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東京地方裁判所 平成11年(ワ)14436号・平11年(ワ)13323号 判決

平成一一年(ワ)第一三三二三号 保険金請求事件(甲事件)

平成一一年(ワ)第一四四三六号 保険金請求事件(乙事件)

甲事件原告・乙事件原告 滝澤貞子 (以下「原告滝澤」という。)

甲事件原告 佐久間寿美 (以下「原告佐久間」という。)

甲事件原告 大竹法 (以下「原告大竹」という。)

甲事件原告 小泉三浦 (以下「原告小泉」という。)

右四名訴訟代理人弁護士 伊藤紘一

甲事件被告 財団法人ケーエスデー

中小企業経営者福祉事業団 (以下「被告ケーエスデー」という。)

右代表者理事 小山方和

右訴訟代理人弁護士 小竹耕

甲事件被告 千代田火災海上保険株式会社 (以下「被告千代田火災」という。)

右代表者代表取締役 福田耕治

右訴訟代理人弁護士 高江満

同 阿部一夫

同 佐々木龍太

同 安田信彦

甲事件被告 ザ・ロンドン・アッシュアランス (以下「被告ロンドン」という。)

右日本における代表者 イアン・ドリーバ・ファーガソン

右訴訟代理人弁護士 島林樹

乙事件被告 エイアイユーインシユアランスカンパニー(エイアイユー保険会社) (以下「被告エイアイユー」という。)

右日本における代表者 吉村文吾

右訴訟代理人弁護士 服部邦彦

同 花崎浜子

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  甲事件

1  被告ケーエスデーは、原告滝澤に対し、金二〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年六月二四日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2  被告千代田火災は、原告滝澤に対し金一〇〇〇万円、原告佐久間に対し金三三三万三三三三円、原告大竹に対し金三三三万三三三三円、原告小泉に対し金三三三万三三三三円及び右各金員に対する平成一一年六月二四日から支払済みまで年六分の割合による金員をそれぞれ支払え。

3  被告ロンドンは、原告滝澤に対し金二五〇〇万円、原告佐久間に対し金八三三万三三三三円、原告大竹に対し金八三三万三三三三円、原告小泉に対し金八三三万三三三三円及び右各金員に対する平成一一年六月二四日から支払済みまで年六分の割合による金員をそれぞれ支払え。

二  乙事件

被告エイアイユーは、原告滝澤に対し、金六〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年七月九日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要(甲事件及び乙事件)

本件は、平成一〇年一一月一日にJR市川駅一番線ホーム下の線路上において電車に轢過されて死亡した故滝澤清治(以下「清治」という。)を被保険者又は被共済者(以下「被保険者」と総称することがある。)とする傷害保険契約又は共済契約(以下、「本件保険契約」と総称することがある。)の死亡保険金又は死亡補償費(以下「死亡保険金」と総称することがある。)の各受取人である原告らが、本件保険契約の保険者又は共済者(以下「保険者」と総称することがある。)である被告らに対し、清治が立ちくらみにより駅のホームから線路に転落し、入線してきた電車に轢過されて死亡した旨主張し、これは、本件保険契約における死亡保険金の支払要件である「被保険者が急激かつ偶然の外来の事故で身体に傷害を受け、その傷害が直接の原因となって死亡したとき」に該当するとして、本件保険契約に基づく死亡保険金の支払を求めている事案である。

一  争いのない事実等

1  当事者等

原告滝澤は、清治死亡時の清治の妻であり、原告佐久間、同大竹及び同小泉は、清治の子である。

清治は、昭和四六年九月、株式会社石塚工務店(以下「石塚工務店」という。)を設立し、その死亡時まで経営していた。

石塚工務店は、毎年数億円以上の売上を計上していたが、いわゆるバブル景気の崩壊に伴ってその経営は苦しくなり、平成七年ころから赤字経営となっていた。

2  本件保険契約

(一) 石塚工務店は、被告ケーエスデーとの間で、昭和六二年一一月二日、次の内容の共済契約を締結した。

(1)  被共済者 清治

(2)  死亡補償費 二〇〇〇万円

(3)  死亡補償費の第一受給順位者 配偶者

(二) 石塚工務店は、被告千代田火災との間で、平成一〇年二月一三日、次の内容の傷害保険(家族傷害保険)契約を更新した。

(1)  被保険者 清治

(2)  保険金額 本人死亡の場合は二〇〇〇万円

(3)  保険金受取人 指定なし(指定がなく本人が死亡した場合、法定相続人が受取人となる)

