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東京地方裁判所 平成10年(ワ)9927号 判決 2000年2月18日

原告

菅原憲二

原告

渡辺光

右両名訴訟代理人弁護士

大森浩一

被告

株式会社三和

右代表者代表取締役

廣島昭夫

右訴訟代理人弁護士

山口健一

右当事者間の雇用関係存在確認等請求事件について、当裁判所は、平成一二年一月二八日に終結した口頭弁論に基づき、次のとおり判決する。

主文

一  原告菅原憲二と被告との間に雇用契約関係が存在することを確認する。

二  原告渡辺光と被告との間に雇用契約関係が存在することを確認する。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを五分し、その一を被告の負担とし、その余は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一原告らの請求

一  原告菅原憲二と被告との間に、所属を営業部営業一課とする雇用契約関係が存在することを確認する。

二  被告は、原告菅原憲二に対し、金二二〇万八三六〇円及び平成一〇年五月二五日以降毎月二五日限り金四〇万一五二〇円の割合による金員を支払え。

三  原告渡辺光と被告との間に、所属を営業部営業二課とする雇用契約関係が存在することを確認する。

四  被告は、原告渡辺光に対し、金二一五万四五七〇円及び平成一〇年五月二五日以降毎月二五日限り金三九万一七四〇円の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、配置転換命令の拒否を理由に被告から懲戒解雇された原告らが、配置転換命令、懲戒解雇とも無効であるとして、被告に対し、所属を元の部課とする雇用契約関係が存在することの確認と賃金の支払を請求している事案である。

一  争いのない事実

1  当事者

(一) 被告は、集中在庫管理と梱包発送作業、ダイレクトメールの企画制作、定期刊行物・販促宣伝材料の発送と顧客管理等を主たる業務とする従業員数約三四〇名の株式会社である。

(二) 原告菅原憲二(以下「原告菅原」という。)は、平成八年九月一六日、原告渡辺光(以下「原告渡辺」という。)は同年一〇月一六日、それぞれ被告との間で雇用契約を締結し、試用期間を経て、平成九年一月一六日以降、原告菅原は営業部営業一課において、原告渡辺は同部営業二課において、それぞれ課長待遇で勤務していた者である。

2  賃金

賃金は、前月一六日から当月一五日までの分を当月二五日に支払うとの定めであり、後記3の配置転換命令前の原告らの賃金(時間外手当、通勤手当を除く。)は、次のとおりであった。

(一) 原告菅原

本給 一三万一五〇〇円

職能給 一八万八〇二〇円

職務手当 二万〇〇〇〇円

住宅手当 二万〇〇〇〇円

家族手当 一万二〇〇〇円

営業手当 二万〇〇〇〇円

行動手当 一万〇〇〇〇円

総支給額 四〇万一五二〇円

(二) 原告渡辺

本給 一二万三〇〇〇円

職能給 一四万七七四〇円

職務手当 二万〇〇〇〇円

住宅手当 二万〇〇〇〇円

家族手当 六〇〇〇円

営業手当 二万〇〇〇〇円

行動手当 一万〇〇〇〇円

その他手当 四万五〇〇〇円

総支給額 三九万一七四〇円

3  配置転換命令

被告は、平成九年一〇月六日、原告らに対し、所属の各課長を通じて口頭で、同月一日付けで業務部有明物流センター業務一課へ配置転換する(ただし、就労開始日は同年一一月一日。)旨の命令を発した(以下「本件配転命令」という。)。

4  懲戒解雇処分

被告は、平成九年一〇月三一日、原告らに対し、本件配転命令の拒否(就業規則五一条九号該当)を理由に懲戒解雇する旨の意思表示をした(以下「本件懲戒解雇」という。)。

5  就業規則

被告の就業規則中には、本件配転命令及び本件懲戒解雇に関連するものとして、次の各規定がある。

第九条(異動)

(一) 会社は業務の都合で社員に配置転換、転勤を命ずることができる。

(二) 前項の場合、社員は正当な理由がなければこれを拒否することができない。

第五〇条(懲戒の種類)

(一) 懲戒処分は次の通りとし賞罰委員会の諮問を経て行う。

(7) 懲戒解雇(即時解雇し退職金を支給しない、但し労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けないときは平均賃金の三〇日分の解雇手当のみ支給する。)

(二) 前項の処分は、情状によって決定するが、賞罰委員会の構成は取締役及び管理職四名、所属長及び社員代表を以て構成しその都度会杜(ママ)が定めて召(ママ)集する。

第五一条(懲戒の事由)

社員が次の各号の一つに該当するときは、前条の定めに従い懲戒処分を行う。

(9) 正当な理由なく配置転換・転勤・出向を拒んだとき。

二  争点

本件の争点は、<1>被告に本件のような配置転換を命ずる配転命令権があるか(配転命令権の存否)、<2>本件配転命令が権利の濫用であるか(配転命令権の濫用の有無)、<3>原告らは正当な理由なく配置転換を拒否したか(懲戒解雇事由の存否)、<4>本件懲戒解雇が解雇権の濫用であるか(解雇権の濫用の有無)である。このうち、<1>及び<2>は、本件配転命令の有効性に関するものであり、<3>及び<4>は、本件懲戒解雇の有効性に関するもの(本件配転命令が有効であることが前提となる。)である。

三  当事者の主張

1  争点<1>(配転命令権の存否)について

(一) 被告の主張

(1) 原告らは、被告に入社する際、被告の就業規則その他の諸規定を遵守し、誠実に職務に精励する旨の誓約書を提出しているから、右就業規則に規定された事項が各雇用契約の内容となっている。そして、配置転換ができることは就業規則九条に明記されている。

(2) 一般論から言っても、企業である以上、人事異動はつきものであり、一生営業職ということは常識では考えられない。

(3) 被告は、平成八年八月当時、営業部門を強化するため、即戦力になることを期待して、東京人材銀行(以下「人材銀行」という。)に求人カードを提出して求人をし、原告らを採用したが、このことが、雇用契約における職種等の限定に直結するわけではない。

採用面接においても、被告は、原告らと、就業規則の内容を排除するような特別の合意をしていない。

(4) よって、被告には本件のような配置転換を命ずる配転命令権がある。

(二) 原告らの主張

(1) 被告は、上場企業の管理職を対象とする中途採用斡旋機関である人材銀行を通じて、職種を営業職、待遇を営業課長、勤務場所を被告本社とし、転勤の可能性なしとの労働条件で社員を募集し、営業職の管理職経験者として人材銀行へ登録をしていた原告らを採用候補者として選択して、右労働条件を明示した求人カードを添付の上、原告らに採用面接の希望を通知した。そして、原告らとの各二度にわたる採用面接においても、右労働条件は相互に確認された。

(2) このように、原告らは、職種等が限定された労働条件で採用されたのであるから、営業職以外の職種への配置転換は許されず、少なくとも人材銀行で規定する「管理的職業」の範疇に該当し得ない職種への変更は許されないといわなければならない。

