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東京地方裁判所 平成11年(ワ)7697号 判決 2001年4月11日

原告

清水和義

被告

太田利治

ほか一名

主文

一  被告太田利治は、原告に対し、金三〇七万九〇〇四円及びこれに対する平成一一年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告東京都個人タクシー交通共済協同組合は、原告の被告太田利治に対する判決が確定したときは、原告に対し、金三〇七万九〇〇四円及びこれに対する平成一一年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを一〇分し、その九を原告の負担とし、その余は被告らの負担とする。

五  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告太田利治(以下「被告太田」という。)は、原告に対し、金二八三五万九〇一三円及びこれに対する平成一一年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告東京都個人タクシー交通共済協同組合(以下「被告組合」という。)は、原告の被告太田に対する判決が確定したときは、原告に対し、金二八三五万九〇一三円及びこれに対する平成一一年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、中央分離帯縁石に衝突した車両を運転していた原告が、同車両に接触した車両の運転者に対して民法七〇九条に基づき損害賠償を請求し、同運転手が共済契約を締結している組合に対しても損害賠償を請求している事案である。

一  争いのない事実

(一)  本件事故の発生

ア 日時 平成一〇年七月一〇日午後一〇時四〇分ころ

イ 場所 東京都品川区中延六丁目九番七号先路上(以下「本件事故現場」ということがある。)

ウ 原告車両 原告が所有し運転する普通乗用自動車

エ 被告車両 被告太田が運転する事業用普通乗用自動車(車両番号品川五五け一四九九)

オ 事故態様 原告車両が中央分離帯縁石に衝突した。

(二)  被告太田は、被告組合の組合員であり、本件事故当時、被告車両につき、被告組合との間で共済契約を締結していた。その交通共済約款によれば、組合員と損害賠償請求権者との間で判決が確定したときは、損害賠償請求権者は、組合に対し、組合が組合員に対して共済責任を負う限度において、損害賠償金の支払を請求することができる。

(三)  損害の填補 二三万四一二〇円(治療費)

二  争点

(一)  本件事故の状況、被告太田の責任及び過失割合

(原告の主張)

ア 原告が、原告車両(全幅一・七一メートル)を運転して片側三車線の国道の第三車線(幅二・九メートル)を時速四〇キロメートルで五反田方面へ走行中、第二車線(幅三・一メートル)を走行していた被告車両が走行車線を一メートルもまたぎ原告車両の横へ衝突した。被告太田が、前方右側方向に十分注意してブレーキを踏んでいれば本件事故は発生していなかったのであり、同被告は、原告の被った損害を賠償する責任がある。

イ 被告太田は、本件事故現場から逃走したが、目撃者が被告車両のナンバーを覚えていたことから同被告を割り出し追及したところ、同被告は、否認したが、被告車両に原告車両の赤い塗料が付着していたことから観念して事故発生の事実を認めた。

(被告らの主張)

原告車両が被告車両と接触し、これが本件事故の誘因となったことは認めるが、この接触は原告車両を中央分離帯に側面激突させるような強度の衝突ではなく、原告車両が被告車両を追い越す際「こすった」状態のものであり、本件事故にとって接触は直接の原因となるものではなく一つの誘因にすぎない。

ア 被告太田は、大田区東駒込一丁目一番三号先交差点において、信号待ちのため第二京浜国道上り車線の第二車線でタクシーに続き停車したが、第一車線にEMタクシー一台が停車していた。前方の信号表示が赤から青に変わったので、前車に追従して進行し時速約四〇キロメートルに加速していたが、約九五メートル進んだ地点で、第一車線を被告車両のやや左前方を進行していたEMタクシーが、道路工事で第一車線の前方の通行が制限されていたためか、突然右折の合図もせず被告車両の前方に割り込むように進入してきた。被告太田は、危険を感じブレーキを踏むとともに、衝突を避けるため右にわずかに転把し、一〇ないし二〇センチメートルほど第三車線へはみ出したが、EMタクシーがスピードを緩めず第二車線に入ったまま進行したので、すぐ被告車両を第二車線に戻しEMタクシーの後を追従した。被告太田は、原告車両と接触した衝撃も感覚もなく、自分が惹起せしめた事故と知りながら逃走したものではない。

