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東京地方裁判所 平成13年(特わ)5091号 判決 2002年2月04日

主文

被告人を懲役8月に処する。

未決勾留日数中20日をその刑に算入する。

理由

(犯罪事実)

被告人は,常習として,平成13年11月13日午後4時33分ころから同日午後4時34分ころまでの間,東京都千代田区所在の帝都高速度交通営団地下鉄千代田線霞ヶ関駅から同区所在の同線日比谷駅に至る間を走行中の電車内において,乗客のA(当時18歳)に対し,右手で同女の左太ももを撫で,もって,公共の乗り物において,人を著しくしゅう恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような卑わいな行為をした。

(量刑の理由)

本件犯行は,未だ帰宅ラッシュが始まる前の混雑していない電車内において,着席していた被害者の隣に座り,被告人の右手及び被害者の左太ももが隠れるように被告人のコートが掛かっていたことを利用して,被害者の太ももを触ったもので,狡猾な犯行である。被害者は,座席に着席して睡眠していて被害に遭ったものであり,何ら落ち度はない。被害者の被告人に対する処罰感情が厳しいのは当然であり,未だ示談は成立していない。

被告人は,平成9年以降,本件と同種事案で3回罰金刑に処せられ,平成11年1月には懲役4月執行猶予3年の判決を受けたのにもかかわらず,その猶予期間中の平成13年9月に同種事案に及び,その事件については被害者と示談ができたこともあり不起訴になると,わずか2か月で本件に及んでいる。このような前科前歴からすると,被告人のこの種事案に対する衝動は極めて大きいものがあると推認するほかなく,再犯のおそれも否定できない。

他方で,以下のような事情もある。

本件犯行の態様は,被害者の左太ももをなでたというもので,それ自体悪質であることは間違いないものの,同種事案の中ではさほど重くない態様である。被告人は,捜査途中から本件について自白し,公判廷においても,反省の態度を示すとともに,自らの中に潜む衝動と真摯に向き合う姿勢を強めている。本件により,仕事も信用も失うなど,社会的制裁を受けている。弁護人を通じて,50万円の贖罪寄付をしている。

その他公判廷に現われた事情を総合考慮して主文のとおり量刑した。

(求刑懲役1年)

(裁判官 加藤学)

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