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東京地方裁判所 平成10年(ワ)26179号 判決 2002年10月28日

主文

1  原告の主位的請求を棄却する。

2  被告は、原告に対し、1億3219万1307円及びこれに対する平成11年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

3  原告のその他の予備的請求を棄却する。

4  訴訟費用は、これを5分し、その1を原告の負担とし、その他を被告の負担とする。

5  この判決の第2項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第1  原告の請求

被告は、原告に対し、1億5937万3000円及びこれに対する平成10年9月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2  事案の概要

1  事案の要旨

本件は、原告が、被告の委託を受けて、カジノで使用するゲーム機の開発・製造を行っていたところ、被告が原告との取引を拒絶したことによって、開発費や逸失利益等の合計1億5937万3000円の損害を被ったとして、被告に対し、主位的に原被告間の基本契約上の債務不履行に基づき、予備的に契約締結上の信義則違反に基づき、上記金額及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。

これに対し、被告は、原被告間に基本契約が締結された事実はなく、また被告には契約締結上の信義則違反もないとして、原告の請求を全面的に争っている。

2  前提事実(証拠を示さない事実は、争いがないか、弁論の全趣旨によって認められる事実である。)

(1)  当事者及び関係者

ア 原告は、各機器の精密板金加工及び金型の製作・販売を業とする資本金1000万円、従業員数30名の株式会社である(乙37)。

イ 被告は、書籍、雑誌、教科書及び教材品の取次販売、コンピュータ機器の販売等を主たる業とする大手の出版会社である。

ウ A(以下「A」という。)は、ゲーム関係の機材・設備の販売を手掛ける米国の会社であり、C(C。以下「C」という。)は同社の代表者である(乙25)。

エ 株式会社アイディーエス(以下「IDS」という。)は、新聞・雑誌の輸出入、日用雑貨の製造販売等を目的とする株式会社である(乙21)。

オ B(以下「B」という。)は、書籍・雑誌の著作権の売買業及び出版業等を目的とする株式会社である(乙22の2)。

(2)  牌九について

アメリカを中心とした世界のカジノにおいては、麻雀牌ないしドミノ牌に似た天九牌という中国独特の遊戯用牌を使用して行う牌九(パイ・ゴウ)という賭博ゲームが普及している。

(検甲1、2、甲44の1・2)

(3)  自動牌九機の開発着手

被告は、Aの委託を受けて、平成9年5月、IDSに対し、牌九の牌を自動的に整列させる装置(以下「自動牌九機」という。)及び付属の専用牌(以下、自動牌九機と専用牌とを併せて「本件商品」という。)を開発するメーカーを探してほしいとの依頼をし、IDSは、上記依頼を受けて、原告に対し、自動牌九機の開発が可能かどうかを打診した。

原告は、同年6月、これを受けて、自動牌九機の開発に取りかかった。

(4)  本件見積書の作成

原告は、同年8月、被告に対し、本件商品の開発費等を記載した見積書(甲2。以下「本件見積書」という。)を提出した。

本件見積書においては、専用牌を製造するための金型の開発費(以下「金型代金」という。)として1800万円が、その他の開発費のうち被告が負担すべき分として960万円が計上されている。

(5)  本件支払確認書の作成

被告及びIDSは、同年9月24日、原告に対し、「牌九開発費支払い確認書」と題する書面(甲3。以下「本件支払確認書」という。)を交付した。

本件支払確認書には、次のような記載がある。

先般より懸案となっている自動牌九台の開発(試作)費に開し、下記の内容にてお支払い致します。

支払日 平成9年12月8日

支払金額 開発費 960万円

消費税 48万円

合計 1008万円

(6)  本件発注書の作成

被告は、平成10年1月21日、原告に対し、本件商品の発注書(甲4。以下「本件発注書」という。)を交付した。

本件発注書には、自動牌九機100台を1台26万円で、専用牌7万組を1組1500円で発注する旨の記載があるほか、上記100台を含めて自動牌九機1000台以上及び専用牌の継続的販売を目標とすること、本件商品を被告又は被告指定先であるB以外に販売してはならないこと、代金の支払は月末締めの翌々月10日払いとすること、正式な売買契約書は後日作成することなどが記載されている。

(7)  本件条件提示書の作成

被告は、同年6月16日、原告に対し、「全自動牌九の取引について」と題する書面(甲6。以下「本件条件提示書」という。)を送付した。同書面には、本件商品の発注に関して次のような条件を提示する旨の記載がある。

ア 平成10年7月から平成11年4月までの10か月間、自動牌九機を毎月30台ずつ発注する。

イ 自動牌九機の単価は30万円とし、その他の条件は本件発注書に準ずる。

(8)  本件条件合意書の作成

原告、被告、B及びAは、同年7月1日、「牌九の条件合意書」と題する書面(甲7。以下「本件条件合意書」という。)を作成した。

本件条件合意書には、自動牌九機の単価を30万円又は31万円とすること、専用牌の単価を1600円とすること、代金の支払は当月納品の当月払いとすることなどが記載されている。

(9)  4社契約の締結交渉とその決裂

原告、被告、B及びAは、同年8月17日と18日、本件商品の継続的製造販売等に関する4社間の契約締結をめぐって交渉したが決裂し、その後、本件商品に関する4社間の契約は締結されないままに終わった。

3  争点

(1)  主位的請求

ア 本件商品に関する原被告間の開発契約の成否

イ 本件商品に関する原被告間の個別発注契約の成否

ウ 本件商品に関する原被告間の継続的製造販売契約の成否

(2)  予備的請求

被告の原告に対する契約締結上の信義則違反の有無

(3)  原告の損害額

4  争点に関する当事者の主張

(1)  争点(1)(主位的請求)について

ア 原告の主張

(ア) 開発契約の成立

a 原告は、平成9年6月13日、被告との間で次の内容の契約(以下「本件開発契約」という。)を締結し、本件商品の開発に着手した。

<1> 被告は、自動牌九機の開発を原告に委託し、原告はこれを受託する。

<2> 原告は、自動牌九機の開発後、同ゲーム機を被告だけに卸すこととし、被告は、その見返りとして同ゲーム機1000台及び専用牌を継続的に購入する。

b この点、被告は、本件開発契約の成立を否定するが、何の合意もなく1億円以上もかけてゲーム機の開発をすることはあり得ない。また、被告は、原告が同年7月に作成した本件商品の開発に関する契約書の案(以下「本件契約書案」という。)における当事者が原告とIDSになっていることを根拠として、契約の当事者は原告とIDSであるとも主張するが、IDSは被告の契約交渉代理人にすぎない。

c なお、本件開発契約の段階では、自動牌九機の総開発費等が不明であったことから、契約内容の詳細は後日決定することとなり、契約書は作成されなかったものである。

(イ) 個別発注契約の成立

a 原告は、平成10年1月21日、被告との間で、本件開発契約を踏まえて次のような内容の契約(以下「本件個別発注契約」という。)を締結した。

<1> 被告は、自動牌九機100台及び専用牌7万組を原告に発注し、原告はこれを受注する。

<2> 自動牌九機の単価は26万円、専用牌の単価は1500円とする。

<3> 代金の支払は、月末締めの翌々月払いとする。

b この点、被告は、本件個別発注契約の成立を否定するが、同契約が成立したことは、被告が本件発注書を正式なものとして稟議した上で原告に交付していること、原告が同発注書の交付を受けて自動牌九機100台及び専用牌の製造に要する部品を発注するとともに、同年6月末ころには2台目の金型を完成させていることなどから明らかである。

c なお、本件発注書にBの記名押印が存在するのは、本件商品を被告指定先のB以外に販売しないという発注条件を確認するためである。

(ウ) 基本契約の成立

a 原告は、平成10年7月1日、被告との間で、本件個別発注契約を発展的に拡大することとして、次のような内容の継続的製造販売契約(以下「本件基本契約」という。)を締結した。

