東京地方裁判所 平成14年(ワ)16976号 判決 2003年8月26日
甲事件原告
アメリカン・ホーム・アシュアランス・カンパニー
甲事件原告・乙事件被告
X1
甲事件被告・乙事件原告
市川商事有限会社
甲事件被告
Y1
乙事件原告
三井住友海上火災保険株式会社
主文
(甲事件)
一 甲事件被告らは、連帯して、甲事件原告アメリカン・ホーム・アシュアランス・カンパニーに対し、一五五万八六〇〇円及びこれに対する平成一四年三月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 甲事件被告らは、連帯して、甲事件原告X1に対し、一三万四〇五〇円及びこれに対する平成一四年二月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 甲事件原告アメリカン・ホーム・アシュアランス・カンパニー及び同X1のその余の請求をいずれも棄却する。
(乙事件)
四 乙事件原告らの請求をいずれも棄却する。
(全事件)
五 訴訟費用は、甲事件及び乙事件を通じて、これを二〇分し、その一を甲事件原告らの負担とし、その余を甲事件被告ら及び乙事件原告三井住友海上火災保険株式会社の負担とする。
六 この判決は、第一、二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
※ 以下、甲事件原告アメリカン・ホーム・アシュアランス・カンパニーを「アメリカン・ホーム」と、甲事件原告・乙事件被告X1を「X1」と、甲事件被告・乙事件原告市川商事有限会社を「市川商事」と、甲事件被告Y1を「Y1」と、乙事件原告三井住友海上火災保険株式会社を「三井住友」と、それぞれ略称する。また、アメリカン・ホーム、X1を合わせて「アメリカン・ホームら」と、市川商事、Y1、三井住友を合わせて「三井住友ら」ということがある。
第一請求
一 甲事件
(一) 市川商事及びY1は、連帯して、アメリカン・ホームに対し、一六九万八七〇〇円及びこれに対する保険金支払の日の翌日である平成一四年三月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(二) 市川商事及びY1は、連帯して、X1に対し、一三万四二五五円及びこれに対する本件事故の日である平成一四年二月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 乙事件
(一) X1は、市川商事に対し、二〇万〇〇〇〇円及びこれに対する本件事故の日である平成一四年二月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(二) X1は、三井住友に対し、四二万八五七〇円及びこれに対する保険金支払の日の翌日である平成一四年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
X1が運転する普通乗用自動車(以下「甲車両」という。)と、Y1が運転する普通貨物自動車(以下「乙車両」という。)とが、信号機により交通整理の行われている交差点(以下「本件交差点」という。)において出合い頭に衝突するという交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
甲事件は、<1>甲車両の所有者であるX1との間で甲車両につき自動車保険契約を締結しているアメリカン・ホームが、甲車両の車両損害等一六九万八七〇〇円について車両保険金をX1に支払ったとして、Y1とその使用者である市川商事に対し、商法六六二条一項、民法七〇九条、七一五条に基づき、同額の求償金の請求をし、<2>X1が、Y1と市川商事に対し、民法七〇九条、七一五条に基づき、免責金額等一三万四二五五円の損害賠償を請求をしている事案である。一方、乙事件は、<3>乙車両の所有者である市川商事との間で乙車両につき自動車保険契約を締結している三井住友が、乙車両の車両損害四二万八五七〇円について車両保険金を市川商事に支払ったとして、X1に対し、商法六六二条一項、民法七〇九条に基づき、同額の求償金の請求をし、<4>市川商事が、X1に対し、民法七〇九条に基づき、免責金額等二〇万〇〇〇〇円の損害賠償を請求をしている事案である。
本件の第一の争点は、事故態様、すなわち、本件事故当時における甲車両と乙車両の対面信号の表示である。甲車両の運転者であるX1も乙車両の運転者であるY1も、本件事故当時、自車の対面信号が青色を表示していたと主張している。本件の第二の争点は、本件事故により経済的全損になった甲車両の損害額(特に、再調達費用の相当性)である。
