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東京地方裁判所 平成11年(ワ)13881号 判決

原告 中田啓子

右訴訟代理人弁護士 中田茂春

被告 コスモ証券株式会社

右代表者代表取締役 村上朝昭

右訴訟代理人弁護士 児玉公男

同 斎藤祐一

同 岩田拓朗

同 三浦繁樹

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告に対し、金二七二八万一五一六円及びこれに対する平成一一年七月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  第一項につき仮執行宣言

第二事案の概要

本件は、原告が被告の従業員の違法な勧誘により、ワラントの買い付け及び株式の信用取引をさせられ、損害を被ったと主張して、不法行為に基づき、当該取引による合計損害額の一部である二七二八万一五一六円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成一一年七月六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  原告は、昭和五八年七月一五日、被告新橋支店の椎橋正代を担当者として、被告を通じて証券取引を開始した。(争いがない。)

2  被告新橋支店における原告の担当者は、平成二年五月ころに椎橋正代から伊藤光子、平成四年三月ころに伊藤光子から上田佳子に、平成六年三月ころ上田佳子から下平成美に、平成八年六月ころ下平成美から西村伸之(以下「西村」という。)にそれぞれ替わった。(弁論の全趣旨)

3  原告は、平成九年六月九日、三和シャッターワラント二五〇ワラントを単価八・三七五ポイント、代金一一九二万三九〇五円で買い、平成一〇年一月六日、同ワラント二五〇ワラントを単価〇・〇一ポイント、代金一万六五一六円で売って一一九〇万七三八九円(手数料及び税金を含む。以下の取引も同じ。)の損失を被った。(乙第一号証)

4  原告は、平成一〇年五月一九日、信用取引により、住友金属鉱山株二万株を、代金合計一一五九万二〇〇〇円で買った。(争いがない。)

5  原告は、平成一〇年六月三〇日、信用取引により、日本長期信用銀行(以下「長銀」という。)株二五万株を、代金合計二〇九八万八〇〇〇円で買った。(争いがない。)

6  原告は、平成一〇年八月三日、長銀株一〇万株を単価四九円、代金四九〇万円で売り決済して三六一万七〇三六円の損失を被った。(争いがない。)

7  原告は、平成一〇年九月二八日、住友金属鉱山株二万株を単価四三五円、代金八七〇万円で売り決済して三一五万五九五三円の損失を被り、長銀株一五万株を単価一五円、代金二二五万円で売り決済して一〇五二万五〇四三円の損失を被った。(争いがない。)

二  争点

1  ワラントの説明義務違反

(原告の主張)

西村は、原告に三和シャッターワラントの買い付けを勧める際に、ワラントの特質について何ら説明せず、ワラントの説明書を交付しなかった。

また、それ以前のワラントの取引においても、ワラントの特質についての説明はなく、ワラントの取引説明書も受け取っていない。

(被告の主張)

西村は、原告の最初のワラント取引である平成九年二月二六日の住友電工ワラントの買い付けに先立ち、原告に対し、ワラントの仕組みやリスク、すなわち株価が上昇する以上に利益が上がる一方で株価の下落時には価値がゼロになってしまうリスクもあること、権利行使期間があり、それまでに権利を行使しないと価値がゼロになってしまうこと、ポイント制であることなどを詳しく説明し、ワラント取引説明書を渡している。

また、原告は、三和シャッターワラントの買付前に、ワラント取引で極めて高い利回りの資金運用を行い、多額の利益を得ているのであるから、少なくとも三和シャッターワラントの買付時においては、ワラントが債券や株式とは性質を異にする投機性の高い商品であることを理解していたものである。

2  信用取引の説明義務違反

(原告の主張)

被告は、原告が信用取引を開始するに当たり、信用取引口座設定約諾書についての詳しい説明や、信用取引については女性の顧客には特別承認を必要とする旨の社内規則が存在することについての説明をしなかった。

(被告の主張)

西村及び被告新橋支店従業員の浜垣義一(以下「浜垣」という。)は、平成九年六月二六日に原告が信用取引口座を再度開設した際に、信用取引の仕組み、リスク、委託証拠金及び追証等につき説明した。