(3) 本件の配置転換は、職種及び勤務場所を変更するものである上、課長待遇者(営業課長の指揮命令を受けることはあっても、係長や他の課員の指揮命令を受ける地位にはない。)から現場作業担当者(課長、係長、主任という階層的指揮命令関係の最下位に位置する。)への変更という降格的性質も有するものであるところ、被告には、このような配置転換を命ずる配転命令権はないから、本件配転命令は無効である。

2  争点<2>(配転命令権の濫用の有無)について

(一) 原告らの主張

(1) 業務上の必要性の不存在・人選の不合理性

ア 被告は、本件配転命令の理由として、外注費削減という業務上の必要性があった旨主張する。

しかし、平成九年一〇月一日付け人事異動の異動対象者九三名のうち六九名が被告の子会社である株式会社サンワエンタープライズ(以下「サンワエンタープライズ」という。)から被告へ所属替え(出向解除)になった者であるところ、もともとサンワエンタープライズは、被告から出向社員の給与総額を上回る外注費の支払を受けることによって、被告の営業活動で生ずる収益を分散させる役割が期待されていた会社であり、出向社員の復帰は、実質的な外注費削減という機能を持たない異動である。

イ また、業務部の作業は、倉庫内における現場作業(荷役・梱包作業)であるが、もともと被告においては、人件費を節減する趣旨(賃金が安いという理由)で多数の派遣労働者(外国人労働者)を社内に導入してきたはずであって、その労務政策は依然として維持されている(平成九年一〇月一日以降、派遣労働者が削減された形跡はない。)。その一方で、営業のエキスパートとして入社させたはずの原告両名に対して、あえて従来派遣労働者によって賄ってきた業務を担当させようとすること自体、極めて異例な人事といわざるを得ない。

ウ したがって、被告に外注費削減という業務上の必要性があったということはできないし、人選も不合理である。

(2) 不当な動機・目的の存在

ア 被告は、代表取締役廣島昭夫(以下「廣島社長」という。)によるワンマン経営として運営されている。同社長は、従業員の労働条件は自分が一方的に定めるものであって、経営のあり方や労働条件についての社員の異議はもとより、社内で労働組合を組織することは一切許さないという極めて封建的な経営観の持ち主であって、これまでにも同社長の独断でされたと思われる不合理な人事異動や解雇が後を絶たず、また社内での労働組合結成の動きが封殺されたこともあった。

原告らは、入社当初から、こうした劣悪な職場の実態を少しでもよくするために社内で労働組合を結成することが不可欠と感じるようになり、同じ思いを抱く同僚らと労働組合結成に向けて意見を交換するようになっていった。

イ 廣島社長は、平成九年一月二五日開催の社員総会において、「労働組合を結成すれば、私は会社を解散するつもりだ。一か月の休暇(賃金)を与えれば、私の一存で誰でも解雇することができる。実際、近々辞めてもらうことになる者も出てくるだろう。」などと言明した。

その後、同月中に、当時営業係長であった後藤隆史(以下「後藤」という。)に対する、営業部から業務部(荷役作業)への配転命令(形式上は子会社であるサンワエンタープライズへの出向。)、同年三月に、社内で管理職の経歴を有する営業部所属の佐々木、西村ら数名に対する解雇通告(その後撤回。)という報復人事が行われた。

また、廣島社長は、同年九月、次長以上の役職者全員を招集し、翌日までに全員が退職届を作成して同社長に預けるよう命じた。

ウ このような状況の中で、平成九年九月以降、労働組合結成の動きが本格化し、委員長を原告菅原、副委員長を後藤、書記長を原告渡辺として、三和労働協議連合組合(以下「三和労組」という。)が結成された。

原告らは、同年一〇月一日、棚町志郎取締役営業部長(以下「棚町部長」という。)に対して、労働組合結成を通告した。

エ 本件配転命令は、労働組合結成通告後の同年一〇月六日になって、同月一日付けに遡ってなされたものである(なお、同月一日付け人事異動は、同年九月二六日に確定し、同年一〇月一日に発令されていたが、原告らは異動対象者とされていなかった。)から、原告らが労働組合を結成して活発な組合活動を展開しようとしていたことを嫌悪し、労働組合を壊滅状態に追い込むことを意図して、すなわち不当労働行為意思をもって強行されたものであることが明らかである。

(3) 原告らの受ける不利益

ア 原告らは、営業部在籍当時には、課長待遇者として直属の上司である営業課長の指揮命令を受ける立場ではあっても、係長や他の課員の指揮命令を受ける地位にはなかった。ところが、配転先である業務部業務一課では、監督職として課長の下に係長、主任という階層的指揮命令関係があり、原告らは、その最下位に位置する現場作業担当者として実作業に従事することが予定されていた。このように、本件配転命令は異職種配転であり、かつ、指揮命令関係の質的転換をもたらすものであり、原告らにとって屈辱的な降格人事というほかない。

イ また、原告らは、本件配転命令によって、職務手当が一万五〇〇〇円減額され、営業手当二万円及び行動手当一万円がカットされ、右手当減額分を補填する措置は全くとられていない。このように、本件配転命令によって被る減給も受忍限度を超える内容となっている。

ウ このように、本件配転命令は、原告らに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益をもたらすものである。

(4) 以上のとおりであるから、本件配転命令は権利の濫用であって無効である。

(二) 被告の主張

(1) 業務上の必要性・人選の合理性

ア 被告は、昨今の構造不況の波を受けて平成九年一月以降急速に業績が悪化した。そこで、企業の存続と雇用の安定確保をめざし、リストラを行わない経営方針を前提に、同年四月以降抜本的な経営改善政策を検討、実施してきた。

その経営改善政策の一環として、赤字体質脱却のため、社外外注を極力ゼロにすべく、外注費削減計画を実施した。具体的には、これまで業務部における梱包等の現場作業の大半を外注していたが、同年九月二五日の方針決定に基づき、同年一〇月一日付け組織改訂により、一般従業員のみならず、元・前・現職役員を含む管理職を業務部へ異動させて業務部を強化し、外注費の削減を図ることとし、前取締役三名、元取締役三名、現取締役二名を同月一日付けで業務部へ異動させて現場業務の指揮に当たらせるとともに、営業部営業一課、二課からも各一名ずつ業務部への異動者をリスト・アップすることになり、右各課で最も業績不振で考課の低かった原告らが業務部への異動の対象となった。

イ このように、本件配転命令は、外注費削減という業務上の必要性があって行ったものであり、人選も合理的である。

(2) 不当な動機・目的の不存在

ア 原告らは、本件配転命令は、原告らが労働組合を結成して活発な組合活動を展開しようとしていたことを嫌悪し、労働組合を壊滅状態に追い込むことを意図したものである旨主張する。

しかし、原告らが棚町部長に対して口頭で労働組合結成を通告したのは、同月九日であって同月一日ではない。原告らは、同月六日に本件配転命令の内示を受けた後の同月九日になって初めて労働組合設立を表明したものである。