(三) 清治は、英国保険団との間で、平成一〇年四月二七日、次の内容の傷害保険(ファミリー交通傷害保険)契約を更新した。

(1)  保険金支払人 被告ロンドン

(2)  被保険者 清治

(3)  保険金額 本人死亡の場合は五〇〇〇万円

(4)  保険金受取人 指定なし(指定がなく本人が死亡した場合、法定相続人が受取人となる)

(四) 社団法人東京建築士会は、被告エイアイユーとの間で、平成一〇年九月一日、次の内容の傷害保険(普通傷害保険)契約を更新した。

(1)  保険加入者 石塚工務店

(2)  被保険者 清治

(3)  死亡保険金 六〇〇〇万円

(4)  保険金受取人 原告滝澤

3  本件保険契約の保険約款等

本件保険契約の保険約款又は被告ケーエスデーの規約には、被保険者(被共済者)が急激かつ偶然の外来の事故で身体に傷害を受け、その傷害が直接の原因となって死亡したときは、死亡保険金(死亡補償費)を支払う旨、及び被保険者(被共済者)の故意等による事由によって生じた傷害に対しては保険金(補償費)を支払わない旨の定めがある。

4  清治の死亡

清治は、平成一〇年一一月一日午後四時三七分ころ、千葉県市川市市川一丁目一番一号JR市川駅の一番線ホーム(以下「本件ホーム」という。)から線路上に落下し、入線してきた電車(以下「本件電車」という。)に轢過されて脳挫傷(頭蓋骨開放骨折)により即死した(甲一。以下、この事故を「本件事故」という。)。

二  争点(甲事件及び乙事件)

本件事故が偶然の外来の事故であるかどうか。

(原告らの主張)

清治は、平成一〇年一一月一日、本件ホームで電車を待っていたところ、業務による精神的疲労からか、立ちくらみを起こして本件ホームから線路に転落し、本件電車に轢過されて死亡したものであり、これは、死亡保険金の支払要件である「被保険者が急激かつ偶然の外来の事故で身体に傷害を受け、その傷害が直接の原因となって死亡したとき」にあたる。

(被告らの主張)

1 偶然性の欠如

(一) 本件電車の運転手は、清治が、ホームに入線する本件電車の前方に足から飛び込み、うずくまって頭を線路にのせた状態になったことを目撃している。

(二) 石塚工務店は、平成七年ころから赤字経営に陥り、平成九年八月期には、従業員を全員解雇し、ほぼ休業に近い状態になっていた。

石塚工務店が所有する土地及び建物並びに清治が所有する土地及び建物(以下、これらの不動産を「本件不動産」という。)には、それぞれ石塚工務店の債務を担保するために取引先等が根抵当権設定登記をしているが、清治は、平成一〇年秋ころ、これらの債務の支払に困難をきたし、本件事故当日も取引先に対する売掛金を回収するために駆け回っていたが、思うように回収することができなかった。

(三) 清治は、平成八年三月一九日から平成一〇年一〇月二三日までの間、高脂血症、狭心症、不眠症、糖尿病、起立性低血圧症などの症状により通院して診療を受けていたものであり、本件事故当時、身体の状況も思わしくなかった。

(四) 右(一)ないし(三)の各事情からすれば、清治は、本件事故の当日、債権を回収するために取引先を訪れたが思うように回収することができず、右のような経済状況や身体の状況などの事情も加わって厭世的気分に陥り、自殺行為に及んだものと推認されるのであり、偶然の事故とは認められない。

