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東京地方裁判所 平成14年(ワ)26913号 判決 2004年3月09日

原告

X1

原告

X2

原告

X3

同訴訟代理人弁護士

井上庸一

川口和子

被告

セフテック株式会社

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

辰野守彦

工藤英知

柳誠一郎

池田竜郎

小川朗

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1請求

被告は,原告X1に対し金1766万9192円,同X2に対し金740万7770円,同X3に対し金838万9500円及びこれらに対する平成14年12月18日から支払済みまで年5分の割合の金員を支払え。

第2事案の概要

本件は,被告の社員又は元社員である原告らが被告に対し,被告が違法(いずれも正当な組合活動を理由とする不利益取扱いの不当労働行為)に原告X1とX2につき賃金減額,原告X1とX3につき賃金差別を行った不法行為による損害賠償として平成8年4月から平成14年11月まで(原告X1,同X3につき)又は平成13年2月(原告X2につき)まで賃金の減額ないし差別額相当額及びこれに対する訴状送達の日(平成14年12月18日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

1  争いのない事実

(1)  当事者

(ア) 被告は,赤色警戒灯供給請負及び警戒灯の製造販売,道路標識設置工事の請負並びに施工,各種保安用具の製造並びに販売等を目的とする株式会社であり,平成7年2月1日それまでの旧商号・東阪神株式会社から現商号へ名称変更して,現在に至っている。

(イ) 原告らは,いずれも被告に勤務し,原告X2は平成13年2月に退職したが,その余の原告らは現在も在職する者であり,かつ,被告内の労働組合である全労協全国一般東京労働組合(以下「東京労組」という。)の傘下の労働組合であるセフテック労働組合(以下「本件組合」という。)に所属する組合員である。

(ウ) 被告従業員に対する賃金は,年俸者以外の従業員については賃金規程(<証拠省略>)に基づき(以下「給与制」という。),年俸者についてはこれに加えて年俸制規程(<証拠省略>)に基づき,支給されることとなっている(以下「年俸制」という。)。

(2)  原告X1関係

(ア) 原告X1は,昭和45年5月21日被告に採用され,総務部経理課に配属され,間もなく経理主任に昇格したが,昭和47年4月総評・全国一般東京地区本部(東京労組の前身)・東阪神分会(本件組合の前身)の結成と同時に,同組合に加入して組合活動を行った。

(イ) 被告は,同年10月頃同原告を営業部外勤担当に配置換えする異動を行った。その後,被告は,同原告を昭和50年に資材部へ,昭和52年には再び営業部外勤担当へ,昭和58年には本社営業部営業1課へ,それぞれ配置転換した。

(ウ) 同原告は昭和61年7月7日,東京支店営業部営業第1課課長に昇進した。

(エ) その後,同原告は平成2年4月3日本社企画イベント担当課長(後に組織変更により本社営業開発室課長)となったが,このポストは課内に部下がいない,一人一課であった。

(オ) また,同原告は,平成3年8月21日本社営業部次長に昇進したが,B常務取締役はこのときも原告に対し,「昇進する以上は,組合を抜けてほしい。」と申し入れた。

(カ) 同原告は,平成4年4月1日本社特需部部長に昇進した。

(キ) 被告は,昭和61年7月同原告に対して,それまでの給与制を改めて年俸制に変更することとし,以後毎年年俸契約を更新してきた(原告X1本人)。平成5年2月24日に締結された平成4年12月21日から平成5年12月20日までの期間(平成5年度)についての年俸契約は,年俸を金765万円とし,これを17等分して平成5年1月28日から同年12月28日まで各月28日限りそれぞれ金45万円を支払うこととし,賞与は年間金225万円(5か月分)を支払う定めであった。

(ク) 平成5年3月半ば頃,被告は原告X1に対し,本社特需部廃止に伴い同原告を長野営業所へ配転したい旨打診した。同原告は,長野営業所への配転に応じると組合活動ができなくなること,妻が渋谷区に勤務する地方公務員であるため,長野営業所への配転に応じると単身赴任せざるを得ず,しかし,同原告の心臓疾患の病状からして単身赴任には耐えられないことなどを述べて,上記配置転換の打診を断った。

(ケ) すると被告は,同原告に対し,同年5月24日「配転先未定のため」と称して同日から自宅待機を命じ,同時に,医師の診断を受けるよう指示した。また,被告は同年6月7日,同原告に対し「部長を降ろす。これに伴って,役職手当7万円をカットする」旨電話で通告してきた。更に,被告は同月11日,同原告に対し「本社特需部長を解き,営業本部付とする」旨の辞令を交付した。そして被告は,同年7月28日の同月分給与から,降格に伴い部長職の役職手当月額7万円を控除したとして減額された賃金を支給した。ただし,同時に営業手当3万円を支給するようになった。

(コ) 同原告の降格及び配置転換自体については後日同意がなされた。

(3)  原告X2関係

(ア) 原告X2は昭和40年3月a大学経済学部を卒業し,以後順次4つの会社の経理部門における勤務を経て,平成3年2月21日被告経理部門経理課課長として採用された。

(イ) 平成5年度の年俸契約は,年俸を金680万円とし,これを17等分して毎月40万円を支払うこととし,賞与は年間金200万円(5か月分)を支払う定めであった。

(ウ) 原告X2は,本件組合に加盟したが,被告に対しては加盟を秘匿していた。

(エ) 平成6年4月22日,被告は同原告に対し,口頭で「<1>社風に合わない。<2>仕事中腕組みをしている。<3>手形を紛失したから退職願いたい。もし退職を拒否するならば,遠隔地へ配置転換する」との退職勧告を行った。そこで同原告は,同月26日本件組合に加盟している事実を被告に対して告げ,本件組合が同日上記退職勧告の撤回につき被告に対して団体交渉を申し入れた結果,同日団体交渉が開催された。この団体交渉において,被告は上記退職勧告の理由として,<1>手形を紛失したこと,<2>部下に対する指導が悪いこと,<3>経理課長としての職責を果たしていないこと等を挙げた。

(オ) 東京労組は,同月27日東京都地方労働委員会に対し,平成6年都委争第32号を以て,<1>原告X2に対する退職もしくは遠隔地配転の強要の撤回,及び<2>団交促進を申請事項とするあっせん申請を行い,同年5月13日のあっせん期日,同月17日の立会団交を経て,同月23日被告は東京労組に対し「X2に対する退職勧告は保留する。同人の課長職を降格する。役職手当月額4万円を削減する。新しい配置先として川口センター事務係または東京支店受注課を用意する。配転以前に3ヶ月間川口センター業務課で,更に3ヶ月間関東センター業務課で,順次研修を実施する」旨回答した。また,同月25日のあっせん期日において,東京労組は,「<1>降格及び配転には応じる。<2>配転先は川口センター事務係を希望する。<3>賃金の減額には応じられない。<4>前例のない長期の研修は認められないので,その期間の短縮を求める」旨回答した。また,同月30日のあっせん期日において東京労組が「賞与については,算定基礎額を基本給の26万3000円のみにすると,年収が大幅にダウンする」と抗議した。

(カ) しかし,被告並びに東京労組及び原告X2は,同原告の降格,川口センター事務係への配転については合意したものの,賃金の減額,賞与の算定方法及び研修期間については主張が対立したまま経過し,結局上記あっせんは同月30日不調に終わった。

