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東京地方裁判所 平成12年(刑わ)2751号 判決 2001年10月18日

主文

被告人を無期懲役に処する。

未決勾留日数中二九〇日を刑に算入する。

押収してあるサバイバルナイフ一丁(平成一三年押第九四号の1。なお、鑑定のため二つの部分に分離された黒色革製の鞘付き)を没収する。

理由

[罪となるべき事実]

被告人は、

第一公安委員会の運転免許を受けないで、平成一二年七月六日午前零時四五分ころ、東京都足立区内の道路において、普通乗用自動車を運転した。

第二テレホンクラブを通じて知り合い交際を始めたAから別れたいと言われたこと等に憤慨し、これに因縁を付けて同女から金員を喝取しようと企て、

一  平成一二年七月二三日午前零時三〇分ころ、足立区所在のビル四階・五階のテレホンクラブ「B」店内において、携帯電話を使ってA(当時一八歳)に電話をかけ、同女に対し、「何も知らねえで俺と付き合ってんじゃねえ。俺は住吉の者なんだぞ。分かんないのかヤクザだぞ。お前一人くらいどうにでもなる。寮だろうが何だろうが殴り込んでやる。一〇万円を持ってこい。持ってこないとどうなるか知らないぞ。警察と住吉はつながっているから、警察に連絡しても無駄だ。二四日の夜七時に、デイリーストアの前に一〇万持ってこい。」などと語気鋭く言い、さらに、七月二三日午後一〇時三〇分ころ、「B」店内又はその周辺において、被告人の「絶対に電話しろ。」との留守番電話に応じて電話をかけてきた同女に対し、「二四日は、一二時に変更するから。必ず持ってこいよ。一〇万円を渡した後はどうなるかは知らないけどな。」などと語気鋭く言って金員を要求し、もしその要求に応じなければ、同女の身体等に危害を加えかねない気勢を感知させて同女を畏怖させ、よって、七月二四日午後零時四〇分ころ、足立区所在のデイリーヤマザキa店前路上において、同女から現金一〇万円の交付を受け、

二  同日午後零時四〇分過ぎころ、デイリーヤマザキa店前路上において、Aに対し、「このまま帰れると思うなよ。これから一緒に来てもらう。事務所だよ。頭が一〇万だけでなく、もっと金を取ってこいって言っている。言うことを聞かなければ、外国に売り飛ばされるか、殺されるぞ。住吉は足立区が本拠地だから、この辺の警察に連絡しても無駄だ。財布は持ってきていないのか。じゃあ、寮に行くぞ。」などと語気鋭く言い、タクシーに乗ってAが居住する葛飾区所在のCに立ち寄った後、同日午後一時二〇分ころ、同区新小岩方面に向かって走行中のタクシー内において、「行政書士にお前の住民票を取ってもらった。なめたまねしたら、親を殺すぞ。」などと語気鋭く言い、さらに、同日午後三時三〇分ころ、再びC前路上に戻った際、同所において、「通帳とカード類を全部持って来い。」などと語気鋭く言って金員を要求し、もしその要求に応じなければ、同女及びその両親の生命、身体に危害を加えかねない気勢を示して同女を畏怖させ、よって、同日午後三時四七分ころ、足立区所在の株式会社D銀行支店において、同女から現金一三万二〇三一円の交付を受け、続いて、同日午後三時五三分ころ、同区所在の郵便局設置のb店内出張所郵便自動預払機付近において、同女から現金一万円の交付を受け、もって、同女から現金合計二四万二〇三一円を喝取した。

第三通行人が暴力団員風の若い男から因縁を付けられているのを見て、これに乗じてその通行人から金品を喝取しようと企て、平成一二年七月二九日午前二時三〇分ころ、豊島区内路上において、通行人であるE(当時五〇歳)に対し、「あの人はやくざだよ。今回の件は五〇万はかかる。」などと言い、Eが逃げ出すと、これを追い掛けて、付近路上において、「逃げちゃ駄目だよ。財布出してみなよ。相手はやくざなんだから、逃げ切れないよ。ここで解決しなければ、どうなるかわからないよ。」などと言って金員を要求し、もしその要求に応じなければ、同人の身体、財産に危害を加えかねない気勢を示して同人を畏怖させ、よって、即時同所において、同人から現金約一万二〇〇〇円及びキャッシュカード等六点在中の財布一個(財布の時価二〇〇〇円相当)の交付を受け、これを喝取した。

