東京地方裁判所 平成11年(ワ)24253号 判決
原告 山一證券株式会社破産管財人 松嶋英機
右常置代理人弁護士 綾克己
右訴訟代理人弁護士 阿部信一郎
同 濱田芳貴
同 柴原多
被告 株式会社富士銀行
右代表者代表取締役 山本惠朗
右訴訟代理人弁護士 海老原元彦
同 広田寿徳
同 竹内洋
同 馬瀬隆之
同 谷健太郎
同 本村健
主文
一 被告は、原告に対し、一〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年一一月一一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
三 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
主文と同旨
第二事案の概要
本件は、原告が被告に対し、別段預金債権二〇億円のうち一〇〇〇万円の支払を請求したところ、被告は、1 山一證券株式会社(以下「山一證券」という。)が被告に差し入れた平成五年八月二〇日付け念書(甲五。以下「本件念書」という。)に基づき、被告の山一情報システム株式会社(以下「山一情報システム」という。)に対する貸越金返還請求権に関し請求権を有している、また、2 山一證券は被告に対し巨額の簿外債務の存在を告知する義務があったにもかかわらず、それを秘して山一情報システムに対する融資を実行させ二〇億円以上の損害を被らせたことにより、原告に対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているとして、右各請求権をもって右別段預金債権と相殺した旨主張して、原告の右請求を争っている事案である。
一 前提となる事実(証拠を掲記しない事実は、当事者間に争いがない。)
1 当事者等
原告は、平成一一年六月二日東京地方裁判所において破産宣告を受けた山一證券の破産管財人である。
山一情報システムは、山一證券の関連会社であったが、平成一〇年三月二〇日、東京地方裁判所に対し、特別清算開始の申立てをし、同年四月一三日、右開始決定を受けた。
2 山一情報システムに対する融資等
被告は、山一情報システムに対し、平成四年九月二八日、最終返済期日を平成九年九月三〇日として、八〇億円を貸し付けた(甲七)。被告は、その際、その担保として、山一情報システムから、千葉県船橋市浜町二丁目四番七〇七外の土地上に存在する建物(以下、右土地及び建物を併せて「本件不動産」という。)の入居保証金返還請求権八〇億円(以下「本件入居保証金」という。)に対し質権の設定を受けた(以下「本件質権」という。)。
被告は、平成五年七月、本件質権を解除し、その代わりに、山一情報システムから、本件不動産に対し根抵当権の設定を受けた。ただし、その登記手続は留保した。
3 本件念書の差入れ
山一證券は、被告に対し、平成五年八月二〇日付けで、本件念書を差し入れた。本件念書には、「念書」という表題の下に、次の本文が記載されている(甲五)。
「拝啓 貴行ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
さて、当社及びグループ企業各社を中心に設立した山一情報システム株式会社が、今後貴行から与信を受けるに当たりましては、元本・利息・手数料の支払い並びに諸債務の履行を延滞なく行えるよう、当社としても常に経営に対して関心を払い、指導・監督・育成を行う所存であり、貴行にご迷惑をおかけしない様充分配慮致します。その証として本念書を差入れ致しますので宜しくお願い申し上げます。
尚、山一情報システム株式会社の経営上に基本的な或は重要な変化のある場合には、事前に貴行にご連絡・ご相談申し上げます。
敬具」
4 本件貸越金返還請求権の発生
被告は、山一情報システムとの間で、平成七年七月三一日、貸越極度額を二〇億円とする当座貸越契約を締結し、山一情報システムに対し、右同日、右同額を貸し付けた(乙三、四。以下「本件貸越金返還請求権」という。)。
5 本件預金債権の存在
山一證券は、被告に対し、平成一一年四月二日当時、別段預金債権二〇億円を有していた(甲一。以下「本件預金債権」という。)。
6 相殺の意思表示
被告は、原告に対し、平成一一年六月二日、本件念書に基づき、山一情報システムの倒産により本件貸越金返還請求権について被告が被った損害に関し二〇億円の請求権を有しているとして、右請求権をもって本件預金債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。
また、被告は、遅くとも平成一二年八月二一日までに、後記二2の被告の主張(一)記載の不法行為に基づく損害賠償請求権をもって、本件預金債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。
二 主要な争点及びこれに関する当事者の主張
被告は、本件において、次の1及び2のとおり相殺の抗弁を提出しているところ、原告は、1についてはその自働債権の存在を争い、2については時機に後れた攻撃防御方法であり却下されるべきである旨を主張している。
