東京地方裁判所 平成12年(ワ)26193号 判決 2001年12月26日
原告
武田幸恵
被告
力石ノシ子
ほか一名
主文
一 被告らは、原告に対し、連帯して、金二一三万九七六五円及びこれに対する平成一二年三月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを四分し、その三を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告らは、原告に対し、連帯して、金二八一万七八八一円及びこれに対する平成一二年三月一一日(本件事故日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え(一部請求)。
第二事案の概要
一 争いのない事実及び容易に認定し得る事実
(一) 事故の発生(甲一、乙四から七、弁論の全趣旨)
ア 日時 平成一二年三月一一日午前〇時二五分ころ
イ 場所 千葉県市川市香取方面から市川市新浜方面に向かう、市川市湊新田一―九先道路(以下「本件道路」という。)上であり、市川市福栄方面から市川市行徳駅前方面に向かう道路(以下「本件交差道路」という。)と本件道路が交差する交差点(以下「本件交差点」という。)出口付近
ウ 原告車 原告(昭和二八年九月六日生)の運転する普通乗用自動車
エ 被告車 被告上野真人(以下「被告上野」という。)が運転する、被告力石ノシ子(以下「被告力石」という。)保有の普通乗用自動車
オ 事故態様 本件道路上を市川市香取方面から市川市新浜方面に向かって走行し、本件交差点に直進進入しようとした原告車と、本件交差道路を市川市福栄方面から市川市行徳駅前方面に向かって進行し、本件交差点に左折進行しようとした被告車が衝突した(以下「本件事故」という。)。
(二) 原告の受傷及び治療経過(甲二から一六)
原告は、本件事故によって、頸椎捻挫、右肩打撲等の傷害を負った。
原告は、瑞江脳神経外科医院(平成一二年三月一一日から同年五月二日までの間の実日数四二日間の通院。甲五)、順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院(平成一二年四月一四日から同年一一月七日までの間の実日数一五日間の通院。甲一〇。以下「順天堂浦安病院」という。)、メイプル整骨院(平成一二年五月二日から同年一〇月一六日までの間の実日数一〇二日間の通院。甲一六)において治療を受けた。
(三) 被告らの責任
被告力石は被告車の保有者である。
被告上野は本件交差点に進入するに当たって一時停止せずに左折進行して原告車に衝突させた点で運転上の過失がある。
(四) 損害の填補
原告は、被告らから二〇六万七二九六円を受領している。
二 争点
(一) 原告の過失責任の有無及び過失相殺割合
ア 被告らの主張
本件事故は、原告車が本件交差点手前の駐車車両を避けるために中央線を超えて本件交差点に直進進入しようとしたため、本件交差点を左折進行した被告車と被告車進行車線内で衝突するに至った、というものである。
したがって、本件事故発生の原因の一端は対向車線上を走行していた原告にもあり、三〇パーセントの過失相殺をすべきである。
イ 原告の主張
駐車車両を避けるために中央線を超えたのは本件交差点のかなり手前であり、原告車は自車線に戻って本件交差点に直進進入しようとしたところ、被告車と衝突したものである。
衝突地点は原告車進行車線内である。
(二) 損害額の算定
ア 治療費(請求額 八九万一七五〇円)
瑞江脳神経外科分(一五万九〇八〇円)、順天堂浦安病院分(九万六二〇〇円)、メイプル整骨院分(五九万八〇〇〇円)、浦安病院薬局(三万八四七〇円)の合計額である。
イ 通院交通費(請求額 三万二九〇〇円)
瑞江脳神経外科分(一万四九八〇円)、順天堂浦安病院分(一万七九二〇円)の合計額である。
ウ 休業損害(請求額 一九三万六〇〇〇円)
