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東京地方裁判所 平成12年(ワ)4137号 判決

原告 A

被告(日本移動通信株式会社訴訟承継人)株式会社ディーディーアイ

右代表者代表取締役 奥山雄材

右訴訟代理人弁護士 鎌田隆

同 柴由美子

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告に対し、金二〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年一二月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告に対し、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞及び日本経済新聞の各朝刊全国版紙面に「携帯電話の加入申込みに当たり、今まで故なく契約締結時外国人登録証の提示を求めた不当性を認め、今後は外国人登録証の提示を契約加入の要件とはしない。」との謝罪広告を掲載せよ。

第二事案の概要

本件は、外国人である原告が、国内電気通信事業を営んでいた訴訟承継前の被告である日本移動通信株式会社に携帯電話契約を申し込むに当たり、右事業者において外国人登録証明書の提示を求めた上、その締結を拒絶したことなどが不法行為を構成するとして、合併により右事業者の権利義務を承継した被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料二〇〇〇万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成一一年一二月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、民法七二三条所定の被害回復処分として新聞への謝罪広告の掲載を求める事案である。

一  争いのない事実

1  当事者

(一) 原告は、日本の国籍を有しない特別永住者であり、司法書士の資格を有している。

(二) 訴訟承継前の被告日本移動通信株式会社は、電気通信事業法に定める電気通信事業を目的とする株式会社であったが、平成一二年一〇月二日、被告らと合併して解散し、存続会社である被告がその権利義務を承継した(以下、合併の前後を問わず「被告」という。)。

2  被告の携帯電話契約締結上の取扱い

本件当時、被告においては、携帯電話契約の申込みを受けた際、申込者がクレジットカードによる支払を希望する場合を除き、本人確認のために身分証明書の提示を求めるのが通常の取扱いであった。その際、提示を求める身分証明書は、日本人については、運転免許証、旅券、健康保険証と現住所が記載された公共料金領収書若しくは請求書又は学生証のいずれかであり、外国人については、外国人登録証明書(申込日からの在留期間が九〇日以上あるものに限る。)及び旅券であった(以下、このような取扱いを「本件取扱い」という。)。

3  事実経緯

(一) 原告は、平成三年初めころ、携帯電話契約上の契約者の地位の譲渡を受け、以後、被告との間で携帯電話契約を締結しているが、右譲受けに際しては、身分証明書として司法書士会員証(写し)及び日本電信電話株式会社(NTT)の電話料金領収書の提示で済み、外国人登録証明書を提示しなかった。

(二) 原告は、平成一一年一二月一九日、東京都豊島区所在の家電製品販売店「ビックカメラ本店」(以下「販売店」という。)において、同店の店員から被告の商標(当時「IDO」)が付された携帯電話機を追加購入して携帯電話契約を締結することとし、その機種を選択した上、所定の携帯電話契約申込書に住所、氏名、自宅の電話番号、生年月日、勤務先の名称及び電話番号等を記入し、料金の計算及び支払方法に関する書面(コミコミ家族割引書兼同意書)に住所、氏名、生年月日、既に締結していた携帯電話の電話番号等を記入し、右契約申込書及び書面を作成した。

(三) 右契約申込書は、販売店から被告へファクシミリにより送信されたが、被告の担当者は、原告の氏名に照らして原告が外国人であるらしいことから、販売店の店員に対し、原告が外国人であるならば、外国人登録証明書による本人確認を経なければ申込みを受け付けることができないとして、原告に外国人登録証明書の提示を求めるよう要請した。

(四) そこで、販売店の店員は、原告に対し、外国人であることを確認の上、外国人登録証明書がなければ携帯電話契約を締結できない旨説明したが、原告は、右店員に対し、既に被告との間で携帯電話契約を締結しているので外国人登録証明書の提示は不要なはずであるとして、その提示を拒んだため、右店員は、被告の事務所に電話をかけ、担当者である森尾政信(以下「被告担当者」という。)に原告への対応について問い合わせた。

