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東京地方裁判所 平成11年(ワ)24428号 判決

原告 武智春雄

右訴訟代理人弁護士 花井増實

同 萱垣建

同 米澤孝充

被告 三菱倉庫株式会社

右代表者代表取締役 鈴木恭明

右訴訟代理人弁護士 山田洋之助

同 山田隆子

同 山田攝子

右訴訟復代理人弁護士 井上俊一

主文

一  被告は、原告から金二六万〇三五〇円の支払を受けるのと引換えに、原告の申立てを受けた東京地方裁判所執行官に対し、別紙記載一の貸倉庫内に存在する動産を別紙記載二の方法により引き渡せ。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、被告の負担とする。

四  この判決は、原告の勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告の申立てを受けた東京地方裁判所執行官に対し、別紙記載一の貸倉庫内に存在する動産を別紙記載二の方法により引き渡せ。

第二事案の概要

一  本件は、被告との間で貸倉庫契約を締結した山田昇(以下「山田」という。)に対する執行力のある和解調書の正本に基づく強制執行として山田の被告に対する貸倉庫契約に基づく別紙物件目録記載の動産(以下「本件動産」という。)の引渡請求権を差し押さえた原告が、被告に対し、民事執行法一六三条一項、一五七条に基づき、取立訴訟として、右貸倉庫契約に係る貸倉庫の中に存在する動産を原告の申立てを受けた東京地方裁判所執行官に引き渡すことを求める事案である。

二  争いのない事実等

次の事実のうち、1ないし4は当事者間に争いがなく、5は証拠(乙二、八)により認められる。

1  債務名義の存在

原告の山田に対する債務名義として、原告と山田との間の名古屋地方裁判所平成一一年(ワ)第五二九号貸金返還請求事件の和解調書(以下「本件和解調書」という。)が存在する。

本件和解調書には、次の記載がある。

(一) 山田は、原告に対し、三〇〇〇万円の借入金債務を有していることを認める。

(二) 山田は、原告に対し、右の金員を、次の通り分割して、毎月末日限り支払う。

平成一一年六月から同年九月まで 五〇万円

平成一一年一〇月から平成一二年一一月まで 二〇〇万円

(三) 山田は、右の分割金の支払を二回以上怠ったときは、当然に期限の利益を喪失し、原告に対し、直ちに(一)記載の金員から既私金を控除した残金及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済みまで年二〇パーセントの割合による遅延損害金を支払う。

山田は、原告に対し、右の債務の支払を行わず、平成一一年七月三一日の経過をもって、期限の利益を喪失した。

2  本件貸倉庫契約の締結

被告は、本判決の冒頭に記載した被告の所在地に存するトランクルーム施設内に容量、形態の異なる各種のキャビネット(以下「貸倉庫」という。)を設置し、これを用いて貸倉庫営業を行っている。

山田は、昭和六三年一二月一二日、被告との間で、別紙記載一の貸倉庫(以下「本件貸倉庫」という。)について、貸倉庫契約(以下「本件貸倉庫契約」という。)を締結し、本件貸倉庫を利用している。

3  動産の引渡請求権の差押え及び本件訴訟の提起

原告は、平成一一年八月二四日、横浜地方裁判所に対し、本件和解調書の執行力のある正本に基づき、山田を債務者、被告を第三債務者として本件動産の引渡請求権の差押えの申立てをした。

横浜地方裁判所は、同年九月二日、本件動産の引渡請求権についての差押命令を発付し、右差押命令は、同月三日に被告に、同月一〇日に山田に送達された。

原告は、山田に対して右差押命令が送達された日から一週間が経過した後である同年一一月一日、民事執行法一六三条一項、一五七条に基づく取立訴訟として、本件訴訟を提起した。

4  貸倉庫契約の締結の手続と貸金庫の鍵の保管等

被告における貸倉庫契約の締結の手続等は、次のとおりである。

被告と貸倉庫契約を締結しようとする新規顧客(以下「顧客」という。)は、貸倉庫に収納すべき物品を持参している場合と持参していない場合とがあるが、いずれの場合にも、被告は、顧客を被告のトランクルーム施設内に案内し、顧客は、その希望に従い容量、形態が適当であるものを選定する。

