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東京地方裁判所 平成12年(ワ)21185号 判決 2001年12月20日

原告

柳村タツノ

ほか五名

被告

三井住友海上火災保険株式会社

ほか一名

主文

一  被告山﨑亮志は、原告柳村タツノに対し一二八一万八四七六円、原告中島兼光に対し一二八一万八四七六円、原告前川仁に対し三二一万七一一九円、原告前川勇に対し三二一万七一一九円、原告河村和子に対し三二一万七一一九円、原告佐藤文子に対し三二一万七一一九円、及びこれらに対する平成一一年五月二一日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告三井住友海上火災保険株式会社は、原告柳村タツノに対し一〇〇〇万円、原告中島兼光に対し一〇〇〇万円、原告前川仁に対し二五〇万円、原告前川勇に対し二五〇万円、原告河村和子に対し二五〇万円、原告佐藤文子に対し二五〇万円、及びこれらに対する平成一二年二月一七日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、原告らに生じた費用の二分の一と被告山﨑亮志に生じた費用の六分の五を被告山﨑亮志の負担とし、原告らに生じた費用の五分の二と被告三井住友海上火災保険株式会社に生じた費用の全部を被告三井住友海上火災保険株式会社の負担とし、原告らに生じた費用の一〇分の一と被告山﨑亮志に生じた費用の六分の一を原告らの負担とする。

五  この判決は、原告らの勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告山﨑亮志は、原告柳村タツノに対し一五一八万五九一三円、原告中島兼光に対し一五一八万五九一三円、原告前川仁に対し三七九万六四七八円、原告前川勇に対し三七九万六四七八円、原告河村和子に対し三七九万六四七八円、原告佐藤文子に対し三七九万六四七八円、及びこれらに対する平成一一年五月二一日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告三井住友海上火災保険株式会社は、原告柳村タツノに対し一〇〇〇万円、原告中島兼光に対し一〇〇〇万円、原告前川仁に対し二五〇万円、原告前川勇に対し二五〇万円、原告河村和子に対し二五〇万円、原告佐藤文子に対し二五〇万円、及びこれらに対する本訴状送達の日の翌日である平成一二年二月一七日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、訴外亡中島忠雄(以下「亡忠雄」という。)が自転車に乗車中、被告山﨑亮志(以下「被告山﨑」という。)が運転する普通乗用自動車(以下「加害車両」という。)に追突され死亡した交通事故につき、亡忠雄の相続人である原告らが、加害車両の運行供用者である被告山﨑に対しては、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づき、被告三井住友海上火災保険株式会社(以下「被告三井住友」という。)に対しては、加害車両を被保険自動車とする自動車損害賠償責任保険契約(以下「自賠責保険契約」という。)を締結していたとして自賠法一六条一項に基づき、それぞれ損害賠償を請求した事案である(被告三井住友に対する請求は保険金額の三〇〇〇万円の限度である。)。

一  争いのない事実

(一)  事故の発生

次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(1) 日時 平成一一年五月二一日午前一時四五分ころ

(2) 場所 兵庫県赤穂市中広一〇九六番地の三

(3) 加害車両 被告山﨑が所有し、運転する普通乗用自動車(京都三四そ九六三一)

(4) 被害者 自転車(以下「被害自転車」という。)で走行中の亡忠雄

(5) 事故態様 亡忠雄の乗っていた被害自転車に、後方から進行してきた被告山﨑運転の加害車両が追突した。

(6) 結果 亡忠雄は、本件事故により頭蓋骨骨折の傷害を受け、事故当日死亡した。

(二)  自賠責保険契約の締結

被告三井住友は、加害車両を被保険自動車とする自賠責保険契約を締結し、その保険期間内に本件事故が発生した。

(三)  相続

亡忠雄の相続人は、亡忠雄の姉である原告柳村、亡忠雄の兄である亡中島兼初の子である原告中島兼光(以下「原告中島」という。)及び亡忠雄の姉である亡前川カツエの子である原告前川仁、同前川勇、同河村和子及び同佐藤文子であり、その相続分は、原告柳村及び原告中島が各三分の一であり、その余の原告らは各一二分の一である。

