大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成12年(行ウ)177号 判決 2001年10月31日

主文

1  被告が、原告に対し、平成12年7月3日付けでした別紙物件目録記載の自動車に係る予備検査の申請を却下した処分を取り消す。

2  本件訴えのうち、被告の不作為の違法確認を求める部分を却下する。

3  原告の中間確認の訴えをいずれも却下する。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  原告の請求

(1)  本訴請求

ア 主文1項同旨

イ 被告は、原告が平成12年7月3日付けでした別紙物件目録記載の自動車に係る予備検査の申請に対する不作為の違法があることを確認する。

(2)  中間確認の訴え

ア 原告が平成12年6月9日付けでした別紙物件目録記載の自動車に係る道路運送車両法15条に基づく抹消登録は違法でないことを確認する。

イ 道路運送車両法15条により抹消登録された別紙物件目録記載の自動車は同法上の自動車であることを確認する。

2  被告の答弁

(1)  本訴請求について

(本案前の答弁)

本件訴えをいずれも却下する。

(本案の答弁)

原告の請求をいずれも棄却する。

(2)  中間確認の訴えについて

主文3項同旨

第2事案の概要

本件は、道路運送車両法(平成11年法律160号による改正前のもの。以下「法」という。)15条に基づく抹消登録をした別紙物件目録記載の自動車(以下「本件自動車」という。)を所有する原告が、平成12年7月3日、被告に対し、本件自動車に係る法71条に基づく予備検査を申請したところ(以下「本件申請」という。)、被告がこれを受理しなかったことが違法である、又は被告が同日付けで本件申請を却下する処分をしたことが違法であるとして、被告に対し、不作為の違法確認又は本件申請を却下した処分の取消しを求めるとともに、前記第1・1・(2)記載の中間確認の裁判を求める事案である。

1  関係法令の定め

(1)  自動車の登録及び検査義務

自動車を運行の用に供するためには、自動車登録ファイルに登録し(法4条1項)、運輸大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受けなければならない(法58条1項)。登録を受けていない自動車の登録(以下「新規登録」という。)を受けようとする場合には、運輸大臣に対し、申請書に法33条に規定する譲渡証明書、法16条2項の抹消登録証明書等の自動車の所有権を証明するに足りる書面を添えて提出し、当該自動車を呈示しなければならない(法7条1項)。

(2)  抹消登録

登録自動車が滅失し、解体し(整備又は改造のために解体する場合を除く。)又は自動車の用途を廃止したとき(法15条1項1号)と当該自動車の車台が当該自動車の新規登録の際存したものでなくなったとき(同条1項2号)は、当該登録自動車の所有者は、その事由があった日から15日以内に抹消登録を申請することが義務付けられ(同条1項柱書)、登録自動車の所有者が抹消登録を申請しない場合は、運輸大臣は、所有者に対し7日以上の期間を定めて抹消登録をするよう催告しなければならず(同条2項)、それでも所有者が抹消登録をしない場合は、運輸大臣自ら職権で抹消登録をし、その旨を所有者に対して通知しなければならない(同条3項)。そして、法15条に基づく抹消登録の申請をせず、又は虚偽の申請をした者に対しては、30万円以下の罰金が科される(法109条2号)。

これに対し、登録自動車の所有者がその自動車を運行の用に供することをやめたときは、抹消登録の申請をすることができ(法16条1項)、抹消登録証明書の交付を受けることができる(法16条2項)。

(3)  新規検査及び予備検査

登録を受けていない法4条に規定する自動車を運行の用に供しようとするときは、当該自動車の使用者は、当該自動車を提示して運輸大臣の行う新規検査を受けなければならない(法59条1項)。新規検査の申請は、自動車の使用者が新規登録の申請と同時に行う必要があり(法59条2項)、検査の結果、当該自動車が保安基準に適合すると認めるときは、当該自動車の使用者は自動車検査証の交付を受けることができる(法60条1項)。

