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東京地方裁判所 平成10年(行ウ)72号 判決 2001年2月27日

主文

一  被告が原告P1に対し平成一〇年一月二八日付けでした別紙目録一1記載の土地に係る平成九年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査申出に対する決定を取り消す。

二  被告が原告P2に対し平成一〇年一月二八日付けでした別紙目録三1記載の土地に係る平成九年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査申出に対する決定を取り消す。

三  原告P2のその余の請求及び原告P3の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、被告に生じた費用の四分の一と原告P2に生じた費用の二分の一とを原告P2の負担とし、被告に生じた費用の四分の一と原告P3に生じた費用とを原告P3の負担とし、その余を被告の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  原告らの請求

1  主文一、二項と同旨

2  被告が原告P2に対し平成一〇年一月二八日付けでした別紙目録二1記載の土地に係る平成九年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査申出に対する決定を取り消す。

3  被告が原告P3に対し平成一〇年一月二八日付けでした別紙目録四1記載の土地に係る平成九年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査申出に対する決定を取り消す。

二  被告の答弁

1  本案前の答弁

本件訴えのうち原告P3の訴えを却下する。

2  本案の答弁

原告らの請求をいずれも棄却する。

第二事案の概要

本件は、原告らがその所有に係る各土地の平成九年度の土地課税台帳に登録された価格が「適正な時価」を上回ると主張して、審査申出を棄却した被告の各決定の取消しを求めている事案である。

一  前提となる事実(各項末尾掲記の証拠等により認められる。)

1  原告P1は別紙目録一1記載の土地(以下「本件土地一」という。)を、原告P2は同日録二1記載の土地(以下「本件土地二」という。)及び同目録三1記載の土地(以下「本件土地三」という。)を、原告P3は同目録四1記載の土地(以下「本件土地四」といい、本件土地一、本件土地二及び本件土地三と併せて「本件各土地」という。)を所有し、それぞれ所有する土地の固定資産税の納税義務者である。

(争いがない事実)

2  東京都知事は、平成九年三月三一日、本件各土地の平成九年度の価格を別紙目録の一ないし四の各2記載のとおり決定し、東京都板橋都税事務所長は、同日、右各価格を土地課税台帳に登録した(なお、本件土地二の価格は、同年七月三一日に修正された価格である。)。

(甲五ないし同一一)

3  原告らは、同年四月一五日、被告に対して、右各価格を不服として審査申出をしたが、被告は、平成一〇年一月二八日、右審査申出をいずれも棄却する決定をした(以下、個別に、各決定に係る本件各土地の番号を付して、順次「本件決定一」、「本件決定二」のようにいい、総称して「本件各決定」という。)。

(甲九ないし同一一)

二  法令の定め等

1  固定資産(土地)評価に関する地方税法(以下「法」という。)の規定等

(一) 土地に対して課する基準年度(本件では平成九年度である。)の固定資産税の課税標準は、当該固定資産の基準年度に係る賦課期日(当該年度の初日の属する年の一月一日、本件では平成九年一月一日である。法三五九条)における価格であり、右価格とは「適正な時価」(法三四一条五号)であって、土地課税台帳又は土地補充課税台帳(以下、これらを併せて「土地課税台帳」という。)に登録されたものである(法三四九条一項)。

(二) 土地課税台帳に登録される価格(以下、この価格を「登録価格」という。)の決定に際しての固定資産の評価については、自治大臣が、評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を定め、告示しなければならないものとされ(法三八八条一項前段)、固定資産評価基準(昭和三八年自治省告示第一五八号。以下「評価基準」という。)が告示されている。

そして、市町村長(東京都の特別区においては、法七三四条一項の規定により、東京都知事。以下同じ。)は評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないとされ(法四〇三条一項)、固定資産の価格等を決定し、価格等を登録した場合には、その結果の概要調書を作成し、毎年四月中にこれを道府県知事に送付しなければならず(法四一八条)、道府県知事は右価格の決定が評価基準によって行われていないと認める場合においては、当該市町村長に対し、登録価格を修正して登録するよう勧告するものとされ、自治大臣は右勧告をするよう指示するものとされている(法四一九条一項、四二二条の二第一項)。

評価基準の取扱いに関しては、自治事務次官の依命通達(「固定資産評価基準の取扱いについて」昭和三八年一二月二五日自治乙固発第三〇号。以下「取扱通達」という。)が発せられている。

なお、自治大臣は、市町村長に対して、固定資産の評価に関する資料の作成又は助言による技術的援助を与えなければならず、また、道府県知事も、自治大臣の作成した資料の使用方法についての指導又は評価についての助言を与えなければならない(法三八八条三項、四〇一条)とされているが、これらは、自治大臣又は道府県知事に市町村の徴税吏員又は固定資産評価員に対する指揮権限を与えるものではない(法四〇二条)。

(三) 市町村長は、固定資産評価員から所定の手続による土地の評価に係る評価調書を受理したときは、毎年二月末日までに評価基準によって固定資産の価格等を決定し、これを土地課税台帳に登録しなければならない(法四一〇条、四一一条一項)。

2  評価基準が定めている宅地の評価方法の概要は、平成九年度においては、次のとおりである。

(一) 地目の現況が宅地である場合の土地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法による。

(評価基準第1章第1節一、第1章第3節一)

なお、本件各土地での評点一点当たりの価額は一円である。

(二) 各筆の評点数は、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」によって、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地については「その他の宅地評価法」によって付設する。

(評価基準第1章第3節二)

(三) 「市街地宅地評価法」による宅地の評点数の付設

(1) 市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区等に区分し、当該各地区について、街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等からみて相当に相違する地域ごとに区分し(以下、右のとおり区分される状況が類似した地域を「状況類似地区」という。)、当該地域の主要な街路に沿接する宅地のうち、奥行、間口、形状等の状況が当該地域において標準的なものと認められる標準宅地を選定する。

(評価基準第1章第3節二(一)1(1)、第1章第3節二(一)2)

(2) 右標準宅地について、売買実例価額から評定する適正な時価を求め、これに基づいて当該標準宅地の沿接する主要な街路について路線価を付設し、これに比準して主要な街路以外のその他の街路の路線価を付設するものとする。その際には、近傍の主要な街路の路線価を基礎とし、主要な街路に沿接する標準宅地とその他の街路に沿接する宅地との間における宅地の利用上の便等の相違を総合的に考慮する。

(評価基準第1章第3節二(一)1(2)、第1章第3節二(一)3(2))

(3) そして、各筆の宅地の評点数は、その沿接する路線価を基礎とし、各筆につき評価の対象とすべき画地を認定し、奥行のある土地、正面と側面あるいは裏面等に路線がある土地等の状況に従って、所定の補正を加える方式(画地計算法)を適用して付設する。

(評価基準第1章第3節二(一)1(3)、別表第3)

(4) なお、宅地の評価において、標準宅地の適正な時価を求める場合には、当分の間、基準年度の初日の属する年の前年の一月一日の地価公示法による地価公示価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格等を活用することとし、これらの価格の七割を目途として評定するものとされている(以下「七割評価基準」という。)。

(評価基準第1章第12節一)

(5) また、平成九年度の宅地の評価においては、市町村長は、平成八年一月一日から同年七月一日までの間に標準宅地等の価格が下落したと認める場合には、評価基準第1章第3節及び第1章第12節一によって求めた評価額に修正を加えることができるものとされている。

(評価基準第1章第12節二)

3  東京都特別区における評価方法

(一) 東京都特別区においては、東京都知事が固定資産の価格を決定するものとされ(法七三四条、四一〇条)、評価の方法については、評価基準を取り込んだ東京都固定資産(土地)評価事務取扱要領(昭和三八年五月二二日三八主課固発第一七四号主税局長決裁。以下「取扱要領」という。)及び東京都土地価格比準表(以下「比準表」という。)によることとされていた。

(乙一、同五の一、二)

(二) また、評価基準第1章第12節二を受けて、各都税事務所長あてに平成九年三月七日付けで東京都主税局長通達「平成九基準年度の固定資産(土地)評価における評価額の修正について」が発出され、価格調査基準日(平成八年一月一日)から同年七月一日までの半年間の地価の変動率を把握のうえ修正率を求めて評価額の修正を行うものとする旨通達された。

そして、右主税局長通達は、右時点修正率の算定方法について、各画地の正面路線が属する状況類似地区の標準宅地の鑑定評価書記載の規準地(鑑定価格を算定する際の基礎とした公示地又は基準地)が公示地の場合、及び右標準宅地が公示地の場合には、当該公示地の平成八年一月一日から同年七月一日までの不動産鑑定による時点修正率をもとに算定する旨定めている(以下、評価基準、取扱通達、取扱要領、比準表及び右主税局長通達を併せて「評価基準等」という。)。

(乙七)

三  本件各決定の根拠(被告の主張。なお、当該事実について当事者間に争いがない事項は、その旨を末尾に記載した。)

1  本件決定一の根拠

(一) 本件土地一の地目

本件土地一の登記及び現況地目はいずれも宅地であり、主として市街地的形態を形成する地域における宅地に該当する。

(争いがない事実)

そこで、被告は、本件決定に当たっては、市街地宅地評価法により評価した。

(二) 本件土地一が属する地域の用途地区区分

本件土地一の付近は、一般的な住宅地であり、戸建住宅が多いが、共同住宅、小店舗、小工場等も混在する場合がある地区に該当する。

(争いがない事実)

そこで、被告は、本件決定に当たっては、本件土地一が属する地域の用途地区区分を低層普通住宅地区として評価した。

(三) 画地認定

「非課税地の存する宅地については、課税地をもって一画地とする。この場合、課税地が非課税地によって分割されているものにあっては、分割されたそれぞれの宅地をもって一画地とする。」とされているところ(取扱要領第九節第3の1(1))、本件土地一は、一筆の土地であるが非課税地によって課税地が南北に分割されていることから、二つの画地に分割して評価することになる(以下、本件土地一の南側の課税地部分である別紙図面1の⑪及び⑫の区画を合わせて「本件土地Ⅰ」といい、本件土地一の北側の課税地部分である同図面の⑬ないし⑮の区画を合わせて「本件土地Ⅱ」という。)。

(四) 角地の評価

本件土地Ⅰ及び本件土地Ⅱは、いずれも正面と側方に路線がある画地(角地)である。

角地の価格は、正面路線のみに接する画地の価格より一般的に高くなるものであるから、正面路線から求めた基本単価を補正する必要があり、具体的には、正面路線のみに接するとした場合の基本単価に、側方路線を正面路線とみなして計算した評点に取扱要領付表2所定の側方路線影響加算率を乗じて求めた評点を加算する。

(五) 本件土地Ⅰについて

(1) 標準宅地の選定

前記の低層普通住宅地区について、状況類似地区ごとに区分したうえで、本件土地Ⅰの所在する地域の標準宅地を選定すると、右標準宅地は板橋区α一一番三に所在する土地(以下「標準宅地a」という。)となる。

(争いがない事実)

(2) 標準宅地aに沿接する主要な街路の路線価

二八万八〇〇〇点

標準宅地aに係る適正な時価については、価格調査基準日である平成八年一月一日時点の不動産鑑定価格四一万二〇〇〇円を活用し、その七割程度の価格をもって二八万八〇〇〇円とし、右価格に基づいて路線価を付設した。

(争いがない事実)

(3) 本件土地Ⅰに沿接する正面路線の路線価 二七万六〇〇〇点

右主要な街路と本件土地Ⅰに沿接する正面路線とを比較し、その格差を街路条件一〇〇パーセント、交通・接近条件九八パーセント、環境条件九八パーセント、行政的条件一〇〇パーセントと算定し、これらを乗じた格差率九六パーセントを前記主要な街路の路線価二八万八〇〇〇点に乗じて、正面路線の路線価を付設した(別表1の①)。

(争いがない事実)