1 本件念書に基づく相殺の抗弁の可否
(被告の主張)
被告は、次の(一)ないし(三)記載の請求権をもって、平成一二年六月二日、本件預金債権とその対当額において相殺した。
(一) 保証契約の成立
山一證券は、被告に対し、本件念書をもって保証債務を負担したものであり、被告はその履行請求権を有する。このことは、以下の事情から明らかである。
(1) 本件念書の文言
本件念書には「保証」との文言はないが、主債務者として「山一情報システム株式会社」が、また、被保証債務として被告銀行からの「与信」、すなわち借入金であり、具体的には「元本・利息・手数料の支払並びに諸債務」であることが特定されている。そして、本件念書は、山一證券の取締役社長名下に印鑑が押捺された正式の文書となっている。
(2) 本件念書の差入れの経緯
被告は、平成四年九月の山一情報システムに対する八〇億円の融資に際して取得した本件質権を解除する代償として本件不動産に対して担保の設定を受けるとともに、それが大幅に担保割れをしているところから、更に本件念書を徴求することにしたのである。したがって、本件念書が人的担保として法的効力を有することは当然であり、山一證券もこのことを当然に理解していた。
また、山一證券資金部付部長である高原俊介(以下「高原部付部長」という。)は、右交渉の過程で、自ら、被告に対し決算日を外した保証や保証予約をすることを申し出ていたのであって、山一證券が保証することは、山一證券と被告間の了解事項であった。
第三に、山一證券は、当時、正式の保証については、有価証券報告書に記載され、対外的信用や自己資本規制比率上問題が生ずるので、それを回避することに重大な関心を有していたが、有価証券報告書への記載さえ回避することができるのであれば、実質的に保証と同じ法的効果を有するものであっても構わなかったのである。
第四に、平成四年の山一情報システムに対する八〇億円の融資、同五年七月の本件質権の解除は、もっぱら山一證券本体の自己資本規制比率対策や山一ファイナンス株式会社の不良債権処理のために行われたものであり、これについて山一證券が責任をもって処理することは経済常識に照らしても極めて当然なことである。したがって、山一證券が被告に差し入れた本件念書を保証であると理解することは、無理のない自然な考えである。
(3) 原告の主張に対する反論
当時、念書という形式の実質保証や損害担保契約が商法二六〇条に該当し、取締役会決議を要するとの理解は一般的ではなかった。また、その有価証券報告書への記載の要否についても、当時、経済界、金融慣行、会計実務においては非常に形式的に判断されていたところ、本件念書については、表題が念書とされていることから、右記載がされなかったものである。
(二) 損害担保契約の成立
前記(一)のとおり、本件念書は法的効力を有するものであるところ、本件念書には、山一證券が被告に対し「ご迷惑をおかけしない」との記載がされている。これは、まさに山一情報システムに対する与信について被告に損害を与えない、すなわち、被告の貸付金の回収不能による損害を補填することの約定にほかならない。
したがって、被告は原告に対し、山一情報システムの倒産によって生じた本件貸越金返還請求権の回収不能による損害について、補填請求権を有する。
(三) 指導・監督・育成義務の負担
前記(一)のとおり、本件念書は法的効力を有するものであるところ、本件念書は、作為義務の名宛人、対象、目的を具体的に特定し、最も重要な作為義務に関しては「指導・監督・育成」と同種の用語を重ねて慎重に定義し、また、作為義務の履行状況を監視するため、被告への連絡、相談義務を課すことを明らかにしている。このような本件念書の文言及び体裁に照らせば、山一情報システムが被告に対し借入金等の債務の履行を遅滞なく行えるよう、山一證券が山一情報システムを指導・監督・育成する作為義務を負担していたことが明らかである。
しかるに、山一證券は、違法ないわゆる「飛ばし」を行い、巨額の簿外債務を抱えるに至り、平成九年一一月に営業休止を決議して破綻し、山一情報システムに対する指導・監督・育成を行うことができなくなった。その結果、山一情報システムは、営業を継続することができなくなり、特別清算開始決定を受けるに至ったのである。
したがって、被告は、原告に対し、右債務の不履行に基づき、本件貸越金返還請求権の回収不能による損害について、損害賠償請求権を有する。
(原告の主張)
(一) 保証契約の成立について
本件念書が保証書としての効力を有しないことは、以下の事情から明らかである。
(1) 本件念書の文言
本件念書は金融機関によって作成されたものであるにもかかわらず、そこには、題名においてもまた内容においても「保証」との文言が一切使われておらず、また、支払債務を規定する書面であれば当然記載されるべき「支払い」を行うとの文言も存在しない。こうしたことからすると、本件念書は保証書の体裁を有しておらず、本件念書から原告の法的責任を導くことは、その文理上、不可能である。