これに対し、登録を受けていない法4条に規定する自動車の所有者は、当該自動車を提示して、運輸大臣の行う予備検査を受けることができ(法71条1項)、検査の結果保安基準に適合すると認めるときは、当該自動車の所有者は自動車予備検査証の交付を受けることができる(同条2項)。そして、自動車予備検査証の交付を受けた自動車についてその使用の本拠の位置が定められたときは、その使用者は、運輸大臣に当該自動車予備検査証を提出して、自動車検査証の交付を受けることができる(同条4項)。

(4)  権限の委任

法に規定する運輸大臣の権限は、政令で定めるところにより、地方運輸局長に委任することができ(法105条1項)、地方運輸局長の権限及び同項の規定により地方運輸局長に委任された権限は、政令で定めるところにより、地方運輸局陸運支局長に委任することができることとされ(同条2項)、これらの規定を受けて設けられた道路運送車両法施行令8条1項2号及び2項によれば、法71条1項及び2項の予備検査の実施及び自動車予備検査証の交付の権限は地方運輸局陸運支局長に委任されている。

運輸大臣は、運輸省の職員のうちから、自動車登録官を任命し、第2章に規定する登録に関する事務を執行させるものとし(法24条1項)、運輸省の職員のうちから、自動車検査官を任命し、予備検査について定める法71条を含む法第5章に規定する自動車の検査の事務を執行させるものとしている(法74条1項)。

2  前提となる事実

(1)  本件自動車の法15条に基づく抹消登録

原告は、平成12年6月9日、関東運輸局東京陸運支局八王子自動車検査登録事務所において、用途の廃止を理由として法15条に基づき本件自動車の抹消登録をした(乙1)。

(2)  本件自動車に係る予備検査の申請と被告の対応

原告は、平成12年7月3日、関東運輸局東京陸運支局八王子自動車検査登録事務所宛に、本件自動車に係る法71条に基づく予備検査の申請に関し相談する電話を架け、同事務所A先任自動車検査官が応対した。A自動車検査官は、原告に対し、法15条に基づく抹消登録を行った自動車については予備検査は認められないため、原告が行った用途の廃止を理由とする法15条に基づく抹消登録が誤りであるならば、当該抹消登録を原状に回復する手続を取った上で法16条に基づく抹消登録を行えば、予備検査の申請が可能である旨回答した。これに対し、原告は、法15条に基づく抹消登録をした状態のままで予備検査を受けたいので、本件自動車を提示する旨主張したが、A自動車検査官は、予備検査を行うことはできない旨再度回答した。原告は、同日、関東運輸局東京陸運支局八王子自動車検査登録事務所を訪れ、本件自動車に係る予備検査を申請したため、A自動車検査官とB上席自動車登録官が対応した。同人らは、原告に対し、法15条に基づく抹消登録をした本件自動車に関しては予備検査をすることはできない旨口頭で回答した(乙2)。

(3)  本件自動車の状態

本件自動車は、(1)の抹消登録前から自動車としての使用に十分耐え得る状態であったが、(2)の予備検査の申請の際もそれ以前と同一の状態のままであり、現在も同様である(弁論の全趣旨)。

(4)  原告による本件訴えの提起と被告の答弁

原告は、平成12年7月6日、被告に対し、本件申請を受理しなかったことが違法であるとして、不作為の違法確認を求める訴えを当庁に提起した。

被告は、同年9月6日付けの答弁書において、第1に、法15条により抹消登録がされた自動車は予備検査の対象とすることができないから、その所有者には予備検査の申請権がないこと、及び第2に、本件申請に対しては検査を受けることができない旨通告し、既に応答がされているから訴えの利益がなく、いずれにしても不適法である旨の本案前の答弁を主張し、この答弁書は原告に交付されたが、その後、平成13年3月23日付けの準備書面において上記第1の主張を撤回した(記録上明らかな事実)。

(5)  原告による訴えの追加的提起

原告は、平成12年11月19日、同月16日付けの「追加的訂正申立書」と題する書面により、被告に対し、本件申請を拒否した処分の取消しの訴えを当庁に提起した。被告は、同年12月1日付けの「追加的訂正申立書に対する答弁書」により、原告の訴えの追加に対し、本案前及び本案の答弁をし、本案前の答弁の理由としては、第1に、処分の特定がされていないこと、及び第2に、原告には予備検査の申請権はないから、これに対する被告の処分を観念することはできないと主張したが、その後、平成13年3月23日付けの準備書面において上記第2の主張を撤回した(記録上明らかな事実)。