また、原告らは、同年九月二六日の定例役員会において正式には異動対象者として確定されていなかったものの、既に異動候補者としては選定されていた。

イ また、原告らは、同月一日付け人事異動は、同年九月二六日に確定し、同年一〇月一日に発令されていたと主張する。

しかし、同年一〇月一日付け人事異動は、同日までに確定せず、同月六日の臨時役員会で確定され、同日内示が行われ、翌七日に告示(掲示)されたものであって、原告らに対してだけ後から発令したものではない。異動対象者への辞令交付も同月一五日以降である。被告においては、実際の内示、告示及び辞令交付が、発令日付より後にされることはよくあることである。

ウ 被告に業務上の必要性があって配置転換を行ったものであることは、前記(1)のとおりであるから、原告ら主張の意図をもってしたものではないことが明らかである。

(3) 原告らの不利益の不存在

ア 原告らが業務部に異動になった場合、職務手当が減額となり、営業手当・行動手当が支給されなくなるが、資格手当・時間外手当の支給により、営業部在籍時の給与と比較して、額面上は約一万円の減額になるにすぎない。そして、営業部の場合には、営業で外を回る際の食費、被服費等の出費があるのに対し、業務部の場合には、社内食堂の利用、制服等の支給及び洗濯代の被告負担等の内勤のメリットがあることを考慮すれば、給与面での不利益はないと評価することができる。

イ また、集中在庫管理と梱包発送作業という現業(業務)を中心とする被告の場合、社員は皆、ある時期、業務部に所属することは当然あり得ることであり、特異なことでも不利益でもない。

ウ したがって、本件配転命令には、降格的な要素、極めて不利益となる要素はない。

(4) 以上のとおりであるから、本件配転命令は権利の濫用に当たらない。

3  争点<3>(懲戒解雇事由の存否)について

(一) 被告の主張

原告渡辺は平成九年一〇月六日、原告菅原は翌七日、それぞれ本件配転命令を拒否した。そして、本件配転命令の無効をいう原告らの主張に理由がないことは、前記1(一)及び同2(二)のとおりであるから、原告らの拒否には正当な理由がない。

したがって、原告らは、正当な理由なく配置転換を拒否したものであり、懲戒解雇事由(就業規則五一条九号)に該当する。

(二) 原告らの主張

本件配転命令後、原告らは、三和労組を通して、本件配転命令に異議を唱え、本件配転命令の問題を団体交渉の場で協議するよう求めていたが、個人としては拒否しておらず、三和労組との話し合い又は労働委員会の裁定で本件配転命令が有効とされたならば、本件配転命令に従う旨を明言していたのであり、本件配転命令を拒否したことはない。したがって、原告らには懲戒解雇事由がなく、本件懲戒解雇は無効である。

4  争点<4>(解雇権の濫用の有無)について

(一) 原告ら

(1) 不当労働行為

被告に不当労働行為意思があったことは前記2(一)(2)のとおりである。

被告は、三和労組及び原告らが本件配転命令に関し団体交渉を求めているにもかかわらず、被告と原告らとの個別交渉に委ねられるべきで、団体交渉の議題とはなしえないという態度を押し通し、団体交渉を経ることなく本件懲戒解雇を強行したものであり、このこと自体不当労働行為である。

したがって、本件懲戒解雇は、不当労働行為であって無効である。

(2) 手続違反

就業規則五〇条二項は、賞罰委員会の構成員に社員代表を加えることを要件としているところ、被告が社員代表として参加させたのは「むつみ会」の会長である。

しかし、「むつみ会」は、被告の親睦組織にすぎず、利益代表団体ではない。本件においては、労働組合が結成され配転問題について協議を申し入れている以上、「むつみ会」の会長が社員代表たる資格をもって賞罰委員会に参加しうる前提を欠くというべきである。

したがって、三和労組の代表を構成員とせずに開催した賞罰委員会は、就業規則の要件を欠くものとして手続的瑕疵を有するから、本件懲戒解雇は無効である。

(二) 被告の主張

(1) 不当労働行為意思の不存在

本件懲戒解雇は、原告らが正当な理由なく配置転換を拒んだことを理由とするものであって、解雇には相当な理由が存在し、しかも、後記(2)のとおり適正な手続を経て行ったのであるから、不当労働行為意思をもってされたものでないことは明らかである。

(2) 手続の適正

被告は、本件配転命令を発した平成九年一〇月六日、原告らに対して本件配転命令の必要性及び人選の適切さについて説明し、翌七日及び同月九日にも同様の説明をした。しかし、原告らは、同月九日の説明の際、組合問題として対応すると言い出し、同月二二日の面談においても、本件配転命令は組合潰しの不当なものであるとの立場に固執したため、被告の原告らに対する説明、説得活動は不能となってしまった。

そこで、被告は、同月二四日役員会を開いて、就業規則五〇条に基づいて懲戒処分に関する諮問機関である賞罰委員会を設置した。同委員会は、同月二七日、原告らの本件配転命令拒否は就業規則五一条九号の「正当な理由」が認め難く、懲戒解雇に値するが、原告らに個別に弁明の機会を与え、最終討議を行った上で最終判断をすることとし、原告らに対して弁明を聞く機会を与えたが、原告らは、本件配転命令は組合潰しの不当労働行為であるとの姿勢に固執し、個人として弁明をする機会を放棄した。これを受けて、賞罰委員会は、同月二九日懲戒解雇相当と判断した。

被告は、賞罰委員会の諮問を受けて、同月三〇日の臨時役員会において、原告らに対して懲戒解雇を行う旨決定し、同月三一日、原告らに対し、懲戒解雇通知書を手交した。

したがって、本件懲戒解雇は、手続的にも適正であって有効である。

第三当裁判所の判断

一  争点<1>(配転命令権の存否)について

1  前記争いのない事実の一部(第二の一1)、証拠(<証拠・人証略>)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一)(1) 原告菅原は、東京ヒルトンホテル株式会社勤務を経て、昭和四七年六月に株式会社西友に入社し、売場管理・仕入業務等を担当した後、昭和五九年一〇月以降は、本部商事事業部原材料資材課長(営業開発、商品開発等を担当)、本部フォルクスワーゲン・アウディ事業部営業課長、本部保険事業部マネージャー代理(グループ企業の損害保険営業管理)を歴任して、平成七年七月同社を退社した。そして、同原告は、平成八年五月、人材銀行に求職登録を行った(当時四九歳)。

(2) 原告渡辺は、ゲステットナーリミテッド(営業部に所属。最終職位は主任)、キーストン通信社(管理部に約五年(人事管理等を担当)、企画営業部に約六年所属。最終職位は課長)、日本通信紙株式会社(営業部に所属。最終職位は係長待遇)、シルバー精工株式会社(画像システム機器営業グループに所属。最終職位は主事)各勤務を経て、平成八年二月に株式会社リーセンに入社し、営業部に所属したが、同社在職中の同年五月、人材銀行に求職登録を行った(当時四三歳)。

(二) 人材銀行は、管理職・技術職・専門職の雇用と就職について相談と斡旋を専門に行い、企業が必要とする優れた人材の確保と求職者の能力が発揮できる職場の確保を目的として設置された国の機関である。人材銀行では、取扱う職種を、管理的職業と技術・専門的職業に分け、このうち管理的職業の対象者は、課長以上の管理的職業に就く者であり、課長以上の役職経験者に限るとしている。