(4) 本件土地Ⅰに沿接する側方路線の路線価 二一万三〇〇〇点右主要な街路と本件土地Ⅰに沿接する側方路線とを比較し、その格差を街路条件七七パーセント、交通・接近条件九八パーセント、環境条件九八パーセント、行政的条件一〇〇パーセントと算定し、これらを乗じた格差率七四パーセントを前記主要な街路の路線価二八万八〇〇〇点に乗じて、側方路線の路線価を付設した(別表1の②)。

(争いがない事実)

(5) 画地計算法に基づく算定

ア 基本単価 二七万〇四八〇点

正面路線から本件土地Ⅰの奥行きは二〇・五メートルであり、奥行き距離を間口距離で除した割合は二以上三未満である。

(争いがない事実)

そこで、取扱要領別表1に基づき奥行価格補正率一・〇〇を、取扱要領付表5に基づき奥行長大補正率〇・九八を、それぞれ正面路線の路線価二七万六〇〇〇点に乗じて、基本単価を算出した(別表1の③)。

イ 側方路線の加算評点 八五二〇点

側方路線から本件土地Ⅰの奥行きは八・五メートルである。

(争いがない事実)

そこで、取扱要領別表1に基づき奥行価格補正率〇・九七を、取扱要領付表2に基づき側方路線影響加算率〇・〇四を、それぞれ側方路線の路線価二一万三〇〇〇点に乗じて、加算評点を算出した(別表1の④)。

ウ 平成八年一月一日から同年七月一日までの時点修正率 〇・九八

本件土地Ⅰに沿接する正面路線が属する状況類似地区の標準宅地aの規準地は公示地(板橋―一四)であるから、右規準地の同年一月一日から同年七月一日までの六箇月間の時点修正率マイナス二パーセントをもって算出した。

(争いがない事実)

エ 本件土地Ⅰの評価額 四七〇〇万九一〇〇円

前記アの基本単価に前記イの加算評点を加算し(別表1の⑤)、次いで、前記ウの時点修正率(同表の⑥)及び地積を乗じ(同表の⑦)、最後に評点一点当たりの価格一円を乗じて算定した(同表の⑧)。

(六) 本件土地Ⅱについて

(1) 本件土地Ⅱに沿接する正面路線の路線価 二七万六〇〇〇点

右正面路線は本件土地Ⅰに沿接する正面路線と一致する。

(争いがない事実)

(2) 本件土地Ⅱに沿接する側方路線の路線価 二一万三〇〇〇点

右側方路線は本件土地Ⅰに沿接する側方路線と一致する。

(争いがない事実)

(3) 画地計算法に基づく算定

ア 基本単価 二七万〇四八〇点

正面路線から本件土地Ⅱの奥行きは二三・〇メートルであり、奥行き距離を間口距離で除した割合は二以上三未満である。

(争いがない事実)

そこで、取扱要領別表1に基づき奥行価格補正率一・〇〇を、取扱要領付表5に基づき奥行長大補正率〇・九八を、それぞれ正面路線の路線価二七万六〇〇〇点に乗じて、基本単価を算出した(別表1の⑨)。

イ 側方路線の加算評点 八五二〇点

側方路線から本件土地Ⅱの奥行きは八・〇メートルである。

(争いがない事実)

そこで、取扱要領別表1に基づき奥行価格補正率〇・九七を、取扱要領付表2に基づき側方路線影響加算率〇・〇四を、それぞれ側方路線の路線価二一万三〇〇〇点に乗じて、加算評点を算出した(別表1の⑩)。

ウ 平成八年一月一日から同年七月一日までの時点修正率 〇・九八

本件土地Ⅱに沿接する正面路線が属する状況類似地区の標準宅地aの規準地の時点修正率(前記(五)(5)ウ)をもって算出した。

(争いがない事実)

エ 本件土地Ⅱの評価額 五〇〇八万五〇七〇円

前記アの基本単価に前記イの加算評点を加算し(別表1の⑪)、次いで、前記ウの時点修正率(同表の⑫)及び地積を乗じ(同表の⑬)、最後に評点一点当たりの価格一円を乗じて算定した(同表の⑭)。

(七) 本件土地一の価格 九七〇九万四一七〇円

本件土地Ⅰ及び本件土地Ⅱの各価格を加算した(別表1の⑮)。

2  本件決定二の根拠

(一) 本件土地二の地目

本件土地二の登記及び現況地目はいずれも宅地であり、主として市街地的形態を形成する地域における宅地に該当する。

そこで、被告は、本件決定に当たっては、市街地宅地評価法により評価した。

(二) 本件土地二が属する地域の用途地区区分

本件土地二の付近は、一般的な住宅地であり、戸建住宅が多いが、共同住宅、小店舗、小工場等も混在する場合がある地区に該当する。

(争いがない事実)

そこで、被告は、本件決定に当たっては、本件土地二が属する地域の用途地区区分を低層普通住宅地区として評価した。

(三) 角地の評価

本件土地二は、正面と側方に路線がある画地(角地)である。

角地の価格は、前記1(四)のとおり算定することとなる。

(四) 標準宅地の選定

前記の低層普通住宅地区について、状況類似地区ごとに区分したうえで、本件土地二の所在する地域の標準宅地を選定すると、右標準宅地は板橋区α七番一三に所在する土地(以下「標準宅地b」という。)となる。

(争いがない事実)

(五) 標準宅地bに沿接する主要な街路の路線価 二九万八〇〇〇点

標準宅地bに係る適正な時価については、価格調査基準日である平成八年一月一日時点の地価公示価格四二万七〇〇〇円を活用し、その七割程度の価格をもって二九万八〇〇〇円とし、右価格に基づいて、路線価を付設した。

(争いがない事実)

(六) 本件土地二に沿接する正面路線の路線価

(1) 比準表による付設路線価 三〇万六〇〇〇点

右主要な街路と本件土地二に沿接する正面路線とを比較し、その格差を街路条件一〇二パーセント、交通・接近条件一〇一パーセント、環境条件一〇〇パーセント、行政的条件一〇〇パーセントと算定し、これらを乗じた格差率一〇三パーセントを前記主要な街路の路線価二九万八〇〇〇点に乗じて付設することとなる(別表2の①)。

(争いがない事実)

(2) 修正路線価 二七万六〇〇〇点

本件土地二は都市計画法により決定された都市計画緑地の予定地である。

(争いがない事実)

そこで、前記(1)の比準表による付設路線価の一〇パーセント程度を限度に減価した(別表2の②)。

(七) 本件土地二に沿接する側方路線の路線価

(1) 比準表による付設路線価 二八万九〇〇〇点

右主要な街路と本件土地二に沿接する側方路線とを比較し、その格差を街路条件九八パーセント、交通・接近条件一〇一パーセント、環境条件九八パーセント、行政的条件一〇〇パーセントと算定し、これらを乗じた格差率九七パーセントを前記主要な街路の路線価二九万八〇〇〇点に乗じて付設することとなる(別表2の

③ )。

(争いがない事実)

(2) 修正路線価 二六万〇〇〇〇点

本件土地二は都市計画法により決定された都市計画緑地の予定地である。

(争いがない事実)

そこで、前記(1)の比準表による付設路線価の一〇パーセント程度を限度に減価した(別表2の④)。

(八) 画地計算法に基づく算定

(1) 基本単価

二七万〇四八〇点

正面路線から本件土地二の奥行きは三〇・五メートルである。

(争いがない事実)

そこで、取扱要領別表1に基づき奥行価格補正率〇・九八を正面路線の路線価二七万六〇〇〇点に乗じて、基本単価を算出した(別表2の⑤)。

(2) 側方路線の加算評点 一万〇四〇〇点

側方路線から本件土地二の奥行きは三〇・五メートルである。

(争いがない事実)

そこで、取扱要領別表1に基づき奥行価格補正率〇・九八を、取扱要領付表2に基づき側方路線影響加算率〇・〇四を、それぞれ側方路線の路線価二六万点に乗じて、加算評点を算出した(別表2の⑥)。

(3) 平成八年一月一日から同年七月一日までの時点修正率〇・九九本件土地二に沿接する正面路線が属する状況類似地区の標準宅地bは公示地(板橋―五)であるから、右公示地の同年一月一日から同年七月一日までの六箇月間の時点修正率マイナス一パーセントをもって算出した。

(争いがない事実)

(4) 本件土地二の評価額 二億六一〇六万四一七〇円

前記(1)の基本単価に前記(2)の加算評点を加算し(別表2の⑦)、次いで、前記(3)の時点修正率(同表の⑧)及び地積を乗じ(同表の⑨)、最後に評点一点当たりの価格一円を乗じて算定した(同表の⑩)。

3  本件決定三の根拠

(一) 本件土地三の地目

本件土地三の登記及び現況地目はいずれも宅地であり、主として市街地的形態を形成する地域における宅地に該当する。

そこで、被告は、本件決定に当たっては、市街地宅地評価法により評価した。

(二) 本件土地三が属する地域の用途地区区分

本件土地三の付近は、一般的な住宅地であり、戸建住宅が多いが、共同住宅、小店舗、小工場等も混在する場合がある地区に該当する。

(争いがない事実)

そこで、被告は、本件決定に当たっては、本件土地三が属する地域の用途地区区分を低層普通住宅地区として評価した。

(三) 画地認定

本件土地三は、板橋区β四番二六(以下「四番二六の土地」という。)及び同番二七(以下「四番二七の土地」という。)と合わせて一画地と認定される土地である(以下、右三筆の土地を併せて「本件画地三」という。)。

(四) 標準宅地の選定

前記の低層普通住宅地区について、状況類似地区ごとに区分したうえで、本件土地三の所在する地域の標準宅地を選定すると、右標準宅地は標準宅地bとなる。

(争いがない事実)

(五) 本件画地三に沿接する正面路線の路線価 三〇万六〇〇〇点

標準宅地bに沿接する主要な街路と本件画地三に沿接する正面路線とを比較し、その格差を街路条件一〇二パーセント、交通・接近条件一〇一パーセント、環境条件一〇〇パーセント、行政的条件一〇〇パーセントと算定し、これらを乗じた一〇三パーセントを主要な街路の路線価二九万八〇〇〇点(前記2(五))に乗じて、正面路線の路線価を付設した(別表3の①)。

(争いがない事実)

(六) 画地計算法に基づく算定

(1) 時点修正前の単位地積当たりの評点 二六万九二八〇点

正面路線から本件画地三の奥行きは二八・〇メートルであり、また、本件画地三の形状は不整形なものである。

(争いがない事実)

そこで、取扱要領別表1に基づき奥行価格補正率〇・九八を、取扱要領付表10に基づき不整形地補正率〇・九〇を、それぞれ正面路線の路線価三〇万六〇〇〇点に乗じて、時点修正前の単位地積当たりの評点を算出した(別表3の②)。

(2) 平成八年一月一日から同年七月一日までの時点修正率

〇・九九

本件画地三に沿接する正面路線が属する状況類似地区の標準宅地bの時点修正率(前記2(八)(3))をもって算出した。

(争いがない事実)

(3) 本件土地三の評価額 一七九六万五二九〇円

前記(1)の単位地積当たりの評点に、前記(2)の時点修正率(別表3の③)及び地積を乗じ(同表の④)、さらに評点一点当たりの価格一円を乗じて算定した(同表の⑤)。

4  本件決定四の根拠

(一) 本件土地四の地目

本件土地四の登記及び現況地目はいずれも宅地であり、主として市街地的形態を形成する地域における宅地に該当する。

そこで、被告は、本件決定に当たっては、市街地宅地評価法により評価した。

(二) 本件土地四が属する地域の用途地区区分

本件土地四の付近は、一般的な住宅地であり、戸建住宅が多いが、共同住宅、小店舗、小工場等も混在する場合がある地区に該当する。

(争いがない事実)

