東京地方裁判所 平成11年(ワ)26493号 判決 2003年12月26日
原告
株式会社三一書房
同代表者代表取締役
X
同訴訟代理人弁護士
阿部能章
被告
三一書房労働組合
同代表者
Y1
被告
外2名
上記3名訴訟代理人弁護士
鈴木達夫
同
森川文人
同
藤田正人
被告
日本出版労働組合連合会
同代表者
Y4
被告
Y5
上記2名訴訟代理人弁護士
井上幸夫
同
小林譲二
同
佐藤仁志
主文
1 被告三一書房労働組合及び被告日本出版労働組合連合会は,原告に対し,別紙物件目録1及び2記載の各建物を明け渡せ。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを10分し,その3を被告三一書房労働組合及び被告日本出版労働組合連合会の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告らは,原告に対し,別紙物件目録1及び2記載の各建物を明け渡せ。
2 被告らは,原告に対し,連帯して,1億8945万8529円及びこれに対する平成11年1月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は,出版会社である原告が,原告従業員らの労働組合である被告三一書房労働組合らによって原告所有の本社建物及び書籍の保管倉庫が不法に占拠され,これにより出版業務が妨げられる等の損害が生じたと主張し,被告らに対し,所有権に基づき別紙物件目録1及び2記載の各建物の明渡しを求めるとともに,不法行為に基づき,被告らが上記各建物を占有することによって原告に生じた1億8945万8529円の損害の賠償を求めた事案である。
2 前提事実(争いのない事実以外については証拠を併記)
(1) 原告は,昭和24年8月9日に設立された,図書雑誌の出版等を目的とする株式会社である。現在,原告代表取締役として登記されている者はX(以下「X」という。)である。
(2) 被告三一書房労働組合(以下「被告労働組合」という。)は,原告の従業員によって組織された労働組合である。
被告Y2(以下「被告Y2」という。)は,昭和47年5月に原告に入社し,営業部に勤務した後,総務部勤務となった。また,被告労働組合の組合員であり,その代表者を務めた時期もある(丙24)。
被告Y3(以下「被告Y3」という。)は,昭和43年4月1日に原告に入社し,編集部員として勤務しており,また,被告労働組合の組合員でもある(乙40)。
(以下,被告労働組合,被告Y2及び被告Y3を総称して「被告労働組合ら」という。)
被告Y2及び被告Y3は,原告の従業員であったが,原告から,平成10年11月14日付けで,業務命令に従わなかったこと及びXに対して暴行を加えたこと等を理由として,懲戒解雇を通告された(甲170ないし172の各1・2,乙24ないし26)。両名は,その効力を争っている。
なお,平成10年当時,被告労働組合には,被告Y2及び被告Y3のほか,A1,A2,A3,Y1,A4,A5,A6,A7,A8及びA9らが所属していた(以下,同人らを総称して「組合員ら」という。また,各人の姓のみを記載する。)。
(3) 被告日本出版労働組合連合会(以下「被告出版労連」という。)は,昭和33年に出版産業及びその関連事業に従事する労働者をもって組織された労働組合の上部組織であり,「低賃金と労働強化を打破し,労働者と労働組合の諸権利を拡大し,社会的地位の向上を目指すこと」等を目的とする連合会である。平成12年当時で,加盟組合数は147組合,25分会,組合員数約8600名であり,被告労働組合も加盟している。
被告Y5(以下「被告Y5」という。)は,平成14年7月13日に退任するまで被告出版労連の代表者であった。なお,現在の代表者はY4である(丙8,証人O)。
(以下,被告出版労連及び被告Y5を総称して「被告出版労連ら」という。)
(4) Z(以下「Z」という。)は,昭和28年に原告に入社し,昭和47年から昭和60年まで原告の取締役を,その内昭和56年から昭和60年までは代表取締役を務めていた者である。また,原告の株主でもある(丙9,証人Z)。
(5) 原告は,別紙物件目録1及び2記載の各建物(以下,同目録1記載の建物を「朝霞倉庫」,同目録2記載の建物を「本社建物」という。また,両建物を総称して「本件各建物」という。)を所有している。朝霞倉庫の中には,原告の在庫書籍が保管されている。
(6) 原告(当時の代表取締役はXであった。)と被告労働組合は,平成10年8月以降,争議状態に入っていた。そのような状況の中,原告は,同年11月14日,「株式会社三一書房は,『三一書房労働組合』を名乗る集団の暴力行為は『言論・出版の自由』の為に戦ってきた当社の伝統に反するものと考え反省を求める趣旨において,当社事務所の閉鎖を宣言します。」旨宣言し,本社建物について,①窓枠に釘を打って開閉を不可能にし,②玄関ガラスドアを施錠し,③玄関開錠設備の蓋の上に鉄板を溶接し,④玄関前電動シャッターに鎖を巻いて固定し,⑤玄関前電動シャッター下部と地面との間に鉄板を挟み,シャッターと鉄板とを溶接し,⑥玄関前電動シャッターへの通電を物理的に遮断し,シャッターの上げ下げを不可能にし,ロックアウトを行った(以下「本件ロックアウト」という。)(甲30)。
(7) 原告は,平成10年12月31日,株主総会を開催した(以下「平成10年12月31日総会」という。)。同総会の議事録によれば,当時の原告取締役であったX,C(以下「C」という。)及びD(以下「D」という。)の解任案が否決されている。
(8) Zら原告の一部の株主は,平成11年1月14日,平成10年12月31日総会の続会と称する会を開催した(以下「平成11年1月14日続会」という。)。同続会の議事録によれば,X,C及びDの取締役解任及びZほか3名の取締役選任等が決議されている。
そして,Zは,同日付けで,原告代表取締役として,被告労働組合に対し,「会社財産の管理,保全のため,宿直体制をつくるように要請します。なお,宿直時の管理,保全の権限を貴労働組合に委ねます。」旨要請するとともに,①本件ロックアウトの解除,②被告Y2及び被告Y3らに対する懲戒解雇の撤回,③組合員の一部に対する停職処分の撤回,④労働協約の破棄通告の撤回等を通知した。
(9) 被告労働組合は,平成11年1月14日以降本社建物を,同月18日以降朝霞倉庫を,現在に至るまで占有している。
3 主たる争点及びこれについての当事者の主張
(1) 争点1
被告らの占有の有無及びその態様
(原告の主張)
被告労働組合らは,本社建物については,平成11年1月14日,ロックアウトのための施錠設備等を破壊し,所有者である原告に無断で実力をもって立ち入った。また,朝霞倉庫については,同月18日,倉庫を管理していた警備員を実力で排除し,所有者である原告に無断で実力をもって立ち入った。その後,現在まで,原告の再三にわたる明渡要求にもかかわらず,不法占有を継続している。被告出版労連らは,被告労働組合らとともに,本件各建物に泊まり込んで不法占拠を継続している。
(被告労働組合らの主張)
被告労働組合の占有の態様は,排他的な占有とは異なる。同被告が「X経営」及びその指揮下にある人物の立入りを実力で拒んだ事実はない。
(被告出版労連らの主張)
被告出版労連は,被告労働組合からの要請に基づき,被告出版労連に加盟する各単位労働組合に対して宿直体制への支援を要請したのみであり,各単位労働組合の組合員が本件各建物に赴いた時間帯がXらの暴力的襲撃が危惧される夜間及び休日だけであったことからしても,被告出版労連が占拠・占有しているとはいえない。
被告Y5が本件建物を占拠した事実もない。なお,被告Y5は,平成14年7月13日,被告出版労連の代表者(中央執行委員長)を退任している。
(2) 争点2
被告らに本件各建物を占有する権原が存するか。
(被告労働組合らの主張)
ア Zの指示
原告は,平成10年12月31日総会において,続行の決議をした。平成11年1月14日続会において,Zらが取締役に選任され,Zが代表取締役となった。そして,原告は,同日,被告労働組合の組合員に対し就業命令を発するとともに,被告労働組合に対し宿直を委任した。被告労働組合らは,上記就業命令に従って本件各建物において労務を提供し,また,上記宿直委任に従って夜間は本件各建物において宿直を行っている。
イ 労働協約54条
被告労働組合と原告との間には,「原告は,争議期間中,被告労働組合に所属する組合員が社屋に出入りすることを制限又は阻止できない。また,原告は,被告労働組合が通信連絡のため原告の施設を使用することを認める。」旨の労働協約が存する(労働協約54条)。
そして,被告労働組合と原告とは,①平成10年8月末に退職した労働組合員A10(以下「A10」という。)の退職金が支払われなかった問題,②経営再建を口実にした組合員らの賃金カットの申入れ(基本給20ないし25%のカット)が行われた問題及び③労働協約改定(改悪)が提案された問題等を巡って争議状態になっていた。そして,原告は,同年10月12日の団体交渉の際,被告労働組合との間で,賃金カット等の撤回を合意したにもかかわらず,翌日にはその合意を反故にし,同月16日からは取締役全員が出社しなくなり,日常業務の遂行を放棄し,賃金カット及び労働協約改定を被告労働組合に承認させる目的で,本件ロックアウトを行った。のみならず,原告は,本件ロックアウト中に,原告の重要な資産を取締役会の独断をもって次々と処分するなど,原告の業界における信用失墜を促進・放置する行為をしている。さらに,原告は,平成11年1月以降も,例えば,同年3月8日に朝霞倉庫に侵入して原告社員を監禁して書籍を搬出する等の違法行為を繰り返しており,争議期間は継続している。
したがって,労働協約54条の適用により,被告労働組合に正当な占有権原が認められる。
ウ 争議行為に基づく占有権原
被告労働組合らは,本件ロックアウト等に対抗し,職場を確保し,労働債権を保全するために労働者に認められる使用権原に基づき(自力救済行為とは異なる。),本件各建物を使用している。
(被告出版労連らの仮定的主張)
被告出版労連が被告労働組合の宿直体制への支援を各単位組合に要請する行為は,使用者との交渉において対等の立場に立ち,労働者の地位向上,労働条件の維持改善,経済的地位の向上を図ることを目的として,労働組合法及び同連合会規約に従って行っている正当な組合活動である。
(原告の主張)
ア Zの指示について
平成11年1月14日続会は,平成10年12月31日総会において有効な続行の決議が行われていないこと,また,同続会自体についても,招集のための取締役会や各株主に対する招集通知が行われておらず,大部分の株主が無視されている等の手続的瑕疵があることからして,被告らとZの共同による違法な株主総会である。したがって,Zは原告代表取締役に就任しておらず,同人の指示を原告の指示と解することはできない。
イ 労働協約54条について
同条の趣旨は,争議期間中に組合員の社屋への出入りが禁止されることにより,争議行為が不当に圧迫される事態を防止する点にある。したがって,同条は,組合員に対して,争議期間中に社屋への出入りを拒否されない権利を認めた規定にすぎない。これを超えて,組合員が原告の指揮命令を無視し,原告の役員及び従業員の立入りを拒み,社屋を排他的に占有使用し得るという権原まで認めたものではない。ましてや,物理的に封鎖されたロックアウト中の本社建物内に,裁判所の判断を待つことなく,違法な暴力を行使して,不法侵入する行為を合法化するものでもない。
ウ 争議行為に基づく占有権原について
被告労働組合(ないし組合員ら)は,平成10年8月,事実上原告の社長的役割を果たしていた被告Y2が組合員らの退職金の確保のみを目的として提案した会社整理案が株主総会で否決されると,団体交渉を繰り返し要求するようになり,同年10月ころからは,団体交渉の名を借りて,既に回答済みの問題について重ねて回答を求めたり,多人数で取締役を取り囲み長時間大声を上げてつるし上げたり(特に,同年10月14日には原告の各取締役らを本社建物の会議室に軟禁した。),原告の各取締役の自宅に押し掛け自宅周辺にビラを撒き赤旗を立ててシュプレヒコールを繰り返したり,原告代表取締役に対し暴行を加えたりするなどの暴力的交渉を展開した。さらにその間,違法なストライキを頻繁に行った。そのため,原告の各取締役は,身の危険を感じ,本社に出社できないという極めて異常な状態となった。そこで,本件ロックアウトを行った。これは,被告労働組合による業務阻害行為が多発し,それによる損害を軽減するためにやむにやまれずなされた防御的ロックアウトであり適法である。仮に,違法であるとしても,被告らは司法手続きによる救済を求めるべきである。したがって,争議行為に基づく占有権原などは認められない。