原告は東京都六市競艇事業組合に勤務し、一日当たり一万一〇〇〇円の収入があったが、本件事故により、平成一二年三月一一日から同年九月二日までの一七六日間休業を余儀なくされた。
一万一〇〇〇円×一七六=一九三万六〇〇〇円
エ 賞与減による損害(請求額 六六万九五二七円)
平成一二年夏期分四一万二三〇九円、同年冬期分二五万七二一八円、合計六六万九五二七円が減額された。
オ 有給休暇喪失による損害(請求額 一六万五〇〇〇円)
本件事故による欠勤によって、本来一五日間取得することが可能である有給休暇が、平成一三年度はゼロとなった。
一日当たり一万一〇〇〇円として一五日分の損害となる。
カ 慰謝料(請求額 一〇〇万円)
キ 弁護士費用(請求額 二〇万円)
第三当裁判所の判断
一 争点(一)(原告の過失責任の有無及び過失相殺割合)について
甲一、二四、三一、乙一、四から一三、原告及び被告上野各本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(一) 本件事故現場周辺の状況及び本件事故の経過
ア 本件事故現場付近の道路状況
本件事故現場の道路状況は別紙図面のとおりであり、本件事故当時、甲地点に駐車車両が存在した。
イ 原告車の走行状況
原告は、本件事故当時、本件交差点の北西側の交差点を市川市新浜方面に向かって右折して本件道路に入り、そのまま時速約四〇キロの速度で進行していたが、本件交差点約二〇メートル手前付近の自車線上に駐車車両(以下「本件駐車車両」という。)があったため、時速約二〇キロに減速して中央線を若干超えてその右側方を通過し、自車線に戻った後も速度を維持したまま進行し、本件交差点を直進しようとしたところ、市川市福栄方面から本件交差点を左折してきた被告車と別紙図面×地点で衝突した。
ウ 被告車の走行状況
被告上野は、本件交差道路を市川市行徳駅前方面に向かって時速約二五キロで走行し、本件交差点手前で時速約一〇キロに減速したものの、その速度を維持したまま右方のみに注意を向けて左折進行したところ、別紙図面×地点で原告車と衝突した。
エ 前示認定の理由
本件事故状況に関する前示認定事実は原告の供述に沿うものである。
原告の供述は終始一貫しており、被告のそれとは対照的である。
被告上野は、当初、警察官に対し、本件事故地点が自車線内である旨、本件駐車車両が本件交差点のすぐ近くであった旨供述していたが、警察官から、<1>本件駐車車両の位置が被告上野の供述どおり本件交差点近くであったとすると、最終的に停車させた被告車と本件駐車車両の車幅により本件道路を走行する車両の流れが塞がれる形状となること、<2>被告車の車幅と本件道路の幅員からすると一時的に対向車線に進入せざるを得ないこと、を内容とする疑問点を警察官から指摘されると、特段の具体的な反論等をしないまま供述を前示認定に沿った内容に一変させ、検察官による取調べに対しても変遷後の供述を維持しているのである。
そして、本件訴訟に至るや、被告上野はまたも供述を元の内容に変転させる一方、被告らは、今日に至るまで、被告上野が捜査段階で供述を変更する強い動機付けを生じさせた前示の疑問点について、これらを払拭させるような訴訟活動を全く行っていないことに照らすと、被告らの主張は、被告上野の根拠のない一方的な主観的認識に基づくものに過ぎず、到底採用するに足りないというべきである。
(二) 結論
以上によれば、被告らの主張には理由がなく、過失相殺すべき事由はない。
二 損害額の算定
(一) 治療費 七一万二三五〇円
瑞江脳神経外科分(一五万九〇八〇円)は甲一五により、順天堂浦安病院分(九万六二〇〇円)及び浦安病院薬局分(三万八四七〇円)は甲一〇(乙二は「軽快」とするのみであり、一週間程度の期間来診していないことを理由に「中止」としたにすぎず、甲一〇の証拠価値は高い。)、甲一七(治療日と薬局調剤日が一致している。)により認める。
