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東京地方裁判所 平成11年(ワ)5323号 判決 2000年3月23日

原告

三浦電子株式会社

右代表者代表取締役

【A】

右訴訟代理人弁護士

綱取孝治

保田眞紀子

右補佐人弁理士

【B】

被告

コロナ工業株式会社

右代表者代表取締役

【C】

右訴訟代理人弁護士

品川澄雄

吉澤敬夫

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、別紙物件目録記載の装置を製造し、販売し、貸し渡し、又は譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。

二  被告は、原告に対し、金三〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年三月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が、被告に対し、後記一1記載の特許権に基づき、被告が製造・販売する別紙物件目録記載の各装置(以下「被告各装置」という。)は右特許権に係る発明の技術的範囲に属する電解生成殺菌水の生産にのみ使用される物であるから、被告による被告各装置の製造・販売は、特許法一〇一条一号により右特許権を侵害するものとみなされる旨主張して、被告各装置の製造・販売等の差止めを求めるとともに、損害賠償として金三〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年三月一六日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

一  争いのない事実

1  原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明」という。)を有する。

(一) 特許番号 第二六二六七七八号

(二) 発明の名称 電解生成殺菌水

(三) 登録年月日 平成九年四月一八日

(四) 出願年月日 昭和六三年一月一三日

(五) 出願番号 特願昭六三ー三七九〇号

(六) 特許請求の範囲 本判決添付の特許公報(以下「本件公報」という。)

の該当欄請求項1記載のとおり

2  本件発明の構成要件は、次のとおりに分説される。

(一) 電解生成殺菌水であること

(二) 原水に水溶性の電離性無機物質を添加して、これを電解することによって得られる酸性水であること

(三) そのPH値が一・五以上三・一以下であること

(四) 電解後の酸性水の電気伝導度と、前記原水に水溶性の電離性無機物質を添加した電解前の水の電気伝導度との差が、二〇〇~一四一二〇μS/㎝であること

3  被告は、本件特許権の登録日以降、被告各装置のうち別紙物件目録1ないし3及び6ないし9記載の各装置を製造・販売している(被告は、被告各装置のうち、別紙物件目録4、5、10及び11記載の各装置については、本件特許権の登録日以降に製造・販売したことを争っている。)。

4  被告各装置を使用することにより、本件発明の各構成要件を充足する電解生成殺菌水(以下「本件電解生成殺菌水」という。)を生産することができる。

二  争点及び当事者の主張

1  被告各装置が本件電解生成殺菌水の生産にのみ使用される物か否か(特許法一〇一条一号の間接侵害の成否)。

(一) 被告の主張

被告各装置には、次のとおり、本件電解生成殺菌水を生産すること以外の実用的用途があるから、被告各装置は、本件電解生成殺菌水の生産にのみ使用される物とはいえない。

(1) 構成要件(三)のPH値の範囲外の酸性水の生成

被告各装置においては、装置の設定を調節することにより、PH二・五から四・五までの酸性水を生成することができ、本件発明の構成要件(三)における「PH値が一・五以上三・一以下」の範囲外のPH値の酸性水をも生成することができるところ、右のような酸性水には、半導体や人工透析装置を洗浄するなどの用途がある。

(2) アルカリ水の生成

被告各装置は、水を電気分解する装置であるから、酸性水を生成すると同時に、必然的にアルカリ水を生成することができるところ、このようなアルカリ水には、次のような用途がある。

① 電解生成アルカリ水には、洗浄作用や酸化防止作用があり、そのような目的で使用されることがよく知られている。例えば、電解生成された強アルカリ水は、工場プラントでのタンク洗浄や半導体製造過程でのシリコンウエハの洗浄などに用いられる。

② 被告各装置では、食塩を添加せず、特定の電流を選択することにより、PH三・五ないし五・五程度の弱酸性水と共に、PH九・〇ないし一〇・〇程度の弱アルカリ水を生成することができるところ、右弱アルカリ水には、家庭用のアルカリイオン水生成器で得たアルカリ水と同様に飲用等の用途がある。

③ 電解生成された強アルカリ水には、作物の成長促進、土壌のPH調整の効果があり、これら農業における用途に使用されている。

(3) 酸性水とアルカリ水の混合水の生成

被告各装置によって生成される酸性水とアルカリ水を適宜の割合で混合することによって得られる混合水にも、次のような実用性がある。

① 被告各装置によって生成される強酸性水と、これと同時に生成される強アルカリ水を混合し、PHを四付近に調整した電解水(「ソフト酸化水」と呼ばれる。)は、次亜塩素酸の濃度が最も高いため殺菌力が強く、外食産業等で殺菌目的に使用されている。

