東京地方裁判所 平成13年(ル)11375号 決定 2001年12月28日
主文
本件差押命令申立を却下する。
申立費用は債権者の負担とする。
理由
1 申立の趣旨及び争点
債権者は、別紙請求債権目録記載の債務名義(和解調書正本)に基づき、別紙差押債権目録記載の債権(銀行預金債権。以下「本件差押債権」という。)の差押を申し立てたものである。
本件の争点は、本件差押債権の名義人が債務者とは別会社(以下「申立外会社」という。)であることから、上記債務名義の執行力が上記銀行預金債権に及ぶかである。
2 当裁判所の判断
(1) 民事執行手続は、公権的に確定された権利関係を簡易迅速に実現することを本旨とする手続であり、そのためには、手続が明確かつ安定していることが要請される。したがって、執行力の範囲はあらかじめ債務者との関係で確定されていなければならないと解される。
(2) かかる観点からすると、執行力が及ぶ範囲は、外形上債務者の責任財産と認められるものに限られ、仮に債権者主張のように申立外会社が法人格を濫用して設立された会社であり、申立外会社と債務者が実質的に一体とみうるとしても、債権者と債務者との間の前記債務名義の執行力は申立外会社に及ばないと解するのが相当である。
(3) これに対し債権者は、東京国税局が本件差押債権の実質的債権者が債務者であると認定して、滞納処分により差押をしたことを根拠に、本件差押命令も発令されるべきと主張する。しかし、滞納処分に基づく差押と民事執行による差押は、基本的効果こそ同一であるものの、差押に至る認定手続等は差異があると考えられるから、上記解釈を左右するものではないというべきである。
3 結論
よって、本件差押債権に対し差押命令を発令することはできず、本件申立は理由がないから、主文のとおり決定する。
(別紙)請求債権目録、(別紙)差押債権目録
〔編集注・本頁1段参照〕