(2) 山一證券と被告との関係
山一證券は、かつての四大証券の一つであり金融機関からも厚く信頼されていたところから、借入れの多くを無担保で行っており、また、山一情報システムも、本件以外の借入れを全て無担保で行っていた。さらに、被告は、山一證券のメインバンクの一つであった。ところが、本件においては、山一情報システムが被告に対し事前に本件質権を設定していたため、これを尊重する形で、やむなく本件不動産を担保提供したものにすぎない。
このように、本件質権の解除は、本件念書が保証書でなければ実行されなかったというものではなく、むしろ山一證券のグループ会社に対する信用から実行されたものにほかならない。
(3) 本件不動産の担保提供
山一情報システムは、被告に対し、本件質権の解除に際し、十分な担保提供をした。すなわち、山一情報システムが担保として提供した本件不動産の売買価格は複数の鑑定により三〇〇億円台と算出されており、また、右価格で国土利用計画法上の不勧告通知を受けていたのであるから、担保価値として十分なものであった。
(4) 本件念書の差入れの経緯
本件念書の差入れは、山一情報システムが本件不動産を担保提供することを条件に本件質権の解除を要請したところ、被告の評価では本件不動産の価値が低かったことから、更に保証書の差入れを求められたことに端を発するものである。しかし、山一證券は、保証債務を負担する意思がないこと、いざとなれば他行からの借入れを行うこともできることなどから、被告の右要求を断ったのであり、被告の担当者もこのことを認識していた。また、山一證券は、前記(2)及び(3)のとおり、追加的に担保を提供することは不要であると考えていた。こうした考えに立って更に交渉を行った結果、被告から本件念書のサンプルが示され、山一證券において保証ではないとの認識の下に、本件念書を差し入れたのである。
(5) 取締役会決議、有価証券報告書への記載等の不存在
会社が多額の借財を負担する際には、取締役会の承認を得ることが必要であり、また、投資家に会社の正しい財務状況を開示するため有価証券報告書に保証の有無を記載することが通常である。
しかるに、本件念書の差入れに際し、取締役会の承認を得ておらず、有価証券報告書にも保証との記載がされていない。こうしたことは、山一證券が本件念書について法的責任を発生させる文書とは考えていなかったからにほかならない。
(二) 損害担保契約について
右(一)のとおり、本件念書は保証書としての機能を果たし得ないところ、一般的に保証よりも更に責任が重くその内容も周知されていない損害担保契約が成立するいわれはない。また、本件念書は保証債務を初めとする法的責任を回避する趣旨で差し入れられたものであるから、山一證券が、損害担保契約といった保証と同様の債務を負担する契約を締結する理由はない。
(三) 指導・監督・育成義務について
本件念書の文言は甚だ抽象的であり、原告が負担すべき具体的義務が明確化されていない。したがって、被告が主張するような監督等の作為義務といった法的負担を観念することは不可能である。
2 不法行為に基づく相殺の抗弁の可否
(被告の主張)
被告は、平成一二年八月二一日、次の(一)の不法行為に基づく損害賠償請求権をもって、本件預金債権とその対当額において相殺した。
(一) 山一證券の詐欺的不法行為
山一證券は、平成七年七月、被告に対し、山一情報システムに対する二〇億円の融資の申込みに際し、約二三三一億円もの簿外債務の存在を秘し、被告をして、山一證券の財務内容は公表されている有価証券報告書及び決算書に記載されているとおりであると誤信せしめ、山一情報システムに対する二〇億円の融資を実行させた。
ところで、簿外債務の秘匿はそれ自体が犯罪行為となるところ、本件念書の差入れ先でありかつ山一證券の信用を背景に山一情報システムに二〇億円の融資を行う被告に対しては、銀行取引契約及び信義則に照らして、当然に、山一證券の負っている巨額の簿外債務の存在を告知する義務があったというべきである。しかるに、山一證券は、右義務を怠り、その結果、被告に対し、山一證券及びこれに引き続く山一情報システムの倒産により利息及び損害金を併せて二〇億円以上の損害を与えたのであるから、不法行為に基づく損害賠償義務を免れない。
(二) 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立てについて
右(一)の主張(以下「本件新主張」という。)は、時機に後れた攻撃防御方法には該当しない。
すなわち、本件新主張は、その主要事実及び重要な間接事実の相当な部分が従前の主要事実と重複するものであり、また、新たに主張している部分も従前の証拠調べの結果及び経験則に照らして容易に認定可能な事実あるいは法律評価に係るものであり、時機に後れたものではない。また、本件新主張を基礎付ける事実のうちには証人大槻の尋問前には明らかになっていなかったものがあり、被告において右尋問前に本件新主張を行い難かったのであるから、被告には故意又は重過失がない。さらに、山一證券の詐欺的不法行為の成立は容易に認められるものであり、特段新たな立証活動を必要とするものではないから、訴訟の完結を遅延させることもない。