3  被告の主張

(1)  本案前の主張

不作為の違法確認の訴えは訴えの利益を欠いて不適法である。A自動車検査官及びB自動車登録官は、平成12年7月3日、原告に対し、関東運輸局東京陸運支局八王子自動車検査登録事務所において、原告の本件申請について口頭で却下処分をしたからである。

処分の取消しの訴えは出訴期間を徒過して提起されたものであり不適法である。被告は、前記2・(2)記載のとおり、原告に対し、平成12年7月3日付けで本件申請に対する却下処分をし、同日、原告にその旨通知したところ、原告は、それから3か月以上経過した同年12年11月19日になって当該処分の取消しを求める訴えを提起したものであるから、行政事件訴訟法14条1項に定める出訴期間を徒過している。

(2)  本案に関する主張

法71条の予備検査制度は、新規登録の際、当該自動車が保安基準に適合しているものであることを確認する新規検査に代わるものである以上、予備検査の対象となる「登録を受けていない第4条に規定する自動車」は、将来運行の用に供する可能性があり、登録を受けることができる自動車であることが前提である。しかるに、法15条に基づく抹消登録は、登録自動車が滅失、解体又は用途の廃止により、自動車が自動車としての経済的効用を喪失し、かつ、実体をも喪失した場合に行われるものであり、当該自動車を将来運行の用に供することを全く予定していないのであるから、法15条に基づく抹消登録をした自動車は予備検査の対象とはなり得ない。したがって、原告は予備検査の申請権を有せず、本件申請を却下した処分は適法である。

(3)  中間確認の訴えに関する主張

中間確認の訴えはいずれも訴状の形式的要件を満たしておらず不適法である。また、中間確認の訴えは、本来の請求に対して先決関係にある法律関係の存否に争いがある場合に、その存否について既判力を生じさせるため同一訴訟手続内で確認を求める訴えであるところ、本件における本訴請求はいずれも不適法な請求であって却下されるべきであるから、これらに関する中間確認の訴えはいずれも不適法である。

本件自動車が法15条に基づく抹消登録をされたことが適法であることの確認を求める訴えは、本件訴訟の結論を左右するものではなく、この点に関する争い自体も存在しないから訴えの利益がない。

本件自動車が法に定める自動車に該当することの確認を求める訴えは、事実の確認を求めるものにほかならず、訴えの利益がない。

4  原告の主張

(1)  本案前の主張に対する反論

被告は、平成12年12月1日付けの処分の取消しの訴えに関する答弁書においても、なお、本件申請に対する却下処分を観念することはできないと主張しており、この主張を撤回したのは、平成13年3月23日付け準備書面であるから、被告は出訴期間の徒過を主張することはできない。

(2)  本案に関する主張

原告は、法71条の規定により予備検査の申請権を有する。

被告が原告に対してした本件申請を受理しないとの通知は、原告のした本件申請に対し、被告がこれを拒絶する態度を表明したものであり、被告が処分権者としての立場から本件自動車の予備検査を申請した原告の地位を一方的に否定する行為であって、原告の法律上の地位に直接影響を及ぼすものというべきであるから、取消訴訟の対象となる行政庁の処分に当たる。

(3)  中間確認の訴えに関する主張

被告は、本件自動車の法15条による抹消登録が原因を欠く違法なものであると主張しているが違法ではない。したがって、同抹消登録が違法であるか否かをめぐって原被告間で争いがあるから、訴えの利益はある。