イ 実況見分調書によれば、原告車両は中央分離帯縁石に激突後長さ三二・六メートルの右車輪のブレーキ痕を路上に残しており、路面は乾燥し平坦であるのでスリップ痕の長さから進行速度は時速約七九キロメートルと推定されるところ、このスリップ痕は激突の反動で車両のスピードがある程度減速された後の痕跡であることを考慮すると、接触地点での原告車両のスピードは優に時速八〇キロメートルを超えていたものと推測され、原告車両は制限速度六〇キロメートルを遙かに越えた高速度で暴走していたものといえる。同スピードからすれば、原告車両は接触地点手前の交差点で一時停止することなく高速度で進行したものと推測され、原告は、被告車両の右側面を十分通過し得るものと軽信し、漫然八〇キロメートル以上の高速度で進行したため、被告車両の接近に対応しきれず接触を惹起し、ほんのわずかな接触で動揺しハンドル操作を誤ったため本件事故が発生したものと考えられ、相当の過失相殺がされるべきである。

(二)  原告の後遺障害の有無及び程度

(原告の主張)

ア 原告は、本件事故により、首からの痛み、頭痛、視力障害及び調節障害等の傷害を受け、池上総合病院及び池上総合病院附属第二病院の整形外科・眼科・脳神経外科・消化器科に通院し(通院実日数二七日)、小川接骨院に一三日間通院した。

イ 原告は、平成一〇年一〇月一三日、眼科で症状固定となり、両眼の視力が〇・六以下となったものであるから後遺障害別等級表九級一号に該当する。また、両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残しており、一二級一号にも該当するので、併合八級に該当する。さらに、原告は、平成一一年一月五日、整形外科で症状固定となり、鞭打ちによる後遺障害が認められた。

(被告らの主張)

頸椎捻挫については後遺障害が残存しているとはいえない。また、原告が主張する調節機能障害又は運動障害が残存する後遺障害もない。ただ、両眼の視力低下については、等級別表の後遺障害には該当しないが、事故が関与した可能性があり考慮する必要がある。

(三)  損害額

(原告の主張)

<1> 治療費 二三万四一二〇円

<2> 休業損害 三三万〇四〇二円

原告の年収は四五五万一〇〇二円であるから、日収額は一万二四六八円である。

1万2468円×26.5日

<3> 逸失利益 一四九〇万五三九六円

原告の労働能力喪失率は四五パーセント、労働能力喪失期間は九年である。

455万1002円×0.45×7.2782(新ホフマン係数)

<4> 通院慰謝料 八四万円

通院実日数は四〇日であり、二倍の八〇日間を基準として慰謝料を請求する。

<5> 後遺症慰謝料 八五〇万円

<6> 物損 計 三七六万四九七〇円

ア 代車費用及び車両保管費 一九三万四一〇〇円

イ 車両代 一八〇万円

ウ めがね代 三万〇八七〇円

<7> 雑費 計 一万八二四五円

ア 文書料 一万四七〇〇円

イ 写真代 八一五円

ウ 検査料差額 二三〇円

エ 目撃者への謝礼 一六八〇円

オ 犯人探し交通費 八二〇円

(被告らの主張)

<1> は認める。

<2> は否認する。

休業は有給休暇扱いであり、実際の収入減少は生じていないから休業損害は認められない。今回の事故で将来利用できたであろう有給休暇を消費したことは原告にとり不利益であるが、慰謝料で斟酌するのが妥当である。

<3> は否認する。

<4> は否認する。

通院実日数は二二日分しか証拠が提出されていない。

<5> は否認する。

<6> は否認する。

ア 原告車両が全損と評価されたのであれば直ちに廃車すべきであって一七四日間の保管料を請求する合理的根拠はない。また、原告車両はレジャー用の自動車であり一か月程度の代車の必要はないし、メルセデスベンツ一九〇Eという高級車を借り続けていることは相当因果関係の損害に当たらない。

