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東京地方裁判所 平成12年(ワ)25933号 判決 2001年11月27日

原告

溝口卓哉

被告

髙野庫之

主文

一  原告・被告間の平成一一年二月二三日発生の交通事故に基づく原告の被告に対する損害賠償債務が一一二万一〇一〇円を超えて存在しないことを確認する。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五〇分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

原告・被告間の平成一一年二月二三日発生の交通事故に基づく原告の被告に対する損害賠償債務が四八万五二八〇円を超えて存在しないことを確認する。

第二事案の概要

一  本件事故の発生(当事者間に争いがない。)

(一)  日時 平成一一年二月二三日午後一一時一〇分ころ

(二)  場所 東京都江東区毛利一丁目二一番地

(三)  当事者 原告が運転する普通乗用自動車

伊藤一昭が運転し、被告が同乗する普通乗用自動車

(四)  態様 原告車両が伊藤車両に側面衝突し、被告が負傷した。

二  被告の損害

被告の主張する損害と原告の認否等は、別紙損害一覧表のとおりである。被告の主張する損害額は合計六二八四万八九二一円であり、このうち七二万七九一一円が支払済みであることは、当事者間に争いがない。

三  争点

本件の争点は、被告の主張する損害のうち、傷害慰謝料(三六万二〇〇〇円を超える部分)、後遺症慰謝料及び消極損害の成否である。

第三争点に対する判断

一  傷害慰謝料

乙一の一によれば、被告は、本件事故により受傷し、本件事故の翌日である平成一一年二月二四日から同年四月二八日までの間(実通院日数六七日)、通院治療を受けたことが認められる。受傷内容は証拠上明確ではないが、乙一の一によれば、平成一二年八月二八日現在における後遺障害として、脳血流の低下、左下肢の痛み及び腫脹があるとされており、これらに関係する治療が行われたものと推測される。

以上によれば、受傷及び通院による被告の苦痛を慰謝するには、原告の自認する三六万二〇〇〇円の慰謝料をもって足りると考えられるが、後記のとおり、「魚万」における被告の休業損害を慰謝料の斟酌事由として考慮するのが相当であるから、傷害慰謝料として合計一〇〇万円を認める。

二  後遺症慰謝料

被告が、自動車保険料率算定会から、自賠法施行令二条所定の後遺障害等級表に該当する後遺障害の認定を受けた事実を認めるべき証拠はない。そして、前記のとおり、乙一の一には、被告に脳血流の低下等の後遺障害がある旨が記載されているけれども、これをもって慰謝料支払の対象となる後遺障害と認めるには足りない。

三  消極損害

(一)  後遺障害による逸失利益

被告が自動車保険料率算定会から後遺障害の認定を受けた事実を認めるべき証拠がないことは、前記のとおりであり、乙一の一には、被告に脳血流の低下等の後遺障害がある旨が記載されているが、これらが被告の労働能力に与える影響は明らかではない。したがって、被告については、後遺障害による逸失利益が発生したと認めることはできない。

(二)  休業損害

そこで、被告について、治癒(症状固定)に至るまでの間に、本件事故による受傷ないしその治療のための通院により労働能力が制限され、休業損害が生じたか否かについて検討する。

乙二ないし六、被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、(一) 被告は、本件事故当時、株式会社髙野マネージメントコンサルタント及び有限会社万平商事の代表者等を務め、給与所得(役員報酬)を得るとともに、個人で「いけす魚万」及び「魚万」を経営し、営業所得を得ていたこと、(二) これらのうち株式会社高野マネージメント等からの給与所得については、平成一〇年分、平成一一年分及び平成一二年分のいずれも二八八〇万円と申告されており、本件事故の前後で減収は生じていないこと、(三) 被告が個人で経営する「いけす魚万」及び「魚万」のうち、小田原に店舗のある「いけす魚万」は、昭和六三年一〇月に開店したものであり、被告は、本件事故の前後を通じて、妻に同店の経営をゆだねていたこと、(四) 一方、東京錦糸町にある「魚万」は、平成九年六月に開店したものであり、被告は、実質的な店長の立場にあって、午後六時には出勤し、客の案内、接客、レジ等の仕事をしていたこと、(五) 被告は、本件事故後、体に不自由はあったが、通院しながら「魚万」での勤務を続けていたこと、(六) 被告は、普通は「魚万」の開店時間までに通院していたが、営業時間中に通院することもあったこと、(七) 「魚万」の平成一〇年の売上は四四六五万八九五三円、平成一一年の売上は四五三四万六四二四円であったが、経費等を控除した収支は赤字と申告されていること、(八) 被告は、平成一二年一月一〇日に「魚万」を閉店し、その跡に、被告が役員を務める株式会社万平の経営する風俗店が開店したこと、が認められる。

ところで、被告は、「魚万」を閉店したのは、本件事故による被告の体調不良が原因であると主張する。しかし、被告本人尋問の結果によれば、被告は、本件事故前にも交通事故で左足に受傷した事実のあることが認められるところ、被告の訴える左下肢の痛み及び腫脹に本件事故がどの程度寄与しているのか、証拠上、明確ではない。また、脳血流の低下についても、その発症の原因に関して医学的な観点からの立証はなく、果してこれが本件事故に起因するものか否かも明らかではない。したがって、脳血流の低下、左下肢の痛み及び腫脹など、被告の体調不良が「魚万」の閉店の一つのきっかけとなった可能性は否定し得ないとしても、本件事故と「魚万」の閉店との間に相当因果関係を認めることはできない。

他方、前記の認定事実によれば、被告は、本件事故後の受傷ないし通院により、労働能力にある程度の制限を受け、「魚万」における勤務に支障が生じたことがうかがわれる。しかし、これを休業損害として具体的に算定することは困難であるから、この点は慰謝料として斟酌することとし、前記のとおり、傷害慰謝料として合計一〇〇万円を認める。

四  まとめ

以上によれば、別紙損害一覧表記載の損害のうち、本件事故による損害と認められ、かつ、いまだ原告から支払われていないものは、<3> 傷害慰謝料一〇〇万円、<6> 指定券代五万〇四四〇円、<7> 高速代・定期代七万〇五七〇円であり、その合計は、一一二万一〇一〇円となる。

第四結論

以上によれば、原告の本訴請求は、被告に対し、本件事故に基づく原告の被告に対する損害賠償債務が一一二万一〇一〇円を超えて存在しないことの確認を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は失当として棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 河邉義典)

損害一覧表

被告の主張する損害と原告の認否等は、次のとおりである。file_2.jpgBHO Re ORB S © @ m| sonar |ans CeLma). @ mm xam| —omucom|ams HAA). @ Be ew A] score |sexeMOMORE CRD. coma @ Amey 7H] s7a760m | Bos CeLHA). O er emit) ener] eos GALRA). Om 2 # t| 7 7880R| RH QATOMEXKAA). © ware semie| — 7 7e70r| wes (MonmIA CHA). © aacewn| roonoom| sess. @ ® = m | cooromon|aers.

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