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東京地方裁判所 平成13年(行ウ)302号 判決 2002年6月14日

原告 甲野花子(仮名)

被告 東京保護観察所長

代理人 武笠圭志 諏訪正敏 ほか3名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

被告が平成13年5月7日付けで原告に対してした、調布・狛江地区保護司会のうち、調布分区の保護司名簿(名前のみ)を開示しない旨の決定を取り消す。

第2事案の概要

本件は、原告が行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)3条に基づき、調布・狛江地区保護司会の調布分区の保護司名簿の開示を求めたところ、被告が、同法5条1号に定める個人に関する情報に該当することを理由として、上記名簿を開示しない旨の決定をしたため、原告がこれを不服として、上記決定の取消しを求めているものである。

1  法令の定め

(1)  行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。ただし、平成13年法律第140号による改正前のもの。以下「情報公開法」という。)3条は、何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる旨を、同法5条は、行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に同条各号が掲げる不開示情報のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない旨をそれぞれ規定しているが、同条1号は、下記のとおり不開示情報を定めている。

個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

イ 法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報

ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報

ハ 当該個人が公務員である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分

(2)  情報公開法7条は、行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政文書を開示することができると定めている。

2  前提となる事実(以下の事実はいずれも当事者間に争いがない。)

(1)  開示請求等

ア 原告は、平成13年4月16日、被告に対し、請求する行政文書を「調布地区の保護観察司名簿(但し氏名の部分のみ)」として、行政文書の開示請求をした(以下「本件開示請求」という。)。

イ 被告は、同年5月7日付けで、本件開示請求について、原告に対し、「開示請求に係る行政文書は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条第1号に規定された個人に関する情報と認められる。つまり、氏名は特定の個人を識別することができる情報であり、同号イ、ロ及びハに列挙された個人情報のうち開示する必要性のある情報にも該当しないので不開示とした。」との理由で、調布・狛江地区保護司会のうち、調布分区の保護司名簿(名前のみ)(以下「本件名簿」という。)を開示しない旨の決定をした(以下「本件決定」という。)。

(2)  審査請求

ア 原告は、平成13年7月6日、本件決定を不服として、法務大臣に審査請求を行った。

イ 法務大臣は、平成13年10月16日、上記審査請求を棄却する裁決をした。

3  当事者の主張

(被告の主張)

(1) 情報公開法5条1号該当性について

本件名簿には、保護司個人の氏名が記録されているところ、ある氏名の個人が調布分区の保護司であるという情報は、個人に関する情報であって、その氏名により特定の個人を識別することができるものであることが明らかである。

したがって、本件名簿には、情報公開法5条1号の不開示情報が記録されているから、本件不開示決定は適法というべきである。

(2) 情報公開法5条1号ただし書について

情報公開法5条1号ただし書は、同号本文によって不開示とされる情報から例外的に除外されるものを定めたものであり、開示請求者がその適用を求めるべき規定であるから、同規定への該当性については、原告がその主張立証責任を負うと解すべきである。

ところが、本件において、原告は情報公開法5条1号ただし書に該当する事実を何ら主張していないから、原告の本訴請求は失当である。

なお、保護司の名簿は公刊されておらず、その氏名を公開することを定めている法令の規定も慣行も存在しない。

(3) 原告の主張に対する反論

ア 原告は、<1>情報公開法5条1号にいう「個人に関する情報」とは、プライバシーに関する情報をいう、<2>上記「個人に関する情報」とは、「個人の権利を害するおそれ」があるものをいう、と主張している。

しかし、情報公開法5条1号は、その規定及び立法過程からみて、プライバシー等の個人の権利利益を害するおそれのあるものに限って不開示とする、いわゆるプライバシー型を採らず、特定の個人が識別され得る情報を広く不開示とする、いわゆる個人識別型の法制度を採用したものであるから、同号にいう「個人に関する情報」とは、その文言のとおり、個人に関連する情報全般を意味するものと解すべきであって、個人のプライバシーに関する情報か否かによって、その該当性が決せられるものではない。

また、情報公開法5条1号は、「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」と「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とを、それぞれ独立した不開示情報と定めており、前段に定める個人識別型情報については、後段にいうような「個人の権利利益を害するおそれ」があることを要件とはしていない。

