は、民法七〇九条に基づき原告に生じた損害を賠償する責任がある。
(二) 被告富沢運送の責任原因
被告富沢運送は加害車両を保有し、自己のためにその運行の用に供していたから、自動車損害賠償保障法三条に基づき、原告に生じた損害を賠償する責任がある。
(三) 被告東京自動車交通共済協同組合の責任原因
被告富沢運送は、被告東京自動車交通共済協同組合(以下「被告東京自動車交通共済」という。)との間で、自動車交通共済契約を締結し、この契約によれば、加害車両が発生させた交通事故の被害者である原告は、被告東京自動車交通共済に対し、直接共済金の支払を請求することができる。
したがって、被告東京自動車交通共済は、原告に対し、右共済契約に基づき、原告に生じた損害を賠償する責任がある。
3 原告の治療経過
原告は、本件事故後、次のとおり通院治療を受けた(甲五、一〇、一二、乙一、二)。
(一) 東京都立大塚病院
平成九年四月一七日
(二) 指扇病院
平成九年四月一九日から同年八月一二日(実日数三六日)
(三) 金井医院
平成九年八月七日から平成一〇年四月二三日(実日数三七日)
4 自賠責保険における後遺障害の等級認定
原告は、残存した症状について自賠責保険に被害者請求をしたところ、自動車保険料率算定会大宮調査事務所において、後頭部から頸部の痛み、左肩から上肢、手指の痛み等の神経症状が自賠法施行令二条別表の後遺障害等級第一四級一〇号の「局部に神経症状を残すもの」に該当する旨の認定を受けた(甲七、一三、自動車保険料率算定会大宮調査事務所に対する調査嘱託の結果、弁論の全趣旨)。
5 損害のてん補
原告は、自賠責保険から九七万五三八〇円の支払を受けた。
二 争点
1 本件事故と相当因果関係のある治療期間及び後遺障害の有無
(一) 原告の主張
本件事故当日の大塚病院での治療から、金井医院で症状固定の診断を受けた平成一〇年四月二三日までの治療は、本件事故と相当因果関係がある。そして、原告には、自賠法施行令二条別表第一四級一〇号の「局部に神経症状を残すもの」に該当する後遺障害が残存した。
(二) 被告の反論
本件事故と相当因果関係のある治療は、指扇病院での治療を終了した平成九年八月一二日までであり、金井医院での治療は本件事故と相当因果関係がない。また、原告に残存した症状は、経年性、退行性の変異に基づくものであり、外傷に基づくものではないから、本件事故と相当因果関係のある後遺障害は認められない。
2 原告の損害額(内容、金額等は、後記の争点に対する判断中に記載したとおりである。)
第三争点に対する判断
一 本件事故と相当因果関係のある治療期間及び後遺障害の有無(争点1)
1 治療経過及び残存した症状について
証拠(甲一、五、九の1・2、一三、二五、乙一ないし三、五、自動車保険料率算定会大宮調査事務所、金井医院及び指扇病院に対する各調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(一) 被害車両は、本件事故の衝撃により、後部が大きく凹損し、トランクの蓋が大きく上部にめくれ上がる損傷を受けた。
(二) 原告は、本件事故当日である平成九年四月一七日、東京都立大塚病院に救急車で搬送された。原告は、僧帽筋痛及び傍脊柱筋痛を訴え、頸椎捻挫及び腰部打撲により約一週間の通院加療を要する旨の診断を受け、内服及び外用薬の投与を受けた。X線の影像には異常はなかった。
(三) 原告は、東京都立大塚病院が遠方であったので、平成九年四月一九日に埼玉県大宮市所在の指扇病院へ転院した。原告は、初診時において、頸部の自発痛と、腰部をひねると突っ張る旨を訴えたが、両上肢及び下肢のしびれ及び疼痛はなかった。その後、各種検査を行ったところ、ホフマンテスト、トレムナーテストはいずれも陰性であり、深部腱反射、病的反射、X線の影像のいずれにも異常はなかったが、MRI検査の結果、第五、第六頸椎の椎間板ヘルニアが認められた。このヘルニアは退行性、変異性のものであるとのことであったが、原告にとっては年齢相応のもので、ヘルニアも小さいものであった。そして、同年四月に三日、五月に八日、六月に一三日、七月に一〇日、八月に二日の合計三六日通院し、牽引及び理学療法による治療を受け、同月一二日に通院を中止した。腰痛の症状は軽減傾向にあったが、頸部痛は変わらず存在した。また、途中、不眠を訴えることもあった。なお、腰椎にも退行性の変異は認められたが、ヘルニアは認められなかった。