顧客が物品を持参している場合には、顧客は、その選定した貸倉庫に当該物品を自ら収納する。収納する物品が梱包物である場合、被告がその内容の確認を行うことはない。

被告は、顧客に対し、その選定した貸倉庫の二種類の鍵を交付し、貸倉庫に施錠をさせる。貸倉庫の開扉のために必要な鍵は、右二種類のみであり、顧客は、これをその後の利用のために保持する。

次いで、貸金庫契約の締結が行われるが、その概要は、次のとおりである。

顧客は、トランクルームサービス約款を承諾の上申し込む旨の記載のあるトランクルーム寄託申込書、荷受通知書及び印鑑票に必要事項を記載し、所定欄に届出印を押印して被告に提出する。被告は、契約締結手続の終了後、顧客に対し、右の荷受通知書及び約款を交付し、後日、預り証を郵送する。

右のトランクルーム寄託申込書の品名欄には、貸倉庫内において保管される物品名が記載されるが、その記載は、利用者の申告に基づくものであって、保管される物品が梱包物の場合には、被告がその内容を確認することはない。

本件貸倉庫契約においては、右申込書の品名欄に「美術品」と記載されているが、右は山田の申告に基づくものであり、被告は、本件貸倉庫内に、本件動産が格納されているか否かを知らない。

5  約款の定め及び未払倉庫料の存在

顧客に交付されるトランクルームサービス約款(以下「本件約款」という。)には、二三条において、「当社は、保管料、荷役料その他の費用、立替金及び延滞金の支払いを受けるまでは、返還の請求に応じないことができます。」との定めがなされている。

山田は、平成一二年二月七日の本件口頭弁論期日の当時、被告に対し、本件貸倉庫契約に基づき二六万〇三五〇円の未払利用料債務を負担していた。

三  争点及びこれに関する当事者の主張

1  本件貸倉庫の内容物についての被告の民法上の占有の有無及び被告に対する引渡請求権の成否

(原告)

本件貸倉庫は、被告の管理するトランクルーム施設内に存在しているから、その内容物について被告の支配が及んでいることは明らかである。したがって、被告は、本件貸倉庫の内容物を所持しているのであり、これについて民法上の占有を有する。

被告は、銀行の貸金庫では施設への入場に際して貸金庫利用票の提出を求められるのに対して、被告の貸倉庫では、施設への入館票及び預り票の提示が求められており、被告の管理の重点が利用者の入館及び退館のチェックにあること、貸倉庫においては、銀行の従業員がマスターキーを持参して貸金庫の場所まで赴き施錠を解くのに対し、被告の貸倉庫では二種類の鍵を利用者が持っているので入館後は被告の協力を要しないとして、被告に貸倉庫の内容物について占有はなく、利用者の被告に対する貸倉庫の内容物についての引渡請求権を認めることはできないと主張する。

しかしながら、被告は、所定の手続を経ない者の入館を拒否することができるのであり、利用者として被告の事前承諾手続なしに本件貸倉庫の内容物を取り出すことができないことは、銀行の貸倉庫と同様であり、マスターキーを使用しないという点で銀行の貸金庫の場合とは被告の関与の形態が異なるとしても、被告には、貸倉庫の内容物について占有が認められ、利用者には、被告に対する貸倉庫の内容物について引渡請求権が認められる。

(被告)

本件貸倉庫については、銀行の貸金庫とは利用形態が異なっており、被告には、本件貸倉庫の内容物について民法上の占有はなく、利用者の被告に対する本件貸倉庫の内容物についての引渡請求権も成立しない。

すなわち、銀行の貸金庫では、銀行がマスターキーを用いて貸金庫の施錠を解くが、本件貸倉庫においては、二種類の鍵を利用者が持っているので、施錠を解くのに被告の協力を必要としない。

また、銀行の貸金庫においては、貸金庫利用票を必要とするが、本件貸倉庫においては、入館票、預り証の提示が必要とされており、被告の管理の重点は、利用者の入館及び退館のチェックにあり、利用者の本件貸倉庫からの物品の出入れについて協力することはない。