そこで、被告は、本件決定に当たっては、本件土地四が属する地域の用途地区区分を低層普通住宅地区として評価した。

(三) 角地の評価

本件土地四は、正面と側方に路線がある画地(角地)である。

(争いがない事実)

角地の価格は、前記1(四)のとおり算定することとなる。

(四) 標準宅地の選定

前記の低層普通住宅地区について、状況類似地区ごとに区分したうえで、本件土地四の所在する地域の標準宅地を選定すると、右標準宅地は標準宅地bとなる。

(争いがない事実)

(五) 本件土地四に沿接する正面路線の路線価 三〇万六〇〇〇点

右正面路線は、本件土地三に沿接する正面路線と一致する。

(争いがない事実)

(六) 本件土地四に沿接する側方路線の路線価 三〇万三〇〇〇点

標準宅地bに沿接する主要な街路と本件土地四に沿接する側方路線とを比較し、その格差を街路条件一〇二パーセント、交通・接近条件一〇二パーセント、環境条件九八パーセント、行政的条件一〇〇パーセントと算定し、これらを乗じた格差率一〇二パーセントを主要な街路の路線価二九万八〇〇〇点(前記2(五))に乗じて、側方路線の路線価を付設した(別表4の①)。

(争いがない事実)

(七) 画地計算法に基づく算定

(1) 基本単価 三〇万六〇〇〇点

正面路線から本件土地四の奥行きは一五・五メートルである。

(争いがない事実)

そこで、取扱要領別表1に基づき奥行価格補正率一・〇〇を正面路線の路線価三〇万六〇〇〇点に乗じて、基本単価を算出した(別表4の②)。

(2) 側方路線の加算評点 一万二一二〇点

側方路線から本件土地四の奥行きは二三・〇メートルである。

(争いがない事実)

そこで、取扱要領別表1に基づき奥行価格補正率一・〇〇を、取扱要領付表2に基づき側方路線影響加算率の〇・〇四を、それぞれ側方路線の路線価三〇万三〇〇〇点に乗じて、加算評点を算出した(別表4の③)。

(3) 平成八年一月一日から同年七月一日までの時点修正率〇・九九本件土地四に沿接する正面路線が属する状況類似地区の標準宅地bの時点修正率(前記2(八)(3))をもって算出した。

(争いがない事実)

(4) 本件土地四の評価額 八六四四万四一八〇円

前記(1)の基本単価に前記(2)の加算評点を加算し(別表4の④)、次いで、前記(3)の時点修正率(同表の⑤)及び地積を乗じ(同表の⑥)、最後に評点一点当たりの価格一円を乗じて算定した(同表の⑦)。

四  当事者双方の主張

(原告らの本案の主張)

1 本件決定一について

(一) 画地の認定の誤り

評価基準別表第3の2は、一筆の宅地であっても、その形状、利用状況等からみて、これを一体をなしていると認められる部分に区分する必要がある場合には、その一体をなしている部分の宅地ごとに一画地と認定する旨規定している。

画地計算は、その土地の利用状況に着目して、評価を行うものであり、通常の土地売買も、土地の利用単位によって概ね行われることから、右の評価の単位は適正なものといえる。また、一筆の宅地は、一般的にその全部を一利用単位として使用されている場合が多いけれども、一筆の土地が広大な場合や、逆に狭小な場合には、一筆の土地が一利用単位となっていることは、逆に稀であるから、評価基準では、前記のとおり規定しているのである。

そして、本件土地一は、五区画に区分して五人の借地人に賃貸している土地であり、各区画は、門塀、建物の壁面によって区切られており、これを処分するに当たっては、各区画を他の第三者に対する賃貸部分と分離して、独立した利用単位のものとして処分せざるを得ないから、本件土地一は、形式的には一筆の土地であるが、利用状況からみて五画地(私道部分を除く。)として評価すべきである。

したがって、本件土地一を二画地(私道部分を除く。)と認定した被告の評価は、評価基準に違反し、違法である。

(二) セットバックを要する土地の評価の誤り

本件土地一には、建築基準法四二条二項に定める道路(以下「二項道路」という。)に接している部分があり、建物建築に当たっては、その部分を道路用地として提供し、その部分を除いて建物敷地としなければ、建築確認を得られない。

また、本件土地一は、板橋区街づくり整備計画大谷口地区に該当し、主要生活道路Aの該当箇所等は、建築基準法とは別に、道路中心線から三メートルに相当する線までのセットバックをしなければならないとされ、これに従わないときは、建築確認が得られないという建築制限を受けるものとされている。

このように、セットバックを要する部分は、建物敷地として使用できないという不利益を被ることになり、また、容積率の計算の対象にもならないことから、建物建築に制限を与えるものであるから、正常な条件の下に成立する取引価格、すなわち客観的な交換価値に影響を及ぼすものである。

したがって、セットバックを要する部分については、評価上相当の減額をする必要がある。

(三) 不整形地補正の誤り

評価基準別表第3の7は、不整形地について、「不整形地補正率表」(附表4)によって求めた不整形地補正率を乗じて当該不整形地の単位当たり評点数を算出するものと定めている。

従来、不整形地補正は、担当者によって、ある程度恣意的に行われてきた側面があったため、平成八年自治省告示第一九二号による評価基準の改正により、不整形地評価の公平、簡便化の観点から、蔭地割合方式をとることとされるようになったものであり、右改正について、同年九月三日付け自治固第三九号自治評第三三号自治省税務局長通達「固定資産評価基準の一部改正について」が各都道府県知事あてに発出され、運営上遺漏のないよう管下市町村について指導するよう通達された。

さらに、同日付け自治評第三四号自治省税務局資産評価室長通知「固定資産評価基準の一部改正について」が、各道府県総務部長、東京都総務・主税局長あてに発出され、右通知は、「旧基準における不整形地の評点算出法は、三割以内の評点数を控除するというものであったが、今般、不整形地補正率表を定めたものである。具体的には、想定整形地の地積に対する想定整形地の地積から評価対象画地の地積を控除した地積の割合を蔭地として、その蔭地の割合に応じて不整形地補正率を適用することとしたものである。ただし、蔭地割合による補正率表の適用が困難な場合には、不整形の度合による補正率表を適用するものとする。」と定めており、蔭地割合方式により難い特段の事情がある場合を除き、蔭地割合方式を採用しなければならないことを示している。

そして、不整形地の奥行距離は、想定整形地の奥行距離を限度とする平均的な奥行距離をもって算定されるところ、右算定の過程で想定整形地の奥行距離の検討も行うのであるから、蔭地割合方式により不整形地補正を行うことは困難なことではない。

ところが、右通知にもかかわらず、東京都特別区においては、取扱要領の見直しが行われず、不整形の度合による補正率を採用し続けている。

したがって、本件土地一の画地の中には、正方形又は長方形の整形地ではないものが含まれているから、蔭地割合方式によって不整形地補正を行うべきである。

(四) 以上のとおりであるから、本件土地一の評価額は別紙計算書1のとおり算定すべきである。

2 本件決定二について

(一) 地目認定の誤り

固定資産税評価における地目の認定は、評価基準第1章第1節一において、土地の現況によるとされ、また、取扱通達第2章第1節5においても、土地の地目は土地の現況及び利用状況に重点をおき認定する旨規定されている。右地目の意義は、基本的には不動産登記法上の取扱いと同様であり、具体的には不動産登記事務取扱手続準則(昭和五二年九月三日民三第四四七三号法務省民事局長通達)の定めによるべきである。

そうすると、本件土地二の登記簿上の地目は、宅地とされているが、現況は、建物の敷地として使用している部分と、貸駐車場用地として使用している部分(別紙図面2の赤色部分。駐車場として使用されている部分のうち、自己使用部分及び来客用部分は、建物敷地の補助的なものであることから、除外している。)とがあるから、固定資産税評価上の地目は宅地と雑種地に認定されるべきである。

なお、取扱通達第2章第1節5は、部分的に僅少の差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して認定すると規定しているが、本件土地二の貸駐車場用地部分は、一三一・〇四平方メートルにも及ぶため、右通達にいう部分的に僅少ということはできないし、いわゆるマイホームの駐車場のように付随的な使用状況と異なり、建物の敷地部分とは別個独立した形で使用されている。

したがって、本件土地二全体を宅地と認定した被告の評価は違法である。

(二) 画地認定の誤り

本件土地二の現況は、前記(一)のとおり宅地と雑種地であるため、本来、不動産登記法八一条の二第四項の規定により職権により分筆されるべきものであるが、現実には分筆されていない。

しかし、固定資産評価上は、分筆されていない場合であっても、現況の地目が異なるものであれば、それぞれの地目によりその定められた評価方法に従って評価が行われなければならないとされているので、それぞれ別画地として認定されるべきである。

駐車場としての使用部分が、建物敷地としての使用部分と厳然と区別され、かつ、これを第三者に賃貸しているとすれば、利用の単位としては別区画であり、法律上の原因なくして、所有者の恣意のままに、その使用権を剥奪し、使用部分の占有を排除できないから、その処分に当たっては、これを区分した処理をせざるを得ない。

したがって、建物敷地部分と貸駐車場部分とを一画地と認定した被告の評価は違法である。

(三) 都市計画緑地の予定地の減価の誤り

本件土地二は、都市計画施設(板橋緑地)予定地の指定を受けているが、都市計画施設予定地については、昭和五〇年一〇月一五日付け自治固第九八号東京都総務・主税局長、各道府県総務部長あて自治省税務局固定資産税課長通達「都市計画施設の予定地に定められた宅地等の評価の取扱いについて」において、評価対象地の総地積に対する都市計画施設予定地の地積の割合を考慮して定めた三割を限度とする補正率を適用して、その価額を求めるものとされている。

これは、都市計画施設予定地に指定されると、都市計画法五四条により、階数は二以下で、かつ、地階を有しないこと、及び主要構造部が、木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であることという制限が加えられ、土地の利用に当たっては、十分にその効用が果たせないため、一般の土地に比べて、利用価値が相当減額すると認められるからであり、この土地の利用制限は、都市計画施設すべてに共通するものである。

このような場合に、国税の評価に当っては三〇パーセントの減額がされており、本件土地二についても、公的評価の一元化の観点からも、国税の評価の場合と同様、三〇パーセントの減額がされなければならない。

しかし、取扱要領においては、都市計画施設のうち都市計画街路予定地について、総地積のうち当該予定地積が占める割合に応じて、三割を限度とする減価措置を講じているにもかかわらず、都市計画公園、都市計画緑地等の予定地については、一〇パーセント程度を限度に減価を行うにすぎない。

なお、被告は、都市計画公園予定地であることは、一般に路線価算定の段階で反映されている旨主張するが、本件土地二の属する状況類低地区の標準宅地bは都市計画緑地予定地ではないから、被告主張の右一般論は、本件土地二の評価には妥当しない。

(四) 不整形地補正の誤り

本件土地二のうち、貸駐車場用地部分を除く部分は、不整形地であるから、前記1(三)の理由により、蔭地割合方式による不整形地補正が必要である。

(五) 以上のとおりであるから、本件土地二の評価額は別紙計算書2のⅠのとおり算定すべきである。

3 本件決定三について

(一) 地目の認定の誤り

前記2(一)のとおり、地目の認定は不動産登記実務取扱手続準則に従って行われなければならないところ、本件土地三の現況は資材置場であるから、固定資産税評価上の地目は雑種地となる。