二  争点

(一)  被告山﨑の責任の有無及び過失相殺

(被告らの主張)

(1) 本件事故現場は、幅員約七m(車道部分が五・八mで両側に約六〇cmの路側帯があり、さらにその両側に歩道がある。)の県道上であるが、事故当時現場付近の街灯が二基消えており、非常に暗い状態であった。亡忠雄は、自転車を押して歩道を歩いていたが、事故現場直前で自転車に乗って、相当酔った状態で車道に進出したもので、被害自転車が無灯火であったこと、亡忠雄が黒っぽい服を着用していたこと等から、被告山﨑からみて被害自転車は極めて発見しにくい状態であった。

(2) 加害車両の照射距離は下向きで二七・六mないし二九・二mであるところ、被告山﨑が立ち会った再現実験の結果によると、交通事故現場において加害車両を低速度で走行させた場合、自転車と認められるのは自転車よりも一九m手前で、自転車に人が乗っていると認められるのは自転車よりも一四・四m手前である。時速四〇kmで走行中の動体視力の問題や、前述のように被害自転車が歩道から衝突地点寸前で車道に出てきたものであることを考慮すると、被告山﨑として被害自転車を発見する可能性はさらに低くなる。

(3) 以上によれば、被告山﨑には、本件事故について過失がないか、仮にあったとしてもせいぜい三割程度である。

(原告らの反論)

(1) 本件事故時の状況を前提にしても、加害車両からの亡忠雄の被害自転車の視認性は何ら問題がない(乙一二)。

(2) 被告山﨑は、事故後の実況見分時において、亡忠雄を最初に発見した位置、危険を感じた地点、さらには自分がハンドルを右に切りブレーキを掛けた地点を説明できなかった。これは、被告山﨑が、被害自転車に衝突するまで全く気付いていなかったということであり、前方不注視の過失があることは明らかである。

(3) 本件事故は車道左端を走行していた被害自転車に加害車両が追突したという事案であり、被告らが主張するような、被害自転車が歩道か路側帯から車道に出てきた際の事故ではない。

(4) 被告山﨑は本件事故当時酒気帯び運転をしていた上、以上のとおり、前方不注視により被害自転車に追突したもので、被告山﨑の責任は明らかであることはもとより、亡忠雄に過失相殺されるべき事由は存在しない。

(二)  被告山﨑と原告柳村及び原告中島との間での示談の成否

(被告山﨑の主張)

(1) 被告山﨑は、平成一一年六月一九日、原告柳村及び原告中島に電話をして、翌日原告柳村宅を訪問することを伝え、自賠責保険金の請求に必要な書類等を持参して、翌二〇日に原告柳村方を訪問した。

(2) 原告柳村方において、被告山﨑が、本件事故についてお詫びをするとともに、自分が貧乏画家で自賠責保険しか加入していなかったことを話し、自賠責保険だけでの示談を申し入れると、原告柳村はこれを承諾し、示談書に原告柳村及び原告中島が署名・捺印してくれた(乙一)。なお、この際、原告柳村、原告中島及び被告山﨑は、原告柳村のみが亡忠雄の相続人であると思っていたので、原告中島については署名欄に「立会人」と被告山﨑において書き加え、また、示談書の「事故原因・内容」「示談内容」欄は白紙のままであった。右白紙部分のうち、「示談内容」欄については、その日の晩に被告山﨑が書き入れ、翌二一日、再度原告柳村及び原告中島がいる場で記載内容を確認してもらった上、亡忠雄の除籍謄本、原告柳村の戸籍謄本、印鑑証明書等を受領した。

(3) 以上のとおり、原告柳村及び原告中島との間では、被害者請求によって自賠責保険から支払われる金額をもって損害賠償額全額とし、他に被告山﨑に請求しないという示談が成立したものである。

(原告らの認否・反論)