なお、信用取引の開始条件に関し、被告の社内規則では、女性であっても、自分で仕事を持っていて定収入があり、信用取引を行うのに適した資質を持っている人物の場合は、部店長の面談を経た上で信用取引を開始することになっているのであり、そのほかにも、信用保証金が五〇〇万円以上あること、年齢が八〇歳未満であることが信用取引の開始条件とされているが、これはあくまでも社内規則であり、顧客に告知する必要はないから、これを告知しなかったことが何ら違法になるわけではない。

3  断定的判断の提供等による違法な勧誘行為

(原告の主張)

(一) 西村は、三和シャッターワラントの買い付けを勧める際、原告の勤務先に数日間にわたり電話をして、「ワラント債は、ポイント制であり、二、三ポイント上がれば二、三日の短期間で倍近く儲かりますよ。買いましょう。」と断定的判断を述べ、原告を執拗に勧誘した。原告は、勤務中であったために、言動に制限がある中で右ワラント購入の意思決定を迫られ、浅慮のまま購入に応じざるを得なかった。

(二) 西村は、原告に住友金属鉱山株の買い付けを勧める際、その事実がないのに、「アラスカで大きな金鉱が発見されたと住友金属鉱山株式会社の広報課から情報を入手した。正式に発表したらストップ高になる。買わなければ損だ。買いだ。」と虚偽の情報を述べ、その購入を迫った。

(三) 西村は、原告に長銀株の買い付けを勧める際、「長銀と住友銀行とが合併するから、今一株八〇円で買えば一株一〇〇円になるのは明白。購入株数は今なら保証金限度一杯で二五万株買えるから。」と断定的判断を述べて勧誘した。

(四) 本件取引当時、被告においては、企業の立て直しのため、営業成績が一定の基準に達しない営業社員に早期退職者を迫るなどの状況があり、西村は、自己の営業成績を上げるために、原告に対し、前記のような強引な営業活動をしたものである。

(被告の主張)

西村が、原告主張のような勧誘をした事実はない。また、被告が営業社員に違法な勧誘を推奨したことはなく、西村は年齢的に早期退職者募集の対象ともなっていなかった。

第三争点に対する判断

一  甲第一号証の一、二、第二号証、第三号証の一ないし三、第五号証、乙第一号証、第二号証、第三号証の一、二、第四号証、第五号証、第六号証の一、二、第七号証、第八号証の一、二、第一二号証の一、第一三ないし二三号証、証人西村の証言及び原告本人尋問の結果によれば、次の事実を認めることができる。

1  原告(旧姓阿部啓子)は、昭和二一年九月四日に出生し、本件取引当時は、ウォルト・ディズニーの子会社である外資系企業のブエナ・ビスタ・ジャパン株式会社に二〇年以上勤続して同社の人事部長の地位にあり、現在は、ウォルト・ディズニー・インターナショナル・ジャパン株式会社において人事、総務マネージャーとして勤務している者である。

2  原告は、昭和五八年七月一五日、被告新橋支店を通じて、丸善石油株を買い、証券取引を開始した。

3  原告は、被告新橋支店(当時の商号は大阪屋證券株式会社)において、昭和六〇年八月、信用取引口座設定約諾書(乙第一九号証)に署名捺印した上で、信用取引により、山之内製薬株一〇〇〇株を単価三一八〇円、代金三一八万円で買い、昭和六二年一二月まで、山之内製薬株、日本製鋼所株、東京電力株を信用取引により売買していた。

4  原告は、平成九年二月のワラント購入以前において、被告新橋支店との間で二〇回(購入と売却を合わせて一回と数える。)を超える株及び投資信託の取引を行っており、一回で一〇〇〇万円を超える取引も行っていた。

5  西村は、平成九年二月二六日、原告に対し、ワラントの内容、ワラントは株を買うよりも株価が上昇すればその二、三倍の利益が生じる一方、株価の下落時には価値がゼロになってしまうこともあること、ワラントには権利行使期間があり、権利行使期間が経過するとワラントの価格がゼロになってしまうこと、ワラントの価格はポイント制であることなどを説明し、住友電工ワラントの買い付けを勧めた。