イ 原告車両の時価は二三万円である(乙五の二)。

第三争点に対する判断

一  争点(一)(本件事故の状況、被告太田の責任及び過失相殺)について

(一)  前記争いのない事実並びに証拠(甲一、四、一四、一八、二一、乙一の一ないし四、二及び三の各一・二、証人高橋博、原告本人、被告太田本人の一部)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

ア 原告車両は、南北に通じる第二京浜国道の川崎方面から五反田方面に至る上り車線を走行していたが、進路は直線で二〇〇メートル以上見通せる見通しのよい道路であった。同国道は、車道幅員二一メートル、片側三車線(上り車線の幅員は、第一車線三・五メートル、第二車線三・一メートル、第三車線二・九メートル)で、最高速度は毎時六〇キロメートルに規制されており、本件事故現場から北側は幅員一メートルの中央分離帯により上下線が区別されていた。

イ 被告太田は、本件事故現場より南の大田区東駒込一丁目一番三号先交差点において、信号待ちのため第二京浜国道上り車線の第二車線で停止したが、第三車線には原告車両が、第一車線にはタクシーとその後ろに高橋博運転の原動機付自転車がそれぞれ停止していた。被告太田は、前方の信号表示が赤色から青色に変わったので発進し、約九〇メートル進んだ地点で、第三車線の車両の有無等を確認せず、合図も出さずに右に転把したため、被告車両は第三車線へはみ出し、その右側後部が原告車両の左側前部に接触した。原告は、被告車両が横から寄ってきたのでクラクションを鳴らし右に転把したが、原告車両の右前輪が中央分離帯縁石に乗り上げ、左斜めに約四二・五メートル走行し、第二車線で停止した。

ウ 高橋博は、被告車両が原告車両に寄ったため原告がクラクションを鳴らし、原告車両が火花を上げて縁石に乗り上げたのに、被告車両が走り去ったのを目撃して追跡し、車両ナンバーを控えて事故現場に戻り、警察官に同ナンバーを告げ、原告に対し協力する旨述べた。

エ 原告は、同年七月一一日、荏原警察署から、ナンバーから被告車両が判明したが、被告太田は、本件事故当時本件事故現場を通っていないと供述している旨報告を受け、同被告を訪ねて被告車両を見せてもらい、赤い塗料が付着しているのを見付けて撮影し、同月一二日、警察に写真を提出して捜査を依頼した。被告太田は、同日、荏原警察署から、被告車両が当て逃げしたという目撃通報があったので被告車両を検査したい旨の連絡を受け、警察官が被告車両を検査した。被告太田は、同月一四日、警察署からの連絡を受けて被告車両を持って出頭したところ、後部バンパー右側面上に約一センチメートル四方の薄い赤色塗料が付着しているのが発見された。

オ 原告は、同月一四日、実況見分に立ち会ったが、中央分離帯縁石角には黒色ゴム様のものが擦過付着しており、同地点から左斜め五反田方向に向けて長さ三二・六メートルの右後輪のブレーキ痕及び長さ八・二メートルの左後輪のブレーキ痕が生じていた。被告太田は、同月三〇日、実況見分に立ち会い、第一車線を走行していたEMタクシーが第二車線に入ってきたので右に転把した旨述べたが、その後、不起訴処分となった。

(二)  以上の認定事実に基づき、被告太田の責任及び過失相殺について検討するに、同被告は、右に進路を変更するに当たり、進路変更の合図をした上、右側の並進又は後続車両の有無及びその安全を確認すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然と右に転把して第三車線内に進出した過失により、被告車両を原告車両に接触させ、これにより原告車両を中央分離帯に衝突させたものであるから、同被告は、民法七〇九条に基づく損害賠償責任を負うものといわなければならない。他方、前記認定の右後輪のブレーキ痕の長さからみると、原告車両は、本件事故現場において時速七六キロメートル以上に加速していたとも推認し得るから、原告も、高速度で進行し、また、安全を確認しつつ進行すべき注意義務があるのにこれを怠った過失により、被告車両と接触し、急制動して右転把するも及ばず中央分離帯に衝突したものというべきであって、双方の過失の態様を対比すると、その割合は、原告が二割、被告太田が八割であるとみるのが相当である。