(1) 原告柳村が示談書に署名・捺印したことは認めるが、被告山﨑が認めるように、原告柳村が署名した時点では、「事故原因・内容」欄及び「示談内容」欄はいずれも空白であり、原告柳村がこれらについて説明を受けたこともない。

(2) 示談書(乙一)は、示談金額の記載もなく、自賠責保険でいくら支払われるか確定していない状況で作成されており、示談が成立したということはできない。

(3) 被告山﨑は、原告中島が示談書に立会人として署名していることから、原告中島との間にも示談が成立していると主張しているが、これはおよそ成り立たない主張である。

(4) 仮に、示談が成立したとしても、それは、「ぱっと出てこられたので避けられなかった。」という、被告山﨑の事故状況に関する欺罔行為による意思表示であり、原告柳村はこれを取り消す。

(三)  損害額

各損害額に関する争いについては、「裁判所の判断」の中で当事者双方の主張に適宜触れることとする。

第三裁判所の判断

一  争点一(被告山﨑の責任の有無及び過失相殺)について

(一)  被告山﨑の主張は、自賠法三条ただし書の免責の主張としては不十分なものであるが、過失相殺の点も争点となっているので事故態様を検討する。

(二)  本件の事故状況については、証拠(甲一〇、原告中島本人、乙六ないし二〇、乙二二、二三)によれば、以下の事実を認定することができる。

(1) 本件事故現場付近は、制限速度時速四〇km、非市街地の片側一車線の直線道路で、見通しは良い所であるが、本件事故時、加害車両の走行車線側の、衝突地点付近の二基の街灯が消えていた。

(2) 亡忠雄は、原告中島とともに、本件事故当夜それまで飲酒していたスナックの女性が歩くのに合わせて、自転車を手で押しながら本件現場付近の歩道を歩行していたが、前記女性と別れた後、亡忠雄は、本件衝突地点の約二二・二m手前から車道の方に進出し、約一五・八m手前から車道を自転車で走行中、同一方向後方から走行してきた加害車両に、走行車線内中央よりも左側で、被害自転車の後輪に加害車両の左前角が衝突する形で追突された。

(3) 事故後の実況見分の結果によれば、加害車両の前照灯の照射距離は、下向きの場合で二七・六mから二九・二mであり(乙九)、加害車両を低速度で走行させた上で被害自転車をそれと分かる距離は、裸眼の視力が両眼で〇・七の被告山﨑が実験した場合は一九m手前、裸眼の視力が両眼で〇・二の警察官が実験した場合は三〇・九m手前、裸眼の視力が両眼で〇・八の警察官が実験した場合は五六・四m手前との結果が出ている(乙一二)。

(4) 加害車両及び被害自転車は、被害自転車が本件事故当時無灯火であったことを除けば、本件事故に結びつくような機能的な問題はなかった。

(三)  被告山﨑は、被告山﨑が加害車両を運転して事故現場付近に差しかかった際、衝突地点の約一〇mないし一三m手前、時間にして衝突よりも一秒くらい前に、被害自転車が道路左側の歩道の方から突然出てきたのを発見したと説明し(乙二六、被告山﨑本人)、本件事故は避け得なかったものと主張するようであるが、被告山﨑が、本件事故当日現場で行った実況見分時においては、被害自転車を最初に発見した地点や危険を感じた地点を説明できなかったのであり(乙八、なお、この点、被告山﨑は警察官からあまりに細かいことを尋ねられたため答えられなかったと弁解しているが、もし、記憶があるのであれば大体の位置を示すことくらいは可能であったと思われる。)、被告山﨑の前記説明の信用性は低い。また、捜査機関の工学鑑定の結果(乙二〇)、被害自転車の後部に加害車両の前面が右斜め後方から衝突した可能性が強いとされているが、その角度は小さなもので、そのことから被害自転車の衝突前の行動を判断することはできないとされており、被告山﨑の主張するような被害自転車の道路左端から車道中央への進出を認定することはできない。

