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東京地方裁判所 平成11年(ワ)20766号 判決 2002年1月29日

原告

大成プラス株式会社

同訴訟代理人弁護士

野上邦五郎

杉本進介

冨永博之

同補佐人弁理士

富崎元成

被告

北辰工業株式会社

同訴訟代理人弁護士

野村晋右

磯部健介

同補佐人弁理士

栗原浩之

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  被告は,別紙原告物件目録(1)記載の物件を製造し,販売してはならない。

2  被告は,その本社,営業所及び工場に存在する前項の物件の完成品,半製品及び同物件の製造に必要な金型を廃棄せよ。

3  被告は,原告に対し,金3354万円及びこれに対する平成11年9月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要

本件は,記録再生装置の防振装置に関する特許権を有する原告が,被告に対し,被告による記録再生装置用の減衰装置の製造販売が原告の特許権の侵害に当たると主張して,その製造販売の差止め,不当利得の返還を求める事案である。

1  争いのない事実

(1)  原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,特許請求の範囲第1項記載の発明を「本件発明」という。また,本件特許に係る明細書(別紙特許公報(甲第2号証)参照)を,「本件明細書」という。)を有している。

登録番号   特許第2138602号

発明の名称  記録再生装置の防振装置

出願日  平成2年10月22日

(特願平2-281847号)

公告日  平成7年12月25日

(特公平7-122983号)

登録日  平成10年10月9日

特許請求の範囲第1項

「内部に空間を区画する筐体と,この筐体の一部に設けられ,記録再生装置を支持するための弾性支持具と,前記筐体の一部に設けられ,前記記録再生装置を支持し,かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって,

前記減衰手段は,

a.前記筐体にその内方を向くように設けられた,熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と,

b.この筒状部内に収容された減衰材と,

c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部に型成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり,略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と,

d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。」

(2)  本件発明の構成要件を分説すると次のとおりである。

ア 内部に空間を区画する筐体と,この筐体の一部に設けられ,記録再生装置を支持するための弾性支持具と,前記筐体の一部に設けられ,前記記録再生装置を支持し,かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって,

イ 前記減衰手段は,

a.前記筐体にその内方を向くように設けられた,熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と,

b.この筒状部内に収容された減衰材と,

c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部に型成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり,略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と,

d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する

ウ 記録再生装置の防振装置。

(3)  被告は,記録再生装置の防振装置に用いられる減衰装置を製造販売しているところ,この防振装置は,本件発明の構成要件ア及びウを充足し,この減衰装置は,本件発明の構成要件イb及びイdを充足する。

2  争点

(1)  被告が製造販売している減衰装置の特定

(2)  被告が製造販売している減衰装置が本件発明の構成要件イaのうち「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる中空の筒状部」を充足するか。

(3)  被告が製造販売している減衰装置が本件発明の構成要件イcのうち「筒状部の端部に型成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり,略中央部に記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材」を充足するか。

(4)  被告が製造販売している減衰装置は,本件発明の記録再生装置の防振装置の生産にのみ使用する物であるか。

(5)  本件特許には,無効理由が存在するか。

(6)  損害の発生及び額

3  争点に関する当事者の主張

(1)  争点(1)について

【原告の主張】

被告が製造販売している減衰装置は,別紙原告物件目録(1)記載のとおりである。

【被告の主張】

原告の上記主張は否認する。ただし,別紙原告物件目録(1)の記載のうち,「1構造の説明」の(1),(2),(4),(5)及び「図面」は認める。

被告が製造販売している減衰装置の第1密封部材は,スチレン系熱可塑性エラストマーからなるが,筒状部の一端に型成形により一体に接着剤を用いて接着されているのであり,熱融着されているのではない。

(2)  争点(2)について

被告が製造販売している減衰装置において,中空の筒状部がポリプロピレンからなることは当事者間に争いがない。

【原告の主張】

ポリプロピレンはエンジニアリングプラスチックに含まれるから,被告が製造販売している減衰装置は,構成要件イaのうち「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる中空の筒状部」を充足する。

【被告の主張】

当業者において,ポリプロピレンは通常,エンジニアリングプラスチックではなく,汎用プラスチックとされている。

仮に,ポリプロピレンがエンジニアリングプラスチックに含まれるとしても,被告が減衰装置に使用する「ポリプロピレン」とスチレン系熱可塑性エラストマーは熱融着しないから,当該「ポリプロピレン」は,本件発明にいう「エンジニアリングプラスチック」には当たらない。

したがって,被告が製造販売している減衰装置は,構成要件イaのうち「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる中空の筒状部」を充足しない。

(3)  争点(3)について

【原告の主張】

被告が製造販売している減衰装置は,次のアないしエのとおり本件発明の構成要件イcの「熱融着」を充足し,本件発明の構成要件イcのうち「筒状部の端部に型成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり,略中央部に記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材」を充足する。