したがって、銀行の貸金庫の場合と異なり、本件貸倉庫においては、被告の本件貸倉庫の内容物に対する事実上の支配はなく、所持を認めることはできない。また、その開扉について、入館後の利用者は協力を要求する必要はないから、利用者の被告に対する本件貸倉庫の内容物についての引渡請求権も認めることはできない。

2  被告は、民法上の留置権を有するか。

(被告)

仮に、本件貸倉庫の内容物についての山田の引渡請求権が認められるとしても、被告は、「他人ノ物ノ占有者」(民法二九五条)に該当する。そして、被告は、利用者である山田に対し、本件貸倉庫の利用について未払の保管料として二六万〇三五〇円の債権を有しているから、民法上の留置権を行使する。

原告は、被告の貸倉庫の内容物に対する占有を認めながら、他方において、留置権に関しては、包括的な占有であることを理由に、被告の占有を否定する。

しかしながら、民事留置権の要件たる「占有」には、条文上何ら限定はない。また、民事留置権は占有している他人の物を留置することによって債務者の弁済を間接的に強制する担保権であるところ、民事留置権において占有が要件とされているのは、債権者の留置(占有の継続)が可能でなければならないためである。したがって、占有の性質は問題にならないのであり、占有が包括的か否かはそもそも問題にならないのである。

(原告)

被告が本件貸倉庫契約において行っている物に対する占有は、個々の内容物について成立するものではなく、貸倉庫の内容物全体につき「一個の包括的な占有」をしているものである。これに対し、被告の主張する留置権は、個々の特定の物に対して占有が認められなければ成立する余地はない。

したがって、被告の貸倉庫における占有は特殊なものであり、被告の留置権は成立しない。

3  被告は、本件約款二三条に基づく引渡拒絶権を有するか。

(被告)

被告は、本件約款二三条に基づき保管料の支払を受けるまで動産の引渡しを拒絶する権利を有するので、同条の定めにより未払の保管料二六万〇三五〇円の支払があるまで動産の引渡しを拒絶する。

原告は、本件貸倉庫契約が銀行の貸金庫契約と同種の契約であり、寄託契約の要素と賃貸借契約の要素を兼ね備えた複合的な非典型契約であるのに対し、本件約款の念頭にあるのは、寄託契約であり、両者は契約形態が異なるので、本件約款は本件貸倉庫契約について拘束力がないと主張するが、本件貸倉庫契約の性質が原告主張のようなものであることは、否認する。

山田は、本件約款一条三項に定める特約に基づいて自らが物品の出入れを行うことも含めて本件約款を承諾した上で本件貸倉庫契約を締結したものであり、山田と被告との間において本件約款の拘束力があることは私的自治の原則から当然であり、本件約款二三条が本件貸倉庫契約に適用されることについては、何ら問題がない。

なお、原告は、執行官の執行を拒否するには、これについての特別な定めが必要であると主張するが、取立訴訟は、執行債務者の第三者に対する債権の存在を前提とするものであり、第三債務者は、執行債務者に主張することができる当該債権に付着した抗弁を執行債権者にも対抗できるものであるから、被告が山田に主張することができる本件約款二三条に基づく抗弁は、当然に執行債権者である原告にも主張することができるものである。

(原告)

本件約款は、「トランクルームサービス約款」との表題が付されているが、その内容は、特定の物に関する寄託契約について定めたものである。「寄託を受けた特定物品」などの「寄託」の記載は、純然たる寄託契約を予定していることを示すものである。

これに対し、本件貸倉庫契約は、銀行の貸倉庫契約と同種の契約であり、寄託契約の要素と賃貸借契約の要素を兼ね備えた複合的な非典型契約である。すなわち、本件貸倉庫契約の契約形態は、顧客が被告の事務所に来館し、入館の手続を取った上で、入場を許された後に、顧客が自分のキャビネットまで赴き、物品の出入れを行うという形態であるのに対し、本件約款三条には、寄託を受けた特定物品の倉入れ、倉出しその他の作業は当社が行いますと定められており、本件貸倉庫契約の契約形態は、本件約款のそれとは、根本的に契約形態を異にするものである。したがって、本件約款に定める内容の契約が山田と被告との間で締結されたものということはできないのであり、本件約款に拘束力はない。よって、本件約款二三条を根拠とする引渡拒絶は、理由がない。

