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東京地方裁判所 平成11年(ワ)26353号 判決

原告 海野建設株式会社

代表者代表取締役 海野實

訴訟代理人弁護士 児玉隆晴

同 高橋信行

被告 株式会社日本原廃処理センター

代表者代表取締役 柴田騏一

特別代理人 沢野忠

被告 柴田騏一

被告 泉水敦

主文

一  被告らは、原告に対し、連帯して、三〇〇〇万円及びこれに対する平成一〇年一二月二五日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  主位的請求

主文と同旨。

2  予備的請求

(1)  被告株式会社日本原廃処理センター及び被告泉水敦は、被告に対し、連帯して三〇〇〇万円及びこれに対する被告日本原廃処理センターは平成一一年七月二二日から、被告泉水敦は同年一〇月三一日から各完済まで年六分の割合による金員を支払え。

(2)  訴訟費用は被告株式会社日本原廃処理センター及び同泉水敦の負担とする。

(3)  この判決は仮に執行することができる。

二  被告株式会社日本原廃処理センター

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二事案の概要

本件は、原告が、主位的に、被告らから保証金の名目の下に三〇〇〇万円を騙し取られたと主張し、被告らに対し、共同不法行為に基づく損害賠償として、連帯して三〇〇〇万円を支払うことを求めるとともに、予備的に、被告株式会社日本原廃処理センター及び被告泉水敦に対し、保証金の返還合意に基づき三〇〇〇万円の返還を求めた事案である。

一  基礎となる事実

(いずれも争いのない事実か、証拠により容易に認められる事実)

1  原告は、土木工事等を業とする株式会社であり、被告株式会社日本原廃処理センター(以下「被告会社」という)は、産業廃棄物の収集、運搬並びに再生、処理等を業とする株式会社である。

また、被告柴田騏一(以下「被告柴田」という)は、被告会社の代表者であり、被告泉水敦(以下「被告泉水」という)は、原告に被告会社を紹介し、かつ、「極低原廃処理施設新築工事協定書」(以下「本件協定書」という)に立会保証人として署名、押印するなどした者〔甲一号証、原告代表者の供述〕である。

2  被告らは、平成一〇年一二月二三日ころ、原告に対し、北海道電力泊原子力発電所及び東北電力女川原子力発電所内の「極低原廃処理施設新築工事」(以下「本件工事」という)を依頼したいと申し込んだ。

3  原告と被告会社及び被告泉水は、同月二五日、左記内容の本件協定書に署名、押印した〔甲一号証〕。

(1)  目的等 被告会社は、原告に対し、本件工事を発注する。

(2)  保証金 原告は、被告会社に対し、工事受注保証金として三〇〇〇万円を預託するものとし、預託と同時に、被告会社は、原告に対し、本件工事を発注する。

4  原告は、右同日、本件協定書に基づき、工事受注保証金として三〇〇〇万円(以下「本件保証金」という)を被告会社に交付し、被告会社はこれを受領した〔甲二号証〕。

5  しかし、本件工事は被告会社の準備が整わないとの理由で着手ができないまま経過したので、原告は、被告会社に対し、本件保証金の返還を求めたところ、被告会社は、平成一一年六月三〇日、原告に対し、本件保証金を同年七月二一日までに返還することを約した〔甲三号証〕。

6  また、被告泉水は、平成一一年九月三〇日、原告に対し、被告会社が原告に対して同年一〇月二九日までに本件保証金を返還しない場合には、同月三〇日までに被告会社に替って本件保証金を返還することを約束し、被告会社が原告に対し負担する債務を併存的に引き受けた〔甲四号証〕。

二  争点

本件の主要な争点は、被告らの詐欺による共同不法行為の成否である。

三  争点に関する当事者の主張

1  原告

(1)  被告らは、共謀の上、平成一〇年一二月ころ、工事受注保証金の名目で原告から金銭を騙し取ろうと企てた。

(2)  被告らは、原告に対し、同月二三日ころ、被告会社と核燃料サイクル開発機構及び日本原子力発電株式会社との間で廃棄物処理委託契約が実際には存在していないにもかかわらず、あたかも被告会社が核燃料サイクル開発機構等から原子力発電所の廃棄物処理を受託したかのように告げ、北海道電力泊原子力発電所及び東北電力女川原子力発電所内の本件工事を発注したい旨申し込んだ。

(3)  被告らは、原告に対し、同月二五日、再度右のように告げて原告を欺き、そのように信じさせた上、本件協定書に署名、押印させ、右同日、本件協定書に基づき工事受注保証金名目で本件保証金三〇〇〇万円を交付させた。

