東京地方裁判所 平成11年(ワ)12139号 判決 2001年3月30日
原告 株式会社スポット破産管財人 宮田眞
被告 株式会社日本エネルギー商事
代表者代表取締役 大石良徳
訴訟代理人弁護士 野中信敬
同 安田修
同 原口健
同 久保田理子
同 土井智雄
同 設楽公晴
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 主位的請求
被告は、原告に対し、四七八一万二二〇〇円及びこれに対する平成一一年六月一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 予備的請求
原告と被告との間において、原告が、被告が茨城県西茨城郡岩瀬町大字高幡地区の土地(面積二七二万七六九九・七四平方メートル)において経営するいわせロイヤルゴルフ倶楽部の別紙会員権目録一ないし四記載の会員権を有することを確認する。
第二事案の概要
一 株式会社スポット(以下「スポット」という。)は、岩瀬観光開発株式会社(以下「岩瀬観光開発」という。)が経営していた茨城県西茨城郡岩瀬町大字高幡所在のゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という。)の会員であったが、破産宣告を受け、原告が破産管財人に選任された。原告は、破産法五九条一項により本件ゴルフ場の会員契約を解除し、岩瀬観光開発に対して預託金の返還を求める訴訟を提起したところ、その請求を認容する判決があり、確定した。
本件は、原告が、岩瀬観光開発から営業を譲り受けた被告に対し、① 被告は本件ゴルフ場(ゴルフクラブ)の名称である「ウィルソンゴルフクラブジャパン」を続用しているから、商法二六条一項の類推適用による責任を負う、② 被告は岩瀬観光開発の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしているから、商法二八条による責任を負う、③ 被告は岩瀬観光開発からゴルフ会員契約上の地位を承継していると主張し、主位的には、預託金及びこれに対する商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求め、予備的には、被告が経営する本件ゴルフ場の会員権を有することの確認を求めた事案である。
二 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は当事者間に争いがない。)
(1) スポットは、昭和六三年一二月ころ、岩瀬観光開発との間で、岩瀬観光開発が経営していた本件ゴルフ場(ウィルソンゴルフクラブジャパン)に法人正会員として入会する契約(以下「本件ゴルフ場会員契約」という。)を締結して、別紙会員権目録一ないし四記載のゴルフ会員権を取得したが、その際、岩瀬観光開発に対し、法人平日正会員資格保証金として一会員権あたり一二〇〇万円合計四八〇〇万円を預託した。
(2) 被告は、平成八年三月一二日、岩瀬観光開発との間で、本件ゴルフ場に関する営業譲渡基本契約を締結し、その営業の譲渡を受けた(以下「本件営業譲渡」という。)。
(3) スポットは、平成一〇年二月二七日、東京地方裁判所八王子支部において、破産宣告を受け、原告が破産管財人に選任された。(年月日及び裁判所につき、《証拠省略》)
(4) 原告は、岩瀬観光開発に対し、破産法五九条一項により、本件ゴルフ会員契約を解除し、預託金の返還を請求したが、岩瀬観光開発がこれを拒絶したため、東京地方裁判所八王子支部に預託金四七八七万四〇〇〇円の返還を求める訴訟(平成一〇年(ワ)第七七六号)を提起したところ、平成一〇年九月二四日、四七八一万二二〇〇円及びこれに対する平成一〇年三月一五日から支払済みまで年六分の割合による金員の支払を命じる判決が言い渡され、その後、同判決は確定した。