(四) 原告は、平成九年八月七日ころ、頸部の後屈の際の疼痛などを訴え、知人に推薦してもらった埼玉県上福岡市所在の金井医院にも通院するようになった。ジャクソンテスト及びスパーリングテストはいずれも陽性であった。画像診断では、やはり頸椎下部の脊髄圧迫所見が見られ、これによる症状は強かった。その後、平均して一か月に四日程度の通院治療を継続し、初診時と比較すれば回復してきたものの、平成一〇年四月二三日、後頭部、後頸部の痛み、左肩から上肢、手指の痛み、しびれがあり、力が入りにくいなどの症状が残存し、症状固定の診断を受けた。この日まで、金井医院には合計三七日通院した。
(五) 自動車保険料率算定会大宮調査事務所は、原告に残存した症状について、他覚的所見は乏しいものの、受傷態様、治療経過、診療医の所見から、医学的に説明できる症状であると認め、自賠法施行令二条別表の第一四級一〇号の「局部に神経症状を残すもの」に該当すると認定した。
(六) 指扇病院の日下部伸三医師は、原告に生じた症状について、次のとおりの意見を示している。
外傷によりヘルニアが生じる場合は、MRI上もう少し炎症所見が認められるし、四肢麻痺等の重篤な症状を合併することが多いから、それらが認められない原告のヘルニアは、経年性の退行性の変異である。ヘルニアの部位は、脊柱管の狭窄により、脊髄に対する遊びが少ない状態にあるので、事故による受傷を契機としてヘルニアの症状が惹起される可能性は考えられる。捻挫等の治療期間は、通常三週間から六週間程度と考えられ、ヘルニアや脊柱管狭窄などの既往症がある場合、必要な治療期間としては六か月程度が考えられ、原告の相当な治療期間は、三か月から六か月程度であると思われる。原告の指扇病院での治療は平成九年八月一二日を最後とするが、この時点で症状固定としてよいと考える。
(七) 金井医院の金井明彦医師は、原告に生じた症状について、次のとおりの意見を示している。
経年性の退行性変異があったとしても、本件事故の際の受傷によりそれが悪化し、原告にヘルニアが生じた可能性はあるし、原告の第五、第六頸椎に認められるヘルニアから、原告が訴えているような症状が生じることは通常あり得ることである。
2 本件事故と相当因果関係のある治療期間について
(一) 症状の発生と本件事故との相当因果関係
1で認定した事実によれば、原告の頸部から上肢及び手指に関する症状は、第五、第六頸椎の椎間板ヘルニアに基づくものであり、腰痛は、腰部の打撲に基づくものであるということができる。そして、頸椎椎間板ヘルニアは、経年性の変異によるもので、その意味では本件事故以前から存在したといえるが、本件事故に遭うまでその症状が発現していたことを窺わせる証拠はないから、原告の頸部に関連する症状は、経年性の変異による椎間板ヘルニアが存在するところへ、本件事故による外力が加わり、症状が発現したと認めることができる。したがって、本件事故と椎間板ヘルニアによる症状の発現については、本件事故と相当因果関係を認めることができる。
金井医院の金井明彦医師は、本件事故によりヘルニアが生じた可能性を否定していないが、具体的な根拠に基づくものではなく、右の判断を左右するほどのものとはいえない。
(二) 治療期間の相当性
原告の症状のうち、腰部に関するものは、指扇病院への通院を中止したころには概ね解消されたが、頸部の椎間板ヘルニアに関する症状は、金井医院においても、症状はまだ回復傾向にあったこと、ヘルニアなどの既往症がある場合は、一般に六か月程度の治療期間がかかるのに対し、指扇病院への通院を中止したのは、本件事故からの経過期間が四か月に満たない時点であったことに照らすと、被告らが主張する指扇病院での治療を終了した平成九年八月一二日の時点で症状が固定したとするのは、やや時期尚早であるということができる。そして、金井医院での通院頻度はそれほど高いものではないが、継続的に一定の頻度で通院治療を受けていること、被害車両の損傷程度からは本件事故の衝撃の程度はかなりのものであったと推測されること、治療期間においてある程度の個人差は避けられないことなどの事情を併せて考えると、金井医院で症状固定の診断を受けた平成一〇年四月二三日までの治療は本件事故と相当因果関係があるというべきである。