<1> 被告は原告に対し、平成10年7月から平成11年4月までの10か月間、自動牌九機を毎月30台(合計300台)及びそれに必要な専用牌を発注する。

<2> 自動牌九機の単価は30万円、専用牌の価格は1600円とする。

<3> 代金の支払は、当月納品の当月払いとする。

<4> その他の条件は、本件発注書と同一とする。

b この点、被告は、本件基本契約の成立を否定するが、同契約が成立したことは、平成10年7月8日に原告が被告の依頼元であるAとの間で機密保持契約を締結し、同日からAの代表者であるCが原告において自動牌九機の仕様の詳細等についての研修を受けたこと、同月、23日及び24日に原告が被告に対し7月分の商品として自動牌九機30台及び専用牌3600組の納品を行っていることなどから明らかである。

(エ) 7月分の商品の納品と代金の一部未払

a 原告は、平成10年7月23日及び24日、本件基本契約に基づく同月分の商品として、自動牌九機30台及び専用牌3600組(以下「7月分商品」という。)を被告に納品した。

なお、7月分商品の納品書の宛先がBになっているのは、被告の指示によるものである。

b 被告は、同年9月14日、Gを通じて、7月分商品の代金1549万8000円(消費税を含む。)のうち1000万円を原告に支払ったが、残額549万8000円の支払をしない。

(オ) 8月分の商品の受領遅滞及び代金の未払

原告は、平成10年8月、本件基本契約に基づく同月分の商品として、自動牌九機30台及び専用牌1万2600組(以下「8月分商品」という。)を被告に納品しようとしたが、被告はその受領を拒否し、その代金3061万8000円(消費税を含む。)の支払をしない。

(カ) 催告及び解除の意思表示

原告は、平成10年9月19日、被告に対し、5日以内に7月分商品の未払代金549万8000円を支払うとともに、8月分商品の代金3061万8000円を商品と引換えに支払うよう催告し、支払がない場合には本件基本契約を解除する旨の通知をした。

(キ) まとめ

したがって、被告は原告に対し、本件基本契約上の債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。

イ 被告の主張

(ア) 開発契約について

本件開発契約の成立は否認する。

平成9年6月13日の時点では、自動牌九機の開発費の額、特許権の帰属及び製造権・販売権の内容は何ら確定していなかったところ、これらの基本的事項についての合意なくして開発契約が成立することはあり得ない。

また仮に、同日何らかの契約が成立したとしても、その当事者は原告とIDSである。このことは、原告が、契約の相手方が被告になるのかIDSになるのかをIDS代表者に確認した上で本件契約書案を作成したことなどから明らかである。

(イ) 個別発注契約について

本件個別発注契約の成立は否認する。

本件発注書は、継続的取引に関する契約(いわゆる基本契約)の締結を前提として作成された発注意図表明書にすぎない。このことは、同発注書に記載された自動牌九機の単価がその後変更されていること、同発注書には自動牌九機1000台以上及び専用牌を継続的に販売することを目標とし、正式な売買契約書は後日作成する旨の記載があること、同発注書は被告とBの共同名義の文書であること、同発注書に対して原告から注文請書が発行されていないことなどから明らかである。

(ウ) 基本契約について

本件基本契約の成立は否認する。

平成10年7月1日ころには、原告、被告、B及びAの4当事者による基本契約(以下「4社契約」という。)を締結することが予定されており、上記4社によって本件条件合意書が作成されたのであるから、同日原告と被告のみの間で基本契約が締結されたと考えることはできない。また、同日の時点では、メンテナンスのフォローや販売権の内容等の条件についていまだ完全な合意には至っていなかったから、この意味でも同日基本契約が成立したということはできない。

(2)  争点(2)(契約締結上の信義則違反の有無)について

ア 原告の主張

a 仮に、本件基本契約が成立していないとしても、被告は原告に対し、契約締結上の信義則違反に基づく損害賠償責任を負う。

すなわち、原告は、自動牌九機を最低1000台は発注するという被告の言を信じ、本件商品の開発、量産準備及び納品を一貫して誠実に行ってきた。しかるに、被告は、1000台の最低受注保証をちらつかせて原告に開発費の負担を強いておきながら、Cが平成10年8月17日になって突然自動牌九機の仕様変更を要求したことに乗じて、本件基本契約を締結しなかったのであり、かかる被告の行動は契約締結上の信義則に違反する。

b この点、被告は、基本契約の締結を拒否したのは原告であると主張するが、契約締結の直前になって原告がこれを拒否する理由はない。また、被告は、仮にCの変更要求が原因で基本契約が成立しなかったとしても、その責任はCにあると主張するが、Cの変更要求は被告と被告の依頼元であるAとの間の内部的問題にすぎず、被告が基本契約の締結を拒否したことを正当化するものではない。

イ 被告の主張

基本契約の締結を拒否したのは原告であり、原告がかかる行動に出たのは、より条件の良い他の取引先が存在したからである。また、前記のとおり、平成10年7月1日ころには4社契約の締結が予定されていたのであるから、仮にCの変更要求が原因で基本契約が成立しなかったとしても、その責任はCにあり、被告に責任はない。

なお、Cの変更要求は自動牌九機の本質的変更を求めるようなものではなかったし、Cは、その改良費を自ら負担すること、及び原告が変更要求に応じなくても基本契約を締結する意思があることを表明していた。このことは、Cが同年9月11日に仕様変更のなされていない自動牌九機30台を実際に購入していることから明らかである。

したがって、被告には契約締結上の信義則違反はない。

(3)  争点(3)(原告の損害額)について

ア 原告の主張

(ア) 主位的請求に関し

原告は、被告の本件基本契約上の債務不履行によって、次のとおり、合計1億5937万3000円の損害を被った。したがって、被告は原告に対し、本件基本契約上の債務不履行に基づき、この損害を賠償する義務を負う。

a 7月分商品の未払代金相当額 549万8000円

<1> 自動牌九機30台 945万円

300,000円×30台×1.05=9,450,000円

<2> 専用牌3600組 604万8000円

1,600円×3,600組×1.05=6,048,000円

<3> 既払金 ▲1000万円

<4> 小計 549万8000円

b 8月分商品の代金相当額 3061万8000円

<1> 自動牌九機30台 945万円

300,000円×30台×1.05=9,450,000円

<2> 専用牌1万2600組 2116万8000円

1,600円×12,600組×1.05=21,168,000円

<3> 小計 3061万8000円

c 金型代金相当額 4248万1000円

原告は、平成9年10月6日、被告との間で、本件基本契約の成立を条件として、金型代金は専用牌の販売利益によって償却し、開発費としては請求しないとの合意をした。ところが、被告の本件基本契約上の債務不履行によって金型代金の償却は不能となり、原告は金型代金相当額の損害を被った。

