大判例

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東京地方裁判所 平成11年(ワ)15336号 判決

原告 株式会社永田企画

右代表者代表取締役 永田雅士

右訴訟代理人弁護士 畑敬

同 植松勉

被告 那須高原リゾート開発株式会社

右代表者代表取締役 榊原俊資

右訴訟代理人弁護士 杉浦正健

同 鈴木輝雄

同 和田元久

被告 フロストインターナショナルコーポレーション株式会社

右代表者代表取締役 上杉克

右訴訟代理人弁護士 古澤浩二郎

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告らは原告に対し、連帯して、三〇七四万一四六七円及びこれに対する平成一一年七月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告那須高原リゾート開発株式会社(以下「被告那須リゾート」という)が経営する「那須どうぶつ王国」という子供を持つファミリー向けのリゾート施設につき、一九九九年度の宣伝広告の募集をクリエイティブコンペティションの形で行い、それに応募した原告の宣伝広告案が結局採用されなかったところ、被告那須リゾートが採用した被告フロストインターナショナルコーポレーション株式会社(以下「被告フロスト」という)の宣伝広告案のうち、ポスターのキービジュアルとテレビコマーシャル案の内容が原告案と同一ないし類似している点が多数存することを理由に、被告らが共謀して原告の宣伝広告案を盗用したものであるとして、不法行為による損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実

1  被告那須リゾートは、平成一一年一月一一日、平成一一年度の宣伝広告案の募集をした。

2  原告は、右に応募し、平成一一年一月二二日午後二時三〇分に、被告那須リゾート東京事務所で自社案を示した。原告の示した宣伝広告案は、ポスター及びテレビコマーシャル等に関するものであった。(被告フロストにつき弁論の全趣旨)

3  被告那須リゾートから、平成一一年二月初めころ(弁論の全趣旨)、原告の宣伝広告案を不採用とする連絡があった。

4  被告那須リゾートは、被告フロストが応募により提案した宣伝広告案を採用し、広告ポスターを作成して電車内に掲示したり、テレビを利用したコマーシャル活動等を行っている。

二  争点(被告らによる原告宣伝広告案の盗用の有無)

(原告の主張)

1 原告ポスター(甲二)と被告フロストのポスター(甲五)との同一ないし類似点

<1> ともに複数の動物たちを集合させたものである点

<2> ともに写真撮影という状況設定である点

<3> 最前列には猫が配置されている点

<4> 猫の後ろには犬が配置されている点

<5> 最後尾には馬が配置されている点

<6> 額から鼻の部分にかけて白い線の入っている馬がともに向かって左側に配置されている点

<7> 馬の前に羊が配置されている点

<8> 動物たちに交じって人間の子供が入っている点

<9> 子供は複数で、男女双方が入っている点

<10> 子供が動物を抱えている点

<11> キャッチフレーズの出だしが「みんな」で始まっている点

<12> 撮影場所が被告那須リゾートの正面玄関である点

2 原告のテレビコマーシャル案(甲三)と被告フロストのテレビコマーシャル案(甲六)との同一ないし類似点

<13> セントバーナードの上に猫が乗っているシーンがある点

<14> 全体の構成が別々の場所にいた個々の動物が写真撮影場所に向かっていくものである点

<15> 最後のシーンで、カメラシャッターの「カシャ」という音が入っている点

3 その他盗用を推認させる間接事実

(1)  被告那須リゾートの代表者榊原俊資、取締役元田賢が共に丸紅株式会社に勤務していた当時被告フロストの取締投齋藤誠と取引していたこと

被告らはいずれも丸紅株式会社の資本傘下にあること

被告フロストは宣伝広告を専門とする会社ではないこと

(2)  榊原は「僕は永田さんの案がいいと思うのだけれど・・・」旨発言していること

(被告らの主張)

被告那須リゾートの募集事項が那須どうぶつ王国の犬、猫及び馬という限られた動物を主たるテーマとしており、来訪者は子供を対象としており、限られた素材によって宣伝広告を作成するものである。(被告那須リゾート)

