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東京地方裁判所 平成12年(ワ)19645号 判決 2001年12月20日

主文

1  甲野太郎(本籍・東京都練馬区羽沢<番地略>。平成一〇年三月二一日死亡)が作成した別紙遺言目録1記載を内容とする平成元年八月二三日付け自筆証書遺言は無効であることを確認する。

2  訴訟費用は被告人の負担とし、補助参加費用は補助参加人の負担とする。

事実及び理由

第1  請求

主文同旨

第2  事案の概要

本件は、甲野太郎(以下「太郎」という。)の相続人である原告らが、太郎の後記各遺言の遺言執行者である被告に対し、太郎が作成した平成元年八月二三日付け自筆証書遺言(以下「第一遺言という。」と太郎が作成した平成六年二月二七日付け自筆証書遺言(以下「第二遺言」という。)とは抵触するから、第一遺言は、第二遺言によって取り消されたものとみなされるとして、第一遺言の無効確認を求めるものである。

1  争いのない事実等

(1)  当事者等

ア(ア) 太郎は、平成一〇年三月二一日、死亡した。

(イ) 原告乙野春子(以下「原告春子」という。)は太郎の長女、原告丙野夏子(以下「原告夏子」という。)は太郎の次女であり、原告丁野秋子(以下「原告秋子」という。)は太郎の婚姻外の子である。また、補助参加人は、太郎の二男である。

なお、太郎の相続人は、原告ら三名及び補助参加人のほか、太郎の配偶者である甲野冬子(以下「冬子」という。)、並びに太郎の長男である甲野三郎(以下「三郎」という。)の合計六名である。(以上、甲1及び2)

イ 被告は、第一遺言及び第二遺言の各遺言の遺言執行者である(甲5)。

(2)  遺言について

ア 第一遺言

太郎が作成した平成元年八月二三日付け自筆証書遺言の内容は、別紙遺言目録1記載のとおりである(甲3の1)。

イ 第二遺言

太郎が作成した平成六年二月二七日付け自筆証書遺言の内容は、別紙遺言目録2のとおりである(甲4の1)。

ウ 検認について

第一遺言及び第二遺言は、いずれも平成一〇年六月二三日、東京家庭裁判所において検認されている(平成一〇年(家)第四六四六号・同四六四七号。甲3の2、4の2)。

2  争点

第一遺言と第二遺言とは抵触するか否か。

(原告の主張)

以下のとおり、第二遺言の文言、趣旨及び背景のいずれをもってしても、第二遺言は、第一遺言を変更したものであり、第一遺言と抵触する。

(1)ア 第二遺言は、書籍、ビデオ等を除く財産について、冬子の生活を保障するために、任意売却及び遺産の分割を禁止し、冬子が死亡した後、太郎の子らの間で法定相続分に従い相続せよという内容である。

イ 仮に、第一遺言のとおり、冬子が全財産を単独相続するのであれば、冬子は自由に財産を使用・処分できるはずであるから、あえて第二遺言で「冬子の切なる願望により、土地、家屋その他一切の現状を維持し」などと記載する必要はない。このような記載がなされたのは、土地・家屋を子らに相続させることによって冬子が追い出されることがないようにするためにほかならない。

ウ また、第二遺言の後段に記載された書籍等に関する遺言は、まさしく相続人の間で相談して分けるようにという内容であり、第一遺言の内容と明らかに抵触している。

エ さらに、仮に第一遺言が有効であるとするなら、原告秋子が太郎の財産を相続する余地はなくなる。すなわち、秋子は冬子の相続人ではなく、また、冬子が秋子に対し相続財産を与えるという保証は全くない。むしろ、いったん冬子が相続してしまえば、秋子に財産が行かないということを、太郎は理解していたはずである。

(2) 太郎が第一遺言を破棄し、第二遺言を作成したことには十分な背景がある。

ア すなわち、冬子は平成五年五月一三日、急性膵炎により緊急入院し、以後、冬子の健康は常に不安定な状態にあった。また、精神的にも安定せず、入院以降、冬子は家事をほとんどやらず、大部分は太郎が食事の世話をしていた。

