大判例

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東京地方裁判所 平成11年(レ)237号 判決

主文

一  原判決を取り消す。

二  本件を東京簡易裁判所に差し戻す。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人福岡県信用保証協会は、控訴人に対し、金五一万六一二二円及びこれに対する昭和五一年三月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して、金三〇万円及びこれに対する昭和五九年六月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人らの負担とする。

5  仮執行宣言

二  控訴の趣旨に対する答弁

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二事案の概要

一  控訴人の主張

1  原審の訴訟手続の違反

(一) 本件は、平成一一年四月二二日午前一一時の原審第二回口頭弁論期日において、弁論準備手続に付され、弁論準備手続期日が同年六月一日午後一時三〇分と指定告知された。

(二) 控訴人及び被控訴人ら訴訟代理人は、同年六月一日午後一時三〇分に準備手続室に出頭したところ、原審裁判官は、書証の写しと原本とを照らし合わせたが、弁論準備手続を行わず、控訴人の人証申請を却下する旨述べたうえ、弁論を終結する旨宣言し、判決言渡期日を同月一〇日午後一時三〇分と指定告知した。

(三) 同月一日の期日は口頭弁論期日であるところ、右口頭弁論期日は、傍聴席がなく、公開されない準備手続室において行われたものであって、憲法八二条に違反し、民事訴訟法三一二条二項五号に該当する。

2  請求原因

次のように付加、訂正するほかは、原判決の事実及び理由二の1ないし7(原判決二枚目裏二行目から同三枚目裏二行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

(一) 原判決二枚目裏八行目の「不法行為であり、同額の不法な利得を得た」を「法律上の原因がなく利益を得、控訴人に対し右と同額の損失、損害を被らせたものであるから、不法行為及び不当利得に当たる」に改める。

(二) 同行目の次に次のように加える。

「3 被控訴人福岡県信用保証協会は、被控訴人ら主張の最高裁判所判決の確定後は、民法五〇三条により、訴外安藤すみに対する求償債権の債権証書を控訴人に交付すべき義務があるにもかかわらず、右債権証書を控訴人に交付しなかったものであって、右と同様に、法律上の原因がなく利益を得、控訴人に対し損失、損害を被らせたものであるから、右行為は不法行為及び不当利得に当たる。」

(三) 同九行目の「3」を「4」に改め、同行目の「不法行為に基づく損害賠償として」の次に「、又は、不当利得に基づく返還請求として、」を加える。

(四) 同三枚目表二行目の「4」を「5」に、同四行目の「5」を「6」に、同九行目の「6」を「7」に、同一一行目の「7」を「8」に改める。

二  被控訴人らの主張等

1  控訴人の主張1に対する認否

民事訴訟法は、弁論準備手続につき非公開の原則を採用しているから(一六九条一項)、原審の訴訟手続は憲法八二条に違反するものではない。

2  被控訴人らの主張

次のように付加するほかは、原判決の事実及び理由三の1ないし3(原判決三枚目裏四行目から同四枚目表六行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

(一) 原判決四枚目表四行目の「抵触する。」の次に「また、福岡高等裁判所の判決は、右事件について、被控訴人福岡県信用保証協会の右金員の受領は法律上の原因を有する正当な法律行為であると判示しているから、右金員の受領に関する控訴人の主張は既判力に抵触する。」を加える。

(二) 同六行目の次に次のように加える。

「4(一) 被控訴人福岡県信用保証協会が控訴人から右金員を受領した昭和五一年三月二二日から本件訴訟提起の日である平成一〇年一二月一七日まで、三年又は一〇年が経過した。

したがって、右金員の受領を理由とする控訴人の被控訴人福岡県信用保証協会に対する不法行為に基づく損害賠償債権及び不当利得に基づく返還請求債権は、いずれも時効により消滅した。