(五) 被告担当者は、右店員に、原告と電話を替わるように要請し、原告に対し、携帯電話契約の締結には外国人登録証明書の提示が必要であり、既に携帯電話契約を締結している場合でも同様であると説明した。

(六) 原告は、被告担当者から既加入の携帯電話番号を尋ねられたのに対して答えず、後日正式に抗議する旨伝え、被告担当者とのやりとりを終えた。

(七) 原告は、同月二一日ころ、被告に対し、書面により同月一九日の被告担当者の対応について質問したところ、被告は、同月二七日ころ、原告に対し、書面により回答をした。

(八) しかし、原告は、右回答に納得せず、平成一二年一月一一日ころ、被告に対し、再び書面により携帯電話契約の締結に際して外国人登録証明書の提示が必要である理由について質問したところ、被告は、同月二六日、被告のもとに右質問に対する回答書を持参した。

二  争点及び当事者の主張

原告が被告に対して携帯電話契約を申し込むに当たり、被告が外国人登録証明書の提示を求めた上、その締結を拒絶したことなどが不法行為を構成するか。

1  原告

(一) 外国人からの携帯電話契約の申込みに対する審査においても、申込者の会話能力、外国人登録証明書以外の各種公的身分証明書により、電話料金の徴収に困難を来す短期滞在者か否かを判断することが可能であるから、被告が外国人登録証明書を提示することに精神的苦痛を感じる外国人に対してその提示を求めることには合理性がない。

(二) しかるに、被告は、原告が携帯電話契約の申込みをしたのに対し、本人確認のために外国人登録証明書の提示が必要不可欠であり、その提示がなければ申込みを受け付けられないとして、他の公的身分証明書の提示等による契約締結を許さず、外国人登録証明書の提示を迫り、これを提示しない原告に対して契約の申込みを承諾することを拒んだ。

(三) 以上によれば、被告は、携帯電話契約締結に際し、外国人登録証明書の提示を強制し、原告が外国人登録証明書を提示するかどうかの意思決定の自由を侵害し、合理的な理由もなく外国人を日本人と差別してその余の公的身分証明書による確認の方法を認めず、契約の締結を拒んだのであって、このような被告の行為は、不当な差別をしている点で憲法一四条及び電気通信事業法七条に違反し、正当な権限がないのに原告に外国人登録証明書の提示を迫った点で外国人登録法一三条二項に違反し、原告の人間としての尊厳を踏みにじった点で憲法一三条に違反し、正当な理由がないのに電気通信役務の提供を拒んだ点で電気通信事業法三四条に違反する。

(四) 原告は、被告の右違法行為により甚大な精神的苦痛を被ったところ、これを慰謝するには、少なくとも二〇〇〇万円の損害賠償を要するとともに、被害回復処分として全国紙の朝刊紙面に被告が携帯電話契約の締結に際して外国人登録証明書の提示を求めたことの不当性を認めた上で今後はこれを契約締結の要件としない旨の謝罪文を掲載することが必要である。

(五) よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として二〇〇〇万円及びこれに対する不法行為の日の翌日である平成一一年一二月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払並びに民法七二三条所定の被害回復処分として朝日新聞、読売新聞、毎日新聞及び日本経済新聞への謝罪文の掲載を求める。

2  被告

(一) 被告は、携帯電話契約の申込者に対し、その氏名や住所等の契約者の身元を確認するために各種公的証明書の提示を求めているところ、申込者が外国人である場合は、月単位で計算された後に支払われる電話料金の性質上、その徴収を確保する必要があることから、申込者が既に被告と携帯電話を締結しているか否かにかかわらず、申込日から在留期間が九〇日以上存する場合に限り申込みを受け付けることとし、その点の確認を行うこととしている。そのためには、在留期間を確認することができない運転免許証等では不十分であり、外国人登録証明書の提示を求めることが確実な方法である。また、外国人は、一般に外国人登録証明書を携帯しており、民間の取引においても外国人登録証明書が身分を証明するものとして広く活用されているのであって、その提示を求めることは一般取引社会の常識に適った客観的な合理性及び相当性があるということができる。