したがって、太郎より先に冬子が死亡する可能性は十分あり、仮に太郎より長く生きたとしても、わずかな期間であると太郎は思っていた。また、冬子に財産を管理するだけの能力がないことを危惧していた。上記のような事情(背景)があったため、冬子は家屋に住めれば十分であると判断したのである。これは、第二遺言の冒頭の文章からも十分うかがわれる。

イ 冬子は常に原告秋子の存在を疎ましく思っており、他方、太郎は原告秋子のことが負い目となって、常に冬子の機嫌を損ねないよう我慢していたが、平成五年に急性膵炎で入院する前後から、冬子に痴呆症が出始め、太郎が冬子の生活の面倒もみるようになったことから、太郎は、冬子から精神的に解放された。太郎は、冬子について、財産を渡さなくても実家で生活できれば十分であると考えるに至った一方、永年冬子を気にしながら遠慮していた原告秋子を、他の兄弟姉妹と平等に扱ってやりたいという意思から遺言を書き直したのである。

第二遺言はまさしく、痴呆が進みつつある冬子をいたわりつつ、原告秋子を含む子らに対し、直接かつ平等に相続させるという内容にほかならない。

(被告人の主張)

第二遺言によって第一遺言が撤回されたものではなく、第一遺言は有効である。

(1) 第二遺言は第一遺言と矛盾するものではなく、第一遺言を前提に、包括受遺者冬子死亡後の遺言者の希望を述べたものである。したがって、第一遺言と第二遺言とは抵触しない。

(2) 第二遺言作成の平成六年当時、遺言者と冬子との夫婦関係においては、第一遺言を撤回するような事情も見あたらない。逆に、遺言者と冬子との関係は、第二遺言作成の前後も、夫婦円満であり、かつ、いたわり合う状況にあった。

したがって、第二遺言は、第一遺言を排斥、撤回するために作成されたのではない。かえって、遺言者は、妻冬子の将来を心配して、他の相続人らが冬子に不当に干渉しないようにし、その上で、包括受遺者冬子死亡後の希望を冬子以外の相続人に伝えようとしたものと解釈できる。

第3  争点に対する判断

1  前記争いのない事実等のほか、証拠(甲1、2、9、乙1ないし20《枝番を含む。》、丙1ないし7)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。

(1)  原告秋子と太郎及び冬子の関係等

ア 原告秋子は、昭和九年五月二一日、太郎と甲山花子(以下「甲山」という。)との間に生まれたが、東京都練馬区にある太郎の実家に引き取られ、太郎の母である甲野南子(以下「南子」という。)のもとで育てられることとなった。

イ 太郎は、昭和一五年初めころまで、実家で南子及び原告秋子と同居していたが、同年六月二九日に冬子と結婚するにあたり、実家を離れ愛知県で暮らすこととなった。この際、原告秋子は南子のもとに残された。

ウ その後、南子が死亡し、原告秋子は、太郎と冬子のもとに引き取られたが、冬子が余り好意的な態度を示さなかったこともあり、まもなく、太郎は、原告秋子を実母である甲山に引き取ってもらうことにした。

しかし、甲山は原告秋子を育てられなかったため、ほどなく、原告秋子は、また太郎らのもとに戻された。

だが、その後の原告秋子と太郎らとの同居も、そう長くは続かず、原告秋子は、やがて一人で暮らすようになった。昭和二四年に出生した補助参加人が物心ついたころには、既に原告秋子は一人暮らしをしている状況にあったものである。

エ 原告秋子は、一人暮らしをしつつも、時々、太郎と会っていたが、冬子との折り合いが悪かったため、太郎とは外で会うなどし、できる限り太郎の住居を訪れないようにしていた。(以上、甲1、2、9、丙1ないし3、5)。