エ 被告出版労連らの仮定的主張は争う。
(3) 争点3
原告の本訴請求は信義則違反,権利の濫用ないし公序良俗違反に当たるか。
(被告らの主張)
被告労働組合らは,Zを始めとする多数派株主の支持を背景として,前記の正当な占有権原に基づいて,本件各建物を使用し宿直体制を実施している。被告出版労連らは,このような被告労働組合らの正当な活動を支援している。一方,Xは,株主総会において,Zら多数派株主の権利行使を妨害し,Zの代表取締役就任を正当な理由なく拒否して,自らが代表取締役の地位に居座り続けている。裁判所の判決,和解及び仮処分決定等をも無視する違法な妨害行為を続けている。本訴請求は,Xが,上記のような違法な手段で得た代表取締役の地位を利用して,原告の資産売却等を通じて自らが利益を得る目的で行っているものであり,信義則違反,権利の濫用,公序良俗違反に当たる。
(原告の主張)
Zらが多数派株主であったことは過去に一度もない。したがって,主張の前提が誤っている。また,原告がZら株主の権利行使及びZの代表取締役就任を妨害した事実はない。むしろ,株主総会に出席するための手続を怠ったり,会場において不規則発言を繰り返すなど,Zら側に問題があった。そして,被告らが問題ありとして主張する株主総会については,平成14年12月27日に成立した裁判上の和解(以下「平成14年12月27日和解」という。)によってその有効性が確認されている(なお,被告らは,この和解の趣旨に反する行為に出ている。)。さらに,Xは,平成15年6月17日に開催された直近の株主総会(以下「平成15年6月17日総会」という。)においても取締役に選任され,その後,代表取締役に選任されている。したがって,本訴請求は信義則違反,権利の濫用ないし公序良俗違反ではない。
(4) 争点4
損害について
(原告の主張)
原告は,被告らが本件各建物を不法に占拠したことにより,次のような損害を被った。
ア 逸失利益
原告は,本件ロックアウトの後も在庫書籍の販売を行っていたが,被告らの不法占拠によりこれを妨げられた。その逸失利益である。算定方法は,次のとおりである。
(ア) 算定の対象となる書籍(在庫書籍)は,朝霞倉庫内の在庫書籍の内,平成8年12月31日までに刊行されたものに限定する(新刊及び平成9年1月1日から同年12月31日までに刊行された書籍は除外する。)。
(イ) 上記対象書籍の「売上実績」を算出する。「売上実績」は,平成10年における対象書籍の売上高を,上期(1月ないし6月)と下期(7月ないし12月)に分け,その平均値とする。
(ウ) 算出した平成10年における「売上実績」が平成11年以降も継続することを前提とする。
(エ) 平成11年1月ないし平成14年6月までの期間を,各6か月の単位で7期に分ける。そして,第1期と第2ないし7期に分けて,それぞれの逸失利益の算定を行う。
(オ) なお,朝霞倉庫以外に保管されていた在庫によってカバーできる場合があり得るので,その場合には,カバーし切れない分のみを逸失利益として算定する。
(カ) 第1期
a 「売上実績」が総在庫(朝霞倉庫分の在庫とそれ以外の会社分在庫の合計)を上回る場合
朝霞倉庫分がすべて販売し得たと予想される。したがって,当該書籍の朝霞倉庫分すべてが逸失利益である。
b 「売上実績」が総在庫を下回る場合
会社分が「売上実績」を上回る場合には,会社分によって売上実績をカバーし得たのであるから,朝霞倉庫分に関する逸失利益はない。
会社分が「売上実績」を下回る場合には,会社分によって「売上実績」をカバーし切れない。朝霞倉庫分があれば,そこからの供給があり得た。したがって,「売上実績」から会社分を控除した残額が逸失利益である。
(キ) 第2期ないし第7期について
a 朝霞倉庫分によって供給し得た期間を求める。
① 「売上実績」が「会社分に第2期期間中の返品等を加えた分」(会社分Ⅱ)を上回る場合には,朝霞倉庫分から,「売上実績」と会社分Ⅱの差額を控除し,これを「売上実績」で除した数(ただし,6を最大とする。)が供給可能期間である。
② 「売上実績」が会社分Ⅱを下回る場合には,会社分Ⅱを「売上実績」で除したものから第1期分を除いた期間を算出し,6から上記期間を控除したものが供給可能期間となる。
ただし,この場合においては,さらに,現実に存在する朝霞倉庫分を供給することが可能な期間,すなわち,朝霞倉庫分を「売上実績」で除した数が上限となる。
b そして,「売上実績」に正味価格を乗じ,さらに上記で算出した供給不可能な期間を乗じた額が逸失利益となる。
(ク) 以上の方法により逸失利益を算定すると,第1期は8014万0429円,第2期ないし第7期は合計4億4483万6853円の損害が発生していることになる。本訴では,これらの合計額の内金を請求するものである。
イ 重版費用
原告は,被告らの不法占拠によって,在庫書籍の販売ができなくなり,書籍の重版を行わざるを得なかった。原告が重版のために支出した直接製作原価(人件費等の間接費用を含まない。)の総額は2756万5029円であり,原告は同額の損害を被った。
ウ 倉庫費用
原告は,被告らの不法占拠によって,新刊本及び返品本を保管する倉庫を賃借せざるを得なくなった。原告は,株式会社サンブック社から倉庫を賃借した。賃料は1か月当たり163万9809円である。平成11年5月分から平成14年7月分までの賃料は5189万2796円であり,原告は同額の損害を被った。
エ 事務所費用
原告は,本件ロックアウト後,朝霞倉庫内部に本社機能を移転させて,出版活動に従事してきた。しかし,平成11年1月以降,朝霞倉庫を被告らに占拠されたため,本社機能を持つ事務所を別途賃借せざるを得なくなった。そこで,原告は,千代田区三番町<番地略>所在のコーポ麹町606号室を,平成12年8月31日までの間賃借した。その賃料は,1か月16万5000円である。よって,以下のような損害を被った。
(ア) 礼金 31万5000円
(イ) 敷金(終了時に原告に対して建物の原状回復義務が課されているため,原告に返還され得ないものである。)
45万円
(ウ) 保険料 1万5000円
(エ) 仲介手数料 15万7500円
(オ) 公正証書作成分担金 1万1000円
(カ) 賃料13か月分(平成11年9月から平成12年9月まで)
214万5000円
合計 309万3500円
(被告らの主張)
ア そもそも原告の主張によれば,原告はロックアウト中であるというのであるから,本件各建物の占有による損害は発生し得ない。
イ 逸失利益については,以下のような疑問がある。
(ア) 原告は,取次業者から優遇され,新刊本の納入金額の約5割を翌月末までに支払うという特別の支払条件を認められていた。そのため,当該書籍の販売予測にかかわらず,新刊本の発行による取次からの代金支払を資金繰りに充てる「自転車操業」を行っており,平成10年の前期だけで100点の新刊が発行された。すなわち,原告においては,新刊本販売が売上の圧倒的割合を占めていたのであり,朝霞倉庫に保管されていた「在庫本」販売は従たる役割しか果たしていなかった。原告の平成10年度上半期の純売上は,家賃収入を除き3億7000万円であったところ,原告の計算によると,在庫本の売上は半期だけで12万冊を超え金額では少なくとも2億円を超えることとなり,1年で4億円もの在庫本売上があることになってしまう。在庫本販売だけで全体売上の50%を占めることになってしまう。机上の空論である。
(イ) 原告の主張は,平成10年当時に売れていた書籍が,長期不況が一層進行しているにもかかわらず,約4年間も継続的に売上を維持していることが前提となっている。実際の出版業界ではあり得ない。
(ウ) 原告においては,在庫管理が正確ではなかったため,在庫本の数の増減が必ずしも売上の実態を正確に反映していない。
ウ 重版費用については不知ないし否認する。
そもそも,原告は,重版した書籍の販売によって新たに利益を得ているのであるから,重版費用を損害であると主張することは不合理である。また,原告が行った重版の半分以上は,在庫品が僅少のため,もともと予定されていた。具体的には,毎年12月末現在で,在庫本が500冊以下のものについては,すべて平成11年度の重版予定に始めから入っていたものであり,本件とは関係なく計画されていたのである。
エ 倉庫費用については不知ないし否認する。
オ 事務所費用については不知ないし否認する。
原告が朝霞倉庫において業務を行っていた事実はない。また,原告は,もともと,平成11年2月には本社建物を売却し,他の事務所へ移転する予定だったのであり,麹町の事務所の費用の発生は,本件との因果関係を欠く。現に,原告が上記事務所を賃借した時期は,同年8月であり,同年1月14日から7か月も経過した段階であるから,いっそう本件との間の因果関係を欠く。
第3 当裁判所の判断
1 前提事実に,証拠(甲26,68,69,77,113ないし115,128,乙39,40,丙8,24,29,証人Z,証人O,証人E,原告代表者,被告Y2,被告Y3及び後掲するもの)及び弁論の全趣旨をあわせると,以下の事実が認められる。
(1) 争議の発端について
ア 平成10年8月当時,原告の代表取締役はB(総務部長を兼務,以下「B」という。),その他の取締役はX(代表取締役の代理の立場であり,制作部長を兼務),C(編集部長を兼務)及びD(営業部長を兼務)であった。
イ 同月当時の原告の負債総額は12億円であり,その内銀行借入が8億5000万円以上を占め,毎月の返済額は3500万円を超えていた。そして,当時の運転資金は月額1億1000万円から1億2000万円程度であったのに対し,売上は月額6000万円程度にとどまっていた(丙12の1)。
ウ 同月20日ころ,経営危機問題を解決するため,「三一書房再建調査委員会」(以下「再建調査委員会」という。)が設置された(甲59)。同委員会の構成員として,C(委員長),Z,X,E,F,被告Y3のほか,専門家からなる外部委員としてG弁護士(以下「G弁護士」という。),H公認会計士,I税理士(以下「I」という。)が選任された(乙39,58)。
エ 同月21日,臨時株主総会が開催され,再建調査委員会の発足が承認された(甲59)。また,B及び被告Y2らによって,A1を社長に,被告Y2及びA2を取締役に就任させ,本社建物を売却し,朝霞倉庫へ移転して再建する案が提出されたが,これは否決され,これによりBは事実上解任された状態となった(甲59,乙58)。
オ 当時,A10(昭和41年4月,アルバイトとして原告に入社し,昭和46年4月1日に正社員となり,宣伝部に配属されたが,昭和48年総務部に配属され,それ以降,総務及び経理業務を担当していた。)が,平成10年8月31日付けで退職するに当たって,退職金が支払われない(同年9月16日に300万円が支払われたのみであった。)という問題が生じていた。なお,A10は,退職金2601万5734円の支払を求める訴訟(東京地裁平成11年(ワ)第15434号)を提起しており,平成12年9月5日,請求を認容する第1審判決が言い渡されている(乙6)。
カ 被告労働組合は,平成10年8月28日,原告に対し,団体交渉の申入れを行ったが,原告(代表取締役代理X)は,①「団体交渉に臨むべき経営側の判断資料は極めて不十分な状況である」,②「代表取締役社長Bが今週末まで不在である」,③「代表取締役Bが,8月4日取締役会以前に取締役会の重大なる『先決事項』を無視して労組委員長Y2,社員A1との数回にわたると思われる協議によって,株主工作に回った事実がある。よって,取締役会は,代表取締役B氏の執行権を停止した。貴組合の自戒と,しかるべき対処を要求する」,④「A10氏の退職は取締役会もこれを承認する。また,退職金の支払については,本人と協議した上で,貴組合と協議することを約束する」,⑤「以上の事項を前提としながらも貴組合とのすみやかなる団体交渉の期日を決めたい」などの理由を挙げてこれを拒否した(乙7の1)。