メイプル整骨院分(五九万八〇〇〇円)については、対症療法を要する原告の症状の緩解には一定程度有用であったと考えられ、かつ、順天堂浦安病院での治療を並行して受けていたことを考慮し、その七割(四一万八六〇〇円)の限度で認めることとする(原告本人)。これに対し、被告らは、メイプル整骨院での受診時の傷病名に右上腕部挫傷及び右前腕部挫傷が含まれており、本件事故との因果関係が疑われる点、順天堂浦安病院の上野医師が被告ら代理人による照会に対して柔道整復等による治療の必要性がない旨回答している点を指摘するが(乙三)、前者については原告の当初の負傷部位に照らすと特段不合理とは考えられないし、後者についてはその理由が付されていない上、上野医師が「柔道整復等」をどのように理解したのか、原告の受けている施術の具体的内容を把握した上で回答したものかどうかが不明であり、それをもって直ちに施術の必要性を否定するには足りない。
(二) 通院交通費 一万七九二〇円
順天堂浦安病院に通院するための交通費について認める(甲一八)。
瑞江脳神経外科の通院分は、自宅から近距離であり、ことさらタクシーを利用しなければ通院が困難であることを裏付けるに足りる証拠がない。
(三) 休業損害 一七九万二八三七円
ア 基礎収入
休業損害を算定するための基礎収入は一万〇九九九円である(甲二〇)。
計算式
(八九万三九九〇円+九万五九八〇円)÷九〇=一万〇九九九円
イ 休業期間
甲八、乙三によれば、原告は、平成一二年八月八日には就労可能な身体状況に快復したことが認められるが、しかし、就業を再開するための準備等で一定程度の時間を要するであろうことを考慮し、その八月一〇日までの期間(一五三日)を休業期間として算定する。
また、原告が現実に就業を再開した同年九月二日までの間の通院日数は、順天堂浦安病院が一日、メイプル整骨院が九日であるから(甲一六、一七)、これを休業日数として算入する。
計算式
一万〇九九九円×(一五三+一+九)=一七九万二八三七円
(四) 賞与減額による損害 六三万三九五四円
原告の賞与額が減額された原因である欠勤期間のうち、前示認定に係る休業期間(平成一二年三月一一日から同年八月一〇日までの一五三日間、及び、その後同年九月二日までの期間中の一〇日間)は、本件事故によるものであり、これに起因する減額分は、本件事故と相当因果関係のある損害となる。
平成一一年一二月一日から平成一二年五月三一日までの期間が賞与支給対象期間となる平成一二年夏期賞与については減額分全額である四一万二三〇九円が損害となる。また、平成一二年六月一日から同年一一月三〇日までの期間が賞与支給対象期間となる平成一二年冬期賞与については、休業した九月二日までの期間(九四日)をもとに、前示認定の休業期間(八一日)を割合的に考慮した。
計算式
四一万二三〇九円+二二万一六四五円(=二五万七二一八円×八一/九四)=六三万三九五四円
(五) 有給休暇喪失による損害 認めない
原告は、本件事故による欠勤によって平成一三年度の有休休暇を付与されなかったことが認められる(甲二六)。しかし、治療時間を確保する目的で、かつ、欠勤を免れるために有給休暇を現実に費消したのではない以上、損害として考慮するのは相当ではなく、同年度において自由に休暇を取得することができなくなったという観点から慰謝料の考慮事情とする。
(六) 慰謝料 八五万円
原告の前示の負傷部位、程度、治療経過のほか、前項の事情を考慮した。
(七) 小計 四〇〇万七〇六一円
(八) 過失相殺控除 認めない
(九) 既払金(二〇六万七二九六円)控除後の金額 一九三万九七六五円
(一〇) 弁護士費用 二〇万円
(一一) 合計額 二一三万九七六五円
三 結論
よって、原告の請求は、被告らに対し、連帯して、金二一三万九七六五円及びこれに対する平成一二年三月一一日(本件事故日)から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
(裁判官 渡邉和義)
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