被告は,原告X2の賞与の算定基礎は新賃金の基本給26万3000円のみとする旨東京労組に対して通知し,年俸制当時の賞与に比べて格段に少ない賞与を支給した。

(4)  原告X3関係

(ア) 原告X3は,昭和58年被告に入社し,平成5年当時33歳で業務職であった。

(イ) 原告X3は,平成7年1月17日付けで被告から,同月分賃金以降調整給を月額2万円増額する旨通知を受けた。

(5)  前件和解

原告らを含む本件組合員ら9名を原告,被告を被告とする当庁平成7年(ワ)第18233号賃金請求事件,平成7年(ワ)第23216号賃金請求事件において,平成8年2月27日,両当事者及び利害関係人東京労組の間で別紙和解条項<39頁-編注>のとおり訴訟上の和解が成立した(甲4)(以下「前件和解」という。)。

2  争点及び当事者の主張

(1)  原告X1の賃金減額関係

(ア) その違法性

(原告の主張)

配転降格が適法であるとしても,年俸契約上役職手当に関する合意はないから,これを理由として賃金を減額することはできない。賃金減額は,同原告の組合活動を理由とする不利益取扱いであるから違法である。

(被告の主張)

被告が同原告に長野営業所長への配置転換を打診したところ,主に健康上の理由でこの配置転換を拒否したため,被告は同人の健康状態を確認するため,一時自宅待機を命じ,その後同原告の同意をえて,同原告を部長職から降格して埼玉営業所に配置転換した。同原告はむしろ喜んで配置転換に同意した。その結果部長手当の対象外となったためこの分を減額したもので,違法ではない。

(イ) 減給額

(原告の主張)

減額前給与765万円(争いのない事実等(2)(キ))に対応する支給額は別紙1の別表1(準備書面(3)別紙)の「給与合計」のとおりであり,その差額は同表の「賃金減額分」のとおりである。

その計算根拠は,実支給額が,平成8年分は701万2981円で,平成9年以降は別紙2(<証拠省略>)のとおりであるところ,これには,次のとおり減額前給与に対応しない時間外手当と特別手当が含まれており,これを控除した額が上記別紙1の別表1の「給与合計」のとおりとなる。

営業手当の残業手当見合いの分を超えて残業をした場合に支払われる時間外手当と,営業実績がノルマを達成した場合に支払われる特別手当は年俸制社員であっても別途支給されるものであるから,差額の計算においてはこれらを既払額に算入すべきではない。

(2)  原告X2の賃金減額関係

(ア) その違法性

(原告の主張)

配転降格が適法であるとしても,年俸契約上役職手当に関する合意はないから,これを理由として賃金を減額することはできない。賃金減額は,同原告の組合活動(平成6年2月18日加盟)を理由とする不利益取扱いであるから違法である。

(被告の主張)

被告は,平成3年4月に原告X2(当時49歳)を採用し,経理課長に任じたが,翌年の10月29日には,額面総額1517万2288円の約束手形を自ら切断廃棄するという極めて重大なミスを犯した。更に,同原告は部下の指導が悪く,経理課の職員からも不満がでていたこと,支店業務との連携管理が取れていなかったこと,勤務態度が良好でなかったこと等から,上司よりしばしば注意を受け,平成5年5月に反省文を提出したが,改善される様子が認められず,経理課長としての職責を果たしていないことが明らかであったので,平成6年4月22日に同人に対し退職勧奨を行った。その後,団体交渉を経て,退職勧奨は保留し降格配転を行うことで双方合意した。その結果課長手当の対象外となったためこれを支給せず,また,年俸制から給与制に移行したため給与の減額が生じたもので,違法ではない。被告は原告X2の組合加盟を同原告への退職勧奨の時点まで知らず,知りえなかったのであるから,そもそも同人への対処が組合活動を理由とする不利益取扱いではありえない。

(イ) 減給額

(原告の主張)

減額前給与680万円(争いのない事実等(3)(イ))に対応する支給額は別紙1の別表3の「給与合計」のとおりであり,その差額は同表の「賃金減額分」のとおりである。

実支給額は,別紙2のとおりであるが,これには上記(1)(イ)のとおり減額前給与に対応しない特別手当と時間外手当が含まれており,これを控除した額は上記「給与合計」のとおりである。

(3)  原告X3の賃金差別関係

(ア) 賃金格差の存在

(原告の主張)

被告は,原告X3(平成5年当時33歳業務職)に対する賃金を,入社以来非組合員に比べ著しく低額に押さえ続けた。その結果,同原告の能力は同原告より勤続年数が7年間短い非組合員・C(平成5年当時29歳営業職)と比較して同等以上であるにもかかわらず,同原告に対する賃金額は,上記Cと比較して平成5年度及び平成6年度年間支給額合計において,101万1600円低額であったほか,両者の賃金には別紙1の別表4のとおり格差がある。顕著な例としては,平成6年5月度支給の月額給与において,同年4月に入社したばかりの非組合員・D(当時22歳営業職)と比べても1万0300円少ないという実情であった。

(被告の主張)

Dは営業職として,営業手当月額3万円を支給されていたところ,これは時間外手当見合いの性質を有するから,原告X3の固定給部分と比較するならばこれを控除するべきである。そうすると原告X3・21万9700円に対し,Dは20万円である。

原告X3の基本給はCのそれを上回っており,実支給額が逆転しているのは営業手当をはじめ比較の対象とすべきではなく控除すべき手当の支給によるものである。

平成4年6月施行の被告の給与体系においては,賃金は基本給,調整給等の基準内賃金と早出・残業手当等の基準外手当により構成され,賃金は学歴・年令(ママ)・勤続・職能などに応じた社員資格により,月給及び日給月給により支給されており,定期昇給は年1回(5月)に人事考課に基づき行われた(<証拠省略>)。このようにして定められた固定給(基準内給与)については,別紙3(<証拠省略>)のとおり昇給額には差異があったものの毎年上昇を続け,固定給が減少した例は一度もなかった。

原告X3とCとの給与差は,役職手当と年俸制による賞与の額,扶養家族数の相違による手当の相違に帰するのであり,原告X3が管理職に登用されるよう自助努力を行い,評価者に積極的評価を受ける結果を残せば,賃金格差は明らかに解消される水準に達している。

(イ) その違法性

(原告の主張)

上記賃金格差は,同原告が入社当初から組合活動を行ったことからこれを嫌悪してなされた不利益取扱いであるから違法である。

(被告の主張)

正当な能力評価の結果である。

被告は,通常の会社と同様,社員の勤務態度,業務成績その他の能力等を基準に年1回の能力考課を行い,基本給を改定している(<証拠省略>)。従業員の能力評価は,当該従業員が与えられた職務を的確に処理できるかどうかが,基本的な判断基準となる。与えられた職務を的確に処理して高度の評価を受けることによって,昇進の資格を得るのである。

被告の人事制度において具体的には,1等級から始まる職務の等級が定められており,4等級が主任職として最初の役職となり,5等級が係長,6等級が課長代理・課長とされており,それぞれの職務が定義されている。毎年行われる能力考課において,SもしくはAの評価を得たものが昇格の対象となり,CもしくはD評価を連続して受けたものについては降格対象となることがある。