この点、被告は、金型代金を含む開発費は自動牌九機の特許権に転化しているから、原告に損害はないと主張するが、開発実費の中に特許権相当額が含まれているとみることはできないし、本件の場合、特許権それ自体に積極的な価値はない。なお、本件金型にはBのロゴマークが刻印されているから、これを他に転用することも不可能である。

d 専用牌に関する損害 8077万6000円

<1> 在庫3110組の代金相当額(1組あたり1600円)

497万6000円

1,600円×3,110組=4,976,000円

<2> 原料在庫相当額 92万円

<3> 11万7000組分の得べかりし利益相当額(1組あたり640円) 7488万円

640円×117,000組=74,880,000円

<4> 小計 8077万6000円

e 合計 1億5937万3000円

(イ) 予備的請求に関し

仮に本件基本契約が成立していないとしても、原告は、被告の信義則に違反する行為によって、上記(ア)と同額の損害を被った。したがって、被告は原告に対し、契約締結上の信義則違反に基づき、1億5937万3000円の損害を賠償する義務を負う。

イ 被告の主張

原告の主張は否認し争う。

金型代金を含む開発費は自動牌九機の特許権に転化しているから、原告に金型代金相当額の損害は存在しない。なお、仮に原告の主張するとおり、金型代金を専用牌の販売利益によって償却することが予定されていたのであれば、金型代金相当額の損害賠償請求と専用牌に関する損害賠償請求とは二重請求の関係に立つというべきである。

また、原告の主張する上記ア(ア)のaの損害については、このうち69万3000円はIDSに対して支払うべき手数料であって原告が取得し得るものではないし、残額は原告が契約の相手方であるGから回収すべきものである。さらに、同bからdの損害については、原告がBと交渉して本件金型を転用することの承諾を得るとともに、本件商品の新たな販路を開拓していくことによって回収すべきものであって、これを損害として被告に請求するのは筋違いである。

第3  争点に対する判断

1  事実経過

前記前提事実に証拠及び弁論の全趣旨を併せると、本件の事実経過について次のような事実が認められる(事実認定に供した具体的な証拠等は各項の末尾に掲げた。)。

(1)  自動牌九機開発交渉の端緒

Cは、牌九を自動化すればカジノで人気を博すと考え、平成8、9年ころから、Bに勤めていた中国人のKや、Bから依頼を受けた被告を通じて、全自動麻雀機の開発会社等にその開発を打診していたが、なかなか進展をみなかった。

そこで、Cは、平成9年3月初めころ、Bを通じて被告に対し、開発費は自分が負担するから他のメーカーを探してほしいとの打診をした。そして、同年4月23日ころ、Aは被告に対し、自動牌九機を開発・製造するメーカーの手配及び自動牌九機の供給を正式に委託した。

被告は、自動牌九機の原理が全自動麻雀機に似ていることから、同年5月中旬ころ、全自動麻雀機の輸出販売を手がけるIDSに対し、自動牌九機を開発できるメーカーの心当たりがないかを打診した。これを受けてIDSの代表者であるL(以下「L社長」という。)が原告に自動牌九機の開発が可能かどうかを打診したところ、原告が乗り気であったことから、同月30日、C、L社長及びBの従業員が原告を訪問し、Cが原告担当者に対して自動牌九機の原理及び仕様等に関する説明をした。その結果、原告は、自動牌九機の開発は可能と判断し、開発依頼があればこれを受託することを社内で確認した。

(甲8、36、37、39、40、乙1から3、18、21、22の1、証人J、証人L、証人C、証人D)

(2)  自動牌九機開発の着手

同年6月13日、C、被告の国際・商品開発部担当付部長であるD(以下「D部長」という。)、IDSのL社長及びBの代表者であるJ(以下「J社長」という。)らが原告を訪問し、自動牌九機の開発・製造を原告が行うことを前提とした打合せが行われた。その際、原告から、自動牌九機の仕様及び開発のスケジュールを記載した書面が提示され、開発費を最終的にCないしAが負担すること、最低1000台の発注を目標とすること、付属の専用牌は不正防止のため24時間ごとに2組ずつ廃棄しなければならないこと、自動牌九機はカジノで使用されるため、年中無休、24時間連続稼働の耐久性が求められることなどが確認された。また、牌の整列に要する1サイクルの処理時間については、当初、Cから1分程度との要望が出されたが、ゲームの進行に照らし、1サイクル3分程度とすることが合意された。原告は、この打合せの結果を踏まえ、IDSからカジノ用のテーブルの送付を受けて、本件商品の開発に着手した。

なお、この打合せの時点では、被告、IDS及びBがどのような形態で本件商品の取引(以下「本件取引」という。)に関与するかは未確定であり、自動牌九機が開発された場合の特許権の帰属や製造権・販売権の内容についても特に議論がなされることはなく、開発費の概算額も不明であった。

<証拠略>

(3)  開発契約交渉の推移と試作1号機の完成

ア 原告は、自動牌九機の開発を急ぐとともに、Cではなく、被告やIDSに対して開発契約の締結を要請し、同年7月、D部長から、契約相手はIDSである旨の説明を受けて、次の内容の本件商品の開発に関する契約書の案(本件契約書案。乙3。)を作成し、IDSに提出した。

第1条(目的)

IDSは、牌九ゲーム機器の自動化を原告に委託し、原告はこれを受託し開発する。

第4条(開発費)

IDSは、本件商品の開発に要する費用を本契約締結の日より1週間以内に、原告へ現金で支払うものとする。なお、開発費の総額は以下のとおりとする。

ア 開発費 960万円

イ 金型代金 1800万円

ウ 合計 2760万円(税別)

しかし、同月16日、IDSのL社長は、開発が成功する前に契約を締結することを拒むとともに、契約当事者を被告として欲しい旨の意向を示したため、結局その調印はなされなかった。

イ 原告は、同年8月6日、自動牌九機の試作1号機を完成させて、C、D部長、L社長、Bの関係者らに呈示し、動作確認を経て、開発の続行が関係者間で合意された。

しかし、この時点でも、被告、IDS及びBの間では本件取引への関与形態が確定しておらず、原告もそのことを認識していた。

<証拠略>

(4)  本件支払確認書の交付

D部長は、同年8月6日の試作1号機の動作確認の後、原告に対し、本件商品の開発費及び単価を記載した見積書を提出するよう求めた。

また、同月12日、原告は、Cからも開発費等の見積書の作成を要請されたが、原告は、本件取引の直接の交渉相手を被告とすべきであると考えてこれに応じないこととし、同月15日、本件見積書を作成して、同月18日にD部長宛てに提出した。

その後、D部長は、被告が開発費を同年9月末日までに支払う旨の口頭の約束をするものの、契約書を交わしたいとする原告の要求に応じず態度を左右させたため、原告代表者は、開発契約が未締結であることの不安を増大させ、同年9月11日、自動牌九機の開発の一時停止を命じた。

