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東京地方裁判所 平成13年(ワ)15364号 判決 2002年8月27日

本訴原告・反訴被告

高橋一夫

本訴原告

株式会社損害保険ジャパン

本訴被告・反訴原告

佐藤みつ子

主文

一  本訴被告は、本訴原告高橋一夫に対し、八万九九七〇円及びこれに対する平成一二年七月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  本訴被告は、本訴原告株式会社損害保険ジャパンに対し、二九万九一〇〇円及びこれに対する平成一三年八月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  本訴原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  反訴被告は、反訴原告に対し、七万六二六三円及びこれに対する平成一二年七月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  反訴原告のその余の請求を棄却する。

六  訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを一〇分し、その三を本訴被告・反訴原告の負担とし、その余を本訴原告(反訴被告)らの負担とする。

七  この判決は、第一項、第二項及び第四項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

※以下、本訴原告・反訴被告高橋一夫を「原告高橋」と、本訴原告株式会社損害保険ジャパンを「原告会社」と、原告高橋と原告会社を併せて「原告ら」と、本訴被告・反訴原告佐藤みつ子を「被告」と、略称する。

第一請求

一  本訴請求

(1)  被告は、原告高橋に対し、一〇万円及びこれに対する平成一二年七月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(2)  被告は、原告会社に対し、一〇五万二四三八円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴請求

原告高橋は、被告に対し、九万二三三九円及びこれに対する平成一二年七月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

平成一二年七月二三日午後四時二〇分ころ、埼玉県大里郡花園町荒川一五四番地先の信号機により交通整理の行われている交差点(以下「本件交差点」という。)において、原告高橋の運転・所有する普通乗用自動車(以下「原告車両」という。)が、本件交差点を直進進行しようとしたところ、対向車線から転回するために本件交差点に進入し、本件交差点内で停止していた被告の運転・所有する普通乗用自動車(以下「被告車両」という。)と接触し、さらに、対向車線のうちの右折車線に停止していた辻昇一の運転・所有する普通乗用自動車(以下「辻車両」という。)と衝突した(以下「本件事故」という。)。その結果、原告車両、被告車両及び辻車両がいずれも損傷した。

原告高橋は、被告に対し、民法七〇九条に基づき原告車両の損害の賠償を請求し、また、原告高橋と保険契約を締結していた原告会社は、被告に対し、<1> 原告高橋に車両保険金を支払ったとして、商法六六二条一項、民法七〇九条に基づき損害賠償を請求し、<2> 原告高橋に代わり辻に対物賠償保険金を支払ったとして、共同不法行為者に対する求償権に基づき求償請求をした(本訴)。これに対し、被告は、原告高橋に対し、民法七〇九条に基づき被告車両の損害等の賠償を請求した(反訴)。本件の争点は、次の一ないし三である。

一  本件事故発生の原因

(1)  原告らの主張

ア 原告車両は、時速五〇kmないし六〇kmで本件交差点に差しかかったところ、本件交差点の二〇mないし三〇m手前で対面信号が黄色となったが、本件交差点手前の停止位置に安全に停止することができなかったため、そのまま直進して本件交差点に進入した。ところが、対向車線から転回のために本件交差点に進入した被告車両が、転回しきれず、原告車両の進行車線上の交差点出入口付近に停止したため、原告車両は被告車両と接触し、さらに、対向車線のうちの右折車線に停止していた辻車両に衝突した。

イ 本件事故に関し、原告高橋にも前方の安全を十分に確認せずに進行した過失があることは否定できない。なお、原告車両が本件交差点に進入する前に対面信号は黄色となったが、本件は、停止位置に近接していたため安全に停止できなかった場合に該当し、信号違反とはならない。