したがって、本件土地三を宅地と認定した被告の評価は違法である。

(二) 画地認定の誤り

評価基準別表第3の2は、隣接する二筆以上の宅地について、その形状、利用状況等からみて、これらを合わせる必要がある場合においては、その一体をなしている部分の宅地ごとに一画地とすると定めているが、これはあくまで所有者が同一の場合であって、所有者が異なる宅地を、利用状況等に着目して一画地と認定することまでを許容しているものではない。なぜならば、固定資産の価格は適正な時価をいい、右適正な時価とは、正常な条件の下における取引価格で、土地にあっては売買実例価額を水準とすることから、仮に被告主張の画地認定が許されるとすれば、それは、本件土地三を、P4の所有である四番二六の土地及び四番二七の土地と共に売却した場合か、あるいは、本件土地三をP4に売却した場合にのみ実現できる稀有の事例を想定した評価額となり、評価基準にいう正常な条件の下における取引価格とはいえないからである。この点は、取扱通達第2章第1節4(オ)において、隣接地の買足し等によってその売買実例価額が割高となっていると認められる売買実例については、買足し等でない場合において成立する売買価格によって評定することとされている点からみても明らかである。

また、本件土地三は、P4に対して、資材置場として賃貸している土地であるから、現況地目は雑種地であり、現況地目が宅地である四番二六の土地及び四番二七の土地の上にある建物の敷地とはなっていないし、その建物の維持又は効用を果すために必要な土地でもないから、右三筆が一体利用されているということはできない。このことからも、右三筆を一画地として評価することは、地目ごとに評価をすることを定めた評価基準に違反する。

さらに、本件土地三の賃貸借契約は、旧借地法あるいは借地借家法の適用を受けない契約であるから、P4が、右賃貸借契約に基づく賃借権の譲渡をしようとして、原告P2にその承諾を拒否されても、借地借家法、非訟事件手続法に基づき、地主の承諾に代る許可を得る裁判の申立ての対象とすることはできないから、P4が、自己所有地と一体として処分することもできないし、他方、原告P2が自己所有でもない他の二筆の土地を、本件土地三と共に一方的に処分することができないから、この観点からも右三筆の土地が一体という解釈が生ずる余地はない。

(三) 以上のとおりであるから、本件土地三の評価額は別紙計算書2のⅡのとおり算定すべきである。

4 本件決定四について

(一) 地目の認定の誤り

前記2(一)のとおり、地目の認定は不動産登記実務取扱手続準則に従って行われなければならないところ、本件土地四の現況は貸駐車場であるから、固定資産税評価上の地目は雑種地となる。

したがって、本件土地四を宅地と認定した被告の評価は違法である。

(二) 不整形地補正の誤り

本件土地四は、不整形地であるから、前記1(三)のとおりの理由により、蔭地割合方式による不整形地補正が必要である。

(三) 以上のとおりであるから、本件土地四の評価額は別紙計算書3のとおり算定すべきである。

(被告の本案前の主張)

行政事件訴訟における訴えの利益は、民事訴訟の場合と同様、財産権上の請求である場合には、原告が訴えをもって主張する利益、すなわち勝訴判決を得た場合に原告が受けることとなる経済的利益に基づき算定された訴額によって把握されるから、固定資産評価額に関する審査決定の取消訴訟においては、決定にかかる評価額を基礎として算定した税額と原告の主張する税額との差額を基準として把握されるべきである。

そして、原告P3が主張するとおり本件土地四の価額が修正されたとしても、被告の決定した評価額に基づく場合と比較して、平成九年度から平成一一年度までの固定資産税と都市計画税の合計額に変動はない。

したがって、本件決定四を取り消すことによっても、原告P3に回復される法的利益は存せず、訴えの利益を欠くことは明らかである。

(被告の本案前の主張に対する原告P3の反論)

法は、固定資産税の課税処分に対する不服とは区別して、固定資産課税台帳に登録された事項についての固定資産評価審査委員会の審査決定に対する取消訴訟を提起すべき旨を規定しているので、登録価格に変動が生じ得る限り、右取消訴訟の訴えの利益を認めるべきであり、単に固定資産税と都市計画税の税額に変動がないことをもって、訴えの利益がないとすることはできない。

(被告の本案の主張)

1 本件決定一について

(一) 画地の認定について

評価基準等は、「画地の認定は、原則として、土地(補充)課税台帳に登録された、一筆の宅地を一画地とする」旨規定する一方で、その形状、利用状況等からみて、これを一体をなしていると認められる部分に区分する必要がある場合には、その一体をなしている部分の宅地ごとに一画地とする旨の例外規定を定めている。右例外規定が妥当するのは、本件土地一のように、非課税道路部分で分割されるなど右利用状況からして一体をなす土地の範囲を明白に区分でき、かつ、右利用状況に従って画地認定することが、評価の均衡上必要な場合をいうべきである。

ところが、本件土地一については、その中に五棟の建物と道路が存するが、各建物は建物の壁面又は道路側に設置されたブロック門塀で区分されているにすぎず、土地全体が塀等により截然と区切られているわけではないから、非課税道路部分を除き、右利用状況から一体をなす土地の範囲を明白に区分できるとはいえないし、また、利用状況に従って画地認定することが評価の均衡上必要な場合とはいえない。

右結論が妥当であることは、家屋の連たんする市街地において、現実の利用状況によって画地を認定するとすれば、事務的、技術的に極めて困難を伴うこと、市町村が統一的に運用するには限度が存することなどからも明らかである。

したがって、本件土地一を五画地と認定すべきであるとの原告P1の主張は失当である。

(二) セットバックについて

①評価基準等は、当該土地に沿接する街路が二項道路及び「板橋区まちづくり整備計画の対象地区」に当たるためにセットバックを要する場合、このことを各土地の評価にどのように反映させるかについて何ら規定しておらず、被告は、当該路線の路線価を比準する要因として街路条件の幅員・種類、環境条件、行政的条件(容積率要因)で適当な格差を設けることにより、かかる相違を考慮していること、②固定資産税は、その資産を保有することに対して課せられる物税であるから、その評価は賦課期日現在における現況に基づいて評価されたものであることを要するところ、本件土地Ⅰ及び本件土地Ⅱはいまだセットバックしていないこと、③セットバックすることにより、敷地面積が減少することになるとしても、道路が拡並幅されて当該土地に接する街路条件がよくなるから、逆に一平方メートル当たりの単価が上がることも少なくなく、一概に土地全体の価格が下がるとはいえないこと、④仮に、セットバックを要する土地はその部分を除外して評価しなければならないとすると、所有者が現にセットバックしていないにもかかわらず、現にセットバックしている土地と同様の評価をすることになるが、それではかえって均衡を失することにもなりかねないことより、セットバックを要する部分を配慮した減価補正をすべき旨の原告P1の主張は失当というべきである。

(三) 不整形地に該当しないこと

取扱要領によると、不整形地に該当するか否かは、当該不整形地に近似する整形地を想定し、この整形地と比較し、その凸凹の状況から宅地としての利用価値を客観的に判断して認定するものとされる。そして、本件土地Ⅰ及び本件土地Ⅱに近似する整形地は間口を一辺とするほぼ長方形であり、「極端に不整形のもの」、「相当に不整形のもの」、「不整形なもの」、「やや不整形のもの」のいずれにも該当しないから、右各土地の評価に当たり、不整形地補正をしないことに十分な合理性がある。

右帰結は、不動産鑑定理論に基づく評価において参考とされる外周率による手法に基づく不整形地補正率が、本件土地Ⅰについてマイナス〇・〇〇四パーセント、本件土地Ⅱについてマイナス〇・〇三パーセントにすぎないことからもその妥当性が認められる。

また、評価基準は、不整形地補正率を算定する方法として、蔭地割合による方法と不整形の度合による方法を選択的に提示していること、東京都知事は短期間に大量の固定資産について個別に評価することが現実的に極めて困難なため、評価事務の簡便さを図る必要から不整形の度合によって不整形地補正率を算定していることから、蔭地割合方式によるべきとの原告P1の主張は失当である。

右結論が妥当であることは、自治省税務局資産評価室土地係長が東京都固定資産評価課土地係長らに対し、蔭地割合方式により不整形地補正率を求めるためには、その適用に当たり細かな計算が必要なところ、市町村によっては、短期間にすべての画地のデータを把握し計算することが困難であると予想されることから、画地の形状等より不整形度を五段階に分けて、蔭地割合によらない手法を規定し、概ね同程度の補正率を定めることができると通達していることからも裏書きされる。そして、東京都においては、短期間に大量の固定資産(約一八〇万筆)について個別に評価することが現実的に極めて困難なため、右行政実例に応じて、蔭地割合方式によらずに不整形度に応じた形状により不整形地補正率を算定しているのである。

そうだとすれば、取扱要領における不整形地補正率の算定方法は、評価基準及び国(自治省)が認めた適正な方法といえる。

2 本件決定二について

(一) 地目が宅地であること

宅地とは、建物の敷地として現に利用されている土地に限らず、「宅地造成工事が完了している土地及び造成工事を必要としない土地、すなわち建物がいつでも建てられる状況にある土地」(取扱要領第一節第2の3(1)ア)を含むところ、本件土地二全体は「建物がいつでも建てられる状況にある土地」ということができるから、宅地に当たるというべきである。右結論が妥当であることは、東京都二三区内の土地のほとんどが宅地として利用されている現状においては、駐車場も更地と同様に直ちに建築することができる土地として「宅地」と評価することが適当であることからも裏付けられる。

(二) 駐車場と一体評価すべきこと

評価基準等は、「画地の認定は、原則として、土地(補充)課税台帳に登録された、一筆の宅地を一画地とする」旨規定する一方で、その形状、利用状況等からみて、これを一体をなしていると認められる部分に区分する必要がある場合には、その一体をなしている部分の宅地ごとに一画地とする旨の例外規定を定めている。

しかし、右例外規定が妥当するのは、原則による評価では大きな不均衡が生じ税負担の公平性が保てない場合に限られるところ、本件土地二についてはそうした大きな不均衡が生ずるとはいえないこと、また、本件土地二は前記のとおり駐車場部分も含めて宅地と評価すべきであり、駐車場部分と建物敷地部分と一体として住宅の高級感が形成されていること、分筆された場合には、利用状況に応じたそれぞれの地積が登記簿から明らかであるが、本件土地二のような場合には、それぞれの地積が被告には不明であり、大量の土地を短期間に公平に評価することが求められる被告としては、個々の利用形態に応じて個別に評価することは事務処理上極めて困難であることからして、原則どおりに一筆一画地で評価すべきである。

(三) 都市計画公園の予定地について

本件土地二は、都市計画公園の予定地であるから、マイナス三〇パーセントまでの減価補正を予定している都市計画街路の予定地と異なり、マイナス一〇パーセントの補正しかしていないが、これは、都市計画街路の予定地が道路に沿って計画されるのに対し、都市計画公園は丁目を超えた一定の広いエリアにわたり計画されるのが一般であることより、画地計算の段階ではなく、路線価の算定段階において都市計画公園の予定地であることが評価額に反映しているといえるからである。

また、右結論が妥当性を有することは、都市計画公園の予定される土地がそもそも住宅地に多く、容積率がそれほど大きくないことからも裏書きされる。

もっとも、本件土地二に関係する都市計画公園は緑道公園であるため、通常の都市計画公園と相違するところがあるが、固定資産税評価の性格(大量土地の短期間における評価)にかんがみて、こうした公園を通常の都市計画公園と区別して特別な取扱いをしていないとしても、不合理とまではいえない。

(四) 不整形地に該当しないこと

取扱要領によると、不整形地に該当するか否かは、当該不整形地に近似する整形地を想定し、この整形地と比較し、その凸凹の状況から宅地としての利用価値を客観的に判断して認定するものとされる。そして、本件土地二に近似する整形地は間口を一辺とするほぼ長方形であり、「極端に不整形のもの」、「相当に不整形のもの」、「不整形のもの」、「やや不整形のもの」のいずれにも該当しないから、本件土地二の評価に当たり、不整形地補正をしないことに十分な合理性がある。

右帰結は、不動産鑑定理論に基づく評価において参考とされる外周率による手法に基づく不整形地補正率が〇・〇一パーセントにすぎないことからもその妥当性が認められる。

なお、蔭地割合方式によるべきとの原告P2の主張が失当であることは、前記1(三)のとおりである。

3 本件決定三について

(一) 地目が宅地であること

宅地とは、前記2(一)のとおり、「建物がいつでも建てられる状況にある土地」を含むところ、本件土地三全体は「建物がいつでも建てられる状況にある土地」ということができるから、宅地に当たるというべきである。