この等級が定められた平成9年の時点で原告X3は3等級と位置付けられ,その後6年を経て等級の変動はない。更にいえば,現行の等級制度のなかった時点においても,主任以上のクラスへの昇格に値する評価がなされなかったのである。また,別紙3に記載されたとおり,同人に対するその間の能力考課においてBを上回る評価が存在しないことが示すとおり,同人の能力の評価は通して低いものであった。これらの事実は,原告X3が,3等級相当の職務を的確に処理していなかったことを意味する。

原告X3は,入社以来被告が行った能力考課において著しく低水準の評価を得ることしかできず,結果,同期入社の社員に比して給与水準が低くなる結果となったのである。

具体的には,平成10年から13年の間に発生した被告のフォークリフト事故7件のうち,6件が同原告が操車中に発生したことを指摘することができ,これにより被告は少額とはいえない損害を被った。

ちなみに,被告において,組合に所属する者でも能力考課における差別はなく,相応の評価を得て,4等級以上に昇格したものは多数存在する。過去の実例として,関東営業部内における組合員に関する最近の事例に限定しても別紙4(<証拠省略>)記載のとおりの例が存在する。被告が原告X3のみに対し,差別的な評価を行うべき理由は全くないのであるから,このことからも原告X3に対して偏った評価をしているものではないことが明らかである。

これに対してCは,原告X3より就職は遅いものの,平成6年の時点で既に新人事制度における5等級に相当する係長職に任じられており,より高度な職務を託されていた。そのこと自体が,原告X3との能力の差を明らかに示すものといえる。

(ウ) 差別額

(原告の主張)

上記Cとの差が差別額であるところ,両者の賃金には別紙1の別表4の賃金差別分のとおりの差がある。

別紙5(<証拠省略>)は当該年の4月ないし翌年の3月を一年度とした場合の原告X3,E及びCの年度別賃金額とその内訳である。

なお,実支給額は別紙5のとおりであるが,これには時間外手当や欠勤控除等,月々の勤務実態により変動する部分(「変動給計」と記載されている部分)を含んでいるから,同原告についても,比較の対象であるCについても,これらは除外して差を算出するのが相当である。

別紙5記載のCの年度別賃金額から「変動給計」を控除した金額と,原告X3の年度別賃金額から「変動給計」を控除した金額を基礎として,同原告に対する差別賃金額を計算し直した結果が,別紙1の別表4記載のとおりである。

(被告の主張)

原告X3の給与比較対象者は,時間外給与の対象とならない年俸制対象者(管理・監督職)であり,年俸制対象者となる前においても原則的に時間外給与の代償として営業手当を受給していた営業職であったので,役職手当・営業手当を含むこれらの者の給与との対比においては,時間外給与等の変動給を加算しないと正確とはいえないことになる。

(4)  原告X1の賃金差別関係

(ア) 賃金格差の存在

(原告の主張)

同原告の能力は同原告と年齢や勤続年数においてほぼ同等の非組合員Fと比較して同等以上であるところ,同原告の賃金減額前の賃金765万円とFの賃金の間には別紙1の別表2のとおり格差がある。

(被告の主張)

他の社員と比べて格差があるとはいえない。同原告とFの正確な賃金対比は別紙6(<証拠省略>)記載のとおりであるところ,原告X1の給与は,平成4年の時点ではF及び「G」の給与を上回っている。

その後,平成5年中途に同人の同意による降格に伴い,役付手当がなくなり,かつ,給与制となったことにより給与総額は減額するものの,固定給(営業手当を含む)は着実に増加し,役付時には存在しなかった変動給の支給も行われるようになった。また,賞与額については,前件和解2項に記載されたとおりの優遇があるため,他の給与制社員に比べて相当の優遇がなされている。

(イ) その違法性

(原告の主張)

同原告が入社当初から組合活動を行ったことからこれを嫌悪してなされた不利益取扱いであるから,上記賃金格差は違法である。

(被告の主張)

部長職にあり,Sの評価を受けた年度もあるFと,役職を離れることを同意した原告X1の給与に別紙6記載の差異が生じることは,会社経営上不可避というべき措置であり,この程度の差額が存在することを不相当ということはできない。

(ウ) 差別額

(原告の主張)

上記Fと同原告の賃金減額前賃金765万円との差が差別額であるところ,両者の賃金には別紙1の別表2の賃金差別分のとおりの差がある。

すなわち,比較の対象とすべきFの年度別賃金額は次のとおりである。

別紙7(<証拠省略>)は当該年の4月ないし翌年の3月を一年度とした場合の,原告X1,F,G,の年度別賃金額とその内訳である。

<1> 平成8年度ないし平成10年度については,別紙7記載の同人に対する年度別賃金額をそのまま,比較の対象とした。

<2> 平成11年度については,同年7月1日にF自身の責めに帰すべき事由により同人が部長から次長に降格され,それに伴い,役付手当が月額7万円から6万円に減額され,一年度で10万円の減額となっているため,<証拠省略>記載の同年度の賃金額870万7500円に10万円を加えた金880万7500円を,比較の対象とした。

<3> 平成12年度及び平成13年度については,Fが平成12年度途中で退職しているため,平成11年度と同様金880万7500円を,比較の対象とした。

<4> 平成14年度については,原告X1の同年4月ないし11月の給与額(8か月分の月例給与額に,夏季賞与額として月例給与2か月分の金額を加えたもの)と比較するため,上記<2>のとおりの金870万7500円を17で除して10を乗じた,金518万0882円を,比較の対象とした。

(5)  裁判上の和解の成立等

(被告の主張)

平成7年(ワ)第18233号賃金請求事件(東京地裁),平成7年(ワ)第23216号賃金請求事件(東京地裁)における訴訟上の和解(平成8年2月27日,甲4)において,原告らと被告は,原告X1,X2につき同和解条項2項のとおりと,原告X3については従前のとおりの賃金とすることで紛争を解決する旨合意した。

被告は一貫して差別賃金の存在を否定しつづけ,そのことについては訴訟上の和解の策定経過において明らかに示されている(<証拠省略>)。甲3の確認書は,新給与体系の策定に当たって,本件原告ら3名の給与問題についても協議することを合意したに過ぎず,甲4の和解条項第3項と実質的に同趣旨である。

(原告らの主張)

上記和解は,本件の訴訟物に関するものではない。

かえって,上記和解は甲3の確認書と一体として合意されたところ,本件の訴訟物に関する問題が残っていることを確認し,これを平成8年4月までに是正することを合意した。

第3争点に対する判断

1  前件和解の趣旨について

(1)  後掲証拠及び弁論の全趣旨によると,次の事実が容易に認められ,動かすことのできない前提事実とすることができる。

(ア) 平成8年初頭の時点で,原告らを含む本件組合員ら及び東京労組と被告との間には,東京地方労働委員会に,原告らに対する組合差別に関する<1>平成6年(不)第15号不当労働行為救済申立事件及び<2>平成7年(不)第65号不当労働行為救済申立事件,当庁に,割増賃金の請求に関する<3>平成7年(ワ)第18233号賃金請求事件及び<4>平成7年(ワ)第23216号賃金請求事件が係属していた。