(三) 被告は、営業力を強化するため、即戦力となる者を求めて、人材銀行に求人登録を行っていたが、原告らの求職登録シートを見て、原告らに求人カードを送付して採用面接を求めた。送付した求人カードには次のとおり記載されていた。

職種役職名 営業課長

採用人数 三人

年齢 四〇歳~四五歳

勤務場所 江東区有明

転勤の可能性 無

(四) 原告らは、それぞれ平成八年八月下旬ころ及び同年九月初旬ころの二度、被告を訪れて採用面接を受け、原告菅原は、同年九月一六日、原告渡辺は同年一〇月一六日、それぞれ被告との間で雇用契約を締結した。

(五) 雇用契約締結の際、原告らは、被告の求めに応じて、「私は、貴社に従業員として採用されましたについては、貴社従業員就業規則その他の諸規程、命令を遵守し、誠実に職務に精勤することを誓約致します。」との不動文字が記載された誓約保証書に署名・押印して被告に差し入れた。

(六) 原告らは、それぞれ試用期間を経て、平成九年一月一六日、被告から、同日付けをもって正社員とし、原告菅原については営業部営業一課勤務を、原告渡辺については同部営業二課勤務を命ずる旨の辞令の交付を受けた。

(七) 当時、営業一課には野口孝寿課長が、営業二課には浅野賢二課長がおり、原告らは、各課長の指揮・監督下に置かれ、名刺には課長の肩書を付けることを許されていたものの、部下はなく、課長としての権限は与えられなかった。被告は、組織上の課長以外の者について、賃金等の処遇の上で課長として扱うことを従前から行っていた。

なお、原告らの陳述書(<証拠略>)によっても、課長としての権限を与えられないことについて明確に抗議した事実は認められない。

(八) 被告には、原告ら以前にも、人材銀行を通じて採用し営業部に配属した従業員が四名おり、そのうち二名はその後業務部に配置転換されている。被告が中途採用して営業部に配属した従業員は他にも多数おり、これらの者も、その後業務部に配置転換される等している。また、棚町部長も業務部に配置転換された経験を有している(<証拠略>)。なお、そもそも被告は、集中在庫管理と梱包発送作業、ダイレクトメールの企画制作、定期刊行物・販促宣伝材料の発送と顧客管理等を主たる業務とする会社であり(前記第二の一1(一))、業務部はその中心となる部署であるということができる。

(九) 原告らは、その陳述書(<証拠略>)において、採用面接の際、原告菅原が営業以外はできないと言い、原告渡辺が営業以外は自信がないと言ったのに対し、新堀治人事部長及び棚町部長が、営業以外の部署に配置転換することはないと断言した旨陳述する。

しかし、原告らの経歴は前記(一)のとおりであり、営業職が長いものの、他の職種も少なからず経験しているのであって、この事実に照らすと、原告らが右のように発言することは理解し難いし、また、前記(八)の事実に照らせば、新堀部長らが配置転換の可能性を一切否定する発言をするとも考え難いから、原告らの右陳述部分は採用できない。

2  右に認定した事実、特に、被告が求人登録を行ったのは、営業力を強化する目的で即戦力となる者を採用したかったからであって、営業部の課長ポストに欠員が生じたり課長ポストを増設するためではないこと、及び、被告は、原告ら以前にも、人材銀行を通じて採用し営業部に配属した従業員の業務部への配置転換を行ってきたことからすると、まず、被告は、入社当初原告らを営業部に配属し、課長と同等の賃金を支払うことを内容とする雇用契約を締結する意思であったものであり、管理職への登用に関する人事権や就業規則に定めた配転命令権を制限する内容の雇用契約を締結する意思はなかったと認められる。

また、被告が原告らに送付した求人カードには、職種役職名として営業課長と記載されているものの、採用面接時にも、特定のポストに充てるという会話が交わされた形跡がなく、かえって、そのような会話はなかったことが窺われること、平成九年一月一六日以降は現実に各課長の指揮・監督下に置かれたにもかかわらず、原告らが明確に抗議した事実は認められないこと、採用面接時に、職種を限定する旨の会話が交わされた事実を認め難いことからすると、原告らにおいても、営業職、管理的職業という限定を付した雇用契約を締結する意思であったとは認め難い。

そうすると、原告らと被告との雇用契約は、入社当初原告らを営業部に配属し、課長と同等の賃金を支払うことを内容とするものであって、営業職、管理的職業という限定を付したものではないと認めるのが相当である。なお、雇用契約が人材銀行を介して締結されたものであること及び人材銀行の設置目的は、雇用契約締結時の当事者の意思を解釈する上で一つの判断材料とはなるものの、当事者の契約が右設置目的等に拘束されるものではないから、人材銀行で扱う職種が管理的職業であるからといって、原告らの職種が管理的職業に限定されたことにはならないのであり、本件においては、前記の事実等に照らせば、雇用契約が人材銀行を介して締結されたものであることを考慮しても、営業職、管理的職業という限定が付されていたと解することはできないというべきである。また、被告は求人カードに、転勤の可能性無と記載しているが、「転勤」は、一般に転居を伴う配置転換を指すものとして用いられているから、この記載をもって、被告が配置転換がないことを明らかにしたということもできない。

3  以上によれば、原告らと被告との間において、被告は業務上の都合で社員に配置転換を命ずることができ、社員は正当な理由がなければこれを拒否することができない旨定めた就業規則九条(前記第二の一5)を排斥する合意が成立していたと認めることはできず、被告は、業務上その必要があれば、就業規則九条に基づき、原告らに対して、本件のような営業部から業務部への配置転換を命ずる権利を有するというべきである。

二  争点<2>(配転命令権の濫用の有無)について

1  配転命令権は、全く無制限に行使しうるものではなく、当該配転命令につき業務上の必要性が存在しない場合又は業務上の必要性が存在する場合であっても、当該配転命令が他の不当・違法な動機、目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等特段の事情が存する場合は、当該配転命令は権利の濫用であって無効になると解するのが相当である(最高裁昭和六一年七月一四日第二小法廷判決・判例時報一一九八号一四九頁参照)。

2  業務上の必要性について

(一) 証拠(<証拠・人証略>)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 被告は、平成九年一月以降急速に業績が悪化した。そこで、企業の存続と雇用の安定確保をめざし、リストラを行わない経営方針を前提に、同年四月以降抜本的な経営改善政策を検討した。

(2) 被告は、経営改善政策の一環として、外注費を削減することとし、具体的には次のような政策を実施することとした。

ア 被告は、これまで業務部における梱包等の現場作業の大半を外注し、特に、被告の子会社であるサンワエンタープライズに対しては、被告の従業員を出向させた上で外注費を支払っていたが、従業員の出向を解除して、自社の従業員として業務に従事させる。

イ 他の外注先との契約も一部解除し、そこに被告の従業員を充てる。そのため、被告の他の部署から要員を捻出する。一般従業員のみならず、元・前・現職役員を含む管理職も業務部へ異動させて現場業務の指揮に当たらせる。

