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東京地方裁判所 平成11年(ワ)27584号 判決

原告 有限会社ケージーアイ・エー

右代表者取締役 シュミット・フレデリック・カツロ

右訴訟代理人弁護士 宇多正行

被告 株式会社地球倶楽部

右代表者代表取締役 西村義明

右訴訟代理人弁護士 高木健一

被告 寶徳寺

右代表者代表役員 白石慈恵

右訴訟代理人弁護士 中村利雄

同 吉田誠司

被告 大川道彦

右訴訟代理人弁護士 中島彰彦

被告 福田政夫

右訴訟代理人弁護士 田村公一

同 菅野光明

主文

一  被告株式会社地球倶楽部は、原告に対し、別紙物件目録一記載の建物の地下一階及び一階ないし五階部分を明け渡せ。

二  被告株式会社地球倶楽部は、原告に対し、平成一一年九月一日から前項の明渡済みまで月額金二五二万三〇七二円の割合による金員を支払え。

三  原告と被告大川道彦との間で、別紙物件目録一記載の建物の六階部分を原告が所有していることを確認する。

四  被告福田政夫は、原告に対し、別紙物件目録一記載の建物の六階部分を明け渡せ。

五  被告福田政夫は、原告に対し、平成一一年九月一日から前項の明渡済みまで月額金三万円の割合による金員を支払え。

六  原告の被告寶徳寺に対する請求及び被告福田政夫に対するその余の請求をいずれも棄却する。

七  訴訟費用は被告地球倶楽部、被告大川道彦及び被告福田政夫の負担とする。

八  この判決は、第一、第二、第四、第五項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  主位的請求

1  主文第一ないし第四項と同旨

2  被告寶徳寺は、原告に対し、別紙物件目録一記載の建物の五階部分を明け渡せ。

3  被告寶徳寺は、原告に対し、平成一一年九月一日から前項の明渡済みまで月額金三一万二六三一円の割合による金員を支払え。

4  被告福田政夫は、原告に対し、平成一一年九月一日から別紙物件目録一記載の建物の六階部分の明渡済みまで月額金六万一八〇三円の割合による金員を支払え。

二  予備的請求

1  被告株式会社地球倶楽部は、原告に対し、別紙物件目録三記載の建物の地下一階及び一階ないし四階部分を明け渡せ。

2  被告株式会社地球倶楽部は、原告に対し、平成一一年九月一日から前項の明渡済みまで月額金二二一万〇四四一円の割合による金員を支払え。

3  被告株式会社地球倶楽部及び被告寶徳寺は、原告に対し、別紙物件目録三記載の建物の五階部分を明け渡せ。

4  被告株式会社地球倶楽部及び被告寶徳寺は、原告に対し、各自、平成一一年九月一日から前項の明渡済みまで月額金三一万二六三一円の割合による金員を支払え。

5  被告大川道彦は、原告に対し、別紙物件目録三記載の建物の屋上に存する建物(鉄骨造平屋建事務所)を撤去し、別紙物件目録二記載の土地を明け渡せ。

6  被告福田政夫は、原告に対し、前項の建物から退去し、別紙物件目録二記載の土地を明け渡せ。

7  被告大川道彦及び被告福田政夫は、原告に対し、各自、平成一一年九月一日から前二項の明渡済みまで月額金六万一八〇三円の割合による金員を支払え。

第二当事者の主張

一  請求原因

(主位的請求)

1 株式会社エス・ディー・シー(以下「エス・ディー・シー」という。)は、別紙物件目録三記載の建物(以下「本件建物A」という。)を所有していた。

2 平成七年ころ、本件建物Aの屋上に鉄骨造平屋建の事務所が六階部分として増築されたが、右事務所(以下「本件事務所」という。)は、本件建物Aに従として附合し、本件建物Aは、別紙物件目録一記載の建物(以下「本件建物B」という。)となった。

3 原告は、平成一一年九月一日、東京地方裁判所平成五年(ケ)第二五二六号不動産競売事件において、本件建物Bを買い受けた。

4 被告株式会社地球倶楽部(以下「被告地球倶楽部」という。)は、平成一一年九月一日より前から本件建物Bの地下一階及び一階ないし四階部分(合計床面積四八二・八四平方メートル)を占有している。