ア 本件発明にいう「熱融着」とは,2枚の熱可塑性プラスチックの表面を熱と圧力をかけて軟化又は溶融させて接合することをいう。

熱可塑性プラスチックは,加熱すると徐々に軟化し,軟化の程度が進んだ上で溶融するものであり,軟化と溶融の境界は明確ではないから,「融着」とは「被着面を加熱して軟化させた状態から,軟化が進んで溶融するまでの間に接合させる」ものであって,「軟化させた状態で接合するもの」も「溶融させた状態で接合するもの」も「熱融着」に含まれると解すべきである。

イ ポリプロピレンは165~176℃で溶融するから,被告が実施している,210~230℃のスチレン系エラストマーをノズルから瞬時に噴出させてポリプロピレンの表面にぶつける射出成型法では,ポリプロピレンの筒状部の端部は165~176℃以上となり,溶融状態になってスチレン系エラストマーと融着する。したがって,被告が製造販売している減衰装置において,エラストマーとポリプロピレンは熱融着している。

また,被告が製造販売している減衰装置のエラストマーとポリプロピレンの界面を電子顕微鏡で観察すると,界面の凹凸とポリプロピレン自体の変形が看取できるので,両者が熱融着していることがわかる。

ウ 被告が製造販売している減衰装置は,接着剤やエラストマー自体の接着力を利用してエラストマーとポリプロピレンを接着しているわけではない。

すなわち,ポリプロピレン内に感熱型接着剤を入れて成形すると感熱型接着剤が表面に析出するなどということはありえないし,電子顕微鏡により被告の減衰装置の界面を観察しても,ポリプロピレンの界面には接着剤が見られない。しかも,被告が使用していると主張する感熱型接着剤(P505)はエラストマーに対して接着性がない。

また,被告が減衰装置に用いているエラストマーは,硬度HS40以下の柔らかいSEPSであるが,これ自体は接着性や粘着性を有するものではない。

エ 一般に,スチレン系熱可塑性エラストマーとポリプロピレンは熱融着するとされており,実際に,ポリマテック株式会社においては,両者を熱融着によって密着接合している。

原告は,審査過程(特許異議答弁書)において,すべてのサーモプラスチックラバーがポリプロピレンと熱融着しないと言ったのではなく,引用例のサーモプラスチックラバーについて「このサーモプラスチックラバー」はポリプロピレンとは融着も溶着もしないと述べただけであり,被告が用いているスチレン系熱可塑性エラストマーは原告がポリプロピレンと熱融着しないと主張したサーモプラスチックラバーではない。

【被告の主張】

被告が製造販売している減衰装置の第1密封部材は,次のアないしウのとおり,筒状部に熱融着されておらず,接着剤を用いて接着されている。また,被告が製造販売している減衰装置の第1密封部材の凹部は,記録再生装置に設けた突起を受け入れるとは限らない。

ア 本件発明にいう「熱融着」とは,被着面を加熱し,軟化及び溶融させて接合することをいう。すなわち,「熱融着」の文言からすると,「融」(溶)かすことが必須条件となる。

本件明細書には,「熱融着」が被着面の「溶融による一体化」であることを当然の前提として記載されており(別紙特許公報第5欄49行目以下),軟化による密着接合について示唆する記載はない。

原告は,本件特許の審査過程において,「熱融着」の文言が被着面の「溶融による一体化」を意味していると明言していた。

イ 被告が製造販売している減衰装置は,一次成形工程で,感熱型接着剤を配合した「ポリプロピレン」を筒状に成形し,その工程で感熱型接着剤が「ポリプロピレン」表面に析出し,二次成形工程で,筒状部を入れた金型内に「エラストマー」を射出して,「エラストマー」自体の接着性・粘着性により筒状部端部の表面に接着させるとともに,その熱を利用して上記感熱型接着剤を作用させて筒状部端部の表面と「エラストマー」との固着強度を確保している。また,被告が製造販売している減衰装置は,「エラストマー」自体の接着性・粘着性及び感熱型接着剤による接着力で実用可能な程度に接合されるように,接合部位の形状に工夫を施している。

したがって,被告が製造販売している減衰装置の筒状部を構成する「ポリプロピレン」と第一密封部材を構成する「スチレン系熱可塑性エラストマー」との接合は,被着面の「溶融による一体化」によるものではない。

ウ 被告が第1密封部材に用いる「スチレン系熱可塑性エラストマー」と筒状部に用いる「ポリプロピレン」とは熱融着しない。

原告は,審査過程(特許異議答弁書(乙第7,第21号証))において,「サーモプラスチックラバー」は「ポリプロピレン」とは融着も溶着もしないと明言して先願(乙第8号証)との区別を主張し,本件特許の登録査定を受けた。それにもかかわらず,侵害訴訟になるや,サーモプラスチックラバーである「エラストマー」と「ポリプロピレン」が融着・溶着すると主張することは信義則に反し,許されない。