(二) 画地認定について

① 画地の認定においては、評価基準等で、土地(補充)課税台帳に登録された一筆の宅地を一画地とすることが原則として定められているが、隣接する二筆以上の宅地について、一体として利用されている土地に関しては、二筆以上の宅地を合わせて評価する旨規定されていること、②原告P2の主張によると、分筆して所有者をできるだけ細分化すれば納税額が安くなることにもなりかねず、他の納税者と公平を失すること、③現に評価基準における同一画地認定の規定は、右のような不当な税金対策を取り締まることを目的として設けられたものであることからすると、固定資産の評価に当たり、同一画地の認定が同一所有者に限定されるべきでない。

そして、評価基準等が、隣接する二筆以上の宅地が一体として利用されている場合に合わせて評価するものとしているのは、土地の適正な時価は、正常な条件の下において、成立する当該土地の取引価格をいうものであるが、右取引価格は、通常、土地の利用価値を考慮して定められるものであるところ、隣接する二筆以上の宅地が一体として利用されている場合には、筆界にかかわらず、その一体をなすと認められる範囲をもって一画地と認定し、その価格を評価し、各土地の価格を求めるのが、評価の均衡、公平を図るゆえんであるからである。そうすると、評価基準等の画地の認定に関する定めは合理性を有し、法の趣旨に沿うものというべきである。

これを前提に検討すると、本件土地三は、本件土地二とも塀で区切られ、四番二六の土地及び四番二七の土地とを合わせて一体として利用されているから、右二筆と合わせて一画地と評価すべきである。

右結論が妥当性を有することは、本件土地三が右二筆の隣接地とのみ出入りできるようになっており、作業場・資材置場として使用されていたことからも裏付けられる。

4 本件決定四について

(一) 地目が宅地であること

宅地とは、前記2(一)のとおり、「建物がいつでも建てられる状況にある土地」を含むところ、本件土地四全体は「建物がいつでも建てられる状況にある土地」ということができるから、宅地に当たるというべきである。

(二) 不整形地に該当しないこと

取扱要領によると、不整形地に該当するか否かは、当該不整形地に近似する整形地を想定し、この整形地と比較し、その凸凹の状況から宅地としての利用価値を客観的に判断して認定するものとされる。そして、本件土地四に近似する整形地は間口を一辺とするほぼ長方形であり、「極端に不整形のもの」、「相当に不整形のもの」、「不整形なもの」、「やや不整形のもの」のいずれにも該当しないから、本件土地四の評価に当たり、不整形地補正をしないことに十分な合理性がある。

右帰結は、不動産鑑定理論に基づく評価において参考とされる外周率による手法に基づく不整形地補正率がマイナス〇・〇四パーセントにすぎないことからもその妥当性が認められる。

なお、蔭地割合方式によるべきとの原告P3の主張が失当であることは、前記1(三)のとおりである。

五  争点

本件の争点は、次の各点である。

1  本件決定一の取消しを求める訴えについて

(一) 本件土地一(非課税地部分を除く。)を二画地と認定すべきか、五画地と認定すべきか。 (争点1(一))

(二) セットバックを要する土地の評価の合理性の有無

(争点1(二))

(三) 不整形地補正率を、蔭地割合方式によらずに、取扱要領所定の不整形の度合に応じて算定することの合理性の有無 (争点1(三))

2  本件決定二の取消しを求める訴えについて

(一) 本件土地二のうち貸駐車場用地の部分の地目を、宅地と認定すべきか、雑種地と認定すべきか。 (争点2(一))

(二) 本件土地二を一画地と認定すべきか、二つの貸駐車場用地の部分とその他の部分の三画地と認定すべきか。 (争点2(二))

(三) 都市計画緑地の予定地の減価補正の合理性の有無(争点2(三))

(四) 不整形地補正率を、蔭地割合方式によらずに、取扱要領所定の不整形の度合に応じて算定することの合理性の有無 (争点2(四))

3  本件決定三の取消しを求める訴えについて

(一) 本件土地三の地目を、宅地と認定すべきか、雑種地と認定すべきか。

(争点3(一))

(二) 本件土地三を四番二六の土地及び四番二七の土地と併せて一画地と認定すべきか、本件土地三のみで一画地と認定すべきか。

(争点3(二))

4  本件決定四の取消しを求める訴えについて

(一) 訴えの利益の有無

(争点4(一))

(二) 本件土地四の地目を、宅地と認定すべきか、雑種地と認定すべきか。

(争点4(二))

(三) 不整形地補正率を、蔭地割合方式によらずに、取扱要領所定の不整形の度合に応じて算定することの合理性の有無 (争点4(三))

第三当裁判所の判断

一1  固定資産税は、固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格を課税標準とすることを原則として(法三四九条一項、三四九条の二)、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定のある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下同じ。)に対して(法三四三条一項)、資産の所有という事実に着目して課税される財産税であり、資産が土地の場合には、土地の所有という事実に担税力を認めて課税するのであって、原則として、個々の所有者が現実に土地から収益を得ているか否か、土地が用益権又は担保権の目的となっているか否か、収益の帰属が何人にあるかを問わず、賦課期日における所有者に対し、課税されるものである。

このような固定資産税の性質からすると、その課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」(法三四一条五号)とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値(以下、これを「客観的時価」という。)をいうものと解すべきである。

そして、法は、土地課税台帳に登録すべき価格を基準年度に係る賦課期日における価格としているのであるから(法三四九条一項)、右登録価格は、賦課期日である当該年度の初日の属する年の一月一日(本件では、平成九年一月一日)時点を基準日として、同日における客観的時価をもって算定すべきである。

2  適正な時価の意義を前記のように解すると、土地の適正な時価の算定は、鑑定評価理論に従って個々の土地について個別的、具体的に鑑定評価することが最も正確な方法ということになるが、課税対象となる土地は極めて大量に存在することから、限りある人的資源により、時間的制約の下で、右のような評価を実施することが困難であることは明らかである。

そこで、法は、これらの諸制約の下における評価方法を自治大臣の定める評価基準によらしめることとし、併せて、極めて大量の固定資産について反復、継続的に実施される評価について、各市町村の評価の均衡を確保するとともに、評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消しようとしているものということができる。

もっとも、右の評価基準は、各筆の土地を個別評価することなく、諸制約の下において大量の土地について可及的に適正な時価を評価する技術的方法と基準を規定するものであり、宅地の価格に影響を及ぼすべきすべての事項を網羅するものではないから、個別的な評価と同様の正確性を有しないことは制度上やむを得ないものというべきであり、評価基準による評価と客観的時価とが一致しない場合が生ずることも当然に予定されているものというべきである。

3  そして、統一的な評価基準による評価によって各市町村全体の評価の均衡を図り、評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消しようとする法及び評価基準の趣旨に照らすと、登録価格の評定が評価基準に適合しない場合には、仮に登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価以下であったとしても、右登録価格の決定は法に反するものというべきである。

他方、評価基準による評価が複数の評価要素の積み重ねを通じて結論において「適正な時価」に接近する方法であることからすると、評価基準に定める個別的評価要素が具体的な土地の特殊性に照らして適切さを欠くとみえる場合があるとしても、評価基準による評価が客観的時価を超えないときは、これを違法とすることはできないが、法は、登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回ることまでも許容するものではないから、登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価以下であると認められないときは、その限度で登録価格の決定は違法になるというべきである。

二  本件決定一の取消しを求める訴えについて

1  争点1(一)について

(一) 評価基準別表第3の2は、各筆の宅地の評点数は、一画地の宅地ごとに画地計算法を適用して求めるものとし、この場合の一画地は、原則として土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録された一筆の宅地によるが、ただし、一筆の宅地又は隣接する二筆以上の宅地について、その形状、利用状況等からみて、これを一体をなしていると認められる部分に区分し、又はこれらを合わせる必要がある場合においては、その一体をなしている部分の宅地ごとに一画地とすると定めている。

また、取扱要領第九節第3は、画地の認定は、原則として土地(補充)課税台帳に登録された一筆の宅地を一画地とするが、一筆の宅地を分割して評価する場合として、次のとおり定めている。

(1) 非課税地の存する宅地については、課税地をもって一画地とする。この場合、課税地が非課税地によって分割されているものにあっては、分割されたそれぞれの宅地をもって一画地とする。

(2) 宅地と宅地以外の土地に利用されている土地については、宅地部分を一画地とする。ただし、一筆の土地で宅地が宅地以外の地目によって分割されているものにあっては、分割されたそれぞれの宅地をもって一画地とする。

(3) 普通商業地区等で、宅地の形状・利用状況等からみて、一筆一画地で評価することが特に不適当と認められるものについては、それぞれの利用区分をもって一画地とすることができる。

(4) 未分筆私道に路線価を付設した宅地については、当該私道及び分割されたそれぞれの土地をもって一画地とする。

(二) 右のように、一筆を一画地として認定するのが原則とされたのは、現実の利用状況による画地の認定は、家屋の連たんする市街地においてはビルの敷地等特定の場合を除き、事務的、技術的に困雄を伴うこと、また、市町村が統一的に運用できる限度などを考慮したことによるものであって、例外的に筆界にかかわらず現実の利用状況による画地認定を行う必要がある場合とは、当該土地について、右利用状況からして一体をなす土地の範囲を明白に区分でき、かつ、右利用状況に従って画地認定をすることが、評価の均衡上必要な場合をいうものと解すべきである。

(三) ところで、証拠(甲一三、同四一ないし同四五、同五一、同五二の一ないし八、乙二七)によれば、本件土地一は、非課税地部分を除くと、北側が、別紙図面1の⑬ないし⑮の各部分の三区画に、南側が同図面の⑪及び⑫の各部分の二区画に区分され、原告P1は各区画をそれぞれ異なる者に賃貸していること、各区画の境界については、塀の途切れる状況及び建物の位置関係から判断することが可能であり、地主及び各借地人においては右境界を認識し、右認識に基づいて実測図(甲一三)が作成されていること、各借地人は、各区画上に建物を建築して所有していることが認められる。

そうすると、本件土地一の非課税地を除く部分は、五区画の借地部分(建物敷地部分)に区分され、各区画の範囲は実測図(甲一三)のとおり明確になっているということができる。

これに対し、被告は、本件土地一は非課税道路部分を除き、右利用状況から一体をなす土地の範囲を明白に区分できるとはいえないと主張し、証拠(甲五二の三ないし八、乙二七)によれば、各区画の境界となるべき部分のすべてにわたって塀が設置されているものではないことが認められるが、各区画の境界を明示する指標は塀に限られないところ、前記のとおり、地主及び各借地人において各区画の境界を認識し、前記実測図が右認識に基づいて作成されていることから、被告の主張を採用することはできない。

(四) そして、本件土地一の非課税地を除く部分を、被告主張の二画地として評価する場合と、前記の五つの区画ごとに画地として認定して評価する場合を比較すると、評価に少なからぬ差が生じるから、評価の均衡上、五画地として認定する必要があるというべきである。

(五) したがって、被告が本件土地一を非課税地部分を除き二画地と認定したことは、評価基準、取扱要領に適合しないものということができる。

2  争点1(二)について

(一) ある土地が二項道路に接する場合には、建築基準法上、道路の中心線からの水平距離二メートルの線等をその道路の境界線とみなされ(同法四二条二項)、その部分に建築物を建築することができなくなるため(同法四四条一項本文)、将来の建築物建替えの際にはみなし境界線まで後退(セットバック)を要することとなるところ、証拠(乙四、同一〇)によれば、本件土地Ⅰ及び本件土地Ⅱに沿接する正面路線は幅員二・九メートルの二項道路であることが認められる。