そこで、被告は、右のような経営判断に基づき、携帯電話契約の申込みを受けるに当たり、外国人登録証明書の提示を求めているのであって、これは、大量の申込みを迅速かつ正確に処理するための合理的取扱いであるから、何ら違法なものではない。もっとも、被告は、申込者に外国人登録証明書の提示を拒否された場合も、外国人の在留期間が九〇日以上存在することが強く推認できる場合には、申込みに応じることとし、個別に対応している。

(二) 本件においても、被告担当者は、原告に対し、必要性を十分に説明して外国人登録証明書の提示を求めたが、これを拒否されたため右の方法による確認に基づき契約を締結することは困難であると考え、他の方法による手掛かりを見つけるために既加入の携帯電話番号を尋ねたが、言葉の行き違いにより会話を終えることになったことから、契約締結に至らなかった。

(三) このような具体的状況に照らしても、公権力を行使する権限のない被告が原告に対して外国人登録証明書の提示を求めたことは強制に当たらず、一方、原告はその意思を貫いて外国人登録証明書の提示を拒んだのであるから、その意思決定の自由等は侵害されていない。また、被告が提示を求めることについては合理性があるから、憲法一四条及び電気通信事業法七条、同法三四条に違反せず、外国人登録法一三条二項は、民間の取引において身分証明書として利用することまで禁じていないので、被告の行為は同法一三条二項に違反せず、被告の原告に対する対応は違法性がなく、不法行為を構成しない。

第三当裁判所の判断

一  前判示第二の一の争いのない事実のとおり、被告担当者は、原告からの携帯電話契約の申込みに際し、原告が外国人であることから、本件取扱いに従って、原告に対し携帯電話契約締結の前提として外国人登録証明書の提示を求めているので、まず携帯電話契約を締結する前提として外国人登録証明書を求めることの是非について検討する。

1  電話通信事業者にとって、その提供する電話役務に関する契約は一定期間存続することが予定されているので、右役務の対価としての電話料金請求権をいかに確保するかは重要な問題である。そして、証拠(甲第一九号証、乙第五号証の一)及び弁論の全趣旨によれば、被告においては、携帯電話通信役務を提供した後、電話料金を月単位で計算した上、利用者に請求する仕組みを採っていること、契約者が契約締結後右請求までの相当期間日本国内に在住していないと電話料金の徴収が著しく困難になること、外国人登録証明書には当該外国人が永住者又は特別永住者であればその旨、それ以外の外国人については在留期間がそれぞれ記載されていることが認められるから、携帯電話契約の申込者が外国人である場合、被告が契約の締結に先立って電話料金の徴収に困難を来す短期滞在者でないことを確認する必要があり、かつ、外国人に対して外国人登録証明書の提示を求めることは、そのための確実な方法であって、大量の携帯電話契約の申込みを迅速かつ正確に処理する必要がある被告にとってそれなりの理由のある手段であるということができる。

2  しかしながら、電気通信事業法は、電気通信事業が国民生活及び社会経済活動に不可欠なものであり、高度の公共性を有することから、その七条において、電話通信事業者は電気通信役務の提供について不当な差別的取扱いをしてはならないと定め、同法三四条において、第一種電気通信事業者は正当な理由がなければその営業区域における電気通信役務の提供を拒んではならないと定めているから、これらの規定に反することが直ちに民法上の不法行為が成立するための違法性を具備すると評価されないとしても、被告は、右規定の趣旨を尊重し、電気通信役務の提供の申出である携帯電話契約の申込みに当たって、申込者が平等に電気通信役務を享受できるように配慮することが必要である。

3  そして、証拠(甲第六ないし第一二号証、第一五号証、乙第五号証の一)及び弁論の全趣旨によれば、外国人登録証明書の提示を求められても特段抵抗をしない者が相当数存する一方、原告のように日本に定住する外国人の中には外国人登録証明書の提示を求められることにより屈辱感や嫌悪感を覚える者もいると認められるところ、このように外国人登録証明書の提示を嫌う外国人が携帯電話契約を申し込んだ場合に、外国人登録証明書の提示を求めてこれに固執することは、外国人登録証明書の提示をしない代わりに申込者が必要とする電気通信役務の享受を断念するか、あるいはこれを享受するために外国人登録証明書を提示するかの選択を強い、結果的に外国人であることを理由として右役務の享受に支障を生じさせ、ひいては契約締結を断念させることにもなりかねない。