② 被告各装置によって生成される強酸性水と強アルカリ水を適当な割合で混合した水又は右混合水を希釈した水には、土壌の改良、作物の生産調整などの効果があり、これら農業における用途に使用されている。

(二) 原告の主張

被告各装置に、本件電解生成殺菌水を生産すること以外の「他用途」があるといえるためには、被告各装置における本件電解生成殺菌水の生成以外の用途が、これと同等又は少なくともこれに準ずる程度に経済的、商業的ないし実用的と認められることを要するものと解すべきである。

被告が主張する被告各装置の本件電解生成殺菌水の生成以外の用途は、次に述べるとおり、右要件を満たすものとはいえない。

(1) 構成要件(三)のPH値の範囲外の酸性水の生成について構成要件(三)のPH値の範囲外の酸性水に、何らかの効能、効果があることは認めるが、それは、本件電解生成殺菌水と同等又は少なくともこれに準ずる程度の効能、効果とは程遠く、したがって、これに本件電解生成殺菌水とは別個の商業的又は実用的価値があるとはいえないから、これを生成することが、被告各装置における「他用途」とはいえない。

(2) アルカリ水の生成について

① 被告各装置により、強酸性水とともに生成される強アルカリ水にある種の洗浄能力があることは否定しないが、一台二〇〇万円以上もする被告各装置を右のような洗浄作用に着目して購入する消費者は存しないというべきであるから、強アルカリ水の右洗浄作用には商業的なレベルでの価値はなく、したがって、これを生成することが、被告各装置の「他用途」とはいえない。

② 被告各装置において、食塩を添加しないことにより、弱アルカリ水を生成することにができ、これを飲用に供することもできなくはない。しかしながら、水の性質や含有成分により安定したPHが得にくいのみならず、飲用不適の成分が残存することも避けられないのであり、そのため、飲用のアルカリイオン水生成器については、厚生省が定めた安全基準があり、これを満たすものでなければ消費者への販売は禁止され、被告においても、右厚生省の認可を得たアルカリイオン水生成器を被告各装置よりもはるかに安い金額で別途製造・販売しているのであるから、被告各装置により生成された弱アルカリ水が単に飲用が可能だというだけでは、これを生成することが被告各装置の商業的又は実用的用途であるとはいえない。

③ 被告が主張する電解生成強アルカリ水の土壌改良等の農業における用途については、原告の実験において、強アルカリ水に含有されるカリウム(原水に添加した塩化カリウムが残留したもの)の作用以上の効果は証明されなかったから、実用的用途が実証されているとはいえない。

(3) 酸性水とアルカリ水の混合水について

① 被告は、本件電解生成殺菌水とそれと同時に生成される強アルカリ水との混合水又は右混合水の希釈水の使用例を示し、もって被告各装置の「他用途」である旨主張するが、右使用例は、被告各装置により生成された本件電解生成殺菌水の用途又は利用に関するものであり、被告装置自体の「他用途」を示すものではない。

② ソフト酸化水に、本件電解生成殺菌水よりも高い殺菌力がある旨の被告の主張は誤りであり、また、原告が調査した限り、被告各装置の使用者において、ソフト酸化水の生成のために被告各装置を使用する事例はない。

③ 被告各装置によって生成される強酸性水と強アルカリ水を適当な割合で混合した水又は右混合水を希釈した水には、土壌の改良、作物の生産調整などの効果があり、これら農業における用途に使用されているとの被告の主張についても、右のような効果を確認することはできず、実用的用途が実証されているとはいえない。

2  本件特許に明らかな無効原因があることにより、本件特許権に基づく原告の本訴請求が権利濫用となるか否か。

(一) 被告の主張

本件発明は、電気分解の常法に従って水を電気分解すれば必然的に得られる水について、従来知られていないパラメータを特定することによって特許されたものにすぎず、しかも、そのパラメータと本件明細書でうたっている殺菌能力という作用効果との間には何らの理論的・現実的相関関係がないから、本件特許には明らかな無効原因があり、そのような無効原因を包含した特許権を行使することは、権利の濫用として許されない。

(二) 原告の主張

特許された発明について、その発明の構成と作用効果とが、必ず理論的・現実的相関関係があるものと証明されなければならないものではなく、実験によって従来のものとは異なる顕著な効果を奏することが確認できる発明には特許性があるというべきところ、本件発明には、右のような意味での特許性があり、無効原因があるとはいえないから、被告の権利濫用の主張は失当である。

3  被告各装置の製造・販売が本件特許権を侵害する場合、右侵害によって原告が受けた損害の額

(一) 原告の主張

被告は、本件特許権の登録日である平成九年四月一八日から同一〇年四月二〇日までの間に被告各装置を合計七八台製造販売して五三一八万円の利益を得、さらに、同月二一日から本訴が提起された平成一一年三月一〇日までの間に被告各装置を合計五〇台以上製造販売して少なくとも三〇〇〇万円の利益を得た。