(4)  争点(4)について

【原告の主張】

ア 被告が製造販売している減衰装置を使用した記録再生装置の防振装置は,別紙原告物件目録(2)記載のとおりであって,本件発明の構成要件をすべて充足するものであるところ,被告が製造販売している減衰装置は,この防振装置の生産にのみ使用される物である。

イ 仮に,被告が製造販売している減衰装置が,減衰装置を筐体に外方に向けて取り付けた防振装置に使用することができるとしても,減衰装置を筐体に外方に向けて取り付けたものは,本件発明と均等の範囲に入るというべきである。

すなわち,記録再生装置において減衰装置を外方に向けて設けることは,本件特許出願日以前に公知であったから,これは本件発明の本質的部分における相違ではない。本件発明では減衰装置を筐体に内方に向けて設けていたものを,外方に向けて設けても,本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,このように置き換えることは当業者が容易に想到することができた。本件発明をこのように置き換えた記録再生装置の防振装置は,当業者が公知技術から容易に推考し得るものではなく,原告が本件特許出願手続において,減衰装置を筐体に外方に向けて設けることを意識的に除外したこともない。

したがって,減衰装置を筐体に外方に向けて取り付けたものは,本件発明と均等の範囲にある。

ウ よって,被告が上記減衰装置を製造販売する行為は,特許法101条1号により,本件特許権を侵害するものとみなされる。

【被告の主張】

ア 被告が製造販売している減衰装置は,別紙原告物件目録(2)記載の記録再生装置の防振装置の生産にのみ使用されるものではない。

公開実用新案公報(乙第2号証)には他の用途が記載されている。

被告は,平成11年12月20日,タナシン電機株式会社に対し,被告が製造した減衰装置を40個販売したが,同社では,減衰装置を筐体に外方を向くように取り付けた防振装置(乙第12号証)を含む記録再生装置を製造している。

イ したがって,被告が上記減衰装置を製造販売する行為は,本件特許権を侵害するものではない。

(5)  争点(5)について

【被告の主張】

本件発明は,公知技術である実開平2-72834号(乙第4号証)記載の考案と同一であり,また,先願(特開平3ー223539号)の願書に最初に添付された明細書及び図面(乙第5号証)に記載されている発明と同一であるから,本件特許には,無効理由が存在する。

【原告の主張】

被告の主張を争う。

(6)  争点(6)について

【原告の主張】

被告が本件特許の公告日である平成7年12月25日から平成11年7月末までに製造販売した減衰装置の売上げの合計は5億5900万円である。

本件特許権の実施料は,販売価額の6%を下らないから,原告が被告の上記製造販売によって得べかりし実施料は,3354万円を下らない。一方,被告は,同額の実施料の支払を免れ,不当な利得を得た。

したがって,原告は,上記期間に被告が減衰装置を製造販売したことによる不当利得として,上記利得額の返還を求める。

【被告の主張】

原告の主張を争う。

第3当裁判所の判断

1  争点(1)について

被告が製造販売している減衰装置が,別紙物件目録記載のとおりであるという限度では,当事者間に争いはない(以下,同目録記載の減衰装置を「被告製品」という。)。

被告製品において,同目録「1構造の説明」(3)記載の「接着」が熱融着されたものか否かについては,次項で論じる。

2  争点(3)について

(1)ア  甲第2号証によると,本件明細書の【発明の詳細な説明】の[実施例]中には,「キャビティ部に流入した熱可塑性弾性体は,それ自身の溶融熱で環状段部13の表面部分を一部溶かして,両者は混合または凝着して熱融着面を作る。このようにして第1密封部材14が熱融着されたブラケットを金型から取出し,他の必要な処理を行なう。」(5欄49行ないし6欄4行)と記載されていることが認められる。

甲第5号証の1ないし3によると,「マグローヒル科学技術用語大辞典第3版」には,「熱融着」という用語の意味について,「2枚の熱可塑性プラスチック表面を,熱と圧力をかけて融着すること」と記載され,甲第3号証の1ないし3によると,「プラスチック読本改訂第8版」には,「融着」について,「接着剤,溶剤を使用するのではなくて,被着面を加熱,軟化溶融させて接合する方法」と記載されていることが認められる。

乙第25号証によると,山形大学工学部の井上隆教授は熱融着について,「種類の異なる高分子Aと高分子Bを,両方のガラス転移温度(Tg)や融点(Tm)よりも十分に高温の溶融状態で接合させると,・・・接合界面(一点鎖線)をこえて分子AはB相中に,分子BはA相中に侵入して異分子の絡み合い・・・が生じ,これによってA相とB相を強固に接着させることを熱融着(welding)という。」と述べていることが認められる。

イ  上記認定の事実に基づき,本件発明の構成要件イc「熱融着」の意義について判断する。

「融」の文字どおりの意味は,「①とけること。とかすこと。」(広辞苑第5版2707頁)であり,「着」は,「②くっつくこと。」(広辞苑第5版1720頁)であり,これに上記アで認定した事実を総合すると,「熱融着」とは,少なくとも熱によって溶けて(溶融して)接着することが必要であるというべきである。

