東京地方裁判所 平成14年(ワ)20708号 判決 2005年11月29日
原告
子原A子
外8名
上記9名訴訟代理人弁護士
五十嵐潤
山口広
中野和子
坂勇一郎
只野靖
青木秀樹
石井逸郎
大野康博
小川典子
小川英郎
木本三郎
小海範亮
桜井健夫
鈴木喜久子
鈴木久彰
高木一嘉
高木宏行
高見澤重昭
田中博文
千葉肇
塚田裕二
花輪弘幸
藤村眞知子
船山信行
南元昭雄
山口博
被告
丑藤B子
主文
1 被告は,原告らそれぞれに対し,1100万円及びこれに対する平成14年4月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
主文と同旨
2 請求の趣旨に対する答弁
原告らの請求をいずれも棄却する。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1) 当事者等
ア 原告らは,いずれも,ジーオーグループ(寅沢C男(以下「寅沢」という。)をオーナーとする企業グループ)の会員又は準従業員と呼ばれ,同グループに金員を拠出してきた者(以下「会員」という。)である。
イ 被告は,株式会社△△(以下「△△」という。)の元社員であり,平成10年12月15日から平成14年4月までの間,ジーオーグループの一員であるジー.コスモス.ジャパン株式会社(資本の額5億3000万円。なお,同社は平成13年5月11日商号変更により,ジー・コスモス株式会社からジー.コスモス.ジャパン株式会社となった。以下「ジーコスモス」という。)の監査役の地位にもあった者である。
ウ ジーオーグループは,高利益を謳い,広告費名目等で一般投資家から資金を集めていたが,平成14年3月26日,同グループの中核企業であったジャパンジー.オーグループインターナショナル株式会社(同社は,平成13年6月15日商号変更によりジー,オーグループコーポレーション株式会社からジー,オーグループインターナショナル株式会社となり,同年9月1日更なる商号変更によりジャパンジー.オーグループインターナショナル株式会社となった。以下「ジーオーインターナショナル」という。)のほか関連会社である神埼共栄開発株式会社(以下「神埼共栄」という。),ジーコスモス,みなもと債権回収株式会社,ジャパンジー・ユニバーサル株式会社(同社は,平成14年1月7日商号変更により,ジー・ユニバーサル株式会社からジャパンジー・ユニバーサル株式会社となった。以下「ジーユニバーサル」という。)について,一部会員らによって破産の申立てがされ,同年4月5日,各会社に対する破産宣告がされた。
また,平成14年3月,ジーオーグループについて,出資法違反の容疑で強制捜査が行われ,同年9月10日には,寅沢ら7名が詐欺容疑で逮捕された。
(2) ジーオーグループの詐欺商法の概要
ア ジーオーインターナショナルについて
ジーオーインターナショナルは,国内のグループ企業の全株式を保有する持株会社であり,寅沢が,同社の株式100パーセントを保有していた。
ジーオーインターナショナルは,他のグループ企業の株式を保有する以外には独自に収益に結び付く企業活動を行っておらず,ジーコスモス,神埼共栄及び株式会社エム・シー・オー・ジャパン(同社は平成12年11月30日商号変更により,中小企業援護協会株式会社から株式会社エム・シー・オー・ジャパンとなった。)から経営管理料名目で毎月入金を受けていた。
イ ジー・システムの概要(平成8年ころから平成13年8月ころまで)
ジーコスモスは,平成8年ころから,自宅にいながら安定した収入が得られる旨の会員募集の新聞折込広告等を配布し,応募してきた会員に対し,定期的に「エントリーガイド」などと称する冊子等を送付し,ジーコスモスの関連会社において通信販売を行っている複数の商品のうちから特定の商品を選択し,当該商品の宣伝広告費として金員を出捐(以下「エントリー」という。)すれば,当該商品の通信販売事業の売上の30パーセントを当該商品にエントリーした全会員の報酬総額として,各会員の広告費の負担割合に応じて案分した額を配当する旨約束し(後記「特別企画」と対比して「通常企画」と称していた。),会員から金員の出捐を受けた。また,ジーコスモスは,会員から多額の金員を出捐させるため,元本を保証して年利12パーセントから20パーセントの配当を約束して出資を募る特別企画を繰り返し実施し,会員から多額の金員の出捐を受けた。ジーコスモスは,上記システムを「ジー・システム」と称していた。
しかし,実際には,関連会社を通じての通信販売はほとんど行われておらず,ジーコスモスでは他に収益に結びつく事業活動はほとんど行われていなかったことから,ジー・システムの実態は,新規会員の出捐した金員が既存会員に対する配当金等の支払やジーオーグループの社員の給与等の経費に充てられるというものであった。その上,新規会員に対しても,約定どおりの配当金等を支払わなければならなかったため,新規会員を増やし続けなければ会員全員に対する約定どおりの支払が不能とならざるを得ず,したがって,会員への利益の配当及び元本の返済は元々実現不能であり,ジー・システムは破綻することが必至のシステムであり,詐欺商法と評価されるものであった。