(二) 昭和五九年六月四日から本件訴訟提起の日である平成一〇年一二月一七日まで、三年が経過した。

したがって、控訴人の被控訴人B及び被控訴人社団法人全国信用保証協会連合会に対する不法行為に基づく損害賠償債権は、いずれも時効により消滅した。

(三) 被控訴人らは、本訴において右各時効を援用する。」

第三当裁判所の判断

一  原審の訴訟手続について

1  本件記録によれば、平成一一年六月一日午後一時三〇分の原審第一回弁論準備手続期日の調書には、弁論準備手続期日が準備手続室において開かれ、控訴人と被控訴人ら訴訟代理人弁護士浅野謙一(以下「浅野弁護士」という。)とがそれぞれ同月一日付け準備書面を陳述し、甲号証及び乙号証を提出し、また、控訴人が文書提出命令の申立て及び人証の申請をしたが、右文書提出命令の申立て及び人証の申請はいずれも却下され、弁論準備手続が終結され、口頭弁論期日が同日午後一時四五分と指定告知された旨の記載があり、同日午後一時四五分の原審第三回口頭弁論期日の調書には、口頭弁論期日が公開された法廷において開かれ、控訴人と被控訴人ら訴訟代理人浅野弁護士とが弁論準備手続の結果を陳述し、口頭弁論が終結され、判決言渡期日が同年六月一〇日午後一時三〇分と指定告知された旨の記載があることが認められる。

2  証拠(当審における控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば、原審第一回口頭弁論期日及び第二回口頭弁論期日は、いずれもラウンドテーブル法廷において開かれ、口頭弁論が行われたこと、平成一一年六月一日午後一時三〇分の原審第一回弁論準備手続期日は、準備手続室において開かれ、控訴人と被控訴人ら訴訟代理人浅野弁護士が出頭し、社団法人全国信用保証協会連合会の職員と思われる人物が裁判所の許可を受けて傍聴し、控訴人と被控訴人ら訴訟代理人浅野弁護士とがそれぞれ同月一日付け準備書面を陳述し、甲号証及び乙号証を提出し、また、控訴人が文書提出命令の申立て及び人証の申請をしたが、右文書提出命令の申立て及び人証の申請はいずれも却下されたこと、次いで、準備手続室において、口頭弁論が行われ、口頭弁論が終結され、判決言渡期日が同年六月一〇日午後一時三〇分と指定告知されたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

右事実によれば、原審第一回弁論準備手続期日は、準備手続室において開かれ、右期日において右各訴訟行為が行われ、引き続いて、準備手続室において、原審第三回口頭弁論期日が開かれ、右期日において口頭弁論が終結され、判決言渡期日が指定告知されたものと認められる。

3  ところで、口頭弁論は、公開を停止した場合のほかは、これを公開しなければならないのであり(憲法八二条、裁判所法七〇条)、口頭弁論期日を開くに当たっては、傍聴席を設け、事件を表示するなど一般公衆が傍聴することができるような配慮がされていなければならない。なお、法廷は、一般的には、裁判官席、当事者席、仕切りで区切られた傍聴席等の設備を有する法廷用の部屋をいうが、必ずしも法廷用の部屋である必要はなく、公開の要請に沿う配慮がされていれば、準備手続室であっても、法廷に該当するものというべきである。

これを本件についてみるに、前記2の事実によれば、原審第三回口頭弁論期日は、原審第一回弁論準備手続期日に引き続いて、法廷用の部屋(ラウンドテーブル法廷を含む。)ではない準備手続室において開かれたものであり、その際、右準備手続室において、一般公衆が傍聴することができるような配慮がされていなかったものと認められるから、前記口頭弁論調書の記載にかかわらず、原審第三回口頭弁論期日は公開されていなかったものというほかはない。

そうすると、原審の訴訟手続は法律に違反したものであるから、原判決は取消しを免れないものというべく、本件を原審に差し戻すのが相当である。

二  結論

よって、民事訴訟法三〇五条、三〇八条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 丸山昌一 裁判官 草野真人 裁判官 進藤壮一郎)

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