5 被告地球倶楽部及び被告寶徳寺は、平成一一年九月一日より前から本件建物Bの五階部分(床面積六八・二九平方メートル)を占有している。

6 被告大川道彦(以下「被告大川」という。)は、本件建物Bの六階部分を所有していると主張している。

7 被告福田政夫(以下「被告福田」という。)は、平成一一年九月一日より前から本件建物Bの六階部分(面積一三・五〇平方メートル)を占有している。

8 本件建物Bの平成一一年九月一日以降の賃料相当損害金は、一平方メートル当たり一か月金四五七八円である。

9 よって、原告は、本件建物Bの所有権に基づき、被告地球倶楽部に対し、本件建物Bの地下一階及び一階ないし四階部分の明渡しと不法占有による賃料相当損害金として平成一一年九月一日からその明渡済みまで月額金二二一万〇四四一円の割合による金員の支払を、被告地球倶楽部及び被告寶徳寺に対し、同建物の五階部分の明渡しと不法占有による賃料相当損害金として平成一一年九月一日からその明渡済みまで月額金三一万二六三一円の割合による金員の支払を、被告大川に対し、本件建物Bの六階部分を原告が所有していることの確認を、被告福田に対し、同建物の六階部分の明渡しと不法占有による賃料相当損害金として平成一一年九月一日からその明渡済みまで月額金六万一八〇三円の割合による金員の支払をそれぞれ求める。

(予備的請求)

仮に、本件事務所が、本件建物Aに附合せず、動産である場合には、原告は、被告地球倶楽部らに対し本件建物Aの各占有部分の明渡し等を求めるとともに、前記競売事件において、平成一一年九月一日、別紙物件目録二記載の土地(以下「本件土地」という。)を買い受けたから、本件土地の所有権に基づき、被告大川に対しては本件事務所の撤去及び本件土地の明渡し等を、被告福田に対しては本件事務所からの退去及び本件土地の明渡し等を求める。

二  請求原因に対する認否

(主位的請求について)

1 被告地球倶楽部

請求原因1、3及び4の各事実は認めるが、同5及び8の各事実は争う。

2 被告寶徳寺

請求原因1ないし3及び8の各事実は知らない。同5の事実は否認する。

被告寶徳寺は、かつて本件建物Aの五階部分を占有していたが、平成五年九月二八日に退去したので、現在では、本件建物の五階部分を占有していない。

3 被告大川

請求原因1、3及び6の各事実並びに同2のうち、平成七年ころ、本件建物Aの屋上に本件事務所が六階部分として増築されたことは認めるが、その余の事実は争う。

本件事務所は、本件建物Aの屋上に直接コンクリートを流して、南北方向には四八センチメートルおきに四個の、東西方向には五二センチメートルおきに五個の縦三〇センチメートル、横二〇センチメートル、高さ一三・五センチメートルのコンクリート製ブロック(固定基礎)を設置し、周囲にある合計一八個の固定基礎相互間には、コンクリートを流し込み、右固定基礎間に、スチール製の基礎梁を置き、四方にスチール製の柱を建てて、その周囲をスチールパネルで被って外壁としている。したがって、本件事務所を本件建物Aから分離復旧させることにより本件建物の躯体部分に損傷を与えて本件建物Aが使用できなくなる等、社会経済上著しい不利益が生ずるわけではないから、本件事務所は、本件建物Aに附合せず、本件建物Aとは別個の独立した動産である。

4 被告福田

請求原因1、3及び7の各事実並びに同2のうち、平成七年ころ、本件建物Aの屋上に本件事務所が六階部分として増築されたことは認めるが、同2のその余の事実は否認する。同8の事実は知らない。

本件事務所の基礎となっているコンクリート製の土台は、本件建物Aの屋上に直接コンクリートを流し込んで設置されたものであり、構造上、右土台部分の除去はさほど困難ではなく、右土台部分の除去に際して本件建物Aに重大な損傷を与えることもない。しかも、コンクリート製の土台上に建築されたスチール製の建物は、単にコンクリート製の土台で固定されたものの上に載っているプレハブ構造のものであり、コンクリート製の土台と共に容易に撤去できるものである。したがって、本件事務所は、本件建物Aに附合していない。

(予備的請求について-被告大川及び被告福田)

原告の予備的請求に係る主張は争う。

三  抗弁

1  被告地球倶楽部

(一) 原告は、譲り受けた多数の債権を回収する法律行為を業として行っているものであり、原告が、平成一〇年三月三一日、株式会社第一勧業銀行から本件建物の一番抵当権の被担保債権を譲り受けているが、この債権譲受けは、弁護士法七二条に違反する無効な行為であり、原告が一番抵当権者としてした競売手続には重大な瑕疵があって、この競売手続による原告の本件建物の買受けは、公序良俗に反する無効なものである。