(イ) 平成8年1月8日ころ,原告X1と被告の当時の労務担当者であるH総務部長(以下「H」という。)の間で代理人弁護士を介さず直接交渉した結果,(ア)記載の4件を含めて全面的な和解をすること,和解金額は800万円とすることなどの基本的な合意が成立した。

(ウ) 同月18日10時からの裁判所の期日において,双方代理人から裁判所へ,全体の和解が整った旨の報告がなされ,800万円の解決金は,和解調書から別記とすること,裁判所での和解とし,地労委における事件(本件原告3名の給与に関する申立)は同時取下とすること,和解条項については双方代理人弁護士が詰めること,同年2月27日を次回期日とし,その前の2月15日に弁護士会館において双方代理人弁護士同席で協議を行うことなどが取り決められた(<証拠省略>)。

(エ) このような経過で組合側が作成して被告側に送付した和解案(<証拠省略>)(以下「組合案」という。)には,原告X3の賃金が年齢・学歴・勤続年数から見て他に比較して低額であることから,新給与体系の実施時点において格差の是正をすること(二項),原告X1及び同X2の賃金減額の不利益等についても同様に配慮すること(三項第2段落)が盛り込まれていた。

(オ) これに対し,当時の被告代理人弁護士Iは,上記組合案の二項全部,三項第2段落の削除を求め,代わりに「給与体系制度の際に十分説明する。」との条項にすることを希望した(<証拠省略>)。

(カ) 平成8年2月27日,原告らほか6名に利害関係人東京労組を加えた組合側と被告との間で,上記(エ)の二項全部,三項第2段落を削除し,代わりに「被告は,新給与体系の実施については,事前に充分な協議を利害関係人と行う。」との条項で前件和解が成立した。(甲4)

(キ) また,被告と東京労組及び本件組合は,同日付けで「原告らに対する給与問題は,平成8年4月を目途とする新給与体系の実施に際して,解決するべく協議する。」旨の確認書(以下「確認書」という。)を作成した(甲3)。

(2)  被告の主張と裏付け証拠について

(ア) 被告は,平成15年2月27日付け準備書面(第1回)の第2において,概要次のとおり主張し,<証拠省略>(B当時の副社長の陳述書),証人J(<証拠省略>)及びIの供述(<証拠省略>)はこれに沿うものである。

(a) 上記(1)(イ)の際に,<1>被告は全ての係争に対する和解金として金800万円を支払う,<2>係争事件については,地裁および地労委において和解する(実際には地裁における和解となった。),<3>残業問題については終業後の休憩時間を15分とする等の改定を行う,<4>原告X1問題は,条件をつけず現状(賞与計算時の対象金額に基本給,調整給以外の諸手当を加算)を固定する,<5>原告X2問題は,賞与計算時の対象金額に基本給,調整給以外の諸手当を加算(原告X1と同じ扱いとする),<6>原告X3問題は条件はなしとすること等が合意された。乙9はこの趣旨を記載した文書である。

組合案も,結局は当初の合意どおり原告X1,原告X2の給与の額および賞与の決定方法のみを合意する内容に変更された。

(b) 甲3の確認書の記載内容は,新給与体系の実施に際して,会社と組合が十分な協議を行うという和解条項の三項と実質的に何ら異ならない意味を持つに過ぎないもので,被告が検討中の給与体系の改定において,原告ら3名に対しても正当かつ公平な処理をする旨の意思表示をしたものにほかならない。

(c) 全従業員にかかわる給与体系の改定において,個別従業員のみを優遇処理する改定は行いえない。

(d) 前件和解は,原告X1,原告X2の給与について,給与制に変更され,かつ役職手当がないことを明示的に合意し(甲4の和解条項二項),一方で,賞与における他の社員より有利な扱い(基本給,調整給以外の手当を算定基礎に加算)を合意し,これによって,その時点までの原告ら3名の給与問題は全て解決済みとすることを含め,懸案をいっさい解決する内容のものであった(乙2の合意書)。

(e) したがって,原告らの本件請求は6年前に合意解決済みの問題を蒸し返そうとするものにほかならない。

(イ) しかし,被告の主張には,上記(1)の事実経過等に照らして次のような疑問があり,採用しがたい。

(a) もし,1月8日の時点で被告主張の内容で合意が成立し,18日には担当裁判所にもその旨報告したとすると,それにもかかわらず,原告らがそれを真っ向から覆すような条項を含む組合案を作成して送付するとは考えにくい。組合案に沿うような趣旨の合意があったからこそ,原告らが組合案を作成したと解するのが自然である。

(b) もし,前件和解が,原告ら3名の給与問題を全て解決済みとすることを含め,懸案を一切解決する内容のものであれば,あたかも原告らの給与問題が未解決であることを前提として,この問題を新給与体系実施に際して解決することを合意したかのような内容の確認書を作成する理由がない。

和解成立時に当事者間で別途合意書等を取交わす趣旨は,何らかの点で和解に盛り込むことが相当でない内容の合意が成立したために,和解条項以外の方法でこれを確認することにあり,被告が主張するように和解条項と実質的に何ら異ならない内容の確認をする意味は全くない。むしろ,このように誤解を受けかねない内容の確認書を何らの必要もないのに弁護士が代理人として関与しつつ作成するということは到底あり得ないことである。

(c) 被告は,全従業員にかかわる給与体系の改定において,個別従業員のみを優遇処理する改定は行いえないと主張するが,給与体系の改定に際し,従業員の業績・能力評価を見直し,昇進・降格を行うことはごく普通に行われていることであって,むしろこれを行う好機である。

(d) 乙9は,その内容のとおりに両者の合意が成立したことを示すとすると上記のとおり不合理であるうえ,同じHが10日後に作成した乙10と比べて,表題の有無,作成者や閲覧者の捺印の有無,日時や出席者の立場の記載方法等異なる部分が多いことからしても,乙10と同じく交渉内容を記録する趣旨で作成されたものかは疑問である。そして,作成者とされるH自身,これを作成したこと自体は認めるものの,作成趣旨について,組合との間でこのように決定したというものではなく,会社としての基本的な方針をまとめたものであると明言している(<証拠省略>)。したがって,乙9が被告主張のように両者の合意が成立したことを示す趣旨で作成された文書とは到底認められない。

(e) 上記(ア)のIの供述は被告の主張に沿うものであるが,同人はHと原告X1との間の交渉には直接関与しておらず,また,被告主張のとおりの結論であると供述するものの,そのような結論に至った経過に関する供述は不明朗で到底首肯しうるものではないから,信用できない。

(f) 上記(ア)の<証拠省略>,証人Jの供述も被告の主張に沿うものであるが,被告主張のとおりの結論であると供述するものの,そのような結論に至った経過に関する供述は不明朗で到底首肯しうるものではないから,信用できない。

(3)  原告らの主張とHの供述(<証拠省略>)について

(ア) 原告らの主張は,次のとおりである。

1月8日,割増賃金の問題については和解金800万円の支払等により,原告らの賃金問題については新給与体系の中で評価を修正して是正することにより((2)(ア)(a)<4>,<5>はそれまでの暫定的な措置である。)解決することを合意した。