原告は、西村の勧誘に応じて、住友電工ワラント九ワラントを代金合計一七八万八九八二円で買った。

西村は、原告の勤務先を訪問し、原告に対し、国内新株引受権証券(国内ワラント)取引説明書(乙第三号証の一)及び外国新株引受権証券(外貨建ワラント)取引説明書(乙第三号証の二)を渡し、原告は、国内新株引受権証券及び外国新株引受権証券の取引に関する確認書(乙第四号証)に署名捺印して西村に渡した。右各説明書には、ワラントは新株引受権証券であり、新株引受権証券とは、一定期間内に一定の価格で一定数量の新株式を引き受けることができる権利を表示する有価証券であること、権利行使期間、行使価格の意味、ワラントの価格は株価の動きに影響を受けるが、その変動率は株価の変動率に比べて大きくなる傾向があること、ワラントには株式投資以上の損失を被ること及び権利行使期間の経過により無価値となるなどのリスクがあること、更に、外貨建ワラントには、為替の変動による影響を受けることがあることなどが記載されており、原告が署名捺印した確認書には、「私は貴社から受領した「国内新株引受権証券取引説明書」及び「外国新株引受権証券取引説明書」の内容を理解し、私の判断と責任において国内新株引受権証券及び外国新株引受権証券の取引を行います。」と記載されている。

6  原告は、平成九年二月二八日、住友電工ワラント二ワラントを単価二一ポイント、代金四二万四九七四円で買った。

7  原告は、平成九年四月二五日、富士通ワラント一九ワラントを単価一六・八ポイント、代金三二二万四七八九円で、同年五月一日、同ワラント一〇ワラントを代金合計一九二万五六二七円でそれぞれ買った。

8  原告は、平成九年五月六日、住友電工ワラント一一ワラントを単価二五・一五ポイント、代金二七〇万二八七六円で売って四八万八八三〇円の利益を得、富士通ワラント二九ワラントを単価二二・三ポイント、代金六三二万四八六〇円で売って一一七万四四四四円の利益を得た。

9  原告は、平成九年五月二七日、富士通ワラント七ワラントを単価二一・九ポイント、代金一五五万〇一一一円で、同月二八日、同ワラント一六ワラントを単価二二・三ポイント、代金三六〇万四三四二円でそれぞれ買い、同月三〇日、同ワラント二三ワラントを単価二四・六三ポイント、代金五五四万三二七一円で売って三八万八八一八円の利益を得た。

10  西村は、平成九年六月九日、原告に対し、電話で三和シャッターワラントの権利行使価格や権利行使期間などを説明した上で、同ワラントの買い付けを勧め、原告はこれに応じて、三和シャッターワラント二五〇ワラントを単価八・三七五ポイント、代金一一九二万三九〇五円で買った。

11  原告は、平成九年六月一六日、富士通ワラント五〇ワラントを単価二二・七五ポイント、代金六五五万四八四三円で買い、同月二〇日、同ワラント五〇ワラントを単価二六ポイント、代金七四〇万〇九二六円で売って八四万六〇八三円の利益を得た。

12  西村及び浜垣は、平成九年六月二五日、原告の勤務先を訪問し、原告に対して、信用取引の内容、委託保証金率、追証等について三〇分程度説明し、信用取引制度説明書(乙第一三号証)を渡した。

原告は、信用取引口座設定約諾書(乙第一二号証の一)の委託者欄に署名捺印し、信用取引制度説明書受領印欄にも捺印して、被告に交付した。

原告は、同日、信用取引により、ファルコバイオシステム株五〇〇〇株を代金合計一〇二二万円で買った。

なお、被告には、信用取引口座の開設にあたり、女性の顧客については、自分で仕事を持っていて定収入があり、信用取引を行うのに適した資質を持っている人物を特別に申請し、部店長及び本部の特別承認を得て取引口座を開設するという社内規則があり、原告についても右特別承認手続に基づき、取引口座が開設された。

右同日ころ、三和シャッターの株価が上昇し、三和シャッターワラントの価格が九・五ポイント位に上昇し、利益が出る状態にあったので、西村は原告に対し、三和シャッターワラントの売却を勧めたが、原告は、売却をしなかった。

