大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成13年(ワ)21182号 判決 2002年12月18日

原告

株式会社フロントウイング

代表者代表取締役

山川竜一郎

訴訟代理人弁護士

岡邦俊

小林克典

小畑明彦

近藤夏

沼本吉晃

被告

竹内博

(以下「被告竹内」という。)

被告

有限会社ガンホー

(以下「被告ガンホー」という。)

代表者代表取締役

新田勝貴

被告

株式会社サカモト

(以下「被告サカモト」という。)

代表者代表取締役

坂本比呂志

上記三名訴訟代理人弁護士

寒河江孝允

武藤元

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  請求

1  被告らは、別紙目録記載のゲームソフト(以下「被告製品」という。)を製作、頒布してはならない。

2  被告らは、原告に対し、連帯して金五三二四万円、及びこれに対する平成一三年一〇月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第2  事案の概要

1  概要

原告は被告らに対し、選択的に、以下の請求をした。

(1)  著作権侵害

被告製品を製作、販売する被告らの行為は、原告が著作権を有する別紙著作権目録記載の「基本シナリオ」(以下「本件基本シナリオ」という。)を翻案する行為であり、原告の著作権を侵害すると主張して、被告製品の製作、頒布の差止めと損害賠償の支払を求めた。

(2)  債務不履行等

被告製品を製作する被告竹内及び被告ガンホーの行為は、原告に対する業務委託契約違反を構成すると主張し、また、被告製品を販売する被告サカモトの行為は、原告に対する不法行為を構成すると主張して、損害賠償の支払を求めた。

2  前提となる事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨より認められる事実。なお、証拠により認定した事実については末尾に摘示した。)

(1)  当事者

ア 原告

原告は、ゲームソフトの企画、製作などを目的とする株式会社である。

イ 被告

(ア) 被告竹内は、もとフリーのソフト製作ディレクターであった。被告竹内は、平成一二年五月一七日から同一三年八月二〇日ころまでの間は、原告と業務委託契約を締結していたが(契約の内容及び契約が効力を有していた期間については争いがある。)、平成一二年一二月ころ被告ガンホーに雇用された。

(イ) 被告ガンホーは、コンピュータゲームのソフトウェアとハードウェアの企画、製作及び販売等を目的とする有限会社である。

(ウ) 被告サカモトは、出版物の保管、管理などを目的とする株式会社であり、本件製品を販売した。

(2)  被告製品の内容

被告製品は、本件基本シナリオに依拠して作成された完成シナリオに基づき、登場するキャラクターや場面の映像、会話、音楽等を一体として、全寮制の男子校に女子生徒が転校してきたことから引き起こされる高校生の男女の友情や恋愛をめぐるシミュレーション・ゲームである。

(3)  基本シナリオの作成

ア 原告、被告ガンホー、被告竹内らは、平成一二年一〇月ころ、高校生等を主人公にした友情、恋愛シミュレーションゲームの製作、販売等について企画した(その企画の主体、発案者や基本シナリオの作成過程は争いがある。)。

同作品は、その後、製作の過程で題名を「グリーン・グリーン」とすることとされた(以下「グリーン・グリーン」という場合がある。なお、企画の初期のものについても、同じ名称を使用する。)。

イ 平成一三年二月末日ころまでに、別紙著作権目録記載のとおりの本件基本シナリオが作成された。本件基本シナリオは、「グリーン・グリーン」の作品の特徴、ストーリー展開、主要登場人物の設定、サブキャラクターの設定などが、各項目に分けて、文章で概括的に記載されている。

(4)  被告らによる被告製品の製作、販売

ア 被告ガンホーは、販売会社から、あらかじめ開発資金を受け取って、ゲームソフトの開発を行う方法を採っている。製作に関与した被告ガンホーは、原告との間で、「グリーン・グリーン」の開発費用の支払方法やロイヤリティの配分等について、交渉を重ねたが、結局、正式の契約締結に至らなかった。

被告ガンホーは、平成一三年三月一五日、被告サカモトとの間で、「グリーン・グリーン」について、被告サカモトに対して著作権を譲渡し、販売させることを内容とする商品開発契約を締結した(乙4)。

イ 被告竹内及び被告ガンホーの関係者は、「グリーン・グリーン」の本件基本シナリオに基づき、これを発展させて、平成一三年六月二八日、「グリーン・グリーン」のシナリオを完成させた(以下「完成シナリオ」という。)。

ウ 被告竹内及び被告ガンホーは、完成シナリオに基づいて、映像、音楽等を付加して被告製品を完成させ、被告ガンホーは、平成一三年一〇月五日、被告製品を発売した。

3  争点及び当事者の主張

(1)  本件基本シナリオは著作物といえるか。

(原告の主張)

映画やTVドラマなどの映像作品における基本のシナリオについては、「作品の主題」、「筋の運び」、「ストーリーの展開」、「背景・環境の設定」、「登場人物の個性」、「作品構成上の内的な要素」などが具体化している場合には、思想又は感情の創作的な表現に当たるということができる。本件基本シナリオは、これらの要素をすべて備えているので、著作物といえる。