これに対し、D部長は、被告が開発費を支払う旨の念書を作成することを約し、その作成期日を二度延期した末、ようやく同月24日、本件支払確認書に署名した。

なお、本件支払確認書には、IDSのL社長も署名した。

(甲2、3、6、37、38、40、乙18、証人L、証人D)

(5)  試作2号機の動作確認と改良の継続

ア 同年10月3日、Aの会長でCのスポンサーと名乗るE(E)が、開発費1000万円に相当するドル紙幣を用意して自動牌九機の試作2号機の視察のため原告を訪問した。

しかし、開発を一時中止していた悪影響もあって、Eの目前では試作2号磯はうまく作動せず、牌の整列に要する1サイクルの処理時間も5分以上であったため、Eは原告に対する不信感を抱いて、用意してきた開発費の支払をしなかった。

同月6日、AからはEとC、被告からは専務取締役であるF(以下「F専務」という。)及び取締役商品開発部長であるM(以下「M取締役」という。)、BからはJ社長、原告からは代表者及び担当者数名が出席して、対策会議が持たれた。

その際、Eからは、カジノが約5000件あり、1件当たり2台から4台の牌九専用のテーブルが置かれており、それなりの需要が見込まれること、牌九ゲームの実情から、牌の整列に要する1サイクルの処理時間を1分とする必要があること、そのために専用牌の厚みを増して耐久性の向上を図る必要があること、同年12月までに改良が完成すれば、翌年3月にアメリカで予定されている展示会(International Gaming Business EXPO '98)に出展するなどして取引を続けること、改良ができなければ本件取引は白紙に戻すことなどの意向が示され、原告もこれを了承する方向で、処理時間の改良が可能か否かを検討することになった。

また、その際、被告のM取締役からは、専用牌を製造するための金型の開発費(金型代金)を開発費として別途請求するのではなく、専用牌の販売利益で償却することとして欲しい旨の要望が伝えられた。

イ 原告は、同月15日、ソフトウェアの改良によって試作2号機の1サイクルの処理時間を1分44秒に短縮し、D部長もこれを確認して承認したことから、本件商品の開発の続行が決まった。

原告は、改良の結果、同年11月10日ころには試作2号機の1サイクルの処理時間を1分10秒程度にまで短縮し、また連続100回の処理テストの結果も良好であったことから、試作2号機の開発を終え、同月12日、展示会への出展及び量産のための試作3号機3台(A、B、C)の開発に着手した。

なお、Cは、同月13日、試作2号機の動作確認をし、処理速度について了承した上で、さらに安定性と耐久性についての改良を要請した。

<証拠略>

(6)  具体的な契約締結交渉と本件発注書の交付

ア 原告は、平成9年10月以降、自動牌九機の改良に努める傍ら、被告に対して、具体的な契約締結交渉に入るよう要請し、同月25日、新たに、1000台以上の受注を前提として自動牌九機1台を40万円とし、金型代金を別途請求することを前提として専用牌1組を1600円とする被告宛ての見積書をD部長に提出した。

これを受けて、D部長は、開発費を原告が負担して自動牌九機に関する特許の単独出願をするほうがよいのではないかと提案するなどし、単価の見直しを要求した。

また、このころ、原告担当者とD部長との間では、自動牌九機を設置するテーブルの手配やメンテナンスの詳細について交渉が行われたが、D部長は度々これを先送りした。

(乙16、18)

イ 原告は、同年11月17日、新たに、原告が開発費を負担すること、金型代金は専用牌の販売利益によって償却すること、及び自動牌九機1000台以上の受注を前提として、自動牌九機を1台20万円(消耗部品別)、専用牌1組を1350円とする被告宛ての見積書をD部長に提出した。

これを受けて、D部長は、開発費を原告が負担することを了承するとともに、それ以上の改良費を本件商品の価格に上乗せすることに難色を示した。

(甲22、23、48、49、乙17から19)

ウ D部長は、同年11月21日ころ、原告に対し、同年12月初めに契約書の取りまとめを行う意向を示し、原告もこれに応じて、原被告の2社間契約を前提とした契約文案について弁護士と相談するなどした。

また、同年12月11日には専用牌に刻印するデザインも決定し、専用牌を製造するための金型の製作も開始された。

しかし、D部長は、契約書を取り交わすと約束した日に何ら連絡を入れずにこれを反故にするなどし、はっきりしない態度をとり続けたため、原告は被告に対する不信感を募らせるようになった。

このような状況のもと、本件取引の破談を危惧したBのJ社長が原被告間を仲介し、同年12月17日、原告代表者と被告のF専務によるトップ会談が持たれた。

その際、F専務は、原告代表者から、それまでのD部長の振る舞いや経緯の詳細について説明を受け、D部長からの報告が不足していたことを認識し、ここまで来たら被告としても本件取引を実現させるしかないとの意向を示した。

原告代表者は、このようなF専務の態度を見て安堵し、本件取引の継続に新たな信頼を寄せることとなった。

(甲38、40、57、68、乙18、証人J、原告代表者)

エ ところが、被告は、同月22日、D部長において、自動牌九機1000台の購入は保証できず、具体的な発注書を出すこともできないとの意向を示し、同月24日にも、M取締役において、翌年3月の展示会に出展して様子を見るまでは具体的な発注はできないとの意向を示した。

これに対し、原告は、本件商品の開発・製造を継続するためには銀行から資金を借り入れる必要があり、そのためにも、経済的信用のある被告からの正式な発注書が必要であると要求した。

そこで、D部長は、Cに対し、原告の資金繰りの関係上、発注書を出すことが必要である旨説明し、本件商品の価格について交渉を続けた。

このような交渉の結果、D部長は、同月26日ころ、まず被告が自動牌九機200台を発注することを提案し、自動牌九機を正式に発注することを口頭で約した。

(甲38、40、証人J、証人C、証人D、原告代表者、弁論の全趣旨)

オ 一方、原告は、同年12月27日、自動牌九機に関する5つの発明について特許出願を行うとともに、特許権の帰属に関してCと交渉を続けた。

なお、原告は、その交渉過程で、「特許権等の権利階層と牌九における権利関係」という題名の文書を作成し、「本プロジェクトの発案者はC氏であり、米国で販売の主体者となるのもC氏であります。」との認識を示すとともに、原告、被告及びAの三者で販売代理店契約を締結することを提案した。

(乙29から34)

カ その後、平成10年1月中旬ころから、D部長より発注書の案文がファックスされるなど、原被告間で本件取引の条件についての協議が頻繁に行われるようになり、同月21日、原被告間の合意内容として、自動牌九機1000台以上と専用牌を継続的に販売することを目標とし、金型代金は専用牌の販売利益で償却することを前提とした本件発注書が作成され、被告から原告に交付された。

一方、Cも、D部長との交渉において本件発注書記載の取引条件を基本的に了承し、被告とAとの間において、同日付けで同発注書の内容を反映した覚書が交わされた。

もっとも、被告においては、新規の取引口座を開設するに際して、取引会社の信用に関する厳しい審査体制を敷いており、被告との間に従前から取引口座を有していたBを経由して本件取引を行いたいとする被告と、被告との直接取引を求める原告との間で折衝が続いていたため、原告と被告及びBの具体的な取引の形態は未確定であった。