原告はこの点,「溶融させた状態で接合するもの」のみならず,「軟化させた状態(未だ溶融には至っていない状態)で接合するもの」も「熱融着」に含まれると主張するが,原告が根拠とする上記「プラスチック読本改訂第8版」においても,「軟化溶融させて」とあるだけで,軟化しているだけの場合も「融着」といい得るかどうかは明らかではなく,他に溶融に至っていない状態で接合する場合も(熱)融着に含むことを明示した証拠はない。かえって,溶融しない場合を含むと解することが本件明細書の記載や字義に反することは前記のとおりであるから,原告の上記主張は採用できない。

(2)  被告製品において,ポリプロピレンが溶融してエラストマーと熱融着しているかについて以下判断する。

ア(ア) 証拠(甲第7号証の1ないし3)及び弁論の全趣旨によると,被告は,被告製品の二次成形工程で,ポリプロピレンからなる筒状部を入れた金型内にスチレン系熱可塑性エラストマー(SEPS)を,ノズル温度210~230℃で射出して筒状部端部の表面に接着させて製造していること,射出されたエラストマーは30℃前後に冷却されたランナを通過して金型内に流入すること,ポリプロピレンの融点は165~176℃であること,被告製品におけるエラストマーの厚みは0.3mmであること,以上の事実が認められる。

(イ) 証拠(甲第9,第21,第22,第29ないし第34号証,第38,第39号証,乙第26,第28ないし第32,第44,第45号証)及び弁論の全趣旨によると,次のとおり認められる。

a 射出成形において,エラストマーがランナを通過して金型内に流入する温度は,金型やランナの構造等さまざまな条件によって影響を受ける。

b 射出成形機金型内樹脂温度センサー「キャビサーモ」CAV-22(以下「キャビサーモ」という。)は,シースへのリーク熱量を減少させ,応答性を高めているため,シース熱電対T-35型(Kタイプ)(以下「シース熱電対」という。)に比して,より正確な温度測定が可能である。

c 双葉電子工業株式会社が,原告の依頼を受けて,キャビサーモを用いて金型内のエラストマーの温度を実測したところ(以下「原告実測①」という。),最高温度は175.03℃であり,165℃を超えていた時間は0.2秒未満であった(甲第21号証)。なお,測定には原告が製造した試作金型を用いた(甲第29号証)。

株式会社アイリスが,原告の依頼を受けて,キャビサーモ及びシース熱電対を用いて金型内のエラストマーの温度を実測したところ(以下「原告実測②」という。),キャビサーモを用いた5回の測定で最高温度は173~179℃の範囲内であり,最も高温を記録した回でも165℃を超えていたのは0.3秒未満であった(甲第39号証)。なお,測定に用いた金型は原告実測①と同一である。

d 被告がシース熱電対を用いて,被告製品の製造に用いる金型により,金型内のエラストマーの温度を実測したところ(以下「被告実測①」という。),7回の測定で最高温度は95~98℃であった(乙第26号証)。被告の測定方法では,センサーの金型内への挿入長さは約1.5mmである。

被告がキャビサーモを用いて,被告製作の試験型により,金型内のエラストマーの温度を実測したところ(以下「被告実測②」という。),エラストマーの厚みが被告製品と同じ0.3mmの場合は5回の測定で112.5~113.5℃であったのに対し,厚みが5.0mmの場合は5回の測定で155~157.5℃であった(乙第44号証)。

被告がキャビサーモ及びシース熱電対を用いて,被告製品の製造に用いる金型により,金型内のエラストマーの温度を実測したところ(以下「被告実測③」という。),キャビサーモを用いた5回の測定の平均温度は,エラストマーの厚みが0.4mmの場合は135.3℃,厚みが0.7mmの場合は144.5℃,厚みが1.1mmの場合は144.3℃であった(乙第45号証)。シース熱電対を用いた測定結果は,キャビサーモを用いた測定結果を50℃近く下回った。

e 被告製品に用いられているエラストマーを製造している株式会社クラレが,原告の依頼により,コンピュータを用いた流動解析を行い,エラストマーを充填したときの温度の低下を計算したところ(以下「原告流動解析」という。),充填時の樹脂温度が210~230℃である場合,金型内に流入する直前の成形品ゲート口における温度は203~222℃と解析された(甲第9号証)。ただし,解析条件の中で,金型やランナの構造は株式会社クラレの想定に基づくものである。

(ウ) 上記認定の事実によると,金型内に流入するエラストマーの温度は,金型やランナの構造等によって左右されることが認められるから,被告製品の製造過程におけるエラストマーの温度は,被告が被告製品の製造に用いている金型やランナを用いて測定又は流動解析をしなければ,正確な温度は明らかにならないというべきである。