キ 被告労働組合は,同年9月8日,原告に対し,団体交渉の申入れを行ったが,原告は,同月11日,①「代表取締役社長B氏の執行停止ならびに経営責任の問題については,その経過と実情を,8月26日の全社員会議と9月2日の拡大執行部との団体交渉の席上で誠意をもって説明した。なお,代表取締役社長B氏の執行権の停止と辞任提出は,すでに報告しているように,取締役会の『先決事項』を無視し,特定の社員数名と協議して株主工作を行ったことが,大きな理由の一つである。すでに名前があがっている社員については貴組合の責任において独自の調査を行うことを強く要望する」,②「三一書房再建調査報告書は9月20日までに作成し,来る9月24日の臨時株主総会に提出する予定である。現在,調査資料の分析に営々努力中である。中間報告はありません。」などとして,これを拒否した(乙7の2)。
ク 原告は,同月16日,役員報酬を40%カットすることとした(甲48)。
ケ Bは,同月17日,正式に原告代表取締役を辞任した。翌18日,Xが原告代表取締役に就任した(甲26)。
コ 原告は,同月19日の取締役会において,増資を決議した。
サ 再建調査委員会は,同月20日,原告の資金繰りが窮した原因の分析及び再建策を記載した「意見書」を作成した(乙58)。再建策の主たる内容は,賃金カット,取引銀行であるわかしお銀行及び都民銀行の拘束預金(歩積両建預金)の解約,新株発行による増資,遊休資産の売却であり,また,上記意見書に記載されていない提案として,労働協約の改定(「会社の従業員はすべてこの組合の組合員でなければならない」(7条),「組合員の組合活動は原則として勤務時間以外に行う。ただし組合役員,執行委員が組合業務に従事する場合,その他緊急やむを得ない場合はこの限りではない」(12条)等の組合員の権利を認めた条項の見直し)があった。
(2) 団体交渉要求,ストライキ等の状況
ア 被告労働組合は,平成10年9月21日午後1時より午後5時30分までストライキを行った(甲156の2)。
イ 被告労働組合は,同月30日開催の会議において,執行委員を従前の3名から,被告Y2(執行委員長),A4(副委員長),A5(書記),A1,被告Y3,A2,Y1及びA6の8名(原告の当時の従業員数は12名)に増員し,同年10月1日,原告に対し,これを通知した(甲154,155)。なお,労働協約12条は,「組合員の組合活動は原則として勤務時間以外に行う。ただし,組合役員,執行委員が組合業務に従事する場合,その他緊急やむを得ない場合はそのかぎりではない。」と規定し,執行委員の組合活動を広く認めている(乙2)。
ウ 原告は,同月5日,再建調査委員会の提言に従い,被告労働組合に対し,同年11月分の給与から1年間にわたり賃金をカット(45歳以上の者については現行基本給の20%,30歳以上の者については10%,30歳未満の者については5%)することを伝え,翌6日,これに関する団体交渉を行った(乙4)。
エ 原告及び被告労働組合は,同月7日午前中,前日の団体交渉における賃金カットの申入れに関し,労働協約上の協議事項であることを確認し,協議が調わない以上はこれを強行しないことを確認した(乙8)。
被告労働組合は,同日午後,原告に対し,経営危機の原因は経営陣の責任であるとして,現経営陣全員の退陣を要求し,同月8日の午後1時より,全員による団体交渉を要求し,団体交渉に応じない場合に午後5時30分までのストライキを行うことを通告した(甲67,甲156の3)。
オ 被告労働組合は,同月8日午後1時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の3)。
原告は,同日,被告労働組合に対し,①争議行為の中止を求め,②被告労働組合が態度を改めない場合には,現行の労働協約について「経営権を確立するため,憲法及び関係国内法に準拠しかつ同業他社の実例を参考にして,標準的な『労働協約』に改定する」と伝え,③取締役の業務遂行を妨害しないよう求め,④「三一書房再建協議労使小委員会」(経営側2名,組合側委員2名)の設置を提案した(乙5)。
カ 被告労働組合は,同月9日午前9時30分から正午までの間,ストライキを行った(甲156の4)。
同日,原告は,増資について説明することを目的とした原告株主の懇談会を開催した(乙58)。被告労働組合の組合員は,会場となったホテルの正面玄関前において,シュプレヒコールを上げる,ビラを撒くなどの抗議活動を行った。
キ 同月12日,原告(X,C及びDが出席)及び被告労働組合(被告Y2,A4,A5,Y1,A2,被告Y3及びA1が出席)は,団体交渉を行った。同交渉において,原告側は,同月5日付け及び同月8日付けの申入書にある賃金カット及び労働協約改定については白紙撤回し,再建案の中には組み入れない,増資については白紙撤回をしない,再建調査委員会に参加した弁護士及び税理士に対しては報酬230万円を支払済みであり関係が終了しているとの発言をした(乙42)。
ク 被告労働組合は,同月13日,原告に対し,前日の団体交渉において,「10月5日経営側申入書(賃金カット),10月8日経営側申入書(労働協約改定案)は白紙撤回する。以後経営側が提案する再建案の中には,賃金カット案並びに労働協約改定案は盛り込まない。」,「経営側が実施しようとしている株式増資案に関して,①第三者割当てに関しては,三一書房の既存株主以外には割り当てない。②取締役会に株主,三一書房OB,現社員以外の人間を選出しない。③失権株に関しては,取締役会が責任を持って引き受ける。」,「再建調査委員会が依頼した弁護士,税理士,公認会計士が今後,三一書房の経営に関係することはない」との3点について確認する旨の「確認書」への署名押印を求めたが,Xはこれを拒否した(乙9)。
被告労働組合は,同日,原告に対し,Xが確認書に署名しなかった点に抗議し,退陣を求めるとともに,上記抗議のために,同月14日にストライキを行う旨通告した(甲156の5,乙10)。
ケ 同月14日,原告(X,C及びDが出席)及び被告労働組合(被告Y3を除く組合員らが出席)は,団体交渉を行った。同交渉には,G弁護士が出席した。Xらは,取締役を辞任すると述べ,次期取締役が選任されるまでの引継業務については,G弁護士に委任しているとし,上記「確認書」に署名しなかった理由は同月12日から考えが変わったからである旨発言した(乙43)。(なお,その後,X,C及びDは,同年11月初めころ,上記辞任の意向を撤回した(乙59)。)G弁護士が退席した後,会議室内で交渉が続けられ,その際,退席しようとする原告役員を組合員が制止することがあった。
被告労働組合は,同年10月14日午前9時30分から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の5)。また,確認書を反故にし,自らの経営責任を弁護士への委任という形で放棄したことへの抗議として,同月15日午前9時30分からストライキを行う旨通告し,これを実施した(甲156の6,乙11,44の1)。
コ Xは,同月16日に退社して以降,原告に出社しなくなった(乙59)。また,Xは,「当職の許可なく三一書房労働組合及びその関係者が,株式会社三一書房の役員私宅を訪問,面会,その他私生活の静穏を妨げる行為をすることを固く禁止致します。」と記載されたG弁護士作成の同日付け「公告」を自宅玄関前に張り出した(乙45)。
サ 被告労働組合は,同月19日,原告に対し,同月20日午前9時30分から午後5時30分までの間ストライキを行う旨通告し,同月20日,これを実施した(甲156の7)。
シ 被告労働組合は,同月21日午前9時30分から午後5時30分の間,ストライキを行った(甲156の8,乙44の2)。また,被告労働組合は,同日,C及びDの各住居付近において,同人らが団体交渉に応じずに逃亡していることを非難するビラを撒いた(甲160の1・3)。
Dは,同日付け業務命令書によって,営業部員らに対し,同月23日までにあらゆる事柄に優先して注文短冊を処理するよう命令した(甲159の1及び4)。
ス 被告労働組合は,同月22日午前9時30分から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の9,乙44の4)。
原告は,同日,「全社員諸氏に訴える声明」として,①争議行為を中止して職場に復帰すべきこと,②会社が選任した弁護士の選任取消要求は,経営権の不当な侵害であること,③増資は経営側の専権事項であること,④原告は仕事をしない者に給与は支払わないこと,⑤原告の信用を損ない,会社に損害を与える行為,「労働組合活動」と称して多人数で役員をつるし上げる等の行為,その他就業規則に違反する行為に対しては,厳正な処分を行うこと,⑥合理的な団体交渉の申入れには応じる用意があること等を表明した(甲167,乙30)。
セ 被告労働組合は,同月23日午前9時30分から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の10,乙44の5)。
また,同日,原告に対し,同月26日に団体交渉を行うことを要求した(甲156の11,乙44の6)。
ソ 被告労働組合は,同月24日,原告に対し,「全社員諸氏に訴える声明」への抗議及び団体交渉の要求を行った(乙44の7)。
タ 被告労働組合は,同月26日,原告に対し,団体交渉に応じないことへの抗議を行い,抗議のため,同日午後3時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の12,乙44の8)。
原告は,同日,被告Y2に対し,同月29日までに全取次店に対する請求書発送の手続を完了させ,その報告を行うよう命令した(甲157の1)。
チ 原告は,同月27日,被告Y2に対し,「職務命令書」を交付し,①同月30日から同年11月10日までの集金,支払に関する事務手続上必要な一切の件,②東京都民銀行,わかしお銀行,文化産業信用組合等取引銀行に対する業務手続上の一切の件,③地方税,健保料,厚生年金,厚生年金基金に関する業務手続上の一切の件,④その他既存の契約に基づく一切の件の業務遂行に必要な報告事項を,同年10月29日午後3時までに文書で報告して決済を受けるよう命令した(甲157の2)。
被告労働組合は,同月27日,原告に対し,同月28日午後2時からの団体交渉を申し入れ,これに応じない場合には同時刻から直ちにストライキを行う旨通告した(甲156の13,乙44の9)。また,原告に対し,団体交渉に応じず,総務部員宛に職務命令書を送付したことに抗議し,同月28日から30日まで,総務部員である被告Y2の指名ストライキを行う旨通告し,被告Y2はこれを実施した(甲156の14)。
ツ 被告労働組合は,同月28日午後2時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の13・14)。また,同月29日午後2時からの団体交渉を申し入れた(甲156の15,乙44の10)。
原告は,同日,各株主に対し,「御報告とおわび―新株発行決議の取消について―」と題する文書を配付し,①同年9月19日の取締役会で決議された増資を取り止めることを伝え,②被告労働組合らを非難した(乙31)。
テ 被告労働組合は,同年10月29日午後2時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の15)。また,同月30日午後2時からの団体交渉を申し入れた(甲156の16)。
ト 被告労働組合は,同月30日午後2時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の16)。また,同年11月2日午後3時からの団体交渉を申し入れた(甲156の17)。
ナ 原告は,同年11月1日,被告Y2に対し,同年10月28日付け職務命令書を送付し,①原告所有にかかるわかしお銀行発行の預金通帳及び預金証書の引渡しを拒否した理由を書面にして持参すべきこと,②同月30日正午までに上記預金通帳及び預金証書を引き渡すべきことを命じた(甲157の3の1ないし4)。