三 争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 商法二六条一項の類推適用の可否
【原告の主張】
被告は、本件営業譲渡後、岩瀬観光開発の商号そのものを続用しているわけではないが、岩瀬観光開発が使用していた、本件ゴルフ場の名称である「ウィルソンゴルフクラブジャパン」を平成一〇年四月まで続用していたところ、このゴルフ場の名称は営業の主体を表示する機能を有するものである。ゴルフ場経営の場合、商号よりもゴルフ場の名称の方が周知の対象となり、債権者の信頼もゴルフ場名に重点が置かれるから、尚更である。また、被告は、岩瀬観光開発のゴルフ会員に対して、自らが経営するゴルフ場についても会員資格を有するかのごとき扱いを行っている。さらに、岩瀬観光開発と被告は、同一グループ会社であり、取締役等も一部共通である。
このような場合には、商法二六条一項が類推適用されて、営業譲受人である被告は前記二(4)の預託金返還債務を連帯して負担しなければならず、被告との間にゴルフ会員たる地位が認められるべきである。
【被告の主張】
商法二六条一項は、同項が契約の自由もしくは私的自治に対する重大な制約を課するものであることにかんがみ、その適用を商号の続用がある場合にのみ限定し、商号以外の営業表示の場合にはその適用を予定していないこと、商号以外の営業表示にまで同項の適用が及ぶことにつき、一般通常人は予見可能性がないことなどからすれば、商法二六条一項を商号以外の営業表示に類推適用することは原則として認められないというべきである。
そして、本件のようなゴルフ場の名称については、会員の不安を抑制し、ゴルフクラブの安定的継続的運営を維持するため、営業譲渡に伴い、名称を継承する必要性が高いのであり、また、営業譲受人がゴルフ場の名称を引き続いて使用することは本来契約自由の原則に基づき当然許容されるはずのものであり、商品続用の責任を負担することについて何らの予見可能性も存しないことからすれば、本件においては、商法二六条一項を類推適用すべきではない。
(2) 商法二六条二項の通知の有無
【被告の主張】
仮に商法二六条一項の類推適用が認められるとしても、被告及び岩瀬観光開発は、営業譲渡後速やかに、ゴルフ会員に対し、「ごあいさつ」と題する文書を送付して、営業譲渡を通知しているから、同条二項により、被告は商号続用責任を負担しない。
【原告の主張】
被告が主張する挨拶文がゴルフ会員に対して送付された事実はない。仮に送付されていたとしても、同挨拶文には、「営業を委託譲渡」と記載されており、正確な情報がゴルフ会員に知らされていないから、同条二項の適用はない。
(3) 商法二八条の責任の有無
【原告の主張】
被告は、本件ゴルフ場の名称を「いわせロイヤルゴルフ倶楽部」と改称した際、預託金証書上の名称が従前の名称でも問題がないことを説明しており、これは商法二八条の債務引受広告に該当する。
【被告の主張】
原告が指摘する記載は、本件ゴルフ場の名称を「ウィルソンゴルフクラブジャパン」から「いわせロイヤルゴルフ倶楽部」に変更したことの告知と併せて、名称変更により、会員の岩瀬観光開発に対する預託金返還請求権に法的な変動、影響が生じるものでなく、会員は預託金証書の書換等特段の手続を要せず岩瀬観光開発に対し所定の預託金返還請求をなし得る旨を注意的に明らかにしたにすぎない。したがって、被告が会員に対し預託金返還債務の引受を承認した趣旨のものではない。
(4) ゴルフ会員契約上の地位の移転の有無
【原告の主張】
被告は、岩瀬観光開発から、本件ゴルフ会員契約の一方当事者たる地位の一部承継を受けており、原告に対し、ゴルフ会員契約上の債務を負担している。