(四)  問題は、加害車両からの被害自転車の視認状況である。前記(二)の(3)によれば、被告山﨑よりもずっと視力の劣る警察官でさえ被害自転車をその前方約三一mで視認しており、少なくとも被告山﨑もその程度の距離で視認できたものと認められ、被告山﨑の場合の実験結果は信用できない。そして、この結果によれば、仮に事故時の加害車両の速度が実験の際よりも高速となって視認しにくい状況になったとしても、前方を注視していれば、被害自転車を発見し、制動又は進路変更によって被害自転車との衝突を回避することは十分可能であったと認められる(本件事故現場付近は、事故当時交通量が少なく、進路変更をすることに支障があったと認められないことは、本件事故直後の実況見分の結果(乙六)のほか、被告山﨑本人も交通量はほとんどなかったと述べていることからも明らかである。)。

したがって、被告山﨑に前方不注視の過失があり、これが本件事故の原因となっていることは明らかである。なお、被告山﨑が酒気帯び運転をしていた事実も認められるが、酒気帯びの事実が本件の事故発生に寄与しているとの証拠はないから、この点をあえて独立の責任要素として評価することはしない。

(五)  一方、亡忠雄の方は、飲酒の上、被害自転車に乗って、深夜、街灯が二基消えていた事故現場付近を無灯火で走行していたことが認められる(原告中島本人等)。

街灯が二基消えていたことは偶然の事情ではあるが、通常の場合に比べて被告山﨑側からみれば視認しにくい状況にあった上、被害自転車の前照灯がついていなかったことは、いっそう被害自転車の存在を発見しにくくさせた事情と評価できよう。

もとより、前照灯は、前方を照射するためのものであり後方に対する警戒を促すものではなく、本件のように後方からの衝突事案についてこれを強調することは慎まなければならないが、他面において、夜間においては、前照灯の点灯が、そこに自転車が存在していることを確認しやすくする機能を有していることも否定し難く、亡忠雄が、本件の具体的な現場の状況の下において、前照灯をつけていなかった点は若干の過失相殺事由になるものと解される。

(六)  以上検討したところを総合すれば、本件事故は被告山﨑の前方不注視を主たる原因とするものであるが、亡忠雄にも深夜無灯火で自転車を走行させていた事実が認められるので、一〇%の過失相殺をするのが相当である。

二  争点二(示談の成否)について

(一)  被告山﨑は、原告中島との関係でも示談の成立を主張しているが、本件で問題となっている示談書(乙一)を作成する段階では、原告中島及び被告山﨑においても、亡忠雄の相続人は原告柳村のみであると認識していた(この点は当事者間に争いはない。)のであるから、原告中島が権利者であることを前提にした本件示談が成立する理由はない。

(二)  原告柳村との関係では、確かに、原告柳村が、示談書が作成されたころは、自賠責保険金の二〇〇〇万円から三〇〇〇万円の金員を受領することにより賠償問題を終わらせようとの意思を有していたものと認められ(原告柳村本人一一頁、一二頁)、これを被告山﨑との間で表示したものと推認される。しかし、それは、亡忠雄の相続人が原告柳村のみであることを前提にしており、現実には原告柳村は亡忠雄の有していた権利を三分の一しか相続していないから、前提において異なっている上、原告柳村においてその他の相続人の権利を処分することができないのは当然のことであり、示談書作成時の原告柳村及び被告山﨑の意思を尊重するとしても、後述するとおり、原告柳村の取得する損害賠償債権額は二〇〇〇万円には及ばないものであるから、被告山﨑の示談の主張は、結局、本件訴訟において何らの意味も有しないものと解さざるを得ない。

三  争点三(損害額)について

以下において各損害項目ごとに検討するが、最初に当裁判所の認定額を記載し、括弧書きで原告らの請求額を示すこととする。

(一)  治療費 二六万〇四八二円(二六万六四八二円)