(原告の主張)
(一) 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立て
本件新主張は、時機に後れた攻撃防御方法であって、却下されるべきである。
すなわち、本件訴訟は、遅くとも平成一二年三月末までに、前記1のみを争点として争点整理が完了し、同年八月二三日の期日には、双方が最終準備書面を提出して結審の予定であった。しかるに、被告は、右同日付けの準備書面において、突如、右争点とは事実、法律問題のいずれの点でも論点を異にする本件新主張を展開したものであり、本件新主張は、明らかに時機に後れたものである。また、被告は、遅くとも本件訴訟における証人尋問期日までに、山一證券の社内調査報告書(乙一〇)等により本件新主張を提出することが十分可能であったものであり、故意又は重過失があることは明らかである。さらに、本件新主張は、事実面及び法律面に多くの不備がありその主張整理を要するところ、それに加え、立証作業をも視野に入れると、本件訴訟を著しく遅延させることは明らかである。
(二) 本件新主張に対する認否
本件新主張は、全て否認する。
第三当裁判所の判断
一 本件の経緯について
前記前提となる事実に、証拠(甲一、二、五ないし一〇、一四ないし二二、乙一ないし八、一〇、一一、証人高原、同大槻、同波部、同水澤)及び弁論の全趣旨を総合すると、本件の経緯について、以下の事実が認められる。
1 山一情報システムは、昭和五八年六月二九日、コンピュータによる情報処理システム及び情報提供システムの開発・運用、その受託並びにサービスを主な事業目的として、山一證券のシステム部門を分離して設立された。
山一情報システムは、山一土地建物株式会社(以下「山一土地建物」という。)から、昭和六三年一一月一日、本件不動産を賃借し、これを船橋計算センターと称する事業所として利用してきた。
2 被告はかねてより山一證券のメインバンクの一つであったところ、平成四年九月、被告兜町支店融資課長水澤英雄(以下「水澤課長」という。)は、当時の山一證券資金部から、山一證券の自己資本規制比率を向上させる目的から、山一證券の山一情報システムに対する貸付金一八四億円のうち八〇億円を被告に肩代わりして融資してもらいたい、その担保として本件入居保証金に質権を設定する用意がある旨の申入れを受けた。そこで、被告は、山一情報システムに対し、同月二八日、八〇億円を、毎年一六億円ずつ返済、最終返済期日は平成九年九月三〇日と定めて貸し付けるとともに、本件入居保証金に対する本件質権の設定を受け、対抗要件を具備した。
3(一) 山一證券の高原部付部長らは、平成五年七月、被告兜町支店副支店長波部健彦(以下「波部副支店長」という。)、水澤課長に対し、山一情報システムが本件不動産を購入することにしたい、それに伴い本件入居保証金が消滅するが代わりの担保として本件不動産を差し入れることでどうか、との申入れをした。これを受けて、被告が独自に本件不動産の担保価値を査定したところ、担保割れになることが判明したため、高原部付部長、波部副支店長、水澤課長らの間で協議が重ねられた。その過程で、山一證券が被告に対し決算日を外した形での保証をするとか、保証予約をするといったことも話題とされたりしたものの、最終的には、本件不動産につき極度額八〇億円の根抵当権設定契約を締結し、被告が本件不動産の権利証を預かることに加え、山一證券が被告に対し念書を差し入れることで落ち着き、被告は、山一證券に対し、本件念書のサンプルを交付した。
(二) なお、これに先立つ平成五年三月、山一情報システム及び山一土地建物は、千葉県知事に対し、本件不動産のうち土地部分の売買について国土利用計画法に基づく届出をし、不勧告通知を受けているが、右届出書(甲二二)には、本件不動産の土地部分の予定価格は一二七億七〇六二万一三二五円、同建物部分の予定価格は二二〇億三二四六万九〇〇〇円と記載されている。また、山一證券側が本件不動産の売買に際し参照した、安田信託銀行株式会社作成に係る本件不動産の鑑定評価書(甲二〇)には、平成三年四月一日時点の鑑定評価額として三七六億九九七〇万八〇〇〇円との記載が、同じく財団法人日本不動産研究所が作成した鑑定評価書(甲二一)には、平成三年一〇月二九日時点の鑑定評価額として三五〇億円との記載がそれぞれされている。
他方、被告の担保不動産明細帳(乙六)には、調査日として平成五年八月一二日、本件不動産の担保価格として一三九億七一〇〇万円、先順位担保権設定額として一〇〇億円、残存担保価格として三九億七一〇〇万円との記載がされている。
4(一) 山一情報システムは、山一土地建物から、平成五年八月、本件不動産を購入するとともに、そのころ、右3(一)の協議を受けて、被告との間で根抵当権設定契約を締結し、被告に対し、同年九月一〇日、本件不動産の権利証を差し入れたが、その設定登記は留保された。
