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東京地方裁判所 平成10年(特わ)2720号

主文

被告人有限会社環聯トランサを罰金一二〇〇万円に、被告人陳樂然ことトラン・ラック・ニエンを懲役一〇月に処する。

被告人陳樂然ことトラン・ラック・ニエンに対し、この裁判が確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社環聯トランサ(以下「被告会社」という)は、東京都新宿区新宿六丁目二七番一二号に本店を置き、旅行業などを目的とする資本金一〇〇〇万円の有限会社であり、被告人陳樂然ことトラン・ラック・ニエン(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、被告会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成五年九月一日から平成六年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四三四二万七四七四円(別紙1の1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年九月二八日、東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号所轄新宿税務署において、同税務署長に対し、所得金額が零で、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成一〇年押第一四六二号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一五五二万五一〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

第二  平成六年九月一日から平成七年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三七七三万六〇二五円(別紙1の2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年一〇月二三日、前記新宿税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が三一九万八二五八円で、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一三三九万一〇〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

第三  平成七年九月一日から平成八年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六二三二万八一七七円(別紙1の3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年一〇月二八日、前記新宿税務署において、同税務署長に対し、所得金額が零で、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二二六一万三〇〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

ものである。

(証拠の標目)

※ 括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。

判示事実全部について

1  被告人の公判供述及び検察官調書(二二通、乙二ないし二三)

2  栗澤巧光(二通、甲二六、二七)及び郭秀珍(一七通、甲二八ないし四一、四四ないし四六)の各検察官調書

3  検察事務官作成の捜査報告書(四通、甲一ないし三、二三)

4  大蔵事務官作成の給料手当調査書(甲四)、旅費交通費調査書(甲五)、通信費調査書(甲六)、賃借料調査書(甲七)、事務用品費調査書(甲八)、水道光熱費調査書(甲九)、支払手数料調査書(甲一〇)、雑費調査書(甲一二)、受取利息調査書(甲一三)、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(甲一五)及び領置てん末書(甲一九)

5  登記官作成の閉鎖登記簿謄本(乙二六)

判示第一及び第二の各事実について

6  大蔵事務官作成の顧問料調査書(甲一一)

判示第一及び第三の各事実について

7  大蔵事務官作成の繰越欠損金当期控除額調査書(甲一六)

判示第一事実について

8  押収してある法人税確定申告書(平成一〇年押第一四六二号の1)

判示第二及び第三の各事実について

9  検察事務官作成の捜査報告書(甲一四)

判示第二事実について

10  大蔵事務官作成の申告欠損金調査書(甲一七)

11  押収してある法人税確定申告書(同押号の2)

判示第三事実について

12  押収してある法人税確定申告書(同押号の3)

(法令の適用)

罰条

被告会社につき いずれも法人税法一六四条一項、平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項、法人税法一五九条二項(情状による)

被告人につき いずれも平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項

刑種の選択

被告人につき いずれも懲役刑

併合罪の処理

被告会社につき 刑法四五条前段、四八条二項

被告人につき 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第三の罪の刑に法定の加重)

執行猶予

被告人につき 刑法二五条一項

訴訟費用 刑訴法一八一条一項本文

(量刑の理由)

本件は、被告人が経営する旅行業等を目的とする被告会社が三事業年度にわたって合計五一五二万円あまりの法人税を免れた過少申告ほ脱の事案であるが、ほ脱額は少なくなく、ほ脱率については各年度とも一〇〇パーセントである。その手段も、実際には被告会社が旅行会社から直接ツアーを引き受けたのに、外国の別法人が引き受け、被告会社には一部手数料が入るにすぎないように装って売上の一部を除外をしたり、本件により得た簿外留保金につき預り金である旨の書類を作成するなど、悪質なものである。本件の動機につき、被告人は、為替変動等による業績悪化に備えたり、母国のために日本と母国の合弁会社を設立する資金、家族の生活費等が欲しかった旨供述しているが、業績悪化に備える資金は正規の納税をした後の余剰資金を充てるべきであり、その余の点についてはそもそも会社の資金をそうした目的のために支出すること自体許されるべきでなく、いずれも斟酌すべき動機とはいえない。被告人は、税理士から再三にわたって、申告漏れがないか尋ねられたり、きちんと帳簿の整備等をするよう指導されていたにもかかわらず、これに従わず、また、本件により得た簿外留保金をマンションの購入その他個人的使途に充てるなど、犯情は悪質である。被告会社及び被告人の刑事責任は軽視できない。

しかし、被告会社が修正申告の上本税その他を完納していること、被告人が事実を認め、今後被告会社の経営を続ける場合には税理士の指導に従って帳簿の整備等を行い正しい申告をする旨供述するなどして反省の態度を示していること、被告会社及び被告人に前科のないことなど、両者のために酌むべき事情も存するので、以上の諸事情を総合考慮の上、主文の各刑が相当と判断した(求刑-被告会社・罰金一五〇〇万円、被告人・懲役一〇月)。

(検察官永村俊朗、私選弁護人若旅一夫、髙柳幸一各出席)

(裁判官 保坂直樹)

別紙1の1

修正損益計算書

自 平成5年9月1日

至 平成6年8月31日

有限会社環聯トランサ

<省略>

別紙1の2

修正損益計算書

自 平成6年9月1日

至 平成7年8月31日

有限会社環聯トランサ

<省略>

別紙1の3

修正損益計算書

自 平成7年9月1日

至 平成8年8月31日

有限会社環聯トランサ

<省略>

別紙2

ほ脱税額計算書

自 平成5年9月1日

至 平成6年8月31日

有限会社環聯トランサ

<省略>

自 平成6年9月1日

至 平成7年8月31日

<省略>

自 平成7年9月1日

至 平成8年8月31日

<省略>

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