(2)  冬子の入院及びその後の太郎と冬子の関係

ア 冬子は、平成五年、急性膵炎により入院し、そのころから冬子には痴呆のきざしが見受けられるようになった。

そのこともあって、平成六年ころには、太郎は、冬子が自分より早く他界するのではないか、仮に自分よりも長生きしたとしても、そう長い間ではないのではないかと考えるようになった。

イ ただし、太郎と冬子は、平成六年ころも共に旅行に出かけたりしており、特にこのころ、両者の仲が悪くなったというような事情は見受けられない。(以上、甲9、丙1ないし3、7)

(3)  太郎の財産等について

太郎は、新聞社に勤務した後、大学の教員等を勤めていた。資産としては、自宅の土地建物のほか、預貯金等があった。自宅には太郎と冬子が居住していた(以上、丙4、5、7)。

(4)  冬子の財産等について

冬子は、現在、自己名義の預金約一二〇〇万円を持っているし、また、年金も至急されている(甲9、弁論の全趣旨)。

2  民法一〇二三条一項によると、第一遺言と第二遺言とが抵触するときには、抵触する部分につき、第二遺言で第一遺言を取り消したものとみなされるから、第一遺言と第二遺言との抵触の有無につき、以下、前記認定事実に基づいて、判断する。

(1)  遺言の解釈は、遺言書に記載された文言をどう解するかの問題である(その意味で、遺言書を離れて遺言者の真意を探求するということは許されない。)が、その解釈に当たっては、単に個々の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言書の記載全体に照らして遺言者の真意を探求すべきものである。そして、遺言書の文言が必ずしも明確でない場合には遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況なども考慮して遺言者の真意を探求し、その趣旨を確定すべきものである(最高裁判所昭和五五年(オ)第九七三号同五八年三月一八日第二小法廷判決・裁判集民事第一三八号二七七頁参照)。そこで、まず、本件各遺言の文言からどういう解釈が導き出せるかを本件各遺言の記載全体に照らして検討し、次にそこで得られた解釈が本件各遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況等と適合するか等を検討することとする。

ア 第一遺言について

まず、第一遺言は、その法的性質を包括遺贈とみるか相続分の指定と捉えるかという問題はあるが、その趣旨が、相続財産についてはすべて冬子に取得させるというものであることは疑いない。

イ 第二遺言について

(ア) 文の構成

これに対し、第二遺言は、二つの文から構成されている。そのうち第一文は、太郎の死亡後、冬子が存命中は、土地、家屋その他一切の現状を維持するという部分(以下「前段部分」という。)と、冬子死亡後は、土地、家屋その他を処分して換金し、子供らに与えるという部分(以下「後段部分」という。)とから成り、他方、第二文では、書籍、ビデオ等について、相続人間の相談による取得を認めることが示されている。

(イ) 文理解釈

A 第一文

(A) 第一文の文言では、前段部分に比して後段部分の方がその趣旨がより明確であるから、これをまず検討するに、後段部分の文言の趣旨は、①冬子死亡後、太郎の相続財産を換金すること、②換金して得た金員は、太郎の子全員の間で分ける、分ける割合は、嫡出子である三郎、原告春子、原告夏子及び補助参加人が各二、非嫡出子である原告秋子が一の各割合とするというものである。

(B) そして、上記の後段部分の趣旨を考慮しつつ、前段部分の文言を検討すると、「住み慣れた家から離れたくないとの冬子本人の切なる願望により」「現状を維持し」という文言は、後段により太郎の財産を取得することとされている太郎の子らに、冬子の願いに基づき、冬子の存命中は、相続財産を分割しないで冬子が自宅の土地建物にそのまま居住できるようにすることを求める趣旨であると解される(「冬子本人の切なる願望により」「現状維持」せよとしていることからみて、冬子に対して現状維持せよと命じているのではないことが明らかである。)。