ウ 「真・善・美」システムの導入
ジーコスモスでは,平成12年3月末ころ,従前の特別企画の配当日が次々に到来し,配当予定金額が増大した。そこで,ジーコスモスは,同年5月に,利益を継続してジーコスモスに保管させれば,それまでかかっていた払出手数料が不要になり,広告活動代金の場合には毎月の利益を複利計算で増やすことができるとして,会員の払出を抑制し資金をプールさせておく「真・善・美」と称するシステムを導入した。
しかし,「真・善・美」システムの実態は,ジーコスモス等の現預金の流出により,その残高が減少するのを防止するため,会員への配当金の支払を行わないようにする目的で実施されたものにすぎず,各会員の出捐金に対し,高率の配当金が付いたように見せ掛けるだけで,実際に各会員名義の金員がジーコスモス等の預貯金口座に残高として保管されるというものではなかった。
エ 銀行買収のための社債発行及び銀行預金名目での資金集め
寅沢は,平成13年5月下旬,フィリピン国内にある銀行を買収し,一挙に資金を集めようと考えた。そこで,寅沢は,同国のユニトラスト・デベロップメント銀行(以下ユニトラスト銀行」という。)を買収することとし,その買収資金として,フィリピンの現地法人であるジー.コスモスフィリピンズインク(以下「フィリピンズインク」という。)の社債を発行し,会員に購入させようと考え,同年6月ころから,会員に対し,社債の購入を勧誘する「新たなる事業」という表題の冊子やエントリーガイドを送付した。その結果,相当数の会員が,「真・善・美」システムによりジーコスモスに預けていた金員や新たな金員を出捐して社債を購入した。
しかし,フィリピンズインクは,同年7月下旬,フィリピンの証券取引委員会より業務停止命令を受け,以後一切の営業活動を停止せざるを得なくなっていたが,寅沢はかかる事実を会員に隠して社債購入を勧誘し続けた。
また,寅沢は,ユニトラスト銀行買収後,会員に対し,年利8.125パーセントの高利率を謳って,ユニトラスト銀行への預金を勧誘し,会員から約2億円を出捐させるとともに,「真・善・美」システムによりジーコスモスに預けていた金員を同銀行預金に切り替えさせた。
しかし,ユニトラスト銀行は,フィリピンの貯蓄銀行に求められる最低資本金である3億5000万ペソを下回る資本金しかなく,外国為替取引,円建て預金もできない極めて小規模の銀行であった。ユニトラスト銀行は,フィリピン中央銀行から財務関係書類の提出など必要な手続を踏んでいないと指摘され,平成14年1月4日,フィリピン中央銀行から業務停止を命じられ,経営破綻に陥り,PDIC(フィリピンデポジットインシュアランスコーポレーション)というフィリピンの預金保険機構の管轄下に置かれるに至った。会員から集められた金員は,寅沢により預金口座への入金が偽装されたが,実際には口座に入金されず,その行方は判然としない。
オ 株式販売名目での資金集め
寅沢は,銀行預金の募集が進まなかったため,平成13年10月,ジーオーインターナショナルの保有していたジーコスモス及びジーユニバーサルの株式を会員に譲渡し,「真・善・美」システムによりジーコスモスに預けていた金員を株式購入代金に振り替えることで会員からの返還要求を封じるとともに,新たな出資を募ることを決めた。
そこで,寅沢は,同年10月から11月ころ,会員に対し,「G.O.G保有株式譲渡のお知らせ」と題する文書(甲34)及び「○○システム活動内容書」(甲1)を送付し,ジーコスモス及びジーユニバーサルの株式の価値が1株当たり300万円であり,その譲渡を受ければ確実に高額の利益配当を受けられるとして,1株300万円(実行前に株式分割を行い,1株3万円とした。)で購入することを勧誘した。この結果,寅沢は,会員に支払うべき金員の相当額を株式に転換させてその返還を免れるとともに,新たに株式購入代金名目で約3億円の資金を集めた。
しかし,ジーコスモス及びジーユニバーサルの株式は,いずれも価値のないものであった。
カ 寅沢らの不法行為
以上のように,本件の会員からの金員の募集は,到底返済の見込みがないにもかかわらず,高利の収入が得られると装い,会員から多額の金員を集めたというものである。会員が,返済の見込みがないと知っていたならば,募集に応じて金員を出捐することは皆無といってよいほどであり,上記金員の募集は,寅沢が首謀者となり,ジーコスモス及びその関連会社が組織ぐるみで行った詐欺行為である。
(3) 不法行為責任(民法709条,719条1項)
ア 被告は,△△(同社は,エントリーガイドなど本件詐欺の不可欠の要素であるジーオーグループの印刷物の印刷を一手に引き受けていた。)の元社員であるとともに,平成10年12月15日から平成14年4月までの問,ジーコスモスの監査役の地位にもあった。