ニ 原告は,同年11月2日,被告Y2に対し,同年10月30日午前10時付け職務命令書により,同月27日付け職務命令の履行がないとして,改めて,同年11月2日正午までに履行するよう命令をした(甲157の4の1ないし3)。また,原告は,その後,被告Y2に対し,同年10月30日午後5時付け職務命令書により,同月28日付け職務命令の履行がないとして,その履行を求めた(甲157の5)。さらに,原告は,被告Y2に対し,同年11月2日午後2時30分付け職務命令書により,同年10月30日午前10時付け職務命令の履行がないとして,同年11月5日の業者等の支払に関する一切の件について,同月4日正午までに業務を完了させ,同月5日の支払に備えるよう重ねて命令をした(甲157の6)。
被告労働組合は,同月2日午後3時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の17)。また,同月4日午後3時からの団体交渉を申し入れた(甲156の18)。さらに,「10月30日付けで送付された,Y2宛『業務命令書』の内容は,すでに通知した『指名ストライキ権』の行使通告を無視したもので,厳重に抗議する。なお,11月2日から同月10日まで,Y2の指名ストライキを行使する」との通告を行い,被告Y2はこれを実施した(甲156の19)。
ヌ 被告労働組合は,同月3日,Dの住居付近において,同人が団体交渉に応じることなく逃亡していることを非難する内容のビラを撒いた(甲160の2)。
原告は,同日,「重ねて全社員諸氏に訴える声明」と題する文書により,組合員らに対し,職場復帰を求めた(甲168)。
ネ 被告労働組合は,同月4日午後3時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の18)。また,同月5日午後2時からの団体交渉を申し入れた(甲156の20)。
ノ 被告労働組合は,同月5日午後2時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の20)。また,同月6日午後2時からの団体交渉を申し入れた(甲156の21)。
ハ 被告労働組合は,同月6日午後2時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の21)。また,同月9日午後2時からの団体交渉を申し入れた(甲156の22)。
原告は,同日付け職務命令書によって,製作部員A4に対し,校正者の10月分校正料の一覧表及び校正者の校正料の振込先一覧表を,同年11月9日午後2時までに提出するよう命令した(甲157の7)。
ヒ 被告労働組合は,同月7日,原告に対し,従業員の11月分給与を,同月16日正午までに支払うよう通告した(甲156の23)。
フ 被告労働組合は,同月9日午後2時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の22)。また,同月10日午後2時からの団体交渉を申し入れた(甲156の24)。
原告は,同月9日,「三たび全社員諸氏に訴える声明」と題する文書により,組合員らに対し,争議行為の中止を求めた(甲169)。また,「通告書」により,同月5日にXが組合員らから暴行を受けたとしてこれに対する謝罪を求め,「貴労組の誠実な反省の表明がない場合,重大なる決意をせざるを得ない。」と通告した(甲166)。さらに,Dは,同日付け業務命令書によって,営業部A5及びY1に対し,書籍を発送するよう命令した(甲159の2・3)。
ヘ 被告労働組合は,同月10日午後2時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の24)。同日,原告に対し,「11月10日,貴経営が『社員各位』宛の名の下に全組合員に『勤務実績の自己申告のお願い』を送りつけたことは,11月8日付けの組合通告を無視した不当労働行為であり,断固抗議する。勤務時間は,各部の部長が在社して把握することであり,ストライキの実態についても,その都度貴経営に通告しているものである。なお,ストライキに対する賃金カットは,従来,経営側は実行せず,つい最近も10月分給与から9月21日のストライキに対する賃金カットを実施していなかったことを,貴経営が引き続き守ることを申し入れる。」とし,また,同年11月11日午後2時からの団体交渉を申し入れ,これに応じない場合には,同時刻からストライキ権を行使するとの通告をした(甲156の25,乙44の11)。また,原告に対し,冬季一時金(月例賃金の3.5か月分)の支払を求め,これに関する団体交渉を同月16日に行うことも申し入れた(乙44の12)。さらに,原告に対し,原告が同月9日付け「通告書」を社員の自宅に送付したことについて,抗議し謝罪を要求した(乙44の13)。
ホ 被告労働組合は,同月11日午後2時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の25)。また,同月12日午後2時からの団体交渉を申し入れた(甲156の26)。
原告は,同日付け職務命令書によって,被告Y2に対し,①同月10日締切の請求書の発送業務を同月14日までに終了させること,②アルバイト料支払明細一覧,連絡先一覧を提出すること,③校正者の校正料振込先一覧を作成し,提出することを命令した(甲157の8)。
マ 原告は,同月12日,千葉市稲毛区宮野木町<番地略>の土地(991m2)の所有権を,株式会社雪華社に対し,譲渡担保を原因として移転した(乙15の1)。そして,その後の平成11年4月23日,上記所有権移転登記が抹消され,ユアーズホーム株式会社及び株式会社前野工務店(持分2分の1ずつ)へ所有権が移転した(乙16)。また,平成10年11月12日,株式会社ヨーマツに対し,埼玉県新座市畑中<番地略>の土地(927m2)の所有権を,譲渡担保を原因として移転した(乙15の2)。さらに,このころ,原告名義の預金の解約をしている。
被告労働組合は,平成10年11月12日午後2時から午後5時30分までの間,ストライキを行った(甲156の26)。
ミ 原告は,同月13日,被告労働組合に対し,原告役員に対する暴行等の行為,労働条件等と無関係の経営権に専属する事項についての干渉,会社を倒産させる目的の違法なストライキ等を理由として,労働協約を解除するとの意思表示をした(乙12)。
被告労働組合は,同日,原告に対し,同日午後2時からの団体交渉を申し入れ,これに応じない場合には,同時刻からストライキ権を行使するとの通告を行い,これを実施した(甲156の27)。
ム 同月14日,前記のとおり,本件ロックアウトが行われた(乙13,14)。
(3) 本件ロックアウトから平成10年12月31日総会まで
ア 原告は,同年11月16日,取締役会を開催し,84万株の新株を発行して発行済株式総数を112万株に増資し,同年12月15日午後5時現在の株主名簿に記載のある株主に対し,その所有株式1株につき新株式3株を割り当てることを決議した(丙2)。
被告労働組合は,同年11月16日,被告出版労連に対し,支援を要請した(証人O)。
イ 被告出版労連は,同月17日,緊急に会議を開催し,被告出版労連としての見解を出すこと,原告に対してこれに基づく申入れを行うことを決めた(証人O)。
組合員らは,同日,東京地方裁判所に対し,原告を債務者として,①各組合員らに対して同月16日に支払われるべき(同年10月11日から同年11月10日までの)賃金が支払われていないとして,その仮払を求める仮処分申立てを行った(平成10年(ヨ)第21266号地位保全等仮処分命令申立事件,甲175)が,同年12月21日,債権者らが同年10月11日から同年11月10日までの間勤務していたことを認めるには足りないとして,却下された(甲176)。
ウ Xは,同月18日,被告Y2,被告Y3及びA5を被告訴人として,同年10月14日及び同年11月5日に同人らから監禁・暴行を受けたことを理由として告訴した(甲60ないし62)。
被告出版労連は,「今回のロックアウトは組合解体を企図したもので,いたずらに争議を拡大し,事態を悪化させて,企業の存続そのものを不可能にしかねない自殺行為であり,企業と労働者に責任をもつべき経営者にあるまじき愚挙である」,「三一書房の経営者は,直ちにロックアウトを解除して,業務の再開・正常化をはかり,労働者に仕事と賃金を保障すべきである。また,組合三役の不当解雇通告と刑事告訴表明を撤回し,労使交渉のテーブルについて,一刻も早く正常な労使関係の回復に全力をあげるべきである」との同月19日付け見解を発表した(丙25)。
エ 原告は,同月19日,A1を停職処分とした(乙41)。また,同月20日,A2を停職処分とした(乙41)。
オ Z及びEは,同月21日,原告に対し,①取締役X,同C及び同Dの解任の件,②Z及びE並びに原告の株主であるS1及びS3を取締役の候補とする取締役4名選任の件,③原告の株主であるS4を監査役の候補とする監査役1名選任の件を議題とする株主総会招集請求をした(甲8)。
カ 被告労働組合は,同月24日,本社建物前において,抗議行動をした(乙46の1)。また,同日付け「抗議並びに申入書」によって,原告が同年11月13日から同月20日までにした行為に対する抗議を行った(乙46の4)。
被告出版労連は,同月24日,原告に対し,①「ロックアウトを即刻解除し,直ちに会社業務の正常化をはかること」,②「組合三役に対する懲戒解雇を撤回し,刑事告訴を取り止め,一方の当事者として直ちに労使交渉のテーブルについて,正常な労使関係の回復に全力を尽くすこと」,③「労働者の賃金を直ちに支払うこと」,④「企業経営に直接責任を有しない第三者の干渉・関与を廃し,従業員と株主,取引業者,著者,読者の協力・支援に依拠した自力の企業再建をはかるよう全力をあげること」を申し入れた(丙26)。
キ 同月28日,同年12月31日総会を開催する旨の取締役会決議が行われた。
原告は,同月28日,株主であるS5,Z,S6,S7,S1,S8,E,S9,S10,S3,B,S11,S12,S4,S13,S14,S15,S16,S17,S19,S20の21名に対し,招集通知を発送した。また,同年12月4日ころ,S21,X,D,C,S22,S23,S24,S25,Iの9名に対し,招集通知を手交した(甲8)(以下,上記株主については,姓のみを記載するものとする。)。
原告は,同年11月28日付け「臨時株主総会の招集にあたって」と題する文書において,被告労働組合の行為を非難し,株主総会招集請求がZ及びEからなされたことについて,「『うしろから撃たれた心境』も否定できない」旨意見を表明した(乙32)。
ク 原告は,同年12月7日,各書籍取次店との取引を再開した(甲26,71の1ないし38,72の1ないし112,73の1ないし93)。
被告出版労連は,同日,中央執行委員会を開催し,支援共闘会議を作ることも視野に入れ,被告労働組合を支援するという方向を決定した(証人O)。
ケ 同月18日,組合員らは,東京地方裁判所に対し,原告を債務者として,年末一時金の仮払の仮処分申立てをした(平成10年(ヨ)第21297号。甲177)。同申立ては,同月28日,賃金及び年末一時金の仮払を求める申立てに変更された(甲178)。その後,上記申立ては,平成11年2月24日に取り下げられた(甲179)。
コ また,平成10年12月18日,組合員らは,東京地方裁判所に対し,原告を債務者として,被告Y2,被告Y3及びA5の労働契約上の地位を定めること,及び賃金支払の仮処分の申立てをした(平成10年(ヨ)第21298号。甲180)。上記申立ては,平成11年2月24日に取り下げられた(甲181)。
サ 被告出版労連は,平成10年12月25日,被告労働組合との共催で「三一書房」を支援する集会を開き,支援共闘会議の結成予定を発表した(証人O)。
シ 持株数の争いについて
(ア) Zについて
Zは,もともと8000株を有していたところ,S21から6040株を譲り受け,その持株数が1万4040株となり,平成6年の3倍増資により5万6160株となり,さらに平成10年12月の増資により16万8480株を引き受け,同年12月31日総会時点においては,22万4640株を保有していたと主張していた。
これに対し,原告は,S21からの株式譲渡を否認し,平成10年12月31日総会時点における持株数は,12万8000株であると主張していた。