(C) このように、太郎の子らに対し、冬子生存中は相続財産の分割をしないように求めているということは、太郎の子らが冬子生存中も相続財産を分割できる立場にあるということを示すものであり、これと前記後段の文言とを総合すると、第二遺言は、太郎の子らが相続財産を直接取得すること(すなわち、冬子は相続財産を取得しない。)をその趣旨としているものと理解するのが相当である(仮に冬子が取得して冬子の財産になるとすると、「冬子本人の切なる願望により」、子らに対し、「現状を維持」せよと命じるのは奇妙である。)。そうすると、第一文の文言の趣旨は、「太郎の相続財産は、太郎の子らが指定された割合で直接相続取得するが、冬子存命中は、それを分割せずそのまま冬子が居住して使用するにまかせ、冬子死亡後これを換価して子らが金銭の形で分割取得する」ことであると解するのが妥当ということになる。

B 第二文

他方、第二文の文言は、相続財産のうち書籍、ビデオ等の一定の範囲の物件(以下「太郎のコレクション」という。)については、相続人間の相談により、欲しいと思う者が取得してよいというものであって、上記の第一文の後段部分の例外としての意味を有するものであると解される。すなわち、太郎のコレクションについても、太郎の子らが相続取得するのであるが、指定した割合で、かつ、換価して金銭により分割するという方法を採ることなく、欲しいと思う相続人が全部現物で取得することを認めたものであると解される(太郎としては、自分が長年収集したコレクションだけは形見として現物で残したいという思いがあり、それでこのような記載になったものと考えられる。)。

(ウ) 太郎の置かれていた状況等との適合性

次に、上記のような解釈が第二遺言の作成された平成六年当時の事情や太郎の置かれていた状況等と適合するかを検討する。この点については、以下の点を指摘することができる。すなわち、①平成五年の冬子の入院をきっかけとして、太郎は、冬子が自分より早く他界するかそうでないとしても冬子がそんなに長くは生きないのでないかと考えるようになった(前記1(2)ア)。②冬子には痴呆の症状が出始めていた(前記1(2)ア)。そして、③太郎は、それまで冬子に対して原告秋子のことでは遠慮があった(前記1(1))が、冬子が入院し、また、同人に痴呆の症状が出るなど状況が変化したこと(前記1(2)ア)で、太郎の冬子に対する遠慮が薄れることが十分考えられる。また、④親である太郎としては、原告秋子にも、他の子と同様、相続財産を残してやりたいと考えるのが普通である。

以上のような点を考慮すると、太郎が、そう長生きしないかもしれず、また、痴呆の状況が出始めて財産管理の面等において心許なくなっている冬子には財産を相続させず、冬子が相続すれば太郎の財産を取得できなくなるおそれが高い原告秋子を含めた子ら全員に直接財産を相続させることにし、ただ冬子の存命中は、冬子が住み慣れた自宅にそのまま居住できるように、相続財産を取得する子らにはその分割処分を禁ずるということを考えたとしても、それは不自然でないというべきである(冬子に財産を取得させなかったとしても、同人は、多額の預金を所持していることや年金を支給されること《前記1(4)》から、自宅にそのまま居住できるならば、十分生活できるものと推認されるのであり、冬子の生活の維持という面からも、太郎が上記のような趣旨の遺言をすることが不自然、不合理とは必ずしもいえない。)。

(エ) 被告の主張について

A これに対し、被告及び補助参加人は、第二遺言の趣旨は第一遺言を前提に、太郎の単なる希望を述べたものにすぎない旨主張する。

確かに第一遺言と第二遺言が内容的に矛盾しないように第二遺言の趣旨を理解しようとするとの、第二遺言の第一文の後段部分の「土地、家屋その他を処分して金に換え」子らに指定の割合で「与える」という部分は、①冬子が自分の死後太郎の指定どおり子らに相続財産を与えてほしいという単なる希望を述べたものにすぎないと読むか、②第一遺言を前提に、冬子の死亡時に同人が太郎から取得した財産を子らに移転するという債務を冬子に負わせたと読むということが考えられる。