原告案の「多数の動物と少年少女の集合写真」と被告フロストの「カメラマンに扮した犬による少年少女との記念写真の撮影」は、基本コンセプトが相違する。(被告フロスト)

被告那須リゾート関係者が原告のポスター案、テレビコマーシャル案の内容を被告フロストに伝えた事実はまったくない。(被告那須リゾート)

1 ポスターについて(被告フロスト)

原告主張の<1>ないし<9>は、平成一一年一月二一日に被告フロストがプレゼンテーションをした乙ロ第四、第九号証に既に表現されている。

<10>は甲第二号証(動物でなくぬいぐるみなので)になく同一ないし類似ではない。

<11>の「みんな」で始まるキャッチフレーズについては、被告フロストのコンセプトからは何ら不自然ではない。

<12>の撮影場所が那須リゾートの正面玄関であることは、原告案のプレゼンテーションの要素の一つとは認めがたく、平成一一年一月二二日に被告フロストから被告那須リゾートへ背景について乙ロ第一〇号証で王国建物を利用するアイデアを出しており通常のアイデアである。

2 テレビコマーシャルについて(被告フロスト)

<13>については、被告フロストは乙ロ第八号証で、このアイデアを既に持っており、乙ロ第九号証はその応用にすぎない。セントバーナード犬が猫を乗せるシーンはテレビコマーシャル案(以下「CM案」という)の一部修正を依頼した岡部事務所の岡部氏以下のスタッフによって考案されたものであり、不自然さはない。

<15>については、カメラマンに扮した犬が記念写真を撮影するというストーリーを完結させるには、シャッター音が必要であり、当該CMのストーリー性から必然であり誰でも容易に思いつくものである。

3 間接事実について(被告両名)

榊原と元田が丸紅株式会社への勤務経験のあることは認めるが被告フロストの齋藤とは特に親しかったわけではない。

被告那須リゾートへの丸紅資本は七〇パーセント、被告フロストへのそれは四・一パーセントであり、本件募集には丸紅の一〇〇パーセント子会社の訴外りえぞん企画株式会社も応募しているが不採用となっている。

被告フロストが宣伝広告を専業とする会社でないことは認める。

榊原は、応募のあった特定の案について評価発言していない。

第三争点に対する判断

一  証拠等により認定できる事実

1  被告那須リゾートが宣伝広告案を募集するに際し、同社は、取引実績のある企業であるところの青松社、りえぞん企画株式会社、SPプロジェクト、オフィスワン、原告及び被告フロストを選び、オリエンテーションへの参加を呼びかけた。(甲一、乙イ三、弁論の全趣旨)

2  被告那須リゾートは、平成一一年一月一一日、東京事務所においてオリエンテーションを開催し、資料として「一九九九年度の那須どうぶつ王国宣伝広告について」及び前年度の那須どうぶつ王国のパンフレットを配布した。(甲一、弁論の全趣旨)

参加者が宣伝広告案を提出して説明するプレゼンテーションの日程は、平成一一年一月二一日、二二日の二日間とした。(弁論の全趣旨)

3  プレゼンテーションは、平成一一年一月二一日及び二二日に被告那須リゾートの東京事務所で行われた。

被告フロストのプレゼンテーションは、平成一一年一月二一日に行われ、乙ロ第一号証の宣伝広告案のほかポスター案四点、CM案四点が提出され、説明は岡部事務所の岡部正泰がした。(乙イ一の1ないし4、二の1ないし4)

原告のプレゼンテーションは、平成一一年一月二二日の午後に行われ、甲第四号証の広告展開案のほかポスター案一点を被告那須リゾートに提出した。(甲二、四)

CM案として右当日原告から甲第三号証が提出されたかどうかは原告関係者間では明らかでない。

4  被告那須リゾートは、二月に入って被告フロストの宣伝広告案を採用することにし、その後、ポスター案、CM案ともに四案のうちの記念写真のコンセプト(乙イ一の3、二の4)で行くことにし、細目を詰める過程で主として次のような修正をした。

(1)  ポスターとパンフレットの背景のグリーンに換えて、王国内の建物を背景とする。(乙ロ一〇、一一)