(甲4、6、8、25から28、乙15、22の1、証人J、証人C、証人D、原告代表者、弁論の全趣旨)

(7)  試作3号機の展示会への出展と量産体制の準備

原告の改良の結果、平成10年1月中旬から下旬ころには、試作3号機の1サイクルの処理時間は50秒弱になり、1500回の連続処理を行うテストを経て、ほぼ完成するに至った。

そこで、原告は、Cと直接連絡を取っていたD部長の指示に基づいて、同月29日、試作3号機2台(B及びC)をアメリカに向けて発送した。なお、D部長は、同年2月4日、原告に対し、金型が2台も完成しているのに専用牌の出荷が遅れる理由が分からないなどとして抗議している。

このようにして出荷された試作3号機2台は、同年3月24日から3日間ラスベガスで行われた展示会に出展され、好評を博した。

Cは、同年4月8日、日本で行われた報告会において、展示会への出展は大成功であり、終了後の1週間で電話による引き合いが20本以上、ファックスによる引き合いが5通以上あった旨を述べて原告及び被告に感謝し、これを受けて、D部長は、同月末までに具体的な納入スケジュールや販売計画書を提出する旨述べた。

なお、この際、Cは、原被告に対して、展示会で指摘された自動牌九機の作動音の低減と軽量化を要請し、原告は、これらの点について改良に努めることを約した。

その後、原告は、納入に2か月を要するモーターや電子部品、ベアリング等の部品及び専用牌を100台分注文し、量産に備えた。

また、原告は、同月21日に作動音の低減と軽量化に関する改良を終え、D部長の承認を受けたことから、自動牌九機は量産機として基本的な完成を見た。

<証拠略>

(8)  本件条件提示書の交付

ところが、D部長は、Cからの具体的な発注がないことなどを理由に、同年4月中に予定していた具体的な納入スケジュールや販売契約書を示さずにこれを引き延ばした上、5月下旬になって、原告に対し、自動牌九機100台の販売を目標として漸次発注するなどの意向を示した。

一方、原告は、国内業者に対する販売も検討するようになり、同年6月1日ころには、D部長の了承も得て、国内の株式会社マツイ・ゲーミング・マシンとの間で自動牌九機に関する商談を行い、1台100万円程度で100台程度を販売することも可能であるとの感触を得ていたこともあって、D部長の提示した条件に憤慨した。

そこで、原告は、同年6月16日、「自動牌九台の今後の取引について」と題する原告代表者の記名押印のある文書を被告宛てに送付し、その中で、被告の本件取引に対する態度を非難するとともに、本件取引の見込が立たないのであればこれ以上時間と費用を費やすことはできないとして、6月10日までに最終的な態度決定をしたいので然るべき返答を求める旨を記載した。

これに対し、D部長は、同月16日、原告に対し、本件条件提示書を送付し、同年7月から平成11年4月までの10か月間、自動牌九機を毎月30台ずつ発注すること、自動牌九機の単価は30万円とし、その他の条件は本件発注書に準ずることを内容とする提案をした。

原告は、これを受けて、被告の提案を増加発注及び納入スケジュールの提示であると捉えて一応の評価をするとともに、翌日、自動牌九機の単価を44万円としたい旨の回答書を送付するなどし、以降、原被告間で条件交渉が続けられた。

また、原告は、同年7月上旬ころまでには、専用牌を製造するために必要な金型2台を委託先のミツミ電機株式会社において完成させた。この2台の金型には、専用牌の偽造を防止する観点から、Bがデザインしたロゴマークが刻印されており、このロゴマークはBによって商標登録された。

<証拠略>

(9)  量産機の検収と出荷

原告は、同年6月末までに、自動牌九機の量産機(以下「量産機」という。)の開発を終え、関係者間では、アメリカでの販売ライセンスを取得するためにそのうちの3台を先行して出荷することが合意された。

Cは、同年7月1日、原告から量産機の呈示を受けてその動作確認などを行い、作動音の低減化や軽量化についても承認し、その他に何らの異議を述べることなく、「3台の完成品については7月2日に品渡し」と記載した本件条件合意書に署名した。

また、量産機3台をアメリカへ出荷した後の同月8日、Aは、原告との間で秘密保持契約を締結し、Cは、同日から3日間、量産機の仕様の詳細やメンテナンスに関する研修を受けたが、仕様等についての異議を述べることはなかった。

原告は、同月23日及び24日、量産機27台及び専用牌3600組を被告の指示した場所に搬入し、これらについてB宛ての納品書及び請求書を発行した。

その後、原告はさらに量産機30台を製造するとともに、委託先のミツミ電機において専用牌の製造を続けた。

<証拠略>

(10)  本件条件合意書の作成と3社契約及び4社契約の締結交渉

ア 関係者間においては、量産機の検収や出荷と並行して本件取引の条件についての協議が重ねられ、その結果、原告がBを経由して被告に本件商品を販売し、被告がこれをAに販売するという取引の流れが上記4社間で合意された。

その上で、原告、被告、B及びAは、同年7月1日、本件条件合意書を作成し、自動牌九機の単価を30万円又は31万円とすること、専用牌の単価を1600円とすること、代金の支払は当月納品の当月払いとすることを最終決定し、これ以降、同月中に原告、被告及びBの3当事者における契約(以下「3社契約」という。)、又はこれにAを加えた4当事者による基本契約(4社契約)を締結することが原被告間で合意され、契約条項の検討を行うこととなった。

<証拠略>

イ 同年7月1日以降、関係者間で基本契約の条項の検討が重ねられた結果、同年8月17日までには、4社契約の案文(甲8。以下「本件案文」という。)が完成した。本件案文の内容の抜粋は、次のとおりである。

(ア) 目的

本契約は、被告がB経由でAより開発依頼を受けた本件商品を、4社の協力により日本を含む全世界に販売する事業を展開することを目的とする。

(イ) 権利の明確化

原告は、Aの発案のもと、開発・製造者としての位置を取得し、被告はAに対し、本件商品を販売する位置を、Bは原告から被告に取次供給する位置を取得し、Aは、本件商品の発案委託者として、日本を含む全世界においての総販売代理権者の地位を取得し本件商品の実施権限(ただし製造する権限を除く)を有する。

(ウ) 自動牌九機の仕様

1サイクルの処理時間60秒、重量約70キログラム。Aの要望で仕様変更を要請する場合は、原告に対し、被告、Bを通して仕様変更要求書を提出し、仕様変更費用等を協議の上決定をする。ただし、構造上の問題等で明らかに仕様変更を必要とする場合は原告の負担とする。

(エ) 専用テーブル

自動牌九機を取り付ける専用のテーブルは、Aの責任で手配・用意する。専用テーブルの仕様について、本体を取り付ける位置に関しては、原告の指定したものに準拠し、それ以外の部分についてはAの任意対応とする。

(オ) 取引数量

a 自動牌九機

4社契約締結の月から10か月間、毎月30台(合計300台)

b 専用牌

<1> 自動牌九機の新規出荷時に1台当たり120組

<2> その後は1台当たり毎月60組

(カ) 原告からBへの販売価格

a 自動牌九機

100V電源用:1台30万円(税別)