(3) 被告は、組織改編及び大幅な人事異動を同年一〇月一日付けで行った。その人事異動には、営業部ツアープロモーション室(TP室)の大植秀利係長及び佐藤司室員の業務部への異動が含まれていた。

(二) 右事実によれば、平成九年一〇月当時、被告には、外注費を削減するため、営業部を含む他の部署から業務部へ複数の従業員(捻出が可能であれば多い方がよい。)を配置転換させる業務上の必要があったと認められる。

(三) これと異なる原告らの主張(前記第二の三2(一)(1))中、もともと賃金の安い者派遣労働者(外国人労働者)を導入していたとの点については、後藤が配属されたラインに外国人がいたことは認められるものの、他も同様であったとまでは認められないことから採用できず、その余の点についても前記(一)の認定事実及び前記一1(八)の認定事実(営業部から業務部への配置転換は特異なことではなく、以前から行われてきたものであること。)に照らして採用できない。

3  人選の合理性について

(一) 証拠(<証拠略>)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 原告らは、被告から即戦力として期待されて入社したが、いずれも期待された実績を挙げることができずにおり、取引先等から苦情が述べられることもあった。

(2) また、原告菅原の考課者は、同原告には社内外の軋轢を生じさせかねない行動が見られると認識し、原告渡辺の考課者は、同原告は積極性・自己アピールに欠けると評価していた。

(3) これらの点から、原告らの考課は、各所属課の従業員の中でそれぞれ最も低かった。

(4) 原告らの陳述書(<証拠略>)は、被告の考課が不当であるとの内容のものであり、被告が本件配転命令以前から原告らについて右のように考課していたこと自体を争うものではない。また、これらによっても、被告の考課が明らかに恣意的にされたものであるとは認められない。

(二) ある部署から人員を捻出しなければならない場合に、当該部署において考課の低い者を人選することが不合理であるとはいえないから、被告が右の基準により原告らを人選したとしても、不合理であるということはできない。

4  他の動機・目的について

(一) 原告らは、本件配転命令が、原告らが労働組合を結成して活発な組合活動を展開しようとしていたことを嫌悪し、労働組合を壊滅状態に追い込むことを意図して、すなわち不当労働行為意思をもって強行されたものであると主張し、その根拠として、<1>原告らが、平成九年一〇月一日に棚町部長に対して、労働組合結成を通告したところ、同月六日になって本件配転命令が発令された、<2>一〇月一日付け人事異動は、九月二六日に確定し、一〇月一日に発令されていたが、原告らは異動対象者とされていなかったと主張する。他方、被告は、<1>につき、原告らが棚町部長に対して口頭で労働組合結成を通告したのは、本件配転命令内示後の一〇月九日であって同月一日ではない、<2>につき、一〇月一日付け人事異動は、九月二六日までに確定せず、一〇月六日に確定され、同日内示が行われたものであって、原告らに対してだけ後から発令したものではない、原告らは、九月二六日の定例役員会において正式には異動対象者として確定されていなかったものの、既に異動候補者としては選定されていたと主張する。

そこで、この二点につき順次検討する。

(二) 原告らの主張<1>について

(1) (人証略)並びに同人らの陳述書(<証拠略>)は、次のような経緯を経て平成九年一〇月一日労働組合結成通告に至ったということで概ね一致し、これに沿う名刺その他の文書(<証拠略>)も存在する。

ア(ア) 平成九年一月一四日ころ、当時営業部営業係長であった後藤が営業部から業務部へ配置転換された(形式的にはサンワエンタープライズへの出向。)。

(イ) 同月二五日、廣島社長は、社員総会の席上、全従業員に対して、「労働組合を結成すれば、私は会社を解散するつもりだ。」、「一か月の休暇を与えれば私の一存で誰でも解雇することができる。実際、近々辞めてもらうことになる者も出てくるだろう。」と発言した。

(ウ) 同年三月、営業部所属の佐々木、西村という二名の従業員に対して解雇が通告され、後に撤回された。

イ 同年四月、被告の顧問を退職する滝口登(以下「滝口」という。)の送別会が行われたが、その席上、原告ら及び後藤は、滝口とともに労働組合を結成するべきである旨の話をした。

ウ 同年九月、廣島社長が、次長以上の役職者全員を招集し、翌日までに全員が退職届を作成して同社長に預けるよう求め、棚町部長を含む多くの者がこれに応じて退職届を提出した。

エ 原告らは、同年九月一八日、東京都労働経済局を訪れて労働組合結成について相談し、「組合づくりのハンドブック」と「労働協約の手引」をもらった。

オ 原告らは、同月一九日、後藤及び滝口と会合し、三和労組を結成すること、執行委員長に原告菅原、副執行委員長に後藤、書記長に原告渡辺、社外相談役に滝口がそれぞれ就任し、組合規約は、「組合づくりのハンドブック」を参照しながら原告渡辺が同月中に作成すること、被告に対する労働組合公然化を被告の第三四(し)半期の初日に当たる同年一〇月一日に行うことなどを決定し、事前に用意した「三和労働協議連合組合設立」と題する書面に後藤及び滝口とともに押印した。

カ 原告らは、同月二四日、東京都地方労働委員会を訪れて、不当労働行為救済制度について説明を受け、「労働委員会のてびき」をもらった。

キ 原告らは、同年九月二五日ころ三和労組の組合規約を完成させた。

ク 同年一〇月一日午前九時四〇分ころ、原告両名が、棚町部長に対して労働組合結成通告をした。

(2) 前記(1)の各事実のうち、ア(ア)の後藤の配置転換の事実、同(イ)の廣島社長の発言の事実、及びウの廣島社長が次長以上の役職者に対し退職届の提出を求めた事実については、証人棚町志郎、同辻弘子及び同小泉直哉もこれを認める証言をしているところであり、時期の点を含めその存在を認めることができる。また、イについては、(証拠略)によれば、滝口が廣島社長らに対し、平成九年四月ころ原告らと「この規模の会社には普通組合があるはずだ。」という趣旨の話をした旨述べたと認められることから、右時期ころ、少なくとも右の限度での会話はあったと認めることができる。

(3) しかし、その余の事実の存在、あるいは存在したとしてもその時期については、以下に述べるとおり、少なからぬ疑問がある。

ア 前記(1)アは、原告らによる労働組合結成の動機に関わるものである。そのうち後藤の配置転換に関し、原告らは、廣島社長の発言を受けて行われたかのごとく主張しているが、前後が逆であることが明らかである。また、佐々木、西村という二名の従業員に対する解雇通告があったとの点については、その詳細が不明で、棚町部長は休職処分があったに過ぎないと証言しているところである(<証拠略>)。そして、原告らは、これらが報復人事であると主張するが、何に対する報復なのかも不明であり、むしろ後藤はサンワエンタープラズ出向にシルバー対策としての意味合いがあることを認め、自分の年齢から配置転換に納得せざるを得ないと考えていた旨証言をしている(<証拠略>)。