一 当事者間に争いのない事実及び証拠上明らかな事実
(一) 本件事故の発生
(1) 日時 平成一四年二月九日午前二時三五分ころ
(2) 場所 東京都足立区花畑四丁目三五番地
(3) 甲車両 普通乗用自動車(習志野<省略>)
同運転者 X1
(4) 乙車両 普通貨物自動車(所沢<省略>)
同運転者 Y1
(5) 態様 信号機により交通整理の行われている本件交差点において、甲車両と乙車両とが出合い頭に衝突した。
(2) 市川商事の責任原因
市川商事はY1の使用者であり、本件事故はY1が市川商事の業務遂行中に発生した事故である。
二 本件の争点
(一) 事故態様
(アメリカン・ホームらの主張)
甲車両は、信号機により交通整理の行われている本件交差点手前の停止線で、先頭車両で赤信号待ちの後、対面信号が青色に変わったことを確認して発進し、本件交差点に進入したところ、交差する道路左側から赤信号を無視して直進してきた乙車両が甲車両の左前部に衝突した。本件は、このように、乙車両の赤信号無視により発生したものであり、Y1に事故の全面的な責任がある。
(三井住友らの主張)
本件事故は、Y1の運転する乙車両が青信号を確認した後に本件交差点に進入したところ、X1の運転する甲車両が、対面信号がいまだ赤色を表示していたにもかかわらず発進し、無理矢理本件交差点内に進入したことから発生したものであり、本件事故の責任は挙げてX1の側にある。
刑事記録中、Y1が信号無視を認めるような供述をしたのは、捜査官の誘導ないし強要によるものであり、その供述には任意性・信用性とも認められない。
(二) 甲事件の請求額
(アメリカン・ホームらの主張)
(1) 本件事故によるX1の損害
ア 甲車両本体損害 一四四万〇〇〇〇円
甲車両の修理代金として一八九万六四一六円を要したが、これが甲車両の時価額一四四万円(乙一)を超えるので、経済的全損として、時価額が甲車両本体の損害となる。
イ 再調達費用 二一万七七五〇円
X1が同一車種・年式・型の自動車を再調達するには、車両本体価格のほかに、以下の再調達費用が必要である(なお、下記(a)ないし(i)の再調達費用の合計は二三万二一五〇円であり、上記二一万七七五〇円はその一部である。)。
(a) 車両本体価格に対する消費税 七万二〇〇〇円
(b) 自動車取得税(課税標準額の五%) 四万五三〇〇円
(c) 登録・車庫証明法定費用 四六〇〇円
(d) 登録手続代行費用(税込み) 三万一五〇〇円
(e) 車庫証明手続代行費用(税込み) 二万一〇〇〇円
(f) 納車手数料(税込み) 二万一〇〇〇円
(g) 行政書士料(税込み) 五二五〇円
(h) 廃車解体処分費用(税込み) 一万五七五〇円
(i) 抹消登録代行料金(税込み) 一万五七五〇円
ウ レッカー費用 三万七八〇〇円
甲車両は自走不能となり、事故現場から修理工場までレッカー移動を余儀なくされた。
エ 現場清掃費 三一五〇円
本件事故現場に甲車両の破損物が飛散しており、その除去等の清掃費用の負担を余儀なくされた。
オ 保管料 二万二〇五〇円
本件事故日である平成一四年二月九日から修理着工までの七日間、修理工場が甲車両を保管したことによる保管料の負担を余儀なくされた。
(2) 保険金の支払
アメリカン・ホームは、X1との間で甲車両につき自動車保険契約を締結しているところ、その車両保険条項に基づき、平成一四年三月二二日までに、(一)のアないしエの損害を填補するため、免責金額一〇万円を除いた一八三万七三六六円の車両保険金をX1に支払い、商法六六二条に基づき、(一)のアないしエの損害合計額一六九万八七〇〇円を限度として、保険代位による求償権を取得した。
(3) 弁護士費用の支払の合意
X1は、本件訴訟(甲事件)の提起及び追行をアメリカン・ホームら代理人に委任し、その報酬として請求金額の一割を下らない金額を支払う旨約した。
(4) 請求金額
ア アメリカン・ホーム――保険代位による求償金一六九万八七〇〇円((一)のアないしエの損害合計額)
イ X1――損害賠償金一三万四二五五円
(a) 免責金額一〇万円((1)のアないしエの損害合計額の内金)
(b) (1) のオの損害額二万二〇五〇円
(c) 弁護士費用一万二二〇五円
(市川商事・Y1の認否及び反論)
(1) 甲車両の時価額が一四四万円であり、甲車両が経済的全損となったことは認める。
