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東京地方裁判所 平成13年(行ク)38号 決定 2001年7月17日

参加申出人ら

別紙参加申出人目録記載のとおり

(本案事件被告補助参加人ら。以下「補助参加人ら」という。)

代理人弁護士

藤野善夫

後藤裕造

鍛治利秀

相手方(本案事件原告。以下「原告」という。)

オリエンタルモーター株式会社

代表者代表取締役

若林昭八郎

代理人弁護士

中町誠

中山慈夫

男澤才樹

相手方(本案事件被告。以下「被告」という。)

中央労働委員会

代表者会長

山口浩一郎

指定代理人

落合誠一

伊藤治

瀬野康夫

菊池理恵子

主文

補助参加人らの行政事件訴訟法22条1項に基づく参加申出を許可する。

理由

1  参加申出の趣旨及び参加についての異議

補助参加人らは,主文同旨の決定を求め,「被告と補助参加人らとは,本案事件において,原告の従業員の賃金実態に関する主張が相違するから,行政事件訴訟法22条1項に基づく参加を申し出る。」旨述べた。

これに対し,原告は,「補助参加人らは,不当労働行為救済命令により私法上,公法上の権利を付与されるものではないから,訴訟の結果により権利を害される第三者に当たらない。」として,参加について異議を述べた。

2  当裁判所の判断

(1)  取消訴訟の係属

原告が被告に対し,被告の発した救済命令中,原告の再審査申立てを棄却した部分の取消しを求めて本案事件を提起し,同訴訟が当裁判所に係属していることは明らかである。

(2)  補助参加人らが行政事件訴訟法22条1項にいう「訴訟の結果により権利を害される第三者」に当たるか。

行政事件訴訟法22条1項にいう「権利」には,広く「法律上の利益」も含むと解するのが相当であるところ,労働委員会による不当労働行為の救済は,不当労働行為を排除し,救済申立人である労働者又は労働組合について不当労働行為がなかったと同じ事実上の状態を回復させることを目的とするものである。救済命令は,使用者に対し,不当労働行為の排除に必要な一定の作為又は不作為を内容とする公法上の義務を課す行政処分であって,労働者又は労働組合にこれに対応する公法上の権利を付与したり,もとより私法上の権利を付与したりするものではないが,上記の不当労働行為救済制度の目的や,使用者に確定判決によって支持された救済命令の違反があったときは罰則が課されること(労働組合法28条)に照らすと,救済申立てをした労働者又は労働組合は,救済命令により,不当労働行為がなかったと同じ事実上の状態の回復を受けることが法律上予定されているということができるから,この労働者又は労働組合の利益は,法律上の利益であるというべきである。

そして,本案事件の判決において,被告の発した救済命令中,原告の再審査申立てを棄却した部分の取消しが認められた場合には,補助参加人らは,その申立てに係る不当労働行為についての救済を受けることができなくなるのであるから,補助参加人らは,取消判決の効力によってその法律上の利益を害されるということができる。

したがって,補助参加人らは,行政事件訴訟法22条1項にいう「訴訟の結果により権利を害される第三者」に当たると認めるのが相当である。

なお,補助参加人らは,本案事件において既に補助参加が認められているが,行政事件訴訟法22条による参加の場合には,補助参加の場合以上の訴訟行為ができるから(同条4項),既に補助参加が認められているからといって,行政事件訴訟法22条による参加の利益がないとはいえない。

(3)  よって,補助参加人らの行政事件訴訟法22条に基づく参加の申出を許可することとし,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山口幸雄 裁判官 木納敏和 裁判官 鈴木拓児)

(別紙) 参加申出人目録

全日本金属情報機器労働組合千葉地方本部オリエンタルモーター支部代表者執行委員長 大池良三

大池良三

(ほか11名)

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