2 外来性の欠如

線路への落下の原因が、清治の低血圧症による立ちくらみであるとしても、低血圧による立ちくらみがなければ本件ホームから線路に転落して入線してきた電車に轢過されて死亡することはなかったのであり、本件事故の具体的状況に鑑みると、本件ホームから線路に転落すれば、入線してきた電車に轢過される可能性は大きいことは明らかであるから、低血圧による立ちくらみで線路に転落して入線してきた電車に轢過されて死亡したことは一連の因果の連鎖であるというべきであり、本件事故は清治の低血圧症を原因とするものであるということができるから、外来の事故とは認められない。

(原告らの反論)

1 偶然性について

(一) ホームから線路へ転落した者を入線してきた電車の運転手が目撃した場合、運転手には直感的に飛び込みの状態に見えるのであり、また、ホームから線路へ転落した者を轢過して死亡させた電車の運転手は、業務上過失致死による書類送検を避けるため自己に有利になるような事故の態様を述べるものである。

本件事故現場は駅のホームの売店の前であるが、自殺する者がこのように人目の多いところは選ばない。

清治の死体検案書を作成した医師は、清治の遺体の状況等から清治は自殺したものではない旨断言している。

(二) 石塚工務店は平成七年ころから経営状況が悪くなり平成一〇年ころには赤字経営であった。

しかし、清治は、平成一〇年夏ころ、本件不動産を売却して取引先等に対する債務を弁済する計画を立てており、同年一〇月中旬には転居先である公団住宅も決まり、同年一一月五日には本件不動産の売却について取引先の信用金庫と交渉する予定であった。そして、差し迫って返済しなければならない債務を本件不動産の売却代金により弁済すれば、他の債務については、取引先に対する売掛金や貸金などの未収金を回収して弁済したり、支払の猶予を受けたりすることにより、返済する計画は立っていたのであり、石塚工務店及び清治は経済的に切迫した状況にはなかった。

また、清治は、本件事故の前日には、子や孫たちと共に夕食を一緒に食べており、本件事故当日には、債権の回収がうまくいかなかったものの、「もう少し待ってみる。今日ははかばかしくないから明日また債権回収を」との記載を手帳に残しており、これから自殺するという雰囲気ではない。

本件事故について清治の遺書らしきものは発見されていないが、清治の性格からして遺書を残さずに自殺することは考えられず、また、清治の死後、原告らは石塚工務店の債権債務の関係を整理するために苦労しているが、家族思いの清治がこれらの債権債務に関して整理したメモも残さずに自殺することは考えられない。

(三) 清治は、低血圧症等の症状により通院していたが、ごく軽度のものであり、付添人が必要なほどのものではなかった。

(四) 右(一)ないし(三)のような事情からすれば、清治が自殺をしたものとは認めることができず、業務による精神的疲労による立ちくらみによって線路に転落したものと推認することができ、本件事故は偶然の事故であるということができる。

2 外来性について

清治の低血圧症は軽度であり付添人が必要という程度のものではなく、また、低血圧で立ちくらみを起こして線路に転落することがあっても、それが常に轢死につながるものではなく、線路への転落の時期と電車の入線の時期が相俟って本件事故が発生したものであり、線路に転落しただけでは清治が死亡することはなかったのであるから、本件事故は電車による轢過を原因とする外来の事故であるということができる。

第三争点に対する判断

一1  石塚工務店の財務状況等について

証拠(甲一三の一ないし三、一四、乙ハ四ないし七、乙ニ五、六の各一、二、原告滝澤本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 石塚工務店の財務状況は次のとおりであった。

(1)  第二六期(平成九年八月期)

営業損失      六八七八万五五二五円

経常損失    一億六〇六三万一二二八円

当期未処分損失 一億一八〇五万八七〇六円

(2)  第二七期(平成一〇年八月期)

売上高        一二一万九一三八円

売上総利益       六二万二六〇〇円

営業損失      一五二二万二九〇九円

経常損失      一五八五万三七四四円

当期未処分損失 一億三三九一万二四五〇円

(3)  第二八期(平成一一年八月期)