Zは,原告を被告として,株主権確認請求訴訟を提起しており(東京地裁平成11年(ワ)8461号),平成13年5月30日,Zの請求を認容する第1審判決が出された。同訴訟は,控訴審(東京高裁平成12年(ネ)第3424号)において,和解により終了している。
(イ) S26について
原告は,同人は株主ではなく,上記総会時点においては,死亡した同人の父であるS27が株主であり,また,S27の持株数は1万6000株であったと主張していた。
これに対し,Zは,S26は相続により株式を承継しており,持株数は6万4000株であると主張していた。
(ウ) Bについて
原告は,同人の上記総会時点の持株数は2万8800株であると主張していた。
これに対し,Zは,3万1200株であると主張していた。
(エ) S14及びS15について
原告は,両名について,上記総会当時の持株数はそれぞれ840株ずつであると主張していた。
これに対し,Zは,それぞれ3360株ずつであると主張していた。
(オ) S17及びS20について
原告は,両名について,上記総会当時の持株数はそれぞれ400株ずつであると主張していた。
これに対し,Zは,それぞれ1600株ずつであると主張していた。
(カ) S8について
原告は,同人の上記総会当時の持株数は1万2240株であると主張していた。
これに対し,Zは,4万8960株であると主張していた。
なお,S8は,原告を被告として,株主権確認請求訴訟(東京地裁平成11年(ワ)第7928号)を提起しており,平成12年3月8日に請求を認容する第1審判決が出され,同年8月29日には原告の控訴が棄却され,平成13年1月19日に上告棄却で確定している(甲2の1・2,乙36,丙2,3)。
なお,S8は,平成10年12月26日,原告に対し,「私は平成10年12月31日開催の御社臨時株主総会において,完全中立の立場を貫くため,全議案について私の議決権に関しては『棄権』として取り扱って下さい。」旨通知した(甲43)。
(キ) S5について
原告は,同人の上記総会当時の持株数は26万5520株であると主張していた。
これに対し,Zは,26万3520株であると主張していた。
(ク) S21について
Zは,同人がZに対して6040株を譲渡したと主張していた。
これに対し,原告は,譲渡を否定し,同人の上記総会時点の持株数を2万4160株であると主張していた。
(ケ) S23,I,S24,S22及びS25について
原告は,同人らについて,上記総会時点の持株数はそれぞれ400株ずつであったと主張していた。
Zはこれを争っていた。
(コ) X,C及びDについて
原告は,上記総会時点で,Xが8万4800株,Cが6万2000株,Dが4万5040株を有していたと主張していた。
これに対し,Zは,Xは4800株,Cは3200株,Dは4800株を超えることはないと主張していた。
ス 平成10年12月31日総会
G弁護士が所属する○○共同法律事務所の会議室において,株主総数32名,発行済株式数112万株,出席株主数(委任状含む。)28名,出席株主の持株数109万0560株という状況で開催された。また,事前にZが検査役の選任を求めていたため,検査役としてJ弁護士が出席して行われた(甲8,証人Z)。
Eが,株主名簿を開示し,投票者の資格を確認するように要求したが,議長であったXはこれに応じることなく,採決手続に入った(甲46)。
議事録によれば,以下のような決議がなされている。
第1号議案(取締役X,同C及び同D解任の件)は,賛成0票,反対55万9120票で否決された。
第2号議案(取締役4名選任の件)については,Z及びE提案の取締役候補者4名(Z,E,S1,S3)の選任に投票した株主の議決権数が0票,取締役会提案の取締役候補者4名の選任に投票した株主の議決権数が55万9120票であった。
第3号議案(監査役1名選任の件)については,Z及びE提案の監査役候補者の選任に投票した株主の議決権数が0票,取締役会提案の監査役候補者(S4)の選任に投票した株主の議決権数は55万9120票であった。
同日午前11時31分に閉会宣言がなされた後,Z,E,S3,S4,S9,S11及びS10は会場に残り,本件総会の「続会」として,平成11年1月14日午前11時に,東京都千代田区駿河台所在の山の上ホテルにおいて,臨時株主総会(以下「平成11年1月14日続会」という。)を開催することを決議した。また,Eを検査役に選任するとの決議を行った(甲8,9)。
なお,原告の定款12条は,「株主総会の議長は取締役社長があたり,社長に事故あるときは専務取締役または常務取締役がその順に従いこれにあたる。」と定めている(甲10)。
また,平成10年12月31日総会決議の取消しを求める訴訟は提起されなかった。
(4) 平成11年1月14日続会以降の経過について
ア 平成11年1月14日続会の状況
同日付け株主総会議事録(甲11)によれば,同続会は,同日午前11時より前記山の上ホテル会議室において,株主総数27名,発行済株式総数28万株,出席株主数18名,その持株総数18万7720株として開催されている。
株主のS10が議長に選任され,第1号議案(取締役X,同C,同D解任の件)について全員一致で可決し,第2号議案(取締役3名解任に伴う後任者選任の件)について全員一致でZ,E,S1及びS3が取締役に選任され,第3号議案(監査役S6解任の件)について全員一致で可決され,第4号議案(監査役1名選任の件)について全員一致でS4の選任が可決されたことになっている。そして,その旨の選任登記がなされた(乙20の1・2)。その後,選任されたとされる4名の取締役を構成員とする取締役会は,Zを代表取締役に選任する旨の決議をした。
Zは,同日付けで,原告代表取締役社長として,被告労働組合に対し,「会社財産の管理,保全のため,宿直体制をつくるように要請します。なお,宿直時の管理,保全の権限を貴労働組合に委ねます。」との指示を出した(甲1,乙21の1)。また,被告労働組合に対し,①ロックアウトの解除,②被告Y2,被告Y3及びA5に対する各懲戒解雇の撤回,③A1,A2ほかに対する停職処分の撤回,④労働協約の破棄通告の撤回を通知した(乙21の2,48の1ないし3)。さらに,同月16日付け「三一書房関係各位へのご挨拶」と題する文書により,原告の取引先に対し,上記の事実を通知した(甲182)。被告労働組合は,上記指示に従い,本件各建物の占有を開始した。被告Y3についてみれば,本社建物には連日足を運び,朝霞倉庫へも月数回のペースで通っている(被告Y3)。
なお,平成11年1月14日続会について,①Z名義の社長印の作成,②総会会場の受付等,③続会配布資料の作成及び配布,④ロックアウトを解除する際の開錠業者の手配,⑤被告労働組合に対する上記要請書(乙21の1)及び通知書(乙21の2)等の重要書面の作成等に,被告労働組合の組合員らが関与した(証人Z,被告Y2)。
これに対し,原告(X側)は,「株式会社三一書房の声明」と題する文書によって,「本日,突如として『非合法闘争』に突入した」,「数名だか,十数名だか『株主』が取締役会の決議もなく,正式な手段も一切取らず,私的に集まってみたところで,そんなものを『株主総会』と強弁することは,法律上,まったく無理な話である」等の声明を出した(乙33)。また,被告Y2,被告Y3,A5,A2,Y1,A4,A1,A3に対し,「ロックアウト中の本社社屋内に立ち入ることを禁ずる」との通知をした(甲64の1ないし9)。また,同年1月19日,Zに対し,「代表取締役」等の肩書の使用を禁止すること,使用を継続する場合には刑事・民事両面の責任を追及するつもりであることを通知した(甲65の1・2)。
被告出版労連は,同月14日,被告労働組合を支援するため,支援共闘会議を正式に結成した(証人O)。
イ 平成11年1月21日付け株主総会(以下「平成11年11月21日総会」という。)
議事録によれば,原告は,発行済株式総数112万株,株主総数32名,出席株主数15名(委任状含む。),出席株主が有する持株数61万6160株として臨時株主総会を開催しており,Xが代表取締役として(予備的に選任された株主として)議長を務め,第1号議案(Z,E,S1及びS3の取締役解任),第2号議案(S4の監査役解任),第3号議案(X,C,D,S22,S23,S24及びS25の取締役選任),第4号議案(Iの監査役選任)を,それぞれ可決したことになっている。
実際に出席した株主は,取締役ないし監査役に選任されたとされる8名であり,Z側の株主に対しては招集通知がなかった(甲184,丙8,証人Z)。
ウ 被告出版労連は,同月22日,出版労連各地域協議会を通じて加盟組合に対し,「三一書房争議支援―職場保全の協力体制について」と題する書面を配布し,「三一書房労組は,新役員会から職場保全の宿直協力の要請を受けて,連日の泊り込み体制をとるとともに,出版労連などに職場保全体制への支援を要請しています。」として,当面は同月25日から2月末日までの間,本社建物については午後9時から翌午前8時30分まで,朝霞倉庫については午後9時から翌午前7時30分までの時間帯で,本社建物については毎日2名,朝霞倉庫については1名が泊まり込みに協力するよう要請した(丙7)。
エ 被告出版労連は,同年2月1日,各単位組合の委員長,各中央委員,各地域協議会委員らに対し,「三一書房争議支援―職場保全体制への協力要請について」とのビラを配布し,被告労働組合による泊まり込みへの支援を要請した(甲111)。
オ 原告は,同月2日付け「臨時株主総会の招集に当たって」と題する文書において,被告らの行為を非難するとともに,同月21日開催の後記臨時株主総会において,①本社建物の売却,②増資を議題とすることを提案した(乙17)。
カ 原告は,同月14日ころから,Zが原告株主であったS28の遺族から譲り受けたと主張する株式について,定款に定める相続・遺贈による株式名義書換手続及び取締役会の承認手続を欠如した違法なものであるとして,合計3万8400株の保有を否認するに至った(丙9)。
これについて,Zは,原告を被告として,株主権確認請求訴訟を提起し(東京地裁平成12年(ワ)第6919号),平成13年3月26日,請求が認容され,同年8月29日には原告の控訴が棄却され,同年11月12日には上告棄却となり,確定している(丙9,14,21)。
キ 平成11年2月15日,東京地方裁判所は,組合員らを債権者,原告を債務者とし,請求債権を債権者らの退職金債権の一部とする不動産仮差押決定を行った(乙50)。
ク 平成11年2月21日付け株主総会(以下「平成11年2月21日付け総会」という。)
議事録によれば,株主総数30名,発行済株式数112万株,株主総数28名(委任状含む。),出席株主の持株数110万3600株として開催され,第1号議案(取締役7名選任の件)については,X,C,D,S22,S23,S24及びS25の7名が56万0320株の賛成により選任され,第2号議案(発行済株式総数を112万株から448万株に増資することの可否)については否決され,第3号議案(監査役1名選任の件)についてはIが56万0320株の賛成により選任された(甲185)。
Z及びEは,会場において,原告に対し,①平成11年2月21日総会は平成10年12月31日に選任されたXら取締役会の真正な権限に基づく決議により開催される適法な株主総会であることを認める旨,②同株主総会の議長をXが務めることに異議がない旨,③閉会宣言後に続会等の開催決議を行わない旨を確認する書面に署名しているが,これは,署名をしなければ総会会場への入場が認められないためにやむを得ずになされたものであった(甲44,45)。
ケ 平成11年3月2日,浦和地方裁判所は,組合員らを債権者,原告を債務者,請求債権を組合員らの退職金債権の一部として,朝霞倉庫及びその敷地に対する不動産仮差押決定をした(乙51)。
コ 平成11年3月7日付け株主総会(以下「平成11年3月7日総会」という。)
議事録(甲186)によれば,株主総数30名,発行済株式総数112万株,出席株主(委任状含む。)28名,出席株主の持株数110万3600株として開催され,第1号議案(取締役7名選任の件)においてはX,C,D,S22,S23,S24及びS25の選任が,第2号議案(監査役1名選任の件)においてはIの選任がいずれも賛成56万0320株,反対54万3280株により,賛成多数で可決されたとされている。