また、本件のように、被告が貸倉庫内の物を包括して占有し、被告が貸倉庫内の内容物について一切把握していない状態では、個々の内容物自体が不明であり、物の留置の前提となる個々の物に対する被告の占有が観念できないので、本件約款二三条の定めは、適用されない。

もし、被告が、本件のような一括占有物に対する執行官の執行を拒否するのであれば、強制執行を受けた場合には、利用者が保管料を支払うまで入館を拒絶することができる旨の特別な定めが必要であるが、本件約款には、そのような定めはない。

第三争点に対する判断

一  争点1について

前記争いのない事実によれば、本件貸倉庫は、被告が管理するトランクルーム施設内に設置され、利用者は、被告に預り証及び届出印が押された入館票を提出するなど、所定の手続を履践しなければトランクルーム施設内に立ち入ることができず、また、被告は、所定の手続を履践しない利用者に対してトランクルーム施設内への立入りを拒絶することができるものであるから、利用者は、被告の協力なしに貸倉庫に収納された内容物を取り出すことができないのであり、他方、被告は、本件貸倉庫契約上、貸倉庫の安全保持を通じて貸倉庫の内容物を安全に保管する責任を負っているものである。

右の事実によれば、被告は、本件貸倉庫の内容物について、利用者と共同して民法上の占有を有するものと解するのが相当である。なお、被告が貸倉庫の開閉や内容物の出入れそのものに関与せず、被告は利用者が何を貸倉庫に収納し、又は取り出したかを知らないなど前記認定の本件貸倉庫の利用関係に照らすと、被告の貸倉庫の内容物に対する占有は、貸倉庫に収納された物品ごとに個別的に成立するものではなく、貸倉庫の内容物全体についての包括的な占有として成立するものと解するのが相当である。また、利用者は、貸倉庫契約の定めるところにより、被告に対し、内容物を取り出すことができる状態にするよう請求する権利、すなわち、内容物引渡請求権を有するものであり、貸倉庫の内容物については、民事執行法一四三条に基づいて利用者の被告に対する貸金庫契約上の内容物引渡請求権を差し押さえる方法により強制執行することができるものと解するのが相当である(最高裁判所平成一一年一一月二九日判決民集五三巻八号一九二六頁参照)。

被告は、銀行の貸金庫においては銀行がマスターキーで貸金庫の施錠を解くが、本件貸倉庫においては利用者がその二種類の鍵を持っており、施錠を解くのに被告の協力を受けることを必要としないとして、銀行の貸金庫の場合のように、内容物について被告の事実上の支配はなく、被告の所持を認めることができず、貸倉庫の内容物について被告に対する引渡請求権を認めることはできないと主張する。しかしながら、本件貸倉庫は、前示のように被告が管理するトランクルーム施設内に設置され、トランクルーム施設全体がその支配下にあるものであって、利用者が貸倉庫の解錠のために必要な鍵をすべて所持していても、利用者がトランクルーム施設内に立ち入ることについては被告の協力が不可欠であって、利用者は、結局のところ、被告の協力なしに貸倉庫に収納された内容物を取り出すことはできないのであるから、被告は、本件貸金庫の内容物について前示のような民法上の占有を有するものと解するのが相当であって、被告主張の点は、貸倉庫の内容物についての被告の占有及び利用者の被告に対する内容物引渡請求権に関する右の認定判断に何ら影響を及ぼすものではない。