(被告らの反論)

本件基本シナリオは著作物性がない。

本件基本シナリオは、平成一三年二月下旬に被告ガンホーから原告に中間報告として示された構想をまとめたものにすぎないのであって、思想又は感情の創作的な表現とはいえない。

(2)  原告は本件基本シナリオを著作したといえるか。

(原告の主張)

ア 本件基本シナリオは、原告の発意に基づき、総合プロデューサーである原告代表者山川竜一郎(以下「山川」という。)のほか、原告役員及び社員が共同して職務上作成したものであり、また、原告名で公表することが予定された著作物であるから、職務著作に該当し、著作権法(以下「法」という。)一五条一項により、原告が著作したものである。

被告竹内が、ディレクター(主として営業・外注管理を担当する補助プロデューサー)として本件基本シナリオの作成に何らか関与したことがあるとしても、被告竹内は、業務委託契約に基づく原告の契約社員であるから、原告が本件基本シナリオを著作したと評価することの妨げになるわけではない。

イ 仮に、原告と被告竹内との業務委託契約が、雇用契約ではなく、被告竹内の行為が職務著作行為ではないとしても、同契約には、被告竹内の創作活動によって生じた著作権は原告が取得するという合意が含まれている。したがって、原告は、同契約によって、本件基本シナリオについて著作権を取得した。

(被告らの反論)

ア 本件基本シナリオの創作経緯

本件基本シナリオを創作したのは、以下のとおり、被告ガンホーであって、原告ではない。

本件基本シナリオは、被告ガンホーが組織した者によって創作された。被告竹内は、「グリーン・グリーン」の統括プロデューサーとして、企画の全体を統括する地位にあった。そして、ガンホー取締役の吉原祥史(以下「吉原」という。)がディレクター(監督)として、フリーの重松由一(以下「重松」という。)及び山口昇(以下「山ロ」という。)がシナリオライターとして、被告ガンホーの社員であった牧野高久(以下「牧野」という。)がイラストレーターとして、本件基本シナリオの創作過程に関与した。被告ガンホーは、これらのスタッフのすべてを組織し、制作費、人件費等のすべてを負担している。

イ 被告竹内の地位

被告竹内は、被告ガンホーに、平成一二年一〇月一日に試験入社し、同年一二月一日に正式入社した。

被告竹内は、同一三年一月二九日には、使用者である被告ガンホーの了承の下で、原告と「グリーン・グリーン」のプロデュースを目的とした業務委託契約を結んだ。これは、「グリーン・グリーン」の販売に関して、原告の広告能力等を活用して、販売促進に結びつける目的で、被告竹内自らが原告の会社内で、販売準備活動を統率するために締結したものである。

被告竹内は、上記業務委託契約締結後も、勤務時間の八割に当たる時間を、被告ガンホーで職務を行い、被告製品の創作等を行っていた。

ウ 被告製品に関する原告の位置付け

そもそも、被告製品は、ソフトウエア製作会社である被告ガンホーが、従業員ら(当時被告ガンホーの正社員であった被告竹内も含む。)により発案、企画、製作がされたものである。被告ガンホーは、開発費の負担を受け、完成したゲームソフトの販売元とする予定で、原告に、契約の締結等の計画を持ち込んだにすぎない。

ところで、被告ガンホーは、原告を、被告ガンホーが完成させた「グリーン・グリーン」の販売会社と位置付けて、原告との間で、ゲームソフト開発委託契約を締結しようと折衝したが、開発委託金額や支払条件について合意できず、ゲームソフト開発委託契約を締結するに至らなかった。

(3)  被告らの行為は債務不履行行為ないし不法行為を構成するか。

(原告の主張)

ア 被告竹内の債務不履行

(ア) 原告は、平成一二年一〇月、山川を総合プロデューサーとしてゲームソフト「グリーン・グリーン」の製作を企画した。

原告は、原告が発売した前作である「カナリア」の営業・外注管理担当の契約社員であった被告竹内に対し、補助プロデューサー業務を委託することとし、「カナリア」に関する契約を更新して、同一三年一月二九日、被告竹内との間に、契約期間を同年一月一日から一二月三一日とする「業務委託契約」(以下「本件業務委託契約」といい、対象業務を「本件業務」という。)を締結した。

(イ) 被告竹内は、原告の契約社員であるから、①契約により当然に、また、②「本件業務委託契約」の各条項により、専念義務ないし忠実義務を負う。

a 原告の指示に基づき本件業務を誠実に遂行し、原告の承諾なく本件業務を第三者に委託し、または第三者と共同で遂行しないこと(第一条三項)

b 本件業務の成果を原告に納品すること(第二条)

c 本件業務に関し、著作権その他の権利を主張しないこと(第三条)

d 本件業務の履行に関して知り得た業務上及び技術上の情報(グリーン・グリーンのタイトル、キャラクターの名称等を含む)を原告の承諾なしに第三者に開示しないこと(第一〇条)

e 原告の書面による承諾がない限り、本件業務委託契約に基づく一切の地位を他に譲渡しないこと(第一一条)