(2) しかし、アメリカン・ホームら主張の再調達費用のうち以下の諸費用は、本件事故との相当因果関係が認められず、また、金額も不当であるので争う。
ア 車両本体価格に対する消費税
相当因果関係がなく、損害とは認められない。
イ 登録・車庫証明法定費用
金額の算出根拠が不明である。
ウ 登録手続代行費用
相当因果関係がなく、損害とは認められない。仮に損害に含まれるとしても、従来の裁判例では、一万〇四三〇円から一万五六三〇円とされており、三万一五〇〇円の請求は不当に高額である。
エ 車庫証明手続代行費用
相当因果関係がなく、損害とは認められない。仮に損害に含まれるとしても、従来の裁判例では、一万〇九〇〇円から一万三七五〇円とされており、二万一〇〇〇円の請求は不当に高額である。
オ 納車手数料
相当因果関係がなく、損害とは認められない。仮に損害に含まれるとしても、従来の裁判例では、六三六〇円から八五一〇円とされており、二万一〇〇〇円の請求は不当に高額である。
カ 行政書士料
相当因果関係がなく、損害とは認められない。
キ 廃車解体処分費用
相当因果関係がなく、損害とは認められない。
ク 抹消登録代行料金
相当因果関係がなく、損害とは認められない。
(3) レッカー費用、現場清掃費及び保管料は、不知。
(4) 保険金の支払は、不知。
(5) 弁護士費用の合意は、不知。
(5) 請求金額は、争う。
(三) 乙事件の請求額
(市川商事・三井住友の主張)
(1) 本件事故による市川商事の損害
本件事故により、市川商事は、乙車両の修理費用として五二万八五七〇円の損害を被った。
(2) 保険金の支払
三井住友は、市川商事との間で乙車両につき自動車保険契約を締結しているところ、その車両保険条項に基づき、平成一四年四月二日、前記修理費用のうち免責金額一〇万円を除いた四二万八五七〇円の車両保険金を市川商事に支払い、商法六六二条に基づき、保険代位による求償権を取得した。
(3) 弁護士費用の支払の合意
本件訴訟(乙事件)に関し、市川商事は、弁護士費用として日弁連の最低基準額である一〇万円を支払う旨を約した。
(4) 請求金額
ア 市川商事――損害賠償金二〇万円
(a) 免責金額一〇万円
(b) 弁護士費用一〇万円
イ 三井住友――保険代位による求償金四二万八五七〇円
(X1の認否)
市川商事・三井住友の主張のうち、(四)は争い、その余は不知。
第三当裁判所の判断
一 事故態様について
(一) 本件の第一の争点は、本件事故当時における甲車両と乙車両の対面信号の表示である。アメリカン・ホームら及び三井住友らは、それぞれ、甲車両、乙車両の対面信号が青色を表示していたと主張し、当裁判所の本人尋問において、甲車両の運転者であるX1も、乙車両の運転者であるY1も、これらの主張に沿う供述をしている。そこで、以下、X1供述とY1供述の信用性を検討する。
(二) X1供述の信用性について
(1) X1本人は、要旨、「環七方面から草加方面に向けて進行しようとして、本件交差点に至った。対面信号が赤色を表示していたので、一〇秒前後、停止線の手前で信号待ちをしていたら、対面信号が青色に変わった。信号が変わって二、三秒くらいしてから発進し、本件交差点の中央付近まで進行したところ、突然、交差道路左側から乙車両が本件交差点に進入し、甲車両の左側面に衝突した。」と供述する。
(1) そして、甲一三の刑事記録中の平成一四年二月九日付け実況見分調書の指示説明、同日付け警察官に対する供述調書も、ほぼこれと同じ内容であって、本人尋問における供述内容との矛盾や一貫しない点は存しない。また、当時、甲車両の助手席に同乗していたAや、その後部座席右側に同乗していたBも、同日付けで警察官に対してほぼ同趣旨の供述をしている。
(2) そうすると、(一)のX1本人の供述について、特にその信用性に疑いを差し挟むべき事情は見当たらない。
(三) Y1供述の信用性について
(1) Y1本人は、要旨、「日光街道方面から綾瀬川方面に向けて進行しようとして、本件交差点に至った。本件交差点内の衝突地点より手前七一m辺りの地点(実況見分調書添付の交通事故現場見取図表示<1>の地点)で、対面信号が青色を表示しているのを確認し、そのまま進行した。本件交差点に入る手前までは信号を見ていたが、青色を表示していたので、本件交差点に進入しようとした。」と供述しており、乙二の陳述書にも、これと同趣旨の記載がある。
(2) しかし、甲一三の刑事記録によれば、Y1は、捜査段階において、次のような供述をしていることが認められる。