したがって、原告の上記主張は、いずれも失当である。

イ 原告は、およそ公務員である限りその氏名が開示されなければならない旨主張するようである。

しかし、情報公開法5条1号は、公務員・非公務員を問わず、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものを不開示情報とした上で、政府の諸活動を説明する責務が全うされるようにする観点から、同号ハにおいて、当該個人が公務員である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分については、個人に関する情報としては、不開示としないこととしているが、公務員の氏名は、公務員の職務遂行に係る情報に含まれるものであっても、なお、これを公にした場合、公務員の私生活に影響を及ぼすおそれがあり得るため、依然として個人情報としての保護に値すると位置づけ、同号イに該当する場合以外にはこれを不開示とすることとしているのである。

したがって、原告の上記主張は、独自の見解に基づくものというほかない。

ウ 原告は、名簿に記載された個人の氏名は、個人識別機能を喪失すると主張する。

しかし、一般に名簿とは、個人の氏名、住所等の特定の個人を識別することができる一つ一つの情報を集積してとりまとめたものであり、名簿として集積されたからといって、その中に含まれる個別の氏名等が、特定の個人を識別することができる機能を喪失することはあり得ない。

エ 原告は、本件決定が憲法15条に違反すると主張する。

しかし、憲法15条が「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」とする趣旨は、あらゆる公務員の終局的任免権が国民にあるという国民主権の原理を説明したものであって、必ずしもすべての公務員を国民が直接に選定し、罷免すべきことを意味するものではなく、憲法が、国民が公務員を直接的に選定すべき場合(43条、93条2項)及び罷免の権利の認められるべき場合、あるいは独自の選定罷免権者を規定している場合(6条、67条、68条、79条、80条)を別とすると、公務員について、国民の選定罷免権をいかに具体化するかは、法律により定められるべき事柄である。

したがって、憲法の定める国民の公務員選定罷免権を根拠として、直接に、個々の公務員について国民に「能力・識見において然るべき者が公務員に選任され、またいかがわしい人物が公務員から排除されることを求める固有の権利」という具体的権利が憲法15条により保障されているとは到底解し得ない。原告の上記主張は前提において失当である。

また、上記の点を措いて、憲法15条1項は、上記に述べた意味における公務員の選定罷免権について定めているのみであり、同条から直ちに、「公務員の氏名の開示を求めること」や「公務員の能力・識見に関する情報も知る権利」が国民に保障されているとみることもできないことは明らかである。特定の種類の公務員について、その選定罷免に係る情報を開示することを求める権利を何人かに付与するかどうか、いかなる要件の下にいかなる種類の情報を開示するかは、立法により決せられるべき事柄であり、法律の規定を離れて、個々の国民に、特定の公務員の選定罷免に係る情報を開示する請求権が与えられていると解し得るものではない。

したがって、国の行政機関の保有する情報に対する開示請求権の範囲等については、それを具体的請求権として創設した情報公開法の内容に即して決すべきであり、同法の規定を離れて憲法の趣旨・目的等から直ちに解釈基準を導き出したり、それらに沿うように法の規定の文理を離れて情報公開請求権の範囲を決したりすべきではない。

以上のとおり、憲法15条は、原告の主張する権利の根拠とはならないから、原告の主張は失当である。

(原告の主張)

(1) 公務員である保護司の氏名を記録した本件名簿は、情報公開法5条1号の定める不開示情報を記録したものには当たらないというべきであり、本件決定は、同号の解釈を誤ったものであり、違法である。

ア 情報公開法5条1号の定める「個人に関する情報」とは、特定の個人のプライバシーに関する情報をいうものと解すべきである。

ところが、公務員の氏名は、個人のプライバシーに関する情報には該当しないというべきである。

すなわち、名誉ある地位にあるものとして個人の氏名を公表されることは、その個人の名誉となるものであって、そのような場合には個人情報の開示が許されるという社会的慣行が成立しており、プライバシー侵害となるものではないと解される。そして、公務員であることも、また、名誉ある地位であり、公務員の名簿に登載されることも名誉であるから、公務員の氏名を公表することはプライバシーを害することにはならない。

