大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成13年(フ)9201号 決定 2001年10月24日

債務者 X

主文

本件申立てを却下する。

理由

1  本件は、債務者が総額約1,533万円の負債につき支払不能の状態にある旨主張して破産の申立てをした事案である。なお、債務者は、破産財団をもって破産手続の費用を償うことができないとして同時廃止の決定をも求めている。

2(1)  記録及び審問の結果によると、債務者は、①平成7年8月に離婚した前妻に対し、慰謝料等として合計300万円を支払ったほか、元来は債務者単独の所有名義に属し、かつ、債務者及び債務者の実親において住宅ローンも完済した無担保の不動産を財産分与したこと、②平成11年6月に当時の勤務先を退職した際、退職金として約600万円を受領したが、その後、このうち約400万円を投じてフィリピン所在の不動産と車を購入し、現在もフィリピン国籍を有する現妻名義でこれらを保有していることが一応認められる。これらの財産(特に不動産)は、いずれも否認権行使等を通じて破産財団に属する財産として換価すべき可能性を直ちに否定することができないものであるから、本件で破産手続の費用を償うに足りる財産がないと認めることは困難である。

(2)  債務者は、2度にわたって当裁判所に提出した司法書士作成の書面(破産申立ての関係書類及び同時廃止に関する上申書)において、車を除く前記財産の存在を全く説明せず、退職金の使途についても審問時の供述とは重要部分で異なる説明をしていたばかりか、審問によって実情を把握した当裁判所が前記財産の実質価値等につき釈明を命じたにもかかわらず、期限経過後も何ら釈明をしない。また、本件で債務者が主張する負債及びその発生原因のうち、債務者の現妻による浪費分が約400万円にも及ぶとされている(なお、債権者からも債務者の浪費を理由に本件の破産申立てに反対する旨の意見書が提出されている。)ため、その経緯等についても釈明を命じたが、債務者は前同様に全く釈明をしない。

3  以上によれば、本件について同時廃止の要件が充たされているものと認めることは困難であるうえ、そもそも債務者は同時廃止を求めるばかりで、破産手続上重要な事実関係につき誠実に説明を尽くそうとする姿勢が見受けられず、真撃に申立てを維持する意思があるとは認められないから、本件申立ては不適法である。

よって、主文のとおり決定する。

(裁判官 野原利幸)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例