イ 被告は,△△の取締役でありジーコスモスの代表取締役を務めていた卯松D男(以下「卯松」という。)から,ジーコスモスの情報を得るなどしてその実態を把握していた。それにもかかわらず,被告は,ジーコスモスの監査役として,ジーコスモスの経営の中枢で本件寅沢らの不法行為に加担し,また,△△の社員として本件寅沢らの不法行為に加担した。
(4) 役員の第三者責任(商法280条1項,266条の3第1項)
ア 被告は,平成10年12月15日から平成14年4月までジーコスモスの監査役を務めてきた。
イ 被告は,監査役就任以降,卯松からジーコスモスの実態を聞くなどして,ジーコスモスの組織的詐欺行為を認識し,又は認識し得べき状況にあった。
また,被告は,監査役在任中,月額10万円の役員報酬を受け取っており,ジーコスモスの経営に全く無頓着であったとは考えられず,仮に全くの名義貸しで月額10万円が支払われていたというのであれば,通常の経済原理を逸脱した行為といわざるを得ず,このようなことを行う会社は危険な会社であると認識し,又は認識し得べき状況にあった。
よって,被告は,ジーコスモスの組織的詐欺行為を認識し,又は認識し得べき状況にあったのであるから,監査役としての職務権限を適切に行使して取締役の職務の執行を監査し,取締役会を招集するなどしてジーコスモスの不法行為を阻止すべきであった。それにもかかわらず,被告は,悪意又は重過失により,上記職務を懈怠した。
(5) 損害及び因果関係
原告らは,被告の前記不法行為ないし監査役としての任務懈怠行為により,ジーコスモスに,別紙債権額一覧の「届出支払総額」欄記載の各金員の支払を余儀なくされ,その後の受取額を差し引いた同一覧の「確定債権額」欄記載の各金員相当の損害及び同金員の10パーセントの弁護士費用相当の損害を被った。
被告のジーコスモスでの職務懈怠により,寅沢らの不法行為は拡大の一途を辿り,本件被害を発生拡大させたのであるから,被告の任務懈怠と原告らの損害との間に因果関係があることは明らかである。
(6) よって,原告らは,被告に対し,不法行為又は株式会社の監査役の責任に基づく損害賠償として,各自,別紙債権額一覧「確定債権額」欄記載の各損害金とこれに対する10パーセントの弁護士費用相当損害額との合計金額のうち各1100万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成14年4月5日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 被告の主張
ジーオーグループによる詐欺商法については,知らない。
被告は,平成10年11月ころ,卯松からジーコスモスの役員として名義を貸して欲しい旨頼まれたにすぎず,ジーコスモスに行ったこともなければ,寅沢と会ったこともない。被告は,△△の支社で名刺の印刷専門の仕事をしており,ジーコスモスの印刷物を見たことはない。
理由
1 証拠(甲2,4ないし6,20ないし32,45,69,70の1ないし6)によれば,請求原因(1)の事実が認められる。
2 証拠(甲1,3,9,12,15ないし17,20ないし34,36ないし38,40,41,45の88,106ないし108,112,114,127)によれば,請求原因(2)の事実が認められる。
3 請求原因(3)(不法行為責任)について
(1) 証拠(甲13,17,73,81,85,86,90の4ないし8)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,△△に勤務していたが,平成10年11月ころ,△△の取締役でありジーコスモスの代表取締役を務めていた卯松の要請を受け,同社に勤めつつ,同年12月15日にジーコスモスの監査役に就任し,平成14年4月に同社が破産宣告を受けるまでその地位にあったこと,ジーコスモスは,上記1及び2のとおり,ジーオーグループによる組織的詐欺の中核を担っており,また,△△はエントリーガイドなど本件詐欺の不可欠の要素であるジーオーグループの印刷物の印刷を一手に引き受けていたことがそれぞれ認められる。
しかし,被告が,ジーオーグループによる組織的詐欺の実態を知りながら,ジーコスモスの監査役又は△△の社員として上記詐欺行為に加担していたと認めるに足りる証拠はない。
(2) 以上のとおり,被告が寅沢らの詐欺行為に加担したと認めることはできないから,原告らの不法行為を理由とする損害賠償請求は理由がない。
4 請求原因(4)(役員責任)について
(1)ア 前記認定のとおり,ジーコスモスはジーオーグループによる組織的詐欺の中核となった会社であるところ,被告がジーコスモスの監査役に就任していた期間は,平成10年12月15日から同社が破産宣告を受けた平成14年4月までの約3年4か月の期間であり,被告は,ジーコスモスにおいてジー・システムと称した営業活動が行われていた時期に同社の監査役としての地位にあった。
イ これに対し,被告は,ジーコスモスの監査役については,名義を貸したにすぎず,ジーコスモスの経営には全く関与していない旨主張する。