(二) 被告地球倶楽部は、本件建物の前所有者であるエス・ディー・シーから本件建物を賃借していた株式会社ホロニックから、平成五年一〇月一日、本件建物を賃料一六八万円で賃借し、引渡しを受けた。

2  被告大川及び被告福田

(一) 被告大川は、昭和六三年一〇月一九日、本件建物の前所有者であるエス・ディー・シーから本件建物の屋上部分(一三・五〇平方メートル)を次の約定で賃借し、その引渡を受けた。

賃貸借期間 昭和六三年一〇月一九日から三〇年間

目的 建築物建設

賃料 月額三万円

(二) 被告大川は、その後本件建物の屋上にベンチ、テーブル、机等を置いて使用し、占有していたが、平成七年に本件事務所を建築した。

(三) 本件事務所が本件建物に附合したとしても、被告大川は、右貸借権により本件事務所を附属せしめたものである。

(四) 右(一)の建物の賃貸借の引渡は、本件建物に設定された抵当権の登記(昭和六三年一一月二九日)に先立つから、原告にその賃貸借を主張することができる。

(五) 被告福田は、その後、被告大川から本件事務所を賃借した。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実は争う。被告大川は、前記競売事件の執行妨害の目的で本件事務所を築造したものである。

第三当裁判所の判断

一  被告地球倶楽部(地下一階及び一階ないし五階部分)関係

1  請求原因1、3及び4の事実は、当事者間に争いがない。なお、同2の事実は、後記三のとおりである。

2  証拠(甲三、四、五の一及び二、乙ロ一ないし七)及び弁論の全趣旨によれば、被告地球倶楽部が本件建物Bの五階部分を占有していることが認められる。

3  被告地球倶楽部は、原告の本件建物等に対する競売手続に係る債権の譲り受けが弁護士法七二条に該当する違法なものであって、右競売手続による本件建物の原告の買受けは公序良俗に違反する無効なものであると主張するが、同被告の主張する事由があるからといって原告の債権の譲り受けが弁護士法七二条に該当する違法なものであるとか、右競売手続における原告の本件建物Bの買受けが公序良俗に反して無効なものであるということはできない上、本件全証拠によるも、原告の本件建物Bの買受けが公序良俗に反する無効なものであることを認めるに足りる証拠はないから、被告地球倶楽部の右主張は失当である。

4  被告地球倶楽部は、本件建物の前所有者であるエス・ディー・シーから本件建物を賃借した株式会社ホロニックから、平成五年一〇月一日に本件建物を賃借した旨主張し、これを証するため乙イ第一号証(建物賃貸借契約書)を提出するが、右賃貸借契約書に係る物件は千代田区神田小川町のものであって、本件建物に関するものではなく、本件全証拠によるも、被告地球倶楽部が本件建物Bの地下一階及び一階ないし五階部分を占有する権原の立証はない。

5  証拠(甲八)及び弁論の全趣旨によれば、本件建物Bの地下一階及び一階ないし五階部分(合計床面積五五一・一三平方メートル)の平成一一年九月一日以降の月額賃料相当損害金は、少なくても金二五二万三〇七二円(一平方メートル当たり金四五七八円)であると認められる。

6  そうすると、原告の被告地球倶楽部に対する本件建物Bの地下一階及び一階ないし五階部分についての明渡請求及び賃料相当損害金の請求は理由がある。

二  被告寶徳寺(五階部分)関係

証拠(甲三)によれば、被告寶徳寺が平成五年七月二一日に本件建物Aの五階部分を占有していたことが認められるが、証拠(乙ロ1ないし七)及び弁論の全趣旨によれば、同被告は、同年九月に本件建物Aの五階部分を退去したことが窺えるところ、証拠(甲五の一、二)中の被告地球倶楽部代表者の供述のみでは、被告寶徳寺が現在及び仮処分の執行があった平成一一年一〇月七日当時において、本件建物Bの五階部分を占有しているとは認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