(2)  CMセットの内容を当初の乙ロ第九号証から乙ロ第一一、第一三号証のような案を経て、乙ロ第一四号証のコンテのように修正し、最終的には甲第五、第六号証(枝番号を含む)のようになった。

(3)  キャッチコピーが当初は、「ぼくらはワクワクさせる天才だ。」となっていたのを、最終的には乙ロ第一五号証の複数候補案の中から「みんな笑顔の天才だ。」に修正した。

二  争点について

1  まず、証拠等により認定できる事実(以下「前記認定事実」という)によれば、被告フロストは原告に先だって平成一一年一月二一日にプレゼンテーションを行っており、その際に乙ロ第一号証の総合的宣伝広告案を提出していること、ポスター案(乙ロ二ないし五)、CM案(乙ロ六ないし九)とも複数案を提示していることからすると、原告が主張するところの最初から被告らが共謀してデキレースで応募者である原告から作品を盗用することを企図して実行したものとは認めがたい。このことは、乙ロ第一六号証の被告フロストの事務所のカレンダーの写しに書き込まれている業務予定記事に一月一八日から一九日にかけて被告フロストがCM案のコンテ(絵)の作成を下請発注している訴外有限会社デザインスタジオ・グローブと打ち合わせを入れていることからも裏付けられる。

2  次に、原告が主張するように平成一一年一月二二日の原告のプレゼンテーションがあった後に、被告らの共謀により、原告の宣伝広告案を盗用したか否かについて検討する。

原告は、前記第二、二の原告の主張で、ポスター案については<1>ないし<12>を、CM案については<13>ないし<15>を盗用の客観的根拠に挙げているところ、これに対して、被告フロストは、<1>ないし<9>については乙ロ第四、第九号証に既に表現されていることを主張し、<11>ないし<13>については証拠(乙ロ一〇、一一、一三、一四)で修正の過程を明らかにしている。

ところで、前記認定事実によれば、被告那須リゾートから宣伝広告案募集のオリエンテーションが開催されたときに示された説明内容とりわけ那須どうぶつ王国の基本コンセプトによると、王国が猫、犬及び馬を主とした子供とのふれあいの場を提供するリゾート施設であることが窺われ、その宣伝広告案の募集に応募する側からは、青松社・アサツーDKその他の他社のポスター案(乙イ三、四)にも見られるように、人間と動物を一緒に対象に配置したポスターないしキービジュアルが提示されるのが一般的であり、しかも前記のように動物は猫と犬と馬を主たる対象とするところからは、甲第二、第五号証のようなバリエーションが各社からの案として生じ得ることも経験則に照らして予想できるところである(原告提出にかかる甲第一三号証の1の意見書は、応募者がオリエンテーションシートの予備知識と課題・問題点についての説明がなかったことを前提に、集合写真なりCM案の一シーンの同一性を捉えているものの、それ以上の与件を分析に細かく取り入れておらず盗用を合理的に推認させる見解ないし経験則を正確に語っているものとは認めがたい)。その中で各社がどれだけのオリジナリティーなり魅力的なアイデアを出せるのかは与件テーマの中での自由な発想に負うところとなろうが、原告が指摘するポスター案の<1>ないし<12>の客観的指摘をもって甲第五号証が甲第二号証を盗用したものであるとまでは直ちには断定できない。

加えて、被告フロストにおいて、前記のように乙ロ第一ないし第九号証の具体的かつ複数の提案がなされていて、その中の一つである乙ロ第九号証が修正を経て甲第五号証のように結実している過程には特に不自然さは感じられない。

同様に、CM案についても、原告が強調する犬の上の猫、その犬にセントバーナードを使うことが原告のCM案である甲第三号証を盗用したという事実は、証拠(乙イ一の2、二の4、ロ二、九ないし一一、一三ないし一五、一七)による被告らの反証に照らして、にわかに首肯することはできない。その他、原告主張の間接事実や本件全証拠によっても原告の盗用の主張を合理的に推認することはできない。

第四結論

以上によれば、原告主張の損害について検討するまでもなく、原告の請求にはいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 福島政幸)

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