したがって、原告は、被告らの右詐欺による共同不法行為により、本件保証金相当額の三〇〇〇万円の損害を被った。

2  被告会社

被告会社と原告との間の本件協定書の締結は被告会社の詐欺行為に基づくものではなく、被告会社は、原告から本件保証金を騙し取ってはいない。

第三当裁判所の判断

一  本件保証金の授受の経緯に関し、前示の基礎となる事実のほか、証拠〔甲五ないし一一号証、原告代表者の供述〕によれば、次の事実が認められる。

(1)  原告代表者と被告泉水は、北海道における原告会社の業務に関して、被告泉水から労務者の派遣を受けていた関係で、仕事上の付き合いがあった。

原告代表者は、平成一〇年一二月ころ、被告泉水から、被告会社が北海道電力泊原子力発電所及び東北電力女川原子力発電所における廃棄物処理を委託され、これに伴い、被告会社が「極低原廃処理施設新築工事」をしてくれる建設業者を探しているので、原告にこれも請け負って欲しい旨の電話連絡を何度も受けた。

(2)  原告代表者が、被告泉水とともに、平成一〇年一二月二三日、虎ノ門の農林年金センターで、被告柴田と面談したところ、被告柴田は、原告代表者に対し、「被告会社が核燃料サイクル開発機構及び日本原子力発電株式会社から北海道電力泊原子力発電所及び東北電力女川原子力発電所内の廃棄物処理を受注したので、極低原廃処理施設の新築工事を原告が施工しないか。」と話し、本件工事を原告に発注したい旨申し込んできた。

その際、被告柴田から、被告会社に工事受注保証金として三〇〇〇万円を預託することが条件だと言われた。

(3)  原告は、被告会社が東北電力や核燃料サイクル機構等著名なところから受注したりしている旨の被告柴田の言を信用して、本件保証金三〇〇〇万円を捻出して本件工事を受注することとし、原告代表者が、同月二五日、被告会社の事務所を訪れ、被告柴田に対し、本件工事を受注する旨伝えた。

その席上においても、原告代表者は、被告柴田から前回の面談の際に話されたのと同じ内容の話に加え、国からの無償借地に関する契約書と称する書面を見せられ、被告会社が本件工事予定地の各発電所の敷地一〇〇〇坪も無償借地した旨説明されたため、これらを信用して、原告は、被告会社と本件協定書を取り交わし、右同日、本件保証金三〇〇〇万円を被告会社に預託した。

(4)  しかし、本件工事は、平成一一年四月着工予定であったのに、被告会社から、被告会社の準備が整わないとの理由で工事着工を延期する旨連絡があり、その後の原告の再三の催告にもかかわらず、工事着工の目途が全く立たない状況が続いた。

(5)  北海道電力株式会社と被告会社との間では、北海道電力株式会社の敷地について、無償借地契約を締結した事実は無く、右契約に関する交渉の事実もない〔甲五号証の一、二〕。

(6)  核燃料サイクル開発機構と被告会社との間で、廃棄物処理委託契約を締結した事実は無く、右契約に関する交渉の事実もない〔甲六号証〕。

(7)  東北電力株式会社と被告会社との間で、東北電力女川原子力発電所の敷地について、無償借地契約を締結した事実は無く、右契約に関する交渉の事実も無い〔甲七号証〕。

(8)  日本原子力発電株式会社と被告会社との間で、廃棄物処理委託契約を締結した事実は無く、右契約に関する交渉の事実も無い〔甲八号証〕。

二  前示の基礎となる事実及び右の認定事実を総合すると、被告会社は、その代表者である被告柴田において、被告泉水とともに、原告から工事受注保証金の名目で三〇〇〇万円を騙し取ろうと企て、実際には被告会社と核燃料サイクル開発機構及び日本原子力発電株式会社との間で廃棄物処理委託契約が存在していないにもかかわらず、あたかも右契約が成立しているかのように装い、原告に対し本件工事を発注したいなどと告げて、原告を欺き、原告は、これらを信用して錯誤に陥り、被告会社に対し、本件保証金三〇〇〇万円を交付し、右同額の損害を被ったものと認められる。

三  被告柴田は、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないから、請求原因事実を争うことを明らかにしないものと認め、これを自白したものとみなす。

四  被告泉水は、本件口頭弁論期日において、答弁書その他の準備書面を提出せず、請求原因事実を争うことを明らかにしないので、これを自白したものとみなす。

第四結論

以上によれば、原告の主位的請求は、いずれも理由があるからこれらを認容することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法六一条、六五条一項本文を、仮執行の宣言について同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 川勝隆之)

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