B しかしながら、①と解することは、まず、第一文の後段部分の「与える」という文言と適合しない(「与える」主体を冬子と読むことは困難であるし、「与える」という明確な文言を「与えることを望む。」などとあいまいなものに読み替えることも困難である)。また、①と解すると、第一文の前段部分の「現状を維持し」の解釈も困難となる。すなわちこれを太郎が冬子に対して現状維持を命ずる趣旨と解することは、その直前の「冬子本人の切なる願望により」という表現と適合しない(前記(イ)A(B))から、前段部分は、冬子の取得した財産を子らのうちのだれかが冬子の意思を無視して勝手に処分しないよう求める趣旨と解するよりほかないことになるが、その解釈も、直前の「冬子本人の切なる願望により」という表現と適合しないというべきである(冬子の財産になるのに、冬子の切なる願望により、当該財産につき何らの権利を有しない外の者がこれを処分しないように求めるというのは奇妙である。冬子の財産になるが、子らのうちのだれかが冬子の意思に従わず勝手に処分するおそれがあるのでそれを防ごうという趣旨なら、子らは所有者たる冬子の意思を尊重せよといえば足り、「冬子本人の切なる願望」などと表現する必要はない。)。しかも、本件全証拠によるも、第二遺言当時、太郎が、自分の死後、所有者たる冬子の意思を無視して勝手に財産を処分するおそれのある子がいることを危惧していたという事情もうかがわれないのである(なお、丙7によると、補助参加人は、いったん太郎や冬子と仲違いしたが、平成五年ころには、両者の関係は修復されていたことが認められる。)。したがって、①と解することは、困難というべきである。

また、②のように解することも、①の場合と同様に、(ア)第一文の後段部分の「与える」の主語は太郎であることが明確であり、「冬子が与える」とか「冬子をして与えさせる」などと読むことは困難であるということ、(イ)「冬子本人の切なる願望により、土地、家屋その他一切の現状を維持し」という第一文の前段部分の趣旨が理解できなくなること(負担付きにせよ冬子の財産になるのに、「冬子本人の切なる願望により、土地、家屋その他一切の現状を維持」しろというのは奇妙である。このような負担付きの場合は、むしろ、将来子らに財産が行くように、冬子に対して財産の現状維持を命ずるのが自然なはずである。)からみて困難である。

C 確かに、第一遺言のなされた平成元年当時と第二遺言のなされた平成六年当時とを比較して、特に太郎と冬子の関係が悪化したという事実は認められない(前記1(2)イ)が、前記(ウ)のとおり、第一遺言が作成された後、第二遺言が作成されるまでの間に、明らかに太郎の置かれた状況は変化しているから、太郎が、第一遺言の内容と矛盾し、両立し得ない内容の第二遺言を作成するということも十分あり得るところというべきであり、被告らの主張は、結局、採用できないというべきである。

(2)  以上によると、第一遺言が相続財産のすべてを冬子に取得させることをその趣旨としているのに対し、第二遺言は、冬子でなく、太郎の子らに直接相続財産を取得させることをその趣旨としており、冬子は相続財産を取得しないことになっているのであるから、第二遺言は第一遺言とは内容的に矛盾し、両立できないもので、両者が抵触することは明らかといわなければならない

第4  結論

以上のとおりであるから、第一遺言は第二遺言によって取り消されたものとみなされるというべきであり、原告の請求には理由があるから、主文のとおり判決する。

別紙 遺言目録1

遺言書

私が死亡したる後は、全財産を妻冬子に譲る

右の通り遺言する

遺言人        甲野太郎 印

平成元年八年二三日

別紙 遺言目録2

遺言書

私が死亡したのち、妻冬子がまだ存命中は、住み慣れた家から離れたくないとの冬子本人の切なる願望により、土地、家屋その他一切現状を維持し、もし冬子も死去したのちは、土地、家屋その他を処分して金に換え、全額の四分の一づつを甲野三郎、乙野春子、丙野夏子、甲野次郎、さらに全額の八分の一を丁野秋子に与える。

なお私が長年にわたって蒐集してきた書籍、ビデオ、CD、レコード、人形、瀬戸物等は、相続人のなかで特に欲しいと思う者が他の相続人と相談の上譲り受けても構わない。

平成六年二月二七日

甲野太郎 印

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