これについて,Z及びEは,Zが所有する株式が真実は22万4640株であるにもかかわらず,原告が12万8000株として取り扱ったことが原因であるとして,東京地方裁判所に対し,株主総会決議取消の訴えを提起した(甲4)。また,同裁判所に対し,代表取締役,取締役,監査役の職務執行停止の仮処分を申し立てた(甲5)。第1審判決は,株主総会決議取消の請求を認容した(丙13)が,その中で,「本件決議は賛成56万0320株,反対54万3280株の賛成多数により可決されたものであるが,反対票を投じた原告Zの議決権数を22万4640株として計算すれば,本件決議は明らかに反対多数により否決されたものと認められる」と判断している。
サ 原告は,平成11年3月8日午前4時ころ,D及びS25並びにガードマンらを朝霞倉庫に派遣した。同人らは,朝霞倉庫の裏手に回って,バールを用いてガラス戸を破壊して開錠し,倉庫内に入り,書籍を搬出した。
また,原告は,従業員各位に対し,①「当社は業務委託契約により,株式会社サンブック殿に当社の流通業務を委託しました。」,②「当社の旧『朝霞倉庫』は株式会社サンブック殿の事業所(倉庫)となりましたので,株式会社サンブック殿の営業の妨げとなる行為を禁止します。」との内容の社長命令を出した(乙23の2)。
シ 原告は,同月16日,A2及びY1に対し,懲戒解雇の意思表示をした(甲173の1・2,174の1・2,乙27,28)。また,同日,被告労働組合及び被告出版労連に対し,本件各建物の明渡しを求めた(甲38の1・2)。
これに対し,被告出版労連は,同月19日,「Z社長ら3名の役員が現在の三一書房を代表する執行部であり,三一書房の資産の管理権は,Z執行部が有していると認識しています。現在,三一書房本社社屋と朝霞倉庫は,不測の事態に備えて,Z社長以下の現役員会から委託を受け,社員・労働組合が保全のために泊まり込みを行っています。出版労連は,三一書房労組の要請をうけて,支援共闘会議の確認のもとに,社屋・倉庫の保全体制に協力しているものです。」との回答を行った(甲39の1・2)。
同月当時,出版労連は,本件各建物へ加盟組合の組合員を派遣している。特に,午後9時から翌日午前9時までの時間帯については,毎日組合員が派遣され,泊まり込みが行われている(甲13,14,証人O,被告Y3,弁論の全趣旨)。
ス 原告は,平成12年1月25日,A1に対し,懲戒解雇の意思表示をした(乙29)。
セ 原告は,同年7月14日付け通知書により,被告Y2,被告Y3,A5,A2,Y1,A1及びA3に対し,原告所有建物内への立入禁止等の命令に違反する行為並びに役員やその家族及び近隣住民に対する迷惑行為をやめるべきことを通知した(甲190の7)。
ソ 被告労働組合は,平成11年6月30日,東京都地方労働委員会に対し,救済命令の申立てをしていたが(平成11年(不)第67号事件),同委員会は,平成13年8月7日,おおむね被告労働組合の申立てを容れ,原告に対し,被告Y2ら組合員に対する懲戒解雇及び停職処分がなかったものとして平成10年10月11日からの賃金を支払うことなどを命じたが,その命令書の中で「本件ロックアウトは,会社の再建を進めるうえで組合の存在が障害となることから,組合を活動の拠点である本社から閉めだし,かつ,賃金不払い措置によって組合員の生活を困窮させ,もって組合を動揺させることを企図して行われたものであると判断せざるを得ないから,10年11月14日以降現在に至るまでの本件ロックアウトを理由とした10年10月11日以降の賃金不払い措置は不当労働行為に当たると解するのが相当である。」と判断している(乙41)。原告は,これを不服として,中央労働委員会に対し,再審査を申し立てた。
(5) 平成13年9月27日株主総会(以下「平成13年9月27日総会」という。)の状況
ア Zは,同年8月27日及び同年9月6日,原告に対し,①決算の報告の件及び②役員選任の件を目的として,株主総会の招集を請求した(甲83,84,丙15)。
イ 原告は,同月6日,同月27日に臨時株主総会を開催する旨の取締役会決議をし,同月7日以降,招集手続を行った(甲85,86)。S9に対しても,招集通知書が送付されたが,同人が転居していたため,原告へ返送された(甲122,144の1ないし3)。
ウ 同月25日,東京地方裁判所は,原告は,Zが保有株式22万4640株に基づく株主権を同月27日の株主総会において行使することを認めなければならない旨の仮処分決定をした(丙16)。また,同総会において,Xは,平成12年2月2日S29から購入したと主張する9万6000株の株式について,議決権を行使してはならない,原告は,上記総会において,Xに上記株式による議決権を行使させてはならないとの仮処分決定をした(丙18)。
これらの措置により,いわゆるZ側の株式数は63万9920株,X側の株式数は55万0720株となっていた(丙29,証人E)。そして,累積投票の請求はなされていなかった。
また,Zは,原告に対し,「公正な株主総会要請書」と題する文書を送付し,Zが原告主張の12万8000株の株主ではなく,22万4640株の議決権を有すること,S8が1万2240株の株主ではなく,4万8960株の議決権を有すること,S9については,本日現在招集通知が届いておらず,平成13年9月18日付け内容証明郵便(同月23日到達)のとおり,同人の議決権の行使はEに委任されていることを伝え,公正な総会運営を求めた(丙20)。
エ 平成13年9月27日総会当日,E,Z,S1,S9,S10,S3が会場に赴いた。原告は,株主総会招集の封筒を持参していないことを理由に,S9の総会会場への入場を拒否した。S9は,Eに対し,委任状を渡した。その結果,Eは,既に他の株主から委任を受けていた分(19万7600株)にS9の分(4万8000株)を合わせた24万5600株(自己の株式を合わせると29万3600株)の委任状を持つこととなった(丙29)。
議長を務めたXは,開会宣言をしてから間もなく,S9の入場を認めなかった点について抗議をしたEを退場させた(丙27)。その後,Xらが取締役に選任されたこととなっている(甲87)。
Z,E及びS9は,平成13年12月10日,原告を被告とし,平成13年9月27日総会決議の取消しを求める訴訟を提起した(丙22の1)。
(6) 平成14年12月27日和解及びその後の履行状況について
ア Zは,平成13年12月18日,平成11年3月7日総会の決議取消の訴えを取り下げた(甲187)。
イ 原告を控訴人,Zを被控訴人として,ZがS21から株式を譲渡されたかが争われていた東京高裁平成13年(ネ)第3424号事件(原審・東京地裁平成11年(ワ)第8461号)は,平成14年12月27日,X,C,D,E及びK弁護士が利害関係人として参加した上,和解により終了した。
和解内容は,①各株主の保有株式数を確認すること,②平成10年12月30日を払込期日とする原告の新株発行に際し,Z及びS8が支払った新株引受申込証拠金について,その払戻請求権がZ及びS8に帰属していることを確認し,両名が払戻手続後,これを原告に支払うこと,③X側グループとZ側グループとの紛争を円満に終結させるため,原告は,平成15年3月末日までに,取締役6名及び監査役2名の選任並びに定款変更を目的とする臨時株主総会を招集し,Eが指名する株主3名を取締役に,株主1名を監査役に,また,Cが指名する株主3名を取締役に,株主1名を監査役にそれぞれ選任し,その後,速やかに取締役会を開催し,E(又は同人が指名する取締役)を代表取締役社長とし,C(又は同人が指名する取締役)を代表取締役専務取締役として,両名を共同代表取締役に選任すること,④上記株主総会において,原告の発行済株式総数を現在の112万株から①で確認した株式総数120万5040株に変更する手続を行うこと,⑤X及びZは,上記株主総会以降,原告の経営に関与しないこと,⑥平成11年3月7日総会及び平成13年9月27日総会が有効であることを確認すること等であった(甲125)。
これにより,原告の発行済株式総数は120万5040株となり,その内いわゆるZ側の株主の持株数は少なくとも61万2320株となった(さらに,S27分1万6000株,S2分4000株及びS18分400株についても,Z側の株式である蓋然性が高い。)。これに対し,X側の持株数は,57万2320株であり(丙30,証人E),Z側が過半数の株式を有することとなった。
ウ 原告は,平成15年1月7日,A1,被告Y3,A2,被告Y2,Y1,A3,A5に対し,本件各建物の明渡し等を求めた(甲126の1ないし8)。
被告労働組合は,同月8日,原告代理人に対し,上記建物明渡等の要求に対して抗議した(乙56)。
さらに,これに対し,原告代理人は,同月9日,被告労働組合並びに各組合員の代理人らに対し,「抗議文」を送付した(甲127)。
被告労働組合は,同月10日,原告に対し,同月7日付けの建物明渡等の要求に対する抗議を記載した「抗議書」を送付し,同命令書の撤回を求めた(乙57)。
エ 原告は,同月29日,Eに対し,①平成14年12月27日和解の履行のため,取締役・監査役・共同代表取締役として誰を指名するのか,②和解成立後に原告の取引先に対して「株式会社三一書房裁判情報」と題し「只今,二つのグループが正当な経営者はどちらかで法廷で争っております。」などの記載のある文書が配布されたことについて,これをいつ知ったか及びこれについてどう考えるかといった質問をした(甲131,132,丙33)。なお,上記「裁判情報」の記載は,「裁判情報」の1号からの定型的な記載であった(証人E)。
これに対し,Eは,平成15年2月27日,E,S1及びS13を取締役に,S10を監査役に指名するとの回答を行った(甲133)。
原告は,同月28日付け文書により,Eに対し,「裁判情報」の配布行為に関する見解について回答するよう催促した(甲133,丙34)。また,同年3月8日,Eに対し,再び回答を求めるとともに,「Xにかわって,貴殿は社長としての責任を明確にする趣旨において上記個人保証をする御用意ありと推測致しておりますが,その点,貴殿の御意思を予めお聞かせ下さい。」との質問を追加した(甲134の1・2,丙35)。
Eは,同月10日付け「通知書への回答」と題する文書により,原告の上記質問に対し,「裁判情報」の配布を知った時点は「自宅に郵送されて来た日」である,見解は「特になし」との回答を行い,また,個人保証の件については,「平成10年以来,長年にわたって決算報告がなされていない現状では,判断材料もなく,即答しかねます」,「共同代表となられる方とも相談した上で,必要に応じた対応を致します」との回答を行った(甲135)。
原告は,平成15年3月15日にEに対し,また,同月16日にはCに対し,「通知書」と題する文書により,「現在の取締役会の意思」として,Eが「裁判情報」の配布について意見は特にない旨回答した件について,「裁判上の和解の本旨に背く態度」であると非難し,「来る3月20日限り重ねて真摯な見解の表明を求める」とし,また,「当会社は現在の取締役らにかわる,責任ある経営主体(受け皿)の速やかな発足を期待する立場から,『新社長』と目される人物が前記1のようなことでは(すなわち,上記のような回答をするようでは),率直に言って大変心配である」として,E及びCが指名した合計8名の次期取締役,監査役らによる緊急協議を開催し,「①本社および朝霞倉庫を違法占拠中の被解雇者らに対する件,②現在の出版事業の継続の件」について,新しい経営主体としての最小限の意思表示を内外に向けて行うべきであると要請した(甲136の1ないし3,丙36)。
Cは,同月17日,原告に対し,上記「通知書」に賛同すると回答した(甲137)。Eは,同日,原告に対し,「Z氏が,『裁判情報』と題する文章をどのような宛先に配布されたとしても,私には一切関係がないことであり,その事実について,現時点の私が論評する立場にありません。という意味で『特になし』です。」,「『和解条項違反文書』なるものについてZ氏に確認したところ,問題部分を削除し,改めて発送したと聞いており,問題は解決済みと解釈しています。」との回答を行い,また,緊急協議については,和解条項を期日内に履行されることが大前提であり,現時点で内外の関係者に対し責任ある「受け皿」たり得ることを示せとの要請は見当違いであるとの回答を行った(甲138の1・2,丙37)。