ところが、携帯電話契約を申し込んだ外国人が電話料金の徴収に困難を来す短期滞在者か否かは、その会話能力、所持している運転免許証や健康保険証等によっても確認することが可能であるから、申込者が外国人であるとの一事により外国人登録証明書の提示以外の方法で右の確認をしないことは、電話通信義務者に求められる配慮に欠けるといわざるを得ない。

もっとも、電気通信事業者にとって右の配慮に欠けることのみによってその対応が違法となり直ちに不法行為を構成するものではないから、被告担当者の原告に対する具体的な行為態様に照らして違法性の存否を判断する必要がある。

二  そこで、原告と被告担当者とのやりとりについて具体的に検討する。

1  原告は、その陳述書(甲第一五号証)において、被告担当者と電話で話した際、いつから外国人登録証明書の提示を求めるように規則が変わったのか、なぜ他の身分証明書では足りず外国人登録証明書だけを要求するのかなどを尋ねても、被告担当者は、規則でそうなっているとして取り合わず、代替手段を示唆することもなかった旨述べている。

しかしながら、原告が後日担当者の対応について抗議するために被告に送付した書面(甲第一号証)には、原告が外国人登録証明書の提示の必要性及び既加入者に対して外国人登録証明書の提示を求めるようになった時期について尋ねたとの記載があるものの、他の身分証明書の提示では足りない理由を尋ねたとの記載はないこと、販売店の店員である高橋美奈子は、その陳述書(乙第三号証)において、原告が被告担当者に対し「運転免許証ではどうですか。」とか「他のもので代えてもらえませんか。」などと問い掛けたことはなかった旨述べていることに照らすと、原告が外国人登録証明書以外の身分証明書の提示に基づく確認により契約の締結が可能か否かを質問をしたかという点については疑問を差し挟む余地がある。

もっとも、前判示のとおり、原告は、販売店の店員である高橋美奈子に対して外国人登録証明書を提示することなく被告との間の携帯電話契約上の地位を譲り受けて被告との間で携帯電話契約を締結していたことを引合いに出して外国人登録証明書の提示を拒んでいるから、その後、電話を替わった被告担当者に対しても、外国人登録証明書の提示をせずに契約することができたのにその提示を求める理由を尋ねることは十分に考えられることであり、右販売店員の供述(乙第三号証)によっても、原告は被告の取扱いについていろいろと質問していたというのであるから、原告が外国人に対し外国人登録証明書の提示を求める取扱いを巡り種々の質問ないし抗議をしたこと自体は肯認できるところである。

2  次に、本件取扱いによれば、被告は、本件当時、電話料金のクレジットカードによる支払を希望する場合を除き、外国人の申込者に対しては、一律に外国人登録証明書の提示を求めることにしていたのであり、被告の営業推進部業務課長(当時)の供述(乙第五号証の一)によっても、携帯電話契約締結の申込みを受けた際、他の外国人の加入申込者と異なる取扱いをすることは、日々大量に送付される不特定多数の者からの申込みを迅速かつ正確に処理しなければならないという業務の実情から事実上無理であるというのであるから、被告担当者が原告の質問ないし抗議を受けて外国人登録証明書の提示以外の代替手段がある旨をわざわざ教示するとは考え難く、現に被告担当者の陳述書(乙第四号証の一)においても、明示的に右代替手段により契約の締結を受け付けることができる旨を説明したとは述べていない。