その点,被告実測①及び被告実測③は,被告製品の製造に用いる金型におけるエラストマーの温度を測定しているが,上記認定の事実によると,被告実測①で用いられたシース熱電対は,シースへのリーク熱量が大きく,応答速度も低いために,キャビサーモに比べて正確な温度測定ができず,低い測定結果になることが認められること,甲第38号証によると,シース熱電対を用いた測定に必要なセンサーの金型内への挿入長さは,金属保護管では直径の15~20倍とることが必要とされ,乙第28号証によるとシース熱電対の金属保護管の直径は0.5mmであると認められるから,測定には少なくとも7.5mmの挿入長さが必要であるところ,被告実測①の測定方法では,センサーの金型内への挿入長さは約1.5mmであること,以上の問題点が存することに鑑みると,被告実測①の測定結果は採用できない。これに対し,被告実測③は,シース熱電対より正確性の高いキャビサーモを用いており,上記被告実測①のような問題点は存しないから,一応信用できるものである。被告実測②は,シース熱電対より正確性の高いキャビサーモを用いており,上記被告実測①で述べたような問題点は存しないが,被告製品の製造に用いる金型とは異なる試験型を用いて実測しているから,被告実測②の測定結果は,直ちに採用できるものではない。

一方,原告流動解析は,解析条件とされた金型やランナの構造と被告が被告製品の製造に用いている金型やランナの同一性が認められないうえ,コンピュータによる解析であって実際に温度を測定したものではなく,その解析結果が原被告双方の実測結果ともかけ離れていることから,直ちに採用できない。原告実測①及び②は,シース熱電対より正確性の高いキャビサーモを用いており,上記被告実測①で述べたような問題点は存しないが,原告実測①及び②で用いられた金型は,原告が製造した試作金型であって,被告製品の製造に用いられる金型ではないので,原告実測①及び②の測定結果は直ちに採用できないものであり,上記の被告実測③の結果に照らしても,原告実測①及び②の測定結果が被告製品におけるエラストマーの温度とほとんど誤差がないものとまで認めることはできない。

そうすると,被告製品において金型内に流入してポリプロピレンに接するエラストマーの温度がポリプロピレンの融点(165~176℃)を上回ることについては,これを認めるに足りる証拠がない。

しかし,次の(エ)では,念のため,原告実測①及び②の測定結果が被告製品におけるエラストマーの温度とほとんど誤差がないと仮定した場合の検討を行うこととする。

(エ) 仮に,原告実測①及び②の測定結果が被告製品におけるエラストマーの温度とほとんど誤差がないとすると,被告製品において,ポリプロピレンと接するときのエラストマーの最高温度は173~179℃であり,ポリプロピレンの融点(165~176℃)をわずかに上回ることになる。

もっとも,上記測定結果によると,エラストマーが165℃を超えていたのは最長でも0.3秒未満という瞬間的なもので,しかも融点をわずかに上回る程度の温度であるから,その間にポリプロピレンが溶融するかが問題となる。

甲第52号証によると,DRI工法により,エンジニアリングプラスチックの6-ナイロン同士を,射出温度260℃,金型温度80℃で射出成形した場合に,一次射出樹脂が0.2秒間で17μm,0.4秒間で39μmの深さで溶融したことが認められる。

これによると,0.3秒という短時間でも熱融着が生じ得ることは認められるものの,この事例は相溶性の高い同一材料を用いていること,被告製品よりも高温で射出していることなど,被告製品とは樹脂の種類,温度等の条件が異なるので,上記事例から直ちに,被告製品において,融点をわずかに上回る温度に0.3秒未満接したことでポリプロピレンが溶融したと認めることはできない。

かえって,乙第25号証によると,種類の異なる高分子を短時間で熱融着させるためには,融点よりも十分に高温で接合させる必要があり,一方がポリプロピレンのような結晶性高分子である場合には,熱融着温度をすべての微結晶が融解し尽くして完全な融体とし得る温度以上としなければならない旨の記載があることが認められる。

また,乙第7,第9号証によると,本件特許については,異議の申立てがされたこと,原告は,平成8年12月16日付けで,特許異議答弁書を提出したが,その中には,「甲第1号証の説明によると,甲第1号証の軟質樹脂部材は,・・・サーモプラスチックラバーです。このサーモプラスチックラバーは,硬質樹脂部材のポリプロピレンとは融着も溶着もしません。樹脂同士の融着とか溶着の技術は,全世界的な開発競争が行われた技術であり,一般に異なる樹脂同士は溶着・融着せず,2色成形により溶着・融着する樹脂同士の組み合わせは限られています。」と記載されていること,上記異議申立ては,上記甲第1号証には「接着」の語が使用されているが,その意味は不明瞭であり,「熱融着」を意味するとはいえないとの理由により,理由がないものとされたこと,以上の事実が認められる。上記特許異議答弁書の記載について,原告は,引用例のサーモプラスチックラバーについて「このサーモプラスチックラバー」はポリプロピレンとは融着も溶着もしないと述べただけであると主張する。しかし,乙第8号証及び弁論の全趣旨によると,上記異議事件の甲第1号証には,「軟質樹脂材(例えばサーモプラスチックラバー)」という記載があるのみで,それ以上にサーモプラスチックラバーの種類を特定した記載はないものと認められるから,上記異議申立書における「このサーモプラスチックラバー」という記載は,サーモプラスチックラバー一般を指すものと解される。そして,スチレン系熱可塑性エラストマーがサーモプラスチックラバーに含まれることは当事者間に争いがないから,原告が特許異議答弁書において上記のような主張をしていることは,少なくとも,スチレン系熱可塑性エラストマーとポリプロピレンを熱融着することが困難であるとの認識が存したことを認めることができる。