(ウ) 被告竹内は、以下のとおり、上記契約上の義務に違反する行為をした。

a 被告竹内は、平成一二年一二月一日、原告に秘匿して、被告ガンホーの社員となった。同行為は、原告の指示に基づき本件業務を誠実に遂行すべき義務に違反する行為(一条三項違反)である。

b 被告竹内は、遅くとも平成一三年二月中旬以降、原告のために本件業務委託契約上の業務を遂行せず、原告と敵対関係にある被告ガンホー及び被告サカモトのために本件業務委託契約と同内容の業務を遂行した。同行為は、原告の指示に基づき本件業務を誠実に遂行すべき義務に違反する行為(一条三項違反)である。

c 被告竹内は、本件業務の成果を原告に納品する債務を履行不能とした(二条違反)。

d 被告竹内は、被告ガンホー及び被告サカモトのために本件業務委託契約上の業務と同一内容の業務を遂行する過程で、本件業務の履行に関して知り得た業務上及び技術上の情報を、原告の承諾なしに被告ガンホー及び被告サカモトに開示した(一〇条違反)。

イ 被告ガンホーの債務不履行

(ア) 原告と被告ガンホーとは、遅くとも平成一三年一月初旬以降、口頭の業務委託(請負)契約を締結した。同契約の内容は、原告が被告ガンホーに対して、「グリーン・グリーン」の製作を発注ないし委託し、被告ガンホーは原告に対し、業務を誠実に遂行し、成果物を原告に納品すべき義務を負うものであった(乙6)。

(イ) 上記契約は、原告と被告ガンホーとの間で、平成一三年一月五日に締結された「覚書」(以下「本件覚書」という。)により書面化され、確認されている。本件覚書は、既に成立した「グリーン・グリーン」の製作業務に関する請負契約に関して、注文者である原告の任意解除権(民法六四一条)の行使を制限する目的で締結されたものである。すなわち、本件覚書は、原告と被告ガンホーの間に「グリーン・グリーン」の製作業務に関する請負契約が存在することを確認し、既に、合意されている契約条件に即した正式契約の書面を「速やかに」作成することを双方に義務付けたものである。

本件覚書には、被告ガンホーから原告に対する覚書解除事由が列挙され、その中に「甲(被告ガンホー)が『企画書』『予算概要書』を乙(原告)に提出してから一ヶ月以内に乙から正式な回答が得られなかったとき。」(三条一号)は、直ちに「業務委託(請負)契約」を解除することができる趣旨が規定されている。したがって、原告にその他の債務不履行事由があれば、被告ガンホーは、催告した上で、「業務委託(請負)契約」を解除できることになる。しかし、解除事由は存在しない。

したがって、被告ガンホーは、遅くとも平成一三年二月一四日の時点において、原告との間で、正式契約としての「ソフトウェア開発委託契約」(乙6)どおりの契約を締結し、契約書を作成する義務を負い、また、「業務委託(請負)契約」に基づき原告に成果物を納品すべき義務を負った。

(ウ) しかるに、被告ガンホーは、平成一三年三月一五日付で被告サカモトとの間に本契約と同一内容の「商品開発契約」(乙4)を締結したのであるから、被告ガンホーの行為は、原告との業務委託(請負)契約上の完成・引渡義務に違反する。

ウ 被告サカモトの不法行為

被告サカモトは、当初、原告と被告竹内及び被告ガンホーとの各契約関係を十分に知っていた。

それにもかかわらず、被告サカモトは、被告竹内を通じて、「グリーン・グリーン」の販売を担当したいと原告に働きかけ、平成一三年三月一五日、被告ガンホーとの間において、「グリーン・グリーン」の開発業務を依頼するとの趣旨の「商品開発契約」(乙4)を締結した。被告サカモトの上記行為は、原告の被告竹内及び被告ガンホーに対する各契約上の債権を侵害する不法行為である。

(被告らの反論)

ア 被告竹内の債務不履行について

(ア) 本件業務委託契約の内容

被告竹内が、原告との間で本件業務委託契約を締結して、原告内で、プロデュース及び広報営業活動等をしたのは、被告ガンホーが企画した「グリーン・グリーン」を商品化するためであった。すなわち、原告には、「グリーン・グリーン」の広報活動を行うことのできる人材がなかったため、被告竹内自らが原告に入って、自ら業務を行う必要があると考えたためである。

原告は、本件業務委託契約は、前作である「カナリヤ」に関する業務委託契約を平成一二年一〇月一日ころに更新し、これを平成一三年一月二九日に書面化したものである旨主張する。しかし、本件業務委託契約と「カナリア」に関する業務委託契約とは、対象商品が異なること、委託の目的である業務の内容が異なること(前者は、ディレクション・サポートであるのに対して、後者はプロデュース・広報営業活動等)から、更新とはいえない。