原告は,同月26日,Eに対し,次期代表取締役としての根本的資質を欠いていると評価せざるを得ないと述べるとともに,個人保証の意思確認や,緊急協議の開催について,同年3月30日限り再考を求めた(甲139の1・2,丙38)。
Eは,同月28日,Xに対し,Eの代理人であるK弁護士が同月31日に帰京してから同弁護士と相談して回答する旨の返事をし(甲140の1・2),同月31日には,①協議の場を設ける行動をしないとの指摘に対し,次期取締役,監査役の候補者全員の名前が明らかにされていないため,3月末日を期限とする臨時株主総会の開催通知書の送付を受け,次期取締役,監査役候補者全員の名簿が明らかになってから行動するつもりであったと回答し,②X個人宛の回答書が和解条項に違反しているとの指摘に対しては,そうは考えていないと回答し,③個人保証については,決算不能な状態にした人物はXであるし,Eが個人保証するか否かについてはあくまでEと銀行間で協議する問題であると回答した(甲141の1・2,丙39)。
原告は,同年4月17日,Eに対し,前記経緯に照らし,「貴殿が平成14年12月27日当時,東京高等裁判所第22民事部において,自らの債務名義(東京地方裁判所民事第48部が貴殿に対して,当会社に対し金1171万0579円の損害賠償金の支払いを命じた判決によるもの)を免れることのみを目的として,『和解を詐取すること』を企て,当会社の『健全かつ円滑な運営』を実現することなどは最初から眼中になかったものと断じるほかありません」との通知をした(甲142の1・2)。
オ 結局,平成14年12月27日和解で定めたとおりの臨時株主総会は招集されなかった。
(7) 平成15年6月17日付け株主総会(以下「平成15年6月17日総会」という。)(甲188)の経過について
ア 平成15年4月,Eは,東京地方裁判所に対し,原告の代表取締役及び取締役の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分申立てをした(平成15年(ヨ)第20023号,甲129,丙28)が,同年5月には,上記申立ては取り下げられた(甲130)。
イ Eは,同月8日,原告に対し,臨時株主総会の招集を請求し,これを受け原告は,招集する旨の取締役会決議を行い,同月13日,各株主に対し,招集通知を行った。
第1号議案は取締役X,同C及び同Dの解任の件であり,第2号議案は監査役Iの解任の件であり,第3号議案は取締役6名の選任の件であり,第4号議案は監査役2名選任の件であった(甲145,丙31,32)。
同年6月17日の時点では,定款上,原告の発行済株式の総数は112万株となっていた(甲125,147)。
そして,平成15年6月17日総会は,議事録によれば,株主総数38名,議決権総数112万株,出席株主数35名,この議決権総数109万9600株(欠席とされた3名は,S27,S2及びS18であると推認される。同人らの持株数合計は2万0400株である。)として開催された。Z側株主(平成14年12月27日和解において,持株数合計61万2320株と確認された株主)は,全員出席していた(丙41)。
第1号議案及び第2号議案については解任対象者の任期が平成15年3月31日をもって既に満了しているとして,議長の職権により取り下げられ(予備的に決議を行ったところ,出席株主の議決権の3分の2に達しなかった。),第3号議案及び第4号議案については,57万2320株を有する株主の賛成があり,取締役としてX,C,D,L,S25及びMが,監査役としてI及びNが選任されたとされた(甲148)。同日の取締役会議事録によれば,X及びS25が代表取締役に選任されたとされている(甲149)。
上記6名の取締役の名前は,事前にEらには明らかにされていなかった。また,Eが和解に基づいて指名した取締役3名及び監査役1名の選任については議案として採り上げられなかった。さらに,採決の方法は,賛成者に挙手をさせるというものであり,反対者については挙手を求めなかった(証人E)。
ウ 原告は,同日,Z及びS8に対し,平成14年12月27日和解を履行するため,同人らが平成10年12月15日にわかしお銀行から受領した「株式申込受付票」を原告に預けるよう要請した(甲150)。
エ Eは,平成15年7月1日,原告を被告として,①平成15年6月17日総会におけるX,C,D,L,S25,Mを取締役に選任する旨の決議,②上記総会におけるI,Nを監査役に選任する旨の決議,③同日開催の取締役会におけるX,S25を代表取締役に選任する旨の決議の各取消しを求める訴訟を提起した(丙50の1・2)。
オ 被告労働組合は,同年6月16日及び同年7月14日,原告に対し,前記救済命令の履行についての団体交渉を要求した(乙62)。
(8) 被告労働組合の組合員らは,本件ロックアウト以後も,就労の意思及び能力をもって就労に備えていたものであり,平成11年1月14日以降は本社建物や朝霞倉庫に出て,その管理等に当たり,朝霞倉庫に保管されていた在庫書籍を販売してその売上金を管理費用に充てるなどしていた。ただし,組合員のうち,A9は同年4月13日に,A8は同年5月31日に,A7は同年6月4日に任意退職した。
他方,原告は,平成11年5月ころから,本社建物及び朝霞倉庫以外の建物を借り,被告労働組合の組合員以外の従業員を雇うなどして出版業務を続けている。
2 前記前提事実及び上記認定事実をもとに,まず,原告の建物明渡請求について検討する。
(1) 原告が本件各建物を所有していることは明らかである。
(2) 被告らの占有について
ア 被告労働組合の占有
被告労働組合が,平成11年1月14日以降本社建物を,同月18日以降朝霞倉庫を,現在に至るまで占有していることが認められる。
被告労働組合は,同被告の占有態様は排他的なものではない旨主張するけれども,原告と被告労働組合は,平成10年8月以降,A10に対する退職金支給,賃金カット,増資の割当て先等の問題を巡って激しく対立しており,同被告がストを繰り返した後に本件ロックアウトが行われ,平成11年1月14日総会及びこれに続く取締役会において代表取締役に選出されたZの要請により,同被告が本件各建物を占有し,その後も占有を継続しており,原告の明渡要求を拒否し,本訴請求も争っているものであるから,同被告の占有は原告を排除する態様であると認められる。したがって,同被告の主張は採用することができない。
イ 被告出版労連の占有
被告出版労連は,①本件ロックアウトが行われたころから,被告労働組合からの支援要請に応じ,原告を非難する声明を発表するなどの活動をしてきたこと,②被告労働組合が本件各建物の占有使用を始めると,これを支援するため,加盟する単位組合に対して,泊まり込み体制の支援を要請するようになったこと,③そして,実際に,単位組合の組合員をローテーションを組んだ上で本件各建物に派遣していること(午後9時から翌午前9時までの時間帯については,ほぼ連日派遣・泊まり込みが行われているものと推認される。)が認められるから,被告出版労連は,被告労働組合とともに本件各建物を占有しているものということができる。
ウ 役員ら個人の占有
以上の被告労働組合及び被告出版労連による本件各建物の占有は,原告との労働争議に伴って生じたものであり,労働組合としての組織体による占有であると認められ,その役員個人や組合員個人は,その占有の主体ではなく,被告Y2,被告Y3及び被告Y5は本件各建物を占有しているものとは認められない。したがって,被告Y2,被告Y3及び被告Y5に対する各建物明渡請求はいずれも理由がない。
(3) 抗弁の成否について
ア Zの指示
①平成10年12月31日総会が開催され,その会場において,Z,E,S3,S4,S9,S11及びS10ら原告の株主の一部が平成11年1月14日続会の開催を決議したこと,②同続会において,Z,E,S1及びS3を原告の取締役に選任する旨の決議がなされ,その後,上記4名からなる取締役会がZを代表取締役に選任する旨の決議をしたこと,③同日,Zが,原告代表取締役として,被告労働組合に対し,本件各建物の管理を要請したことが認められる。
しかしながら,①平成10年12月31日総会は,平成11年1月14日続会の決議の前に,議長を務めていたXにより閉会宣言がなされて閉会していたこと,②同続会は,大部分の株主に対する招集手続を欠いており,また,議事録記載の発行済株式総数が当時の112万株ではなく,28万株とされていたことが認められるから,平成11年1月14日続会は,平成10年12月31日総会との連続性がない上,それ自体株主総会としての成立要件を欠いており,法的には無効というほかない。
したがって,Zが取締役,さらには代表取締役に選任された事実は認められず,Zからの指示は本件各建物の占有を正当化する権原たり得ない。
イ 労働協約54条
①原告及び被告労働組合との間の労働協約54条には,「原告は,争議期間中,被告労働組合に所属する組合員が社屋に出入りすることを制限又は阻止できない。また,原告は,被告労働組合が通信連絡のため原告の施設を使用することを認める。」と定められていること(なお,原告は,本件訴訟において,労働協約の解除を主張しないものとしている。),②原告と被告労働組合が平成10年8月以降,あるいは遅くとも同年11月14日の本件ロックアウト以降,争議期間に入っていることが認められる。
しかしながら,被告労働組合らによる本件各建物の占有の態様は,前記のとおり,原告側の人間の出入りを拒否するような排他的なものであると認められるところ,労働協約54条は,原告が建物を占有・管理していることを前提として,これを排除するに至らない程度の被告労働組合の組合員の使用を認めなければならない原告の義務を規定するものであると解するのが相当であり,被告労働組合及び被告出版労連による占有が同条で認められた使用の限界を超えていることは明らかであるから,同条によって同被告らの占有を正当化することはできない。
ウ 争議行為に基づく占有権原
一般的に,正当な争議行為がなされた場合に,当該争議行為の違法性が阻却されることがあり得るとしても,このように労働者に認められた争議権に基づき,使用者側の建物を排他的に占有するための権原が生ずることはないものと解するのが相当である。
これを本件についてみると,被告労働組合及び被告出版労連は,原告の本社建物及び在庫書籍を保管する朝霞倉庫という重要な施設について,長期間にわたり,原告側の占有を実力で排除し,排他的な占有をしたものであるから,原告との労働争議によって生じた事態であるとしても,そのことによって同被告らの占有が正当化されるものではない。
したがって,争議行為を理由とする占有権原は認められない。
エ 信義則違反,権利の濫用,公序良俗違反について
以上のとおり,被告労働組合及び被告出版労連の占有権原が認められない以上,同被告らは,原告に対し,本件各建物を明け渡す義務を免れない。被告らは,原告の建物明渡請求が信義則違反,権利の濫用,公序良俗違反として許されない旨主張するけれども,後記の損害賠償請求について述べるような事情を考慮しても,これを採用する余地はないというべきである。実際上,被告らの主張に従えば,同被告らの占有権原は認められないのに,今後も同被告らが本件各建物を占有し続けることが可能になるのであって,背理というほかなく,これによって原告と被告労働組合との労使関係の正常化もいっそう遠退くこととなる。
3 次いで,原告の損害賠償請求について検討する。
(1) 被告労働組合及び被告出版労連の本件各建物に対する占有は,占有権原がなく違法であるといえるから,原告は,同被告らの違法占有(その余の被告らは,占有の主体ではないとしても,被告労働組合及び被告出版労連の違法占有に中心的に関与したものと認められる。)によって生じた損害の賠償を請求できる道理ではあるが,本件における以下のような諸事情を考慮すると,原告の被告らに対する損害賠償請求は権利の濫用として許されないものというべきである。