したがって、公務員の氏名は、上記「個人に関する情報」には該当しないというべきである。

イ 情報公開法5条1号の立法趣旨は、同号後段に規定されている「個人の権利を害するおそれがあるもの」を不開示とすることにあるというべきであり、同号前段の「個人に関する情報」は、個人の権利・利益を害するおそれがある情報として規定されたものにすぎない。

そうであるとすれば、情報公開法5条1号によって不開示情報となるのは、個人の権利・利益を害するおそれがある場合に限られると解すべきである。

しかし、個人の氏名は、他人に公表するためにあるものであり、公務員個人の氏名の公表をすることは、その個人の権利・利益を侵害するものではない。

したがって、この点からも、公務員個人の氏名は、情報公開法5条1号にいう「個人に関する情報」に該当しないというべきである。

ウ 個人の氏名は当該個人を識別できる情報であるが、名簿に記載された個人の氏名は、名簿として大勢の氏名に紛れることにより、特定の個人を識別する機能を喪失する。

したがって、公務員の名簿に記録された氏名は、特定の個人を識別することができるものには当たらないというべきである。

(2) 憲法15条違反

公務員の選任及び罷免は、主権者たる国民の固有の権利として憲法15条によって保障されている。しかし、多数の公務員すべてを選挙により選任することは、時間的、労力的、費用的に困難であるため、公務員組織の基本を構成する公務員のみを選挙で選任し、その他の公務員は選挙によって選任された公務員がその責任において任命又は委嘱によって選任するという制度が採用されている。

そこで、ある公務員が真面目にその職務を尽くしているかどうかは、一般国民も監視する必要があり、そのためには、一般国民がその公務員の氏名をいつでも知り得ることが必要である。

このように、能力・識見においてしかるべき者が公務員に選任され、またはいかがわしい人物が公務員から排除されることを求める国民固有の権利を適切に行使するためには、何人が公務員になっているかを知る必要がある。

したがって、公務員のプライバシーは、一般人より保護されないことになるのであり、国民に対し公務員の氏名を開示することは憲法上の要請である。

現に、公務員の氏名を公表するべく、上級の公務員一般の氏名については、職員録という形で出版されているし、市役所等において職員が自分の氏名を表示した名札をつけて公務に従事することなどが行われている。

以上によれば、本件決定は、憲法15条に違反する違法があるというべきである。

(3) 仮に、本件名簿に登載された公務員の氏名が個人情報であるとしたとしても、いかがわしい人物を公務員から排除するという真面目な目的を有する本件開示請求に応じて本件名簿を開示することは公益上の必要性があるので、情報公開法7条に基づいて開示されるべきである。

4  争点

以上によれば、本件の争点は次のとおりである。

(1)  本件名簿は、情報公開法5条1号の規定する不開示情報を記録したものといえるか否か。

(争点1)

(2)  本件決定は、憲法15条に違反するか否か。

(争点2)

(3)  本件決定は、情報公開法7条に基づく開示を行わなかった点において違法であるか否か。

(争点3)

第3当裁判所の判断

1  争点1について

(1)  本件名簿は、保護司個人の氏名が記録されているものであるところ、ある氏名の個人が調布分区の保護司であるという情報は、「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」に該当するというべきであり、また、上記の情報は、情報公開法5条1号ただし書が例外事由として掲げるイ、ロ、ハのいずれにも該当しないものと認められる。

したがって、本件名簿には、情報公開法5条1号が定める不開示情報が記録されているものと認められる。

(2)  これに対し、原告は、<1>情報公開法5条1号の規定する「個人に関する情報」とは個人のプライバシーに関する情報をいうものであり、公務員の氏名は個人のプライバシーに関する情報ではない、<2>同号の規定する「個人に関する情報」として不開示情報とされるべきものは、個人の権利利益を害するおそれがあるものに限られると解すべきであり、公務員の氏名の公表は個人の権利利益を害するものではないなどと主張して、公務員の氏名は上記「個人に関する情報」には該当しない旨主張する。

しかし、情報公開法5条1号は、個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)については、「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」と「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれああるもの」を、それぞれ独立の不開示情報として明確に定め、その除外事由として、<1>法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報、<2>人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報、<3>当該個人が公務員である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分、の3つを挙げている。