診療報酬明細書(甲三)によれば、原告ら請求の金額を原告柳村が亡忠雄の治療費として立替払をしたことが認められるが、そのうち診断書代として相当性が認められるのは被告三井住友が主張するように一通分であるから、他の三通分六〇〇〇円を控除した二六万〇四八二円を本件の損害として認めることができる。

(二)  葬儀費用 六〇万七〇〇〇円(一二〇万円)

亡忠雄の葬儀に要した費用として実際に支払った額は、合計六〇万七〇〇〇円と認められる(甲第四号証の三ないし五)。

(三)  逸失利益 一八〇二万七四四〇円

(一九八九万一二五六円)

(1) 給与収入の逸失利益 一二三〇万三六〇一円

(一三三六万六二六三円)

亡忠雄は、本件事故当時、六二歳の独身男性で独り暮らしであったが、訴外千種建設株式会社に勤務し、年間三四六万二〇〇〇円の収入を得ていたと認められる(甲五、六等)。

したがって、前記給与収入の逸失利益は、生活費控除率を五割とし、六二歳の平均余命一九・三一年(平成一一年簡易生命表による。)のおよそ半分の九年間の稼働を認め、年五%のライプニッツ係数により中間利息を控除すると、次のとおり一二三〇万三六〇一円となる。

三四六万二〇〇〇円×(一-〇・五)×七・一〇七八=一二三〇万三六〇一円(小数点以下切り捨て。以下同じ。)

(2) 年金の逸失利益 五七二万三八三九円

(六五二万四九九三円)

亡忠雄は、本件事故当時、老齢厚生年金を受給しており、その基本額は年額一四八万円であったが、給与収入があったため六九万八五六〇円が支給停止になっており、本件事故時には年額七八万一四四〇円を受給していたと認められる(甲七)。

したがって、亡忠雄が稼働するであろう九年間は、七八万一四四〇円を基礎収入とし、生活費控除率を五割として、また、その後の平均余命までの一〇年間は、一四八万円を基礎収入とし、生活費控除率を六割として(年金の性質上、年金のみで生活するようになった後はその六割を生活のために費消するものと認めるのが相当である。)、年五%のライプニッツ係数を用いて中間利息を控除すると、次のとおり、年金の逸失利益は五七二万三八三九円となる。

七八万一四四〇円×(一-〇・五)×七・一〇七八=二七七万七一五九円

一四八万円×(一-〇・六)×(一二・〇八五三-七・一〇七八)=二九四万六六八〇円

二七七万七一五九円+二九四万六六八〇円=五七二万三八三九円

(四)  慰謝料 二〇〇〇万円(二〇〇〇万円)

本件が死亡事案であることのほか、亡忠雄の身分関係、本件事故の態様等を総合考慮し、亡忠雄の慰謝料としては二〇〇〇万円を相当と認める。

(五)  小計 三八八九万四九二二円

(六)  過失相殺

前記認定のとおり、本件については一〇%の過失相殺をするのが相当であるから、上記小計額から一〇%を減額すると、残額は三五〇〇万五四二九円となる。

(七)  原告らの取得した損害賠償請求権額

上記金額を原告らの相続分に応じて分割すると、原告柳村及び原告中島が各一一六六万八四七六円、その余の原告らが各二九一万七一一九円となる。

(八)  弁護士費用 総額三五〇万円

本件事案の内容、本件訴訟の審理経過、認容額等を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては、原告柳村及び原告中島については各一一五万円、その余の原告らについては各三〇万円とするのが相当である。

第四結論

以上によれば、原告らの請求は、次のとおり認容することができる。

一  被告山﨑に対して

原告柳村及び原告中島の請求は、各一二八一万八四七六円、その余の原告らの請求は、各三二一万七一一九円、及びこれらに対する平成一一年五月二一日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

二  被告三井住友に対して

原告らの被告山﨑に対する各認容額は、原告らの被告三井住友に対する各請求額を超過していることは明らかであるから、被告三井住友に対する関係では、原告らの請求どおり認容する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 河邉義典 村山浩昭 来司直美)

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