そうすると、原告の被告寶徳寺に対する請求は理由がない。

三  被告大川及び被告福田(六階部分)関係

1  請求原因1、3、6及び7の各事実並びに同2のうち、平成七年ころ、本件建物Aの屋上に本件事務所が六階部分として増築されたことは、当事者間に争いがない。

2  証拠(甲一の一ないし三、五の一、六、九、乙ハ二の一及び一二)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地及び本件建物Aは、もとエス・ディー・シーが所有していたが、平成三年九月に大蔵省による差押えがされ、平成五年六月ころに株式会社第一勧業銀行が競売を申し立て、その旨の差押え登記がされたこと、被告大川は、平成七年に本件建物Aの屋上に本件事務所を築造したこと、本件事務所は、高さ二・四七メートル、縦横二・六メートル及び三・五四メートルのいわゆるプレハブを本件建物Aの屋上に固定させたものであること、本件事務所は、右屋上に直接コンクリートを流して、南北方向に四個の、東西方向に五個の縦三〇センチメートル、横二〇センチメートル、高さ一三・五センチメートルのコンクリート製ブロック(固定基礎)を設置し、東西方向にある五個の右固定基礎相互間には、スチール製の基礎梁を置いて、コンクリートを流し込んで屋上に固定し、その固定基礎上にスチール製の柱を建てて、その周囲をスチールパネルで被って外壁としたものであること、本件事務所内には、洗面等の設備はなく、本件事務所への出入りは、本件建物Aを利用してしかすることかできず、本件建物Aの屋上に至るには、五階に設置された施錠することができるドアを経なければならないことが認められ、右事実に照らして考えると、本件事務所は、本件建物Aの屋上に直接コンクリートを流して固定基礎を設置した上、その固定基礎(東西方向)相互間にもコンクリートを流し込んで本件建物Aに付着せしめたものであり、また、出入りや洗面等につき、本件建物Aを利用しなければ、本件事務所を事務所等として利用することができないものであって、本件事務所自体では、独立の建物としての効用があるとはいえないのであるから、本件事務所は、本件建物Aに従として附合したものと認められ、本件事務所は、本件建物Aの構成部分となり、独立の所有権の対象とはならないというべきである。

したがって、被告大川が本件建物Aに本件事務所を権原により附属させたかどうかは、本件建物Bの六階部分(本件事務所)の所有権の帰属に影響を及ぼすものではない上、右認定事実に照らすと、被告大川は、本件建物A等に対する強制執行を妨害する目的で本件事務所を築造したと認められる。

そうすると、本件建物Bの六階部分は、原告の所有に属し、被告大川は、原告に対して右建物六階部分を占有する権原があるということはできず、被告大川から右部分を賃借していると主張する被告福田も、原告に対して右建物六階部分を占有する権原があるということはできない。

3  右認定事実及び証拠(甲六、八)及び弁論の全趣旨によれば、本件建物Bの六階部分の賃料相当損害金は、少なくても月額金三万円であると認められる。

なお、原告は、本件建物B付近の賃料相場により賃料相当損害金を算定してその請求をするが、右認定の本件建物Bの六階部分の構造等に照らすと、原告の主張する通常の建物の賃料相場をもって本件建物Bの六階部分の賃料相当損害金の算定の基礎とすることはできない。

四  結論

よって、原告の本訴請求のうち、被告地球倶楽部及び被告大川に対する各請求並びに被告福田に対する請求のうち本件建物Bの六階部分の明渡しと月額三万円の割合による賃料相当損害金請求は理由があるが、被告寶徳寺に対する請求及び被告福田に対する月額三万円を超える部分の賃料相当損害金の請求は理由がないので、主文のとおり判決する。

(裁判官 下田文男)

物件目録

一 東京都千代田区一番町九番地一二、九番地四所在

家屋番号 九番一二

鉄筋コンクリート造鉄骨造陸屋根地下一階付六階建事務所・車庫

床面積 一階   八二・六三平方メートル

二階  一一七・八〇平方メートル

三階   七九・六七平方メートル

四階   七一・九七平方メートル

五階   六八・二九平方メートル

(未登記)六階   一三・五〇平方メートル

(事務所面積九・二〇平方メートル)

地下一階  一三〇・七七平方メートル

二1 東京都千代田区一番町九番四

宅地   四二・九七平方メートル

2 東京都千代田区一番町九番一二

宅地  一三七・四二平方メートル

三 東京都千代田区一番町九番地一二、九番地四所在

家屋番号 九番一二

鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階付五階建事務所・車庫

床面積 一階   八二・六三平方メートル

二階  一一七・八〇平方メートル

三階   七九・六七平方メートル

四階   七一・九七平方メートル

五階   六八・二九平方メートル

地下一階  一三〇・七七平方メートル

以上

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