200V電源用:1台31万円(税別)

b 専用牌

1組1600円(税別)

(キ) 被告からAへの販売価格

a 自動牌九機

100V電源用:1台32万円(税別)

200V電源用:1台33万円(税別)

b 専用牌

1組1700円(税別)

<証拠略>

(11)  4社契約の締結交渉とその決裂

同年8月17日、本件案文に基づいて4社契約を締結するため、原告担当者、D部長及びCがBに集まったが、その席で、Cから突然、量産機の本体を米国で生産されているテーブルに取り付けるに当たって必要であるとして、改良費の負担を条件としつつ、既に生産が終わっている60台を含めて、テーブルへの取付位置を5センチ程低くする、天板の上を覆うクロスを2センチ程厚くする、天九牌の投入口を広くするなどの仕様変更の要求がなされた。

これに戸惑った原告担当者は、要求された仕様変更に応じるにはどの程度の改造が必要であるかを持ち帰って検討することとし、同日は4社契約の締結には至らなかった。

同日、原告において、原告代表者を含めて対応が協議されたが、原告における検討の結果、Cの仕様変更に応じるためには自動牌九機の内部の構造変更が必要となり、基本設計から修正する必要があることが判明し、それまでの60台の代金も支払われていない現状において、かかる要求を受け入れることはできないとの結論が出された。

翌18日、原告代表者も交えた再交渉が行われたが、Cは、その席においても、仕様変更がなされなければ商品として通用しない旨主張し、D部長もこれに異議を唱えず、Cの意向に沿う態度を示した。

かかる事態に至り、原告代表者は、Cの態度に憤慨し、Cに対し、同人には販売能力もやる気もないなどと強い調子で同人を非難して席を立ち、Cも、これに憤慨して交渉を打ち切り滞在先の大阪に帰ってしまったため、結局、4社契約は締結されなかった。

<証拠略>

(12)  その後の経緯

翌19日以降、原告担当者は、上記変更要求に応じる方向で検討を行うとともに、被告及びBとの間で4社契約の締結に向けた交渉を続けた。

また、原告担当者は、平成10年9月2日、B担当者及びD部長に対し、原告代表者の振る舞いについて一応の謝罪をするとともに、改良費を負担してもらえれば納品済みの60台を除いてできる部分の仕様変更に応じる旨を伝え、Cを交えた4社契約の締結交渉の継続を要請した。

また、原告担当者は、D部長に対し、原告の決算期が8月末であること、既に購入した部品の支払が資金繰りを圧迫していること、9月16日に支払期限の迫っている手形の決済に7月分商品の代金1549万8000円を充てることを予定していることなどを告げて、搬入済みの本件商品の現金化を懇請した。

そこで、D部長は、Cに対して7月分商品の購入代金を支払うことを強く要求して説得し、了承を得るとともに、被告が直接この取引を取り次ぐのではなく、IDSのL社長と懇意のNが経営するGにCと原告との間における本件商品の取次ぎを依頼して承諾を得、原告に対して、G宛ての納品書及び請求書を発行するよう指示した。

また、D部長は、手形決済にどうしても必要な額が1000万円である旨原告担当者から聞き出してGにその旨伝え、Gは、原告の手形決済日の直前である同月14日、Cからの送金が到着する前に、1000万円を立て替えて原告に支払ったため、原告は不渡処分を免れた。

Gは、同月17日、原告に対し、本件商品の保証等の文言が記載された覚書の締結と引替えに残額の549万8000円を支払う旨連絡したが、原告は、被告との基本契約が締結されないこととなることに納得せず、同月18日、被告に対し、開発費や納入済みの本件商品の代金等として合計4619万6000円の支払を求める内容証明郵便を送付したため、被告と原告との間の4社契約を前提とする交渉は最終的に決裂した。

<証拠略>

2  争点(1)(主位的請求)について

(1)  開発契約について

ア 原告は、平成9年6月13日、被告との間で自動牌九機に関する開発契約を締結したと主張する。

イ 確かに、前記1の(2)の事実によれば、同日には原告が自動牌九機の開発・製造を行うことが決定しており、関係者間で自動牌九機の仕様等についての打合せがなされたこと、原告がこれを受けて本件商品の開発に着手したことが認められる。

ウ もっとも、前記1の(2)で認定したとおり、同日の時点では、開発費の概算額が不明であったのみならず、新製品の開発・販売という局面において極めて重要な事項である特許権の帰属や製造権・販売権の内容について特に議論がなされることもなかったのであるから、同日の時点で原告の主張するような開発契約が締結されたと認めるのは困難である。

また、同日の時点では、最終的にCないしAが開発費を負担することが関係者間で了解されていたものの、被告、IDS及びBの本件取引への関与形態が未確定であったと認められること、原被告間において何らかの合意文書が交わされたというような事情も存在しないことからすれば、そもそも原告と被告という2当事者間において同日何らかの契約が成立したと考えることはできない。

したがって、原告の主張する開発契約の成立は認められない。

(2)  個別発注契約について

ア 原告は、平成10年1月21日、被告との間で本件商品に関する個別発注契約を締結したと主張する。

イ この点、前記1の(6)の事実によれば、平成9年10月以降、原被告間で本件取引の条件についての協議が重ねられ、その結果、平成10年1月21日に原被告間の合意内容をまとめた本件発注書が被告から原告に交付されたことが認められる。

ウ もっとも、同発注書には、本件商品の発注数量や単価の記載はあるものの、具体的な納期の定めはなく、しかもこの単価自体がその後変更されていること、同日の時点においては、原被告間の具体的な取引の形態(直接の取引とするかBを介在させるか)が未確定であったことからすれば、同日の時点で原被告間に原告の主張するような個別発注契約が成立したと認めるのは困難である。

そして、同発注書には自動牌九機1000台以上及び専用牌の継続的販売を目標とし、正式な売買契約書は後日作成する旨の記載があることにかんがみれば、同発注書は、近い将来これを基礎とした基本契約が締結されることを前提として作成された準備的な文書であるとみるのが相当である。

したがって、原告の主張する個別発注契約の成立は認められない。

エ なお、前記1の(7)で認定したとおり、原告は、本件発注書の交付を受けた後、自動牌九機の改良に努めるとともに、自動牌九機100台及び専用牌の製造に要する部品を発注し、また同年7月上旬ころまでには専用牌を製造するために必要な金型2台を完成させたことが認められるが、原告のこれらの行動は、本件発注書を基礎とした基本契約の締結が強く期待される状況における行動として十分理解可能というべきあるから、これらの事実は原告の主張する個別発注契約が成立していないという前記認定と矛盾するものではない。

(3)  基本契約について

ア 原告は、平成10年7月1日、被告との間で本件商品の販売等に関する基本契約を締結したと主張する。

イ この点、前記1の(10)で認定したとおり、同日、原告、被告、B及びAの4社によって、本件商品の単価等についての最終的な合意がなされたことが認められる。

ウ もっとも、前記1の(10)で認定したとおり、同日の時点では、同月中に3社契約ないし4社契約を締結することが予定されており、しかもこの時点で原告の直接の販売先として予定されていたのはBであったこと、また現に、その後約1か月半にわたって3社契約ないし4社契約の条項の検討が行われていることに照らせば、同日の時点で原告と被告という2当事者間において原告の主張するような基本契約が成立したとみるのは困難である。