第四平成一二年七月三〇日午前二時五〇分ころ、足立区内の路上において、

一  F(当時五七歳)を殺害して金品を強取しようと企て、同人に対し、その頭部、右側腹部、背部等を所携の刃体の長さ約二五・四センチメートルのサバイバルナイフ(平成一三年押第九四号の1)で数回突き刺すなどし、よって、そのころ、同区所在の月極駐車場前路上において、同人を多発外傷に基づく失血により死亡させて殺害した上、同人所有の現金約六万五〇〇〇円及び運転免許証一通ほか二四点在中の財布一個(財布の時価不詳)を強取した。

二  業務その他正当な理由による場合でないのに、前記サバイバルナイフ一丁を携帯した。

[事実認定の補足説明]

一  弁護人は、判示第四の一のFに対する犯行について、被告人には、Fをナイフで刺すなどした時点では金品奪取の意思はなく、殺害する意思も終始なかった旨主張している。そこで、判示のとおり、強盗殺人罪の成立を認めた理由について説明する。

二  被告人及びAの捜査官に対する供述調書の内容を中心とする前掲の関係証拠を総合すれば、以下の事実が認められる。

1  被告人は、判示第二の犯行後も、Aを利用して金を手に入れることをもくろみ、同女に「金を作らないと、殺されるか、外国に売り飛ばされたりする。」などと言って脅しながら連れ回し、ピンクサロン、ソープランド等の風俗店で給料の前借りができないか問い合わせをさせたり、知り合いとなった男性客から金を騙し取らせる目的で、男女の出会い目的で開催されるパーティに参加させるなどしていた。

2  被告人は、犯行前日の午後には、被告人方において、金を作る方法について思案し、Aをパーティに参加させて男性客に睡眠薬入りの酒を飲ませてホテルに連れ込んで眠っているすきに所持金を奪い取らせることや、被告人自身もサバイバルナイフを使って通行人から金を脅し取ることを計画し、Aにその旨を伝えた。そして、睡眠導入効果のあるハルシオン錠剤を粉末状に砕き、これをプラスチックケースに入れてAに渡し、同日午後七時三〇分過ぎころ、「今日は、このサバイバルナイフで人を刺しまくり、殺しまくるぞ。お金を取るぞ。血の雨が降るぞ。」などと言いながら、サバイバルナイフを持って、Aとともにタクシーで中央区銀座方面に向かった。

3  被告人とAは、同日午後八時三〇分ころ、銀座に到着し、パーティの会場に入って男性客を物色したが、大金を持っていそうな男を見付けることができず、その後、路上で襲撃対象となる通行人を探すなどしたものの、これも実行するには至らなかった。そして、いったん豊島区の池袋駅付近に立ち寄った後、犯行当日の午前二時ころ、足立区のc駅周辺にタクシーで移動した。

被告人は、Aが金を作ることに無気力なように感じられていら立ち、同女に対し「金を集めなかったら、お前は外国に売り飛ばされるか、殺されるんだぞ。」などと言って責め立てた。Aは、仕方なしに、「私がテレクラに電話をかけて、うまく話をして男からお金を取る。それが駄目だったら、G(居酒屋の店名)に誘って睡眠薬をお酒に入れて、酔わせてからホテルに誘い、眠ったところで、お金を取る。これも駄目だったら、旦那様(被告人の意味)がナイフを突き付けて、お金を脅し取ったらどう。」などと提案し、被告人もそれを了承した。

