東京地方裁判所 平成13年(ミ)28号 決定 2002年3月07日
主文
1 被申立人ファーストクレジット株式会社について更生手続を開始する。
2 管財人に次の者を選任する。
(1) 東京都新宿区ab丁目c番d号
弁護士 池田 靖
3 更生債権及び更生担保権の届出期間等は,次のとおりである。
(1) 更生債権及び更生担保権の届出期間
平成14年4月10日まで
(2) 第1回関係人集会の期日
平成14年4月24日午後1時30分
(3) 更生債権及び更生担保権の調査の期日
平成14年5月14日午前10時30分
4 更生計画案の提出期間は,次のとおりである。
(1) 管財人が更生計画案を提出すべき期間
平成14年12月31日まで
(2) 申立人並びに届出をした更生債権者若しくは更生担保権者及び株主が更生計画案を提出することができる期間
平成14年11月30日まで
5 管財人は,会社更生法に定めるもののほか,次の行為をしなければならない。
(1) 毎月,更生会社の業務及び財産の管理状況について報告書並びに貸借対照表及び損益計算書を作成し,翌月末日までに,報告書に貸借対照表及び損益計算書の謄本を添付して裁判所に提出すること。
(2) 会社更生法178条2項の財産目録及び貸借対照表を遅くとも第1回関係人集会までに作成して,その謄本を裁判所に提出すること。
(3) 会社更生法180条の規定による報告を第1回関係人集会の期日までに裁判所に書面ですること。
(4) 更生計画案作成の時における財産目録及び貸借対照表並びに更生手続開始後の損益計算書を作成して,これらの謄本を更生計画案に添付すること。
6 管財人は,次の行為,業務をするには,裁判所の許可を得なければならない。
(1) 固定資産の処分(固定資産の除去を除き,所有権の移転,担保権の設定,賃貸その他一切の処分を含む。)
(2) 固定資産となるべき財産の取得
(3) 貸付け(手形割引を含む。)
(4) 借財(小切手の振出及び商業手形の裏書譲渡を除く。)及び保証
(5) 会社更生法103条の規定による契約の解除
(6) 訴えの提起及び保全,調停,支払督促その他これに準ずるものとして裁判所が指定するものの申立て並びにこれらの取下げ
(7) 和解及び仲裁契約
(8) 会社財産の無償譲渡(社会的儀礼の範囲のものを除く。),債務免除,無償の債務負担行為及び権利の放棄
(9) 会社更生法161条の2の規定による留置権の消滅請求その他更生担保権にかかる担保の変換(更新された火災保険契約上の火災保険請求権に対する担保変換としての質権の設定を除く。)
(10) その他裁判所の指定する行為
理由
証拠によれば,被申立人は,債務超過及び支払不能の虞があることが認められ,また,本件においては,更生手続を開始するについて障害となる事由があるとは認められない。
これに対して,被申立人は,①これまでも申立人を含む金融機関が参加する旧経営3カ年計画を誠実に履行してきたのであって,これに代わる新3カ年計画には申立人を除く大部分の債権者の同意を得ており,被申立人としては申立人の参加を拒むものではなく,同計画に基づく私的整理の方が更生手続よりも債権者にとって有利であり,本件においては更生手続による必要性がない,②申立人が会社更生手続を申し立てた目的は,専ら,瑕疵担保条項に基づいて,解除権を行使し,日本長期信用銀行株式の売買契約を締結した際に支払った貸付金債権の対価を預金保険機構から取り戻すことにあり,本件申立ては誠実になされたものではないとして,本件申立てを棄却すべきであると主張する。
しかしながら,申立人は,被申立人の債権総額の半数に迫る債権を有する大口債権者であり,被申立人の新3カ年計画では十分な債権回収が図れないとして,会社更生手続開始の申立てをしたものであって,新3カ年計画に反対する意思は明確であり,申立人に同調する債権者の債権額を加えると被申立人の債務総額の過半数を占める状況にある。しかるに,会社更生手続開始の申立後2か月余りが経過するにもかかわらず,この間,被申立人,申立人及びその他の債権者の間で問題の自主的解決に向けての進展は全く認められないのであり,このような状況に鑑みると,被申立人の主張するような新3カ年計画に基づく私的整理の基盤が失われていることは明らかである。加えて,新3カ年計画においては債権者からの新規融資を含む被申立人の再建計画が示されておらず,将来にわたって私的整理により再建が図られる保障はなく,会社更生手続により再建を図る必要性があると言うべきである。また,本件申立ての誠実性の点についても,旧経営3カ年計画が終了を迎え,大口債権者である申立人の意向に反して新3カ年計画を策定する動きのある中で,これに反対する債権者として債権回収を図るために,会社更生手続を利用することは債権者に許された権利の行使であり,他方で,本件申立てが専ら手続外の目的を図るために申し立てられたことを認めるに足りる証拠はない。
以上から,被申立人の主張はいずれも採用し難い。
よって,本件申立ては理由があるので主文第1項のとおり決定し,併せて,会社更生法46条,54条,178条2項,180条,181条,189条1項及び190条1項の規定に基づき,主文第2項から第6項のとおり決定する。
(裁判長裁判官 大谷禎男 裁判官 永野厚郎 裁判官 中山誠一)