また、山一證券は、被告に対し、同年八月二〇日、前記3(一)のサンプルに若干の削除、修正をした本件念書(甲五)を差し入れた。なお、山一證券は、右念書の差入れに際し、取締役会決議を経ておらず、また、このことについて有価証券報告書にも記載しなかった。
右のような決着が図られたのは、山一證券側に自己資本規制比率の低下を避けたいとのねらいがあったことはもちろんであるが、他方、被告においても、明確な形で保証書を取り交わすことになると有価証券報告書等に記載され、それが、被告において保全固めに走っているとの受け止められ方を他の銀行、ひいては市場にされるおそれがあるので、そうした事態を招来することを避けたいとの配慮が働いていたためである。
(二) ところで、本件念書は、山一證券が被告宛に差し入れる形式がとられており、差入人である山一證券については「取締役社長」名の記名押印がされている。そして、その表題として「念書」と、また、本文として前記前提となる事実3のとおりの記載がされている。
5 その後、平成六年一〇月、被告は、本件不動産に対する担保を解除した。そのいきさつは次のとおりである。
当時、山一情報システムにおいて新たな資金調達の必要が生じていた。そして、その資金の手当てについては、山一證券の主力銀行である被告、株式会社三菱銀行(以下「三菱銀行」という。)及び株式会社日本興業銀行(以下「日本興業銀行」という。)の三行間の融資の在り方との関係で、被告としても三菱銀行による融資を要請していたが、その調整の過程で被告が本件不動産につき担保を得ていることが問題となった。そこで、被告は、担保として山一情報システムが現在及び将来取得する売上債権の譲渡を受けることにより、本件不動産の担保を解除することとし、同年一〇月本件不動産の権利証を返還するとともに、同年一一月二日山一證券から「債権譲渡に関する念書」(甲六)の差入れを受けた。
6 ところで、被告は、平成七年七月三一日、山一情報システムとの間で、貸越極度額を二〇億円とする当座貸越契約を締結し、山一情報システムに対し、右同日、格別の担保を徴することなく右同額を貸し付けた。これは、被告が山一情報システムから前記2の貸付金八〇億円について平成五年九月から毎年一六億円ずつ返済を受けていたところ、山一證券の主力三行間における山一情報システムに対する融資残額の均衡を図るとの観点からの要請にも配慮して行われたものである。その際、山一證券と被告との間で、本件念書の存在、効力等について格別のやりとりがされたことはなかった。
なお、山一情報システムの第一四期(平成七年四月一日ないし同八年三月三一日)の附属明細書(甲一二)には、短期借入金として次の記載がされている。
借入先 期首残高 期末残高
被告 二億七七〇〇万円 二〇億円
日本興業銀行 三〇億円 三〇億円
三菱銀行 三〇億円 三〇億円
7(一) ところで、山一證券は、被告に対し、この間の平成五年一〇月二九日、山一證券の子会社である山一インターナショナル(ヨーロッパ)(以下「山一ヨーロッパ」という。)が被告から五〇〇〇万米ドルを借り入れるに際し、保証書(甲八の1及び2)を差し入れた。右保証書には、表題として「保証書」、「連帯保証人」として山一證券、また、「保証人は、被保証債務をつぎのとおり確認します。」、「保証人は、本人が貴行に対し負担する左記の債務について本人と連帯して保証債務を負い」との記載がされた上で、山一證券の「取締役社長」名の記名押印がされている。そして、山一證券は、第五四期(平成六年三月三一日現在)以降の有価証券報告書に右保証債務を記載し、その後の平成八年一月一八日、右保証債務の条件を切り替える旨の保証書を差し入れるに際し、臨時取締役会決議を経た。
(二) また、山一證券は、安田生命保険相互会社(以下「安田生命」という。)に対し、平成六年四月八日、山一情報システムが被告から融資を受けるに際し、念書(甲一四)を差し入れた。右念書には、表題として「念書」、また、本文として「弊社は、山一情報システム株式会社(以下債務者という)が、平成六年四月八日付金銭消費貸借契約書に基づき貴社より借り受け負担する債務およびこれに付帯する債務(以下この債務という)の一切についてこの債務のすべてが完済されるまでの間、貴社が債務者の債務履行が困難と認めるに至った場合は、保証人となり、貴社に対し債務者と連帯してこの債務の履行の責に任じます。」との記載がされた上で、山一證券の「取締役社長」名の記名押印がされている。山一證券は、右念書の差入れに際し、取締役会決議を経ておらず、また、このことについて有価証券報告書にも記載しなかった。
山一證券は、営業休止後、顧問委員会の判断により、安田生命に対し、右念書に基づいて三〇億円を支払った。