(イ) 被告竹内の義務違反行為の有無

原告と被告竹内との間の本件業務委託契約は、被告ガンホーの企画開発する「グリーン・グリーン」に関する業務委託契約であるから、被告ガンホーが原告との間の契約締結を断念し、被告サカモトとの商品開発契約を締結したことにより、被告竹内の責めに帰すべからざる事由によって履行不能になり、また、その目的も消滅した。よって、被告竹内の契約上の義務は消滅した。

したがって、被告竹内の義務違反行為は存在しない。

なお、被告竹内が、被告ガンホーに対して、業務内容を開示することができることは、被告竹内がそもそも被告ガンホーの従業員であること、「グリーン・グリーン」の企画開発が被告ガンホーにおいてされること等から当然に許される。

イ 被告ガンホーの債務不履行について

(ア) 本件覚書は、原告と被告ガンホーとの間の開発契約が立ち消えになることを阻止するため、また、開発中のゲームの著作権が被告ガンホーに帰属することを確認するため、締結されたものであって、両者間の契約締結義務を定めたものではない。本件覚書の第二条中には、「甲と乙は、(中略)正式契約を締結する。」旨の記載が存するが、訓辞的な意味を有するにすぎない。

(イ) 平成一三年三月一〇日ころ、被告ガンホーの代表者である新田は、原告の交渉担当者である五十嵐に対して、本件覚書について、解約の告知をした。本件覚書の効力は、これにより消滅した。

したがって、平成一三年三月一五日、被告ガンホーが被告サカモトとの間で「商品開発契約」を締結したことは、業務委託契約に違反するものではない。

ウ 被告サカモトの不法行為について

被告竹内及び被告ガンホーは、上記ア、イ記載のとおり、遅くとも平成一三年三月一五日以降は、原告に対して何らの義務も負っていないから、被告サカモトの行為は、原告の債権を侵害するものではない。

(4)  損害額

(原告の主張)

ア 著作権侵害による損害

(ア) 被告サカモトは、平成一三年一〇月五日、被告製品を発売し、二万本を販売するものとみられるが、これによる被告サカモトの利益は以下のとおりである。

a 発売本数 二万本

b 一本の卸価格 四八四〇円

c 粗利益率 五五%

d 利益額(a×b×c)

五三二四万円

被告サカモトの利益額は、原告の損害額と推定される(法一一四条一項)。

(イ) 被告竹内及び被告ガンホーは、共同不法行為者として、被告サカモトと連帯して上記被告サカモトの利益額と同額について、損害賠償の責めを負う。

イ 債務不履行行為及び不法行為による損害

原告は、被告竹内、被告ガンホーの債務不履行行為及び被告サカモトの不法行為によって、上記アの被告サカモトの利益額と同額の得べかりし利益を喪失した。

よって、被告らは、連帯して、上記アと同額について、損害賠償の責めを負う。

(被告らの反論)

被告サカモトが被告製品を発売した時期、販売本数、卸価格については認め、その余は否認ないし争う。

第3  争点に対する判断

1  争点1(本件基本シナリオは著作物といえるか)について

本件基本シナリオは別紙著作権目録記載のとおりである。本件基本シナリオには、①「グリーン・グリーン」のシミュレーションゲームとしての作品の特徴、②男女間の恋愛や友情をテーマにしたストーリー展開、③主要登場人物の性格や身体的な特徴等の設定、④その他の登場人物の設定、などが文章により記述されている。上記記述によれば、本件基本シナリオは、作者の個性が発揮されたものであって、思想又は感情を創作的に表現したものといえるから著作物性を有する。

2  争点2(原告が本件基本シナリオを著作したか)について

本件基本シナリオは、原告の発意に基づいて、原告の業務に従事する者により職務上作成された著作物であるか否かについて検討する。

(1)  事実認定

証拠(甲1、2、6、8、9、19、乙2、5ないし7、10ないし21、枝番号の記載は省略する。以下同様である。)によれば、以下のとおりの事実が認められ、この認定を覆すに足る証拠はない。

ア 本件基本シナリオの製作過程

(ア) 被告ガンホーは、ゲームソフトの企画、開発等を業として行う会社である。被告竹内は、平成一二年一〇月一日、被告ガンホーに雇用(試用、一二月から本採用)された。被告竹内は、被告ガンホーの企画会議で、自己の高校生活を題材にしたシミュレーションゲームソフトを制作、販売することを提案し、賛同を得たため、同年一一月ころ、「グりーン・グりーン」の基本的な構想をまとめ、被告ガンホーの取締役である吉原の了解を得て、企画を実施することになった。