また、証拠(甲一九)及び弁論の全趣旨によれば、右正面路線は、板橋区街づくり整備計画大谷口地区の主要生活道路Aに該当し、道路中心線から三メートルに相当する線までセットバックをしなければならないとされていることが認められる。

(二) 二項道路と路線価の付設について

その他の街路(主要な街路以外の街路)の路線価について、評価基準第1章第3節二(一)3(2)は、「近傍の主要な街路の路線価を基礎とし、主要な街路に沿接する標準宅地とその他の街路に沿接する宅地との間における街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等の相違を総合的に考慮して付設するものとする。」と定め、これを受けて、取扱要領第二節第6の5(1)イは、主要な街路と当該その他の街路の価格形成要因の比較を通じ、その差異を比準表により格差に置き換え、それら格差を集計した格差率を主要な街路の路線価に乗じた数値により付設するものと定めるとともに、低層普通住宅地区を含む住宅系の基本的な価格形成要因として、次のものを掲げ、これを受けて、比準表において各要因ごとの格差率を定めている。

a 街路の条件 幅員、連続性、系統性、種類及び構造(階段、坂道)

b 交通・接近条件 最寄駅及び最寄駅への距離

中心駅及び中心駅への距離大型店舗(中心七区以外)及び大型店舗(中心七区以外)への距離

c 環境条件 標準的画地規模、土地区画整理事業等、商業密度、通り及び住環境

d 行政的条件 用途地区、容積率、その他公法上の規制

右取扱要領及び比準表の定めは、評価基準に沿うものとして一応の合理性を有するものといえるところ、これらの定めによれば、二項道路に沿接することにより、①街路条件の「種類」の格差、②二項道路が幅員四メートルに満たない狭い道路であることから、街路条件の「幅員」の格差、③当該建築物の前面道路の幅員が一二メートル未満である場合においては、右幅員に所定の数値を乗じて求められる容積率(基準容積率)とされ得ることから(建築基準法五二条一項)、行政的条件の「容積率」の格差に影響するということができる。

そして、証拠(乙四、同一〇)によれば、被告は、本件土地Ⅰ及び本件土地Ⅱに沿接する正面路線と標準宅地aに沿接する主要な街路との格差率を算定するに当たり、街路条件の幅員による格差マイナス一ポイント、街路条件の種類(一項道路か二項道路か)の格差零、行政的条件の容積率による格差零として、格差率を算定していることが認められるから、被告は、右格差率認定において、右正面路線が二項道路であることに関し、種類だけではなく、幅員及び容積率という価格形成要因においても考慮しているということができる。

これら街路条件等に反映される価格形成要因に対し、ある土地がセットバックを要する部分を含むか否かという事情は、同じ二項道路に沿接する土地であっても、個別の土地の間口と奥行きの比率等によってセットバックを要する部分の面積比は異なるものであること、現況においてはいまだセットバックしていない画地を実際にセットバック済みの画地と同様に取り扱うのは適当ではないことに照らせば、右事情は、路線価の付設においてではなく、個々の土地の画地計算において、どのように考慮すべきかが検討されるべき事項であるというべきである。

以上によれば、被告の行った前記格差率の認定は、右正面路線が二項道路であることを考慮したものとして合理性を有するということができる。

(三) セットバックを要する部分と画地計算について

評価基準及び取扱要領には、画地計算において、セットバックを要する部分をどのように取り扱うかについての定めはない。

しかし、評価基準第1章第1節一は、土地の評価は、土地の地目別に評価基準の定める方法により行うものとし、右地目は土地の現況によるものとすることを定めている。また、取扱要領第一節第2の2は、地目の認定は賦課期日である一月一日の現況及び利用目的により行い、その認定の単位は原則として一筆ごととし、部分的に僅少の差異が存するときでも、土地全体としての利用状況を観察して認定するが、一筆の土地が相当の規模で二以上の全く別の用途に利用されているときは、これらの利用状況に応じて区分し、それぞれに地目を定めると規定している。

このように、評価基準及び取扱要領は、賦課期日の現況により評価対象土地を評価するものであるから、右土地が二項道路に沿接する場合に、既に現実にセットバックがなされ、現況も道路として利用されているときには、宅地部分と別個の評価がなされるべきであるが、セットバックを要する部分を含むとしても、賦課期日において、いまだセットバックがなされず、宅地(建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地。不動産登記事務取扱手続準則(昭和五二年九月三日付け法務省民三第四四七三号民事局長通達)一一七条ハ、取扱要領第一節第2の3(1)参照。)として利用されている限り、宅地としての評価を受けるものというべきである。

ちなみに、セットバックを要する部分を含む土地を宅地として評価する場合に、建築基準法上、将来、その部分に建築物を建築できないことを考慮して、減価補正をするとの考え方も、宅地の評価方法としてはあり得るところである。しかし、その補正の方法について正確を期するとすれば、セットバックを要する部分について建築規制が現実化する建築物の建替え時期についての見込み、道路が土地の北側にあるか南側にあるかといった位置関係(道路が敷地の北側にあれば、日照確保等のため道路側に寄せて建築するのが一般的であるが、敷地の道路側が削られることにより南側隣地上の家屋との間隔が縮まり、日照確保等で条件が悪くなるなどのことが考えられる。)、周辺の土地についてのセットバックの見込み(将来周辺の土地も含めて道路の全面にわたってセットバックがなされれば、かえって街路条件がよくなり、増価要因となる。)等といった諸事情をも考慮すべきであり、単純にセットバックを要する部分の面積のみによって減価補正することが不動産鑑定手法に則った唯一の合理的な方法であるとはいえない。そして、前記(二)のとおり、正面路線が二項道路であることに関連して街路条件等において一定の減価が行われることをも考え併せると、右特別の減価補正を行わないことが、短期間に大量の土地を評価することが求められる固定資産の評価方法として不合理なものということはできない。

以上によれば、本件土地一は賦課期日においていまだセットバックがなされていなかった(弁論の全趣旨)のであるから、セットバックを要する部分について、特別の減価補正を行わないことに違法はないというべきである。

3  争点1(三)について

評価基準別表第3の7(1)①は、不整形地の価額については、整形地に比して一般に低くなるものであるので、「不整形地補正率表」(附表4)によって求めた不整形地補正率を乗じて当該不整形地の単位地積当たり評点数を求めるものとされ、附表4は、蔭地割合方式による補正率表を定めているが、附表4の(注3)は、蔭地割合方式によらない場合の不整形地補正率の適用に当たっては、当該画地が所在する用途地区の標準的な画地の形状・規模からみて、不整形度(普通、やや不整形、不整形、相当に不整形、極端に不整形の五段階)を判断して、不整形地補正率を定めることができる旨を規定して、不整形の度合による補正率表も併記している。

これは、蔭地割合方式による不整形地補正率表を適用するに当たっては、対象土地について細かな計算が求められるが、評価対象土地が大量に存する等の場合には短期間にすべての画地のデータを把握して計算を行うことが困難であることから、そのような場合には、市町村においては、蔭地割合方式によらずに、画地の形状等から不整形度を五段階に分けて、蔭地割合方式による場合と概ね同程度の不整形地補正率を定めることができるものとしたものと解される。

そして、取扱要領は、不整形地の補正は、不整形の度合を、当該不整形地に近似する整形地を想定し、この整形地と比較し、その凹凸の状況から宅地としての利用価値を客観的に判断して(なお、画地の面積の大小は宅地としての利用価値に影響を及ぼすものであるから十分留意することとされている。)、「やや不整形のもの」、「不整形のもの」、「相当に不整形のもの」及び「極端に不整形のもの」の四分類に認定し、これに応じた補正率(それぞれ〇・九五、〇・九〇、〇・八〇及び〇・六五)により不整形地の補正を行うことと定めているが(取扱要領第九節第5の3(5)、第九節第8の11、付表10)、これは、東京都特別区においては評価対象土地が大量に存し、短期間に蔭地割合方式により評価することが困難であることから、蔭地割合方式によらずに、不整形の度合による補正率表を定めて評価を行っているものである。

したがって、取扱要領の不整形地補正の定めは評価基準に違反するものではないし、右の定めによって不整形地補正を行うことは、不整形の度合の認定が適切に行われる限り、土地の評価方法としても合理的であるということができる。

そして、証拠(甲一三)によれば、別紙図面1の⑪ないし⑮の各区画は、いずれもほぼ方形の土地であるから、各区画について取扱要領付表10所定の「やや不整形のもの」にも該当しないとして、不整形地補正を行わないことは、合理的なものということができる。

4  結論

(一) 以上によれば、本件土地一は非課税地部分を除き五画地と認定すべきところ、右画地認定に基づく本件土地一の価格は、次のとおり算定される。

(二) 別紙図面1の⑪の区画の土地(以下「土地⑪」)について

(1) 土地⑪に沿接する正面路線の路線価(前記第二の三1(五)(4))

二一万三〇〇〇点

右正面路線は本件土地Ⅰに沿接する側方路線と一致する。

(2) 画地計算法に基づく算定

ア 時点修正前の単位地積当たりの評点 二〇万六六一〇点

正面路線から土地⑪の奥行き(正面路線から垂線による画地の最深部までの距離。取扱要領第九節第4の2参照。)は八メートル以上一〇メートル未満であるから(甲一三)、奥行価格補正率〇・九七(取扱要領別表1)を、前記(1)の路線価に乗じた。

イ 平成八年一月一日から同年七月一日までの時点修正率 〇・九八

土地⑪に沿接する正面路線が属する状況類似地区の標準宅地aの規準地の時点修正率(前記第二の三1(五)(5)ウ)をもって算出した。

ウ 時点修正後の単位地積当たりの評点 二〇万二四七七点

前記アの評点に前記イの時点修正率を乗じた。

エ 総評点 一八一七万六三六〇点

前記ウの評点に地積八九・七七平方メートル(甲一三)を乗じた。

オ 土地⑪の評価額 一八一七万六三六〇円

前記エの総評点に評点一点当たりの価格一円を乗じた。

(三) 別紙図面1の⑫の区画の土地(以下「土地⑫」)について

(1) 土地⑫に沿接する正面路線の路線価(前記第二の三1(五)(3))

二七万六〇〇〇点

右正面路線は本件土地Ⅰに沿接する正面路線と一致する。

(2) 土地⑫に沿接する側方路線の路線価(前記第二の三1(五)(4))

二一万三〇〇〇点

右側方路線は本件土地Ⅰに沿接する側方路線と一致する。

(3) 画地計算法に基づく算定

ア 基本単価 二七万六〇〇〇点

正面路線から土地⑫の奥行きは一〇メートル以上一二メートルであるから(甲一三)、奥行価格補正率一・〇〇(取扱要領別表1)を、前記(1)の路線価に乗じた。

イ 側方路線の加算評点 八五二〇点

側方路線から土地⑫の奥行きは八メートル以上一〇メートル未満である(甲一三)。

そこで、奥行価格補正率〇・九七(取扱要領別表1)と側方路線影響加算率〇・〇四(取扱要領付表2)を連乗して小数点以下第三位を四捨五入して求めた画地補正率〇・〇四を、前記(2)の路線価に乗じた。

ウ 平成八年一月一日から同年七月一日までの時点修正率〇・九八

土地⑫に沿接する正面路線が属する状況類似地区の標準宅地aの規準地の時点修正率(前記第二の三1(五)(5)ウ)をもって算出した。

エ 時点修正後の単位地積当たりの評点 二七万八八二九点

前記アの基本単価に前記イの加算評点を加算し、次いで、前記ウの時点修正率を乗じた。

オ 総評点 二三二九万三三七四点

前記エの評点に地積八三・五四平方メートル(甲一三)を乗じた。

カ 土地⑫の評価額 二三二九万三三七〇円

前記エの総評点に評点一点当たりの価格一円を乗じ、一〇円未満の端数を切り捨てた。

(四) 別紙図面1の⑬の区画の土地(以下「土地⑬」)について

(1) 土地⑬に沿接する正面路線の路線価(前記第二の三1(五)(4))

