大判例

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東京地方裁判所 平成12年(ワ)6986号 判決

原告 寺田徹

右訴訟代理人弁護士 河野純子

飛田秀成

被告 総観株式会社

右代表者代表取締役 今泉喜一郎

右訴訟代理人弁護士 服部弘志

八木一晃

朝日純一

川端基彦

主文

一  被告は原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成一一年一〇月一五日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

主文と同旨。

第二事案の概要

本件は、被告の経営するゴルフクラブの会員である原告が、被告には約定にしたがってゴルフ場を開場しない債務不履行があるため会員契約を解除したと主張して、預託金の返還を求めた事案である。

一  争いのない事実

1  被告は、ゴルフコースの造成、ゴルフ会員権の販売等を目的とする株式会社である。

2  被告は、アメリカ合衆国ハワイ州のマウイ島においてワイヘエゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という。)を建設し、ワイヘエ・オーシャンフロント・カントリークラブ(以下「本件ゴルフクラブ」という。)の名称で預託会員制ゴルフクラブ事業を営むことを計画した。

3  原告は、平成二年一〇月三一日、被告との間で、被告が原告に対し本件ゴルフクラブの個人正会員として本件ゴルフ場及びその施設を利用させる旨の会員契約を締結し、入会預り金として金五〇〇万円を被告に預託した。

4  本件ゴルフ場は、平成一二年に至っても開場していない。

5  原告は、被告に対し、平成一一年一〇月一四日到達の内容証明郵便で、本件ゴルフ場の開場が長期にわたってなされていないことは被告の債務不履行にあたると主張し、本件会員契約を解除する旨の意思表示をした。

二  争点

1  被告の債務不履行の有無及び解除の有効姓

2  本件ゴルフクラブ会員契約を他のゴルフ場との共通会員契約とする変更の合意の有無

三  争点に関する当事者の主張

1  争点1について

(一) 原告

原告と被告が本件ゴルフクラブの会員契約を締結した時点で、本件ゴルフ場の開場の時期について確定的な期限を定めなかったとしても、これから九年以上を経過しても開場が遅延し、着工もなされず、またその目途も立たないことは社会通念上許容される限度を著しく超えた遅延であり、被告は本件ゴルフクラブ会員契約上の債務について履行遅滞の責めを負い、原告が行った解除の意思表示は有効である。

よって、原告は被告に対し、前記預託金五〇〇万円及びこれに対する解除の日の翌日から支払済みまで商事法定利率による遅延損害金の支払いを求める。

(二) 被告

<1>本件ゴルフ場の開場についてはもともと不確定の要素が多かったことから開場予定時期が定められていなかったこと、<2>平成二年秋頃からハワイ州における日本からの投資歓迎ムードが一変し、マウイ郡議会は本件ゴルフ場の建設計画の審査手続を凍結し、平成四年一二月までその認可をしなかったなどの予期しがたい不可抗力的な事情があったこと、<3>被告としてはこのような事情を受けて、代償措置としてハワイ島に新たにマカレイゴルフ場を建設しその会員権を無償提供したり、マウイ島のホテルで無料宿泊できるサービスを提供するなどの措置もとっていることに照らすと、被告には債務不履行はないから、原告のした解除は効力を有しない。

2  争点2について

(一) 被告

被告は、平成三年一〇月頃、原告を含む本件ゴルフクラブの会員らに対し、本件ゴルフ場とマカレイゴルフ場の二つのゴルフ場を対象とする共通会員契約に変更する旨を申し入れ、新たな会則とともに預託金五〇〇万円を二つのゴルフ場に共通する預託金とする旨表示した共通会員権証書を会員らに送付し、共通会員権証書を受領した場合には本件ゴルフ場のみを対象とした旧会員権証書を返還してほしい旨依頼した。原告は、この共通会員権証書を異議なく受領したから、この契約変更の申入れを承諾したものである。したがって、仮に、本件ゴルフ場が開場していないことが債務不履行にあたるとしても、原告が解除できるのは本件ゴルフ場の会員契約の部分にすぎず、預託金返還請求権も二五〇万円の限度で生じるにすぎない。

(二) 原告

被告の主張を争う。

原告は、平成三年一〇月頃、被告主張の共通会員権証書の送付を受けたことはない。原告は、ローン契約を結んで本件ゴルフ場の会員権を購入した関係で本件ゴルフ場の会員権証書を受領しておらず、平成一〇年七月七日にこのローンを完済したところ、同月下旬頃、被告から共通会員権証書が郵送されてきたもので、その際、被告から変更契約について何らの説明を受けておらず、したがってこれを承諾したこともない。また、本件ゴルフ場の会員権証書を原告に返還したこともない。

第三争点についての判断

一  争点1について

証拠(甲二、三の1、2、四、乙三)及び弁論の全趣旨によれば、原告が本件ゴルフクラブに入会した平成二年一〇月頃の時点では、本件ゴルフ場の開場時期について明確な期限は定められていなかったものの、原告が解除の意思表示をした平成一一年年一〇月に至るまで全く開場せず、着工の目途さえ立たない状態であったことが認められ、これは、本件ゴルフ場建設工事の遅延に関して予想される合理的な期間を越えて遅延したものであり、被告の責めに帰すべき事由によるものというべきである。

被告は、マウイ郡議会が本件ゴルフ場の建設計画の審査手続を凍結し、平成四年一二月までその認可をしなかったなどの予期しがたい不可抗力的な事情があったと主張するが、右のような事情があったにせよ、右認可がなされた後も六年以上にわたり着工の目途さえ立たない状態が続いたことは不可抗力によるものとは認めがたい。

また、被告は、本件ゴルフ場が開場しないことの代償措置としてハワイ島に新たにゴルフ場を建設しその会員権を無償提供したり、マウイ島のホテルで無料宿泊できるサービスを提供するなどの措置もとっていると主張するが、これをもって被告が右債務不履行の責任を免れるものとは解されない。

そうすると、原告の行った解除の意思表示は有効と認められる。

二  争点2について

被告が、原告に対し、平成三年一〇月頃、本件ゴルフクラブ会員契約を本件ゴルフ場とマカレイゴルフ場の二つのゴルフ場を対象とする共通会員権契約に変更する旨を申し入れ、この共通会員権証書を送付したり、原告がこれを異議なく受領したことを認めるに足りる証拠はない。むしろ、証拠(甲一、五、六の1、2、七、八、乙一)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、ローン契約を結んで本件ゴルフ場の会員権を購入した関係で本件ゴルフクラブに入会した時点で本件ゴルフ場の会員権証書を受領しておらず、平成一〇年七月七日にこのローンを完済したところ、その頃、被告から共通会員権証書が郵送されてきたこと、その際、被告から被告主張のような変更契約について格別の説明はなされず、単にローンが完済となったので、証券を届ける旨の連絡文書が送付されたにとどまることが認められる。そうすると、原告と被告の間で、被告主張のような共通会員契約に変更する旨の合意があったものとはいえず、被告の主張は採用できない。

三  以上によれば、原告の本訴請求は理由があるから認容し、主文のとおり判決する。

(裁判官 西村則夫)

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