被告ガンホーは、平成一二年一一月ころから、製作スタッフを配し、「グリーン・グリーン」の脚本の製作を開始した。

(イ) 被告ガンホーの組織した製作スタッフ及びその役割分担は、おおむね以下のとおりである。すなわち、①被告竹内が、プロデューサー業務、コンセプトの決定、広報方法立案、広報活動、外注制作者の召集と仕事発注等を担当し、②新田勝貴(以下「新田」という。被告ガンホーの代表者)が、販売会社から開発資金を調達するための交渉を担当し、③吉原(取締役)が、ソフトディレクター等として、開発計画の立案を担当し、④牧野(被告ガンホー社員)が、登場キャラクターの絵柄の作成を担当し、⑤山口及び重松(いずれもフリーのシナリオライター)が、あらすじから台本までの作成を担当することとした。

(ウ) 被告ガンホーは、平成一三年一月三一日、シナリオライターである前記山口、重松と、それぞれ「グリーン・グリーン」の製作等に関して業務委託契約を締結した。すなわち、「グリーン・グリーン」の登場キャラクター三人分のシナリオ作成と演出、それに関わる設定の作成、宣伝広告用の素材作成を山口らが行なうこと、これに対する対価の支払を条件として、その成果物に関する著作権を被告ガンホーに譲渡すること、被告ガンホーは、対価として、平成一三年一月末日から同年五月末日まで、月々二〇万円を支払うことなどが定められた。

(エ) シナリオ作成の過程は、以下のとおりである。①吉原が、基本構想である被告竹内の高校生活を基にして、ゲームとして成立するようなアイデアを提供するとともにストーリーとしての整合性を図るなどし、②被告竹内が、使用される音楽の傾向と設定、具体的な広告展開のプランや、販売促進に関する必要素材の選定、外注先の選定と交渉を行い、③牧野が、登場するキャラクターの詳細なデザイン設定を行い、④山ロ及び重松が、被告竹内の体験談に脚色を加えて、ストーリーの起伏(起承転結)の設定や、世界観の設定を行って、主要登場人物のキャラクター設定及びサブキャラクターの設定等を具体化して、執筆を進めた。

(オ) 被告ガンホーの上記スタッフは、製作活動を進め、平成一三年一月一九日の段階では、「グリーン・グリーン」のシナリオのうち、ヒロイン、サブキャラクターの設定等については、別紙「平成一三年一月一九日でのキャラクター設定」のとおりまで作成し、また、平成一四年二月末日の段階では、「グリーン・グリーン」のシナリオについては、本件基本シナリオのとおりまで作成した。

これに対して、原告は、本件基本シナリオの製作に当たり、製作スタッフに対して、指示を与える等の行為をすることはなかった。

イ 被告ガンホーと原告との関係

(ア) 被告ガンホーは、販売会社から、あらかじめ開発資金を受け取って、ゲームソフトの開発を行うシステムを採用している。被告ガンホーは、「グリーン・グリーン」に関して、原告から開発資金の提供を受けて、原告に著作権等を譲渡し、原告において、ゲームソフトの販売を行うこととした。

(イ) 被告ガンホーは、シナリオやキャラクター案に従って、ゲームソフトに組み込むためのデジタルデータを作成するための資金を必要としたが、そのための開発資金を原告から受けられなかったので、自己資金によって製作を進めざるを得なかった。

被告ガンホーの代表者である新田は、平成一二年一二月二一日、原告の代表者である山川にあてて、とりあえず、契約等を締結しないまま開発をスタートすること、その後、早い段階での原告との契約締結を希望すること、契約締結に至らない場合には、被告ガンホーが支出した開発費の一部は原告に請求し、さらに「版権」を原告に譲渡することはない旨を記載したEメールを送信した。

また、新田は、同月二七日、山川にあてて、契約締結に至らない場合、被告ガンホーから原告に対して請求する開発費の一部は、翌年一月以降に原告が買い取ることを前提に作った有形物に対するものであって、それより以前に被告ガンホーが独自の資金でデザインしたキャラクター、シナリオプロット分は請求をしない旨、それら成果物についての「版権の譲渡」はない旨を記載したEメールを送信した。

(ウ) 被告ガンホーと原告は、平成一三年一月五日、本件覚書を締結した。本件覚書では、①被告ガンホー及び原告が、「グリーン・グリーン」に関し、正式契約を締結する意思があること、②被告ガンホーが、正式契約の締結に先立ち、本件作品の開発を開始すること、③被告ガンホーが、原告に対し、「企画書」「予算概要書」を提出してから、一か月以内に、原告から正式な回答がない場合等には、被告ガンホーは、本件覚書を直ちに解除し、その時点で被告ガンホーが開発に要した金銭のうち妥当な額の支払を原告に要求することができること、解除された場合には、途中成果物の無体財産権及び所有権のすべては被告ガンホーに帰属する旨などが定められた。