したがって,被告製品において,ポリプロピレンと接するときのエラストマーの温度が,瞬間的にポリプロピレンの融点をわずかに超えていたからといって,ポリプロピレンが必ず溶融するとは限らないというべきである。

(オ) 以上によると,被告製品におけるエラストマーが金型内に流入してポリプロピレンと接するときの温度から,被告製品が熱融着していることを認めることはできないというべきである。

イ 原告は,プラスチック成型方法に関する特許第2921636号を根拠として,同発明は,射出温度を200℃以上で行うとSEBSを除くスチレン系熱可塑性エラストマーとポリプロピレンが熱融着することを示しているから,ポリプロピレンにスチレン系熱可塑性エラストマーを210~230℃で射出する被告製品においては,熱融着が生じていると主張する。

甲第49号証によると,特許第2921636号の特許公報の【特許請求の範囲】には,「ポリプロピレン部材表面に,S-EB-Sの分子構造を基礎とする熱可塑性エラストマーを除くスチレン系熱可塑性エラストマー又はオレフィン系熱可塑性エラストマーを200℃以上の温度且つ剪断速度103~104/sec.の範囲において溶融射出して,ポリプロピレン部材の表面に上記熱可塑性エラストマー部材を,何らの接着処理を施すことなく,立体的且つ一体的に融着成形させることを特徴とするプラスチック成形方法」(1欄4行ないし12行)の記載があることが認められる。

上記認定によると,上記発明は,SEBSを除く熱可塑性エラストマーを200℃以上の温度で,かつ,剪断速度103~104/sec.の範囲において溶融射出することを条件としているところ,被告製品において,エラストマーを剪断速度103~104/sec.の範囲で溶融射出していることの主張立証はない。また,前記アで述べたように,熱融着が生じるかどうかは,射出温度のみでは決まらず,複合的な要因によって決まるものである。そうすると,上記特許を根拠として被告製品が熱融着しているとの原告の主張は採用できない。

ウ 原告は,被告製品のエラストマーとポリプロピレンの界面の写真(甲第6,第26,第51号証)を根拠として,被告製品が熱融着していると主張する。

(ア) 甲第6号証によると,三菱化学株式会社基盤技術研究所が原告の依頼を受けて,被告製品のエラストマーとポリプロピレンの界面を,電子顕微鏡を用いて倍率3000倍,5万倍及び15万倍で写真に撮影したこと(以下「原告写真①」という。),このうち15万倍の写真において,界面に凹凸が見られることが認められる。

甲第26号証によると,双葉電子工業株式会社が原告の依頼を受けて,被告製品のエラストマーとポリプロピレンの界面について,凍結破断法で作成した試料を電子顕微鏡を用いて30倍,100倍及び200倍で写真に撮影したこと(以下「原告写真②」という。),これらの写真において,ポリプロピレンがエラストマーと接していない部分は直線的であるのに対し,エラストマーとの界面はポリプロピレンに含まれるガラス繊維がエラストマーと絡み合っているように見えることが認められる。

甲第51号証によると,株式会社アクトリサーチが原告の依頼を受けて,(1)ポリマテック株式会社製減衰装置のエラストマー接合前のポリプロピレン成型品,(2)同社製減衰装置のエラストマーとポリプロピレンの界面,(3)被告製品のエラストマーとポリプロピレンの界面について,クライオミクロトームで作成した試料を電子顕微鏡を用いて100倍及び1000倍で写真に撮影したこと(以下「原告写真③(1)ないし(3)」という。),原告写真③(1)では,ポリプロピレン全体の形状が左右ほぼ対象で,一部に凹凸のある部分もあるが,他はあまり凹凸がないこと,原告写真③(2)では,ポリプロピレンの形状が一部膨らみがあって左右対称ではなく,界面には局部的な凹凸が見られること,原告写真③(3)でも,ポリプロピレンの形状が一部膨らみがあって左右対称ではなく,界面には局部的な凹凸が見られること,以上の事実が認められる。なお,ポリマテック株式会社が原告から本件特許権の実施許諾を受けて減衰装置を製造していることは当事者間に争いがなく,後述エのとおり,甲第55ないし第57号証により,同社製品ではポリプロピレンが溶融していることが認められる。