組合案から上記是正に関する部分が削除されたのは,組合案の表現が被告が原告らに対し賃金差別を行ったことを認めた上,その是正を約束するかのような内容となっており,これが被告の従来からの主張と矛盾することに配慮して,和解条項からは外したうえ,表現を和らげながらこの趣旨を明らかにするものとして確認書を作成した。

(イ) 原告らの主張は,確認書の記載内容その他,(1)の経過に照らして合理的で自然である。しかも,被告側担当者として交渉を行ったH自身がこれに沿う供述をしている(<証拠省略>)。即ち,以下のとおりである。

(a) Hは,残業代の支払請求に対する解決金の趣旨で800万円を支払ったこと,『もう一つの懸案事項』『未解決の問題』について,過去の分についてはこれ以上の請求をしないことを前提として,今後新給与体系の中で正当な評価に基づく結果としての新しい賃金を提示することによって解決を図る旨合意したこと(<証拠省略>),後者の趣旨を文書で確認したのが確認書であること(<証拠省略>),それは組合の問題にしている差別賃金を解決する手段であること(<証拠省略>)を供述する。

(b) 他方,Hは,被告代理人の誘導尋問を受けて別紙和解条項三項と確認書の意味するところは基本的に同じであるとも述べているが(<証拠省略>),その趣旨は,むしろ別紙和解条項三項の方にも,新給与体系の中で原告らの賃金格差の是正をする趣旨が含まれているというものと理解できる(<証拠省略>)。

また,Hは,被告の考え方は「(原告ら3名の賃金が,)絶対的な金額として,他の従業員と比べたときに,確かに低いという部分というのは事実としてあったと。ただ,その低いということは,正当な評価に基づく低さであって,差別的な賃金を実施した結果ではないと,そういう考え方だったです。(<証拠省略>)」,「新給与体系の中で,今までと違う評価をした上で,結果として賃金が変更されうるから,これは修正という考え方であり,是正という発想はなかった」(<証拠省略>),「差別というものは基本的にはあり得なくて,正当な評価による賃金が違っていた」(<証拠省略>)と述べる。また,被告代理人の尋問を受けて,甲29の陳述書はH証人自身が作ったものである旨述べた上で(<証拠省略>),同陳述書第5項の「差別賃金を……是正する」との記載については,「事実誤認をしていた」とか「改めたい」等と証言している(<証拠省略>)。しかし,そのような内容の陳述書を作成したのは「認識の中には,こういうものがあったため」であり,それが事実誤認であるのは「差別というものは基本的にあり得なくて,正当な評価による賃金が違っていたと」いう考え方だからである(<証拠省略>)と述べる。また,Hが上記陳述書を作成し,原告らがこれを提出した後,被告の社員がそのことにつきHに電話をして同人を間接的に非難するような発言をした(<証拠省略>)。このことも併せると,Hは,自分の認識のとおりに陳述書を作成したが,その認識と被告の従来からの主張との間に差があると判断し,被告担当者の立場で行動していた以上,被告の従来からの主張のとおりの趣旨に訂正するのが正当であろうと判断し,その趣旨を供述したに過ぎないものと解される。

(4)  判断

以上によると,本件が前件和解において解決済みのもので,紛争の蒸し返しであるとの被告の主張は採用できず,かえって,上記和解は確認書と一体として合意されたところ,本件の訴訟物に関する問題が残っていることを確認し,新給与体系実施の中でこれの解決を図ることを合意したものであるとの原告の主張を採用すべきである。

ただし,組合案から原告らの給与を是正するとの条項が削除され,確認書を作成することになった経緯とHの供述に鑑みると,被告が組合員に対する差別の結果として原告らの賃金に格差が生じたことを認めたうえでこれを是正するとしたものではなく,妥協の結果として新給与体系実施の中で原告が主張する賃金格差の修正を図るべく協議することを合意したに過ぎないというべきである。

2  原告ら及びその比較対象とされる者の賃金額について

(1)  原告X1

(ア) 同原告に対する支給額自体は,平成9年ないし14年は,原告の主張である別紙2,7(<証拠省略>),被告主張の別紙6(<証拠省略>)のとおりである。なお,両者の間に僅かな違いがあるが,これは,前者が4月から翌年3月まで,後者が1月から12月までを集計している(<証拠省略>)ことによるものであり,実際の差異はないものと解される。平成8年については,「給与」は正しくは515万7981円であり,給与合計は701万2981円,(<証拠省略>)と認定する。平成7年以前は別紙6のとおりと認定する。

(イ) ところで,原告らは変動給(特別手当と時間外手当)が減額前の年俸制給与部分とは対応しないとして,これを控除した額で比較すべきであると主張する。このうち,特別手当については年俸制社員であっても支払われることがあるから(<証拠省略>のF及びGの変動給欄)これを控除すべきであるが,時間外手当については,後記のとおり被告は年俸制社員にはこれを支払わないことにしているところ,賃金差別の存否の判断という観点からは被告の取り扱いを前提として判断するべきであるから,これは控除すべきではない。そうすると,平成6年は6月に特別手当1万円が支払われているから(<証拠省略>)これを差し引いた700万2981円,平成12年は同15万4929円を差し引いた(<証拠省略>)681万0644円,平成13年は,同24万5000円を差し引いた(<証拠省略>)678万7244円,平成14年は同8万円(<証拠省略>)を差し引いた372万0132円となる。その他の平成9年ないし11年度は,別紙7のとおりである。

(ウ) F及びGの給与については,別紙6,7のとおりである。

(2)  原告X2

同原告に対する支給額自体については,別紙2(<証拠省略>),別紙8(<証拠省略>)のとおりである。

特別手当の額を差し引くと,平成12年は5000円を差し引いた(<証拠省略>)571万0746円,平成13年度は3万3000円を差し引いた(<証拠省略>)523万9962円となる。なお,平成13年度は,平成14年2月20日限りで退職しているために少なくなっている(<証拠省略>)。

(3)  原告X3

同原告に対する支給額自体については,別紙2(<証拠省略>),3(<証拠省略>),5(<証拠省略>)のとおりである。同原告について,特別手当が支払われたことを認めるにたる証拠はないから,差し引くべきものはない。

E,Cの給与については,別紙3,5のとおりである。

3  賃金減額について(原告X1及び同X2)

(1)  後掲証拠及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。

(ア) 平成4年6月1日に初めて制定された賃金規程は,賃金は基本給,調整給等の基準内賃金と早出・残業手当等の基準外手当により構成すること,賃金は学歴・年令(ママ)・勤続・職能などに応じた社員資格により,月給及び日給月給とすること,基本初任給は,学歴・年令(ママ)・経験・技能・職務内容などを勘案して各人毎に決定すること,定期昇給は年1回(5月)人事考課に基づき基本給の考課昇給を行うことと定めた(3条,4条,14,15条)。また,基本給の減額を予定した規定はない。なお,実際にはこれに先立つ昭和61年ころには年俸制を導入し実施していた。(<証拠省略>,原告X1本人)

