東京地方裁判所 平成10年(特わ)946号 1998年7月23日
本店所在地
東京都江東区塩浜二丁目一七番一九号
有限会社大雅
(右代表者取締役 昌山鉉)
国籍
大韓民国
住居
千葉県市川市北方二丁目一番四号
会社役員
昌山鉉こと曺朝鉉
一九四五年一月三一日生
右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官福垣内進並びに弁護人(私選)中島鈆三及び同神宮壽雄各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人有限会社大雅を罰金二六〇〇万円に、被告人昌山鉉こと曺朝鉉を懲役一年六月に処する。
被告人昌山鉉こと曺朝鉉に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人有限会社大雅(以下「被告会社」という。)は、東京都江東区塩浜二丁目一七番一九号に本店を置き、ぱちんこの換金景品の販売業等を営む資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人昌山鉉こと曺朝鉉は、被告会社の取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人曺は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 平成四年一〇月一日から平成五年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億三二六万三六二三円であった(別紙1の修正損益計算書参照)にもかかわらず、同年一一月三〇日、東京都江東区猿江二丁目一六番一二号所轄江東西税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が一九一七万一一一四円で、これに対する法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成一〇年押第八七七号の1)を提出し、そのまま法廷納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三七九四万九六〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れた。
第二 平成五年一〇月一日から平成六年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億四一二九万七〇五九円であった(別紙2の修正損益計算書参照)にもかかわらず、同年一一月三〇日、前記江東西税務署において、同税務署長に対し、所得金額が零で、これに対する法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額五二二一万六一〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れた。
第三 平成六年一〇月一日から平成七年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四四一七万九四九八円であった(別紙3の修正損益計算書参照)にもかかわらず、同年一一月三〇日、前記江東西税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が三一五六万八〇五六円で、これに対する法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一五七八万九八〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れた。
(証拠の標目)〔括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。〕
判示事実全部について
一 被告人の公判供述、検察官調書六通(乙2ないし7)
一 海本英徳こと黄英徳(四通)、金川東哲こと金東哲、亀倉良之助の検察官調書(甲27ないし32)
判示冒頭の事実について
一 被告人の検察官調書(乙1)
一 履歴事項全部証明書(乙10)
判示第一ないし第三の各事実について
一 捜査報告書七通(甲1、4、8、14、17、19)
一 期首商品棚卸高調査書、期末商品棚卸高調査書、給料手当調査書、水道光熱費調査書、諸会費調査書、支払手数料調査書、雑費調査書、受取利息調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(甲3、5、6、9、13、15、16、18、23)
一 証拠品提出書(甲33)
一 領置てん末書(甲34)
判示第一、第二の各事実について
一 売上高調査書(甲2)
判示第一、第三の各事実について
一 消耗品費調査書、申告欠損調査書(甲11、25)
判示第一の事実について
一 法人税確定申告書(5/9期)(甲35・平成一〇年押第八七七号の1)
判示第二、第三の各事実について
一 接待交際費調査書、租税公課調査書、有価証券売買益調査書(甲7、10、20)
判示第二の事実について
一 支払利息調査書(甲21)
一 法人税確定申告書(6/9期)(甲36・平成一〇年押第八七七号の2)
判示第三の事実について
一 賃借料調査書、貸倒損失調査書、交際費等の損金不算入額調査書(甲12、22、24)
一 法人税確定申告書(7/9期)(甲37・平成一〇年押第八七七号の3)
(法令の適用)
一 罰条
1 被告会社 第一ないし第三の各事実につき、法人税法一六四条一項、平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項、法人税法一五九条二項(情状による)
2 被告人曺 第一ないし第三の各行為につき、平成一〇年法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項
二 刑種の選択 被告人曺につき、懲役刑を選択
三 併合罪の処理
1 被告会社 刑法四五条前段、四八条二項
2 被告人曺 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第二の罪の刑に法定の加重)
三 刑の執行猶予 被告人曺につき、刑法二五条一項
(量刑事情)
本件は、ぱちんこの換金景品の販売業等を営む被告会社の取締役であり、被告会社の業務全般を統括していた被告人曺が、被告会社の業務に関し、営業店舗の売上を除外するなどして、三事業年度にわたり、法人税をほ脱した事案である。
被告人曺は、本件において、将来の事業拡大のための資金や両親の自宅建築資金等を蓄えるために、納税の義務を不当に免れていたもので、動機において酌量の余地はなく、その手口は経営する景品交換所四店及びそば店の売上等を一切決算報告書に計上せず、被告会社の所得金額が零円ないし赤字である旨の虚偽の申告をするという大胆で悪質なものであり、ほ脱税額は合計一億五九五万五五〇〇円と高額である上、ほ脱率も一〇〇パーセントであって、結果も看過できず、動機、態様、結果に照らし、犯情は悪質であり、被告人らの刑事責任は重い。
他方、被告会社においては、既に修正申告の上、本件に関する本税合計金一億五六六四万三〇〇〇円及び地方税のうち延滞金を除く合計金九七三六万九一〇〇円を納付済みであり、未納分についても納付される見込みであること、被告人曺は、被告会社の経営体制を改め、今後は税理士に一任して正当な税額を納付する旨を誓約し、反省の態度を示していること、被告会社には前科前歴がなく、被告人曺にも同種前科がないことなど被告人らにとって有利に斟酌すべき事情も存するので、これらの諸事情を総合考慮し、被告人曺に対しては、社会内での自力更生の機会を与えるのが相当であると判断し、主文のとおり量刑した次第である。
〔求刑-被告会社につき、罰金三〇〇〇万円 被告人曺につき、懲役一年六か月〕
(裁判官 成川洋司)
別紙1
修正損益計算書
自 平成4年10月1日
至 平成5年9月31日
有限会社大雅
<省略>
別紙2
修正損益計算書
自 平成5年10月1日
至 平成6年9月31日
有限会社大雅
<省略>
別紙3
修正損益計算書
自 平成6年10月1日
至 平成7年9月31日
有限会社大雅
<省略>
別紙4
ほ脱税額計算書
自 平成4年10月1日
至 平成5年9月30日
有限会社大雅
<省略>
ほ脱税額計算書
自 平成5年10月1日
至 平成6年9月30日
有限会社大雅
<省略>
ほ脱税額計算書
自 平成6年10月1日
至 平成7年9月30日
有限会社大雅
<省略>