被告は、本件自動車が法に定める自動車でないと判断しており、その判断は被告の本件申請に対する却下処分に牽連する準法律的行政行為である。

5  争点

以上によれば、本件の本訴請求に関する争点は、法15条に基づく抹消登録をした本件自動車の所有者である原告が法71条に基づく予備検査の申請権を有しないとして予備検査を拒否することの可否(争点1)、関東運輸局東京陸運支局八王子自動車検査登録事務所職員による本件申請に対する口頭での回答が行政処分に該当するか(争点2)、追加的に提訴された処分の取消しの訴えが出訴期間を遵守しているといえるか(争点3)、不作為の違法確認の訴えの適法性(争点4)である。中間確認の訴えに関しては、それらの適法性が問題となる(争点5)。

第3当裁判所の判断

1  争点1について

(1)  本件申請は、法71条に基づく予備検査の申請であるところ、その申請権を有するのは「登録を受けていない第4条に規定する自動車」の所有者である。そして、原告が予備検査を求めた本件自動車については、前記第2・2・(1)のとおり、本件申請当時に登録を受けていないことは明らかであるし、本件自動車がその機能の点において法第4条に規定する自動車に該当するか否かについては、被告も特に問題としていないことからすると、原告の所有の事実に疑義があるならば格別、そうでない限りは、原告が同条の申請権を有するのは明らかである。したがって、被告としては、まず原告の所有の事実を確認した上、これが認められないならば申請を却下すべきであるが、これが認められる以上、本件自動車が保安基準に適合するか否かを検査し、その点について判断を示すべきであったと考えられる。

(2)  これに対して、被告は、法15条に基づく抹消登録をした自動車は法71条に定める「登録を受けていない第4条に規定する自動車」に該当しないと主張する。このような解釈は、法71条の文言のみからは到底採り得ないところであるから、法全体の趣旨からしてそのことが自明の理というべき場合に限って許されるものと考えられるが、被告がこの解釈を採るべき理由とするのは、要するに、法15条による抹消登録は、法16条による場合と異なり、登録自動車が自動車としての実体を喪失した場合であるから、その自動車について再び新規登録すること及び新規登録の前提として予備検査を実施することは本来法の予定するところではないという点に尽きる。

しかし、被告の主張の前提となる法15条の趣旨については、同条所定の抹消事由のうち、自動車の滅失及び解体の場合には、被告主張の理解が妥当すると思われるが、その余の場合には被告の主張は立法趣旨に合致するか否かについて疑問がある。すなわち、同条1項2号の同一性喪失の場合は、むしろ当該自動車は自動車としての実体を依然として有しているのが通常であり、先に存在した自動車とは別個の自動車として新規登録を受けることが当然に予定されていると考えられる。また、本件自動車のように「用途を廃止」したものについては、用途廃止という用語が公物法における公用廃止の事由として法令用語(例えば国有財産法10条1項)や講学上の用語として広く用いられており、その際には、必ずしも物理的な形状等の変更を伴わず、当該用途に用いない旨の意思表示をもって用途の廃止がされるものと理解されていることに照らすと、この場合も常に自動車としての実体を喪失するものとは想定していないと理解すべきである。すなわち、法15条1項1号による用途廃止に基づく登録の抹消と法16条による登録の抹消とは、用途廃止が一時的なものと確定しているか否かの差異にすぎず、その差異に従って後者には抹消登録証明書の交付という便宜が図られているにすぎないのである。

そうであるとすると、被告の主張は法15条についての誤った理解を前提とする点において、その前提を欠くものというべきである。

(3)  また、仮に法15条についての被告の理解が正しいとすると、同条による抹消登録がされた後に、当該自動車自体が依然として存在すること自体が背理というほかなく、それはとりもなおさず先にされた抹消登録が誤りであったことを示すものというほかない。当裁判所は、被告に対し、このような場合において、誤って抹消登録がされた自動車について改めて新規登録がされることに何らかの不都合があるか否かを明らかにするよう質したが、被告は、この点に対し抽象的に不都合が生ずるとするのみであって、少なくとも本件記録上は具体的な不都合が生ずるとは認め難いから、そのような自動車についても改めて新規登録を受けることを前提とする検査を行うことに特段の問題はないと考えられる。仮に、何らかの不都合が生ずるとしても、特に明文の根拠はないものの、行政法の一般原則に基づき、先にされた抹消登録処分を職権によって取り消し、当該自動車について登録がされている状態を復活させて、それによって既に登録がされていることを理由に検査を拒否すれば足りるのであり、そのような不都合があることを理由に法71条についてあえて法文から乖離した解釈を採る必要性は見出し難い。したがって、この点からみても、被告の上記主張は採用できず、原告に申請権がないことを理由に本件申請を拒否することはできないというべきである。