13  原告は、平成九年六月二六日、フジクラワラント五〇ワラントを単価一七・二五ポイント、代金四九四万六四三七円で買い、同年七月一七日、同ワラント五〇ワラントを単価一九・七五ポイント、代金五七〇万八〇八一円で売って七六万一六四四円の利益を得た。

14  原告は、平成一〇年一月六日、三和シャッターワラント二五〇ワラントを単価〇・〇一ポイント、代金一万六五一六円で売って一一九〇万七三八九円の損失を被った。

15  西村は、平成一〇年二月二二日、同年一月に弁護士である原告の義父(本件原告訴訟代理人)が、ワラントの権利行使に関する連絡票(乙第二号証)を見て原告の証券取引を心配している旨を原告から聞いていたので、原告に対して、信用取引制度説明書(乙第一三号証)を再度渡して、原告が自己責任で信用取引を行っている旨の確認書を差し入れて欲しいと要求したところ、原告は、これを承諾し、株式取引に関する確認書(乙第一四号証)に署名捺印し、西村に渡した。右確認書には、「私は、貴社から受領した「信用取引説明書」の内容を理解し、私の判断と責任において株式取引を行っていたことを確認すると共に、今後も私の判断と責任において取引を行います。」と記載されている。

16  西村は、平成一〇年三月二日、原告に対し、電話で住友金属鉱山がアラスカで金鉱を発見したのではないかという業界の噂があり、もしそれが新聞で発表されれば同社の株価が上がる可能性があると述べて、同社の株の買い付けを勧めた。

原告は、西村の勧誘に応じて、信用取引により、住友金属鉱山株二〇〇〇株を単価五六三円、代金一一二万六〇〇〇円で、同株二万三〇〇〇株を単価五六五円、代金一二九九万五〇〇〇円でそれぞれ買い、さらに同月四日、同株二万株を単価五六二円、代金一一二四万円で買った。

17  西村は、平成一〇年五月一五日、原告に対し、アラスカの金鉱についての発表があるとしても、アラスカの雪解けの後の同年八月ころまではないと考えられ、住友金属鉱山は同年四月に自社株買いの発表を行っていたが、実際に自社株買いが行われるのは同年六月の総会以降になることからすれば、同株の価格はしばらく動かないこと、一方でサンリオの業績がよいことなどを説明し、住友金属鉱山株を売って、サンリオ株を買うことを勧めた。

原告は、西村の勧誘に応じて、住友金属鉱山株四万五〇〇〇株を単価五六六円、代金二五四七万円で売り決済して四一万三二〇九円の損失を被り、信用取引により、サンリオ株一万七〇〇〇株を単価一一八〇円、代金二〇〇六万円で買った。

18  西村は、平成一〇年五月一九日、原告に対し、住友金属鉱山が六月以降に自社株買いを行うことや、同社の株価の推移が好ましかったことから、原告に再度住友金属鉱山株の買い付けを勧誘した。

原告は、西村の勧誘に応じて、信用取引により、住友金属鉱山株八〇〇〇株を単価五七九円、代金四六三万二〇〇〇円で、同株一万二〇〇〇株を単価五八〇円、代金六九六万円でそれぞれ買った。

19  原告は、平成一〇年五月二五日、サンリオ株一万七〇〇〇株を単価一三八〇円、代金二三四六万円で売り決済して三〇五万二二四九円の利益を得た。

20  西村は、平成一〇年六月三〇日、原告に対し、長銀と住友信託銀行の合併が報道され、この合併が成立すれば、いずれ長銀の株価が上がる可能性がある旨を述べて、長銀株の買い付けを勧めた。

原告は、西村の勧誘に応じ、信用取引により、日本長期信用銀行株一〇〇〇株を単価八二円、代金八万二〇〇〇円で、同株一万株を単価八三円、代金八三万円で、同株二三万九〇〇〇株を単価八四円、代金二〇〇七万六〇〇〇円でそれぞれ買った。