ウ 一方、被告は、転回するために本件交差点に進入したが、その際の対面信号は黄色か又は赤色・右折青矢印であった。対面信号が赤色・右折青矢印の場合、当該交差点を右折して交差道路へ進行する場合に限ってその交差点に進入できるのであり、本件のように交差点内で転回をするために進入し、Uターンをすることは許されておらず、この場合には赤信号無視となるとされている。また、交差点進入時に対面信号が黄色であったとしても、黄色の場合には停止位置に近接しているために安全に停止することができない場合以外は交差点に進入してはならないのであって、本件の場合、被告は交差点に進入する前は停止状態にあり、黄色で交差点に進入することが認められる特別の事情は存しない。

本件の場合、被告には、対向車線から原告車両が走行してきており、しかも一回で転回できるような状況ではなかったにもかかわらず、あえて転回した過失のほかに、上記のとおり信号違反の過失もある。

エ 被告車両が転回車、原告車両が直進車であること、その他の事情を考慮すると、原告高橋と被告との過失割合は、原告高橋が二割、被告が八割とするのが相当である。

(2)  被告の主張

ア 本件事故は、原告高橋の赤信号無視によるものである。しかも、原告高橋は、時速六〇kmの速度で本件交差点に進入している。

イ 被告に信号違反はないし、転回行為に法規違反はない。交差点で転回行為をする場合、交通量にもよるが、青信号のうちに転回できないときは、交差点内に進入し、直進車の交通が途切れて対面信号が黄色か赤色・右折青矢印になってから転回するのが一般的である。原告らの主張は、交差点における運転慣行、マナーを無視したものである。

二  被告の賠債すべき損害額

(1)  原告らの主張

ア 本件事故による原告車両の損害は・修理代二九万九九〇〇円である。また、辻車両の損害は、修理代九九万三六四七円と代車料一四万七〇〇〇円との合計一一四万〇六四七円である。

被告は辻車両の時価は八一万円であると主張するが、辻車両は、日産セレナ二〇〇〇FXの中でも、バンパー等の改造がされ特別製のシートが設けられた特別仕様車で、「キタキツネ」の名称で売り出された車両であり、本件事故当時の時価は一〇〇万円程度と考えられる。

イ 被告は、過失相殺の結果、原告高橋に生じた損害の八割相当額である二三万九九二〇円を賠償すべきである。また、辻に対しては、共同不法行為者である原告高橋と被告が上記の過失割合に応じて責任を分担すべきであるから、被告の負担額は九一万二五一八円となる。

ウ ところで、原告会社は、平成一一年一一月三〇日、原告高橋との間で、原告車両を被保険自動車として、車両保険及び対物賠償責任保険を含む自動車保険契約を締結した。

エ 原告会社は、平成一二年八月七日ころ、上記保険契約の車両保険条項に基づき、原告高橋の上記損害に関し、免責額一〇万円を控除し、同人の指示に従い修理業者に対し一九万九九〇〇円を支払った。

また、原告会社は、上記保険契約の対物賠償責任保険条項に基づき、辻の上記損害に関し、原告高橋に代わり、辻の指示に従い修理業者等に対し合計一一四万〇六四七円を支払った。

オ 上記各保険金の支払により、原告会社は、原告高橋の被告に対する損害賠償請求権二三万九九二〇円のうち一三万九九二〇円の損害賠償請求権を代位取得し(免責額一〇万円については、原告高橋が被告に対して損害賠償を請求するものである。)、さらに、原告高橋の被告に対する共同不法行為者間の求償権九一万二五一八円を代位取得した。

(2)  被告の認否・反論

ア 原告車両の損害は、認める。

イ 辻車両の修理代九九万三六四七円は、否認する。辻車両は平成六年登録の車両であり、平成一二年七月のレッドブックによれば、その時価は八一万円である。したがって、辻車両は全損と評価すべきものであり、時価八一万円を超える部分の損害賠償を請求することはできない。辻車両のその余の損害は、不知。

三  原告高橋の賠償すべき損害額

(1)  被告の主張

ア 修理代 八万〇三七七円

本件訴訟においては、上記金額の九〇%の七万二三三九円を請求する。

イ 弁護士費用 二万〇〇〇〇円

ウ 合計 九万二三三九円

(2)  原告高橋の認否

被告の主張は争う。

第三争点に対する判断

一  本件事故発生の原因について(争点一)