そして、情報公開法5条1号が、上記のような規定の仕方を採ったのは、いわゆるプライバシーの概念が必ずしも明確ではなく、その具体的な内容及び範囲は、情報の客観的内容、個人の置かれた状況、公開される状況等に左右され、価値観によっても見解が分かれることが少なくないことから、客観的に判別の容易な基準に拠ることによって不開示の範囲を明確にし、制度の安定的運用を図る趣旨に出たものと解されるから、個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人を識別することができるものについては、同号イ、ロ、ハのいずれかに該当するものを除き、一律に不開示情報とすることとし、さらに、個人を識別することができない情報であっても、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれのあるものについて、独立の不開示情報として定めたものと解される。

また、情報公開法5条1号ハには、当該個人が公務員である場合における例外事由が定められていることからすれば、同号にいう「個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの」には、「公務員である個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの」を含むものであることは明らかである。

以上のとおり、情報公開法5条1号は、当該個人が公務員であるか否かを問わず、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」については、同号ただし書のイ、ロ、ハのいずれかに該当するものを除き、一律に不開示とする旨を定めたものと解すべきである。

したがって、公務員の氏名については、情報公開法5条1号の定める「個人に関する情報」に当たらないとの原告の上記主張は、同号の趣旨及び文言に反するものであって採用できない。

(3)  原告は、大勢の氏名に紛れた氏名は、特定の個人を識別する機能を喪失してしまうから、大勢の氏名の記載された名簿は、情報公開法5条1号の定める「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」に該当しないと主張する。

しかし、多くの氏名を集積した名簿に記載されているからといって、そのために、そこに記載された氏名が特定の個人を識別する機能を喪失するとは解されないから、原告の上記主張は失当というほかない。

2  争点2について

原告は、憲法15条によって保障された公務員の選定罷免権を行使するために、公務員の氏名を開示することは憲法上の要請であるから、公務員である保護司の氏名が記載された本件名簿を開示しないとした本件決定は、同条に違反すると主張する。

しかし、憲法15条が「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」とする趣旨は、あらゆる公務員の終局的任免権が国民にあるという国民主権の原理を説明したものであって、必ずしもすべての公務員を国民が直接に選定し、罷免すべきことを意味するものではなく、憲法上明記された公務員(憲法6条、67条、68条、43条、79条、80条、93条2項)以外について、国民の上記選定罷免権をいかに具体化するかは、立法により定められるべき事柄であると解される。

そうであるとすれば、特定の種類の公務員について、その選定罷免に係る情報を開示することを求める権利を何人かに付与するか否かについても、立法により決せられるべき事柄であり、憲法15条によって、直接、個々の国民に、特定の公務員の選定罷免に係る情報を開示する請求権が与えられていると解することはできないというべきである。

したがって、憲法上、公務員の氏名を開示することが必要とされているとは解されず、本件決定が、憲法15条に違反するとの原告の主張は、その前提において失当といわざるを得ない。

3  争点3について

原告は、真面目な目的による開示請求に基づく開示は、情報公開法7条にいう公益上必要な開示に当たると主張する。

しかし、情報公開法7条は、同法5条により開示が禁止される情報について、公益上特に必要がある場合に、行政機関の長の高度な行政的判断により裁量的開示を行うことができる旨を定めたものであって、同条の規定に基づいて開示するかしないかは、上記行政機関の長の裁量にゆだねられているものであり、同条の規定に基づいて開示しなかったことが違法となるのは、当該行政機関の長が、与えられた裁量権の範囲を逸脱、又は濫用したと認められる場合に限られるものと解するのが相当である。

しかし、本件においては、被告が、その裁量権の範囲を逸脱、又は濫用したことを窺わせるような事情は何ら主張、立証されていないから、情報公開法7条に基づいて開示しなかったから本件決定が違法であるとの原告の主張はその前提を欠いており、失当といわざるを得ない。

第4結論

以上によれば、本件名簿を不開示とした被告の本件決定に違法はないというべきである。

よって、原告の請求は理由がないから、主文のとおり判決する。

(裁判官 市村陽典 森英明 馬渡香津子)

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