二一万三〇〇〇点

右正面路線は本件土地Ⅰに沿接する側方路線と一致する。

(2) 画地計算法に基づく算定

ア 時点修正前の単位地積当たりの評点 二〇万〇二二〇点

正面路線から土地⑬の奥行きは八メートル以上一〇メートル未満であり、間口(画地の路線に接する辺の長さ。取扱要領第九節第4の3参照。)は六メートル以上八メートル未満であるから(甲一三)、奥行価格補正率〇・九七(取扱要領別表1)と間口狭小補正率〇・九七(取扱要領付表4)を連乗して小数点以下第三位を四捨五入して求めた画地補正率〇・九四を、前記(1)の路線価に乗じた。

イ 平成八年一月一日から同年七月一日までの時点修正率 〇・九八

土地⑬に沿接する正面路線が属する状況類似地区の標準宅地aの規準地の時点修正率(前記第二の三1(五)(5)ウ)をもって算出した。

ウ 時点修正後の単位地積当たりの評点 一九万六一五点

前記アの評点に前記イの時点修正率を乗じた。

エ 総評点 一〇七六万四三五四点

前記ウの評点に地積五四・八六平方メートル(甲一三)を乗じた。

オ 土地⑬の評価額 一〇七六万四三五〇円

前記エの総評点に評点一点当たりの価格一円を乗じ、一〇円未満の端数を切り捨てた。

(五) 別紙図面1の⑭の区画の土地(以下「土地⑭」)について

(1) 土地⑭に沿接する正面路線の路線価(前記第二の三1(五)(4))

二一万三〇〇〇点

右正面路線は本件土地Ⅰに沿接する側方路線と一致する。

(2) 画地計算法に基づく算定

ア 時点修正前の単位地積当たりの評点 二〇万〇二二〇点

正面路線から土地⑭の奥行きは八メートル以上一〇メートル未満であり、間口は六メートル以上八メートル未満であるから(甲一三)、奥行価格補正率〇・九七(取扱要領別表1)と間口狭小補正率〇・九七(取扱要領付表4)を連乗して小数点以下第三位を四捨五入して求めた画地補正率〇・九四を、前記(1)の路線価に乗じた。

イ 平成八年一月一日から同年七月一日までの時点修正率 〇・九八

土地⑭に沿接する正面路線が属する状況類似地区の標準宅地aの規準地の時点修正率(前記第二の三1(五)(5)ウ)をもって算出した。

ウ 時点修正後の単位地積当たりの評点 一九万六二一五点

前記アの評点に前記イの時点修正率を乗じた。

エ 総評点 九九九万一二六七点

前記ウの評点に地積五〇・九二平方メートル(甲一三)を乗じた。

オ 土地⑭の評価額 九九九万一二六〇円

前記エの総評点に評点一点当たりの価格一円を乗じ、一〇円未満の端数を切り捨てた。

(六) 別紙図面1の⑮の区画の土地(以下「土地⑮」)について

(1) 土地⑮に沿接する正面路線の路線価(前記第二の三1(五)(3))

二七万六〇〇〇点

右正面路線は本件土地Ⅰに沿接する正面路線と一致する。

(2) 土地⑮に沿接する側方路線の路線価(前記第二の三1(五)(4))

二一万三〇〇〇点

右側方路線は本件土地Ⅰに沿接する側方路線と一致する。

(3) 画地計算法に基づく算定

ア 基本単価 二七万六〇〇〇点

正面路線から土地⑮の奥行きは一〇メートル以上一二メートルであるから(甲一三)、奥行価格補正率一・〇〇(取扱要領別表1)を、前記(1)の路線価に乗じた。

イ 側方路線の加算評点 八五二〇点

側方路線から土地⑮の奥行きは八メートル以上一〇メートル未満である(甲一三)。

そこで、奥行価格補正率〇・九七(取扱要領別表1)と側方路線影響加算率〇・〇四(取扱要領付表2)を連乗して小数点以下第三位を四捨五入して求めた画地補正率〇・〇四を、前記(2)の路線価に乗じた。

ウ 平成八年一月一日から同年七月一日までの時点修正率 〇・九八

土地⑮に沿接する正面路線が属する状況類似地区の標準宅地aの規準地の時点修正率(前記第二の三1(五)(5)ウ)をもって算出した。

エ 時点修正後の単位地積当たりの評点 二七万八八二九点

前記アの基本単価に前記イの加算評点を加算し、次いで、前記ウの時点修正率を乗じた。

オ 総評点 二一九九万四〇三一点

前記エの評点に地積七八・八八平方メートル(甲一三)を乗じた。

カ 土地⑮の評価額 二一九九万四〇三〇円

前記エの総評点に評点一点当たりの価格一円を乗じ、一〇円未満の端数を切り捨てた。

(七) 本件土地一の価格 八四二一万九三七〇円

土地⑪、土地⑫、土地⑬、土地⑭及び土地⑮の前記各価格を加算した。

(八) ところで、法は、固定資産税の納税者が、その納付すべき固定資産税に係る資産について固定資産課税台帳に登録された一定の事項について不服がある場合には、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる(法四三二条一項)とする一方、同委員会は、右申出を受けた場合においては、直ちにその必要と認める調査、口頭審理その他の事実審査を行い、その申出を受けた日から三〇日以内に審査の決定をし、決定のあった日から一〇日以内に、申出人及び市町村長に文書をもって通知しなければならないとし(法四三三条一項、一二項(平成一一年法律第一五号による改正前の法においては同条八項。以下、同じ。))、右の決定に不服がある固定資産税の納税者は、その取消しの訴えを提起できるとしている(法四三四条一項)。右のとおり、取消訴訟の対象である固定資産評価審査委員会の決定は、固定資産課税台帳に登録された一定の事項についての審査申出人の不服申立てに対する同委員会の応答としてされるものであり、また、右決定において判断された価格は、前記のとおり、基準年度に係る賦課期日における当該固定資産の適正な時価という一個の評価的事実であるから、法は、右価格を可分なものであるとして、その一部に関する部分のみが取消訴訟において争われ、残部が別途に確定するという事態は予定していないというべきである。もし仮に同委員会の決定が可分なものであって、その一部のみの取消しを訴求することが認められるとすると、請求が認容された場合には、同委員会は審査申出に対して応答すべき義務の履行として改めて当該部分についての決定を行うべきこととなるが(行政事件訴訟法三三条二項)、その結果、右の新たな決定と訴訟の対象とならなかった決定の残部の両方が存在することとなり、これらの間の論理的な整合も期し難い結果を招来することとなり、実際上も不都合であると解される。

これに対し、判決において決定のうちの価格の一部又は全部を取り消した場合には、その部分については、固定資産評価審査委員会が改めて決定する義務は生ぜず、決定のうち取り消されなかった部分のみの効力が存続すると考える余地もなくはないが、右のような考え方は、行政事件訴訟法三三条二項の規定に反するうえ、審理の結果、係争部分の具体的な価格について真偽不明となれば、立証責任の原則に従い、右請求に係る部分の価格全部を取り消すべきこととなり、改めて同委員会の決定も行われないため、右の係争部分の価格は零円として確定することになると解さざるを得なくなるが、そのような結果が不合理であることは明らかであり、右の考え方を採用することはできない。

むしろ、法は、固定資産評価審査委員会の決定については、市町村長に対しても、右決定を文書をもって通知するものとし(法四三三条一二項)、市町村長は、その結果、既に固定資産課税台帳に登録された価格等を修正する必要があるときは、右通知を受けた日から一〇日以内にその価格等を修正して登録し、その旨を当該納税者に通知すべきものとしたほか(法四三五条一項)、同項の規定によって価格等を修正した場合においては、市町村長は、固定資産税の賦課後であっても、その修正した価格等に基づいて、既に決定した賦課額を更正すべきことを義務づけている(同条二項)が、判決の結果に基づいて、直ちに市町村長が固定資産課税台帳に登録された価格等を修正すべき事態が生じることを予定した規定は設けられていないことからすれば、法は、取消訴訟において固定資産評価審査委員会の決定のうち価格の認定に誤りがあると判断された場合には、改めて同委員会による決定がされることを前提としているというべきである。

ちなみに、固定資産評価審査委員会の決定が不可分であると解した場合、同委員会が認定した価格が「適正な時価」を上回るとして同委員会の決定を取り消す旨の判決がなされ、その理由中で「適正な時価」が具体的に認定判断されているときには、同委員会は、右判断の拘束を受けたうえで、改めて決定を行うべきこととなる。

(九) よって、本件決定一は、本件土地一の価格を八四二一万九三七〇円を上回る九七〇九万四一七〇円と認定した点において違法であるというべきであるから、本件決定一の取消しを求める原告P1の請求は理由がある。

三 本件決定二の取消しを求める訴えについて

1  争点2(一)について

(一) 評価基準第1章第1節一は、土地の評価は、土地の地目別に評価基準の定める方法により行うものとし、右地目は土地の現況によるものとするこ冊とを定めている。また、取扱要領第一節第2の2は、地目の認定は賦課期日である一月一日の現況及び利用目的により行い、その認定の単位は原則として一筆ごととし、部分的に僅少の差異が存するときでも、土地全体としての利用状況を観察して認定するが、一筆の土地が相当の規模で二以上の全く別の用途に利用されているときは、これらの利用状況に応じて区分し、それぞれに地目を定めると規定している。

そして、取扱要領第一節第2の3(1)は、宅地とは、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地(維持若しくは効用を果たすために必要な土地とは、通路、庭等をいう。)であるとし、宅地造成工事が完了している土地及び造成工事を必要としない土地、すなわち建物がいつでも建てられる状況にある土地も宅地とすべきものとされる。

他方、取扱要領第一節第2の3(9)は、雑種地とは、宅地、田、畑、転用田、転用畑、池沼、山林、原野、鉄軌道用地のいずれにも該当しない土地であるとしている。

(二) ところで、証拠(甲二四、同五一、同五三の七ないし一〇、乙二八、同三一)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地二は、建物敷地部分のほかに、南西側の道路に接する部分に車両七台分の駐車場が、南東側の道路に接する部分に車両九台分の駐車場があること、右駐車場部分と建物との間には、南西側においてはコンクリートの段差と植栽があり、南東側においては塀があること、駐車場は舗装され、各区画は白色ペイントによって区別されていること、右駐車場のうち、南西側の二台分二六平方メートル及び南東側の八台分一〇五・〇四平方メートル(別紙図面2の赤色部分)が貸駐車場であり、その余の南西側の五台分及び南東側の一台分の合計六台分の駐車場は、自己使用部分又は来客用であること、各貸駐車場部分は自己使用又は来客用の駐車場部分とも白色ペイントによって区別されているだけで、それ以上に物理的に両者間の出入りを妨げるものはないことが認められる。

(三) そうすると、右各貸駐車場部分は、建物の維持若しくは効用を果たしていることが明らかである自己使用又は来客用の駐車場部分と、構造的に一体となっていると評価することができ、また、それ自体としても、物理的に建物がいつでも建てられる状況にある土地ということができるから、本件土地二の地目を全体として宅地と認定して市街地宅地評価法により評価することは、評価基準等に適合したものということができる。

2  争点2(二)について

評価基準及び取扱要領は、一筆を一画地として認定するのを原則とし、例外的に筆界にかかわらず現実の利用状況による画地認定を行うものとしているが、右例外的な画地認定の必要がある場合とは、当該土地について、右利用状況からして一体をなす土地の範囲を明白に区分でき、かつ、右利用状況に従って画地認定をすることが、評価の均衡上必要な場合をいうものと解すべきことは、前記二1のとおりである。

