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東京地方裁判所 平成10年(特わ)411号 1998年6月16日

本店所在地

東京都江戸川区松島二丁目一一番一七号

株式会社デュオ

(右代表者代表取締役 冠秀雄)

本籍

東京都文京区本郷五丁目二九番地

住居

東京都江戸川区松島二丁目一一番一七号

職業

会社役員

冠秀雄

昭和三一年七月九日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官岩山伸二、弁護人飯島澄雄各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社デュオを罰金一〇〇〇万円に、被告人冠秀雄を懲役一〇月に処する。

被告人冠秀雄に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社株式会社デュオ(以下、「被告会社」という)は、東京都江戸川区松島二丁目一一番一七号に本店を置き、一般貨物自動車運送事業等を目的とする資本金三〇〇〇万円の株式会社であり、被告人冠秀雄(以下、「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として被告会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  平成五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三一九九万四八七一円(別紙1の修正損益計算書及び修正運送原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成六年二月二八日、東京都江戸川区平井一丁目一六番一一号所在の所轄江戸川税務署(平成七年七月一〇日、名称変更により江戸川北税務署)において、江戸川税務署長に対し、所得金額が二五七万二〇五三円で、これに対する法人税額が六四万九二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成一〇年押第六〇四号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一一一六万六八〇〇円と右申告税額との差額一〇五一万七六〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五一七四万三四五六円(別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成七年二月二七日、前記江戸川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七九三万七二七五円で、これに対する法人税額が二二二万二三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成一〇年押第六〇四号の2)を提出し、法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一八六四万三六〇〇円と右申告税額との差額一六四二万一三〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五七九二万九八三四円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成八年二月二三日、前記江戸川北税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九九一万八八七六円で、これに対する法人税額が二九五万九二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成一〇年押第六〇四号の3)を提出し、法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二〇九六万三三〇〇円と右申告税額との差額一八〇〇万四一〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、傭車費調査書、雑費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、損金の額に算入した都道府県民税利子調査書及び事業税認定損調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書(事業税認定損)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の接待交際費調査書、繰越欠損金当期控除額調査書及び報告書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成一〇年押第六〇四号の1)

判示第二及び第三の各事業について

一  萩原心次の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の法定福利費調査書、燃料費調査書及び修繕費調査書

判示第二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成一〇年押第六〇四号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の広告宣伝費調査書、保険料調査書、減価償却費調査書及び車両売却益調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成一〇年押第六〇四号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

2  被告人

いずれも法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第三の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、一般貨物自動車運送事業等を目的とする被告会社の代表取締役である被告人が、同社の法人税をほ脱した事案である。ほ脱税額は、三事業年度にわたって合計四四九四万円余にのぼり、ほ脱率は、通算で八八・五パーセントに達しており、軽微とはいえない。被告人は、本件の動機について、事業を拡大するための資金をより多く蓄えようとしたと供述するが、そのような事情があったとしても脱税が認められるものではなく、動機に酌量の余地はない。その方法は、売上除外、傭車費の架空計上、減価償却費の架空計上、雑収入の除外等多岐にわたり、手段も、あらかじめ売上除外のための預金口座を設けたりするなど、巧妙、計画的であり、継続性も認められ、悪質である。これらの事情に照らすと、被告人及び被告会社の刑事責任は軽視できない。

しかし、被告会社は、その後修正申告の上本件に関する本税、重加算税、延滞税等を完納していること、株主でもある取引先会社と経理事務の委託契約を締結し、その社員に出向してもらうなど、経理体制の改善を行っていること、被告人は、本件の調査及び捜査に協力し、真摯な反省の態度を示し、当公判廷において、今後再び罪を犯さない旨誓っていること、被告人に前科前歴がないことなど、被告人及び被告会社のために酌むべき事情も認められる。

そこで、以上の諸事情を総合考慮し、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金一三〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 池田耕平)

別紙1

修正損益計算書

自 平成5年1月1日

至 平成5年12月31日

株式会社デュオ

<省略>

修正運送原価報告書

<省略>

別紙2

修正損益計算書

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

株式会社デュオ

<省略>

別紙3

修正損益計算書

自 平成7年1月1日

至 平成7年12月31日

株式会社デュオ

<省略>

別紙4

ほ脱税額計算書

自 平成5年1月1日

至 平成5年12月31日

株式会社デュオ

<省略>

ほ脱税額計算書

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

株式会社デュオ

<省略>

ほ脱税額計算書

自 平成7年1月1日

至 平成7年12月31日

株式会社デュオ

<省略>

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