3  また、前掲乙第四号証の一及び第五号証の一によれば、被告担当者は、原告に対して外国人登録証明書の提示を求めることをあきらめ、既加入回線の記録を調べて原告に電話料金滞納等の事故のないことを確認することにより例外的に身分証明書なしで加入申込みを受け付けることができないかと考えて、既加入回線の電話番号を尋ねたというのであるが、被告担当者において、紛糾した事態を解決するために、外国人登録証明書の提示に代わる手段を考慮することも考えられるのであって、この点の供述の信用性まで否定することはできないけれども、甲第四号証の一によっても、被告担当者は原告に対して既加入回線の電話番号を尋ねた理由についてその場では何ら説明をしていないのであり、その目的が代替手段を講じるためのものであったと認めることはできない。

4  そして、その後、原告が右の既加入電話番号の尋ねに対して答えることなく、被告担当者との会話を終えたことは前判示のとおりである。

三  右に検討した諸点に照らして考察すると、被告担当者の対応は、携帯電話契約締結には外国人登録証明書の提示が必要である旨を述べ、他の代替手段について言及しなかったことにより、原告に対し、右契約の締結による電話通信役務の享受と外国人登録証明書の提示による精神的苦痛の回避との選択を求めた結果となり、意思決定の自由にある程度の影響を及ぼしたと推認するに難くない。

しかしながら、原告と被告担当者とのやりとりは、直接対面していたわけではなく、電話によるものであり、しかも、短時間のごく限られた会話であるから、相互に意を尽くしたとはいえないばかりでなく、話が進展する前に原告がこれを打ち切ったという面があることは否定できず、その時点でなお原告が事態の解決に向けて会話を継続していれば、他の代替手段に話が及んだ上、被告担当者が被告が携帯電話契約の締結を拒まずに契約締結に至った可能性がないわけではない。

また、料金後払いの仕組みを採る携帯電話通信事業者にとって、契約申込者が短期滞在外国人であるか否かを確認する必要性と理由があり、そのために外国人登録証が一定の役割を果たしてきたことは前判示のとおりである。そうすると、被告担当者は、原告に対し、広く電話通信役務の提供を求められる電話通信事業者側として望ましい対応をしたとはいい難いものの、原告の意思を不当に侵害したとか、あるいは、故なく電気通信役務の提供を拒んだものとして社会的な許容性を超え、不法行為上の違法な行為をしたと評価することはできない。

四  ところで、原告は、被告担当者の行為が憲法一三条、一四条、電気通信事業法七条、三四条、外国人登録法一三条二項にそれぞれ違反し、違法性がある旨主張する。

しかしながら、憲法一三条、一四条は、国又は公共団体の統治作用に対して個人の基本的権利と平等を保障する目的に出たものであって、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律することを予定するものであり、原告と被告のような私人間の関係について直接適用されるものではなく、被告担当者の対応が公序良俗に反する場合に違法との評価を基礎づけるにとどまるものであるが、前判示の諸点に徴すると、被告担当者の行為は、社会的許容性を逸脱しているとはいえないのであるから、公序良俗に反するものでもない。

また、電気通信事業に高度の公共性があることにかんがみて電気通信事業法の諸規定が定められていることは前判示のとおりであるが、同法は具体的な契約者の保護を図ることを目的とするものでないので、同法所定の右各規定に反することが直ちに不法行為上の違法性を基礎付けることはできず、具体的に被告担当者の行為が社会的許容性を超えるか否によりその不法行為の成否を判断すべきところ、この点で違法との評価を受けるものでないことも明らかである。

さらに、外国人登録法一三条二項は、入国審査官、入国警備員、警察官、海上保安官その他法務省令で定める国又は地方公共団体の職員が外国人に対して外国人登録証明書の提示を求める権限がある旨を定めているから、それ以外の者には提示を求める権限がないということはできるが、公権力の行使に関わらない一般の者が外国人登録証明書の提示を求めることを禁ずる趣旨まで含むとは解されず、被告担当者の行為は同法に反するとはいえない。

したがって、原告が指摘する各規定によって、前項の不法行為の成否に関する判断は左右されない。

五  以上の次第で、被告担当者の原告に対する行為を違法と評価することはできないから不法行為は成立せず、他に被告担当者の行為が不法行為を構成することを基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はない。

六  よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 齋藤隆 裁判官 内堀宏達 裁判官 小川嘉基)

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