以上の条項に照らすならば、本件覚書は、被告ガンホーが、自己負担で支出した開発資金を原告から確実に受け取るようにする目的で作成されたものとみられる。

(エ) 被告ガンホーは、平成一三年一月一四日、原告に対して、「企画御提案書」と題する書面(以下「企画提案書」という。)を渡した。企画提案書には、製作として「(有)ガンホー」の記載、作成者として被告竹内の、ディレクターとして吉原の、「ガンホー印」の欄には代表者の新田の、各押印がある。他方、「発売元承印」の欄に、原告の押印があり、「販売概要」として、「フロントウイングだからできる販売戦略の数々」、「大手出版社とのタイアップ展開」、「フロントウイング主催による独自イベントの開催。」などの記載がある。

(オ) 企画提案書に記載されたストーリーの内容は、おおむね以下のとおりである。すなわち、その内容は、「①緑豊かな山奥の全寮制男子校で、やるせない日々を送っていた主人公「高崎祐介」(ゲームのプレイヤー)。そんなある日、学校校長が学生に対して重大発表をする。この全寮制男子校に、女子生徒が編入してくることを決定したと。主人公をはじめ男子学生達は、この学校に入学して以来、女の子とまともに話をしたことがないため、不安と期待で一杯となる。②男と女という性差を異文化として捉える。③設定を大自然の中の全寮制学園生活に置く。学校生活という若者に違和感を与えない環境条件と、大自然の中という非日常的かつ新鮮な環境条件を同時に実現させるため、全寮制が設定され、ヒロイン達との時間共有を可能にしている。④主人公が個々のヒロイン達が持つそれぞれの「秘密」に関わる形でストーリーが進展する。ゲーム中に登場する五人のヒロイン達はそれぞれに何らかの「秘密」を抱えており、その各ヒロインが抱えた「秘密」は、主人公の周囲におこる事件の原因であったり、ヒロインの抱える悲しい過去(ヒロインのトラウマとして描写される)であったりする。プレイヤーがヒロイン達と仲良くなればなるほど、その秘密が徐々に明らかになり、「秘密」と「主人公に対する愛」が、「心に残る思い出」につながっていく。」というものである。

また、被告ガンホーは、平成一三年三月ころ、原告に対して、本件基本シナリオを渡した。その内容は、別紙著作権目録記載のとおりである。

(カ) 被告ガンホーと原告とは、正式契約締結に向けて交渉を続け、被告ガンホーに対して支払うべき著作権譲渡の対価につき、総額三〇〇〇万円とすることではおおむね合意がされたが、その支払時期やその他の条件等について、結局合意を得るに至らなかった。

ウ 被告竹内と原告との関係

(ア) 被告竹内は、平成一二年一一月ころから、被告ガンホーの従業員として、「グリーン・グリーン」の企画を立ち上げ、開発に関与した。被告ガンホーは、平成一三年一月五日、原告と本件覚書を締結した。

次いで、被告竹内は、平成一三年一月二九日、原告との間で、「グリーン・グリーン」に関して、本件業務委託契約を締結した。同契約は、①被告竹内は、「グリーン・グリーン」のプロデュース、広報営業活動全般、開発請負先の管理・折衝を行うこととする、②納品スケジュールは、原告と被告竹内が協議をして、別途定めることとする、③ソフトウェアに関わる著作権等は、被告竹内に属さないこととする、④報酬は毎月一二万円とし、特別経費として三万円を領収書と引き換えに渡すこととし、被告竹内のロイヤリティは、四%とする、⑤被告竹内は、業務の履行に関して知り得た業務上及び技術上の情報を原告の承諾なしに第三者に開示しないこととする、⑥契約期間は、平成一三年一月一日から、平成一三年一二月三一日までとすることなどが決められた。

(イ) 原告及び被告ガンホーの各代表者の間で交換したEメールの記載等(乙18ないし20)に照らすならば、原告代表者は、遅くとも、平成一三年一月二九日には、被告竹内が被告ガンホーに雇用されて、同被告のために業務を行っていることを認識していたことが明らかである。

(2)  著作者に関する判断

(ア)  以上認定した事実を総合すれば、本件基本シナリオの著作者は、原告ではなく、被告ガンホーであると解するのが相当である。理由は以下のとおりである。

すなわち、本件基本シナリオは、被告ガンホーが企画、開発し、商品として市場に供給するためのゲームソフト「グリーン・グリーン」の製作の一段階で作成されたものである。そして、その費用の一切は、被告ガンホーが支出している。被告ガンホーと原告との間の契約は成立せず、原告からは、開発費用等の支払は一切されていなかった。

また、本件基本シナリオを作成したのは、専ら、被告ガンホーの役員、従業員及び被告ガンホーが業務委託契約を締結したフリーのシナリオライター等である。すなわち、プロデューサー業務や広報活動等を担当した被告竹内、開発資金調達の交渉等を担当した新田、開発計画の立案を担当した吉原、登場キャラクターの絵柄の作成を担当した牧野はいずれも被告ガンホーの役員ないし従業員であり、脚本の作成を担当した山口らは、被告ガンホーから委託を受けた者であり、その費用も同被告が支出した。他方、山川その他原告の従業員らが、本件基本シナリオの創作に関与したことはない。