なお、指扇病院への通院を中止した平成九年八月一二日の時点で症状固定としてよいとの日下部伸三医師の意見は、その後の金井医院での治療経過を踏まえたものか否か定かではないから、右の判断の妨げにならない。
3 後遺障害の有無について
右のとおり、第五、第六頸椎の椎間板ヘルニアは本件事故の外力により生じたものではないとしても、その症状の発現は本件事故によって生じたものであるから、原告に残存した症状(後頭部、後頸部の痛み、左肩から上肢、手指の痛み、しびれがあり、力が入りにくいなど)は、後遺障害として本件事故と相当因果関係がある。そして、その程度については、自賠法施行令二条別表第一四級一〇号の「局部に神経症状を残すもの」に該当する旨の自動車保険料率算定会の後遺障害認定が存在し、症状の内容に照らせば、特にこの認定に疑問はない。
したがって、原告には、本件事故により、自賠法施行令二条別表第一四級一〇号の「局部に神経症状を残すもの」に該当する後遺障害が残存したと認められる。
4 素因の考慮の有無
被告らは、原告の頸椎椎間板ヘルニアに基づく症状については、本件事故との相当因果関係を否定しているので、この主張は、本件事故が認められるとしても、経年性の変異が影響しており、それを素因として減額考慮すべきであるとの主張をも当然に含むと理解できないではない。
しかし、原告に認められる経年性の変異は、年齢相応のもので、ヘルニアも小さいものであったから、本件事故の衝撃の大きさをも併せて考えると、素因として減額考慮するほどのものとはいえない。
二 原告の損害額(争点2)
1 治療費等(請求額三二万三三六〇円) 三二万三三六〇円
原告は、金井医院の治療費として、三二万三三六〇円を負担した(甲八、一〇)。
2 通院交通費(請求額三万七〇〇〇円) 三万七〇〇〇円
原告は、金井医院に通院するに際し、往復交通費として一〇〇〇円を負担した(甲二五)。
したがって、通院交通費としては、通院三七日で三万七〇〇〇円を認める。
3 休業損害(請求額一七一万三〇〇〇円) 六〇万二〇〇〇円
(一) 認定事実
証拠(甲一一、一四ないし一八、二一、二五、乙二、四、指扇病院に対する調査嘱託の結果)によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告(昭和三九年一二月一〇日生)は、平成七年一〇月に株式会社日本ホーム(以下「日本ホーム」という。)を設立し、平成八年一一月には、さらに株式会社リバティーハウス(以下「リバティーハウス」という。)を設立し、代表取締役に就任した。
(2) 日本ホームの収益の状況は、第一期(平成七年一〇月二六日から平成八年二月二九日)は、売上高が三八四五万三五五七円、売上原価が三〇二四万六〇二〇円、売上総利益が八二〇万七五三七円、販管費が八三五万〇四〇五円、営業損失が一四万二八六八円であり、第二期(平成八年三月一日から平成九年二月二八日)は、売上高が一億一八九二万一五八九円、売上原価が一億〇二二〇万四四七四円、売上総利益が一六七一万七一五五円、販管費が一七二五万七三八三円、営業損失が五四万〇二六八円であり、第三期(平成九年三月一日から平成一〇年二月二八日)は、売上高が八二八九万六三二〇円、売上原価が六四〇七万四八八七円、売上総利益が一八八二万一四三三円、販管費が三一四五万四六〇七円、営業損失が一二六三万三一七四円であった。
また、リバティーハウスの第一期(平成八年一一月二七日から平成九年一〇月三一日)の収益の状況は、売上高が七六三〇万四九七六円、売上原価が六七九三万九六七〇円、売上総利益が八三六万五三〇六円、販管費が二三二二万〇六二七円、営業損失が一四八五万五三二一円であった。
(3) 原告は、平成八年においては、日本ホームからの役員報酬として年間七二二万四〇〇〇円を得ていた。また、平成九年においては、日本ホームから八五五万六〇〇〇円を、リバティーハウスから、四月分まで役員報酬として四〇〇万円(月額一〇〇万円)をそれぞれ得ていたとして税務申告がなされている。
(4) 日本ホームでは、住宅建築とプレハブ工事を扱っていたが、リバティーハウスの設立後は、日本ホームが住宅建築、リバティーハウスがプレハブ工事を扱っていた。原告は、平成九年三月までは一人で両会社の業務を行っており、同年四月から、日本ホームにおいて従業員一名を雇用するようになった。