(三) さらに、山一證券は、被告に対し、山一證券の子会社である山一(アメリカ)ホールディング株式会社(以下「山一アメリカ」という。)が被告ニューヨーク支店からの一億五〇〇〇万米ドルの借入条件を更新するに際し、継続保証書(甲一六の2)を差し入れた。右保証書には、「署名者は本書により第一の債務者として、借り手の全ての債務(それに対する金利を含む)ならびに借り手の全ての債務の取立てと本取決めに従ってあらゆる権利又は救済手段を強制するに当って銀行に生ずるかもしれない全ての費用(弁護士報酬と立替え金を含む)を銀行に対する支払い期日が来た時に(決められた弁済期限か弁済期日繰り上げかその他のもの)期限どおりの支払いをこれによって無条件に保証する。」との内容が英文で記載された上で、山一證券の「取締役社長」名の記名押印がされている。そして、山一證券は、平成九年五月七日、右保証書の差入れに際し、臨時取締役会決議を経た。
8 山一證券は、いわゆる「飛ばし」に起因する約二六〇〇億円の簿外債務を抱えていたところ、平成九年一一月二四日、取締役会において自主廃業を前提とする営業休止を決議した。被告は、右決議の直後、それまで当座預金であった本件預金債権を別段預金に切り替えた。
山一證券を主な取引先としていた山一情報システムは、山一證券の右営業休止により急激に業績を悪化させ、平成一〇年一月二九日、解散する旨の株主総会決議を経て、同年三月二〇日、東京地方裁判所に対し、特別清算手続開始の申立てをし、同年四月一三日、右開始決定を受けた。
山一證券は、平成一一年四月二日現在、被告に対し本件預金債権二〇億円を有していたところ、同年六月二日、東京地方裁判所において、破産宣告を受け、原告が山一證券の破産管財人に選任された。そこで、被告は、原告に対し、右同日、本件念書に基づき、山一情報システムの倒産により本件貸越金返還請求権について被告が被った損害に関し二〇億円の請求権を有しているとして、右請求権をもって本件預金債権とその対当額において相殺するとの意思表示をした。
二 本件念書に基づく相殺の抗弁の可否(争点1)について
そこで、進んで、以上認定した事実に基づき、本件念書の法的効力の有無等について判断する。以下においては、本件における各当事者の主張にかんがみ、次の1ないし3記載の観点を中心に検討することとする。
1 本件念書の文言
本件念書には、前記前提となる事実3で認定したとおりの記載がされているところ、山一證券が経営に関心を払い指導・監督・育成を行う対象となる企業が「山一情報システム株式会社」として特定されていること、右の対象となる行為の内容が「元本・利息・手数料の支払い並びに諸債務の履行」として具体化されていること、山一證券の「取締役社長」名の記名押印がされていることは、被告が主張するとおりである。
しかしながら、本件念書には、「保証」との文言が一切使用されていないばかりでなく、その内容を見ても、山一證券が山一情報システムの被告に対する債務を保証したと認めるに足りる明確な記載は全く見当たらず、本件念書の記載のみをもって、山一證券が被告に対し保証債務を負担したということはできない。このことは、本件念書と近接した時期に差し入れられた前記一7(一)の保証書や、保証書の実質を有すると認められる同(二)の念書の各記載と比べると、本件念書の記載にはなお不明確、不明瞭な点が多々見られることからも裏付けられる。
また、本件念書には、「貴行にご迷惑をおかけしない様充分配慮致します」との記載がされているものの、「ご迷惑をおかけしない」、「配慮」といった文言は漠然とした、多義的なものであり、右記載のみをもって、山一證券が被告に対し貸付金について保証することを約したとか、その回収不能による損害を補填することを約したということはできない。さらに、「当社としても常に経営に対して関心を払い、指導・監督・育成を行う所存であり」との記載がされているものの、指導監督等の作為義務の内容を具体的に特定する記載は一切されておらず、右記載のみをもって、山一證券が山一情報システムを指導・監督・育成する作為義務を負担したということはできない。
このように、本件念書には、明確な保証文言や債務の支払文言等は一切用いられずに、その内容において不明確な用語や漠然とした、多義的な用語が用いられており、本件念書の記載のみからは、山一證券において被告に対し被告主張に係る法的な責任を負担することを約したものとは、直ちには判断できないというべきである。
2 本件念書の差入れの経緯
被告は、本件質権を解除する代償として、大幅に担保割れをした本件不動産に対する担保設定に加えて本件念書を徴求したものであるから、本件念書が人的担保として法的効力を有する旨主張し、証人波部及び同水澤は、おおむね右主張に沿った供述をしている。
そこで、検討するに、前記一3及び4で認定したとおり、本件質権を解除する代わりに本件不動産に担保が設定され、その際に、本件念書が被告に差し入れられたこと、そして、被告は、本件不動産の残存担保価格を三九億七一〇〇万円と査定し、担保割れであると評価していたことが認められる。この点に関し、原告は、本件不動産の売買価格は三〇〇億円代と算出されており、担保価値として十分なものであったと主張するが、こうした試算は二年程前の時点における評価であり、あくまで山一證券側が独自に行ったものにすぎず、被告の評価もこれと同様であったといえる関係にはない。
