東京地方裁判所 平成13年(特わ)4586号 判決 2001年12月27日
主文
被告人を懲役2年に処する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
押収してある覚せい剤1式(平成13年押第2108号の1)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1法定の除外事由がないのに,平成13年10月4日ころ,京都市f区g町h番地i号室において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類若干量をえん下し,もって,覚せい剤を使用し
第2法定の除外事由がないのに,平成13年10月8日午前11時53分ころ,東京都大田区j丁目k番l号mビル2階出発口Cゲート内において,刃渡り約19.9センチメートルの外装あいくちこしらえの刀1振を所持し
第3みだりに,同日,同都大田区j丁目n番o号p警察署内において,覚せい剤である塩酸フェニルメチルアミノプロパン0.018グラム(平成13年押第2108号の1はその鑑定残量)を含有する水溶液を所持したものである。
(量刑の理由)
本件は,被告人が,覚せい剤を使用・所持するとともに,刀を所持したという事案であるが,覚せい剤の害悪が現在の我が国において深刻な社会問題となっていることは周知の事実であり,かかる覚せい剤を使用・所持するとともに,危険な刀を所持していたという本件各犯行は,遵法精神に欠けることが甚だしいものであったといわざるを得ない。被告人は,当時経営する厩舎の問題等で悩んでいた旨を述べているが,この種犯行の動機として酌むべきものとはもとより考えられない。著名な競馬騎手であった被告人による本件各犯行がもたらした社会的影響も無視し得ないものがあり,被告人の本件刑事責任を軽視することはできない。
しかしながら,他方,被告人は,本件覚せい剤の入手先等について捜査段階から積極的に供述し,調教師免許の取消しを自ら申請するなどして,反省の態度を示している。さらに,被告人の妻や友人が当公判廷に出廷して,被告人の更生に助力する旨を誓約している。また,被告人には交通関係の罰金前科1犯以外には前科がないこと,本件により既に相当の社会的制裁を受けていることなども認められる。
そこで,これらの事情を総合考慮し,被告人に対しては,主文の刑に処した上,今回に限り,その懲役刑の執行を猶予することが相当であると判断した(求刑-懲役2年,覚せい剤の没収)。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 上田哲)