したがって、原告の主張する基本契約の成立は認められない。

エ なお、前記1の(9)で認定したとおり、原告は、同月2日、米国での販売ライセンスを得るため自動牌九機3台を米国へ出荷し、また同月8日にはAとの間で秘密保持契約を締結し、同日から3日間、Cが原告において自動牌九機の仕様の詳細等についての研修を受けたことが認められるが、これらの行動は、同月中に3社契約ないし4社契約が締結されることが強く期待される状況における行動として十分理解可能というべきであるから、これらの事実は原告の主張する基本契約が成立していないという前記認定と矛盾するものではない。

また、前記1の(9)で認定したとおり、原告は、同月23日及び24日、自動牌九機27台及び専用牌3600組を被告の指示した場所に搬入し、これらについてB宛ての納品書及び請求書を発行しているところ、これは、同月中に3社契約ないし4社契約が締結されるであろうことを前提とした先行的な納品とみるのが相当である。

(4)  まとめ

以上のとおり、原告の主張する本件開発契約、本件個別発注契約及び本件基本契約は、いずれもそれが成立したと認めることができないから、これらを前提とした原告の主位的請求は、その他の点について判断するまでもなく理由がない。

3  争点(2)(契約締結上の信義則違反の有無)について

(1)  前記1で認定した事実経過に前記2で説示したところを併せると、遅くとも原告が被告から本件発注書の交付を受けた平成10年1月21日の時点においては、近い将来、同発注書記載の取引条件を基礎とした基本契約が締結されることが関係者間の共通の認識となっており、そうであるからこそ、原告は、その後自動牌九機の改良に努めるとともに、自動牌九機100台及び専用牌の製造に要する部品を発注し、さらには専用牌を製造するために必要な金型2台を完成させたこと、また、遅くとも同年7月1日の時点においては、同月中には3社契約ないし4社契約が締結されて原告が本件商品の継続的供給を開始することが関係者間の共通の認識となっており、そうであるからこそ、原告は、同月2日、米国での販売ライセンスを得るため量産機3台を米国へ出荷し、同月8日にはAとの間で秘密保持契約を締結してCに量産機の仕様の詳細等についての研修を受けさせ、また同月23日及び24日には量産機27台及び専用牌3600組を先行的に納品し、その後もさらに量産機30台を製造するとともに、委託先のミツミ電機において専用牌の製造を続けたものと認めることができる。

そして、前記1で認定した事実経過、とりわけ、試作1号機の完成後の平成9年8月から、直接原被告間で見積書の要求及び提出が行われていること、同年9月24日に被告から原告に対し、本件支払確認書が交付されていること、同年10月以降、原被告間において、本件取引に関する具体的な契約締結交渉が行われており、F専務と原告代表者の会談を経て、平成10年1月21日に本件発注書が作成されていること、同年3月のアメリカにおける展示会に際しても、D部長の具体的な指示のもとに試作3号機の出荷等が行われていること、同年4月8日の展示会に関する報告会に当たり、D部長から具体的な発注スケジュール及び販売計画書を提示する意向が示されていること、同年6月5日に原告から被告に対して最終的な回答要求がなされたことに対し、同月16日、被告から原告に対し、本件条件提示書が送付され、原告はこれを信頼して本件商品を製造し続けていること、その後も、被告は直接原告に対して商品の搬入を指示していること、原被告間にBが介在する予定であったのは専らBの取引口座を利用するという点にその目的があったことなどの諸事情に照らせば、原被告間の本件取引の交渉において、被告は、終始一貫して、原告が被告に本件商品を製造販売し、被告がこれをCに販売するとの形態を前提として、原告の実質的な取引及び交渉の相手方として振る舞っていたものといえ、これに、前記1で認定した基本契約の締結交渉が最終的に決裂した経緯を併せ考慮すると、被告は、一連の行為によって、原告に対し、基本契約の締結が確実であるとの信頼を与えておきながらこれを裏切ったものと評価するのが相当であり、被告のかかる行為は契約締結上の信義則に著しく違反するというべきである。

したがって、被告は原告に対し、契約締結上の信義則違反に基づく損害賠償責任を負う。

(2)  この点、被告は、本件基本契約の締結を拒否したのは原告であり、被告には契約締結上の信義則違反はない旨主張する。

確かに、前記1の(11)の事実によれば、平成10年8月17日の時点では、原告、被告、B及びAの間には、それまでの交渉の経緯を受けて4社契約を正式に締結しようとする合意があったこと、しかし、Cが、突然自動牌九機の仕様変更を要求し、これに対して憤慨した原告代表者が、翌日に持ち越された協議の席でCに対して強い調子で非難して席を立ったことによって、4社契約交渉が決裂したことを認めることができる。

しかし、前記1で認定した事実経過と<証拠略>を総合すると、Cの仕様変更要求は、当時、関係者が完成品であると認識し、既に60台が生産され、そのうち30台が出荷された後の量産機に対して突然になされたものであり、しかもこれに対処するためには、原告において、基本設計等を見直すなどの大幅な対応が必要であったと認めることができるから、例えCが改良費を負担することを申し入れていたとしても、これに対して原告代表者がとった前記の行動を非難することはできないというべきであって、これに、前記1で認定した基本契約の締結交渉が最終的に決裂した経緯を併せると、原告が一方的に基本契約の締結を拒否したとする被告の主張は採用することができない。

(3)  また、被告は、平成10年7月1日ころには4社契約の締結が予定されていたのであるから、仮にCの変更要求が原因で基本契約が成立しなかったとしても、その責任はCにあり、被告にはない旨主張する。

確かに、前記1で認定した事実経過に照らせば、基本契約の締結に至らなかった原因は、量産機の完成後1か月以上を経過し、既に原告が量産機60台を生産し終わった平成10年8月17日にそれまでの経緯を無視して仕様変更を要求したCの理不尽な態度にあることが明らかである。

しかし、前記1で認定した事実経過に照らせば、被告は、自動牌九機の完成に関して、処理時間の短縮、稼働安定性の確保、動作音の低減化及び軽量化などのCの諸要求を原告に実質的に伝達する役割を担っていたものと評価できる上、D部長は、原告との間で自動牌九機を設置するテーブルの手配等についても協議を行っていたものであり、これに、上記(1)で説示した本件取引に関する原被告間の交渉経過を併せれば、被告は、信義則上、遅くとも量産機の完成までには、それ以上の改良要求事項がないことを確認する義務を負っていたものというべきであるから、突然の仕様変更を要求したCの行為は、原被告間においては、信義則上、被告の行為と同視すべきである。

よって、基本契約が成立しなかったことについて被告に責任はないとする被告の主張は採用することができない。

4  争点(3)(原告の損害額)について

(1)  金型代金に関する損害 3005万5307円

ア 証拠(甲14の1から7)によれば、原告は、2台分の金型代金として4248万1000円を負担したことが認められる。そして、前記1の(6)以下において認定したとおり、金型代金は専用牌の販売利益によって償却することが予定されていたところ、基本契約が締結されなかったことによって金型代金は償却不能になったというべきであるから、上記金型代金相当額は、被告の信義則に違反する行為によって原告が被った損害であるといえる。