しかしながら、前記一3(一)及び4(一)で認定したとおり、本件念書を差し入れるに際しては、山一證券が被告に対し決算日を外した形での保証をするとか、保証予約をするといったことも話題とされたりしたものの、結局そのような明確な人的担保の形式は採られずに、前記1で説示したような必ずしも明確ではない記載がされた本件念書が差し入れられたにすぎず、また、本件念書の文言自体は被告が交付したサンプルに若干の修正が施されたものにすぎず、この点については、被告の担当者であった証人波部、同水澤においても、本件念書の文言について喧々諤々の議論があったという記憶はない旨証言しているところである。
右当時右のような形で決着が図られたのは、前記一4(一)で認定したとおり山一證券側に自己資本規制比率の低下の回避という要請があったことはもちろんであるが、他方、被告においても、明確な形で保証書を取り交わすことにより、被告において保全固めに走っているとの受け止められ方を他の銀行、ひいては市場にされることを回避したいとの配慮が働いていたためであるというのである。現に、被告は、その後も、前記一5及び6で認定したとおり、他の主力銀行への配慮等もあって、平成六年一〇月には本件不動産に対する担保を解除し、また、平成七年七月には、山一情報システムに対し、格別の担保を徴することなく二〇億円を融資しているところである。
そして、右山一情報システムに対する二〇億円の融資に際しても、山一證券と被告との間で、本件念書をめぐり格別のやりとりがされたことはなく、それが担保として差し入れられていることを相互に確認し、あるいはそれを前提とする約定が交わされた事実は認められない。
加えて、証拠(甲一一の1ないし3)によれば、山一證券の第五五期(平成六年四月一日ないし同七年三月三一日)の有価証券報告書には、被告からの約六九億円の短期借入金について無担保と、また、被告以外の金融機関からの短期借入金についても全て無担保と記載されており、第五六期(平成七年四月一日ないし同八年三月三一日)、第五七期(平成八年四月一日ないし同九年三月三一日)の有価証券報告書にも同様の記載がされていることが認められる。また、前記一5の債権譲渡担保は、譲渡されるべき債権の特定として同社が現在及び将来取得する売上債権とするのみで極めて不十分なものであり、担保としての法的効力には疑問の余地があるといわざるを得ない。こうしたことに、前記一5及び6で認定した本件不動産に対する担保の解除や山一情報システムに対する無担保での二〇億円の融資の経緯等にかんがみると、本件念書が差し入れられた当時、被告が山一證券又はその関連会社に対して融資をするに際して厳格に担保を徴求していたとはいえない状況が窺われるところである。
こうしたところを併せ考慮すると、山一證券と被告との間において、本件念書の差入れに際しても、また、その後の担保の差替えに際しても、本件念書が人的担保として法的効力を有するものとして差し入れられたと認めるについては、いまだ立証が尽くされていないといわざるを得ない。
3 取締役会決議、有価証券報告書の記載との関係
前記一7(一)で認定したとおり、山一證券は、被告に対し、山一ヨーロッパが被告から五〇〇〇万米ドルを借り入れるに際し保証書を差し入れているところ、これを有価証券報告書に記載しており、また、その後右保証債務の条件を切り替える旨の保証書を差し入れるに際しては、取締役会決議を経ているのである。また、前記一7(三)で認定したとおり、山一證券は、被告に対し、山一アメリカが被告ニューヨーク支店から一億五〇〇〇万米ドルの借入条件を更新するに際し、保証書を差し入れており、このことについても取締役会決議を経ているところである。
このように、山一證券は、右各保証書の差入れについては、取締役会決議、有価証券報告書への記載という手続、会計処理を履践しているのに対し、本件念書の差入れについては、取締役会決議を経ず、かつまた有価証券報告書にも記載していないのであって、このことからすると、本件念書については、右各保証書とは異なる性格の文書として取り扱っていたものというべきである。
なお、前記一7(二)で認定したとおり、安田生命に対する念書については、有価証券報告書への記載がされていないにもかかわらずこれに基づく支払がされているが、これは山一證券の営業休止後に顧問委員会による事後的な判断としてされたものであることに加え、もともと右念書の内容及び用いられている文言が本件念書のそれと比べ著しく異なるものであることにかんがみると、右認定に対する障害となるものではない。
4 以上1ないし3で説示したところを総合考慮すると、本件念書は、その文言及び差入れの経緯等からして、原告が主張するような、保証契約、損害担保契約、指導・監督・育成義務といった法的効力を有するものとは認められないというべきである。そして、外に、右の点を証するに足りる証拠は存在しない。
したがって、本件念書に基づき発生する請求権をもって本件預金債権とその対当額において相殺したとする被告の主張は、理由がないというほかない。