(イ) 上記(ア)の賃金規程は,平成9年改訂され,併せて年俸制規程が制定され,平成10年4月ころ,さらに改訂された。平成9年の改訂により,被告は,役職と対応する1等級から9等級までの職能等級を定め,4等級が主任職として最初の役職となり,5等級が係長,6等級が課長代理・課長,8等級及び9等級が部長とされており,それぞれの等級で必要とされる能力が定義されている。また,1ないし4等級が給与制社員,5ないし9等級が年俸制社員とされた。そして,毎年行われる能力考課において,SもしくはAの評価を得た者が上記等級の上昇(以下「昇格」という。)及び職位ないし役職の昇進の対象となり,CもしくはD評価を連続して受けた者については降格対象となることがある。被告の人事制度は,一部例外はあったにしても,原則としてこれに沿って運用された。(<証拠省略>)。

(ウ) 役付手当に関しては,上記(ア)の賃金規程は,地位に応じ5000円から10万円を支給する旨定めた。上記(イ)の平成9年改訂以降は,賃金規程及び年俸制規程とも同一の内容で,主任1万円から始まって,課長・所長4万円,次長6万円,部長7万円等,職位に応じた定額を支給する旨定めている。なお,平成9年年俸制規程が制定された際,役付手当に関する規定は「新設」ではなく,従来のとおりの扱いであるとされた(<証拠省略>)。

(<証拠省略>)

(エ) 平成9年改訂以後の給与制社員の賃金体系は,基本給(年齢給,機能給,調整給)と,役付手当・営業手当その他の諸手当,割増賃金及び賞与で構成され,雇い入れ時の基本給は,年令(ママ)・経験・技能・職務内容などを勘案して各人毎に決定すること,昇給は年1回人事考課に基づき基本給の昇給を行うこと(平成10年の改訂でさらに,年1回能力考課を行い,別途定める能力考課評価額に基づき,各人の基本給を改訂するとした。),賞与については,その期の業績と従業員の業績考課を勘案して支給することと定めている。給与制社員の賞与は,年齢給と職能給に被告の業績及び従業員の業績評価による倍数を乗じた額となる。ただし,原告X1と同X2に対しては,前件和解により給与月額を基礎として倍数を乗じた額を支給している。その他に基本給の賃金の減額を予定した規定はない。(<証拠省略>)

(オ) 他方,年俸制社員については,年俸は,職能給と役付手当に17を乗じた金額で構成され,前年度末すなわち3月31日時点での,業務遂行能力と実績の評価により職能給を決定すること,年俸はこれを17分し,17分の1ずつを月々に,17分の2を7月に,17分の3を12月に支給することと定めている。(<証拠省略>)

なお,被告は,年俸制社員には割増賃金を支払わず,給与制社員の内,営業社員には時間外労働割増賃金は支払わず,他方,基本給の20パーセント相当の営業手当を支払うことにしている(<証拠省略>)。

(カ) 被告においては,実際にも,毎年5月に査定を行って賃金を引き上げていたが,当初は,上記(イ)のような段階評価は行われておらず,査定権者が適宜判断していた。なお,在職年数に応じて当然に昇給していくというような意味での定期昇給はもともとなかった。平成7年ころ,被告は,このような段階評価の方法を導入することにし,従業員に自己評価を提出させたが,組合員は全員が「S」と記載して提出したことから,被告は自己評価を提出させることをやめ,段階評価ではあるもののやはり査定権者が適宜判断していた。その後,上記(イ)の制度改革により,一応の基準とルールをつくり運用するようになったが,被告は査定基準や採点方法を開示していない。(<証拠省略>)。

(キ) 原告X1は,昭和61年7月東京支店営業部営業一課長就任に伴って給与制から年俸制に移行した。その後,特需部長解任に伴って平成5年8月年俸制から給与制に移行した。年俸通知書には役付手当の支給に関する文言はなかった(<証拠省略>)。

(ク) 原告X2は,平成3年3月経理課長として入社した時点から年俸制であったが,その後,課長解任に伴い平成6年7月年俸制から給与制に移行した。年俸通知書には役付手当の支給に関する文言はなかった(<証拠省略>)(ママ)

(ケ) 被告は,役付手当として,原告X1に対しては,平成4年1月時点で5万円,平成5年1月時点で7万円,原告X2に対し平成4年1月ないし平成6年6月時点で4万円,それぞれ支給したが,いずれも降格後は支給しなくなった(<証拠省略>)。

(コ) 原告X1と同等の勤続年数で同原告より年収が少ない者は複数いる。(<証拠省略>)

(サ) 被告関東営業部内において,最近数年中に,4等級以上に昇格した組合員は別紙4記載のとおり3名が存在する(<証拠省略>)。また,被告社員257名に対し,本件組合員は20数名であるところ,被告関東営業部内の営業所長4名中2名が本件組合員である。(<証拠省略>)

(シ) 被告の業績は,平成9年をピークに下降しており,平成15年3月期は,経常利益が4419万円,当期損失が2億3193万円となっている(<証拠省略>)。

(2)  検討

(ア) 役付手当の不支給と賃金減少との関係

年俸制であった原告らの減額前賃金の構成は,原告X1は,毎月支給分が本給に相当する職能給部分が38万円,役付手当分が7万円,その12か月分は456万円と84万円,賞与に相当する5か月分は,190万円と35万円である。原告X2は,毎月支給分が職能給部分が36万円,役付手当分が4万円,その12か月分は432万円と48万円,賞与に相当する5か月分は,180万円と20万円である。そうすると,役付手当の不支給により年収ベースで,原告X1は119万円の,原告X2は68万円の減少をきたす。(<証拠省略>)

他方,年収の減少額は,原告X1は最も大きいのが平成11年の98万6592円であり,原告X2は途中退職の平成13年度を除き平成12年の108万9254円である。

以上によると,原告X1については,その賃金減少額は役付手当の不支給による減少の範囲内に止まっているのに対し,原告X2はこれを最大で40万9254円超えていることがわかる。ただし,年俸のうち本給に相当する職能給部分の12か月分に相当する部分は432万円であるところ,別紙8のとおり固定給の支給額はこれを下回ってはおらず,賞与が減少しているものである。減額前の賃金の賞与に相当する部分は200万円で,このうち本給に相当する職能給部分は180万円であるから,上記役付手当の不支給を超える分の40万9254円の同賞与に対する賞与の減少額は約23パーセントとなる。

(イ) 役付手当の不支給について

原告X1と同X2が有効に降格処分を受けたことについては争いがなく,上記(1)(ウ),(オ),(ケ)によると,被告は,年俸制社員についても役職に応じて役職手当ないし役付手当を支給しており,その額は,原告X1については,遅くとも平成5年1月以降月額7万円,原告X2は平成4年1月以降月額4万円が支給されていたこと,平成4年6月には,就業規則たる性質を有する賃金規程に同手当は地位に応じ支給するものであることを明記したこと,が認められる。そうすると,被告の立場としては,管理職を免じれば管理職手当はつかなくなるのは当然であり,降格して平社員としたにもかかわらず,部長や課長に対する手当を支払うわけにはいかない。

したがって,被告は降格処分に伴う当然の措置として役職手当ないし役付手当相当額を減額したと解するのが相当であり,前記1のとおり後日これを含めて修正を検討する旨の合意をしていることを考慮したとしても,被告が原告X1と同X2の正当な組合活動を理由としてこれを行ったとは認められない。

