大判例

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東京地方裁判所 平成11年(ワ)11963号 判決

原告 吉田武明

原告 吉田玉子

右訴訟代理人弁護士 中園繁克

小林美智子

被告 吉田頴永

被告 吉田博子

被告 吉田和正

被告 吉田佳代

被告 吉田朋代

被告 吉田享代

右六名訴訟代理人弁護士 成瀬寿一

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告らは、各自、原告らに対し、二〇〇万円とこれに対する平成八年九月九日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、原告らが、被告らは別件の訴訟において訴訟詐欺行為により原告らに対する勝訴の確定判決を取得したものであり、原告らは被告らに確定判決を取得されたことにより九億〇七五五万九七〇六円の損害を被ったと主張して、被告らに対して、一部請求として右損害とされる金額のうち二〇〇万円の損害賠償を求めた事件である。

二  争いのない事実

1  被告らは、昭和六三年一二月二七日、原告両名を相手に、大阪地方裁判所に対して損害賠償請求訴訟(同庁昭和六三年(ワ)第一二〇九八号損害賠償請求事件)を提起した(以下「別件第三事件」という。)。右訴訟事件は、原告らが提起していた大阪地方裁判所昭和六三年(ワ)第二四一三号預金債権確認等事件(以下「別件第一事件」という。)、同庁同年(ワ)第九八四一号損害賠償等請求事件(以下「別件第二事件」という。)に併合されて審理され(以下併合された後の訴訟を「別件訴訟」という。)、大阪地方裁判所は、平成五年三月一八日、別件第一事件、第二事件についての原告らの請求をすべて棄却し、別件第三事件についての被告らの請求を全部認容する判決を言い渡した(以下「別件第一審判決」という。)。

2  原告らは、右判決に対して、大阪高等裁判所に控訴したが(大阪高等裁判所平成五年(ネ)第七九三号事件)、同裁判所は、平成六年一二月七日、原告らの控訴を棄却する旨の判決を言い渡した。

3  原告らは、右判決に対して、最高裁判所に上告したが(最高裁判所平成七年(オ)第八八七号事件)、最高裁判所は、平成八年五月三〇日、原告らの上告を棄却する旨の判決を言い渡し、別件第一審判決は確定した。

4  被告らは、確定した別件第一審判決を債務名義として、第一勧業銀行堺筋支店の原告吉田武明名義の預金債権を差し押さえて、取り立てるなどした。

三  本件の争点

本件の争点は、別件第一審判決を取得したことによって、被告らは損害賠償義務を負うか否かである。当事者の主張の要旨は次のとおりである。

1  原告らの主張

被告らは、別件訴訟において、事実と相違する架空の主張をし、他人をして虚偽の供述をなさしめ、あるいは自ら虚偽の陳述をし、偽造文書を提出するなどしたものであり、その結果、別件第一審判決、第二審判決、上告審判決を取得したものである。被告らの右各行為は訴訟詐欺に当たり、被告らは、これによって生じた原告らの損害を賠償すべきであるところ、原告らは、別件第一審判決が確定したことによって、別件第一事件、第二事件の敗訴により取得し得るものが取得できなくなったり、別件第三事件の敗訴により支払わなくてよいものを支払わざるを得なくなったりするなどして合計九億〇七五五万九七〇六円の損害を受けた。

2  被告らの主張

原告らの主張は争う。別件訴訟では、原告らは、十分な攻撃防禦方法を尽くした上で敗訴判決を受けたものであり、原告らは、再審によってしか不服を申し立てることはできない。形式的に異なる損害賠償請求も再審事由である刑事事件の有罪判決等明白な証拠が存在する場合以外は許されないというべきである。

第三判断

一  原告らの主張は、要するに、別件訴訟において、被告らは虚偽の主張をし、かつ、内容が虚偽の証拠を提出することによって、第一審ないし上告審の各裁判所を欺罔し、誤った事実の認定をさせて、被告らが勝訴する内容の確定判決を取得したものであり、この確定判決を取得したことをもって原告らに対する不法行為に当たるというものである。

そうしてみると、原告らの本訴請求は、損害賠償請求の形をとっているものの、その実質は、別件訴訟の過程において、被告らが虚偽の主張をし、内容が虚偽の証拠が提出したことによって、誤った内容の判決が確定したと主張しようとするものであり、別件訴訟の確定判決に対する再審を求めているのに等しいものといわざるを得ない。

二  ところで、当事者間に確定判決が存在する場合に、その成立過程における相手方の不法行為を理由として、確定判決の既判力ある判断と実質的に矛盾する損害賠償請求をすることは、確定判決の既判力による法的安定を著しく害する結果となるから、原則として許されるべきではなく、当事者の一方が、相手方の権利を害する意図の下に、作為又は不作為によって相手方が訴訟手続に関与することを妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔するなどの不正行為を行い、その結果本来あり得べからざる内容の確定判決を取得し、かつ、これを執行したなど、その行為が著しく正義に反し、確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情がある場合に限って、許されるものと解される(最高裁昭和四三年(オ)第九〇六号同四四年七月八日第三小法廷判決・民集二三巻八号一四〇七頁、最高裁平成五年(オ)第一二一一号同一〇年九月一〇日第一小法廷判決・判例時報一六六一号八九頁)。そして、民事訴訟においては、当事者の主張が相対立し、証拠関係も互いに相容れない内容のものが提出されることもまれではないが、当事者のある主張が虚偽か否か、当事者提出のある証拠が虚偽の内容を含むものか否かは、当該訴訟において審理を尽くされ、判断されるべきものであり、ひとたびその判断をした判決が適法な訴訟手続を経て確定すると、その判決に既判力等の一定の効力が与えられ、敗訴判決を受けた当事者が確定判決の判断と異なる判断を求めるためには、原則として再審によらなければならない。確定判決の判断が一方の当事者の主張と異なったからといって、本来あり得べからざる内容の確定判決が取得されたということはできず、また、一方当事者の提出した証拠と異なる内容の証拠が提出され、これが裁判所の事実認定に用いられたからといって当然に裁判所が欺罔されたということはできないのであり、確定判決の存在にもかかわらず損害賠償請求が許容され得る、「確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情がある場合」とは、単に当事者の主張が虚偽であるとか、当事者が提出した証拠の内容が虚偽であるとかというだけでなく、再審の訴えを提起すれば再審が認められ、かつ、その再審事由に当事者が関与したような例外的な事情が存在する場合を指すものというべきである。そうでなければ、確定判決を覆せる手続を再審の訴えに限ることによって、確定判決の既判力による法的安定性を確保しようとする法の趣旨が没却されてしまうからである。

三  これを本件についてみるに、原告らは、再審が認められるような事由、例えば被告らの虚偽の陳述に対する過料の制裁や証人の偽証に対する有罪判決などがあったことは何ら主張しておらず、確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情があると主張するものとは認められない。したがって、原告らの本訴請求は、その余について判断するまでもなく、いずれも失当といわざるを得ない。

よって、原告らの本訴請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 大槁弘)

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