そうすると、本件基本シナリオは、被告ガンホーの発意に基づき、同被告の従業員らが共同して職務上作成したものであり、また、同被告名で公表することが予定された著作物であるから、法一五条一項により、同被告が著作したものであると解すべきである。

(イ) これに対して、原告は、被告竹内は、業務委託契約に基づく原告の契約社員として業務を行ったのであるから、原告が本件基本シナリオを著作したと解すべきであると主張する。

しかし、原告の主張は、以下のとおり採用できない。すなわち、①「グリーン・グリーン」の製作、販売については、被告ガンホーを開発先、原告を販売元とする旨が合意されており、これを前提に被告竹内との業務委託契約が行われていたとこと、②業務委託契約によれば、被告竹内の業務内容は、原告が「グリーン・グリーン」の販売元になることを想定して、その販売促進のための活動及び広報活動等であり、実際にも、広報活動を中心に業務を実施していたこと、③原告の代表者も、被告竹内が被告ガンホーの従業員として「グリーン・グリーン」に関する活動を行っていることを十分知っていたこと、④そもそも、本件基本シナリオの作成は、被告竹内が原告と業務委託契約を締結した平成一三年一月二九日には、その大部分が完了していたこと等の事実に照らすならば、被告竹内が、原告との間で、業務委託契約を締結したからといって、本件基本シナリオの著作者が被告ガンホーであるとの前記認定を左右することにはならない。

3  争点3(被告らの行為は債務不履行行為ないし不法行為を構成するか)について

(1)  被告竹内の債務不履行

ア 事実認定

証拠(乙4、9ないし11、17、20)によれば、以下の事実が認められる。

(ア) 原告と被告竹内との本件業務委託契約において、被告竹内の業務内容は、原告が「グリーン・グリーン」を販売するに際して、その広報活動等を行うことであった。

(イ) 他方、原告の代表者の山川らや被告ガンホーの役員である吉原らは、平成一三年三月一〇日ころ、「グリーン・グリーン」に関し、著作権を譲渡して、原告がゲームソフトの販売を行うという内容の契約の締結に関して交渉をしたが、条件が折り合わず、交渉は決裂し、被告ガンホーの代表者である新田は、原告に対し、口頭で、契約する意思は無いことを伝えた。そして、同年三月一五日、被告ガンホーは、被告サカモトを販売元とすることとして、商品開発契約を締結した。

(ウ) 被告竹内は、同年三月一五日以降は、原告から被告サカモトに引き継ぐための切り替えの時期や方法について、原告及び被告サカモトらと交渉をしたが、支払等に関する合意ができず引継ぎも難航した。

もっとも、原告と被告ガンホーは、同年三月二一日、別途、家庭用ゲームソフトのグラフィック製作の業務委託契約を結んだため、被告竹内は、同年四月の中旬までは、これに関連する原告の業務も担当した。同家庭用ゲームソフトの業務に関して被告竹内と原告との間に業務委託契約はなかった。

(エ) そして、被告竹内は、同年四月ころ、山川から、本件業務委託契約を解除する旨の告知を受けた。そこで、被告竹内は、同年五月三日、山川にあてて、上記口頭での契約解除につき正式書面での通知をほしいなどと記載したEメールを送信した。山川は、同月九日、被告ガンホーにあてて、「御社からの正式な意思表明と認識しております。」とのEメールを送信した。

(オ) 被告竹内は、同年九月三日、原告に対し、既に原告から支払を受けた本件業務委託契約に基づく報酬につき、源泉徴収分を除く全額の五四万円を返金して、被告竹内と原告との業務委託契約の精算は終了した。

イ 判断

上記認定した事実を基礎として、以下のとおり判断する。

(ア) 前記のとおり、原告の代表者も、被告竹内が被告ガンホーの従業員として「グリーン・グリーン」に関する活動を行っていることを十分知っていたと認められる。したがって、被告竹内が、原告に秘匿して、被告ガンホーの従業員となったことが被告竹内の債務不履行を構成するとの原告の主張は前提を欠き失当である。

(イ) 本件業務委託契約が締結された後である平成一三年二月中旬以降三月一五日までの間、被告竹内が、本件業務委託契約に基づく業務を遂行しなかったことを認めることはできない。また、被告ガンホーと原告との契約交渉が決裂した同年三月一五日以降は、被告竹内が原告のために「グリーン・グリーン」に関する広報活動等の業務を行うことは、原告及び被告竹内の双方にとって無意味となった。被告竹内は、本件業務委託契約の解消の意思を原告代表者の山川に伝えるとともに、原告から正式な契約の解除の意思が表明された後、すみやかに受領した報酬の全額を返還している。

したがって、被告竹内には、業務を誠実に遂行する義務に反する行為はなく、また、業務成果を原告に納品する義務に反する行為もない。

(ウ) また、本件全証拠によるも、被告竹内が業務上の情報を、本件業務委託契約の趣旨に反して、被告ガンホー、被告サカモトらに開示したことを伺わせる事実は認められない。