4  Aは、テレホンクラブに電話をかけ、客として来店していたFの年齢、所持金を確認し、被告人に命じられるまま同人が小柄でありスポーツの経験がないこと等も聞き出した上で、言葉巧みにFを店外に誘いだした。被告人は、Fが待ち合わせ場所に向かってくるのを認めると、計画通りに行動するようAに指示し、自分は物陰に隠れた。Aは、Fに話し掛け、居酒屋に行くように誘ったものの、同人が酒は飲めないなどと言ったため、二人はGとは反対方向にあるホテルに向かって歩き出した。被告人は、それを見て、Aが又しても失敗したものと思って腹を立て、腰につるしていたサバイバルナイフを鞘から抜いて、Fの方に駆け寄っていき、背後から何の言葉も発することなく一気にサバイバルナイフを同人の背部に突き刺した。

5  Fは、被告人の方を振り返り、「何だ。お前は。この野郎。」などと言って身構えたが、被告人は、さらに、正面からFの胸腹部をサバイバルナイフで突き刺した。Fは、路面にしりもちをついた後、被告人に背を向け、ふらつきながら逃げようとしたが、被告人は、サバイバルナイフを振り上げて、峰の部分でFの頭を五回ほど殴りつけ、さらに被害者の腹部を複数回刺すなどした。そのため、Fは、腹部にナイフを突きつけられた状態のまま、仰向けに倒れ、そのまま身動きしなくなった。

6  被告人は、Fの体に突き刺さったサバイバルナイフを引き抜き、同人の頭部を数回踏み付けた後、Aに対し、「早くれ。」と所持品を抜き取るように命じた。

Aは、Fのポケットを探ったものの財布がなかなか見付けられなかったこと等から、被告人は、Fの体と路面に足を差し入れてから蹴り上げるようにして同人をうつ伏せ状態に反転させ、後ろポケットに財布があるのを見付けると、その財布をポケットの上からたたきながら、「早くしろ。」と言って、Aに財布を抜き取らせた。

7  本件犯行に用いられたサバイバルナイフは、全長約三九センチメートルで、うち刃体の長さが約二五・四センチメートルであり、峰は切っ先から鍔方向に約七センチメートルまでの部分は刃で両刃の状態となっており、そこから鍔までは鋸状になった、非常に鋭利な刃物である。また、Fの胸腹部、背部、頭部、顔面、上肢等には多数の刺創、刺切創及び切創等が認められ、そのうち、主なものは、右側胸部より刺入し、肝臓を貫通する刺創、背面右側より刺入し、右肺下葉を貫通し肝臓右葉上面に達する刺創、これより下方の背面右側より刺入し、右腎臓に達する刺創、右側胸部下端より刺入し、横行結腸を損傷する刺創などであるが、これら肝、腎、肺の臓器損傷を伴う多発外傷に基づく失血がFの死因と認められる。

三  以上の事実に照らせば、被告人が、本件犯行時、Fを殺害して金品を強奪する意思を有していたことは明らかである。

弁護人は、「被害者を刺したのは、Aを連れて帰ろうとしたためであり、金を奪おうという気持ちはなかった。」等の被告人の公判供述に依拠して、当初の強盗計画は、Fらが予定とは異なる方向に歩き出した時点で途絶していたなどと指摘しているが、前記二の認定事実からすると、被告人は、Aにはもはや任せておけないと思って、自らの手で金品を強奪することを決意して、Fに対して襲いかかったと見るのが自然であり、殊に、Fが身動きしなくなった直後の被告人の行動(前記二の6)が十分それを裏付けている。被告人も、捜査段階では、「もうAに任せておく訳にはいかない。こうなったら、自分の手で男を殺してでも何としてでも金を奪ってやろう。」と思っていたと自認し、「連れ戻すために刺した」旨の上申書の内容は、「少しでも刑が軽くなるようにしたいという気持ちがあったので嘘を書いた」と供述していたところである。

