大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成12年(ワ)16971号 判決

原告 巣鴨信用金庫

右代表者代表理事 田村和久

右訴訟代理人弁護士 佐藤米生

同 丹羽健介

同 高畑満

同 神戸和子

同 岡野和弘

被告 堤季治

主文

一  被告は原告に対し一一四〇万円を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

一  原告は、「被告は、原告に対し、一一四〇万円及びこれに対する平成一二年八月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。」との判決を求め、請求原因として、次のとおり述べた。

1  原告は、秋元幸枝(以下「秋元」という。)を債務者兼所有者、被告を第三債務者、秋元が被告に対し別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)につき有する賃料債権にして差押命令正本の送達の日以降支払期が到来する分から一億五〇〇〇万円に満つるまでを被差押債権(以下「本件賃料債権」という。)として、債権差押命令を申し立て(当庁平成九年(ナ)第六九六号事件)。同事件において、平成九年六月六日付けで債権差押命令(以下「本件差押命令」という。)が発付された。

2  本件差押命令の正本は、同月七日、被告に、同月一二日、秋元にそれぞれ送達された。

3  被告は、同月七日より前に、毎月末日限り翌月分の賃料(月額三〇万円)を支払う旨定めて、秋元から本件建物を借り受けた。本件賃料債権のうち平成九年七月分から平成一二年八月分まで(三八か月間)の合計額は一一四〇万円である。

4  よって、原告は、被告に対し、本件差押命令による取立権に基づき、一一四〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成一二年八月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  被告は、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないから、右請求原因事実を明らかに争わないものと認める。

三  原告は、右一のとおり、被差押債権である本件賃料債権の遅延損害金も取立の対象として、これを請求するので、右遅延損害金が本件差押命令の対象に含まれるかどうかについて検討すると、確かに、本件賃料債権の元本と右遅延損害金債権の間には前者を主たる権利、後者を従たる権利とする関係があるけれども、本件賃料債権は民事執行法一九三条、一五一条の継続的給付に係る債権に該当するところ、継続的給付に係る債権の差押の場合、時間の経過とともに額の変動する遅延損害金債権について、従たる権利として差押の効力が及ぶとすると、差押の限度額が被差押債権の元本と遅延損害金の合計額について存在することから、右合計額が差押の限度額に達した後は、時間の経過とともに被差押債権が入れ替わることになり、このように差押の範囲が浮動的になると、本来差押命令の債権者と債務者との権利関係の局外にある第三債務者にその入れ替わりを正確に認識するための加重な負担を課すことになり、第三債務者その他の利害関係人に不測の不利益を及ぼすおそれがあり、法的安全性を損なうのであって、このような事態の発生を避けるためには、継続的給付に係る債権の差押の場合、遅延損害金は差押の対象とならないと解するのが相当であるから、本件差押命令においても、その差押の対象は本件賃料債権の元本に限られ、その遅延損害金は含まれないというべきである。

四  よって、主文のとおり、判決する。

(裁判官 中川正充)

物件目録

(一棟の建物の表示)

所在 豊島区長崎四丁目三三番地一二、三三番地一四、三三番地一九、三三番地二〇、三三番地一五、三三番地三〇

建物の番号  マイフアリエ十字街

(専有部分の建物の表示)

家屋番号 長崎四丁目三三番一二の一

建物の番号  A

種類 店舗

構造 鉄筋コンクリート造二階建

床面積 地下一階部分 二〇九・六三平方メートル

一階部分 〇・六六平方メートル

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!