(イ) 上記認定の事実によると,原告写真①の15万倍の写真では,被告製品のエラストマーとポリプロピレンの界面に凹凸が見られるが,15万倍という倍率は,鏡面でさえ凹凸が観察されるほどの高倍率であると認められる(乙第17号証)から,15万倍の写真で凹凸が観察されるからといって,熱融着しているということはできない。

また,原告写真②によると,確かに,被告製品のエラストマーとポリプロピレンの界面で絡み合いが生じているように見え,界面がはっきり観察できないが,乙第35ないし第38号証によると,界面がはっきり観察できないのは凍結破断法という試料の作成方法に起因していること,ミクロトームで切断して試料を作成した場合には同一面で切断でき,歪みや変形が少ないこと,ミクロトームで切断した被告製品の界面は,原告写真②と異なり直線的で明瞭な界面が観察されること,以上の事実が認められるから,原告写真②を根拠として被告製品が熱融着していることを認めることはできない。

この点,原告写真③(1)ないし(3)は,ミクロトームで切断して試料を作成しているから,試料作成方法は適当であるということができる。原告写真③(1)と同(2)を比較すると,確かに同(2)のポリプロピレンの形状は一部が膨らんで左右非対称であるが,溶融によってポリプロピレンの一部のみが局所的に膨らんで変形するというのは合理的な説明が困難であり,むしろ両者のポリプロピレンの形状の違いは試料の個体差に起因していると考える方が自然である。また,同(2)の界面の凹凸については,同(1)にも部分により界面の凹凸が認められたことからすると,エラストマーとの接合によってできた凹凸であるとは言い切れない。そうすると,同(2)は何をもって熱融着を示すといえるのかが不明であるから,同(3)についても,同(2)と同様に左右非対象な形状や界面の凹凸があるからといって,それから直ちに熱融着しているということはできない。

(ウ) 被告が被告製品のエラストマーとポリプロピレンの界面を電子顕微鏡で観察し,撮影した写真(乙第18,第23,第47号証)について以下検討する。

乙第18号証は,被告製品とポリマテック株式会社の減衰装置の界面を電子顕微鏡で観察したものであるが(以下「被告写真①」という。),同号証によると,被告製品はトルエンでエラストマーを溶解させて試料を作成したのに対し,ポリマテック株式会社の製品はエラストマーを物理的に引き裂いて試料を作成しており,両者の試料作成方法が全く異なるから,被告写真①の両者の比較から被告製品の熱融着の有無を判断することは妥当でない。

乙第23号証は,被告製品と他社の減衰装置の界面を電子顕微鏡で観察したものであるが(以下「被告写真②」という。),同号証によると,他社の製品の界面は多少凹凸があり,界面付近はポリプロピレンの色が薄くなっているのに対し,被告製品の界面は直線で,界面を挟んだエラストマー部分とポリプロピレン部分の色が二色にはっきり分かれていることが認められる。被告写真②は,各1枚しかなく,観察部位も明らかではないので,これのみから被告製品が熱融着していないと断定することはできないが,被告写真②は同事実を推測させるものであるということはできる。

乙第47号証は,被告製品におけるポリプロピレン成形品と被告製品からエラストマーを取り外したものを電子顕微鏡で観察したものであるが(以下「被告写真③」という。),乙第49,第50号証によると,試料の作成に当たり,エラストマーを取り外すためにトルエンに約8時間浸漬させた後,物理的に引き裂いて除去し,一度で取れないときは再度トルエンに浸して除去したことが認められる。甲第59ないし第61号証によると,ポリプロピレンはトルエンを吸収して膨張するなどの影響を受けることが認められるうえ,上記の除去方法では引き裂くときに表面状態に影響を与えている可能性があるので,被告写真③から被告製品の熱融着の有無を判断することは妥当でない。

(エ) 以上を総合すると,被告写真①ないし③によっても,被告製品が熱融着していないとまでは認定できないが,少なくとも,原告写真①ないし③を根拠として被告製品が熱融着しているとする原告の主張は採用できない。

エ(ア) 証拠(甲第55ないし第58号証,乙第48号証)及び弁論の全趣旨によると,偏光顕微鏡によって界面を観察することにより,溶着状態が確認できること,ポリマテック株式会社の減衰装置の界面を偏光顕微鏡で観察すると,ポリプロピレン樹脂の球晶が生成していたこと,球晶の生成はポリプロピレンが溶融したことを意味するが,溶融した場合に必ず球晶が生成されるとは限らないこと,被告製品はポリプロピレンにガラスファイバーが多く添加されているため偏光顕微鏡による観察が困難であったこと,被告製品のポリプロピレンからガラスファイバーを減少させた試料を偏光顕微鏡で観察すると,界面に球晶の成長が認められなかったこと,以上の事実が認められる。