営業損失      四二九一万二二五四円

経常損失      七二六〇万四三〇四円

特別利益    二億七八三二万七二三六円

(特別利益のうち保険金給付が二億七一六六万七二三六円であり、明治生命から一億〇〇一四万八七二六円が、朝日生命から一億七一五一万八五一〇円が、それぞれ支払われている。)

当期未処分利益   一二四六万八六五一円

営業損失及び経常損失は前期と比較して更に増加したが、清治の死亡保険金の給付があったことから、繰越損失を解消した上、当期未処分利益を生じることになった。

(二) 本件不動産には、石塚工務店の債務を担保するために取引先等に対する根抵当権設定登記がされ、また、原告佐久間の夫である佐久間英也は、石塚工務店の債務について連帯保証をしていたが、清治は、平成一〇年夏ころ、本件不動産を売却してこれらの債務を弁済することを検討しており、本件事故当時、取引金融機関との間で、本件不動産を一億一〇〇〇万円で売却して借受金債務を支払う旨説明していた。

しかし、清治は同年一一月五日にも取引金融機関に本件不動産の売却に関して再度説明にいく予定であり、本件事故当時、本件不動産を一億一〇〇〇万円で売却することができるという見込みがあったわけではなかった。そして、平成一〇年当時の路線価からすると、本件不動産を右価格で売却することは困難であり、当時の不動産価格の相場にしたがって本件不動産を売却することができたとしても、その売却代金だけでは右債務を完済することはできず、石塚工務店の切迫した経済状況を解消することはできない状態であった。

2  本件事故前及び本件事故当日の清治の状況等について

証拠(甲六の一ないし三、一四、乙ニ一、二、七、原告滝澤本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 清治は、平成八年三月一九日から、高脂血症、狭心症、不眠症、糖尿病、起立性低血圧症などの症状により通院しており、本件事故前の平成一〇年一〇月には、三日、一七日、二三日に通院して診察を受けるなどしていたが、外出する際に付添人が必要な状況ではなかった。

(二) 清治は、本件事故当日である平成一〇年一一月一日、千葉の長尾某のところに債権の回収のために訪れたが、回収することができず、同日午後二時五一分ころJR千葉駅において四五〇円の切符を購入して、自宅への帰宅経路であるJR新小岩駅方面に向かう電車に乗車した。

(三) 清治が本件事故当時に所持していた手帳(甲六)には、本件事故前及び本件事故当日の清治の行動について、次のような内容の記載が残されていた。

(1)  平成一〇年一〇月二一日、債権回収のために何日も家に帰らず、お金を使い果たしてしまったこと、同月二六日、不良債権のある取引先に夜討ち朝駆けでその回収に回ったが、債務者の九〇パーセントはその行き先がわからなかったこと、同月三〇日、体調不良となったこと。

(2)  本件事故当日である平成一〇年一一月一日、日曜日であるが、この辺が限界であるので長尾氏の自宅に行き、入金の催促をして、自宅で待ってでも集金し、一〇〇万円くらいは何とかしてもらうつもりでいたこと、長尾氏のところに行ったものの債権を回収することができず、市川駅と新小岩駅との間を行ったり来たりして長尾氏を待っていたが時間ばかりが経過してしまい、結局長尾氏は現れなかったこと、待っている間にも体調不良となり、この体調不良のため債権回収の目的を果たせなかったこと。

(3)  「小岩の駅で待ってみる。体調不良となる。待つ時間かかりすぎた。体調尚悪化のため目的課せず、引き返す明日を」との記載で、手帳の記載が終わっていること。

二  本件事故の状況について(本件事故が立ちくらみによるものかどうか)

1  証人原浦昭二(以下「証人原浦」という。)が作成した清治の死体検案書(甲一)によれば、証人原浦は、本件事故を、立ちくらみによる線路への転落を原因とするものであると判断し、自殺によるものであるとは認定していないことが認められる。