原告らは、被告においては社内での労働組合結成の動きが封殺されたこともあったと主張する(もっとも同事実を認めるに足りる証拠があるとはいえない。)が、このような主張を前提とする限り、労働組合を結成しようとすれば被告から妨害等を受けることが予想され、あるいは廣島社長の発言にあるように会社が解散される状況にあったことになるから、このような状況下でもなお労働組合を結成したいという強い動機が生じるだけの出来事等がなければ、そのような動きには至りにくいと考えられる。しかるに、前段で検討したところによれば、平成九年九月という時期に、それまで話には出ていたことがあるにせよ具体的な動きのなかった労働組合結成に向けての準備が、前記(1)エないしキのように僅か一週間で集中的に行われるほどの強い動機を生じさせるような出来事があったとは認め難い(前記(1)ウの次長以上の役職者に対する退職届提出要求は九月のことではあるが、原告らとは直接関係のない事実である上、その趣旨も経営改善に対する決意表明を求めるものであったと認められること(<証拠略>)からすれば、右提出要求が労働組合結成のきっかけになったとも考え難い。)。

原告らの本人尋問によっても、結成通告時に団体交渉の議題を明確に示したこと、あるいは示さないまでの原告らの内心において是非議題にしたい具体的問題があったとの明確な供述が得られなかったことからも、平成九年九月当時原告らに労働組合結成に向かう強い動機があったとは認め難い。

イ 前記(1)エの東京都労働経済局訪問については、(証拠略)及び証人石井省吾の回答書によれば、原告らが同局の石井省吾主事の下を訪れて労働組合の結成の仕方について相談したことがあることは認められるものの、それが平成九年九月一八日であったことについては、後日原告らに求められて言われたとおり同日に来庁した旨名刺(<証拠略>)に記載したものの、記憶が残っていたわけではなく記録も確認しなかった、記録は残っていないとの同証人の回答に照らすと、なお合理的な疑いが残る。

ウ 前記(1)オの平成九年九月一九日の会合については、次の点から、会合の存在自体、存在したとしてもその時期について、重大な疑問がある。

(ア) 右会合についての滝口の証言中、原告らに前日電話で呼び出された際の会話に関する部分には変遷が見られる上、同年四月以降は労働組合結成の話を聞いていなかったにもかかわらず、その話だろうと思ったとの部分には不自然なものがある。また、「三和労働協議連合組合設立」と題する書面に押印するための印章を購入した店舗名を明らかにした部分があるが、(証拠略)によれば、右店舗は、原告らが会合を行ったとされる時間には既に閉店しており購入は不可能であると認められることに照らし信用できない(なお、原告らは被告による右書証提出後に、証言は勘違いであった旨の滝口の報告書等(<証拠略>)を提出したが、提出の経緯に照らし、到底採用できない。)。

(イ) 後藤は、証人尋問において、「三和労働協議連合組合設立」と題する書面を作成した理由について質問された際、原告らの解雇撤回が目的であると証言し(<証拠略>)、滝口は、会合前日の電話の際、原告らが解雇されたと聞いた旨証言し後で撤回しているが(<証拠略>)、これらは、本件配転命令前に労働組合が結成されたこととは両立し得ない証言であり、両名がこのような重要な点について、同じように勘違いをして証言したとは考え難い。

エ 前記(1)カの東京都地方労働委員会訪問の時期については、反対趣旨の(証拠略)に照らすと疑問の余地がある。なお、関係機関を訪問して労働組合の結成の仕方を聞くことと、労働組合を結成して使用者に通告することでは、心理的葛(ママ)藤等の上で格段の違いがあると考えられるから、原告らが平成九年九月一八日と同月二四日に、それぞれ東京都労働経済局と東京都地方労働委員会を訪問した事実があったとしても、原告らが同年一〇月一日という日に結成通告を行ったことが当然に認定できるものではない。

オ 前記(1)クの労働組合結成通告についての原告らの陳述書等は具体的で詳細である。しかし、通告の結果について報告を受けた状況についての後藤の陳述には変遷が認められるなど疑問の余地がある(なお、この部分を含め後藤は証言内容が全体として曖昧で労働組合結成に積極的に関与したとは認め難いものがある。)。また、原告らの陳述書(<証拠略>)等にある具体的会話は、それが被告主張の平成九年一〇月九日にされたものであるとしても矛盾するものではない。

なお、棚町部長及び辻弘子は、それぞれ証人尋問及び報告書(<証拠略>)において、平成九年一〇月一日には棚町部長は原告らから結成通告を受けておらず、その時間もなかった旨陳述し、河村佐知子の報告書(<証拠略>)もこれに沿うものであるが、その陳述内容からは、同日の通告がおよそあり得なかったものとまでは認められない。

(4) 以上に検討した平成九年一〇月一日までの経緯のほか、以下の諸点も、同日結成通告の存在を疑わせ、むしろ通告は本件配転命令後であることを推認させる事情ということができる。

ア 結成通告をして三和労組を公然化させた以上、会社の内外で労働組合の結成をアピールし、他の従業員に参加を呼び掛ける等の組合活動がされてしかるべきであるが、同月一日から六日までの間、原告らが三和労組の組合員として、右のような組合活動をした形跡は認められない。

イ 被告においては社内での労働組合結成の動きが封殺されたこともあったとの原告らの主張、前記(1)ア(イ)の廣島社長発言、原告らが本件配転命令前に入手したとされる「組合づくりのハンドブック」(<証拠略>)には使用者が労働組合に対し圧力や妨害を加えることがある旨記載されていること、原告らは事前に東京都地方労働委員会を訪れて、不当労働行為救済制度について説明を受けたと陳述していること等からすれば、原告らが平成九年一〇月一日に労働組合結成通告を行ったのであれば、被告からの圧力等を予期し、相当警戒していたはずであるから、本件配転命令を受けた時点で、それが労働組合結成通告と関係すると考え、即座に内示した相手方やその周囲にいた者に対し、不当労働行為である旨述べてしかるべきである(原告らの主張によれば、他の者に対する配転命令とは別の時期にされたというのであるから、なおさらである。)。しかるに、原告らの陳述書等にもその趣旨のことを述べた旨の陳述はなく、かえって、原告菅原は、翌日になって内示の仕方が悪いと述べ(<証拠略>)、原告渡辺は、内示した課長に対し採用時の条件に反すると述べた(<証拠略>)ことが窺われる。

ウ 同様に、三和労組名義で平成九年一〇月二二日付けで作成され、被告に交付された団交申入書(<証拠略>)にも労働組合結成後の配置転換であるとの記載がない(組合壊滅目的がある場合には配置転換が無効になる旨の記載はあるが、無効になる場合の例示の中の一つとして、他の例と並列的に挙げられているに過ぎない。)ことも、原告ら主張の事実経過からすれば不自然との感を否めない。

エ 労働組合結成通告前に東京都労働経済局及び東京都地方労働委員会を訪問し、説明を受けていたとしながら、本件配転命令を受け更に解雇問題にまで発展した一〇月中にこれらの機関を訪れ助言や救済を求める等した形跡が認められない。