もっとも、後述のとおり、専用牌に関しては11万7000組分の販売利益の損害賠償が認められるべきであるから、上記金型代金相当額の損害うちの一部はこれによって償却ないしてん補されたものとみるのが相当である。そして、証拠(甲85)によれば、本件金型は1台当たり専用牌20万組(2台で40万組)の生産能力を有するものと認められるから、上記金額のうち40万分の11万7000に相当する部分は損害額から控除されるべきである。

したがって、金型代金に関する原告の損害額は、3005万5307円となる。

42,481,000円×(400,000-117,000)/400,000=30,055,307円

イ この点、被告は、金型代金を含む開発費は自動牌九機の特許権に転化しているから、原告に金型代金相当額の損害は存在しないと主張し、証拠(乙30から34)と弁論の全趣旨によれば、原告が自動牌九機の特許権を取得している事実が認められる。しかし、そもそも本件金型は特許権の対象とされていない上、原告の請求している金額は、金型の開発に実際に要した費用であって、付加価値としての特許権に相当するようなものとみることはできないから、被告の上記主張は失当である。

また、被告は、金型代金相当額の損害は、原告がBと交渉して本件金型を転用することの承諾を得るとともに、本件商品の新たな販路を開拓していくことによって回収すべきものであって、これを損害として被告に請求するのは筋違いであるとも主張する。しかし、Bが本件金型の転用を承諾するか否か、また原告が本件商品の新たな販路を開拓することができるか否かについては、本件証拠上未確定というほかないから、この点で原告の損害が現実にてん補されたと認めることはできないし、将来てん補されることが確実であるとも認められない。

なお、平成9年7月に原告が作成した本件契約書案及び同年8月に原告が作成した本件見積書においては、金型の開発費が1800万円と計上されているものの、前記1の(5)で認定したとおり、その後の同年10月に、牌の整列に要する1サイクルの処理時間を3分から1分に変更するとともに専用牌の厚みを増すという内容の仕様変更があったことからすれば、原告が金型の開発費として1800万円を大きく上回る4248万1000円を要したことが特に不合理であるとは認められない。

(2)  自動牌九機に関する損害 1800万円

ア 前記1で認定したとおり、平成10年8月17日の時点では、自動牌九機が量産機として完成済みであるとの認識のもとに基本契約の案文が確定され、あとはこれに調印するのみという状況に至っていたのであり、しかも同案文に記載された契約条件は、関係者がそれぞれの利害に基づいて折衝を重ねた末の最終的な妥協の結果であると認められる。

とすると、このような段階においてはもはや、同案文の内容に従った基本契約の締結を拒否することは信義則上許されないというべきであるから、信義則に基づく損害賠償という局面においては、基本契約が締結された場合に準じ、基本契約から生じるであろう拘束力の範囲内での損害賠償を認めるのが条理に適うというべきである。

しかるところ、仮に基本契約が締結されていれば、その後の10か月間で自動牌九機合計300台を販売することについて契約の拘束力が生じていたはずであり(甲8)、原告は、製造済みの自動牌九機60台を1台30万円で販売することによって1800万円の代金を得ることができたはずであるから、上記販売代金相当額は、被告の信義則に違反する行為によって原告が被った損害であるといえる。

イ この点、被告は、本件商品に関する損害は、原告がBと交渉して本件金型を転用することの承諾を得るとともに、本件商品の新たな販路を開拓していくことによって回収すべきものであって、これを損害として被告に請求するのは筋違いであると主張するが、この主張が失当であることは上記(1)のイで説示したとおりである。

(3)  専用牌に関する損害 9413万6000円

ア 前記1の(8)の事実と証拠(甲81の2から8)によれば、原告は、先行的に納品したものも含めて専用牌1万9100組を製造したことが認められる。

そして、仮に基本契約が締結されていれば、その後の10か月間で専用牌合計11万7000組を販売することについて契約の拘束力が生じていたはずであり(甲8)、原告は、製造済みの上記1万9100組の専用牌を1組1600円で販売することによって3056万円の代金を得ることができたはずであるから、上記販売代金相当額は、被告の信義則に違反する行為によって原告が被った損害であるといえる。

1,600円×19,100組=30,560,000円

イ また、証拠(甲12、81の1から8)によれば、専用牌の原価は1組当たり960円であると認められるところ、上記11万7000組から製造済みの上記1万9100組を控除した未製造の専用牌9万7900組については、基本契約が締結されて契約の拘束力が生じていれば、原告はこれを1組1600円で販売することによって、1組当たり640円、合計6265万6000円の販売利益を得ることができたはずであるから、上記販売利益相当額は、被告の信義則に違反する行為によって原告が被った損害であるといえる。

640円×97,900組=62,656,000円

ウ さらに、証拠(甲13)によれば、原告は、専用牌の原料在庫92万円分を保有していることが認められ、この92万円も被告の信義則に違反する行為によって原告が被った損害であるといえる。

エ 以上より、専用牌に関する原告の損害額は、合計9413万6000円となる。

30,560,000円+62,656,000円+920,000円=94,136,000円

オ この点、被告は、本件商品に関する損害は、原告がBと交渉して本件金型を転用することの承諾を得るとともに、本件商品の新たな販路を開拓していくことによって回収すべきものであって、これを損害として被告に請求するのは筋違いであると主張するが、この主張が失当であることは上記(1)のイで説示したとおりである。

(4)  先行納品分に関する損害のてん補 ▲1000万円

前記1の(12)の事実によれば、原告は、先行的に納品した自動牌九機30台及び専用牌3600組(7月分商品)に関し、Gから1000万円の支払を受けたことが認められるから、上記(2)及び(3)の原告の損害のうちの1000万円はこれによっててん補されたものというべきである。

この点、被告は、7月分商品の代金のうち69万3000円はIDSに対して支払うべき手数料であるとか、上記1000万円を超える部分については契約の相手方であるGから回収すべきものであるなどと主張する。しかし、本件証拠上、7月分商品については、いったん原告がB宛ての納品書によって先行的にこれを被告の指示した場所に納品した後、さらに被告の指示に従って新たにG宛ての納品書及び請求書を発行したこと、及び原告がGから1000万円の支払を受けたことが認められるのみであり、原告がGとの間で売買契約を締結したことやIDSに対して69万3000円の手数料を支払う旨の意思表示をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。

(5)  まとめ

以上のとおり、原告は、被告の信義則に違反する行為によって、合計1億3219万1307円の損害を被ったことになる。

30,055,307円+18,000,000円+94,136,000円-10,000,000円=132,191,307円

第4  結論

以上の次第で、原告の主位的請求は、失当としてこれを棄却することとし、予備的請求は、被告に対し1億3219万1307円とこれに対する平成11年10月6日(訴変更申立書の送達の日の翌日)以降の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める部分の限度で正当としてこれを認容し、その他の部分は失当としてこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩田好二 裁判官 工藤正 徳田祐介)

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