したがって、強盗殺人罪の成立を争う弁護人の前記主張は理由がなく、採用できない。

四  なお、判示第三のEに対する犯行について、被告人は、公判において、「ちんぴらが後ろで威圧していたので、早くその場を終わらせようと思って、とりあえず、Eさんに持っているものを出してもらった。財布の中の現金を見た後、ちんぴらに財布を手渡したところ、その男は中から現金を抜き取って財布だけ返してきた。」などと供述をしているが、その内容自体極めて不自然、不合理である上、捜査段階でそのような弁解をしなかった理由についても、「ちんぴらが現金を取ったということになると話が大きくなるので、後々変なことにならないように自分で取ったと言った。」などと供述しているが、到底納得できるものではない。被告人のこのような供述は、自己の刑責を何とか軽減したいがための言い訳にすぎないというべきである。

[法令の適用]

罰条

判示第一の所為は、道路交通法一一八条一項一号、六四条に、判示第二の一及び二の所為は、包括して刑法二四九条一項に、判示第三の所為は同法二四九条一項に、判示第四の一の所為は、同法二四〇条後段に、判示第四の二の所為は、銃砲刀剣類所持等取締法三二条四号、二二条にそれぞれ該当

刑種の選択

判示第一及び第四の二につき各懲役刑を、判示第四の一につき無期懲役刑をそれぞれ選択

併合罪の処理

刑法四五条前段、四六条二項本文(判示第四の一の罪について選択した無期懲役刑のみで処断)

未決勾留日数の算入

刑法二一条

没収

刑法一九条一項二号、二項本文(サバイバルナイフは判示第四の一の罪の供用物件であり、黒色革製鞘はその従物)

訴訟費用の処理

刑訴法一八一条一項ただし書

[量刑の事情]

一  本件は、サバイバルナイフの不法携帯とこれを用いての強盗殺人事案のほか、被害者二名に対する恐喝事案、無免許運転の事案から成るが、被告人がこのような種々の犯行に及ぶまでの経緯等を見ると、次のとおりである。

被告人は、高校を中退した後、美容師、ギタリスト、私立探偵等にあこがれて、美容専門学校、音楽学校、探偵学校に順次入学したが、いずれもまじめに通うことなく、どの学校も卒業するに至らなかった。また、被告人は、断続的にアルバイトをしたこともあるが長続きしたことはなく、家庭が比較的裕福であったことから多額の小遣いをもらい、その金でテレホンクラブに通っては、複数の女性と金銭の介在した交際をするなどして、自堕落な生活を送っていた。被告人自身も、将来に不安を覚えるようになって、精神状態に不調をきたし、平成一〇年二月ころからは精神科医に通院して抑うつ神経症と診断され精神安定剤等の投与を受けるようになっていた。

他方で、被告人は、パソコンやインターネットに強い興味を抱いており、この関係の仕事に従事したいとの希望を有していたところ、コンピューターソフトの研究開発等の事業を経営していた父親が、平成一二年六月、インターネット関連事業を目的とする有限会社Hを設立して、被告人を取締役に就任させたこと等から、ますますその思いを強くした。しかし、父親の方では、Hを他社株の保有会社と位置づけており、被告人にはインターネット関連の仕事をするだけの知識や能力がほとんどないとして、被告人の強い希望にもかかわらず、何ら仕事を与えようとはしなかった。被告人は、父親に愛人がいること等が原因で、かねてから父親に強い嫌悪感を抱いていたが、Hの件以降、よりいっそうその思いを強くし、ついには父親を憎悪するまでに至った。しかし、その反面、そのような父親に頼らなければならない自己を情けなく思い、いらいらしながら面白くない気分で日々を過ごしていた。

そのような精神状態の下、被告人は、平成一二年七月初め、テレホンクラブでAと知り合い、同女と交際を始めたものの、同月二二日夜、Aから電話で別れ話を切り出されたことに腹を立て、暴力団員を装って同女から金銭を脅し取ろうと考えて、判示第二の恐喝行為に及んだ。そして、その後も、同女に対する愛憎の入り交じった気持ちから、同女を連れ回して更に多額の金銭を用意させようとし、その一方で、通行人に対して判示第三の恐喝行為を働いたり、母親らに対して、「探偵の仕事でミスをしてヤクザに金を要求されている。」などの作り話をしては、現金を受け取るなどしていた。その結果、被告人は、Fに対する犯行時までに、三〇〇万円近い金を集めていたものの、なおも異常なまでに金集めに執着して、ついには強盗殺人行為に及んだものである。