これに対し,同原告らは,役職手当ないし役付手当を支給されていたことを知らなかったかのような供述もするが(<証拠省略>),原告らの知不知の問題と被告の不当労働行為意思の存否の問題とは直接関係がない上,原告X1は長年被告に勤務し,原告X2は経理課長であったのだから,知らないはずはないし,現に原告X2は,役付手当の規定があることは承知していたこと,減額に反対した第一の理由は自分が仕事上迷惑をかけたことはないから減額の理由がないという点にあることを認めている(<証拠省略>)。さらにいうと,同原告らの給与明細は降格処分後の平成8年4月以降の分しか提出されていないが,これらの支給項目には「役職手当」又は「役付手当」の欄があり金額が「0」と記載されているから,支給対象者にはこの額の記載があったはずであり(<証拠省略>),原告らの同供述は採用できない。

なお,原告らは,年俸契約には役付手当に関する合意がないから,その分の減額はできないと主張するが,原告X1及び原告X2は年俸制から給与制に移行している上,仮に年俸制のままであっても次年度以降の年俸額の決定について被告が前年度の年俸額に拘束されるものではないから,上記主張は採用できない。

よって,原告X1の上記請求はその余の点を判断するまでもなく,理由がない。

(ウ) 原告X2の賞与について

原告らは,原告X2に対する賞与の支給基準が組合活動を理由に差別されているとも主張するところ,上記のとおり同原告の賃金減少額は役付手当の不支給による減少の範囲を最大で40万9254円超えており,減額前の年俸の本給に相当する賞与の減少額は約23パーセントとなる。

しかし,まず,これは,原告X2だけでなく同X1にもいえることであるが,同原告らは,部長や課長から平社員に降格されて年俸制社員から給与制社員となったところ,年俸制社員と給与制社員では上記のとおり賞与の算定方法が全く異なる。そのなかでも給与制社員の賞与は被告自体の業績が直接影響するところ,被告の業績は平成9年以降悪化してきている。また,平成9年度以降導入された職能等級制では,部長は7ないし9等級相当職,課長は5ないし6等級相当職に対し平社員は4等級以下である。そして,被告の採用する職能等級制度は,職能等級の昇格が当然に職位の上昇や役職の昇進を伴うもので,相互の関係は密接であるから(<証拠省略>),逆に役職の降格により職能等級の降級をも招来し,基本給の減少を来す可能性もありうる。

次に,前件和解の結果,二人だけが賞与の支給方法が異なるところ,両名を比較すれば支給率に格差があることは明らかであるが(上記(ア)のほか,別紙6と8の対比),被告において,原告X2を原告X1よりも一層差別しなければならない理由も見当たらない。むしろ,原告X2は,経理課長として中途入社し,翌4年度こそ昇給したが,平成4年10月,確認を怠って全部使用済みと思い込んで手形帳を処分して額面1500万円あまりの作成済みの手形を紛失して除権判決を申し立てる事態となり,始末書を提出し,平成5年5月には,上司の経理部長から,部下・支店への指導等について,注意を受け,改善方法を書面で提出するように命じられて提出したことがあり(<証拠省略>),5,6年は連続して昇給がなく,被告に本件組合加入の事実を通告する前の時点で,退職勧告を受けていることからすると,もともと被告の同原告に対する評価は芳しいものではなかったことが窺われる。

このような点からすると,原告X2の賞与の減額も合理的な範囲内にあると見られるから,減給の点から被告の組合差別の意思を推認することはできない。

また,原告X2の供述(<証拠省略>)を含め,他に,被告が,同原告が組合活動を行ったことを理由として不利益取扱いをする意思で同減給を行ったと認めるに足る証拠はない。

(3)  よって,その余の点を判断するまでもなく,原告X1と同X2のこれらの請求は理由がない。

4  賃金差別について(原告X1及び同X3)

(1)  原告X3について

(ア) 賃金格差の存否

まず,Cとの違いは,別紙3及び5のC(<証拠省略>)との対比のとおりであるが,平成4年,平成5年のCが給与制社員であったころは,同人は営業職として営業手当月額3万円を受給しており,これは上記のとおり営業職には時間外割増賃金を支給しないことの見合いの性格を有するから比較対象の金額から控除するべきであり,また,同人は住居手当及び家族手当として合計1万円を受給しているからこれも対比上差し引く必要がある。すると両者間の賃金に大差はなく,基本給はむしろ原告X3の方が高い(<証拠省略>)。平成6年には,Cが係長に昇進したことによって,固定給の増加をきたすとともに,役付手当が支給されて,格差が拡大し,平成7年以降は年俸制に移行することにより賞与が増大して格差が拡大した。しかし,原告X3は,少額ずつながら毎年固定給と年収が増加しているのに対し,Cは,平成10年,平成11年,平成14年に年収が減少している。その結果,両者間の格差は,平成14年には年収で50万円余りにまで縮小した。なお,Cは年俸制社員であって割増賃金の支給対象外となっているから,両者の比較においては双方とも年収額を採用するのが相当である。

このように,両者の違いは,年俸制であるか否かによる部分が大きいと解されるところ,年俸制と給与制では,前記(1)のとおり賃金構成自体が異なるうえ,年俸制の場合は,業績次第では当然に本給たる職能給の減額もあり得るのに対し,前記(1)(ア),(エ)や年俸制社員と原告らの賃金の推移(別紙3,6,8)を見ると,給与制では必ずしもそうではないから,原告X3とCの賃金額には相当の格差があることは事実であるが,一概に原告X3がCに比べて不利益を被っているとは断定しがたい。

Dは営業職として,営業手当月額3万円を支給されていたところ,これは時間外手当見合の性質を有するから,原告X3の固定給と比較するならばこれを控除するべきである(<証拠省略>)。そうすると原告X3・21万9700円に対し,Dは20万円である。

(イ) 格差の理由について

被告は,遅くとも平成4年には初任給自体を経験・能力・職務内容等により個別に決定し,昇給も個別の査定により行う方式を採用しており,また,もともといわゆる定期昇給の制度は採用していないから,同一学歴,同一年数であれば同一賃金という原則は全く存在しない。したがって,賃金に格差が生じること自体はむしろ当然であって,その存在が何らかの不当な意図の存在を推測させるものではない。

また,原告X3の昇給が遅い理由は,少なくとも平成9年以降は主任・係長昇進と4・5等級への昇格が実現しないことにあると解される(<証拠省略>)ところ,被告の採用する職能等級制度は,前記のとおり昇格が職位の上昇や役職の昇進と密接に関連しており,ここにおける昇格は人事上の裁量による措置としての性格が強く,このような昇格昇進は使用者の人事権に属し裁量権を有することから,原則的には同一条件での昇格昇進格差があっても直ちに違法な意図によるものとは推認できない。

さらにいうと,組合員であっても昇格昇進する者も相当数いることからすると本件組合員と非組合員との格差の存在は疑問である。また,被告は査定基準等を公開しておらず,本件訴訟でも査定結果として段階評価の数値を提出するだけで,査定根拠を具体的に示してはいないから(証人J7頁の証言は,甲12の6枚目の職能等級共通基準の主任又は係長の必要とされる能力を満たしていないと言っているに過ぎない。),評価の正当性を的確に判断することはできないが,Cは,職能等級共通基準の主任又は係長に必要とされる能力を満たしたと判断されたから昇格昇進したのであろうこと,これに対し,原告X3は,平成10年から14年の間にフォークリフト等事故6件を発生させ,そのほとんどが同原告の過失割合100パーセントの事故であり,これにより被告は損害を被ったこと(<証拠省略>)からすると,それなりの根拠があった可能性がある。