ア 平成一四年二月九日付け警察官に対する供述調書
「この事故を起こした原因は、私が前方不注意で信号を確認していなかったことです。相手の人は『青で発進した』と言っていました。」
「私がそのような不注意な運転をした理由は、最初に信号を見たとき青色でしたので、青信号だと思い込み遠方を見ながら運転していたためです。」
イ 平成一四年五月一七日付け検察官に対する供述調書
「この事故の原因は、私が遠方の方を見て、前方をちゃんと見ていなかったため、対面信号機が青色の表示は見たものの、赤色信号を表示していたのを見落として交差点内に進入してしまったことです。
ただ、私としては、遠方に目が行ったとき、この信号機も見ているつもりでした。
このような不注意な運転をしてしまったのは、この道路は何回も通っているので、信号も青だったので、信号はまだ変わらないと安易に思って、信号表示に対する注意がおろそかになってしまったからです。
私が進路前方をちゃんと見て対面信号機の信号表示を確認しながら走っていればこの事故を避けることができたと思います。」
(3) Y1本人は、捜査段階でこのような供述調書が作成された理由について、<1>信号を通る時は信号を見ていなかったと言ったところ、アの前段のように書かれてしまった(速記録四頁)、<2>アの後段についても、警察にそう言ったわけではないが、供述調書に書かれてしまった(同五頁)、<3>相手にけが人もいたので、自分が加害者のように扱われてしまった(同六頁)、<4>イについても、検察官にそのような供述はしていないが、話しているうちに、このような調書ができてしまい、署名を拒否すると、「もうこれ以外書きようがない、署名押印を拒否するなら、ほかにもやり方がある」と言われ、もっと何か変なことになるのではないか、もっと大ごとになるのではないかと怖くなった(同六~七頁)、と供述している。また、乙二の陳述書にも、以上と同趣旨の記載があるほか、<5>自分に過失があるような内容の供述調書に署名押印したのは、事故当日で動揺していたこともある、との記載がある。
しかし、真実、Y1が本件交差点に入る手前までは信号を見ており、これが青色を表示していたというのであれば、Y1が、前記<1>ないし<5>のような理由で、本件事故発生の責任の所在を決する上で最も重要な対面信号の表示について、自己の認識と正反対の内容が記載された供述調書に署名押印するとは考えられない。特に、イの検察官に対する供述調書は、本件事故から約三か月後に作成されたものであり、「もっと何か変なことになるのではないか、もっと大ごとになるのではないかと怖くなった」などという曖昧な理由で、真実と異なった内容の供述調書に署名押印するとは到底考え難い。Y1自身、検察官から特に厳しい取り調べを受けたとも述べていない。
また、Y1本人の供述を見ても、「衝突の直前、自分の対面信号は青であったということを、現場に駆けつけた警察官に言ったのか」という質問に対し、「言ったと思うんですけど、はっきり言ったという記憶はないんですけど。」と答えており(速記録九頁。ただし、その後の部分では、代理人の誘導尋問により、警察官に対し強く主張したかのような答えになっている。)、X1本人が、「Y1は、警察官に対し、青だったと思うんですけどというような、あやふやな返事しかしてなかった」と供述していること(同一五頁)とも符合する。
(4) 上記(2)、(3)の点にかんがみると、(1)のY1本人の供述は、信用性に乏しいといわなければならない。
(四) 以上によれば、本件事故は、乙車両を運転するY1が、本件交差点のかなり手前で対面信号が青色を表示していることを確認したものの、前方を十分に注視することなく進行したことから、その後対面信号の表示が赤色に変わったことを見過ごして本件交差点に進入し、交差道路の青色信号の表示に従って本件交差点に進入した甲車両と衝突したものであると認めるのが相当であり、この事実によれば、本件事故についてはY1に一〇〇%の過失があると判断される。
二 甲事件の請求額について
(一) 本件事故によるX1の損害
(1) 甲車両本体損害 一四四万〇〇〇〇円
甲車両の時価額が一四四万円であり、甲車両が本件事故によって経済的全損となったことは、当事者間に争いがない。
(2) 再調達費用 一七万七六五〇円
本件のように被害車両が全損と評価される場合には、被害者が元の利益状態を回復するには、被害車両と同一車種・年式・型の中古車両を購入するほかはないから、この車両購入に伴って生ずる費用は、車両の取得行為に付随して通常必要とされる範囲において、事故による損害と認められる。同様に、事故車両についての廃車費用等も、損害に当たる。