しかしながら、証人原浦の供述書によれば、同証人は状況的には自殺が疑われる場合であっても疑わしきは断定せずとの方針に基づき、本件事故においても、清治の自筆の遺書等の自殺と認定しうる確実な証拠がなかったことや清治が生前にめまいや立ちくらみ等で通院し投薬を受けていたことから、偶然に発作を起こして卒倒・転落した可能性も考えられることなどを根拠として、本件事故を清治の自殺によるものと断定せずに不慮の外因死とするに留めたことが認められる。また、前記死体検案書の「死亡の原因」の欄にも、電車に轢かれた原因として「立ち暗みホームから転落?」と記載されており、同証人が清治の線路上への落下の原因を立ちくらみとは断定していないことは明らかである。

この点、原告滝澤は、本件事故の当日、証人原浦から清治の遺体の状況等からすると本件事故が自殺によるものではないとの説明を受けたと供述するが、証人原浦はその供述書において、本件事故が自殺によるものであると認定しなかった根拠として、前記のとおりの供述をし、遺体の状況等を何ら挙げていないのであるから、原告滝澤の右供述を採用することはできない。

そして、清治は遺書らしきものを何ら残していないが、自殺をする者が必ず遺書を残すとは限らず、清治は特に手紙をまめに書く性格でもなかったこと(原告滝澤本人)、自殺の決意に至るまでにほとんど瞬間的な経過をとる場合もあること(乙ハ八)、清治は、低血圧症等により通院をしていたが、外出に際し付添人を要するほどの症状ではなく、本件事故当時、体調不良ではあったものの、めまいなどにより立ちくらみをおこすといったことはなかったこと(前記一2(一)、原告滝澤本人)からすれば、同証人の供述書及び死体検案書(甲一)をもって、直ちに、清治が立ちくらみによって本件ホームから線路へ転落したものと認めることはできない。

2  かえって、前記一で認定した事実によれば、清治の経営する石塚工務店は、平成七年以降赤字経営となっていたこと、清治の死亡保険金の給付を受けたことにより、石塚工務店の赤字は解消されているが、死亡保険金の給付がなければ石塚工務店の経営状況はより悪化していたこと、とりわけ本件事故当時、石塚工務店の経営状況は極めて厳しい状況であり、清治は、何日も家に帰らず債権の回収や資金繰りの相談にかけずり回っていたが、債務者の行方がわからないなどその取引先からの債権回収がうまくいっていなかったこと、清治は、平成八年三月から低血圧症等のために通院しており、本件事故前にも通院して治療を受けるなどしていてその体調も好ましくない状況であったこと、本件事故当日も、日曜日であるにもかかわらず清治は千葉まで債権回収に行っており、金銭的にかなり切迫した状況であったこと、清治は、JR千葉駅から電車に乗車した後、本件事故の現場であるJR市川駅とJR新小岩駅との間を行ったり来たりして債務者を待っていたが、結局、債権の回収をすることができなかったこと、本件事故直前も、清治は、JR小岩駅において、体調不良のため引き返すと手帳に記載した後、自宅への帰宅経路であるJR新小岩駅とは反対方向のJR市川駅に向かっていることが認められ、これらの事実及び前記一の事実によれば、清治が、石塚工務店の経営状況の極度の悪化、体調の不良及び債権回収が思うようにいかなかったことなどから、経済的にも精神的にも相当に追いつめられていたというべきであって、このような状況から発作的に自殺を図った可能性は極めて高いといわざるを得ない。

3  右2で認定した事実に加え、本件電車を運転していた証人大野守が、本件事故の状況について、状況報告書(乙ハ三)及び同証人の供述書において、清治が本件ホームから走り込んで線路に足から飛び込み、線路上にうずくまって頭をレールに乗せるようにしたのを目撃したと述べていること(同証人のこの供述は、その目撃状況等に照らすと、不自然、不合理な点はなく、信用に値するということができる。)を併せ考えると、本件事故は、清治が、自殺を企図して本件ホームから線路上に飛び込み、本件電車に轢過されて死亡したと認めることができるから、本件事故が偶然の事故であるということはできない。

第四結論

以上によれば、原告らの請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下田文男 裁判官 田代雅彦 裁判官 岩崎慎)

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