(2) すなわち,確かに,被告労働組合は,平成10年8月に,Bや被告Y2らが企画した会社再建案が株主総会で否決され,再建調査委員会主導のもと立案された賃金カット,増資,遊休資産売却,預金解約,労働協約改定等の再建案に従った会社運営が始まったことに抗議し,同年10月及び11月には連日にわたって団体交渉要求及びストライキ等による抗議活動を行っており,その態様は,団体交渉に臨む執行委員を8名に増員したり,原告役員らを誹謗中傷するビラを撒いたり,会議室において,原告役員の退出を引き留めたりするなどしばしば行きすぎる面がみられたこと,平成10年12月31日総会において,Zらが強行した法的には無効の続会決議を支持し,同続会の運営や,Zの選任及びその後の活動をサポートし,その結果,Zが出した指示に基づいて,半ば自力救済的に本件各建物の占有を開始したこと,その後,一貫して,ZないしZ側の人物が代表者に正式就任したことがないにもかかわらず,原告(X経営)からの建物明渡請求を拒絶していることが認められる。
(3) しかし他方,平成10年8月当時,A10に退職金が支払われなかった問題が生じており,これについては,後に裁判所が判断したように,正当な理由があったとはいえないこと,原告は,賃金カットの問題については,同年10月7日に労働協約上の協議事項であり,協議が整わない以上はこれを強行しないことを,また,同月12日には賃金カット案の撤回及びこれを再建案に組み込まないことを表明したにもかかわらず,翌13日にはこれを翻すなどの曖昧で不誠実な対応をとったこと,同月14日には,原告は,役員が弁護士に辞表を提出したことを理由に交渉を拒んだが,これは交渉を拒むための一時的な方便にすぎなかったこと等が認められ,これらの随所にみられる原告の対応の拙さが,被告労働組合らの争議行為をエスカレートさせる一因となったことは否定できない。
そして,原告は,同月16日に役員が退社してから出社せず,被告労働組合と団体交渉をすることなく,同年11月14日には本件ロックアウトを行い,被告労働組合の役員及び組合員の一部に対し懲戒解雇及び停職の各処分をし,本件ロックアウトを継続しながら,同年12月7日から朝霞倉庫を拠点にして,被告労働組合の組合員に就労させないまま書籍取次店との取引を再開し,平成11年1月14日以降被告労働組合及び被告出版労連が本件各建物を占有した後は,同被告らに対しその明渡しを求めていたものの,他に事務所を置き,組合員以外の者を雇い,出版事業を継続する一方,被告労働組合との団体交渉をすることなく,組合員らに就労の機会を与えようとすることが全くなかったものであり,その結果,組合員らは,平成10年10月11日以降今日まで,就労の意思及び能力を有しながら,原告から賃金の支払を全く受けていないのである。以上のような事情を総合すると,原告は,被告労働組合を嫌い,同被告が存在する限り,本件ロックアウトを継続する意思であったものであり,これにより,当時の従業員である組合員らによる営業を停止し,組合員らの就労の機会を奪うものであったと認めるほかないから,本件ロックアウトは,ロックアウトとして許される限度を超えた違法なものであり,役員及び組合員の一部に対する懲戒解雇及び停職の各処分にも正当理由があったとは認められないのである。他方,被告労働組合及び被告出版労連は,本件各建物を占有して以後,朝霞倉庫の在庫書籍を販売して資金を捻出し,これを本件各建物の維持管理の費用に充てていた。
(4) 加えて,以下のとおり,原告においては株主間の対立があり,本件ロックアウト以後に開催され,Xらを取締役に選任するなどした各株主総会は,真に株主の意思を反映したものとはいい難く,平成14年12月27日和解についても,原告に真にこれを履行する意思があったのか極めて疑わしいのである。
ア 平成10年12月31日総会
同総会については,決議取消訴訟が提起されていないのであるから,その効力が直ちに否定されるものではない。
しかしながら,①同総会の開催を前に,株主間に保有株式数についての争いが多くみられたが,その原因は,株主間の譲渡や相続による株主権の承継取得の存否及び増資による引受の有無等にあったこと,②その内,S8については,同人が同総会における議決権を放棄していたものの,原告が主張するような1万2240株ではなく,その4倍の4万8960株の株主であったこと,③Zについては,原告が主張するような12万8000株ではなく,S21から株式を譲り受けたことにより22万4640株の株主となっている旨の第1審判決がなされていること(ただし,その後,和解により終了している。)が認められ,このような状況の中で株主総会が開催されたことからすれば,同総会において,Eが株主名簿の開示を要求したことにも合理性があったものと認められ,その一方で,原告は,特にS21からZへの株式譲渡が主張されることを阻止するために,相当強引な総会進行をしたものと推認される。したがって,同総会が真に株主の意思を反映した総会であったと評価することはできない。
イ 平成11年1月21日総会
同総会についても,決議取消訴訟が提起されていないのであるから,同総会の効力が直ちに否定されることはない。
しかしながら,原告は,いわゆるZ側の株主らに対して招集通知をしなかったものであり,同総会は,平成11年1月14日続会という自力救済的な行為に対する自力救済的行為であり,法的な手続に則った決議を放棄するものといわざるを得ない。したがって,平成11年1月21日総会が真に株主の意思を反映した総会であるとは到底いえない。
ウ 平成11年2月21日総会
同総会についても,決議取消訴訟が提起されていないのであるから,同総会の効力が直ちに否定されることはない。そして,同総会において,Xらが過半数の賛成により取締役に選任された。
しかしながら,①当時,Zが主張していた持株の内,S21から譲り受けて取得した分及びS28の遺族から譲り受けて取得した分については,否認されていたこと,②上記S28株については,その後,Zの主張を認める判決が確定したこと,③平成11年2月21日総会において,原告は,Z及びEに対し,Xらが平成10年12月31日に適法に取締役に選任されており,平成11年2月21日総会はこれに基づく正当なものであること及びXが議長を務めることに異議がないこと等を認める旨の書面に署名しなければ,入場させない旨申し向け,強引にZ及びEに署名させたことが認められるから,この総会も,真に株主の意思が反映されたものと評価することはできない。
エ 平成11年3月7日総会
Xらが取締役に選任された旨の議事録が存在している。
しかしながら,Z及びEは,その後,同総会決議取消訴訟を提起し,第1審判決が,原告がZの持株数を12万8000株ではなく,22万4640株としてカウントしていれば,決議内容が逆転していたとの判断を示しているのであり(ただし,その後,控訴審において,訴えが取り下げられた。),やはり,同総会によって株主の意思が明らかになったとは評価し難い。
オ 平成13年9月27日総会
①同年8月,Zに22万4640株の議決権行使を認める仮処分決定がなされたこと,②これにより,当時の持株数としては,Z側が63万9920株であるのに対し,X側が55万0720株となっていたこと,③累積投票の請求がなかったことが認められるから,同総会においてはZ側の取締役が選任される蓋然性が高かったといえる。
にもかかわらず,合計29万3600株について保有ないし委任を受けていたEが,不規則発言(S9の入場を原告が拒否した点についての発言)を理由として退場させられたことにより,結局,Xらが取締役に選任されたものと認められる。
この点について,S9が住居変更を届け出ていなかったことにも落ち度はあるが,前記のとおり,Z及びEらが過半数を占めており,普通に議決権を行使すれば,いわゆるZ側の取締役の選任の可能性が高かった状況に照らせば,議長であるXが不規則発言を理由に行った退場命令は,軽微な落ち度を口実にしてEの議決権行使を妨害する意図によって行われた蓋然性が高く,その相当性に疑問がある。
したがって,平成13年9月27日総会も,真に株主の意思を反映したものとは評価できない。
カ 平成14年12月27日和解について
同和解成立後,「裁判情報」やEの代表者としての適格性の問題を巡って,原告とEらが対立し,結局,同和解で原告に義務付けられた平成15年3月中の総会招集は実現しなかったことが認められる。
この点について,原告とEは,互いに相手側に責任があると主張しているところ,Eは,和解の履行のため,株主総会を開催するに当たり,新株引受申込証拠金の払戻手続を行う必要があることへの理解が十分ではなかったものといえるが,①平成14年12月27日和解の結果,Z側株主が過半数を占めることになり,また,Z側及びX側から3名ずつの取締役を選任し,E(又は同人が指名する取締役)を代表取締役社長に,C(又は同人が指名する取締役)を代表取締役専務とすることになったこと,②株主総会の議長は取締役社長が務めるものであることが認められるから,状況的にはZ側に有利であったものであり,Z及びE側に和解の履行を拒否する意思があったとは認め難い。
一方において,原告(X経営)側にとっては,状況はZ側と逆であることが認められ,これに前記認定のような「裁判情報」の記載内容(紛争を煽り立てるものとまではいえない。)や,X経営にEの適格性を審査する権限があるかのような交渉を展開したこと等を考えあわせると,原告(X経営)側に真に和解を履行する意思があったのかは疑問であるといわざるを得ない。
キ 平成15年6月17日総会
同総会において,Xらが発行済株式総数112万株,出席者の議決権総数109万9600株の内,57万2320株の賛成を得て取締役に選任されたとの議事録が存在している。
しかしながら,①同総会には,平成14年12月27日和解によって61万2320株を保有していることが確認されたZ側株主が全員出席していたこと,②採決の方法が,賛成者に挙手させ,反対者には挙手を求めない方法によるものであったことが認められるから,原告(X経営)は,発行済株式総数112万株のままであり,定款の変更がなされておらず,自分達の陣営が有する57万2320株をもってしても,外形上は過半数の議決がなされたことを偽装することが可能な状況であったことを奇貨として,反対者の挙手を求めなかったものと推認される。
したがって,平成15年6月17日総会も,真に株主の意思を反映しているものとは到底認められない。
(5) 以上のとおり,被告労働組合にも,原告における経営危機に対する認識が足りず,争議行為がいささか激しすぎたことはあったとしても,原告は,同被告に保障された労働基本権を無視し,争議行為を嫌い,違法な本件ロックアウトや組合役員らに対する懲戒処分を行うなどし,結局,被告労働組合との団体交渉を拒否し続け,その結果,長きにわたって組合員らの就労の機会を奪い,賃金不払を続け,組合員らに対し著しい経済的打撃を与えたものであり,しかも,現代表者Xによってなされた原告の以上のような行為は,原告における多数派株主の意思に反するものであり,平成14年12月27日和解による解決の途も,原告自らが閉ざしたものといえるから,これらの事情をあわせると,原告が自らの法的義務を著しく懈怠しながら被告労働組合及び被告出版労連の不法占有によって生じた損害の賠償のみを求めるのは権利の濫用に当たるものというべきである。
4 なお,被告らは,Xが原告代表者であることを争い,本訴における原告適格性がないとして,訴えの却下を求めるが,前記のとおり,Xが取締役に選任された各株主総会は,決議取消請求がなされなかったり,同請求がなされた後に取り下げられたり,平成14年12月27日和解によりその有効性が合意されたりしており,Xが原告の代表取締役の地位にあることは認めざるを得ないのであるから,被告らの申立ては理由がない。
また,被告出版労連及び被告Y5は,原告が第22回口頭弁論期日に提出した甲151ないし190(枝番省略)について,時機に遅れた攻撃防御方法に該当するとして,その却下を求めているが,これらの書証は,これが提出される以前から,おおむね明らかになっていた本件の事実経過に関して,確認的に立証を補充する趣旨で提出されたものと認められるから,訴訟の完結を遅延させるものとまではいい難い。したがって,同被告らの申立ては理由がない。
5 よって,原告の請求は,被告労働組合及び被告出版労連に対し本件各建物の明渡しを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官・坂井満,裁判官・佐藤重憲裁判官・佐藤康平は,企業研修中のため,署名押印することができない。裁判長裁判官・坂井満)
別紙物件目録<省略>