すなわち、被告は、別件訴訟(東京地方裁判所平成一一年(ワ)第六一五九号)において、営業譲渡を受けた際、ゴルフ会員からの年会費については被告が受領することになった旨の主張を行い、岩瀬観光開発との間でゴルフ会員契約を締結した会員に対しても、少なくとも平成一〇年以降の年会費を被告名義の銀行口座に送金して支払うよう督促しており、また、本件ゴルフ場施設の優先利用を認めている。さらに、被告は、本件ゴルフ場の名称を「いわせロイヤルゴルフ倶楽部」と改称した際、会員に対して、預託金証書上の名称が従前の名称でも問題のないことを説明しており、これは、被告が預託金返還債務を承継することを明らかにしたものである。
岩瀬観光開発から被告への契約上の地位の移転は、債権者であるゴルフ会員の承諾を得ずに行われたものであるから、預託金返還債務は重畳的債務引受となり、被告及び岩瀬観光開発が連帯債務を負うものである。
【被告の主張】
岩瀬観光開発と被告との間で、本件ゴルフ会員契約上の地位の移転を合意した事実は存在しないし、原告が本件ゴルフ会員契約の一方当事者として契約上の地位の移転に同意した事実もない。
被告は、岩瀬観光開発から本件ゴルフ場の営業を譲り受けたが、その営業譲渡の内容は、本件ゴルフ場の営業に関わる一切のうち固定資産等を除いた資産を譲り渡すというものであり、ゴルフ会員の地位に変容をもたらすゴルフ会員契約の一方当事者の地位の移転・承継の合意は包含されておらず、岩瀬観光開発のゴルフ会員に対する預託金返還債務や岩瀬観光開発とゴルフ会員との間のゴルフ会員権契約については、当然に承継しているものではない。
(5) 権利の濫用
【被告の主張】
前記第二の二(4)の確定判決は、預託金会員制ゴルフクラブの会員が破産した場合に破産管財人が破産法五九条一項により会員契約を解除することができないとした最高裁判所判決が出たことにより、少なくとも実質的に執行力等を喪失するに至っていることが明らかである。同判決により、原告が請求を行うことや破産裁判所の許可行為自体が不適法なものであったことが実証されたものといえ、原告が今後かかる主張を行ったり権利行使に及ぶことは明白な権利濫用の瑕疵を帯びるものである。
【原告の主張】
被告の主張は争う。
第三当裁判所の判断
一 認定事実について
前記争いのない事実等に《証拠省略》を総合すれば、次の事実が認められる。
(1) 岩瀬観光開発は、平成八年三月一二日、被告(旧商号は株式会社北関東石油であり、平成八年九月二五日から現商号となった。)との間で、下記の約定(要旨)で、本件ゴルフ場の営業を被告に譲渡する旨の基本契約を締結して、本件ゴルフ場の営業を譲渡した(本件営業譲渡)。
記
ア 被告は、岩瀬観光開発より、本件ゴルフ場に関する、土地、建物及び資産に計上されるコース勘定以外の資産をすべて譲り受ける。
イ 被告は、岩瀬観光開発より、本件ゴルフ場の営業に必要な土地・建物等を賃借する。
ウ 被告及び岩瀬観光開発は、本件営業譲渡に、本件ゴルフ場に関する補充会員の募集及び付帯営業を含むすべての営業が包含されていることを確認する(但し、被告がその名義で取得すべき食堂経営等に関する許認可等を除く)。
(2) いわゆるバブル経済崩壊後、ゴルフ業界もみぞうの不況に陥り、被告を中心とする企業グループである日エネグループに属するゴルフ場経営会社六社(岩瀬観光開発を含む。)も経営的に非常に厳しい状況にあった。
そこで、平成八年、経費削減対策・集約的管理のため、それまで一ゴルフ場一社体制で格別に行ってきた複数のゴルフ場運営を被告のもとに一元化し、効率的な運営を目指すための措置として、営業譲渡がされることとなり、その一環として本件営業譲渡がされた。
(3) 被告は、同年四月一九日、公正取引委員会に対し、本件営業譲渡の届出をし、同年四月二三日、これが受理された。
(4) 岩瀬観光開発は、同年五月二四日、被告に対し、本件営業譲渡に基づき、本件ゴルフ場に関する資産(車両運搬具・工具器具備品・電話加入権・商標権)を、代金合計一億二五七一万五四五四円で売り渡した。
(5) 岩瀬観光開発は、同年五月末日ころ、本件ゴルフ場の会員らに対し、「ごあいさつ」と題する文書を送付した。その文書には、「(株)北関東石油ゴルフ事業本部に営業を委託譲渡し、運営をしていただくことにいたしました。」、「来る平成八年六月一日より、(株)北関東石油ゴルフ事業本部での営業を開始いたします。」等の記載がある。