(2)  被告ガンホーの債務不履行

原告は、被告ガンホーとの間で、平成一三年一月初旬以降、業務委託契約関係が存在するに至ったと主張する。しかし、上記認定のとおり、平成一三年一月初旬ころ、原告と被告ガンホーは、正式な開発委託契約を締結すべく交渉を継続していたのであり、被告ガンホーは、原告に対し、何らの契約上の義務を負っていない。この点に関する原告の主張は失当である。

また、原告は、被告ガンホーとの間で締結した本件覚書は、原告及び被告ガンホー双方に正式契約の書面を速やかに作成することを双方に義務付けるものであると主張する。しかし、原告と被告ガンホーとの間で締結された本件覚書は、前記認定のとおり、原告と被告ガンホーとの間で、被告ガンホーが正式契約の前に先行的に開発を行い、その後速やかに両者間で正式な契約を締結するが、一定の事由がある場合に被告ガンホーは本件覚書を解除して、原告に対して、既に被告ガンホーが支出した開発費用を請求できることなどを内容とするものであり、先行的に開発を進めることとなる被告ガンホーが、将来原告から開発費用の支払を受けられることを目的として締結したものであって、被告ガンホーに、原告との間で正式契約を締結する義務を負わせることを内容とするものと認めることはできない。したがって、原告の主張には理由がない。

(3)  被告サカモトの行為について

上記(1)、(2)の認定によれば、被告ガンホーと被告サカモトが開発委託契約を締結した平成一三年三月一五日、被告竹内、被告ガンホーはいずれも原告に対して、「グリーン・グリーン」に関して何らの契約上の義務を負っていないのであるから、原告の債権侵害を理由とする不法行為の主張については理由がない。

第4  結論

よって、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がない。

(裁判長裁判官・飯村敏明、裁判官・今井弘晃、裁判官・大寄麻代)

別紙目録

題名:『グリーン・グリーン』

ソフトウエアの形式:PCゲーム

(対応機種:ウインドウズ98/ME/2000)

ソフトウエアの形態:CD-ROMおよびDVD

ジャンル:アドベンチャーノベル

別紙著作権目録

『グリーン・グリーン』の基本シナリオ

1 作品の特徴

前作『カナリア』が導入して好評であった手法を再現し、登場人物ごとにボーカル入りのイメージソングを設定するとともに、オープニングテーマ一曲、エンディングテーマ六曲の合計七曲のオリジナルソングを収録することにより、音楽的付加価値の高い作品とする。

2 ストーリー展開

(設定:「起」)

緑豊かな山奥の全寮制男子校で、やるせない日々を送っていた主人公「高崎祐介」(ゲームのプレイヤー)。そんなある日、学校校長が学生に対して重大発表をする。この全寮制男子校に、女子生徒が編入してくることを決定したと。主人公をはじめ男子学生達は、この学校に入学して以来、女の子とまともに話をしたことがないため、不安と期待で一杯となる。

そんな男子学生達の不安と期待をよそに、試験的に女子生徒が全国から転入してきて、ドタバタコメディタッチのストーリーが展開されていく。このように、導入部は、男と女という性差を異文化として捉えることで新鮮な印象を与えることに重要なポイントを置いている。

もう一つのポイントは、設定を大自然の中の全寮制学園生活に置いたことにある。学校生活という若者に違和感を与えない環境条件と、大自然の中という非日常的かつ新鮮な環境条件を同時に実現させるため、全寮制が設定され、ヒロイン達との時間共有を可能にしている。

(「承」)

男の子が、異性に対して一方的な期待を持っているのに対し、ヒロイン達はどれも個性的で、主人公にとっては予測不可能な生き物に映り、不安は戸惑いへ変化する。そのうち、自分が抱いた理想と現実とのギャップが失望に変わるにつれて、男の子と女の子は、お互いが対立するようになる。

(「転」)

ゲームとしての細部のストーリー展開に、複数のパターンが用意される。

細部展開の中で、主人公が個々のヒロイン達が持つそれぞれの「秘密」に関わる形でストーリーが進展する。ゲーム中に登場する五人のヒロイン達はそれぞれに何らかの「秘密」を抱えており、その各ヒロインが抱えた「秘密」は、主人公の周囲におこる事件の原因であったり、ヒロインの抱える悲しい過去(ヒロインのトラウマとして描写される)であったりする。

主人公がヒロイン達と仲良くなればなるほど、徐々にヒロインの「秘密」を知ることとなり、感情移入しやすい状況がつくられる。

(「結」)

最終的には、主人公が、どのヒロインとのコミュニケーションを推進したとしても、ゲームとして設定している正しい選択枝を歩んでいけば、学校の共学化へ向けて男の子と女の子が協力しあうようになるというハッピーエンドとなる。他方で、恋愛ストーリーとしてのゴールがあり、主人公がヒロインと結ばれることもある。

3 主要登場人物の設定<省略>

別紙平成一三年一月一九日でのキャラクター設定<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例