二  争点(二)(後遺障害の有無及び程度)について

(一)  証拠(甲二ないし四、一六、一七、二〇の一・二、二二、二三、二五の一ないし一二、乙八、一一の一、原告本人、調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば、原告(昭和四五年一〇月二八日生。事故時二七歳)は、平成一〇年七月一三日、池上総合病院(平成一〇年一〇月八日休止となり、同月九日以降は附属第二病院となった。)脳神経外科及び整形外科に通院し、平成一一年一月五日、整形外科で症状固定と診断されたが(通院実日数一七日)、後遺障害診断書には、傷病名「頸椎捻挫」、自覚症状「後頸部痛、上肢のしびれ感及び脱力感」、他覚症状等「X―P上骨傷はなし 明らかな神経学的所見なし」、「今後時間がたてば軽快していく見込みあり」と記載されていること、平成一〇年八月一四日から同年一〇月一三日まで同病院眼科に通院し(通院実日数五日)、同日症状固定と診断されたこと、後遺障害診断書の傷病名は「調節障害」と記載され、眼球等の障害の「視力」の欄には、裸眼右〇・一左〇・三、矯正右一・〇左〇・九と記載されているものの、「調節機能」の欄は記載されておらず、また「前眼部、中間透光体眼底異常なし」「点眼治療により平成一〇年一〇月一三日右〇・四(一・二)左〇・六(一・二)視力も安定してきたため中止とした。裸眼視力の変化からも事故が関与した可能性が充分考えられる」と記載されていること、原告は、同年九月五日、職場の健康診断で薬剤性肝障害を指摘され、同年一〇月一三日から同病院消化器科にも通院したこと、同年一一月一四日から同年一二月二二日まで、小川接骨院に通院したこと(通院実日数一三日)、原告は、後遺障害認定手続をしたが、平成一二年一月、頸椎捻挫に伴う自訴の症状は、症状の発症、将来の残存性を医学的に証明、説明することは困難であり、また、障害等級にいう視力とは矯正視力をいうが、原告の矯正視力は右眼一・〇、左眼〇・九であり自賠責保険の基準に至らないことを理由として、いずれも後遺障害別等級表の後遺障害には該当しないと判断されたこと、原告の本件事故前の視力(裸眼)は、平成七年九月右眼一・〇、左眼一・二、平成九年九月両眼〇・九であったことが認められる。

(二)  そこで、前記各診断書の記載内容及び治療経過等に基づき、原告の後遺障害の有無について検討するに、まず、頸椎捻挫については、他覚的所見はなく、神経症状を医学的に証明し得るとはいえないし、医学的に説明可能な神経系統又は精神の障害を残すものとも認められない。次に、視力障害については、後遺障害別等級表に定められている視力は矯正視力をいうところ、原告の矯正視力は右眼一・〇、左眼〇・九であるから九級一号には該当しないし、また、調節機能障害についても、一二級一号にいう「著しい調節機能障害」とは調節力が通常の場合の二分の一以下に減じたものをいい、二〇代の原告の場合は調節力が四ジオプトリ以下であればこれに該当するが、前記のとおり後遺障害診断書には調節機能についての記載がなく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。しかし、原告の裸眼視力は、本件事故前には両眼〇・九以上であったが、本件事故後右眼〇・一、左眼〇・三となったこと、後遺障害診断書に「裸眼視力の変化からも事故が関与した可能性が充分考えられる」と記載されていることは前記認定のとおりであり、視力の低下が本件事故によって生じたことを否定することはできないというべきである。ただ、前記認定の矯正視力の程度からすれば、裸眼視力の低下により原告の労働能力が一部失われたものとみることはできず、裸眼視力の低下は慰謝料の算定に当たり考慮するのが相当である。