被告が得た右利益の額は、原告が受けた損害の額と推定される。

よって、原告は、被告に対し、右利益合計額八三一八万円の内金三〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年三月一六日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(二) 被告の主張

原告の主張を争う。

第三争点に対する判断

一  争点1(特許法一〇一条一号の間接侵害の成否)について

1  被告各装置の製造販売行為が本件特許権の間接侵害(特許法一〇一条一号)に当たるというためには、被告各装置が本件電解生成殺菌水の生産にのみ使用する物であること、すなわち、被告各装置に本件電解生成殺菌水を生産すること以外に商業的、経済的に実用性のある用途がないことが認められる必要があるところ、この点についての立証責任は、間接侵害を主張する原告が負うものというべきである。

そこで、以下において、被告各装置につき、本件電解生成殺菌水を生産すること以外の用途があり得るかどうか、また、その用途が商業的、経済的に実用性のあるものといえるかどうかについて、検討することとする。

2  甲第三号証、第四号証、乙第一号証の一及び二、第六号証、第七号証並びに弁論の全趣旨によれば、被告各装置は、水を電気分解することによって、PH値二・四ないし五・五程度の酸性水を生成するとともに、PH値九・〇ないし一一・六程度のアルカリ水を生成することができる装置であることが認められるところ、右アルカリ水を生成するという被告各装置の用途が、本件電解生成殺菌水を生産すること以外の用途であることは明らかである。

3  そこで次に、被告各装置におけるアルカリ水を生成するという用途が商業的、経済的に実用性のある用途といえるかどうかにつき、検討する。

(一) 以下の各証拠(括弧内に表示)によれば、電気分解により生成されたアルカリ水の効用に関して、以下の事実が認められる。

(1) 被告が一般需要者に対して配布している被告各装置の宣伝用パンフレットには、被告各装置によって生成される強アルカリ水(PH値一一・三以上)の効用について、次のような記載がされている(甲第三号証、第四号証、乙第四号証ないし第六号証)。

① 強アルカリ水は、可溶性タンパクの溶解能力による洗浄作用があり、また、酸化防止作用もある。

② 強酸性水、強アルカリ水の使い分けにより、土壌のPHを矯正し作物の育成を促進する効果がある。

③ 強酸性水で鉄金属類を除菌洗浄後は比較的錆びやすいので、酸化防止に強アルカリ水で洗って中和させるのが適当である。

④ 強アルカリ水は、土壌中の微生物環境を活性化し、肥料・有機酸の働きを更に効果的に作用させる機能があり、土壌表面への散布や灌水に使用することで土壌の改良ができる。

⑤ 強アルカリ水を作物の葉面に散布することで、葉、茎、実の成長が促進される。

⑥ 強酸性水と強アルカリ水を交互に定期散布することで、作物の病気を予防し自己免疫力が高まり、害虫の発生が少なくなる。

(2) 原告が製造販売する電解水生成装置(商品名「オキシライザー」。以下「原告装置」という。)の、一般需要者向け宣伝用パンフレットにも、右装置によって生成される強アルカリ水の効用について、次のような記載がされている(乙第一五号証、第二五号証、第三七号証)。

① 土壌のPHの乱れ、酸性雨や化学肥料による酸性土壌、又はアルカリ土壌を、電解生成されたPH値二・七程度の強酸性水とPH値一一・三程度の強アルカリ水を使い分けることによって、作物成育の適性PH範囲に矯正することができる。

② 電解生成された強アルカリ水に多く含まれている水酸基が、多肥により酸性化した土壌を中和すると共に、蓄積された農薬を分解する効果を有する。

③ 電解生成された強アルカリ水には、次のような物理的な効能効果がある。

ア 遅効性の殺菌作用を示す。

イ 酸性土壌の矯正による失敗が少ない。

ウ 肥料過多による障害から芝生を守る。

エ 根に活力をつけ、植物の成長を促す。

④ 電解生成された強アルカリ水には、次のような利用方法がある。

ア 野菜、果物の鮮度維持、すなわち、褐変防止、色上げ、水溶け防止に利用する。

イ 魚介類の鮮度維持、すなわち、表面酸化の防止、メト化・タンパク変性防止、色上げ、ドリップ防止に利用する。

ウ 肉類のタンパク変性・ドリップ防止に利用する。

エ 機器、食器、容器等の脂肪、タンパクの付着物の剥離洗浄水として利用する。

オ 機械、器具等の電解酸性水による洗浄後の酸化防止水として利用する。

(3) また、電解生成された強アルカリ水の効用については、次のとおり、研究報告や新聞等により紹介されている。

① 平成八年四月一一日付けの日本農業新聞では、東京農業大学の研究グループが、電解生成された強アルカリ水を適度に薄めて使うと、水稲種子の芽生えの成育が促進されることを明らかにしたとの記事が掲載されている(乙第一七号証)。