(6) 被告は、本件営業譲渡後も、本件ゴルフ場の従前の名称である「ウィルソンゴルフクラブジャパン」の名称を続用していたが、平成一〇年四月、現在の名称である「いわせロイヤルゴルフ倶楽部」に変更した。
被告は、本件ゴルフ場の会員らに対し、「CLUB NEWS vol.4(以下「本件クラブニュース」という。)において上記名称変更を通知した。本件クラブニュースには、「一 コース名称変更のお知らせ 今春にご案内の通り、平成一〇年六月二〇日付をもちまして『ウィルソンスポーティングッズ社』との商標ライセンス契約が解消されました。新生「いわせロイヤルゴルフ倶楽部いわせコース」に今までと変わらぬご愛顧を賜ります様、お願い致します。」、「旧名称『ウィルソンゴルフクラブジャパン』新名称『いわせロイヤルゴルフ倶楽部』」、「※預託金証書上の名称は旧名称のままで法的にも何ら問題ございません。」との記載がある。
(7) 被告は、平成一〇年六月一五日、スポットに対し、本件ゴルフ場にかかる平成一〇年度の年会費及び未納のある年度の年会費を請求した。本件ゴルフ場の年会費の支払先口座としては、本件営業譲渡の際年会費は被告が収受することになったので、被告名義の銀行口座が指定されていたが、平成一一年度分の年会費から支払先口座が「いわせロイヤルゴルフ倶楽部いわせコース」名義の口座に変更された。その理由について、原告の照会に対し、被告は、口座名を被告としておくよりも、ゴルフ場コース名を掲げた方が端的にして簡明であり、ゴルフ会員の理解を得やすいからであると回答した。
(8) 被告は、本件営業譲渡後、スポットに対し、本件ゴルフ場を優先的に利用することを認めていた。
(9) 被告は、本件営業譲渡後、当初は、岩瀬観光開発から、本件ゴルフ場の土地、建物を賃借していたが、その後、岩瀬観光開発がこれを岩瀬管財株式会社に譲渡したことに伴い、同社からこれを賃借している。
ところで、原告は、スポットにおいて前記(5)の文書を受け取っていない旨主張し、この主張に符合する証拠として甲二七ないし二九(平成一二年一二月一一日作成の各陳述書)があるが、これらは、岩瀬観光開発が会員に対しこの文書を発送し、これを受領した会員がいること、陳述書の作成日はいずれもこの文書の四年余後であること(《証拠省略》)に照らすと、たやすく採用し難く、他方、発送し忘れたり、発送しても到達しないこともあり得るから、スポットにおいてこの文書を受け取ったとも認め難い。
二 争点(1)(商法二六条一項の類推適用の可否)について
(1) 原告は、被告は本件ゴルフ場(ゴルフクラブ)の名称を続用しており、ゴルフクラブの名称は営業の主体を表示する機能を有するものであるから、商法二六条一項が類推適用されるべきである旨主張するので、検討する。
ところで、商法二六条一項が、譲渡人の営業によって生じた債務について、譲渡人の商号を続用する譲受人に弁済義務を負わせた趣旨は、商号の続用がある場合においては、譲渡人の営業上の債権者が、営業主体の交代を知ることができないため、または、その事実を知っていたとしても譲受人が当然債務も引き受けたと考えがちなため、債権の保全措置を講ずる機会を失うことが多いところから、譲渡人の債権者を保護しようとするものと解される。ただ、この規定は、商法第四章の商号の部分に規定されているのであるから、類推適用に当たっては、商号の同一性も考慮して、商号の続用と同視することができるか否かを検討すべきである。