(1)  甲一ないし三、一三ないし一五、乙一ないし四、証人辻昇一の証言、原告高橋本人の供述(ただし、後記採用しない部分を除く。)、被告本人の供述によれば、本件事故発生の経過に関し、次の事実を認めることができる。

ア 本件交差点は、熊谷方面から秩父方面に至る車道幅員一六mの国道一四〇号線バイパス(以下「南北道路」という。)と、小川方面から児玉町方面に至る車道幅員一〇mの道路とが交差する、信号機による交通整理の行われている交差点である。

イ 本件交差点における南北道路の信号サイクルは、一サイクルが九七秒であり、青色が三六秒、黄色が四秒、赤色・右折青矢印が六秒、黄色が二秒、赤色が四九秒の順であった。

ウ 原告高橋は、本件事故当時、南北道路を北から南に向けて走行し、本件交差点を直進進行しようとしていた。原告高橋は、対面信号の表示が本件交差点のかなり手前で青色から黄色に変わったにもかかわらず、停止することなく進行し、原告高橋が本件交差点に進入しようとした段階では、その対面信号は既に赤色・右折青矢印を表示していた。

エ 一方、被告は、本件事故当時、南北道路を南から北に向けて進行し、本件交差点を転回(Uターン)しようとして、他の数台の車両とともに右折車線で待機していた。

オ そのうち、南北道路の対面信号の表示が青色から黄色に変わったため、被告車両の前方で待機していたトラックが右折を開始した。被告車両は、トラックの後方にいた車両が右折を開始したのに続いて、転回を開始したが、一回で転回を終えることができず、切り返しをしようとして反対車線の第一車線上の横断歩道の先辺りで停止していた。また、被告車両の後方にいた辻車両は、その時点でもなお右折車線で待機し、前方の車両が右折を終えるのを待っていた。

カ この時点で南北道路の対面信号は赤色・右折青矢印を表示していたが、原告車両は、本件交差点を直進進行しようとして、南北道路の第一車線を時速五〇kmないし六〇kmくらいの速度で走行し、本件交差点に進入してきた。原告高橋は、転回のため停止していた被告車両を発見してハンドルをやや右に切り、被告車両の後部に接触した後、対向車線の右折車線で待機していた辻車両に衝突した。

(2)  双方の主張に対立のある本件事故時における南北道路の対面信号の表示について、上記のように認定した理由は次のとおりである。

原告らは、原告車両は、本件交差点の手前で対面信号が黄色となったが、本件交差点手前の停止位置に安全に停止することができなかったため、そのまま直進して本件交差点に進入したと主張する。そして、原告高橋本人は、「交差点の七〇mないし八〇m手前で本件交差点の信号が青色を表示しているのを確認し、三〇mないし四〇m手前で青色から黄色に変わるのを見た。対面信号が黄色に変わったのは、トラックが右折しかかっている時である。停止線では止まることができないので、黄色の信号のうちに交差点を通り抜けようと思ってそのまま進行した。交差点手前の停止線の辺りでも、黄色の表示を確認した。」と、原告らの主張に沿う供述をしている。

これに対し、証人辻は、「対面信号が黄色に変わってから、トラックが発進しゆっくりと右折を開始した。後続車がこれにくっついて行った。被告車両がUターンをしたのは見ていない。トラックの運転席が交差点の中程に差しかかったところで、対面信号が赤色・右折青矢印に変った。トラックが通過したそのすぐ後ろを、原告車両が時速六〇kmくらいの速度で交差点に進入してきた。」と証言している。乙一(同人の陳述書)及び甲一五(同人からの聴取書)は、ほぼこれと同趣旨の内容である。