② 特許庁のインターネットホームページの「産業用洗浄技術」に関する説明中には、株式会社健康産業新聞社発行の「食品と開発」一九九六年七月号を出典とする「電解水の機能と用途」に関する一覧表が掲載され、その中では、電解生成された強アルカリ水に、除菌洗浄効果及び成長促進効果があり、食材の除菌洗浄と鮮度維持、食品加工における調理用水、種苗や植物の発芽・成長促進用散布及び土壌の中和と改良の用途があるものとされている(乙第二六号証)。

③ 業界誌「現代農業」平成六年六月号並びに業界新聞「電解水農業」第三号(平成一一年四月三〇日付け)、第五号(同年七月八日付け)及び第六号(同年八月九日付け)では、電解水を使用した農業を実践する農家やこれを研究するグループからの報告が掲載され、その中では、電解生成された強アルカリ水(強還元水)に、作物の発芽や成長を促進する効果があることを確認したものとされている(乙第二九号証、第三〇号証、第三一号証の一及び二、第三二号証)。

(4) さらに、被告各装置によって生成された強アルカリ水について、次のような実際の使用例が認められる。

① 山形県東根市の農家において、別紙物件目録2記載の装置によって生成された強アルカリ水と強酸性水を混合し、右混合水を希釈したものを、作物の自然治癒力を高めて病気になりにくくすると共に成長を促進させるという目的で、桜桃の灌水に使用している(乙第一一号証)。

② 石川県津幡町の農家において、別紙物件目録2記載の装置によって生成された強アルカリ水と強酸性水を混合したものを、作物の殺菌及び自然治癒力向上の目的で、トマトの灌水及び葉面散布に使用している(乙第一二号証)。

③ 福岡県筑後市の農家において、別紙物件目録2記載の装置によって生成された強アルカリ水を地下水で希釈したものを、そのままあるいはこれで肥料を希釈した上で、作物の自然治癒力を高めて病気になりにくくするという目的で、いちごの灌水に使用している(乙第一四号証)。

(二) 以上のとおり、被告各装置によって生成される強アルカリ水については、被告各装置の一般需要者向け宣伝用パンフレットにおいて、前記(一)(1)記載のとおりの多岐にわたる効用が示されているところ、このうち、とりわけ農業における効用(土壌のPH調整・改良、作物の成長促進・自己免疫力の向上)については、原告装置の一般需要者向け宣伝用パンフレットにおいても、原告装置によって生成される強アルカリ水にほぼ同様の効用があることが示されている事実がある上、前記(一)(3)記載のように、電解生成強アルカリ水に右同様の効果があることが、複数の研究グループ等によって確認され、業界新聞等で報告されているという事実もあるのであり、さらに、被告各装置によって生成された強アルカリ水を現に使用して、農業を営んでいる実例も認められるのである。これらを総合すれば、被告各装置によって電解生成される強アルカリ水は、少なくとも右のような農業における実用的な効用があるものとして一般的に認識されているものと認められ、かつ、被告各装置の需要者においても、そのような効用を期待して被告各装置を購入するものと推認することができるのであり、そうすると、右のような強アルカリ水を生成するという被告各装置の用途は、商業的、経済的にみて実用性のある用途として社会通念上通用し、承認されているものと認めることができる。

(三) 原告は、甲第一一号証及び第一三号証に基づき、電解生成された強アルカリ水に農業における土壌改良等の効果があることは、実験によっても証明されなかったから、被告各装置の強アルカリ水を生成するという用途は、間接侵害の成立を妨げる「他用途」とはいえない旨主張する。しかしながら、被告が主張する被告各装置の「他用途」に商業的、経済的な実用性がないことの立証責任は原告が負うものであるところ、甲第一一号証及び第一三号証によっても、電解生成された強アルカリ水に農業における土壌改良等の効果がないことが証明されているとまではいえないし、また、そもそも間接侵害の成立を妨げる「他用途」に当たるというためには、必ずしも当該用途における効用が科学的に実証されてことを要するものではなく、そのような効用があるものとして社会通念上通用し、承認されていれば足りるというべきであり、被告各装置の強アルカリ水を生成するという用途に関して、これが認められることは前記のとおりである。したがって、原告の右主張は採用できない。

4  以上によれば、被告各装置が本件電解生成殺菌水の生産にのみ使用する物であることを認めることはできず、したがって、これを製造・販売する行為が本件特許権の間接侵害(特許法一〇一条一号)に当たるとはいえないから、原告の本訴請求は、いずれも理由がない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 三村量一 裁判官 長谷川浩二 裁判官 大西勝滋)

<以下省略>

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