(2) これを本件についてみると、前記一で認定したとおり、被告は、平成八年三月一二日に岩瀬観光開発から本件ゴルフ場の営業を譲り受けた(本件営業譲渡)後も、平成一〇年四月にゴルフクラブの名称を「いわせロイヤルゴルフ倶楽部」に変更するまで「ウィルソンゴルフクラブジャパン」の名称を続用していたものであるが、本件営業譲渡当時において、譲渡人の商号は「岩瀬観光開発株式会社」であるのに対し、譲受人の商号は「株式会社北関東石油」であって、共通点ないし類似性は認められず、また、平成八年九月二五日に変更された被告の現在の商号である「株式会社日本エネルギー商事」と「岩瀬観光開発株式会社」との間にも、共通点ないし類似性は認められない。そして、商号である「岩瀬観光開発株式会社」とゴルフクラブの名称である「ウィルソンゴルフクラブジャパン」との間にも、共通点ないし類似性がない。
また、ゴルフ場の経営においては、ゴルフクラブの名称が営業上使用され、営業の主体を表示する機能を有してはいるが、そうであるからといって、その経営会社の商号が営業の主体を表示する機能を果たしていないということはないのであって、《証拠省略》によれば、本件ゴルフ会員契約による会員資格保証金証書・法人正会員証には、ゴルフクラブ名とともに経営会社の商号が表示されていること、本件営業譲渡を通知した「ごあいさつ」と題する書面でも、被告の商号が会員らに対して示されていること、被告の会員らに対する平成一〇年度等の年会費の請求書にも、被告の商号が示されていることが認められる。そうすると、ゴルフクラブの名称のように営業上使用される名称が続用されていたとしても、債権者は営業主体の変更を認識しうるのが通常である。
(3) 以上によれば、本件においては、ゴルフクラブの名称が続用されたが、商法二六条一項を類推適用するのは相当でなく、原告の前記(1)の主張は採用することができない。
三 争点(3)(商法二八条の責任の有無)について
原告は、被告は、本件ゴルフ場(ゴルフクラブ)の名称をいわせロイヤルゴルフ倶楽部と改称した際に、預託金証書上の名称が従前の名称でも問題がないことを説明しており、これは商法二八条の債務引受広告に当たる旨主張する。
そこで検討するに、前記一(6)で認定したとおり、本件クラブニュースには、コース名称が変更された旨及び預託金証書上の名称は旧名称のままでも法的には何ら問題がない旨の記載はあるが、被告が岩瀬観光開発から営業を譲り受けた旨の文言も、岩瀬観光開発の債務を引き受ける旨の文言もないこと、本件クラブニュースが発行されたのは、被告が岩瀬観光開発から本件ゴルフ場の営業を譲り受けた約二年後である平成一〇年四月ころであることからすれば、本件クラブニュースの文言は、ゴルフクラブの名称の変更が、会員らのゴルフ会員契約上の地位に影響を及ぼさないことを示しているにすぎないのであって、岩瀬観光開発の営業上の債務を被告において引き受ける旨を表示したものと認めることはできない。
他に、原告の前記主張を認めるに足りる証拠はない。
四 争点(4)(ゴルフ会員契約上の地位の移転の有無)について
原告は、被告は、岩瀬観光開発から、本件ゴルフ会員契約の一方当事者たる地位の一部承継を受けている旨主張する。
そこで検討するに、前記一で認定したとおり、被告は、スポットに対し、本件ゴルフ場にかかる平成一〇年度の年会費及び未納のある年度の年会費を請求したこと、被告は本件営業譲渡後も、岩瀬観光開発との間でゴルフ会員契約を締結したスポットに対し、本件ゴルフ場施設の優先的利用を認めていること等の事情は認められるが、本件営業譲渡の内容の概要は前記一(1)のとおりであり、本件営業譲渡の基本契約書にはゴルフ会員契約上の地位を移転・承継する旨の記載はないこと(《証拠省略》)に照らすと、上記の年会費請求の事実及びスポットの優先的利用を認めていた事実のみでは、被告が、岩瀬観光開発から、本件ゴルフ会員契約上の地位を一部承継したことまでは認められない。
また、本件クラブニュースが原告主張の債務引受を表示したものと認められないことは、前記三で判断したとおりであり、他に、原告の前記主張を認めるに足りる証拠はない。
五 結論
以上によれば、原告の本訴請求はいずれも理由がないから棄却し、主文のとおり判決する。
(裁判官 山口博)
<以下省略>