2  争点2について

被告は、前記第2・2・(2)のA自動車検査官らの口頭の回答が本件申請を却下する行政処分である旨主張し、原告も現時点ではこの点を明らかに争っていないことからすると、この点については少なくとも弁論の全趣旨から認めることができる。

なお、上記回答は被告自身によってされたものではなく、A自動車検査官らによってされたことから、同人らにそのような行政処分についての専決権限があったか否かにつき疑問が生じないでもないが、前記第2・1・(4)の自動車検査官の職務権限及び予備検査申請を受理すること自体は被告自身ではなく自動車検査官等の担当職員が行っているものと容易に想定できることからすると、申請を受理するか否かについてはこれらの担当職員に専決権限が与えられており、本件申請についての却下処分もその専決権限を行使して行われたと認めるのが相当である。

3  争点3について。

被告は、本件処分取消しの訴えが出訴期間を徒過した後に提起されたものであると主張する。

確かに、前記第2・2・(5)のとおり、原告が本件処分の取消しを求める訴えの「追加的訂正申立書」を当裁判所に提出したのは、本件処分から3か月以上経過した平成12年11月19日である。しかし、本件処分は、上記のように口頭でされたものであり、しかも本来処分権限を有する被告自身ではなく、その部下の補助職員がしたものであるところ、それが処分であることや被告名義でされるものであることが明示されたことは認め難い。したがって、この時点で行政処分がされたか否かはその外観上明らかでなかったということができる。また、被告は、上記原告の追加的訂正申立書の提出前に答弁書及び2通の準備書面を提出しているが、それらにおいても既に行政処分がされたとの主張はしておらず、「追加的訂正申立書に対する答弁書」においてすら、原告に予備検査の申請権がないことを理由に被告の処分を観念することはできないと主張していたのであるから、被告におても、この時点までは上記回答が行政処分であるとは考えていなかったと認めるのが相当である

これらの事情に照らすと、原告が本件行政処分がされたことを知ってから上記追加的訂正申立書を提出するまでに3か月を超える期間が経過していたとは到底認め難く、被告の主張は採用できない。

4  争点4について

前記2で説示したとおり、本件申請に対しては被告による処分がされているから、不作為の違法の確認を求める訴えは訴えの対象を欠くというべきである。

5  争点5について

中間確認の訴えとは、裁判が訴訟の進行中に争いとなっている法律関係の成立又は不成立に係るときに、当事者が請求を拡張してその法律関係の確認の判決を求める訴えであるところ(民事訴訟法145条)、本件自動車が法15条に基づく抹消登録をされたことが適法であることの確認を求める訴えは、本件における当事者の主張に照らすと、本件訴訟の結論を左右するものではないから、中間確認の訴えの要件を欠いている。また、抹消登録の適法性を確認することは行政処分の適法であることの確認を求めるものであるところ、一般に行政処分は無効なものでない限りは何人も適法なものとして扱うべきものであり、本件において被告は抹消登録の無効を主張していないのであるから、訴訟において確認を求めるまでもなく適法として扱われるべきものであって、あえてその確認を求める訴えの利益がないというべきであり、この観点からも抹消登録の適法確認の訴えは不適法である。他方、本件自動車が法に定める自動車に該当することの確認を求める訴えは、事実の確認を求めるものであって訴えの利益がない。したがって、中間確認の訴えはいずれも不適法というべきである。

第4結論

以上の次第であるから、原告の本訴請求のうち、本件処分の取消しを求める部分は理由があるから認容し、その余の部分及び中間確認の訴えはいずれも不適法であるから却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条ただし書を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤山雅行 裁判官 村田斉志 裁判官 日暮直子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例