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東京地方裁判所 平成10年(特わ)410号 1998年8月25日

本店所在地

東京都板橋区蓮根二丁目一九番二七号

株式会社成日

右代表者代表取締役

太田承勇

国籍

大韓民国

住居

神奈川県大和市鶴間二丁目一五番三号

職業

会社役員

大田奎こと宋文奎

一九三六年四月一八日生

主文

被告人株式会社成日を罰金三二〇〇万円に、被告人大田奎こと宋文奎を懲役一年六月に処する。

被告人大田奎こと宋文奎に対し、この裁判が確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社成日(以下「被告会社」という)は、東京都板橋区蓮根二丁目一九番二七号(平成九年六月一日以前は東京都板橋区蓮根二丁目七番二号)に本店を置き、ぱちんこの換金用景品の卸売等を目的とする資本金一二〇〇万円の株式会社であり、被告人大田奎こと宋文奎(以下「被告人宋」という)は、被告会社の代表取締役として、被告会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人宋は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空給料手当を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成四年八月一日から平成五年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億一八〇三万一二二三円(別紙1の1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年九月二七日、東京都板橋区大山東町三五番一号所在の所轄板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一三七二万六一一三円で、これに対する法人税額が四〇九万六九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成一〇年押第九八一号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四三二一万一三〇〇円と右申告税額との差額三九一一万四四〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

第二  平成五年八月一日から平成六年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八六五五万〇一二七円(別紙1の2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年九月二七日、前記板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一二三六万〇六〇〇円で、これに対する法人税額が三七〇万一八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三一五二万三一〇〇円と右申告税額との差額二七八二万一三〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

第三  平成六年八月一日から平成七年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億八七〇五万四一五〇円(別紙1の3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年一〇月二日、前記板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一四九八万九八一七円で、これに対する法人税額が四六五万六二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額六九一八万〇五〇〇円と右申告税額との差額六四五二万四三〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

ものである。

(証拠の標目)

※ 括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。

判示事実全部について

1  被告人大田奎こと宋文奎の公判供述及び検察官調書(五通、乙二ないし六)

2  荒井高弘(甲一三)及び太田承勇こと宋勇(甲一四)の各検察官調書

3  大蔵事務官作成の売上高調査書(甲一)、期首商品棚卸高調査書(甲三)、仕入高調査書(甲四)、期末商品棚卸高調査書(甲五)、給料手当調査書(甲六)、賞与引当金繰入調査書(甲七)、支払手数料調査書(甲八)、受取利息調査書(甲九)、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(甲一一)及び領置てん末書(甲一九)

4  検察事務官作成の捜査報告書(二通、甲一二、一五)

5  検察事務官作成の報告書(二通、甲二三、二四)

6  登記官作成の商業登記簿謄本(乙七)及び閉鎖登記簿謄本(二通、乙八、九)

判示第一事実について

7  大蔵事務官作成の売上値引・戻り高調査書(甲二)

8  押収してある法人税確定申告書株式会社成日5/7期分一袋(平成一〇年押第九八一号の1)

判示第二、第三事実について

9  大蔵事務官作成の雑損失調査書(甲一〇)

判示第二事実について

10  押収してある法人税確定申告書株式会社成日6/7期分一袋(同押号の2)

判示第三事実について

11  押収してある法人税確定申告書株式会社成日7/7期分一袋(同押号の3)

(法令の適用)

罰条

被告会社につき いずれも法人税法一六四条一項、平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項、法人税法一五九条二項(情状による)

被告人宋につき いずれも平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項

刑種の選択

被告人宋につき いずれも懲役刑

併合罪の処理

被告会社につき 刑法四五条前段、四八条二項

被告人宋につき 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第三の罪の刑に法定の加重)

執行猶予

被告人宋につき 刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、被告人宋が経営するぱちんこの換金用景品の卸売等を目的とする被告会社が三事業年度にわたって合計一億三一四六万円の法人税を免れた過少申告ほ脱の事案であるが、ほ脱額は少なくなく、ほ脱率も各年度とも九〇パーセント前後と高率である。犯行態様は、景品交換所から仕入れた換金用景品をぱちんこ店に卸販売する取引について、決算書及び確定申告書を作成するにあたって税理士に対し売上除外の割合を指示して実行させたり、架空給与を計上するなど悪質なものである。犯行動機をみても、同業者間の競争が激しく経営が不安定であること、業務の性質上常時現金で多額の運転資金を蓄えておかなければならないこと、将来景品を金製品に変える際の準備金が必要であること、業務に介入してくる暴力団に手を引かせるための金が必要であることなどが挙げられているが、いずれも景品卸業を営むに当たって常に生じうる問題であって、格別斟酌するに値しないものである。被告会社及び被告人宋の刑事責任は軽視できない。

しかし、被告会社は、修正申告の上、本税を完納し、重加算税等についても分割納付中であること、本件を契機として被告人宋が会社代表者の地位を退くとともに、新たな税理士を雇用し、決算期以外にも定期的な指導を受けるなど会計処理の適正化を図っていること、被告人宋が事実を認め反省の態度を示しており、罰金前科一犯があるのみであるなど、被告会社及び被告人宋のために酌むべき事情も存するので、以上の諸事情を総合考慮の上、主文の刑が相当と判断した(求刑 被告会社・罰金四〇〇〇万円、被告人宋・懲役一年六月)。

(検察官千葉雄一郎、私撰弁護人西山彬、江村正之各出席)

(裁判官 保坂直樹)

別紙1の1

修正損益計算書

株式会社成日

自 平成4年8月1日

至 平成5年7月31日

No.1

<省略>

別紙1の2

修正損益計算書

株式会社成日

自 平成5年8月1日

至 平成6年7月31日

No.2

<省略>

別紙1の3

修正損益計算書

株式会社成日

自 平成6年8月1日

至 平成7年7月31日

No.3

<省略>

別紙2

ほ脱税額計算書

株式会社成日

自 平成4年8月1日

至 平成5年7月31日

<省略>

株式会社成日

自 平成5年8月1日

至 平成6年7月31日

<省略>

株式会社成日

自 平成6年8月1日

至 平成7年7月31日

<省略>

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