本件においては、以下の費用が損害として認められる。
ア 車両本体価格に対する消費税 七万二〇〇〇円
一四四万〇〇〇〇円×〇・〇五=七万二〇〇〇円
イ 自動車取得税 四万五三〇〇円
自動車取得税は課税標準額の五%であるところ、甲一六及び弁論の全趣旨によれば、甲車両と同一車種・年式・型の中古車両を購入した場合の自動車取得税は、四万五三〇〇円であると認められる。
ウ 登録・車庫証明法定費用 四六〇〇円
エ 廃車解体処分費用 一万五七五〇円
オ 登録手続代行費用・車庫証明手続代行費用・納車手数料その他 四万〇〇〇〇円
これらは、販売店の提供する労務に対する報酬であるところ、車両を取得する都度、登録・車庫証明等の手続が必要となり、通常、車両購入者がそれらを販売店に依頼している実情にかんがみると、これらの費用も、買替えに付随するものとして損害賠償の対象とするのが相当である。本件事故と相当因果関係のある費用としては、消費税を含めて合計四万円と認める。
カ 合計 一七万七六五〇円
(3) レッカー費用 三万七八〇〇円
甲七及び弁論の全趣旨によれば、甲車両は、本件事故により自走不能となり、本件事故現場から修理工場までレッカー車で移動されたこと、レッカー代としては三万七八〇〇円(消費税込み)を要したことが認められる。
(4) 現場清掃費 三一五〇円
甲七及び弁論の全趣旨によれば、本件事故現場に甲車両の破損物が飛散しており、その除去等の清掃費用に三一五〇円(消費税込み)を要したことが認められる。
(5) 保管料 二万二〇五〇円
甲七、一二及び弁論の全趣旨によれば、本件事故日である平成一四年二月九日から同月一五日に修理に着工するまでの七日間、修理工場である株式会社北田自動車において甲車両を保管し、保管料として二万二〇五〇円(消費税込み)を要したこと、X1は、同年三月六日にこれを北田自動車に支払ったことが認められる。
(二) アメリカン・ホームの請求し得る求償金額
(1) 甲八ないし一一及び弁論の全趣旨によれば、アメリカン・ホームは、X1との間で甲車両につき自動車保険契約を締結しているところ、本件事故によりX1の被った損害を修理費用、レッカー費用及び現場清掃費で合計一九三万七三六六円と査定し、その車両保険条項に基づき、平成一四年三月二二日までに、免責金額一〇万円を除いた一八三万七三六六円の車両保険金をX1に支払ったことが認められる。
(2) ところで、本件事故により実際にX1に発生した損害は、(一)の(1)ないし(5)のとおり、合計一六八万〇六五〇円であり、(一)(5)の保管料以外の一六五万八六〇〇円のうち免責金額一〇万円を除いた一五五万八六〇〇円につき、車両保険金支払の効果が生ずるものと解される。したがって、アメリカン・ホームは、この一五五万八六〇〇円について、保険代位による求償権を取得したものである。
(三) X1の請求し得る損害額
(1) X1は、前記免責金額一〇万円のほか、(一)(5)の保管料二万二〇五〇円をその損害として請求することができる。
(2) 本件事案の内容、本件訴訟の経過、本件の認容額(一二万二〇五〇円)等を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては、一万二〇〇〇円が相当である。
(3) 損害額合計 一三万四〇五〇円
三 乙事件の請求額について
本件事故は、前記のとおり、赤信号無視というY1の全面的な過失により発生したものであるから、その余の点について判断するまでもなく、乙事件の請求はすべて理由がない。
第四結論
以上によれば、甲事件の請求は、<1>アメリカン・ホームが、市川商事及びY1に対し、連帯して一五五万八六〇〇円及びこれに対する保険金支払の日の翌日である平成一四年三月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、<2>X1が、市川商事及びY1に対し、連帯して一三万四〇五〇円及びこれに対する本件事故の日である平成一四年二月九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で、それぞれ理由があるから認容し、その余は失当として棄却することとし、乙事件の請求はすべて理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判官 河邉義典)