しかし,例えば,監査役としての在任期間が短く,あるいは病気療養等の理由で法令が求める職務行為を到底期待することができないために,悪意又は重大なる過失がない,あるいは損害との因果関係がないとして,その責任(商法280条1項,266条の3第1項)が否定される場合があることはともかく,かかる事情のない限り,名目的監査役であるからといって,当然に商法上の監査役の第三者責任を免れるものではない。
(2)ア ところで,監査役は,取締役の職務の執行を監査し(商法274条),取締役会において違法ないし著しく不当な決議がされるのを防止し得るよう,取締役会に出席して意見を述べ,また,取締役が法令に違反する行為をし又はそのおそれがあるときには,取締役会に報告し,又は取締役会の招集を請求するなどして,これらの行為を予防ないし是正すべき義務がある(同法260条の3)。
これを本件についてみると,ジーコスモスは通信販売における宣伝広告費として会員から金員の出捐を受けているのであるから,その会員に約束した配当金の支払をするために,通信販売業務を通じて配当金に見合うだけの利益を出さなければならなかった。しかし,実際には,関連会社を通じての通信販売はほとんど行われておらず,他に収益に結びつく事業活動もほとんど行われていなかったのであるから,ジー・システムの会員向けの説明とはかけ離れた実態であった。
そうすると,ジーコスモスの監査役である被告としては,同社の取締役の職務執行の監査を通じて,同事業の最終的営業利益率がジー・システムにおいて必要とする水準を維持しているかどうかを調査し,ジーコスモスの実態ひいてはジーオーグループの詐欺商法を早期に覚知した上,取締役会で意見を述べ,又は取締役会に報告し,若しくは取締役会の招集を請求するなどして,かかる違法行為を是正させ,詐欺被害の発生を防止するべき義務があったというべきである。
イ しかるに,被告は,前記のとおりジーコスモスにおいてジー・システムと称した営業活動が行われていた比較的初期の段階からジーオーグループが破綻するまでの約3年4か月の間,同グループによる組織的詐欺の中核となったジーコスモスの監査役の地位にあり,その間月額10万円の役員報酬を受けていたにもかかわらず(弁論の全趣旨),取締役の職務の執行について何らの監査も行わなかったものと認められるから,被告には重大な過失があったといわざるを得ない。
なお,被告には,法令が求める職務行為を到底期待することができないといった事情は見当たらないから,上記(1)イのとおり,仮に被告が名目的監査役であったとしても,その責任を免れることはできない。
(3) したがって,被告には,商法280条1項,266条の3第1項の規定に基づく損害賠償責任があるというべきである。
5 請求原因(5)(損害額及び因果関係)について
(1) 原告らの損害額
原告らは前記のとおり,組織的詐欺行為によりジーコスモスに金員を拠出したのであるから,原告らの損害額は,拠出額からその後の受取額を差し引いた額と解するのが相当である。
そして,証拠(甲59ないし62(各枝番号を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,原告らの届出債権額のうち異議なく認められている届出債権額は,原告子原A子につき7827万2875円,原告辰森E子につき6052万7863円,原告巳海F男につき1587万1324円,原告午島G子につき5651万7105円,原告未橋H男につき1081万3550円,原告申宮I男につき5640万6423円,原告酉石J子につき3193万9118円,原告戌上K子につき3338万5100円,原告亥河L子につき3597万6763円であることが認められる。
したがって,同額及びこれに対する10パーセントの弁護士費用が原告らの被った損害額であると認められる。
(2) 因果関係
原告巳海F男及び原告申宮I男によるジーコスモスへの金員の支払の一部は,被告が同社の監査役に就任する前にされている。しかしながら,被告の負うジーコスモスの監査役としての責任は,ジーコスモスがジーオーグループの詐欺商法の中で中核的な役割を果たしていたことにかんがみれば,決して小さいものではなく,その詐欺商法の延命と被害の拡大をもたらした点で重大である。そして,本件のような組織的詐欺商法にあっては,会員から出資を受けることによって詐欺行為が完了するのではなく,その返還を免れるため幾多の手練手管が用いられるのであるから,一連の詐欺行為の途中から監査役になった者であるとしても,一連の詐欺被害全体に対して損害賠償責任を負うと解するのが相当である。
したがって,被告の職務懈怠と原告らの損害との間には,その資金提供の時期を問わず因果関係があるものと認められる。
6 結論
以上の次第であるから,原告らの本訴請求はいずれも理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担について民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官・石井浩,裁判官・間部泰,裁判官・川原田貴弘)
別紙債権額一覧<省略>