三  争点(三)(損害額)について

<1>  治療費(当事者間に争いがない。) 二三万四一二〇円

<2>  休業損害 二四万九三六九円

証拠(甲七、八、二五の一ないし一二、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、東都生活協同組合に勤務し、平成九年分の年収は四五五万一〇〇二円であったこと、平成一〇年七月一〇日から平成一一年一一月三〇日まで有給休暇二六・五日につき給与が全額支払われたこと、平成一〇年七月一三日から平成一一年一月五日まで、池上総合病院及び附属第二病院に通院したのは二〇日であること(甲二五の一ないし一二の通院日の合計は二四日であるが、二科に通院している日が四日ある。)が認められるが、本来別の用途にあてることのできた有給休暇を使用したため収入の減額を免れたものとみることができるから、通院日数に相当する収入額は休業損害として評価するのが相当である。

455万1002円÷365日×20日=24万9369円(円未満切捨て)

<3>  逸失利益

前記のとおり、原告は本件事故により労働能力を一部喪失したものとは認められず、逸失利益は認められない。

<4>  通院慰謝料 八四万円

原告の傷害の部位、程度、通院期間、治療経過、被告太田が本件事故後逃走したことなど諸般の事情を総合すると上記金額が相当である。

<5>  後遺症慰謝料 七〇万円

前記のとおり、原告は、本件事故により裸眼視力が低下し、矯正を要するに至ったことが認められ、これを慰謝するには上記金額が相当である。

<6>  物損 計 二〇九万九六七〇円

ア 代車費用及び車両保管費 二六万八八〇〇円

原告は、平成一〇年七月一一日から同年一二月三一日までの車両保管費用及び同年八月二二日から同年一二月三一日までの代車費用を請求している(甲六)が、証拠(甲五、六)及び弁論の全趣旨によれば、原告車両の損害調査を株式会社穂積が受け付けたのが同年七月二一日であり、全損である旨の報告書が被告組合宛てに提出されたのが同年八月二四日であることが認められ、全損であることが判明してから一週間程度で廃車及び買替えが可能であるものとみて、同年八月三一日までの車両保管費用(一六万三八〇〇円)及び代車費用(一〇万五〇〇〇円)を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。

イ 車両代 一八〇万円

証拠(甲五、乙四の一ないし七、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告車両の修理費は一八七万二七六〇円、時価額は一八〇万円で、経済的全損であることが認められる。被告らは、乙五の二を根拠として原告車両の時価は二三万円である旨主張するが、被告ら指摘の乙五の二記載の金額は二三万円ではなく二三〇万円であり、被告らの主張は採用することはできない。

ウ めがね代 三万〇八七〇円

証拠(甲九、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故後視力が低下し、平成一〇年一一月二八日、めがねを購入したことが認められ、これは本件事故と因果関係のある損害である。

<7>  雑費 計 一万八二四五円

ア 文書料 一万四七〇〇円

証拠(甲一三の二ないし四)及び弁論の全趣旨により認められる。

イ 写真代 八一五円

証拠(甲一一、原告本人)及び弁論の全趣旨により認められる。

ウ 検査料差額 二三〇円

証拠(甲一三の一)及び弁論の全趣旨により認められる。

エ 目撃者への謝礼 一六八〇円

証拠(甲一〇)及び弁論の全趣旨により認められる。

オ 犯人探し交通費 八二〇円

証拠(甲一二)及び弁論の全趣旨により認められる。

<8>  合計 四一四万一四〇四円

四  過失相殺

前記の過失割合に従って原告の損害額から二割を減額すると、三三一万三一二四円となる。

五  損害の填補

既払金が二三万四一二〇円であることは当事者間に争いがないから、これを控除すると、被告太田が原告に賠償すべき損害額は三〇七万九〇〇四円となる。

第四結論

以上によれば、原告の被告太田に対する請求は、三〇七万九〇〇四円及びこれに対する不法行為の日の後である平成一一年四月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があり、被告組合に対する請求は、被告太田に対する判決が確定したときは、同額の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却する。

(裁判官 鈴木順子)

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