オ 原告らは、三和労組結成に参加し、あるいは賛同する従業員が他にもいたかのごとく主張するが、その存在を窺わせる事実や証拠はなく、かえって、後藤は、原告両名、後藤及び滝口以外の者は三和労組結成を知らなかったと証言し(<証拠略>)、また、原告らは、平成一〇年一月一四日に三和労組を解散し、個人加盟の労働組合に加入したことが認められる(<証拠略>)。そして、後記のとおり、本件配転命令後に被告に対し団体交渉を求める等の動きを見せていたのも原告両名のみであって、後藤が原告らと行動を共にしていた事実も認め難いことからすると、三和労組の実態には疑問が残る。

カ 証人小泉直哉の証言中、原告らと被告の小澤専務らが平成九年一〇月二二日に話し合った際、原告らが、被告が人事異動の日付を遡らせたから自分たちも労働組合結成日付を遡らせた旨述べていたとの部分(<証拠略>)には生々しいものがある。

キ 本件配転命令は、原告らに同じ有明物流センター業務一課勤務を命ずるものであるが、これは副執行委員長である後藤が所属している課でもある(<証拠略>)。組合員三名が同じ部署になるよう配置転換することに労働組合に対する圧力等としてどれだけ意味があるかは疑問であり、むしろ本件配転命令が労働組合結成告知前に発せられたことを示す一つの事情になり得るとも考えられる。

ク なお、原告菅原本人尋問の結果によれば、原告菅原は過去在籍していた会社において組合活動の経験があることが認められ(<証拠略>)、このことからすると、本件配転命令を受けた直後に労働組合の結成を考え、あるいはそれまで漠然と考えていたものを実行に移したとしても不思議ではないということができる。

(5) 以上に検討したところによれば、前記(1)の各供述等から、原告らが、平成九年一〇月一日に労働組合結成通告をした事実を認めることは困難であるといわざるを得ない。

(三) 原告らの主張<2>について

(1) 平成九年一〇月一日付け人事異動が同年九月二六日に確定していたとの原告らの主張を認めるに足りる積極的証拠はない。

もっとも、人選の経過及び確定時期については、被告の方が明らかに証拠に近く、立証が容易な立場にあるということができる。ところが、この点に関し、被告の役員、従業員らが作成した報告書その他の文書は、相互に他の報告書等と食い違う点、当該文書が作成された当時の客観的状況と整合しない点等が少なからず見られるところ、これらの点についての被告の説明は、読み方によっては食い違いとはいえない、複数の文書を誤って一通の文書として提出してしまった、文書作成時の誤り等といったものであって、十分説得的なものであるとは言い難い。また、同年九月二六日の役員会で人事異動を確定できなかった具体的理由(当日示された案、不十分とされた点、その後の修正)を明確にするべきであるとの原告らの再三の指摘に対し、明確に回答しない被告の態度にも疑問を抱かざるを得ない。

右に述べたところからすると、平成九年一〇月一日付け人事異動が同年九月二六日に確定していたかどうかについては、真偽が不明であるといわざるを得ない。

(2) 次に、平成九年一〇月一日付けの人事異動が同日発令されたとの原告らの主張に沿う証拠としては、佐藤司の陳述書(<証拠略>)及び後藤の証言がある。そのうち、後藤の証言が全体として信用性に乏しいことは前述のとおりであるが、人事異動発令日に関する部分(<証拠略>)も明快であるとは言い難く信用し難い。また、佐藤司の陳述書は反対尋問を経ておらず、たやすく信用することができない。

他に、平成九年一〇月一日付けの人事異動が同日発令されたと認めるに足りる証拠はなく、かえって、原告菅原は、その陳述書(<証拠略>)において、本件配転命令の内示を行う際、野口課長が「菅原さんが荷役労働に異動になりました。パンダ(経営企画室の田中氏を指す。)、浅川室長も、菅原さんと同様現場労働になりました。」と述べた旨陳述しているが、これは他の者に対する配転命令が既に一〇月一日に発令されてから五日後の同月六日になって内示するときに用いる表現とは考え難く、むしろ配転命令が浅川室長らにするのと同時に発せられたときに用いられる表現であると考えられる。

そうすると、平成九年一〇月一日付けの人事異動が実際に同日発令されたとの原告らの主張を採用することは困難である。

(四) 本件配転命令が、原告らが労働組合を結成して活発な組合活動を展開しようとしていたことを嫌悪し、労働組合を壊滅状態に追い込むことを意図してされたものであると認められるためには、少なくとも、当事者間に争いのない本件配転命令発令日平成九年一〇月六日より前に労働組合結成通告がされたこと、他の者に対する配転命令が同月一日に発令されていることの立証が不可欠であるというべきであるが、これらの点が立証されているといえないことは前記のとおりである。なお、一〇月一日付け人事異動が九月二六日に確定していたかどうかの点は、労働組合結成通告及び他の者に対する配転命令が一〇月一日にされたことが認められない限り、本件配転命令が原告らが労働組合を結成したことを嫌悪してされたものであることを推認させる事実とはならない(確定日についての被告の主張が事実に反することが明らかであれば、他の二つの事実が存在したことを推認させる一つの事情になるということができるが、被告の主張が事実に反することが明らかであるとまではいえない。)。

よって、本件配転命令が、原告らが労働組合を結成して活発な組合活動を展開しようとしていたことを嫌悪し、労働組合を壊滅状態に追い込むことを意図してされたものであるとの原告らの主張は理由がない。

5  原告らの受ける不利益について

(一) 前記争いのない事実の一部(第二の一2)、証拠(<証拠略>)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 本件配転命令により、原告らの職種は、課長待遇の営業職から荷役・梱包作業従事者に変わることになる。そして、原告らは、営業部にあっては、課長の指揮・監督下に置かれており、係長の指揮下にはなかったが、業務部においては、課長、係長、主任というラインの下に置かれることになった。

(2) また、勤務場所は、本社社屋(本社の本館事務所)から有明物流センター(本社の一号館から三号館)にそれぞれ変わった。

(3) 賃金の変化については以下のとおりである。すなわち、営業部配属中には、本給・職能給のほか、他の手当と併せて、職務手当二万円、営業手当二万円、行動手当一万円がそれぞれ支給されていた。このうち、職務手当は、各部署の特異性によって設定されており、営業部は外勤に関わる微妙な諸経費の填補という意味合いから二万円となっているが、業務部はそのような配慮の必要がなく五〇〇〇円とされている。また、営業手当は営業職が外勤で実残業時間の管理が困難であるため、実残業時間に応じた時間外手当を支給しない代わりに支給しているものである。これに対し、業務部においては、資格が主事以上の者に対しては定額の資格手当を支給し、それより下位の者に対しては実残業時間に応じて時間外手当が支給されている。また、業務部では行動手当の支給もない。(なお、右認定は、被告の給与規程(<証拠略>)とは合致しない部分があるが、原告らが本件配転命令前に支給されていた賃金の内訳も右規程とは合致しておらず、被告が右規程と異なる運用をしていることは明らかである。)