また、被告本人は、「対向車線のかなり遠方に原告車両を認めた。その後、トラックがゆっくりと右折を開始したが、この時、既に対面信号の表示は黄色に変わっていた。続いて乗用車が右折を開始し、これに続いて被告車両もUターンを開始した。対面信号が赤色・右折青矢印になったのは、見ていない。」と供述し、乙三(同人の陳述書)にも、ほぼこれと同趣旨の記載がある。さらに、被告車両の同乗者である渡瀬美南子の作成した乙四の図面には、「トラックが右折を開始した時点で対面信号は既に黄色を表示しており、被告車両の前の車両が右折を終えた時点で、信号は赤色・右折青矢印に変わっていた。さらに、被告車両の後ろの車両が右折したところ、その後方から原告車両が突っ込んできた。」旨が記載されている。なお、被告本人の供述によれば、被告の答弁書の添付図面も渡瀬の作成に係るものと認められるが、右折をした車両の数、車両の右折と被告車両のUターンとの先後関係などは、乙四とは多少異なっている。

ところで、原告車両は秒速十数m(時速五〇kmとして秒速約一三・九m、時速六〇kmとして秒速約一六・七m)の速度で走行していたから、原告高橋本人の供述するとおり、本件交差点の三〇mないし四〇m手前で対面信号の表示が黄色に変わったとすれば、原告車両は信号が黄色を表示している四秒の間に本件交差点を通り抜けることができ、本件事故も南北道路の対面信号が黄色を表示している間に発生したことになる。

しかし、証人辻の証言、被告本人の供述、渡瀬美南子の陳述は、車両の右折と被告車両のUターンとの先後関係などについては一致しない部分があるものの、被告車両に先行するトラックが対面信号が黄色になった後に右折を開始したことでは一致しており、さらに、証人辻と渡瀬は、ともに、原告車両が本件交差点に進入してくる前に、既に南北道路の対面信号が赤色・右折青矢印に変っていたと述べる。特に、辻は中立的な立場にある目撃者であって、同人の証言の信用性を疑うべき事情は存しない。

以上によれば、原告高橋本人の前記供述部分は採用し難く、原告高橋は、停止位置で安全に停止できる地点で対面信号が黄色に変わったのを確認したにもかかわらず、本件交差点の手前で停止せず、その結果、対面信号が赤色を表示している時に本件交差点に進入したものである。

(3)  以上の事実に基づいて、本件事故についての原告高橋と被告の双方の過失の有無及び割合を検討する。

前記認定事実によれば、原告高橋には、対面信号が赤色を表示しているのに本件交差点に直進進入した過失及び進路前方の安全確認を怠った過失があることが明らかである。この過失の程度は、後記の被告の過失に比べてより重いものというべきである。

一方、前記認定事実及び被告本人の供述によれば、被告は、本件交差点をUターンして秩父方面に戻ろうとし、対面信号が青色を表示している時に本件交差点の右折車線に進入し、対面信号が黄色に変わったころから前方の右折待機車両が順次右折していくのに続いて走行し、対面信号が赤色・右折青矢印を表示している時に転回を開始したこと、その際、対向車線を進行してくる原告車両の存在を認識していたが、信号の表示から見て本件交差点に進入してくることはないものと考えていたこと、被告は、被告車両の左の車輪が縁石にかかったため一回でUターンを終えることができず、反対車線の第一車線上の横断歩道の先辺りで、車両の後部がやや第二車線に跨がる位置に停止したこと、被告は、切り返しをしようとしたが、原告車両が本件交差点に進入してくるのに気付いてその位置に停止していたことが認められる。

ところで、車両は、転回を開始した場合には、他の車両の交通を妨げないよう速やかに転回を終えるべき義務があるが(道路交通法二五条の二参照)、被告は、比較的幅員の狭い道路(甲二によれば、Uターン先の車道の幅員は六・四mと認められる。)で転回をしようとした結果、一回で転回を終えることができず、反対車線の第一車線を塞ぐ状態で停止したものであって、不適切な転回の方法を採った過失がある。また、対面信号が赤色・右折青矢印を表示しているときは、車両は当該交差点を右折し、交差道路へ進行することができるだけであるから、交差点内で転回する行為は形式的には赤信号に違反する(甲一六参照)。もっとも、青信号で交差点に進入して右折車線で待機し、信号の表示が赤色・右折青矢印に変わるのを待って転回をすることは、多く例が見られるところであり、一般に、運転者としては特に違法な行為とは認識しておらず、実際にも、速やかに転回を終える限りは行為の危険性も少なく、直進車が赤信号を無視して交差点に進入するような場合に比べて、社会的非難の程度は軽い。