21  西村と被告新橋支店の浅田支店長は、平成一〇年八月三日、原告に対し、長銀と住友信託銀行の合併の話が立ち消えとなり、長銀の株価が大きく下落し始め、額面割れをした旨を説明し、同株を全部売却することを勧めた。

原告は、右説明を聞いた上で、長銀株一〇万株を単価四九円、代金四九〇万円で売り決済して三六一万七〇三六円の損失を被ったが、残りの長銀株については、長銀が潰れるわけがないと述べて売却しなかった。

22  原告は、信用取引により、住友金属鉱山株及び長銀株を買い付けていたが、その後の株価の下落により、原告が預託した委託保証金に維持率不足が生じて追証を差し入れる必要に迫られたため、西村、浅田及び浜垣は、平成一〇年九月二五日、原告に対し、追証を避けるためにこれらの株の売り決済を勧めた。

原告は、右勧誘に応じて、平成一〇年九月二八日、住友金属鉱山株二万株を単価四三五円、代金八七〇万円で売り決済して三一五万五九五三円の損失を被り、長銀株一五万株を単価一五円、代金二二五万円で売り決済して一〇五二万五〇四三円の損失を被った。

二1  原告は、本人尋問において、西村は、ワラントに関する説明はほとんどせず、ワラントは権利行使期間が経過すると価値がなくなることやワラントには外貨建のものがあることなどの説明はなかった旨述べている。

しかし、既に認定したとおり、原告は、本件取引当時は、ウォルト・ディズニーの子会社である外資系企業のブエナ・ビスタ・ジャパン株式会社に二〇年以上勤続して同社の人事部長の地位にあった者であり、ワラント取引を始めるまでにも、被告新橋支店において、株の信用取引も含めて多数回にわたる証券取引を行い、一回で一〇〇〇万円を超える取引も行っていたのであるから、新たな種類の取引であるワラント取引を始めるに当たって、担当者からワラントに関する説明をほとんど聞かなかったということは考えがたい。

さらに、原告は、ワラントはポイント制であり、株よりも上下の値動きが激しいこと(原告本人調書一九六項)など、ワラントについての一般的説明を聞いたことは認めており(原告本人調書一二八項)、住友電工ワラントを買い付けた際に、ワラントの仕組み等が詳細に記載されている国内新株引受権証券(国内ワラント)取引説明書(乙第三号証の一)及び外国新株引受権証券(外貨建ワラント)取引説明書(乙第三号証の二)を受け取ったことも認めているから(原告本人調書一一六ないし一二一項)、ワラントに関する説明をほとんど受けていないとの原告の供述はにわかに採用できない。

2  また、原告は、平成九年六月二五日に信用取引を開始した際に、信用取引に関する詳しい説明は受けていない旨を述べている。

しかし、右1に述べたとおり、原告の投資経験等に照らし、新たな種類の取引である信用取引を始めるに当たって、担当者から信用取引に関する説明をほとんど聞かなかったということは考えがたい。

さらに原告自身も、信用取引は三割の保証金を入れ、その保証金は株券などでもよいこと(原告本人調書二二ないし二四項)など、信用取引については大体理解していたことを認めていること(原告本人調書三〇項)、信用取引制度説明書(乙第一三号証)についても、最初に信用取引をしたときにも見せられたかも知れない旨を述べ(原告本人調書一九二、一九三項)、さらに少なくとも本件において原告が問題としている信用取引を行う前である平成一〇年二月二二日には、信用取引についての質問を西村にして、改めて信用取引制度説明書(乙第一三号証)を受け取り、自己責任で信用取引を行っている旨の株式取引に関する確認書(乙第一四号証)に署名捺印したことを認めていること(原告本人調書一七〇項)からすれば、信用取引についての詳しい説明は受けていない旨の原告の供述はにわかに採用できない。

3  以上によれば、被告の担当者からワラントや信用取引につきほとんど説明を受けず、その内容、特質等について理解しないまま取引を継続していたかのようにいう原告の本人尋問における供述は採用できず、他に前記一の認定を左右するに足りる証拠はない。