よって、被告の右主張は、採用することができない。

二  争点2について

本件貸倉庫契約は、倉庫業者である被告がトランクルーム施設内に設置した貸倉庫内の空間(場所)を利用者に貸与し、利用者が持ち込んだ物品を収納させるために利用させるものである。前示のとおり、被告は、本件貸倉庫の内容物を利用者と共同して占有しているものであるが、その占有関係は、利用者が内容物である個々の動産を直接に占有支配しているのに対し、被告は、内容物全体について一個の包括的な占有を有するにすぎず、個々の動産について直接的な占有を有しないものである。そして、被告は、利用者がいかなる物品を貸倉庫に収納し、又は取り出したかを知らず、利用者から所定の手続に従った請求がある限り、利用者のトランクルーム施設への立入り、貸倉庫の開扉及びその内容物の取出しを拒絶することができず、また、被告は本件貸倉庫の副鍵を所持しているものの、原則としてこれを利用して自己のために本件貸倉庫を開扉することもできないものである。

ところで、民法二九五条の留置権は、その目的物の権利者への占有の移転を拒み、目的物の占有を継続することを内容とする権利であるから、留置権が成立する占有は、権利者が個々の目的物の引渡しを請求し、又は占有を移転しようとする場合において留置権の存在を主張し、その引渡しを拒むことができる態様のものでなければならない。

これを本件について見るに、被告の本件貸倉庫の目的物に対する占有は、その全体についての包括的な占有にとどまり、被告は、本件貸倉庫の内容物である個々の動産について直接的な占有を有せず、利用者がいかなる物品を貸倉庫に収納し、又は取り出したかを知らず、利用者から所定の手続に従った請求がある限り、その内容物の取出しを拒絶することができないものであるから、利用者が本件貸倉庫の内容物である個々の目的物を取り出し、その占有を移転しようとするのに対し、これを拒むことができないものである。したがって、右のような態様の占有をもって、前記のような留置権が成立する占有に該当するものということはできない。

したがって、争点2に関する被告の主張は、採用することができない。

三  争点3について

前記争いのない事実等によれば、山田と被告とは本件約款により本件貸倉庫契約を締結したものである。

したがって、本件約款は、山田と被告との間の本件貸倉庫契約において拘束力を有するから、被告は、本件約款二三条の引渡拒絶の抗弁を、山田の被告に対する本件貸倉庫契約に基づく引渡請求権を差し押さえた執行債権者である原告に対しても主張することができるものというべきである。

原告は、本件貸倉庫契約の契約形態が、本件約款の定めるものとは異なることを理由に、本件約款には拘束力がないと主張するが、本件約款一条三項は、「当社は、前2項の規定にかかわらず、法令に反しない範囲で特約の申込みに応じることがあります。」と定め、貸倉庫契約について利用者と被告とが本件約款の定めとは異なる合意をすることを許容しているから、本件貸倉庫契約の内容中本件約款の定めと異なる部分は、本件貸倉庫の内容物の出入れ等に関する本件約款の特約に該当するものであると解するのが相当である。したがって、本件約款の定めは、特約を含む貸倉庫契約についてもその趣旨及び性質に反しない限り、その効力が認められるものというべきである。そして、本件約款二三条の定めは、契約当事者間の公平を図る見地から貸倉庫の内容物の引渡しと保管料の支払とが同時履行の関係に立つことを定めたものであって、本件貸倉庫契約の趣旨及び性質に反するとはいえないから、同条の定めは、本件貸倉庫契約について適用があるものというべきであり、右原告主張の点から本件約款二三条の拘束力を否定することはできない。

さらに、原告は、被告の貸倉庫の内容物に対する占有が包括的なものであり、個々の内容物に対する占有が観念できないことを理由として、本件約款二三条の定めが適用されないことを主張するが、本件約款二三条の定めは、前示のとおり、契約当事者の合意により貸倉庫の内容物の引渡しと保管料の支払が同時履行の関係に立つことを定めたものであって、被告が貸倉庫の内容物である個々の動産について直接的な占有を有することを要件とするものではないと解されるから、原告の右主張は、採用することができない。

以上によれば、争点3に関する被告の主張は、理由がある。

四  結論

よって、本件貸倉庫内に存在する動産について前記保管料の支払との引換給付を命ずることとし、原告のその余の請求を棄却することとする。

(裁判長裁判官 柳田幸三 裁判官 中川正充 裁判官 大門香織)

別紙<省略>

物件目録<省略>

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