以上の事情を総合して考慮すると、本件における過失割合は、原告高橋七〇:被告三〇と認めるのが相当である。

二  被告の賠償すべき損害額について(争点二)

(1)  原告車両の損害が修理代二九万九九〇〇円であることは、当事者間に争いがない。

(2)  辻車両について、原告会社は、修理代九九万三六四七円の損害を被ったと主張し、これに対して、被告は、辻車両の時価は八一万円であり、修理代がこれを超えるから、いわゆる経済的全損に当たると主張する。

ところで、乙七、八及び弁論の全趣旨によれば、辻車両は平成六年に初度登録されたニッサン・セレナ二〇〇〇FX・型式E―KBC二三であり、本件事故当時のレッドブックによれば、中古車市場における価格は八一万円であると認められる。しかし、他方、甲八によれば、辻車両は「グレード:KITUNE」といわれる特別仕様車であると認められるから、中古車価格も八五万円程度は下回らないと認めるのが相当であるが、いずれにしても、本件はいわゆる経済的全損の場合に当たるので、この八五万円を限度として車両損害を請求し得るものというべきである。

また、甲九によれば、辻は辻車両の修理を前提に代車料一四万七〇〇〇円を損害を被ったと認められるところ、辻車両を買い替えた場合であっても、同程度の代車料を要したものと認めるのが相当である。

したがって、辻車両の損害は合計九九万七〇〇〇円となる。

(3)  甲一〇ないし一二によれば、原告会社は、平成一一年一一月三〇日、原告高橋との間で、原告車両を被保険自動車として自動車保険契約を締結したこと、原告会社は、平成一二年八月七日ころ、上記保険契約の車両保険条項に基づき、原告高橋の上記損害に関し、免責額一〇万円を控除し、同人の指示に従い修理業者に対し一九万九九〇〇円を支払ったこと、また、原告会社は、上記保険契約の対物賠償責任保険条項に基づき、辻の上記損害に関し、原告高橋に代わり、辻の指示に従い修理業者等に対し合計一一四万〇六四七円を支払ったことが認められる。

(4)  ところで、原告高橋と被告との過失割合は、前記のとおり七〇:三〇であるから、原告車両の損害二九万九九〇〇円については、過失相殺の結果、被告はその三割相当の八万九九七〇円を賠償すべきである。これは、免責額一〇万円の範囲内であるから、原告高橋の被告に対する請求はこの限度で理由があり、原告会社の保険代位に基づく請求は理由がない。

また、辻車両の損害は合計九九万七〇〇〇円であり、共同不法行為者である原告高橋と被告が前記の過失割合に応じて責任を分担すべきものであるから、原告高橋に代わり辻に対してその損害を賠償した原告会社は、その三割相当の二九万九一〇〇円について、被告に求償請求することができる。

三  原告高橋の賠償すべき損害額について(争点三)

(1)  乙五によれば、被告車両の損害は修理代八万〇三七七円であると認められ、前記の過失割合に従って過失相殺をすると、原告高橋の賠償すべき損害額は五万六二六三円(円未満切り捨て)となる。

(2)  本件事案の内容、認容額等を考慮すると、弁護士費用としては二万円をもって相当と認める。

(3)  したがって、原告高橋が被告に賠償すべき損害額は、合計七万六二六三円となる。

第四結論

一  本訴請求について

原告高橋の本訴請求は、被告に対し八万九九七〇円及びこれに対する本件事故発生の日である平成一二年七月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告会社の本訴請求は、被告に対し二九万九一〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成一三年八月一四日から支払済みまで上記年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の各請求はいずれも理由がない。

二  反訴請求について

被告の反訴請求は、原告高橋に対し七万六二六三円及びこれに対する上記平成一二年七月二三日から支払済みまで上記年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 河邉義典)

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