(5) 指扇病院の日下部伸三医師は、原告は、平成九年五月七日からはデスクワークなら就労可能な状態にあったが、原告の業務を行うには、同年七月二四日まで就労は不可能であったとの意見を有していた。
(二) 裁判所の判断
(1) 基礎収入について
原告は、リバティーハウスの月額一〇〇万円を一年に換算すると年間一二〇〇万円となり、本件事故当時、これに日本ホームの八五五万六〇〇〇円を加えた年間二〇五五万六〇〇〇円の収入を得ていたと主張する。
(一)の認定事実を前提に判断するに、日本ホームとリバティーハウスは、実質的には原告が一人で経営している会社であるから、役員報酬の額は、自ら自由に決めることが可能であると思われること、日本ホームの収益の状況について、本件事故直前までの第二期は、期間の長さが第一期の三倍になっているのに対し、営業損失が増加し、売上総利益も二倍にしかなっておらず、第二期の終盤にリバティーハウスの設立によりプレハブ工事を扱わなくなったことを考慮しても、必ずしも順調に業績が上がっていたとは評価できないこと、リバティーハウスは、それまでの日本ホームが扱っていた業務の一部を扱うようになったにすぎず、原告が双方の業務をほぼ一人で行っているように、リバティーハウス設立以前と比較して急に労働内容に変化が生じたともいえないことなどの事情に照らすと、平成九年の年収が、本件事故がなかった場合、前年の三倍近くになる理由は考えにくく、その他、このように収入が増加する理由を認めるに足りる証拠はない。そして、平成九年の収入の確定申告が本件事故の翌年に行われていることを併せて考えると、この申告額を前提に事故当時の収入を認定するのは躊躇せざるを得ない。
したがって、原告の主張は採用できず、原告は、本件事故当時、少なくとも、前年の収入である年間七二二万四〇〇〇円の収入を得ていたと判断するのが相当である。
被告らは、本件事故前の収入を証明する確かな資料がないので、平成九年賃金センサス第一巻第一表の産業計・企業規模計・学歴計男子労働者の三〇歳から三四歳の平均収入である年間五二九万五四〇〇円を基礎収入とすべきであると主張するが、右に照らして採用できない。
(2) 休業損害の算定
原告は、一か月間休業したと主張し、それに沿う証拠(甲二五)はあるが、本件全証拠によっても、いつからいつまで休業したのか明らかでない。しかし、日下部伸三医師の意見を前提にすれば、この程度の休業期間はおかしくはなく、被告らも積極的に争っていない。
したがって、(一)の年間七二二万四〇〇〇円を基礎収入とし、これを一二分して一か月間の休業損害を算定すると、六〇万二〇〇〇円となる。
4 逸失利益(請求額一六六四万三〇六二円) 一五六万三七七九円
原告の後遺障害の内容及び程度、頸椎椎間板ヘルニア自体は経年性の変異に基づくものであることを総合すると、原告は、症状固定時から五年間にわたり、平均して五パーセントの割合で労働能力を喪失したと認められる。
したがって、年間七二二万四〇〇〇円を基礎収入とし、ライプニッツ方式により五年間の中間利息を控除して(係数四・三二九四)原告の逸失利益を算定すると、一五六万三七七九円(一円未満切り捨て)となる。
(計算式)
7,224,000×0.05×4.3294=1,563,779
5 慰謝料(請求額二四〇万円) 二〇〇万〇〇〇〇円
事故の態様、原告の負傷内容、通院の経過(頻度)、後遺障害の内容及び程度などの一切の事情を総合すると、原告の慰謝料としては、二〇〇万円を相当と認める。
6 損害のてん補
1ないし5の損害総額四五二万六一三九円から、原告が自賠責保険から支払を受けた九七万五三八〇円を控除すると、原告の損害残額は、三五五万〇七五九円となる。
第四結論
以上によれば、原告の請求は、被告富沢運送及び被告石井章郎に対しては不法行為に基づく損害金として(但し、被告富沢運送に対しては自賠法三条による。)、被告東京自動車交通共済に対しては保険契約に基づく保険金として、いずれも三五五万〇七五九円及びこれに対する平成九年四月一七日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
(裁判官 山崎秀尚)