三 不法行為に基づく相殺の抗弁の可否(争点2)について
次に、不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁の可否について検討するに、右請求権の取得を主張する被告の主張に対し、原告は、時機に後れた攻撃防御方法であって、却下されるべきである旨申し立てているので、まず、この点について判断することにする。
1 本件訴訟の審理経過
本件訴訟の審理経過は以下のとおりである。
本件訴えは、平成一一年一〇月二九日に提起されたものであるところ、同年一二月一日の第一回口頭弁論期日から、三回の口頭弁論期日を重ね、更に二回の弁論準備手続期日を経て、平成一二年六月一四日の本件第四回口頭弁論期日において計四名の証人を取り調べた。この訴え提起時から右集中証拠調べを実施した口頭弁論期日までの間、原、被告双方は本件念書の法的効力(争点1)を唯一の争点として主張、立証活動を展開してきたものであり、被告から新たな主張が追加される様子は全くなかった。こうした審理経過を踏まえて、当裁判所は集中証拠調べを実施したものである。そして、右集中証拠調べをもって、本件の右争点の判断に必要にして十分な主張立証が尽くされたことから、同期日において、次回口頭弁論期日にて弁論を終結する予定であることを確認した上で、これを同年八月二三日と指定した。
しかるに、被告は、右口頭弁論期日の直前である同年八月一七日付け書類送付書(裁判所への提出は同日、原告受領書は同月二一日付け)とともに提出された準備書面において、本件新主張を展開するに至った。
2 本件新主張の内容及び必要となる審理
ところで、本件新主張における相殺の可否について審理を遂げるためには、平成七年七月の被告の山一情報システムに対する二〇億円の融資に関し、被告主張に係る不法行為に基づく損害賠償請求権の存否について、故意・過失、違法性、損害、行為と損害との間の因果関係等の各要件について、原告が否認する理由を明らかにさせた上で、それに対する被告の反論、更には原、被告の立証といった手続を重ねる必要があるというべきである。
この点に関し、被告は、本件新主張は、その主要事実及び重要な間接事実について、従前の主要事実と相当な部分が重複するものであり、新たに主張している部分も従前の証拠調べの結果及び経験則に照らして容易に認定可能な事実あるいは法律評価に係るものである旨主張する。しかしながら、本件新主張は、不法行為責任を原因とするものであって、従前の主張とは全く法的観点を異にするものである。また、立証活動の面においても、被告側では従前の証拠調べの結果で足り、これ以上の審理を要しないと判断しているとしても、原告側の反証活動の保障といった観点からすると、なお慎重な審理を経なければならないものというべきである。
3 以上1及び2で認定、説示したところを総合すると、本件新主張は、本件訴訟の審理経過に照らせば、より早期に提出する機会が十分にあったというべく、適時提出主義(民訴法一五六条)ないし訴訟上の信義則(同法二条)の観点からすると、共通の争点認識を醸成して集中証拠調べまで了している本件においては、時機に後れたものであるといわざるを得ない。また、本件新主張の審理を進めれば、弁論の終結を更に先に延ばし、口頭弁論期日あるいは弁論準備手続期日等を重ねなければならないものであるから、訴訟の完結を遅延させることもまた明らかである。
ところで、本件新主張は相殺の抗弁における自働債権を主張するものであるが、本件においては、請求原因事実である本件預金債権の存在については争いがなく、被告の従前の抗弁も相殺を主張するものである以上、本件新主張をより早期に提出すべきであるとしても、被告にとって酷な結果をもたらすものではない。そして、被告は、既に第一回口頭弁論期日から、六名の弁護士に訴訟委任して訴訟追行をしていたことからすると、本件新主張の提出が時機に後れたことについて、被告には重大な過失があったといわざるを得ない。
なお、被告は、この点に関して、本件新主張を基礎付ける事実のうちには、証人大槻の尋問前には明らかになっていなかったものがあり、被告において、右尋問前に本件新主張を行い難かったと主張する。しかしながら、本件新主張は山一證券の法人自身の企業責任を問うもののようであるが、そうだとすれば、平成一〇年四月には山一證券の社内調査報告書(乙一〇)が作成され、同一二年三月二八日には山一證券の役員らの刑事判決が言い渡されている(乙一一)のであるから、遅くとも本件の弁論準備手続の過程で本件新主張を提出、展開することは十分に可能であったというべきである。そうだとすると、被告の右主張を考慮したとしても、前記判断は左右されることはないというべきである。
したがって、本件新主張は、民訴法一五七条一項に該当するものというべく、却下を免れない。
第四結語
以上の次第であるから、原告の請求には理由がある。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金井康雄 裁判官 藤田広美 裁判官 榎本光宏)