その結果、原告らの賃金は、業務部への配置転換後は、職務手当が一万五〇〇〇円の減額となり、営業手当及び行動手当は支給されなくなる代わりに、原告菅原(資格が主事である。)に対しては資格手当三万五〇〇〇円が支給されるようになり、原告渡辺(資格が主事より下位の三級である。)には残業時間に応じて時間外手当が支給されることになる(なお、業務部の残業時間の平均は平成八年度で一か月二三時間であるところ、原告渡辺が一か月一五時間の残業をした場合の時間外手当は三万五〇〇〇円余りである。)。

他方、営業部の場合には、営業で外を回る際の食費、被服費等の出費があるのに対し、業務部の場合には、社内食堂が利用でき、また、被告が制服等を支給し、洗濯代を負担するなどしているため、出費は少ない。

(二) 原告らは、本件配転が降格人事であると主張するが(前記第二の三2(一)(3)ア)、もともと課長としての権限は与えられておらず部下もいなかったことは前認定のとおりである。

(三) また、賃金の変化は、前記(一)(3)のようなものであり、職務手当が減額となり、営業手当・行動手当が支給されなくなるが、これは担当する職務の変更に伴うものである上、営業部では支給されなかった手当が業務部では支払われるなど相当程度の調整は図られているものである。

(四) 以上検討したところによれば、本件配転命令が、原告らに通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとまでは認められない。

6  以上の次第であるから、本件配転命令が権利の濫用で無効であるとはいえず、原告らの主張は理由がない。

三  争点<3>(懲戒解雇事由の存否)について

1  前記争いのない事実、証拠(<証拠・人証略>)及び弁論の全趣旨によれば、本件配転命令後の経過につき、次の事実が認められる。

(一) 平成九年一〇月七日夜、被告の与那嶺清営業部長(以下「与那嶺部長」という。なお、被告は、営業部(棚町部長)の下に、さらに営業部とツアープロモーション室(TP室)を設けており、与那嶺部長は後者の営業部を統括している。)が、原告らを酒席に誘い、原告らが人選された理由について説明したが、原告らは納得せず労働組合を通して闘う旨表明した。

(二) 同月九日、原告らは、棚町部長に本件配転命令の理由について説明を求めた。同部長は被告の業績不振・外注費削減の必要について説明したが、原告らは納得せず労働組合を通して闘うと述べ、廣島社長との団体交渉を求めた。

(三) 同月一三日、原告らは、棚町部長及び与那嶺部長と話し合い、団体交渉を申し入れた。これに対し、棚町部長は、翌一四日、一六日に小澤専務取締役に会わせ、その後に廣島社長と面会できるよう手配する旨原告菅原に伝えたが、期日はその後延期となった。

(四) 同月二二日、三和労組(原告両名)と被告(廣島社長外四名)との団体交渉が行われた。席上、原告らは、本件配転命令を団体交渉の協議事項とすることを求めたが、被告は、三和労組の結成は本件配転命令後であり、配転命令拒否は個人の問題であるとして、本件配転命令を団体交渉の協議事項とすることを拒否し、双方の主張が平行線を辿ったまま当日の協議が終了した。

(五) 同月二四日、被告は、就業規則五〇条に基づく賞罰委員会を設置し、同月二八日、原告らに対して同月二九日に弁明の機会を与える旨を通知した。

(六) 同月二九日、原告らは、個人として配転を拒否しているのではなく労働組合として異議を申し立てているのであり、今後労働組合との話し合い又は労働委員会の裁定で本件配転命令が有効とされれば命令に従うなどと述べて、同月三一日に団体交渉を開催するよう申し入れ、配転命令拒否は個人の問題であるとする被告の主張と平行線を辿った。結局、原告らは、弁明の機会に出席しなかった。

(七) 被告は、賞罰委員会の懲戒解雇相当(ただし、最終的に配置転換を受託した場合は不問とする。)との諮問を受けて、同月三〇日の臨時役員会において、原告らを懲戒解雇する旨決定し、同月三一日、原告らに対し、懲戒解雇通知書を手交した。

2  右認定事実によれば、原告らは、遅くとも平成九年一〇月七日以降、本件配転命令には従わないとの意向を示して、本件懲戒解雇に至るまでの間、その意向を変えなかった(就労開始日とされた同年一一月一日から業務部で労務を提供するとの意向を示さなかった。)ものであって、本件配転命令を拒否したことは明らかである。そして、本件配転命令拒否に正当な理由がないことは前記一及び二のとおりであるから、原告らには、就業規則五一条九号に該当する懲戒解雇事由があると認められる。

四  争点<4>(解雇権の濫用の有無)について

本件懲戒解雇に至る経緯は前記三1のようなものであるところ、原告らは本件配転命令を拒否していたとはいえ、話し合い等により納得すれば配置転換に応ずる旨述べていたこと、原告らの採用の経緯にかんがみれば、原告らが本件配転命令に難色を示すのも無理からぬものがあること、仮に三和労組が本件配転命令後に結成されたものであるとしても、本件配転命令は原告らの労働条件に関わるものであるから、被告にはこの問題に関し団体交渉に応ずる義務があったにもかかわらず、これを拒否したものであって、労働組合法七条二号に該当する不当労働行為であるといわざるを得ないことからすれば、被告は、少なくとも、団体交渉の継続を約束した上で、就労開始日以降の業務部での就労を求めるべきであって、右のような手続を経ることなく、就労開始日を待たずにされた本件懲戒解雇は、その余の手続の適正について論じるまでもなく、手続の適正を欠き、解雇権を濫用するものとして無効であるというべきである。

五  原告らの賃金請求権について

賃金は、労務の提供に対する対価であるから、労働者は債務の本旨に従った労務の提供(就労)をしない限り賃金を請求し得ないのが原則である(民法六二四条一項)。違法な解雇など使用者の責に帰すべき事由によって労務の提供が不能となった場合には、労働者は賃金請求権を失わないが(同法五三六条二項本文)、同条項適用の前提としても、労働者が債務の本旨に従った労務の提供をする意思を有し、使用者が労務の提供を受領する旨申し出れば、労働者においてこれを提供できる状況にあることが必要であるというべきである。

これを本件についてみると、本件配転命令が有効であることは前判示のとおりであるから、債務の本旨に従った労務の提供とは、被告業務部有明物流センター業務一課における労務の提供であるところ、原告らが平成九年一一月一日以降同部課で労務を提供する意思を有していなかったことは明らかである。そうすると、本件は、民法五三六条二項本文適用の前提を欠くのであって、原告らは、同日以降の賃金請求権を有していないというべきである。

六  結論

以上のとおり、本件懲戒解雇は無効で原告らと被告との雇用契約関係は存在しているものの、本件配転命令は有効で原告らの所属はそれぞれ営業部営業一課及び同二課ではなく、また賃金請求権も有していないから、原告らの請求は、雇用契約関係が存在することの確認を求める限度で理由があり、その余は理由がない。

よって、原告らの請求を右の限度で認容し、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六四条本文、六五条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 飯島健太郎)

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