(イ) 上記認定の事実によると,偏光顕微鏡による観察の結果,ポリマテック株式会社の減衰装置については,ポリプロピレン樹脂の球晶の生成が観察されるから,ポリプロピレンが溶融していることが認められるが,被告製品については,ポリプロピレン樹脂の球晶が認められないから,ポリプロピレンが溶融したとは認められず,この観察結果は,被告製品が熱融着しているという証拠とはなり得ない。

オ 原告は,エラストマー自体は接着性や粘着性を持たないし,感熱型接着剤(P505)はエラストマーに対して接着性がないから,被告製品は接着剤やエラストマー自体の接着力を利用していないと主張する。

しかしながら,これらの主張はいずれも,実際に被告製品が熱融着しているか否かの判断を直ちに左右するものではない。

カ 以上によると,被告製品において,ポリプロピレンが溶融してエラストマーと熱融着していることを認めるに足りる証拠はない。

なお,前記ア(エ)で述べたところからすると,本件訴訟において,原告が,被告製品においてスチレン系熱可塑性エラストマーとポリプロピレンが熱融着していると主張することは,特許異議答弁書における主張に明らかに反するものであって,そのような主張は信義則に反して許されないと解する余地も十分にあるというべきである。

したがって,被告製品は,本件発明の構成要件イcにいう「熱融着された」という構成要件を充足しない。

(3)  証拠(甲第46,第62,第63号証)及び弁論の全趣旨によると,原告は平成13年2月26日付けで本件発明について特許庁に訂正を請求したこと,本件特許の無効審判事件に関する同年10月2日付けの審決で訂正が認められたが,同審決に対しては審決取消訴訟が提起され現在東京高等裁判所に係属中であること,訂正は構成要件イcに関わるものであるが,「前記筐体内方側の端部に型成形により一体に熱融着された」を「前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された」と訂正するものであること,以上の事実が認められる。

そうすると,現時点においては訂正前の特許請求の範囲を基礎として侵害の成否を判断することになるが,仮に,訂正後の特許請求の範囲を基礎としても,訂正内容が「熱融着」に関するものではないので,前述のとおり,被告製品が構成要件イcを充たさず,本件特許権を侵害しないことに変わりはない。

3  以上によると,その余の点につき判断するまでもなく,原告の本訴請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 森義之 裁判官 岡口基一 裁判官 男澤聡子)

別紙原告物件目録 (1)

以下の「構造の説明」及び「図面」に記載されている減衰装置

1 構造の説明

(1) ポリプロピレンから成る中空の筒状部と,

(2) この筒状部内に収容された減衰用液状体と,

(3) 前記筒状部の一端に型成形により一体に熱融着されたスチレン系熱可塑性エラストマーから成り,略中央部に記録再生装置に設けられた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と,

(4) 前記筒状部の他端部に固着されたポリプロピレンから成る第2密封部材を有する

(5) 減衰手段

2 図面の説明

図1は減衰装置の正面図である。

図2は減衰装置の断面図である。

図3は減衰装置の背面図である。

3 図面の番号の説明

6 ・・・・ 減衰手段

11・・・・ 筒状部

12・・・・ 減衰用液状体

14・・・・ 第1密封部材

15・・・・ 凹部

16・・・・ 第2密封部材

図1

file_2.jpg図2

file_3.jpg図3

file_4.jpg16

別紙原告物件目録 (2)

以下の「構造の説明」に記載されている構造を有する防振装置

構造の説明

A 内部に空間を区画する筐体と,この筐体の一部に設けられ,記録再生装置を支持するための弾性支持具と,前記筐体の一部に設けられ,前記記録再生装置を支持し,かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって,

B 前記減衰手段は,

a.前記筐体にその内方を向くように設けられた,ポリプロピレンからなる複数の中空の筒状部と,

b.この筒状部内に収容された減衰用液状体と,

c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部に型成形により一体に熱融着されたスチレン系熱可塑性エラストマーからなり,略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と,

d.前記筒状部の他端部に固着されたポリプロピレンからなる第2密封部材とを有する

C 記録再生装置の防振装置

図1

file_5.jpg図2

file_6.jpg図3

file_7.jpg

別紙物件目録

以下の「構造の説明」及び「図面」に記載されている減衰装置

1 構造の説明

(1) ポリプロピレンから成る中空の筒状部と,

(2) この筒状部内に収容された減衰用液状体と,

(3) 前記筒状部の一端に型成形により一体に接着されたスチレン系熱可塑性エラストマーから成り,略中央部に凹部が設けられた第1密封部材と,

(4) 前記筒状部の他端部に固着されたポリプロピレンから成る第2密封部材を有する

(5) 減衰手段

2 図面の説明

図1は減衰装置の正面図である。

図2は減衰装置の断面図である。

図3は減衰装置の背面図である。

3 図面の番号の説明

6 ・・・・ 減衰手段

11・・・・ 筒状部

12・・・・ 減衰用液状体

14・・・・ 第1密封部材

15・・・・ 凹部

16・・・・ 第2密封部材

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