二  被告人は、このように多額の金を必要とした理由について、「インターネット関連の仕事を始めようと思い、株式会社を設立するための資本金一〇〇〇万円が必要だった。」などと供述している。しかし、被告人が、どれほど具体的かつ現実的に株式会社設立構想を描いていたかという点に関しては、大いに疑問が残る。むしろ、被告人は、犯罪的な方法で金を集めることによって、自分自身が力のある人間であるような錯覚に陥り、日ごろの晴れない気分も解消されていくのを感じて、本件犯罪行為にのめり込んでいったと見るのが相当である。犯行の直接的な動機は金欲しさであるが、その背景には被告人の精神的な未熟さや幼児性が強く影響しているように思われる。

また、被告人が、Fを殺害するに至ったのは、同人とAが予想外の行動に出たことに対する怒りが引き金になったとはいえ、被告人が事前にサバイバルナイフを用意して路上強盗を計画していたことも明白であり、起こるべくして起こったといっても過言ではないのであって、弁護人指摘のように突発的な犯行と評価することはできない。

三  次に、強盗殺人の犯行態様等についてみると、確定的殺意に基づき、いきなり背後からサバイバルナイフで突き刺すなどした上、ふらつきながら逃げようとするFを追い掛けて、いわばめった刺しにしたものであり、執ようかつ残虐極まりないものである。Fが倒れて動かなくなった後も、その頭を数回踏み付けた上、後ろポケット内の財布を抜き取るために体を蹴るようにして反転させるなど、冷酷非情でもある。犯行後は、着衣等に付着した血痕を洗い流すなど種々の証拠隠滅工作をし、Aに対して身代わり犯人となるように強く指示したり、恐喝容疑で警察の取調べを受けた際にも、強取した財布を取調べ室の机と壁のすき間に隠匿しようとするなどしており、犯情等は甚だ卑劣で悪質である。

被害者のFは、スナックを経営する五七歳の男性であり、妻子とともに平穏な生活を送り、間もなく生まれてくる二人目の孫の誕生を心待ちにしていたことがうかがえるが、たまたま立ち寄ったテレホンクラブでAの誘いに安易に乗ってしまったがために、このような非業の死を遂げるに至ったのであり、その無念の程は察するに余りある。遺族らの受けた悲しみの念は強く、それにもかかわらず、被告人側からは遺族らに対して何らの慰謝の措置も講じられていない実情にあり、遺族らが口々に極刑を希望するのも無理からぬところである。

四  また、被告人は、判示第一ないし第三の恐喝事案等も犯しているところ、特に、Aは、暴力団員を装った被告人から強烈な脅迫文言を述べられて、自ら恐喝の被害を受けただけではなく、強盗殺人行為の幇助行為に及ぶことを余儀なくされたことを考えると、同女の恐怖感や精神的ショックは相当強烈であったと推察できる(弁護人は、判示第二の犯行について、Aの畏怖の程度は大したものでなかったなどと指摘しているが、到底そのようにはいえない。)。

加えて、被告人が、少年時の平成四年に恐喝、傷害の非行で保護観察処分に処せられた前歴を有するとの事情も考慮する必要がある。

五  以上によれば、被告人の刑事責任は極めて重大であるから、被告人が比較的若年であり、本件犯行は被告人の精神的未熟さに由来する面が強いことのほか、前科がないことやその反省状況等の被告人のため有利に酌むべき事情を最大限考慮してみても、被告人を求刑どおりの無期懲役に処して、長期間にわたって反省と悔悟の日々を送らせ、更生を目指させるよりほかないと判断した。

[検察官野口敏郎、弁護人仲隆、同河合安喜各出席。求刑 無期懲役及び サバイバルナイフ一丁の没収]

(裁判長裁判官 長岡哲次 裁判官 高津守 裁判官 橋爪信)

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