三  争点1(ワラントの説明義務違反)について

既に認定したとおり、西村は、原告に対し、ワラントの取引を始めるに当たって、ワラントの内容、特質等を説明して、国内新株引受権証券(国内ワラント)取引説明書(乙第三号証の一)及び外国新株引受権証券(外貨建ワラント)取引説明書(乙第三号証の二)を交付したこと、同説明書には、ワラントは新株引受権証券であり、新株引受権証券とは、一定期間内に一定の価格で一定数量の新株式を引き受けることができる権利を表示する有価証券であること、権利行使期間、行使価格の意味、ワラントの価格は株価の動きに影響を受けるが、その変動率は株価の変動率に比べて大きくなる傾向があること、ワラントには株式投資以上の損失を被ること及び権利行使期間の経過により無価値となるなどのリスクがあること、更に、外貨建ワラントには、為替の変動による影響を受けることがあることなどが記載されていること、三和シャッターワラントの買い付けに際し、西村が三和シャッターワラントの権利行使価格、権利行使期限等を説明していることからすれば、西村のワラントに関する説明等は、既に認定した原告の投資経験等に照らすと、ワラント取引に当たって証券会社の担当者に要求される注意義務を欠いたものということはできない。

したがって、ワラントについての説明義務違反をいう原告の主張は理由がない。

四  争点2(信用取引の説明義務違反)について

1  既に認定したとおり、被告担当者は、原告に対し、信用取引を始めるに当たり、信用取引の内容、特質等を説明して、信用取引制度説明書(乙第一三号証)を交付し、さらに、西村は、原告が本件で問題としている信用取引を行う前である平成一〇年二月二二日にも、原告に対し、再度信用取引制度説明書を渡して、原告から株式取引に関する確認書(乙第一四号証)を受領していることからすれば、西村の信用取引に関する説明等は、既に認定した原告の投資経験等に照らすと、信用取引に当たって証券会社の担当者に要求される注意義務を欠いたものということはできない。

2  なお、被告には、女性の顧客については、信用取引口座の開設にあたり、自分で仕事を持っていて定収入があり、信用取引を行うのに適した資質を持っている人物を特別に申請し、部店長及び本部の特別承認を得て、取引口座を開設するという社内規則があることが認められるが、この社内規則は、信用取引が投資金額に比べて多額の損失を被る可能性のあるリスクの高い取引であることから、被告が顧客の信用取引についての適合性を判断するために設けている規則であると解されるから、信用取引の仕組み自体の説明の他に、被告が適合性に関する社内規則を設けている旨の説明をしなくても違法とはいえない。

3  したがって、信用取引についての説明義務違反をいう原告の主張は理由がない。

五  争点3(断定的判断の提供等による違法な勧誘行為)について

1  原告は、西村が原告に対して三和シャッターワラントの買い付けを勧めた際に、「ワラント債は、ポイント制であり、二、三ポイント上がれば、二、三日の短期間で倍近く儲かりますよ。買いましょう。」と言われ、西村が原告に対して住友金属鉱山株の買い付けを勧めた際に、「アラスカで大きな金鉱が発見されたとの住友金属鉱山の広報課から聞いた確実な情報を入手した。正式に発表したらストップ高になるので、買いだ。」と言われ、更には、西村が原告に対して長銀株の買い付けを勧めた際に、「長銀と住友銀行とが合併するから、今一株八〇円で買えば、すぐ一株一〇〇円になる。」と言われた旨主張し、これに沿う原告の供述及び陳述書(甲第五号証)が存在する。

2  しかし、西村が右各取引の勧誘をした際に原告に述べた内容は前記認定のとおりであると認められ、右原告の供述等は、西村の証言及び既に認定した原告の投資経験等に照らし、にわかに採用することができず、他にこれらの事実を認めるに足りる証拠はない。

3  また、西村の勧誘の方法、態様等が、原告の任意の意思決定を妨げる程度に不当なものであったことを具体的に認めるに足りる証拠はなく、西村が営業成績を上げるために強引な営業活動を行ったという点についても、これを認めるに足りる確たる証拠はない。

そうすると、被告担当者である西村が違法な勧誘をしたとして、不法行為に基づき損害賠償を求める原告の請求は理由がない。

第四結論

以上によれば、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 寺尾洋 裁判官 野口忠彦 裁判官 山下博司)

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