他方,被告の原告X3に対する差別意思については,同原告入社当初,入社したばかりで組合に入って,廻りとの折り合いも悪いようだし,そういう人は早く辞めて欲しいのが会社の本音だといわれ,同原告が当時の職場で勤まらないのであれば業務部に配置転換になっても会社に残りたいと述べて,被告が了解したことが認められる(<証拠省略>)。しかし,これ自体は時期も古く,内容的にも組合差別の意図で不利益取扱いをしようとしたとは直ちに判断できない。その他,原告X3の陳述書(<証拠省略>)の内容を考慮しても,上司が反組合的な発言を繰り返したとしてもそれが不利益取扱いに繋がったという的確な証拠はない。

このような点からすると,被告が,原告X3が組合活動を行ったことを理由として不利益取扱いをする意思で昇給差別を行ったため上記賃金格差が生じたと認めるに足る証拠はない。

なお,原告らは,「被告会社が原告X3に対して主任係長に昇格するための3つの条件なるものを示したことはないのである。それは言い換えれば,原告X3に対しては主任係長への昇格の機会そのものを奪っているということであり,そもそもそれこそがまさに,同原告に対する組合差別にほかならない」とも主張するが,上記のとおり,主任・係長に昇格するための3つの条件は職能等級共通基準に明記されており,原告らに対しても示されたはずである。平成7年に原告X3に対し調整給として月額2万円の増額がなされたことも,被告が原告X3の賃金があまりに低額である事実を認めたことにはなっても,能力考課において,組合員に対する差別が行われていたことまで認めたものとはいえない。また,被告の提出した事故報告書が最近のものであるからといって,「同原告に対する差別賃金が問題とされ始めた平成5年から平成8年ころの同原告の職務遂行能力が,他の従業員に比し何の遜色も無かったことを露呈している。」とはいえない。

(2)  原告X1について

(ア) 賃金格差の存否

まず,Fの給与は,別紙7及び6のとおりであり,平成5年度以降順調に昇給し平成9年度には948万7500円に達した。しかし,同人は年俸制社員で,この間に所長から部長にまで昇進しているところ,部長から平社員に降格され,年俸制から給与制に変更された原告X1の給与が年数を経て昇進した年俸制社員と同等に昇給するということ自体に無理があるといわざるを得ない。むしろ差があってしかるべきである。

また,Fは年俸制社員であり,平成11年には固定給部分自体が減少し,平成11年時点での原告X1の減額前賃金との差は100万円程度になっている。したがって,上記(1)(ア)と同じ理由で一概に金額の違いほど同原告が大きな不利益を被っているとは断定しがたい。

(イ) 格差の理由について

平成4年度の年収は原告X1の方がFより多い。ただし,固定給を見ると部長である原告X1より所長であるFの方が若干高い。なお,原告X1本人は家族手当について言及するが,年俸制社員にはもともと家族手当の支給はない。また,平成4年当時の職位は,原告X1が部長であるのに対し,Fが所長と,原告X1が2段階上位にあり,むしろ原告X1の方が勤務成績を評価されて昇進が早く(原告X1本人21頁),したがって,この時点で,同原告に対し組合活動を理由とする差別があったとは解しがたい。原告X1は,Fについて,素行がよくない,組合を辞めて被告代表取締役に取り入った,組合の情報を流したなどと供述するが,仮にそのようなことがあったとしても,そのことと被告の評価として原告をFよりも上記以上に高い評価をするべきであるという理由にはならない。また,原告X1は,昇進は早いが賃金は差別されたと述べるが(原告X1本人21頁),同原告と年齢・勤続年数等がほとんど変わらないIの固定給は別紙6のGのとおりであり同原告より低いこと(<証拠省略>,弁論の全趣旨)に鑑み,直ちに採用しがたい。

また,原告X1が次長に昇進した時のBの組合を辞めるようにとの発言は,上級管理職は非組合員でなければならないとの判断からの発言とも理解できるから,直ちに差別意思を示すものとも断定できない。その他,上記(1)(イ)のとおり本件組合員と非組合員との格差の存在は疑問であることなども考慮すると,被告が,原告X1が組合活動を行ったことを理由として不利益取扱いをする意思で昇給差別を行ったため上記賃金格差が生じたと認めるに足る証拠はない。

(3)  よって,その余の点を判断するまでもなく,原告X3と同X1のこれらの請求は理由がない。

第4結論

以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求は理由がないから,失当として棄却する。

(裁判官 多見谷寿郎)

(別紙1)

2002年11月28日現在

[別表1]X1 賃金減額分(1996年度4月~2002年度11月)

<省略>

[別表2]X1 賃金差別分(1996年度4月~2002年度11月)

<省略>

[別表3]X2 賃金減額分(1996年度4月~2001年度2月)

<省略>

[別表4]X3 賃金差別分(1996年度4月~2002年度11月)

<省略>

(別紙2) 年収推移表(支払いベース)

<省略>

<省略>

<省略>

(別紙和解条項<原文タテ組み―編注>)

和解条項

一 被告は,利害関係人との間に,平成8年4月1日以降残業及び残業手当につき,別紙一のとおり実施する労働協約を締結する。

二 被告は,原告X1及び同X2に対する月額給与を別紙二のとおりとし,右両名に対する夏季及び冬季一時金は,基本給,調整給,住宅手当,食事手当,家族手当,精勤手当,無事故手当及び営業手当の合計額に労使間で合意された妥結月数を乗じた金額を支給する。

三 被告は,平成8年4月を目途とする新給与体系の実施については,事前に充分な協議を利害関係人と行う。

四 被告は,利害関係人に対して和解金として別途定める金員を支払う。

五 利害関係人は被告を被申立人とする東京都地方労働委員会平成6年都労委不第15号同平成7年都労委不第65号各不当労働行為救済命令申立事件を取り下げる。

六 原告らは被告に対する本訴請求を放棄する。

七 訴訟費用及び和解費用は各自の負担とする。

以上

別紙一

一 (終業後の休憩時間)

1 午後5時30分の終業時刻後残業までの休憩時間は15分とし,これを無給とする。

2 右の休憩時間は,電話の応対を除き,組合員の自由利用にゆだねる。

二 (残業命令)

1 残業(早出を含む)は,書面による残業命令に基づいて実施する。

2 残業(早出を含む)を命じる残業命令は,当日の午後4時0分までに発令する。

3 早出を命じる残業命令は,前日の午後5時0分までに発令する。

三 (残業手当の計算)

残業(早出を含む)時間は,各日分単位で計算して残業手当を支給する。

四 (営業社員の残業)

営業社員である組合員に対して支給する営業手当は,残業手当を含むものとし,右組合員各自に対し,予め個別に,営業手当に含まれる月間残業(早出を含む)時間を明示する。

五 年俸者である組合員に対しては,支給する年俸額の内訳を説明する。

以上

別紙二

<省略>

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