そして、本件土地二の地目を全体として宅地と認定すべきこと、右各貸駐車場部分は、建物の維持若しくは効用を果たしていることが明らかである自己使用又は来客用の駐車場部分と、構造的に一体となっていることは、前記1のとおりである。

したがって、右各貸駐車場部分のみが、他の部分と明白に区別できるほど利用状況が異なっているということはできないから、本件土地二を一画地と認定することは評価基準等に適合したものということができる。

3  争点2(三)について

(一) 証拠(甲二一、同二四)によれば、本件土地二の南東側の二九八・一四平方メートル、及び本件土地二の南東側に沿接する側方路線は、都市計画緑地(昭和三二年建設省告示一六八九号)の予定地となっていることが認められる。

(二) 右の都市計画緑地を含む都市計画施設予定地の評価について、評価基準は、特段の定めを設けていないが、昭和五〇年一〇月一五日付け自治固第九八号東京都総務・主税局長、各道府県総務部長あて自治省税務局固定資産税課長通達「都市計画施設の予定地に定められた宅地等の評価の取扱いについて」は、都市計画施設の予定地に対する建築規制の影響を受ける宅地の価格が影響を受けない宅地の価格に比べ低下している事例が見受けられるが、その価格事情を路線価の付設等によって価額に反映させることが困難な場合には、その価額事情に特に著しい影響が認められるときに限り、都市計画施設の予定地に定められた宅地の評価については、当該宅地の総地積に対する都市計画施設予定地に定められた部分の地積の割合を考慮して定めた三割を限度とする補正率を適用して、その価額を求めることとしても差し支えない旨を定めている。

(三) 他方、取扱要領は、都市計画街路及び都市高速鉄道の予定地については、画地計算において、用途地区及び総地積に対する当該予定地積の割合に応じた補正を行うものとし、低層普通住宅地区については、前記面積割合を三〇パーセント未満、三〇パーセント以上六〇パーセント未満、六〇パーセント以上に区分し、各補正率を〇・九〇、〇・八〇、〇・七〇と定めているのに対し(取扱要領第九節第5の5(2)、付表13)、都市計画公園、都市計画緑地等の予定地については、比準表を適用して付設した路線価の一〇パーセント程度を限度に減価して修正路線価を付設する旨定めている(取扱要領第二節第6の5(2)ア(イ))。

このように、取扱要領は、同じ都市計画施設予定地でも、都市計画街路及び都市高速鉄道の予定地については画地計算において補正を行うのに対し、都市計画公園、都市計画緑地等の予定地については路線価の付設において減額するものとしているが、これは、一般に、都市計画街路及び都市高速鉄道の予定地と比較した場合に、都市計画公園、都市計画緑地等の予定地の範囲が一定の広がりをもった地域に及ぶことが少なくないことから、都市計画街路及び都市高速鉄道の予定地にあっては画地計算の段階で、都市計画公園、都市計画緑地等の予定地にあっては路線価付設の段階で、それぞれ価額に反映させるのが適当であるとしたものである。

そうすると、都市計画公園、都市計画緑地等の予定地について、その具体的な範囲が一定の広がりをもった地域に及んでいない場合には、一〇パーセント減価した修正路線価を付設するだけでは、建築規制の影響を価格に十分反映したことにならないことも考えられるところである。

(四) ところで、証拠(甲二一、乙一二)によれば、本件土地二に沿接する側方路線沿いの一定の地域だけが、都市計画緑地の予定地となっており、右予定地の範囲は本件土地二の属する状況類似地区の全面にわたって広がっているものではなく、右状況類似地区の標準宅地bも右予定地とはなっていないことが認められる。

しかし、本件土地二のうち都市計画緑地の予定地の割合が約三二パーセントであること、本件土地二が第二種住居専用地域にあり、容積率が二〇〇パーセントである事(乙一二、同一四、同一五)からすると、都市計画緑地の予定地であることによる建築規制の価格に対する影響はそれほど大きくはないということができ、また、七割評価基準に従った場合に生ずる三割の評価誤差の許容範囲をも考慮すると、取扱要領に従って、都市計画緑地の予定地であることを理由に、本件土地二に沿接する正面路線及び側方路線の各路線価を一〇パーセント減価して修正路線価を付設しただけで他に減価補正を行わなかったことは、本件土地二を客観的時価を超える評価をする結果をもたらしたものということはできない。

(五) したがって、被告が右評価を行ったというだけでは、本件決定二が違法であると解することはできない。

4  争点2(四)について

取扱要領の不整形地補正の定めが評価基準に違反するものではなく、右の定めによって不整形地補正を行うことは、不整形の度合の認定が適切に行われる限り、土地の評価方法としても合理的であることは、前記二3のとおりである。

そして、証拠(乙二五)によれば、本件土地二は、ほぼ方形の土地であり、外周率による手法により不整形地補正率を求めるとわずか〇・〇一にすぎないことが認められるから、本件土地二を取扱要領付表10所定の「やや不整形のもの」にも該当しないとして、不整形地補正を行わないことは、合理的なものということができる。

5  結論

以上によれば、本件決定二は適法である。

四 本件決定三の取消しを求める訴えについて

1  争点3(一)について

証拠(甲三六の一、二、同五三の一一ないし一五、同五五の一、二、同六二、乙一七、同三一、同三二)及び弁論の全趣旨によれば、原告P2は、高栄建設株式会社(代表取締役P4)に対し、本件土地三を一時使用の目的で賃貸しており、その用途は資材置場に限定する旨約定されていること、本件土地三は、それ自体としては道路に接しない土地であり、南西側に隣接する二筆の土地(四番二六の土地及び四番二七の土地。所有者はいずれもP4。)に対してのみ出入りが可能で、それ以外は周囲を塀で囲まれていること、右二筆の土地には、高栄建設株式会社等が使用する建物があることが、それぞれ認められる。

そして、宅地とは、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地であり、建物がいつでも建てられる状況にある土地も宅地と認定すべきことは、前記三1(一)のとおりであるところ、本件土地三は、賦課期日において資材置場として使用されていたものの、本件土地三に建物を建築することについて物理的な支障や、これを妨げる法的規制はなく、また、隣接する二筆の土地と一体的に利用されることにより、右二筆にある建物の維持若しくは効用を果たすために必要な土地となっていたということができる。

したがって、本件土地三の地目を宅地と認定して市街地宅地評価法により評価することは、評価基準等に適合したものということができる。

2  争点3(二)について

(一) 前記二1のとおり、評価基準は、一筆を一画地として認定するのを原則とし、例外的に、筆界にかかわらず、その形状、利用状況等からみて、これらを合わせる必要がある場合においては、その一体をなしている部分の宅地ごとに一画地と認定するものとしている。

そして、取扱要領第九節第3は、画地の認定は、原則として土地(補充)課税台帳に登録された一筆の宅地を一画地とするが、二筆以上の宅地を合わせて評価するものとして、次のとおり定めている。

(1) 隣接する二筆以上の宅地にまたがり、一個又は数個の建物が存在し、一体として利用されている宅地

(2) 隣接する二筆以上の宅地について、それらの筆ごとに一個又は数個の建物があり一体として利用されている宅地

(3) 隣接する二筆以上の宅地について、建物の有無又はその所在の位置に関係なく塀その他の囲い等により一体として利用されている宅地

(4) 隣接する二筆以上の宅地について、一体として利用されている駐車場等の宅地

(二) このように二筆以上の土地が一体として利用されている場合につき、評価基準等が、各筆の形状、位置、利用状況等の特性を捨象して、当該画地全体を一画地として評価することとしているのは、各筆が単独で利用される場合と比較して、面積、形状、接道状況等の点で使用・収益価値が増大し、各筆の個別利用を前提とした評価額の合計よりも、客観的価値が上昇し、各筆ごとの特性による影響が弱まるから、二筆以上の土地全体を一画地として取り扱うことが宅地相互間の評価の均衡を図る上で適切であるとの考え方に基づくものであると解される。

しかしながら、所有者を異にする複数の土地については、一つの恒久的な建物の敷地として一体として利用されるなど一体としての利用を前提とした処分が見込まれる場合はともかく、一体としての利用を前提とした処分が見込まれない場合には、前記の使用・収益価値の増大が、正常な条件の下に成立する取引価格としての客観的な交換価値に反映され、実現されていくものとは限らないというべきである。

そうであるとすれば、右のような場合を、評価基準の定める「その形状、利用状況等からみて、これらを合わせる必要がある場合」に当たると解することはできないというべきであり、前記の取扱要領の定めも、これを前提としているものと解するのが相当である。

(三) そして、本件土地三は、前記1のとおり、資材置場として使用される宅地で、所有者を異にする隣接する二筆と一体として利用されているものの、右隣接地にある建物の敷地となっているものではなく、右利用状況は、一時使用を目的とする賃貸借契約の下に成り立っているものにすぎないことからすると、一体としての利用を前提とした処分が見込まれるものということはできない。

そうすると、本件土地三と隣接する二筆とは、評価基準の定める「その形状、利用状況等からみて、これらを合わせる必要がある場合」に当たらないと解すべきであるから、これらを一画地と認定することは、評価基準に適合しないというべきである。

3  結論

以上によれば、本件決定三は、本件土地三だけで一画地と認定すべきところ、隣接する二筆と合わせて一画地と認定した点において、評価基準に適合しない違法があるというべきである。

五 本件決定四の取消しを求める訴えについて

1  争点4(一)について

法は、固定資産の価格という客観的事実に基づいて審査申出を認め(法四三二条)、右申出に対する決定については、固定資産税の課税処分に対する不服とは区別して、審査決定に対する取消訴訟を提起すべき旨を規定している。これは、登録価格が、法によって当該固定資産の適正な時価を示すものとされているために、固定資産税又は都市計画税のみならず不動産取得税(法七三条の二一第一項)及び登録免許税(登録免許税法附則七条)の課税標準の算定基礎としても機能する等当該固定資産の所有者又は取得者に対し様々な経済的な影響を及ぼすことが予想されるため、特に固定資産税の税額に対する不服とは別個に、登録価格につき独立に不服申立ての制度を設けてその額の適正を担保するとともに、その早期の確定を図ったものと解される。

このような法の趣旨に照らせば、登録価格に変動が生じ得る訴えである限り、訴えの利益を認めることができるというべきであって、単に固定資産税及び都市計画税の税額に変動がないということのみをもって、訴えの利益がないとする被告の主張を採用することはできない。

2  争点4(二)について

証拠(甲五三の一ないし六、乙二九、同三一)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地四は未舗装の貸駐車場となっていることが認められる。

しかし、宅地とは、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地であり、建物がいつでも建てられる状況にある土地も宅地と認定すべきことは、前記三1(一)のとおりであるところ、本件土地四に建物を建築することについて物理的な支障や、これを妨げる法的規制はなく、また、周辺の土地に建物が建築されている状況の下においては、本件土地四を更地と同様に建物がいつでも建てられる状況にある土地と判断することが相当である。

したがって、本件土地四の地目を宅地と認定して市街地宅地評価法により評価することは、評価基準等に適合したものということができる。

3  争点4(三)について

取扱要領の不整形地補正の定めが評価基準に違反するものではなく、右の定めによって不整形地補正を行うことは、不整形の度合の認定が適切に行われる限り、土地の評価方法としても合理的であることは、前記二3のとおりである。

そして、証拠(乙二六)によれば、本件土地四は、ほぼ長方形の土地であり、外周率による手法により不整形地補正率を求めるとわずかマイナス〇・〇四にすぎないことが認められるから、本件土地二を取扱要領付表10所定の「やや不整形のもの」にも該当しないとして、不整形地補正を行わないことは、合理的なものということができる。

4  結論

したがって、本件決定四は適法である。

五 以上によれば、原告P1の請求及び原告P2の請求のうち本件決定三の取消しを求める請求はいずれも理由があるが、原告P2のその余の請求及び原告P3の請求はいずれも理由がない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 市村陽典 裁判官 阪本勝 裁判官 村松秀樹)

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